以下、実施形態に係る移動棚装置及びその制御方法について説明する。
<全体説明>
まず、移動棚装置の全体構成について説明する。図1は移動棚装置を示す説明図である。
この移動棚装置は、所定の配列方向に沿って移動自在に配設された複数の移動棚10を備えている。より具体的には、移動棚10が配設されるエリアの床面には、所定方向に沿ってレール12が敷設されており(ここでは一対のレール12が並列状に敷設されている)、このレール12に沿って各移動棚10が往復移動自在に配設されている。
また、各移動棚10は、それらを所定の配列方向に沿って移動させるための棚移動部としての駆動用モータ29及び駆動車輪29aを備えている(図2又は図19参照)。そして、駆動用モータ29が各レール12上の各駆動車輪29aを駆動することにより、各移動棚10がレール12上を前記所定の配列方向に沿って往復移動する構成となっている。
これら各移動棚10を適宜移動させることにより、各移動棚10間、及び移動棚10とその近くの固定部材(ここでは壁面)等との間に所定幅の作業通路14を一又は複数形成できるようになっている。なお、各移動棚10に対してその側方又は両側方の作業通路14が対応づけられている。対応の具体例については後述する。
また、各移動棚10の一方側外面には、各移動棚10に対応する作業通路14の形成指示を受付ける作業通路形成指示受付部として通路形成スイッチ10aが設けられている。各通路形成スイッチ10aは、各作業通路14に対応づけられており、これらのうちの1つの通路形成スイッチ10aに通路形成指示を入力することによって、各移動棚10が移動し、当該1つの通路形成スイッチ10aに対応する作業通路14が形成される。
また、このように作業通路14が形成された状態で、他の作業通路14に対応づけられた通路形成スイッチ10aに通路形成指示を入力すると、既存の作業通路14を閉じるようにして、各移動棚10が移動し、当該次に操作された通路形成スイッチ10aに対応する作業通路14が形成される。
<電気的構成>
図2は移動棚装置の電気的構成を示すブロック図である。
この移動棚装置は、上記通路形成スイッチ10aで受付けられた指示等に応じて各移動棚10の移動制御を行う棚移動制御部として、通信ライン23を介して相互通信可能に接続された主制御部20と複数の副制御部24とを備えている。
主制御部20は、例えば、いずれか1つの移動棚10に設けられており、ここでは、配列方向に沿って一端側の移動棚10に設けられている。各副制御部24は、各移動棚10に設けられている。そして、主制御部20と各副制御部24とが相互通信を行いつつ、主制御部20が本移動棚装置全体の制御を行い、各副制御部24が各移動棚10の個別制御を行う。つまり、主制御部20と副制御部24とが連携し合って全体として各移動棚10の移動制御を行う移動制御部として機能するようになっている。勿論、上記例に限らず、上記主制御部20を省略し、各移動棚10に設けられた制御部が相互通信を行って互いに連携制御しつつ、本移動棚装置の全体移動制御及び各移動棚10の移動制御を行ってもよいし、また、本装置の全体制御及び各移動棚10の制御を集中して行う単一の集中制御部を、いずれか一つの移動棚10或はその他の箇所に設けてもよい。
主制御部20は、例えば、CPU,ROM,RAM等によって構成されており、予め格納されたソフトウェアプログラムによって本装置全体の動作制御を行う。また、主制御部20は、記憶部21に接続されている。記憶部21には、各移動棚10の全体動作制御等に供される諸情報、例えば、各移動棚10の位置情報や実際に形成されている作業通路14の位置情報等が格納される。記憶部21における位置情報の更新は、例えば、後述する作業通路検出部27や棚近接スイッチ28等からの出力に基づいてなされる。
この主制御部20は、少なくとも通路形成スイッチ10aで受付けられた指示に基づいて、各移動棚10の移動内容(移動対象、移動方向)を決定し、当該決定内容に応じた指示を与える処理を実行する。さらに、主制御部20は、各移動棚10を略同時に停止させる指示を与える処理を実行する。これらの処理については後に詳述する。
副制御部24は、例えば、CPU,ROM,RAM等により構成されており、予め格納されたソフトウェアプログラムによって各移動棚10の移動制御を行う。
