JP6726058B2 - Al合金鋳造物の製造方法 - Google Patents

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本発明は、金属組織中にAl3Scの析出粒子を含むAl合金鋳造物の製造方法に関する。
航空機や自動車用の構成部品には、軽量でありながら高強度、高耐熱性、高耐久性を示すことが求められる。このような部品を低コストで量産するべく、該部品を、Al合金から得ることが試みられている。
この種のAl合金として、スカンジウム(Sc)を添加することにより、金属組織中にAl3Sc粒子を析出させた展伸材からなる塑性加工物が知られている(例えば、特許文献1を参照)。Al3Sc粒子は、加工熱処理における結晶粒成長を阻害して結晶粒微細化によるAl合金の高強度化に寄与するとともに、Al母相に対する整合性が高いため析出強化能も高い。したがって、金属組織中にAl3Sc粒子を良好に析出させることで、高温下でも優れた特性のAl合金を得ることができる。
また、Scが固溶し難いAlにおいて、Al合金の高温強度の向上に寄与する十分な量のAl3Sc粒子を析出させるためには、Al合金をその固溶限線と固相線との間の温度で加熱する溶体化処理を行う必要がある。これによって、Al母相にScを最大限固溶させて均一固溶体とした後に、焼入れや時効処理等を行うことが可能になる。その結果、金属組織中にAl3Sc粒子を微細に且つ多量に析出させることができるため、Al合金の延性を維持しつつ、高温強度の向上を図ることができる。
特開2014−47417号公報
ところで、上記の部品が複雑な形状からなる場合、展伸材を用いた塑性加工では、複雑形状の製品を得ることが容易ではなく、切削等の煩雑な加工をさらに行って、所望の形状・寸法に仕上げる工程が必要となってしまう。そこで、塑性加工に比して、容易に複雑形状の製品を得ることが可能である鋳造加工を適用し、上記の部品を鋳造物として得ることが求められる。
しかしながら、一般的なAl合金の鋳造材では、その鋳造性や強度を向上させるべく、SiやCu等の添加元素が多く含まれること等により、Al合金の展伸材に比して溶融温度が低い。したがって、この鋳造材からなるAl合金鋳造物に対して、Scを最大限固溶させることが可能な高温で溶体化処理を行うことは困難である。つまり、金属組織中にAl3Sc粒子を微細に且つ多量に析出させて、延性を低下させることなく高温強度を向上させたAl合金鋳造物を得ることは困難である。
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、高温強度及び延性をバランスよく向上させたAl合金鋳造物の製造方法を提供することを目的とする。
前記の目的を達成するために、本発明は、Al合金鋳造物であって、重量%で、Mgを2.85〜5.10%、Mnを0.50〜1.10%、Scを0.27〜0.60%、Zrを0.12〜0.54%、NiとFeとNbの少なくとも何れか1つを0.00〜1.26%、Tiを0.00〜0.35%、含有し、残部がAlと不可避不純物からなり、金属組織中に、粒径が100nm以下であるAl3Sc粒子及びAl3(Sc、Zr)粒子が合計6体積%以下の割合で存在することを特徴とする。
本発明に係るAl合金鋳造物では、成分組成比が上記の範囲内に設定されることで、その溶湯の鋳造性が維持されるとともに、溶融温度の低下が抑制される。このため、複雑形状であっても、鋳造加工によって最終製品の寸法に近い寸法で容易にAl合金鋳造物を得ることができる。また、この鋳造加工の後に、ScやZr等を最大限固溶させることが可能な高温での溶体化処理を行って、金属組織中に、粒径が100nm以下であるAl3Sc粒子及びAl3(Sc、Zr)粒子を合計6体積%以下となるように析出させることができる。このように、微細に且つ多量にAl3Sc粒子を析出させることができるのみならず、Al3(Sc、Zr)粒子も同様に析出させることができることにより、延性の低下を効果的に抑制しつつ、高温強度を向上させたAl合金鋳造物を得ることができる。
さらに、上記のAl3Sc粒子等が結晶粒微細化の効果を奏することにより、Al合金鋳造物中の固溶強化に寄与する元素が粗大な晶出物を生成することなくAl母相に固溶可能となり、これによっても、延性を維持しつつ、高温強度を向上させることができる。
以上から、Al合金鋳造物の高温強度及び延性をバランスよく向上させることができる。
