JP7303274B2 - アルミニウム合金箔 - Google Patents
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Description
アルミニウム合金箔の成形については、伸びが重要なパラメーターではあるが、アルミニウム合金箔を一方向に変形させるわけではなく、いわゆる張出成形が行われることが多い。このため、アルミニウム合金箔において一般的に材料の伸び値として用いられる圧延方向に対して平行な方向だけでなく、45°や90°といった各方向の伸びも高いことが求められている。
また、最近では、電池包材分野を初めとしてアルミニウム合金箔の用途において包材厚みの薄肉化が進められている。
特許文献2に記載のアルミニウム合金箔は、非常に微細な結晶粒径を規定しているが、結晶粒界としては5 °以上の方位差を有するものに限定されている。結晶粒界の方位差が5 °以上ということは、大傾角粒界と小傾角粒界とが混在しており、大傾角粒界で囲まれた結晶粒が微細であるかは定かではない。
特許文献3の記載では、特許文献1、2とは異なり電池外装箔ではなく、厚さ10μm以下の薄箔に関するものであり、中間焼鈍なしに製造されているため、集合組織が発達する。このため、圧延方向に対する0°、45°、90°の方向において安定した伸びが得られない。そして、平均結晶粒径も10μm以上であり、箔の厚さが薄い場合には高い成形性を得ることが期待できない。
(3)本形態のアルミニウム合金箔において、方位差15°以上の大傾角粒界で囲まれた結晶粒の平均粒径が6μm以上15μm以下であり、方位差15°以上の大傾角粒界で囲まれた結晶粒の最大粒径と、方位差15°以上の大傾角粒界で囲まれた結晶粒の平均粒径の比に関し、最大粒径/平均粒径≦3.5の関係を有することが好ましい。
本実施形態に係るアルミニウム合金箔は、Fe:1.0質量%以上1.8質量%以下、Si:0.01質量%以上0.08質量%以下、Cu:0.005質量%以上0.05質量%以下を含有し、Mn:0.01質量%以下に規制し、残部がAl及び不可避不純物からなる組成を有する。
また、本形態のアルミニウム合金箔において、圧延方向に対して0°、45°、90°の各方向の伸びが28%以上であることが好ましい。
更に、本形態のアルミニウム合金箔において、方位差15°以上の大傾角粒界で囲まれた結晶粒の平均粒径が6μm以上15μm以下であり、最大粒径/平均粒径≦3.5であることが好ましい。
・Fe:1.0質量%以上1.8質量%以下
Feは、鋳造時にAl-Fe系金属間化合物として晶出し、前記化合物のサイズが大きい場合は焼鈍時に再結晶のサイトとなって再結晶粒を微細化する効果がある。Feの含有量が下限(1.0質量%)を下回ると、粗大な金属間化合物の分布密度が低くなり、微細化の効果が低くなり、最終的な結晶粒径分布も不均一となる。Fe含有量が上限(1.8質量%)を超えると、結晶粒微細化の効果が飽和もしくは却って低下し、さらに鋳造時に生成されるAl-Fe系化合物のサイズが非常に大きくなり、箔の伸びと圧延性が低下する。
このため、Feの含有量を上記範囲に定める。なお、同様の理由でFeの含有量を1.0質量%以上1.6質量%以下とすることがより好ましい。
SiはFeと共に金属間化合物を形成するが、Si添加量が多い場合には化合物のサイズの粗大化、及び分布密度の低下を招く。Si含有量が上限(0.10質量%)を超えると、粗大な晶出物による圧延性、伸び特性の低下、さらには最終焼鈍後の再結晶粒サイズ分布の均一性が低下する懸念がある。
これらの理由からSiの含有量は低い方が好ましいが、Si含有量が下限(0.01質量%)未満となると高純度の地金を使用する必要があり、製造コストが大幅に増加する。