より具体的には、副制御部24は、通信ライン23を介して他の副制御部24及び主制御部20と通信可能とされている。また、副制御部24には、通路形成スイッチ10a,作業通路検出部27及び棚近接スイッチ28が接続されており、それらからの信号が入力されるようになっている。また、副制御部24からの制御信号が駆動用モータ29側に出力される構成となっている。そして、副制御部24は、主制御部20からの指令に応じて、図示省略の駆動回路を通じて駆動用モータ29を駆動することにより、移動棚10を移動させると共に、主制御部20からの指令に応じて、移動棚10の移動を停止させる。
各移動棚10に設けられた複数の副制御部24は全体として、移動対象となる少なくとも2つの移動棚10を、移動方向後側から移動方向前側の順で、時間差をあけて順次を開始させる処理を実行する。各副制御部24の処理については後に詳述する。
通路形成スイッチ10aは、一般的なプッシュスイッチ等により構成されており、各作業通路14に対応して設けられている。そして、この通路形成スイッチ10aを操作すると、その操作信号が上記副制御部24に与えられて、作業通路の形成指示が受付けられるようになっている。この通路形成スイッチ10aは、前記所定の配列方向に沿った一端側の移動棚10については、その両側の作業通路14に対応して2つ設けられている。その他の移動棚10については、前記所定の配列方向に沿って一方側の作業通路14に対応して1つの通路形成スイッチ10aが設けられている。
棚近接スイッチ28は、各移動棚10が隣の移動棚10や壁面、さらには、他の異物と近接したか否かを検出するスイッチであり、例えば、リミットスイッチ等を利用した構成により実現される。そして、各移動棚10の移動中に、何らかの物体への近接が検出されると、その検知結果が副制御部24に与えられるようになっている。この棚近接スイッチ28は、各作業通路14に対応する部分での隙間の有無を検出する隙間検出部として機能する。なお、この隙間には、通常に作業通路14を形成している状態で移動棚10間に生じる僅かな遊びないし余裕は含まない。この棚近接スイッチ28は、リミットスイッチを利用した構成以外に、マグネットセンサや他の接触又は非接触式近接センサ、光センサ等を利用した構成であってもよい。
これらの棚近接スイッチ28は、各移動棚10が所定の配列方向に沿って双方向に移動する際に、隣の移動棚10等への近接を検出できるように、所定の配列方向に沿って移動棚10の両側に設けられている。
作業通路検出部27は、移動棚10に対応する所定幅の作業通路14が形成されたか否かを検出する手段である。ここでは、作業通路検出部27は、2つの棒状部材を回動自在に連結し、その両端部を移動棚10の上部に回動自在に連結し、2つの棒状部材がなす角度をエンコーダ等を利用して検出する構成とされている(図1参照)。この作業通路検出部27によると、隣合う移動棚10間の間隔が変ると、それに応じて2つの棒状部材がなす角度が変る。そこで、2つの棒状部材がなす角度をエンコーダやリミットスイッチ等を利用して検出し、その検出結果に応じて隣合う移動棚10間に所定幅の作業通路14が形成されたか否かを検出する構成としている。
なお、配列方向に沿って一端側の移動棚10に関しては、所定の配列方向に沿った両側で作業通路14の形成の有無を検出する必要があるため、所定の配列方向に沿って両側で2つの作業通路検出部27が設けられている。その他の移動棚10に関しては、所定の配列方向に沿った一方側で作業通路14の形成の有無を検出するため1つの作業通路検出部27が設けられている。
そして、上記のように棚近接スイッチ28及び作業通路検出部27からの各検出信号と、通路形成スイッチ10aからの通路形成指示信号とが、副制御部24に入力されると共に、通信ライン23を介して主制御部20にも与えられる。
<処理内容説明>
上記移動棚装置の処理内容について説明する。この処理内容を説明するにあたって、理解を容易にするため、移動棚10と作業通路14と通路形成スイッチ10aと作業通路検出部27と棚近接スイッチ28との対応関係についてより具体的に説明しておく。図3はそれらの対応関係を説明するための図である。
