JP5017799B2 - トラクタ - Google Patents

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Description

この発明は、トラクタに関するものである。
従来からトラクタ等の動力車両には油圧クラッチを用いた変速装置が用いられている。一般的には、機体の前後進操作を行なうリバーサ機構に油圧クラッチを用いたり、主変速装置に油圧クラッチを用いることが多い。特に大型のトラクタでは操作性の向上を図る目的と、クラッチ接続時のショックを軽減する目的から主変速装置のみならず副変速装置まで油圧クラッチを用いることが多い。例えば、特許文献1には、エンジンの後方に油圧式リバーサ機構を設け、その伝動後位に4段変速が可能な油圧式主変速装置と副変速装置を設けたものが記載されている。
特開平8-338525号公報(図1)
ところで、前記のような農業用トラクタでは、各種作業や走行状態に対応して、変速スイッチや変速レバーで電気的に前記変速装置を適宜アップダウン操作するものであるが、牽引負荷が大きい時に前記クラッチの昇圧操作が遅いと車両が急減速され、下り坂では急加速してしまいトラクタの操作性が悪いという課題が有った。
また同クラッチを常に急速に昇圧すると、ショックが生じ変速フィーリングが悪いという課題が有った。
この発明が解決しようとする課題は、前記湿式多板形態の油圧クラッチで構成された変速装置を、走行状態に応じた昇圧とし、車両の操作性及び変速フィーリングを損なわない車両の変速制御装置を提供することにある。
また、故障により複数の変速装置に油圧が作動しなくなる状態や、故障により複数の変速装置に油圧が作用し続ける状態においても、複数の変速装置は所定速で動力を伝達できるようにして油圧が故障しても走行可能にする。
このため、請求項1の発明は、次のような構成を採用した。
即ち、エンジン(5)の回転を、主クラッチ装置と、湿式多板形態の高低切替クラッチを有する複数の変速装置(9a,9b,9c)とを介して走行装置(2,3)へ伝達するトラクタであって、
前記主クラッチ装置は、湿式多板形態の前進クラッチ(A)及び後進クラッチ(B)からなる前後進切替装置(8)で構成し、
前記主クラッチ装置に、比例制御弁(121)への通電操作でクラッチディスクの圧着状態を調整するアクチュエータ(46)を備え、
前記各変速装置(9a,9b,9c)に、比例制御弁(123,124,125)への通電操作でクラッチディスクの圧着状態を調整するアクチュエータ(63,263,264)を備え、
第一主変速装置(9a)の第一高低切替クラッチ(C,D)と前後進クラッチ(A,B)は、固定ドラム(50)に対して中央の仕切壁(55)を挟んで前側に前後進クラッチ(A,B)を設け、仕切壁(55)の後側に第一高低切替クラッチ(C,D)を設ける構成とし、
前進クラッチ(A)は後進クラッチ(B)よりも半径方向内側に配置して前進クラッチ(A)と後進クラッチ(B)は前後方向で重なる構成とし、第一主変速装置(9a)の低速クラッチ(C)は高速クラッチ(D)よりも半径方向内側に配置して低速クラッチ(C)と高速クラッチ(D)は前後方向で重なる構成とし、
第一主変速装置(9a)の後方に第二主変速装置(9b)と第三主変速装置(9c)を備え、
第二主変速装置(9b)の高低クラッチ(E,F)と第三主変速装置(9c)の高低クラッチ(G,H)は、固定ドラム(250)に対して中央の仕切壁(255)を挟んで前側に第二主変速装置(9b)の高低クラッチ(E,F)を設け、仕切壁(255)の後側に第三主変速装置(9c)の高低クラッチ(G,H)を設ける構成とし、
第二主変速装置(9b)の低速クラッチ(F)は高速クラッチ(E)に対して半径方向外側に配置して低速クラッチ(F)と高速クラッチ(E)は前後方向で重なる構成とし、第三主変速装置(9c)の低速クラッチ(H)は高速クラッチ(G)に対して半径方向外側に配置して低速クラッチ(H)と高速クラッチ(G)は前後方向で重なる構成とし、
前記第一主変速装置(9a)、第二主変速装置(9b)及び第三主変速装置(9c)に油圧が作用しない状態でも第一主変速装置(9a)、第二主変速装置(9b)及び第三主変速装置(9c)は所定速で動力伝達するように構成したことを特徴とするトラクタとした。
(請求項1の作用)
以上のように構成した請求項1の発明では、油圧が故障して油圧が作用しない状態でも第一主変速装置(9a)、第二主変速装置(9b)及び第三主変速装置(9c)は所定速で動力伝達する。
また請求項2の発明では、エンジン(5)の回転を、主クラッチ装置と、湿式多板形態の高低切替クラッチを有する複数の変速装置(9a,9b,9c)とを介して走行装置(2,3)へ伝達するトラクタであって、
前記主クラッチ装置は、湿式多板形態の前進クラッチ(A)及び後進クラッチ(B)からなる前後進切替装置(8)で構成し、
前記主クラッチ装置に、比例制御弁(121)への通電操作でクラッチディスクの圧着状態を調整するアクチュエータ(46)を備え、
前記各変速装置(9a,9b,9c)に、比例制御弁(123,124,125)への通電操作でクラッチディスクの圧着状態を調整するアクチュエータ(63,263,264)を備え、
第一主変速装置(9a)の第一高低切替クラッチ(C,D)と前後進クラッチ(A,B)は、固定ドラム(50)に対して中央の仕切壁(55)を挟んで前側に前後進クラッチ(A,B)を設け、仕切壁(55)の後側に第一高低切替クラッチ(C,D)を設ける構成とし、