また、高純度地金を使用した場合には、Cuといった微量成分も極端に低くなるため、冷間圧延中に過度な加工軟化を生じ、圧延性が低下する懸念もある。以上の理由で、Siの含有量を0.01質量%以上0.10質量%以下の範囲に定める。
なお、同様の理由でSiの含有量を0.01質量%以上 0.05質量%以下とするのが好ましい。
Cuはアルミニウム箔の強度を増加させ、伸びを低下させる元素である。一方では、冷間圧延中の過度な加工軟化を抑制する効果がある。Cuの含有量が0.005質量%未満の場合、加工軟化抑制の効果が低く、0.05質量%を超えると伸びが明瞭に低下する。このため、Cuの含有量を上記範囲とする。
なお、同様の理由でCuの含有量は、0.005質量%以上 0.01質量%以下の範囲とするのがより好ましい。
Mnはアルミニウム母相中に固溶する、あるいは非常に微細な化合物を形成し、アルミニウムの再結晶を抑制する働きがある。Mnの含有量がごく微量であればCuと同様に加工軟化の抑制が期待できるが、添加量が多いと中間焼鈍、及び最終焼鈍時の再結晶を遅延させ、微細で均一な結晶粒を得ることが困難となる。そのため、Mnの含有量を0.01質量%以下に規制する。
なお、同様の理由でMnの含有量を0.005質量%以下とするのがより好ましい。
Al-Fe合金に限ったことではないが、焼鈍時の再結晶挙動によっては総結晶粒界に占める大傾角粒界(HAGBs)の長さL1と小傾角粒界(LAGBs)の長さL2の比率(HAGBs/LAGBs)が変化する。
最終焼鈍後にLAGBsの割合が多い場合は、たとえ平均結晶粒が微細であったとしても、L1/L2≦2.0の場合は局所的な変形を生じやすくなり伸びが低下する。このため、L1/L2>2.0とするのが望ましく、この規定を満たすことで、より高い伸びが期待できる。より好ましくは、上記比(HAGBs/LAGBs)を2.5以上とする。
大傾角粒界と小傾角粒界の長さは結晶粒径と同様にSEM-EBSDで測定することができる。観察した視野の面積における大傾角粒界と小傾角粒界の総長さからL1/L2を算出することができる。
集合組織は箔の伸びに大きな影響を及ぼす。Cu方位密度が40を超え、且つR方位密度も30を超えると、0°、45°、90°の伸び値に異方性が生じ、特に0°、90°方向の伸び値が低下してしまう。伸びに異方性が生じると、成型時に均一な変形が出来ず成形性が低下する。より好ましくはCu方位密度30以下、及びR方位密度20以下である。
アルミニウム箔は成形中に、成形が進むにつれ表面が荒れることを本発明者が知見しており、この成形中の表面あれが小さい場合に良好な成形性が得られることが推測される。アルミニウム箔の変形中の表面荒れに及ぼす影響因子は結晶粒径や集合組織、そして金属間化合物の分布状態が挙げられ、それらが相互に作用する複雑なものであり、未だその全貌は明らかとなっていない。本発明者らは、アルミニウム箔の初期の表面粗さをRa0、引張変形におけるひずみ20%時点でのアルミニウム合金箔の表面粗さRa20とした場合に、表面粗さの増加(Ra20―Ra0)を0.25μm以下に抑制することで、結果的に良好な成形性を有する箔を得ることが出来ることを見出した。
この観点から、アルミニウム箔の成形中の表面粗さの増加について、0.20μm以下であることがより好ましい。
軟質アルミニウム箔は結晶粒が微細になることで、変形した際の箔表面の肌荒れを抑制することができ、高い伸びとそれに伴う高い成形性が期待できる。この表面あれの影響を及ぼす因子の一つとして結晶粒径が挙げられ、高い伸び特性やそれに伴う高成形性を実現するには方位差15°以上の大傾角粒界に囲まれた結晶粒について、平均結晶粒径が15μm以下であることが望ましい。また、平均粒径6μm未満では耐力の増加に伴う成形性の低下を生じ、さらにこのような微細結晶粒組織は再結晶おける連続再結晶の割合が高くなる傾向にあり、集合組織におけるCu方位密度が増加し、やはり成形性低下のリスクがある。そして平均結晶粒径が同じであっても、結晶粒の粒径分布が不均一である場合、局所的な変形を生じ易くなり伸びは低下する。そのため、平均結晶粒径を6μm以上15μm以下とするだけでなく、最大粒径/平均粒径≦3.5とすることで高い伸び特性を得ることができる。さらに本発明者らは、結晶粒径が15μmを超えた場合には、成形時の表面荒れが顕著になる事も見出しており、表面荒れの抑制に対しても結晶粒組織の制御は重要である。