しかも、このAl合金鋳造物は、Al3Sc粒子及びAl3(Sc、Zr)粒子の割合が合計6体積%以下であるため、焼入れの冷却速度を過度に大きくする必要がなく、簡素な製造工程で得ることができる。また、上記の固溶強化に寄与する元素にFeが含まれるため、一般的なAl合金の原材料に比して、Al合金鋳造物の原材料に不純物として含まれるFeの許容量が大きくてもよい。すなわち、Al合金鋳造物の原材料を低廉化することができる。これらによって、Al合金鋳造物の低コスト化を図ることができる。
上記のAl合金鋳造物において、常温での伸び率が4〜16%であり、且つ200〜250℃で100時間曝露した後の250°での0.2%耐力が112〜130MPaである。このような特性を備えるAl合金鋳造物は、航空機や自動車用の構成部品等、高温で高強度が求められる構造材としても好適に適用することができる。また、上記の組成からなるAl合金鋳造物は、上記の通り、高温強度及び延性をバランスよく向上させることができるため、容易に上記の特性を備えることができる。
また、本発明は、Al合金鋳造物の製造方法であって、重量%で、Mgを2.85〜5.10%、Mnを0.50〜1.10%、Scを0.27〜0.60%、Zrを0.12〜0.54%、NiとFeとNbの少なくとも何れか1つを0.00〜1.26%、Tiを0.00〜0.35%、含有し、残部がAlと不可避不純物からなる溶湯を得る工程と、前記溶湯から鋳造物を得る工程と、前記鋳造物に対して溶体化処理を施した後に時効処理を施し、金属組織中に、粒径が100nmを超えるAl 3 Sc粒子及びAl 3 (Sc、Zr)粒子を含まない、粒径が100nm以下であるAl3Sc粒子及びAl3(Sc、Zr)粒子を合計6体積%以下の割合で析出させる工程と、を有することを特徴とする。
本発明に係る製造方法では、上記の通り鋳造性が維持されたAl合金の溶湯から、鋳造加工によりAl合金鋳造物を得ることができる。このため、複雑形状のAl合金鋳造物であっても、最終製品の寸法に近い寸法で容易に得ることができる。また、この鋳造加工の後に、ScやZr等を最大限固溶させることが可能な高温での溶体化処理を行うことができるため、その後の時効処理によって、金属組織中にAl3Sc粒子や、Al3(Sc、Zr)粒子を微細に且つ多量に析出させることができる。これによって、Al合金鋳造物の高温強度及び延性をバランスよく向上させることができる。しかも、不純物として含まれるFe成分を除去・精製する工程を簡素化できること等により、Al合金鋳造物の製造コストを低減することができる。
上記のAl合金鋳造物の製造方法において、前記溶体化処理を、590〜610℃で4〜12時間保持することによって行い、前記時効処理を、250〜350℃で1〜100時間保持することによって行うことが好ましい。これによって、金属組織中にAl3Sc粒子や、Al3(Sc、Zr)粒子を微細に且つ多量に析出させて、高温強度及び延性を一層バランスよく向上させたAl合金鋳造物を容易に得ることが可能になる。
本発明によれば、Al合金鋳造物の成分組成比を所定の範囲内に設定するとともに、その金属組織中に、粒径が100nm以下であるAl3Sc粒子及びAl3(Sc、Zr)粒子を合計6体積%以下で存在させるようにしている。このため、鋳造性を維持しつつ、強度(特に高温強度)及び延性をバランスよく向上させたAl合金鋳造物を歩留まりよく得ることができる。
実施例1〜11の試験片における成分組成比と、引張試験の結果とを併せて示す図表である。 比較例1〜5の試験片における成分組成比と、引張試験の結果とを併せて示す図表である。
以下、本発明に係るAl合金鋳造物及びその製造方法につき好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
先ず、本実施形態に係るAl合金鋳造物につき説明する。このAl合金鋳造物は、重量%で、Mgを2.85〜5.10%、Mnを0.50〜1.10%、Scを0.27〜0.60%、Zrを0.12〜0.54%、NiとFeとNbの少なくとも何れか1つを0.00〜1.26%、Tiを0.00〜0.35%、含有し、残部がAlと不可避不純物からなる。
ところで、Al合金にSiを添加すると、その鋳造性を向上させることができるが、SiがScを消費してAl−Si−Sc相を生成するため、Al3Sc粒子の析出量が低減し、高温強度が低下する傾向にある。
そこで、本実施形態に係るAl合金鋳造物では、Siが添加されない代わりに、Mg及びMnが上記の範囲内で添加されている。これによって、Al合金の鋳造性を維持できるとともに、ScがAl−Si−Sc相の生成に消費されることを回避して、十分な量のAl3Sc粒子を金属組織中に析出させることができる。その結果、鋳造欠陥が生じることを抑制できるとともに、高温強度を効果的に向上させることができる。