すなわち、複数(図3では6個のみ図示)移動棚10(1),10(2),・・・,10(6),・・・は、所定の配列方向に沿って移動自在に配設されている。なお、各移動棚を示す符号「10」の後ろに付された括弧書き内の番号は、所定の配列方向に沿って一方側から順に(図3の右から左に向う順に)に昇順で付されている。下記の作業通路14や通路形成スイッチ10a、作業通路検出部27、棚近接スイッチ28についても同様にして括弧書き内の番号が付されている。
また、各移動棚10(1),10(2),・・・,10(6),・・・に対応する所定幅の作業通路14(0),14(1),14(2),・・・,14(6),・・・を1つ又は複数形成できるようになっている。
上記作業通路14(0),14(1),14(2),・・・,14(6),・・・は、各移動棚10(1),10(2),・・・,10(6),・・・間及び移動棚10(1)と周りの固定部材(ここでは壁面、固定フレーム等の場合もある)との各間に形成される。つまり、作業通路14(0),14(1),14(2),・・・,14(6),・・・は、移動棚10(1),10(2),・・・,10(6),・・・の総数に1つ加算した数形成される。なお、図3ではこれらの作業通路14(0),14(1),作業通路14(2),・・・,14(6),・・・が形成された位置又はその形成予定位置にそれらの符号を付している。
これらの作業通路14(0),14(1),14(2),・・・,14(6),・・・はそれぞれ各移動棚10(1),10(2),・・・,10(6),・・・に対応づけられている。ここでは、作業通路14(0),14(1)が移動棚10(1)に対応づけられており、作業通路14(2)は移動棚10(2)に、作業通路14(3)は移動棚10(3)に、以下同様にして対応づけられている。つまり、各移動棚10(1),10(2),・・・,10(6),・・・とその一方側の隣の作業通路14(1),14(2),・・・,14(6),・・・とが相互に対応づけられており、一端部の移動棚10(1)に関してはそれに加えて他方側の隣の作業通路14(0)も対応づけられている。
なお、上記例では、全ての移動棚10(1),10(2),・・・,10(6),・・・が移動する例であるが、配列方向の端部側の移動棚10(1)が固定棚であってもよい。例えば、配列方向一端側の移動棚10(1)が固定棚である場合には、上記作業通路14(0)及びその対応づけは勿論省略される。
また、各移動棚10(1),10(2),・・・,10(6),・・・の一方側外面には、通路形成スイッチ10a(0),10a(1),10a(2),・・・,10a(6),・・・が設けられている。通路形成スイッチ10a(0),10a(1)は、配列方向一端側の移動棚10(1)に設けられており、通路形成スイッチ10a(2),・・・,10a(6),・・・は、それぞれ移動棚10(2),・・・,10(6),・・・に設けられている。各通路形成スイッチ10a(0),10a(1),10a(2),・・・,10a(6),・・・は、上記各作業通路14(0),14(1),14(2),・・・,14(6),・・・にそれぞれ対応づけられている。そして、上記したように、各通路形成スイッチ10a(0),10a(1),10a(2),・・・,10a(6),・・・のうちの一つを操作することで、それに対応する作業通路14(0),14(1),14(2),・・・,14(6),・・・が形成されるように、各移動棚10(1),10(2),・・・,10(6),・・・の移動制御がなされる。
また、上記各作業通路14(0),14(1),14(2),・・・,14(6),・・・に対応して、作業通路検出部27(0),27(1),27(2),・・・.27(6),・・・及び棚近接スイッチ28(0),28(1),28(2),・・・,28(6),・・・が設けられている。なお、図3においては、本制御を説明するにあたって必要な棚近接スイッチ28(0),28(1),28(2),・・・,28(6),・・・を図示し、他を省略している。これらの作業通路検出部27(0),27(1),27(2),・・・.27(6),・・・及び棚近接スイッチ28(0),28(1),28(2),・・・,28(6),・・・の検出信号は、それぞれに対応する各作業通路14(0),14(1),14(2),・・・,14(6),・・・に対応づけられた各移動棚10(1),10(2),・・・,10(6),・・・の副制御部24に与えられる。