なお、平均結晶粒径は5μm以上10μm以下が好ましく、前記比は、2.5以下がより好ましい。後方散乱電子回折(EBSD:Electron BackScatter Diffraction)によって単位面積あたりの結晶方位解析によって方位差15°以上の大傾角粒界マップを得ることが出来る。
高成形性には箔の伸びが重要であり、特に圧延方向に平行な方向を0°とし、0°、45°、そして圧延方向の法線方向である90°の各方向で伸びが高いことが重要である。
箔の伸び値は箔の厚さの影響を大きく受けるが、厚さ40μmにおいて伸び28%以上であれば高い成形性が期待できる。箔の厚みが薄い場合の伸びの目安として、厚み10μmであれば12%以上、厚み20μmであれば16%以上、厚み30μmであれば22%以上の伸びを有する事で高い成形性が期待出来る。箔の厚みが厚い場合の伸びの目安としては、厚み50μmであれば30%以上、厚み60μmであれば32%以上、厚み70μmであれば34%以上、そして厚み80μmであれば36%以上の伸びを有する事で高い成形性が期待できる。
粒径1μm以上とは一般的に再結晶時に核生成サイトになると言われている粒径であり、このような金属間化合物が高密度に分布することで焼鈍時に微細な再結晶粒を得やすくなる。粒径が1μm未満、あるいは密度が1×104個/mm2未満の場合は、再結晶時に核生成サイトとして有効に働きにくく、3μmを超えると圧延中のピンホールや伸びの低下につながり易くなる。このため、粒径1μm以上3μm未満のAl-Fe系金属間化合物の密度が上記範囲内であることが望ましい。
粒径0.1μm以上1μm未満のAl-Fe系金属間化合物は、一般には再結晶時の核生成サイトとなりにくいと言われているサイズであるが、結晶粒の微細化及び再結晶挙動に大きな影響を与えていると思われる結果を本発明者が得ている。
メカニズムの全体像は未だ明らかでないが、粒径1~3μmの粗大な金属間化合物に加え、1μm未満の微細な化合物が高密度に存在することで最終焼鈍後の再結晶粒微細化、及びHAGBsの長さ/LAGBsの長さの低下抑制を確認している。
冷間圧延中の結晶粒の分断(Grain subdivision機構)を促進している可能性もある。このため、粒径0.1μm以上1μm未満のAl-Fe系金属間化合物の密度が上記範囲であることが望ましい。
アルミニウム合金として、Fe:1.0質量%以上1.8質量%以下、Si:0.01質量%以上0.10質量%以下、Cu:0.005質量%以上0.05質量%以下を含有し、Mn:0.01質量%以下に規制し、残部がAl及びその他の不可避不純物からなる組成に調製してアルミニウム合金鋳塊を製造した。鋳塊の製造方法は特に限定されず、半連続鋳造などの常法により行うことが可能である。得られた鋳塊に対しては、480~550℃で6間以上保持する均質化処理を行う。
中間焼鈍降の冷間圧延は最終冷間圧延に相当し、最終冷間圧延率が92%以上であり、その後、最終焼鈍を250~350℃で10時間以上保持する条件で行う。箔の厚さは特に限定されないが、例えば10μm以上80μm以下とすることができる。あるいは、箔の厚さを10μm以上70μm以下とすることができ、20μm以上70μm以下とすることもできる。