前進クラッチ(A)は後進クラッチ(B)よりも半径方向内側に配置して前進クラッチ(A)と後進クラッチ(B)は前後方向で重なる構成とし、第一主変速装置(9a)の低速クラッチ(C)は高速クラッチ(D)よりも半径方向内側に配置して低速クラッチ(C)と高速クラッチ(D)は前後方向で重なる構成とし、
第一主変速装置(9a)の後方に第二主変速装置(9b)と第三主変速装置(9c)を備え、
第二主変速装置(9b)の高低クラッチ(E,F)と第三主変速装置(9c)の高低クラッチ(G,H)は、固定ドラム(250)に対して中央の仕切壁(255)を挟んで前側に第二主変速装置(9b)の高低クラッチ(E,F)を設け、仕切壁(255)の後側に第三主変速装置(9c)の高低クラッチ(G,H)を設ける構成とし、
第二主変速装置(9b)の低速クラッチ(F)は高速クラッチ(E)に対して半径方向外側に配置して低速クラッチ(F)と高速クラッチ(E)は前後方向で重なる構成とし、第三主変速装置(9c)の低速クラッチ(H)は高速クラッチ(G)に対して半径方向外側に配置して低速クラッチ(H)と高速クラッチ(G)は前後方向で重なる構成とし、
前記第一主変速装置(9a)、第二主変速装置(9b)及び第三主変速装置(9c)に油圧が作動し続ける状態でも第一主変速装置(9a)、第二主変速装置(9b)及び第三主変速装置(9c)は所定速で動力伝達する構成としたことを特徴とするトラクタとした。
(請求項2の作用)
以上のように構成した請求項2の発明では、油圧が故障して油圧が作用し続ける状態でも第一主変速装置(9a)、第二主変速装置(9b)及び第三主変速装置(9c)は所定速で動力伝達する。
これにより、請求項1の発明では、油圧が故障して油圧が作用しない状態でも第一主変速装置(9a)、第二主変速装置(9b)及び第三主変速装置(9c)は所定速で動力伝達するので、トラクタを適切な場所に移動できる。
また請求項2の発明では、油圧が故障して油圧が作用し続ける状態でも第一主変速装置(9a)、第二主変速装置(9b)及び第三主変速装置(9c)は所定速で動力伝達するので、トラクタを適切な場所に移動できる。
以下、図面に基づいてこの発明を備えた農業用トラクタを説明する。
図1はトラクタ1の側面図である。このトラクタ1は、走行装置として左右前輪2,2と左右後輪3,3を備え、ボンネット4内に搭載したエンジン5の回転動力をミッションケース6内の変速装置によって適宜減速し、その回転動力を前記前輪2,2と後輪3,3に伝達するように構成している。
なお、動力伝達経路については後述するが、前記ミッションケース6内には機体の進行方向を切替える前後進切替装置8と車速を変更する主変速装置9及び副変速装置86が設けられている。そして、ステアリングハンドル11の下方に設けた前後進切替レバー10を前後方向に動かすことによって機体が前進若しくは後進するようになっている。また、前記ミッションケース6の後上部には油圧シリンダケース14が設けられ、この油圧シリンダケース14の左右両側にはリフトアーム15,15が回動自在に枢着されている。リフトアーム15,15とロワーリンク16,16との間にはリフトロッド17,17が介装連結され、ロワーリンク16,16の後部には作業機であるロータリ耕耘装置18が連結されている。
そして操縦席12の側方に設けた油圧操作レバー20を上昇側に操作して油圧シリンダケース14内に収容されている油圧シリンダ(図示省略)に作動油を供給するとリフトアーム15,15が上昇側に回動され、リフトロッド17、ロワーリンク16等を介してロータリ耕耘装置18が上昇する。反対にこの油圧操作レバー20を下降側に操作すると油圧シリンダ内の作動油は油圧タンクを兼ねる前記ミッションケース6内に排出され、リフトアーム15,15を下降回動させる。
また前記ロータリ耕耘装置18は、耕耘部21と耕耘部21上方を覆うロータリカバー22とロータリカバー22後部に枢着されたリヤカバー23等を有する構成となっている。
次に図2、図3、図4に基づいて動力伝達経路について説明する。
前記エンジン5の後部には、前面にフライホイール25を収納し且つ後面にベアリング取付穴を備えたフライホイールケース26を連結し、更にこのケース26後部に、前記フライホイール15と一体の出力軸27端部のサンギヤ27a、及び同ギヤ27aにより駆動される遊星ギヤ機構28等を内装するミッションケース6を連結する構成となっている。
前記遊星ギヤ機構28は、前記サンギヤ27aとキャリヤ30と複数個のプラネタリギヤ32…と出力側のサンギヤ34等からなり、プラネタリギヤ32…はキャリヤ30に固着された3本のピン35…に夫々回転自在に支持されている。1つのプラネタリギヤ32は大小の2段ギヤ32a,32bを備え、前記出力軸27の端部に形成した出力軸27のサンギヤ27aがプラネタリギヤ32の大径ギヤ32aに噛み合い、このプラネタリギヤ32の小径ギヤ32bはキャリヤ30にピン37にて支持されたギヤ39に噛み合い、このギヤ39が前記出力側サンギヤ34に直接噛み合うように構成している。
符号40は軸長手方向に沿うボス部40aを中心部に有する断面形状が椀状の回転体であり、進行方向前側が開口されており、この回転体40は前記キャリヤ30に図示外のボルトによって一体的に固着されている。従ってキャリヤ30が回転するとこの回転体40も一緒に回転する。これらキャリヤ30と回転体40が一体になったものは前後2箇所のベアリング41,42によって支持されている。