Al合金にCuを添加すると、強度向上に寄与するが、Al合金の溶融温度を比較的大きく降下させる傾向にある。このCuが添加されていない本実施形態に係るAl合金鋳造物では、その溶融温度を、Cuが添加された一般的なAl合金の鋳造材の溶融温度に比して、高くすることができる。また、Al合金鋳造物には、Cuの代わりに、Zr及びTiのうち、少なくともZrが上記の範囲内で添加されている。このため、鋳造加工によって得られたAl合金鋳造物の前駆体(鋳造物)に対して、そのAl母相にScやZr等を最大限固溶させることが可能な高温で溶体化処理を施して、均一固溶体とすることが可能になる。
このようにして均一固溶体とした鋳造物に焼入れを行うことで、ScやZr等の過飽和固溶体を容易に生成することができ、該過飽和固溶体に時効処理を行うことで、金属組織中にAl3Sc粒子及びAl3(Sc、Zr)粒子等を微細に且つ多量に析出させたAl合金鋳造物を得ることができる。
具体的には、金属組織中に析出させるAl3Sc粒子及びAl3(Sc、Zr)粒子の具体的な粒径を100nm以下、典型的には5〜10nmとすることができる。このように微細な析出粒子を析出させることで、Al合金鋳造物の延性を維持しつつ高温強度を効果的に向上させることができる。なお、粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)写真から観察される上記の析出粒子について、その粒界間の最大長さを測定することによって求めることができる。
また、金属組織中にAl3Sc粒子及びAl3(Sc、Zr)粒子を析出させる際、これらの粒子を、それぞれ3体積%を超えて析出させる場合、すなわち、合計6体積%を超えて析出させる場合、溶体化処理の後に、かなり大きな冷却速度で焼入れを施す必要が生じ、製造工程が複雑化してしまう。そこで、本実施形態に係るAl合金鋳造物では、金属組織中におけるAl3Sc粒子及びAl3(Sc、Zr)粒子の割合を合計6体積%以下とすることで、Al合金鋳造物の製造工程の簡素化や、製造コストの低廉化を図っている。
なお、金属組織中におけるAl3Sc粒子の占有面積(体積)率は、例えば、Al合金鋳造物におけるAl3Sc粒子の占有量と、その際のAl合金鋳造物の抵抗値との関係から得られた検量線を用いる電気抵抗法によって求めることができる。
上記のSc及びZrに加え、Al合金鋳造物にさらにTiが添加されている場合、Al3(Sc、Zr、Ti)粒子や、Al3(Sc、Ti)粒子も同様に析出させることができる。金属組織中にAl3(Sc、Zr)粒子、Al3(Sc、Zr、Ti)粒子、Al3(Sc、Ti)粒子を析出させたAl合金鋳造物では、高温強度を向上させることができるとともに、延性を特に効果的に向上させることができる。
さらに、Al合金鋳造物は、固溶強化に寄与する元素として、Ni、Fe、Nb、Mnの少なくとも1つを上記の範囲内で含んでいてもよい。これらの元素は、Al3Sc粒子が結晶粒微細化の効果を奏することにより、粗大な晶出物を生成することなくAl母相に固溶する。その結果、Al合金鋳造物の延性を低下させることなく、強度を向上させることが可能になる。
このように、本実施形態に係るAl合金鋳造物では、Feが固溶強化に寄与するため、一般的なAl合金に許容されるFeの含有量より多くのFeを含んでいてもよい。このため、原材料となる純Al材又はAl合金材に不純物として含まれるFe成分を除去・精製する工程を簡素化することができる。つまり、原材料を低廉化して、Al合金鋳造物の製造コストを低減することができる。
以上から、成分組成比を上記の範囲内に調整したAl合金鋳造物は、高温強度及び延性をバランスよく向上させることができる。これによって、Al鋳造合金の特性を、例えば、常温での伸び率が4〜16%となり、且つ200〜250℃で100時間曝露した後の250℃での0.2%耐力が112〜130MPaとなるように容易に調整することができる。このような特性を備えるAl合金鋳造物は、航空機や自動車用の構成部品等、高温で高強度が求められる構造材としても好適に適用することができる点で好ましい。
次に、上記したAl合金鋳造物の製造方法につき説明する。はじめに、重量%で、Mgを2.85〜5.10%、Mnを0.50〜1.10%、Scを0.27〜0.60%、Zrを0.12〜0.54%、NiとFeとNbの少なくとも何れか1つを0.00〜1.26%、Tiを0.00〜0.35%、含有し、残部がAlと不可避不純物からなる溶湯を得る。