ここでの均質化処理は鋳塊内のミクロ偏析の解消と金属間化合物の分布状態を調整することを目的としており、最終的に微細で均一な結晶粒組織を得る為に非常に重要な処理である。均質化処理において、480℃未満の温度では鋳塊内のミクロ偏析を解消することは出来ても、Feの析出が不十分となり、Feの固溶量が高くなり、且つ再結晶の核生成サイトとなる粒径1μm以上3μm未満の粗大な金属間化合物の密度が低下する為、結晶粒径が粗大になりやすい。そのため、これらは結果として表面荒れを発達させる要因となり得る。また粒径0.1μm以上1μm未満の微細な金属間化合物を高密度に析出させる上では出来るだけ低温での均質化処理が有効であり、550℃を超えるとこれら微細な金属間化合物の密度が低下してしまう。均質化処理において、金属間化合物を高密度に析出させるには長時間の熱処理が必要であり、最低6時間以上は確保する必要がある。均質化処理時間が6時間未満では析出が十分でなく、微細な金属間化合物の密度が低下してしまう。
均質化処理後に熱間圧延を行う。熱間圧延においては仕上がり温度を280℃未満とし、再結晶を抑制することが望ましい。熱間圧延仕上がり温度を280℃未満とすることで、熱間圧延板は均一なファイバー組織となる。このように熱間圧延後の再結晶を抑制することで、その後の中間焼鈍板厚までに蓄積されるひずみ量が大きくなり、中間焼鈍時に微細な再結晶粒組織を得ることが出来る。このことは最終的な結晶粒の微細に繋がるため、表面あれの抑制に寄与する。280℃を超えると熱間圧延板の一部で再結晶を生じ、ファイバー組織と再結晶粒組織が混在することになり、中間焼鈍時の再結晶粒径が不均一化し、それはそのまま最終的な結晶粒径の不均一化に繋がる。230℃未満で仕上げるには熱間圧延中の温度も極めて低温となる為、板のサイドにクラックが発生し生産性が大幅に低下する懸念がある。
中間焼鈍は冷間圧延を繰り返すことで硬化した材料を軟化させ圧延性を回復させ、またFeの析出を促進し固溶Fe量を低下させる。中間焼鈍温度が300℃未満では再結晶が完了せず結晶粒組織が不均一になる、及びCu方位が顕著に発達するリスクがある。また中間焼鈍温度が400℃を超える高温では再結晶粒の粗大化を生じ、最終的な結晶粒サイズも大きくなる。さらに高温ではFeの析出量が低下し、固溶Fe量が多くなる。固溶Fe量が多いと最終焼鈍時の再結晶が抑制され、小傾角粒界の割合が多くなるため、HAGB/LAGBが低下する要因となる。
中間焼鈍後から最終厚みまでの最終冷間圧延率が高い程、材料に蓄積されるひずみ量が多くなり最終焼鈍後の再結晶粒が微細化される。また結晶粒は冷間圧延の過程でも微細化されるため(Grain Subdivbision) 、その意味でも最終冷間圧延率は高い方が望ましい、具体的には最終冷間圧延率を92% 以上とすることが望ましく、92%未満では蓄積ひずみ量の低下や圧延中の結晶粒微細化も不十分となり、最終焼鈍後の結晶粒サイズも大きくなり、表面荒れも悪化する。またその場再結晶の割合も増え、方位差15°未満のLAGBsが増加しHAGBs/LAGBsが小さくなる。上限については材料の特性上のデメリットはないものの、99.9% を超える冷間圧延で薄箔を製造することは、圧延性の低下につながりサイドクラックによる破断の増加も懸念される。
・「最終焼鈍:250~350℃で10時間以上保持」
最終冷間圧延後に最終焼鈍を行い、箔を完全に軟化させる。最終焼鈍の条件として、250℃未満の温度や10時間未満の保持時間では軟化が不十分な場合があり、350℃を超える温度とすると箔の変形や経済性の低下などが問題となる。最終焼鈍時の保持時間の上限は経済性などの観点から100時間未満が好ましい。
また、得られたアルミニウム合金箔は、後方散乱電子回折(EBSD)による単位面積あたりの結晶方位解析では、方位差が15°以上の粒界である大傾角粒界に囲まれた結晶粒の平均粒径が6μm以上15μm以下、最大粒径/平均粒径≦3.5となっており、結晶粒が適切なサイズになっている。このため、変形した際の表面の肌荒れを抑制することができる。