また前記出力側サンギヤ34は、この後部に断面形状をクランク状とし、且つ半径方向外側に向けて径が大きく拡がった円筒部34bが形成され、この円筒部34bには前後方向に沿うスリット34cが設けられ、このスリット34cにドーナツ状のクラッチディスク44…が複数枚、前後に移動はできるが回転はできない状態で嵌合装着されている。通常の状態ではこれらクラッチディスク44同士の間隔は開いていて動力を伝達する状態にはなっていない。
そして前記回転体40の内側に嵌合されたピストン46がシリンダ室47内に流入した作動油によって前側に移動させられると前記クラッチディスク44…は圧着されて前記キャリヤ30とサンギヤ34を一体化する。この状態ではサンギヤ34とスプライン嵌合している伝動軸48が正転方向に回転させられて機体は前進する。
なお、このトラクタ1では、前記ピストン46とクラッチディスク44とで前後進切替装置8の前進クラッチを構成するものであり、以下前進用のクラッチを前進クラッチAと呼ぶ。またこの前進クラッチAの半径方向外側には後述する後進クラッチBが設けられ、全体で主クラッチ装置を兼ねる構成となっている。
また前進クラッチAと後進クラッチBを収容する固定ドラム50は円筒状をなし、中央部には前後の空間部を仕切る仕切壁55が設けられている。前記固定ドラム50は、外周部に突部50bが一体的に設けられ、この突部50bをミッションケース6内の適当箇所に設けた内壁に固定して固定ドラム50を支持する構成となっている。
また前記前進クラッチAと後進クラッチBとの間を仕切るように介装された回転体40のスリット部40aと、固定ドラム50の外周縁前端部のスリット部50aとの間にもドーナツ状に形成された複数のクラッチディスク52…が介装され、このクラッチディスク52…をシリンダ室58内に収容された後進用のピストン53が押圧するとキャリヤ30が固定されて回転を停止し、前記出力側サンギヤ34のみが回転させられ、その結果、伝動軸48が逆向きに回転し、機体を後進させるようにしている。上記説明から明らかなように、後進クラッチBは、ピストン53とクラッチディスク52とで構成されている。
また前記固定ドラム50の仕切壁55には油路57が形成されており、この油路57と前進用のシリンダ室47、後進用のシリンダ室58が夫々接続され、作動油が各シリンダ室に流入する構成となっている。
一方、仕切壁55の後側空間部には、前側と同じように半径方向に2室が設けられ、半径方向の内側の室には皿バネ(付勢手段)60が設けられ、外側の室にはシリンダ室62とピストン63(アクチュエータ)が設けられている。符号65は前側空間部に配設された回転体40に相当する第2の回転体であり、固定ドラム50に設けたベアリング66により回転自在に支持されている。また前記回転体65の外周には前後方向に沿うスリット68が複数箇所設けられ、このスリット68…と伝動軸48の大径部48aとの間には軸長手方向には移動できるが回転はできない状態で複数個のクラッチディスク70…が介装されている。この回転体65のスリット68…と固定ドラム50の後部外周に設けた前後方向に沿うスリット72…との間にも軸長手方向には移動できるが回転はできない状態で複数個のクラッチディスク74…が介装されている。
また更に前記両クラッチディスク70,74の間には、これを仕切る1枚のセパレータプレート75が設けられ、このセパレータプレート75を前記皿バネ60で常時前側に向けて押圧すべく構成している。この皿バネ60によりセパレータプレート75は前記ピストン63を非作動側に押し戻される。
即ち、このセパレータプレート75は前後方向に移動可能な状態でクラッチディスク70とクラッチディスク74との間に設けられており、常態では半径方向内側のクラッチディスク70同士を圧着して外側のクラッチディスク74間には隙間がある状態としている。反対にシリンダ室62内に作動圧油を流入させてピストン63を後方へ移動させると半径方向外側のクラッチディスク74同士は圧着されるが半径方向内側のクラッチディスク70同士には隙間が生じるように構成している。
なお、このトラクタ1では内側の皿バネ60とクラッチディスク70を低速クラッチCと呼び、その外側のピストン63とクラッチディスク74を高速クラッチDと呼び、全体を第一高低切替クラッチ(C,D)と呼ぶものとする。
更に前記の第2回転体65の後部には、遊星ギヤ機構28、詳しくは前側キャリヤ30と同じようにキャリヤ77が一体的に固着され、このキャリヤ77にもピン78によってプラネタリギヤ79が回転自在に支持されている。
前記プラネタリギヤ79は大径ギヤ79aと小径のギヤ79bからなり、大径ギヤ79aは前記伝動軸48側のサンギヤ82に噛み合い、小径のギヤ79bは出力軸80側のサンギヤ80aに噛み合っている。
このような構成において、皿バネ60によってセパレータプレート75がクラッチディスク70…を押圧しているときは伝動軸48と回転体65とが一体となり、従って後キャリヤ77も回転体65と一体となってベアリング66の周りを回転し、出力軸80から低速の回転が取り出されるように構成している。