次に、この溶湯を、鋳造加工装置の成形型内に導入して鋳造加工を行う。上記の通り、溶湯は、Mg及びMnが所定の範囲内に設定されているため、十分な鋳造性を発現する。したがって、成形型のキャビティに対応する形状で溶湯を冷却固化させて、鋳造欠陥の発生が抑制された鋳造物を得ることができる。
次に、鋳造物に対して溶体化処理を施す。この鋳造物は、上記の通り、Cuが添加されないことで溶融温度の低下が抑制されている。したがって、Al母相にScと、Zrとを最大限固溶させること、また、鋳造物にTiが含有される場合にはさらにTiを最大限固溶させることが可能な高温で溶体化処理を行って、均一固溶体とすることができる。なお、溶体化処理の温度及び保持時間は特に限定されるものではないが、均一固溶体を容易且つ良好に形成する観点から、例えば、590〜610℃で4〜12時間保持して行うことが好ましい。
上記の通り、均一固溶体とした鋳造物に焼入れ処理を施すことで、平衡溶解度以上にScやZr等を固溶する過飽和固溶体を容易に得ることができる。この過飽和固溶体に時効処理を施すことにより、金属組織中に粒径が100nm以下であるAl3Sc粒子及びAl3(Sc、Zr)粒子を合計6体積%以下の割合で容易に析出させることができる。また、鋳造物がTiを含有する場合には、さらに、Al3(Sc、Zr、Ti)粒子及びAl3(Sc、Ti)粒子を同様に析出させることができる。なお、時効処理の温度及び保持時間は、特に限定されるものではないが、上記の粒子を良好且つ容易に析出させる観点から、例えば、250〜350℃で1〜100時間保持して行うことが好ましい。例えば、時効処理の温度を350℃とした場合、最適な保持時間は2時間以内である。
その後、必要に応じ、バリ取り加工等の仕上げ加工がなされ、これにより、所定形状・寸法のAl合金鋳造物が得られるに至る。
以上から、この製造方法によれば、上記の通り鋳造性が維持されたAl合金の溶湯から、鋳造加工によりAl合金鋳造物を得ることができる。このため、複雑形状のAl合金鋳造物であっても、最終製品の寸法に近い寸法で容易に得ることができる。
また、この鋳造加工の後に、Scを最大限固溶させることが可能な高温での溶体化処理を行うことができるため、その後の時効処理によって、金属組織中にAl3Sc粒子や、Al3(Sc、Zr)粒子等を微細に且つ多量に析出させることができる。これによって、Al合金鋳造物の高温強度及び延性をバランスよく向上させることができる。しかも、不純物として含まれるFe成分を除去・精製する工程を簡素化できること等により、Al合金鋳造物の製造コストを低減することができる。
本発明は、上記した実施形態に特に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
上記した実施形態では、所定形状をなす鋳造加工品を得る場合を例示して説明しているが、例えば、板材や棒材等をAl合金鋳造物として得るようにしてもよい。そして、これら板材や棒材に対して鍛造加工を施し、上記のAl合金鋳造物を出発材料とする所定形状の物品(鍛造加工品)を作製することも可能である。
勿論、この鍛造加工品も諸特性に優れる。上記のAl合金鋳造物を出発材料として成形加工されたものであるからである。
図1に示す組成比(残部はAlと不可避不純物であり、Si及びCuはともに0.1重量%以下)の溶湯のそれぞれに対し、鋳造加工を施すことによって複数の鋳造物を得た。次に、これらの鋳造物を600℃で6時間保持し溶体化処理を行った後、焼入れ処理を施し、さらに、300℃で6時間保持して時効処理を行って、実施例1〜11の試験片をそれぞれ得た。実施例1〜11の試験片の金属組織をTEMで観察したところ、粒径が100nm以下である粒子が金属組織中に6体積%以下の割合で存在することが確認された。また、前記粒子につきEDSにて同定を行ったところ、Al3Sc、Al3(Sc、Zr)であることが認められた。Tiを含有する溶湯から得られた実施例6〜8の試験片については、前記粒子に、Al3(Sc、Zr、Ti)がさらに含まれることが認められた。
比較のため、図2に示す組成比(残部はAlと不可避不純物)の溶湯から、上記の実施例1〜11の試験片と同様の工程を経て、比較例1〜5の試験片を得た。比較例1〜5の試験片の金属組織を、実施例1〜11の試験片と同様に観察したところ、粒径が約100nm以下のAl3Sc粒子が確認された。