さらに、後方散乱電子回折(EBSD)による単位面積あたりの結晶方位解析において、方位差が15°以上の粒界を大傾角粒界、方位差が2 °以上15°未満の粒界を小傾角粒界とし、大傾角粒界の長さをL1、小傾角粒界の長さをL2としたとき、L1/L2>2.0となっている(HAGBs/LAGBs>2.0)。これにより、より高い伸びが実現されている。
・「結晶粒径」
アルミニウム合金箔の表面を電解研磨した後、SEM(Scanning Electron Microscope)-EBSDにて結晶方位解析を行い、結晶粒間の方位差が15°以上の結晶粒界をHAGBs(大傾角粒界)と規定し、HAGBsで囲まれた結晶粒の大きさを測定した。倍率×1000で視野サイズ45×90μmを3視野測定し、平均結晶粒径、及び最大粒径/平均粒径を算出した。一つ一つの結晶粒径は円相当径にて算出し、平均結晶粒径の算出にはEBSDのArea法(Average by Area Fraction Method)を用いた。尚、解析にはTSL Solutions社のOIM Analysisを使用した。
アルミニウム合金箔の表面を電解研磨した後、SEM-EBSDにて結晶方位解析を行い、結晶粒間の方位差が15°以上の大傾角粒界(HAGBs)と、方位差2°以上15°未満の小傾角粒界(LAGBs)を観察した。倍率×1000で視野サイズ45×90μmを3視野測定し、視野内のHAGBsとLAGBsの長さを求め、比を算出した。
・「結晶方位」
Cu方位は{112}<111>、R方位は{123}<634>を代表方位とした。それぞれの方位密度はX線回折法において、{111}、{200}、{220}の不完全極点図を測定し、その結果を用いて3次元方位分布関数(ODF;Orientation Distribution Function)を計算し、評価を行った。
いずれも引張試験にて測定した。引張試験は、JIS Z2241に準拠し、圧延方向に対して0°、45°、90°の各方向の伸びを測定できるように、JIS5号試験片を試料から採取し、万能引張試験機(島津製作所社製 AGS-X 10kN)で引張り速度2mm/minにて試験を行った。
伸び率の算出について以下の通りである。まず試験前に試験片長手中央に試験片垂直方向に2本の線を標点距離である50mm間隔でマークする。試験後にアルミニウム合金箔の破断面をつき合わせてマーク間距離を測定し、そこから標点距離(50mm)を引いた伸び量(mm)を、標点間距離(50mm)で除して伸び率(%)を求めた。
金属間化合物はアルミニウム合金箔の平行断面(RD-ND面)をCP(Cross section polisher)にて切断し、電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM:Carl Zeiss社製 NVision40)にて観察を行った。
「粒径1μm以上~3μm未満のAl-Fe系金属間化合物」については、倍率×2000倍にて観察した5視野を画像解析し、密度を算出した。「粒径0.1μm以上~1μm未満のAl-Fe系金属間化合物」については、倍率×10000倍にて観察した10視野を画像解析し、密度を算出した。算出結果を表1に示した。
限界成型高さは角筒成形試験にて評価した。試験は万能薄板成形試験器(ERICHSEN社製 モデル142/20)にて行い、アルミ箔を図1に示す形状を有する角型ポンチ(一辺の長さL=37mm、角部の面取り径R=4.5mm)1を用いて行った。試験条件として、シワ抑え力は10kN、ポンチの上昇速度(成形速度)の目盛は1とし、そして箔の片面(ポンチが当たる面)に鉱物油を潤滑剤として塗布した。箔に対し装置の下部から上昇するポンチが当たり、箔が成形されるが、3回連続成形した際に割れやピンホールがなく成形できた最大のポンチの上昇高さをその材料の限界成型高さ(mm)と規定した。ポンチの高さは0.5mm間隔で変化させた。ここでは、箔厚さ40μmの場合、張出高さ11.0mm以上を成形性良好と見なし○と判定し、張出し高さ11.0mm未満を×と判定した。