そして、前記シリンダ室62に作動油が供給されると皿バネ60に抗してピストン63が後方へ向けて移動し、回転体65及びキャリヤ77を固定ドラム50に押し付け、これらを固定する。このため、伝動軸48の回転は伝動軸48の後方寄り部位に設けられたサンギヤ82、プラネタリギヤ79等を順次介して出力軸80側に取り出される。この場合、先の場合よりも比較的増速された回転が出力軸80から取り出されることになる。言い換えると、低速クラッチCが繋がった状態では低速状態となり、高速クラッチDが接続されると高速状態に切り替るように構成している。なお、これら遊星ギヤ機構28と前記第一高低切替クラッチ(C,D)を合わせて第一主変速装置9aと呼ぶこととする。
以上のように、固定ドラム50に対して中央の仕切壁55を挟んで前側に前進クラッチAと後進クラッチBが設けられ、仕切壁55の後側には低速クラッチCと高速クラッチDが設けられ、前記前進クラッチAは後進クラッチBよりも半径方向内側にあり、低速クラッチCは高速クラッチDよりも内側に設けられているのである。しかも、前進クラッチAと後進クラッチBとは前後方向において重なり、低速クラッチCと高速クラッチDも前後方向に一部重なるように構成したので、4つのクラッチA,B,C,Dを有するものでありながら変速装置の前後方向の長さを大幅に短縮することができるのである。
またこの発明では、固定ドラム50の前側において、半径方向内側に前進クラッチAを設け、その外側に後進クラッチBを設け、キャリヤ30とサンギヤ34を一体化して直接伝達する側を前進とし、後進側をプラネタリギヤ32を介したギヤ伝達としたので、使用頻度が高い前進側の動力伝達効率が良く馬力の損失なども少なくなるものである。
また前記第一主変速9aの後方には、前記出力軸80から取り出された回転動力を更に4段に変速する第二主変速装置9bと第三主変速装置9cを備える構成となっている。
詳しくは、前記前後進切替装置8及び第一主変速装置9aを収容する前側の変速ユニット83に対して4段変速が可能な後側の変速ユニット84が設けられ、この変速ユニット84は、前記前側の変速ユニット83のうち、第一主変速装置9aの部分だけを取り出してこれを前後対称に設けて、第二主変速装置9bと第三主変速装置9cを構成している。そして、前側の変速ユニット83における第一高低切替クラッチ(C,D)に相当する第二高低切替クラッチ(E,F)で2段の変速が行ない、後側の変速ユニット84の第三高低切替クラッチ(F,H)で更に4段の変速が行なって、走行変速段数は全部で8段の変速が可能となっている。
図3と図4に基づいて、前記後側の変速ユニット84の構成について概略説明すると、固定ドラム250の前後中央部には仕切壁255が設けられ、この仕切壁255を挟んで前側の空間部に第二主変速装置9bの高速クラッチEと低速クラッチFが収容され、後側の空間部に第三主変速装置9cの高速クラッチGと低速クラッチHが収容されている。前記第二主変速装置9bの高速クラッチEは皿バネ260とクラッチディスク270で構成され、低速クラッチFはピストン263とクラッチディスク274で構成され、この低速クラッチFは高速クラッチEに対して半径方向外側に設けられ、両クラッチE,Fは前後方向において一部重なるように設けられている。
また仕切壁255の後側には第三主変速装置9cの高速クラッチGと低速クラッチHが収容され、第3クラッチGは皿バネ261とクラッチディスク271で構成され、低速クラッチHはピストン264とクラッチディスク262で構成されている。また前記低速クラッチHは高速クラッチGに対して半径方向外側に設けられ、前後方向においては一部クラッチ同士が重なるように配置される。
また前記第二主変速装置9bの2組のクラッチディスク270,274を前後方向に移動自在に嵌合支持している前側の回転体300はベアリング302によって固定ドラム250に回転自在に支持され、この回転体300の前端部はプラネタリギヤ304を支持するキャリヤ306と一体的に構成されている。プラネタリギヤ306は2段ギヤで構成され、大径のギヤ304aは出力軸80後端のサンギヤ310に噛み合い、小径ギヤ304bは第2伝動軸320にスプライン嵌合されたサンギヤ316に噛み合う。皿バネ260によってセパレータプレート275は常時後側へ向けて押圧され、高速クラッチEの入り状態を保つ。即ち、サンギヤ316とキャリヤ306は一体となって高速で回転する。
一方、ピストン263が前側へ移動され、セパレータプレート275を介して皿バネ260を前側へ移動させると、外側のクラッチディスク274同士が圧着されて低速クラッチFが入りとなりキャリヤ306及び回転体300を固定ドラム250に押し付ける。
この結果、前側の変速ユニット83側の出力軸80の回転は遊星ギヤ機構28のプラネタリギヤ304を経由してサンギヤ316及びこれにスプライン嵌合された第2伝動軸320に動力が伝達される。この場合、前記高速クラッチEが接続されているときよりも減速比が大きく、回転速度はやや遅くなるようにギヤ比が設定される。
また仕切壁255を挟んだ後側空間部、即ち第三主変速装置9cにおいても同様であり、常態においては皿バネ261によりセパレータプレート322を介して小径ドーナツ状のクラッチディスク271が押圧され、高速クラッチGが入り状態となる。