次に、実施例1〜11及び比較例2〜5の試験片のそれぞれに対して、室温で、JIS Z 2241の要領で引張試験を行ない、0.2%耐力(0.2%YS)、最大引張強さ(UTS)及び伸びを測定した。なお、比較例3については、最大引張強さを測定したが、脆性により0.2%耐力の測定ができなかったため伸びのみを測定した。また、実施例1〜11及び比較例1〜5の試験片のそれぞれを250℃で100時間暴露した後に、上記の引張試験を同様に行って、250℃での0.2%耐力、最大引張強さ及び伸びを測定した。これらの測定結果を図1及び図2に併せて示す。
図1及び図2から、実施例1〜11の試験片は何れも、室温及び250°の両方の条件下において、比較例1〜4の試験片とほぼ同様の0.2%耐力及び最大引張強さを示しつつ、比較例1〜4の試験片に比して大きい伸びを示すことが分かる。また、実施例1〜11の試験片は何れも、室温及び250°の両方の条件下において、汎用的なAl合金(ASTM規格C355.0)である比較例5の試験片とほぼ同様の伸びを示しつつ、該比較例5の試験片に比して大きい0.2%耐力及び最大引張強さを示すことが分かる。
すなわち、比較例1〜4の試験片では伸び(特に、室温での伸び)が不足し易く、比較例5の試験片では0.2%耐力及び最大引張強さが不足し易い。これに対し、実施例1〜11の試験片は、伸び、0.2%耐力及び最大引張強さの何れも良好な大きさにすることができる。
以上から、重量%で、Mgを2.85〜5.10%、Mnを0.50〜1.10%、Scを0.27〜0.60%、Zrを0.12〜0.54%、NiとFeとNbの少なくとも何れか1つを0.00〜1.26%、Tiを0.00〜0.35%、含有し、残部がAlと不可避不純物からなり、その金属組織中に、粒径が100nm以下であるAl3Sc粒子及びAl3(Sc、Zr)粒子を合計6体積%以下で存在させるようにした本実施形態に係るAl合金鋳造物では、高温強度及び延性をバランスよく向上させることができる。
また、比較例1は、Zrが添加されていないことを除いて、実施例1と同様の組成比からなる。しかしながら、実施例1の伸びは、比較例1の伸びの6倍以上大きいことが分かる。このことから、本実施形態に係るAl合金鋳造物では、金属組織中にAl3(Sc、Zr)粒子を含むことによって、該Al3(Sc、Zr)粒子を含まない場合に比して、延性の低下を一層効果的に抑制できるといえる。
さらに、Tiを含む実施例6〜8は、比較例1〜4及びTiを含まない他の実施例に比して、伸びが大きいことが分かる。このことから、Tiを添加したAl合金鋳造物では、金属組織中にAl3(Sc、Zr、Ti)粒子や、Al3(Sc、Ti)粒子を析出させることができ、これによって、延性の低下を一層効果的に抑制できるといえる。
さらにまた、Nbを含む実施例9、Niを含む実施例10、Feを含む実施例11では、Nb、Ni、Feの何れも含まない他の実施例に比して、250℃で100時間暴露後における250°での0.2%耐力及び最大引張強さが概ね大きい。このことから、Ni、Fe、Nbが粗大な晶出物を生成することなくAl母相に固溶し、これによって、Al合金鋳造物の延性が低下することを抑制しつつ、効果的に高温強度を向上させることが可能であるといえる。このように、Feが固溶強化に寄与するため、原材料に不純物として含まれるFe成分を除去・精製する工程を簡素化して、Al合金鋳造物の製造コストを低減することができる。

Claims (2)

  1. 重量%で、Mgを2.85〜5.10%、Mnを0.50〜1.10%、Scを0.27〜0.60%、Zrを0.12〜0.54%、NiとFeとNbの少なくとも何れか1つを0.00〜1.26%、Tiを0.00〜0.35%、含有し、残部がAlと不可避不純物からなる溶湯を得る工程と、
    前記溶湯から鋳造物を得る工程と、
    前記鋳造物に対して溶体化処理を施した後に時効処理を施し、金属組織中に、粒径が100nmを超えるAl 3 Sc粒子及びAl 3 (Sc、Zr)粒子を含まない、粒径が100nm以下であるAl3Sc粒子及びAl3(Sc、Zr)粒子を合計6体積%以下の割合で析出させて、常温での伸び率が4〜16%であり、且つ200〜250℃で100時間曝露した後の250℃での0.2%耐力が112〜130MPaであるAl合金鋳造物を得る工程と、
    を有することを特徴とするAl合金鋳造物の製造方法。
  2. 請求項記載の製造方法において、
    前記溶体化処理を、590〜610℃で4〜12時間保持することによって行い、
    前記時効処理を、250〜350℃で1〜100時間保持することによって行うことを特徴とするAl合金鋳造物の製造方法。
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