成型高さは伸びと同じく箔厚みの影響を受け、厚みが薄い程成形高さは低くなる。厚みの薄い箔で試験を行った場合の限界張出高さの判定は、厚み10μmで7.0mm以上、厚み20μmで9.0mm以上、そして厚み30μmで10.5mm以上を成形性良好と見なし○と判定し、各厚みで上述の境界値未満を×と判定した。厚みの厚い箔で試験を行った場合の限界張出高さの判定は、厚み50μmで11.5mm以上、厚み60μmで12.0mm以上、厚み70μmで12.5mm以上、そして厚み80μm以上で13.0mm以上を成形性良好と見なし○と判定し、各厚みで上述の境界値未満を×と判定した。
引張試験におけるひずみ20%変形時点での表面粗さRa20について、レーザー顕微鏡(キーエンス社 VK-X100)を用いて測定を行った。測定箇所は試験片の幅手と長手の中央部であり、引張試験前とひずみ20%変形後の試験片それぞれで測定を実施し、試験前の表面粗さRa0とひずみ20%変形後の表面粗さRa20を算出し、表面粗さの増加(Ra20-Ra0)を求めた。
また、これらの実施例は優れた限界成型高さを示した。
比較例18、19は、均質化処理温度が望ましい範囲より低いか高いため、(Ra20-Ra0)の値が大きくなるか、粒径比が大きく、(HAGBs/LAGBs)の値が小さくなり、いずれにおいても成形性が低下した。
比較例20は、熱間仕上がり温度が高いため、粒径比が大きく、(HAGBs/LAGBs)の値が小さくなり、成形性が低下した。
比較例21、22は、中間焼鈍温度が望ましい範囲より低いか高いため、粒径比が大きく、集合組織のCu方位密度、R方位密度とも条件を満たさないので集合組織の状態が悪いか、(HAGBs/LAGBs)の値が小さくなるため、いずれにおいても成形性が低下した。
比較例23は、最終冷間圧延率が92%未満のため、(HAGBs/LAGBs)の値が小さくなり、(Ra20-Ra0)の値が大きくなり、成形性が低下した。
Claims (3)
- Fe:1.0質量%以上1.8質量%以下、Si:0.01質量%以上0.08質量%以下、Cu:0.005質量%以上0.05質量%以下を含有し、Mn:0.01質量%以下に規制し、残部がAl及び不可避不純物からなる組成を有し、
後方散乱電子回折(EBSD)による単位面積当たりの結晶方位解析において、方位差15°以上の大傾角粒界(HAGBs)と方位差2°以上15°未満の小傾角粒界(LAGBs)の長さの比(HAGBs/LAGBs)が2.0超であり、集合組織としてCu方位密度40以下、及びR方位密度30以下であり、初期の表面粗さRa0と引張試験におけるひずみ20%時点における表面粗さRa20の差(Ra20-Ra0)が0.25μm以下であり、厚さ10μm以上80μm以下であることを特徴とするアルミニウム合金箔。 - 圧延方向に対して0°、45°、90°の各方向の伸びが28%以上であることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム合金箔。
- 方位差15°以上の大傾角粒界で囲まれた結晶粒の平均粒径が6μm以上15μm以下であり、方位差15°以上の大傾角粒界で囲まれた結晶粒の最大粒径と、方位差15°以上の大傾角粒界で囲まれた結晶粒の平均粒径の比に関し、最大粒径/平均粒径≦3.5の関係を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアルミニウム合金箔。
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