一方、ピストン264が後方へ向けて押圧されると半径方向外側のクラッチディスク262同士が圧着され、低速クラッチHが入り状態となる。高速クラッチGが入り状態となるか、低速クラッチHが入り状態となるかによって第3出力軸350の回転速度が変わる。即ち、高速クラッチGが入りになると第2伝動軸320後端のサンギヤ330とキャリヤ328は一体となって回転し、低速クラッチHが入り状態になると回転体324とキャリヤ328は停止され、第2伝動軸320の回転は比較的低速回転でサンギヤ330、プラネタリギヤ332を順次介して第3出力軸350に伝達される。
以上のように、前記トラクタ1の主変速装置9では、最も動力上手側に設定された第一高低切替クラッチ(C,D)による動力の減速比(入力軸に対する出力時の回転)を、1以上、即ち増速となる設定とし、第二高低切替クラッチ(E,F)と第三高低切替クラッチ(G,H)による動力の減速比を1以下、即ち減速となる設定としている(図7参照)。
よって、例えば、主変速における最低速位置となる第1速は、第一高低切替クラッチのピストン63が非作動、即ちコントローラ(制御手段)7による通電が「切(OFF)」で、第二高低切替クラッチのピストン263が作動、即ちコントローラ7による通電が「入(ON)」で、第三高低切替クラッチのピストン264が作動、即ちコントローラ7による通電が「入(ON)」の組合わせとなっている。
また主変速における最高速位置となる第8速では、第一高低切替クラッチのピストン63が作動、即ちコントローラ7による通電が「入(ON)」で、第二高低切替クラッチのピストン263が非作動、即ちコントローラ7による通電が「切(OFF)」で、第三高低切替クラッチのピストン263非作動、即ちコントローラ7による通電が「切(OFF)」の組合わせとなっている。
また3つの高低切替クラッチのピストンが作動、即ちコントローラ7の通電が全て「入(ON)」となった場合には、第2速となり、3つの高低切替クラッチのピストンが非作動、即ちコントローラ7の通電が全て「切(OFF)」となった場合には、中速位置、詳しくは第7速となる設定となっている。
これにより、トラクタ1の主変速装置9では、油圧系または電気系にトラブルが生じて、前記3つの高低切替クラッチのピストン全てに油圧がかからない状態に陥っても、主変速装置9は中速位置、詳しくは第7速に設定され、反対に3つの高低切替クラッチのピストンに油圧がかかり続ける状態に陥っても、第2速に設定されるので、適度な速度で車両を迅速且つ安全に、修理場等へ移動することができる。
更に図4の動力伝達線図に基づいてこの主変速装置9の下手側に構成された副変速装置86について説明する。
副変速装置86は、前記主変速装置9にて適宜変速された回転を第三出力軸350から、各減速ギヤまたはクラッチを介して同軸上の副変速軸87へ伝える変速装置である。
副伝動軸87上に設けられた前側の副変速第一シフタ88を前方に移動させると副変速の「高速H」が得られ、この副変速第一シフタ88を後側に移動させると副変速の「中速M」が得られ、後側の副変速第二シフタ89を後方へ移動させると副変速の「低速L」が得られ、これらの変速された回転動力がドライブピニオン軸91に伝達される。ドライブピニオン軸91の動力は更に後輪デフ装置92、後輪最終減速機構93を介して後車軸94に伝達される。
一方、ドライブピニオン軸91から分岐した前輪駆動用の動力は、等速四駆クラッチ95と増速クラッチ96からなる前輪増速装置97に伝達され、等速四駆クラッチ95が接続されると後輪3と前輪2の周速度が略等しい状態で前後輪2,3が駆動され、増速クラッチ96が接続されると前輪駆動軸98は増速回転され、前輪2は後輪3よりもその周速度が倍になって回転するように構成されている。なお、図4において符号99は前輪デフ装置、100は前輪ファイナルケース部の減速機構、101は前輪最終減速機構である。
以上のように構成したトラクタ1の走行系の動力伝達機構では、図7に示すように、8段の主変速と3段の副変速で前後各24段の変速位置を得ることができる。
次に同図に基づいてPTO系の動力伝達機構を説明する。
前記エンジン5の回転動力は、ギヤ機構104を介してPTOクラッチ106へ伝達され、同クラッチ106にて入切された回転動力は、高低2段の切替が可能なPTO変速装置109にて適宜変速され、PTO伝動軸105を介して更にこの後方に備えた正逆転切替装置108に伝達される構成となっている。そして、この正逆転切替装置108で正逆切り替えられた回転がPTO軸110から取り出される構成となっている。従って、この実施例では正転、逆転とも2段の回転がとれるようになっている。
次に図5に示す油圧回路について説明する。
油圧ポンプ115から送り出された作動油は、比例減圧弁120に入って一定の圧力に保持され、回路上手から順に、前記前進クラッチAと後進クラッチBのピストン46,53と、第一主変速装置9aの高速クラッチDを作動させるピストン63と、第二主変速装置9bの低速クラッチFを作動させるピストン263と、第三主変速装置9cの低速クラッチHを作動させるピストン264を夫々制御する比例制御弁121,122,123,124,125に送られる。これらの比例制御弁は、前記コントローラ7からの通電指令によって弁の開口量が制御される。例えば、前記前進クラッチAと後進クラッチBは、クラッチペダル129の回動基部に設けられたポテンショメータ128からの信号を受けて比例制御がなされる。
したがって、従来の機械式クラッチを有するトラクタや自動車のようにクラッチペダル129の踏込量に応じて、またエンジンの負荷状態応じて、半クラッチ状態を作り出し、車速を無段階に得ることができる。また前記クラッチペダル129が最大ストロークで踏み込まれた場合、若しくは前後進切替レバー10が中立位置に設定された場合、若しくは変速レバー13が中立位置に設定された場合は、前記前後進切替装置8に係るクラッチA,Bを切位置に保持すると共に、主変速装置9に係るクラッチもすべて切位置、即ち出力回転が無回転になる位置に設定する構成となっている。
更に前進クラッチAと後進クラッチBに対しては2組の比例制御弁121,122だけでなく2位置4ポート式の1個の切替制御弁135が並列に設けられており、この切替弁135は、通常は両クラッチA,Bとミッションケース6との間を遮断するが、前記クラッチペダル129基部に備えた最大踏込操作検出スイッチ130がONするとこの切替弁135が開口側に移動して前進クラッチAあるいは後進クラッチB室内の作動油が油圧タンク6側に戻るようにしているのである。
即ち、クラッチペダル129を終端まで踏み込むとシリンダ室内に流入していた作動油がミッションケース6に戻るために走行系動力は中立状態になって機体が停止するのである。
次に図8に基づいて、前記変速装置9,86の操作系について説明する。
前記操縦席12の側方には、変速レバー13を設け、このレバーグリップに変速スイッチ(増速スイッチ13A,減速スイッチ13B)を備え、この増速スイッチ13Aを押し込む毎に、前記主変速位置9を1段ずつアップし、減速スイッチ13B押し込む毎に主変速位置を1段ずつダウンする構成となっている。また同変速レバー13を、略「h」型のレバーガイド13Gに沿って前後左右にシフト操作することで、前記の通り、副変速の変速位置を「低速L」,「中速M」,「高速H」の三段階に切り替える構成となっている。
また同変速レバー13は、前記副変速「高速H」の位置、詳しくは最前方位置で左右外側に傾倒可能して「路上走行HH」位置に操作可能に構成され、同レバー13を傾倒したときには、副変速位置を「高速H」に維持したまま、車両を路上走行状態であることを指定する構成となっている。
またこれら変速レバー13の基部には、同レバー位置の操作位置検出する変速レバー位置検出スイッチ13L,13M,13H,13HHが設けられ、前記変速スイッチ13A,13Bと共にコントローラ7へ信号を送信する構成となっている。
これにより、コントローラ7では、同レバー13が通常の副変速「低速L」,「中速M」,「高速H」位置にあるときには、トラクタ1は作業状態と判定して前記主変速装置9を1〜8段まで使用可能とし、同レバー13が「路上走行HH」位置に傾倒した場合には、前記主変速装置を4段に制限、詳しくは図7例の通り、第一主変速装置9aを「高」の状態を維持して、第二主変速装置9bと第三主変速装置9cの切替にて全4段の変速位置を使用可能としている。
次に、前記コントローラ7の構成について、図6に基づいて説明する。
前記コントローラ7は、内部に各種情報を処理するCPUと、制御プログラムを格納するEEPROMと、これら情報を一時的に記憶するRAMと、他のコントローラ7と通信を行う通信器を備える構成となっている。
そしてコントローラ7の入力部には、前後進切替レバー10基部に備えた前進操作検出スイッチ10fと後進操作検出スイッチ10rと、変速レバー13に備えた増速スイッチ10A、減速スイッチ10B、変速制御入切スイッチ13C、変速モード手動設定器19、同レバーの操作位置を検出する変速レバー位置検出スイッチ13L,13M,13H,13HH、エンジンのスロットル位置を検出するスロットル位置センサ5a、エンジン回転センサ5b、クラッチペダル踏込位置センサ128、クラッチペダル最大踏込操検出スイッチ130等を接続する構成となっている。
またコントローラ7の出力部には、前記前進クラッチAを「入」とする比例制御弁121のソレノイド121s、後進クラッチBを「入」とする比例制御弁122のソレノイド122s、前後進クラッチを共に「切」とする切替制御弁135のソレノイド、第一主変速装置9aの高速クラッチを「入」とする比例制御弁123のソレノイド123s、第二主変速装置9bの低速クラッチを「入」とする比例制御弁124のソレノイド124s、第三主変速装置9cの低速クラッチを「入」とする比例制御弁125のソレノイド125s等を接続する構成となっている。
また前記コントローラ7は、他のコントローラや携帯用チェッカー133と通信接続できる通信器を備える構成となっている。
そして、以上のように構成したトラクタ1のコントローラ7では、前記変速レバー13に備えた変速制御入切スイッチ13Cの入切設定により、図10と図11に示す変速制御が行われる。
前記変速制御では、前記変速制御入切スイッチ13Cが入(ON)であるかどうかを判定し、これが切(OFF)であれば、前記変速レバー13の切替操作や変速スイッチ13A,13Bの押込み操作に応じた主変速の切替が行なわれる。詳しくは変速レバー13を操作し、副変速位置を切り替えた場合は、主変速位置を車速の変動が極力少なくなる最低速位置若しくは最高速位置に切り替える。また変速スイッチ13A,13Bの押込み操作毎に主変速位置を1段ずつアップダウンさせる。
一方、前記変速制御入切スイッチ13Cが入であるときには続けて、同レバー13が「路上走行HH」位置に設定されているか、前記前後進切替レバー10は前進位置であるか、スロットル位置は所定回転以上の位置に設定されているかどうかを判定し、これらが全てYESの判定であれば、アクセル操作とエンジン負荷条件による変速処理と、前記変速レバー13の切替操作や変速スイッチ13A,13Bの押込み操作に応じた主変速の切替処理が行なわれる。
この前記アクセル操作とエンジン負荷条件による変速制御は、前記主変速装置を4段に制限された状態で行なわれる切替制御であって、図11に示すように、前記エンジン5のスロットル位置センサ5aに応じた設定エンジン回転数と、エンジン回転センサ5bによる実エンジン回転数の差により、トラクタ1の走行負荷状態を検出し、この差が所定値を超えた状態が一定時間継続すると、主変速位置9を現位置から1段アップする一方、前記エンジン回転センサ9bによる実エンジン回転数が下がるに従い現位置からダウンする構成となっている。
また前記のようなコントローラ7により主変速位置を切り替える際には、まず図12に示すように、目的の変速クラッチを1つずつ、1ステップないし2ステップで切り替える変速パターンをセットする。そしてこのパターンに従って前記各制御弁121〜125のソレノイドへ通電を行なって変速を開始する。
そして、各変速モードでは、図13と図14示す通り、前記変速モード設定器19の設定状態に応じてクラッチが昇圧される。
変速モード設定処理では、まず前記変速モード手動設定器19のON/OFF状態が判定され、同スイッチ19がOFFであれば無条件に「第二変速モード」が設定される。また同スイッチ19がONであっても前記変速レバー13が路上走行位置HHであれば「第二変速モード」が設定される。その他の判定では前記「第一変速モード」が設定される。
前記「第一変速モード」では、図14の(A)の実線で示すように、主変速切替時まず前後進切替クラッチA,Bが共に切とされ、待機時間t1、即ち前記主変速装置9を構成する高低切替クラッチの切り替えが完了する時間を経た後、元の前進クラッチA若しくは後進クラッチBを経過時間ごとに設定された昇圧カーブに沿って全圧まで徐々に復帰させる。
また「第二変速モード」では、図14の(A)の二点鎖線と、(B)に示すように、前記前後進クラッチA,Bは共に入(全圧)状態に保持され、主変速装置9にかかる高低切替クラッチが昇圧制御される。詳しくは、当該変速元のクラッチが切操作されると共に、目的の変速クラッチが経過時間ごと設定された昇圧カーブに沿って徐々に昇圧される。
尚、図14の(A)と(B)では、図12に示す主変速装置9の変速パターンが1ステップで完了するパターンと時間スケールを合わせて示したものであり、2ステップで主変速装置を切替える場合は、(B)の各経過時間t2〜t5の時間を半減して昇圧する構成となっている。また前記図14の(A)のクラッチを低圧で保持する時間t3の長さは、別途備えた感度調整ダイヤルや携帯用チェッカーにより、適宜調整可能な構成となっている。
これにより、オペレータが車両の走行状態、即ち路上走行時には変速モード設定器19を「第一変速モード」に設定することで、常に同じ位置、即ち前後進切替装置8で安定した昇圧制御を行うことができ、ショックの少ない変速を行うことができる。また負荷の係る作業時には、変速モード設定器19を「第二変速モード」に設定することで、極力迅速に変速を完了できて、急減速や急加速を防止し、トラクタ1の操作性を損なわない。
また前記第一、第二変速モードの設定をコントローラ7の自動判断によって切替える構成としても良い。
具体的には、前記トラクタ1のリフトアーム15若しくは油圧昇降レバー20の基部に位置センサを備え、この位置が作業機18を非作業位置へ上昇していると想定される上昇位置を検出しているときには、「第一変速モード」に設定し、作業状態と想定される角度を検出しているときには「第二変速モード」を設定する。若しくは、前記前後輪2,3のスリップ状態を検出するセンサを備え、一定時間ごとに前記四駆クラッチ95及び増速クラッチ96を共に切操作し、このスリップ率が小さいときには、走行状態とし「第一変速モード」を設定し、スリップ率が大きいときには、作業状態とし「第二変速モード」を設定する。
これにより、オペレータの負担を軽減し、また運転に不慣れなオペレータでも前記同様トラクタ1の操作性を損なわず、また変速フィーリングの良い運転ができる。
トラクタの全体側面図。 変速装置の要部の断面図(1)。 変速装置の要部の断面図(2)。 動力伝達線図。 トラクタの一部油圧回路図。 コントローラの接続状態を示すブロック図。 変速段数とクラッチの作動の関係を説明する図。 操縦席側方の斜視図。 メータパネルの正面図。 変速制御の概要を示す制御フローチャート(1)。 変速制御の概要を示す制御フローチャート(2)。 主変速切替時のクラッチ通電パターンを示す図。 変速モード設定処理 (A)前後進クラッチの昇圧特性を示すタイムチャート。(B)変速装置の高低切替クラッチの昇圧特性を示すタイムチャート。
A 前進クラッチ
B 後進クラッチ
C 第一主変速装置の低速クラッチ
D 第一主変速装置の高速クラッチ
E 第二主変速装置の高速クラッチ
F 第二主変速装置の低速クラッチ
G 第三主変速装置の高速クラッチ
H 第三主変速装置の低速クラッチ
1 トラクタ
2 前輪
3 後輪
7 コントローラ
8 前後進切替装置
9 主変速装置
9a 第一主変速装置
9b 第二主変速装置
9c 第三主変速装置
10 前後進レバー
13 変速レバー
19 変速モード設定器(手動スイッチ)
28 遊星ギヤ機構
50 固定ドラム
55 中央の仕切壁
63 クラッチピストン(アクチュエータ)
86 副変速装置
250 固定ドラム
255 仕切壁
263 クラッチピストン(アクチュエータ)
264 クラッチピストン(アクチュエータ)

Claims (2)

  1. エンジン(5)の回転を、主クラッチ装置と、湿式多板形態の高低切替クラッチを有する複数の変速装置(9a,9b,9c)とを介して走行装置(2,3)へ伝達するトラクタであって、
    前記主クラッチ装置は、湿式多板形態の前進クラッチ(A)及び後進クラッチ(B)からなる前後進切替装置(8)で構成し、
    前記主クラッチ装置に、比例制御弁(121)への通電操作でクラッチディスクの圧着状態を調整するアクチュエータ(46)を備え、
    前記各変速装置(9a,9b,9c)に、比例制御弁(123,124,125)への通電操作でクラッチディスクの圧着状態を調整するアクチュエータ(63,263,264)を備え、
    第一主変速装置(9a)の第一高低切替クラッチ(C,D)と前後進クラッチ(A,B)は、固定ドラム(50)に対して中央の仕切壁(55)を挟んで前側に前後進クラッチ(A,B)を設け、仕切壁(55)の後側に第一高低切替クラッチ(C,D)を設ける構成とし、
    前進クラッチ(A)は後進クラッチ(B)よりも半径方向内側に配置して前進クラッチ(A)と後進クラッチ(B)は前後方向で重なる構成とし、第一主変速装置(9a)の低速クラッチ(C)は高速クラッチ(D)よりも半径方向内側に配置して低速クラッチ(C)と高速クラッチ(D)は前後方向で重なる構成とし、
    第一主変速装置(9a)の後方に第二主変速装置(9b)と第三主変速装置(9c)を備え、
    第二主変速装置(9b)の高低クラッチ(E,F)と第三主変速装置(9c)の高低クラッチ(G,H)は、固定ドラム(250)に対して中央の仕切壁(255)を挟んで前側に第二主変速装置(9b)の高低クラッチ(E,F)を設け、仕切壁(255)の後側に第三主変速装置(9c)の高低クラッチ(G,H)を設ける構成とし、
    第二主変速装置(9b)の低速クラッチ(F)は高速クラッチ(E)に対して半径方向外側に配置して低速クラッチ(F)と高速クラッチ(E)は前後方向で重なる構成とし、第三主変速装置(9c)の低速クラッチ(H)は高速クラッチ(G)に対して半径方向外側に配置して低速クラッチ(H)と高速クラッチ(G)は前後方向で重なる構成とし、
    前記第一主変速装置(9a)、第二主変速装置(9b)及び第三主変速装置(9c)に油圧が作用しない状態でも第一主変速装置(9a)、第二主変速装置(9b)及び第三主変速装置(9c)は所定速で動力伝達するように構成したことを特徴とするトラクタ。
  2. エンジン(5)の回転を、主クラッチ装置と、湿式多板形態の高低切替クラッチを有する複数の変速装置(9a,9b,9c)とを介して走行装置(2,3)へ伝達するトラクタであって、
    前記主クラッチ装置は、湿式多板形態の前進クラッチ(A)及び後進クラッチ(B)からなる前後進切替装置(8)で構成し、
    前記主クラッチ装置に、比例制御弁(121)への通電操作でクラッチディスクの圧着状態を調整するアクチュエータ(46)を備え、
    前記各変速装置(9a,9b,9c)に、比例制御弁(123,124,125)への通電操作でクラッチディスクの圧着状態を調整するアクチュエータ(63,263,264)を備え、
    第一主変速装置(9a)の第一高低切替クラッチ(C,D)と前後進クラッチ(A,B)は、固定ドラム(50)に対して中央の仕切壁(55)を挟んで前側に前後進クラッチ(A,B)を設け、仕切壁(55)の後側に第一高低切替クラッチ(C,D)を設ける構成とし、
    前進クラッチ(A)は後進クラッチ(B)よりも半径方向内側に配置して前進クラッチ(A)と後進クラッチ(B)は前後方向で重なる構成とし、第一主変速装置(9a)の低速クラッチ(C)は高速クラッチ(D)よりも半径方向内側に配置して低速クラッチ(C)と高速クラッチ(D)は前後方向で重なる構成とし、
    第一主変速装置(9a)の後方に第二主変速装置(9b)と第三主変速装置(9c)を備え、
    第二主変速装置(9b)の高低クラッチ(E,F)と第三主変速装置(9c)の高低クラッチ(G,H)は、固定ドラム(250)に対して中央の仕切壁(255)を挟んで前側に第二主変速装置(9b)の高低クラッチ(E,F)を設け、仕切壁(255)の後側に第三主変速装置(9c)の高低クラッチ(G,H)を設ける構成とし、
    第二主変速装置(9b)の低速クラッチ(F)は高速クラッチ(E)に対して半径方向外側に配置して低速クラッチ(F)と高速クラッチ(E)は前後方向で重なる構成とし、第三主変速装置(9c)の低速クラッチ(H)は高速クラッチ(G)に対して半径方向外側に配置して低速クラッチ(H)と高速クラッチ(G)は前後方向で重なる構成とし、
    前記第一主変速装置(9a)、第二主変速装置(9b)及び第三主変速装置(9c)に油圧が作動し続ける状態でも第一主変速装置(9a)、第二主変速装置(9b)及び第三主変速装置(9c)は所定速で動力伝達する構成としたことを特徴とするトラクタ。
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