そして、主制御部20は、作業通路検出部27(0),27(1),27(2),・・・.27(6),・・・及び棚近接スイッチ28(0),28(1),28(2),・・・,28(6),・・・の検出結果に基づいて、各作業通路14(0),14(1),14(2),・・・,14(6),・・・に対応する部分における、所定幅の作業通路14(0),14(1),14(2),・・・,14(6),・・・形成の有無及び隙間の有無を判別する。そして、この判別結果及び通路形成スイッチ10a(0),10a(1),10a(2),・・・,10a(6),・・・で受付けられた指示内容に基づいて、所望の位置に作業通路14(0),14(1),14(2),・・・,14(6),・・・を形成するように、各移動棚10(1),10(2),・・・,10(6),・・・の移動内容を決定する。
上記を前提にして、本移動棚装置の動作について説明する。なお、以下の説明では、移動棚10、作業通路14、通路形成スイッチ10a、作業通路検出部27、棚近接スイッチ28に関し、説明の必要性に応じて括弧書き内の番号を付し或は省略する。
まず、図4を参照して主制御部20の処理内容について説明する。
すなわち、いずれかの作業通路14が形成されている状態で、作業者が通路形成スイッチ10aのうちのいずれか一つを操作することで、ステップS1に示すように、いずれかの作業通路14に対する通路形成指示が受付けられて主制御部20に与えられる。
次ステップS2では、主制御部20は、上記通路形成指示に基づいて移動対象となる移動棚10及び移動方向を決定する。この決定処理はより具体的には次のようにしてなされる。すなわち、主制御部20は、通路形成スイッチ10aで受付けられた指示に基づいて形成すべき作業通路14の位置を特定すると共に、閉じるべき作業通路14の位置を特定する。
既存の作業通路14の位置は、作業通路検出部27からの出力等に基づいて決定され、その中から閉じるべき作業通路14が特定される。例えば、既存の作業通路14が単一の場合には、当該単一の既存の作業通路14が閉じるべき作業通路14として特定される。また、例えば、既存の作業通路が複数の場合には、そのうち、形成すべき作業通路14に最も近い位置のものが、閉じるべき作業通路14として特定される。ここで、最も近いという判断は、例えば、実際の距離ではなく、介在する移動棚10の数が最も少ないという基準で判断される。既存の作業通路14が左右で等距離にある場合には、どちらを選択してもよい。
そして、指示された形成すべき作業通路14と閉じるべき既存の作業通路14との間に存在する移動棚10を移動対象として決定する。また、移動対象となる移動棚10に対して、閉じるべきとして特定された既存の作業通路14を閉じる方向を、移動方向として決定する。
なお、このようにして決定された各移動棚10の移動内容としては、移動対象となる移動棚10が単一の場合と、複数の場合とが含まれる。後者の場合が、複数の移動棚10のうち少なくとも2つを移動対象として、同一の移動方向に移動させるように移動処理内容が決定された場合に該当する。後者の場合をより具体的に説明すると、閉じるべき既存の作業通路14と形成予定となる作業通路14との間に少なくとも2つの移動棚10が存在し、その少なくとも2つの移動棚10を移動対象として、既存の作業通路14を閉じるように同一の移動方向に移動させるように移動処理内容が決定された場合である。
次に、ステップS3において、移動対象となる移動棚10の副制御部24に対して移動方向を特定して移動指示を与える。これにより、移動対象となる移動棚10が移動することになる。なお、各移動棚10の移動タイミングについては次に説明する。
この後、ステップS4において、移動対象となる移動棚10における全ての棚近接スイッチ28がオンになったか否かを判別する。ここでオンになったか否かの対象となる棚近接スイッチ28は、閉じるべきとされた既存の作業通路14及び移動対象とされた移動棚10間の作業通路14の全てに対応する棚近接スイッチ28である。そして、これらの棚近接スイッチ28からの出力に基づいて、閉じるべきとされた既存の作業通路14及び移動対象とされた移動棚10間の作業通路14のいずれかに隙間があると判断された場合には、ステップS4を繰返す。これにより、移動対象となった移動棚10の移動が継続される。一方、閉じるべきとされた既存の作業通路14及び移動対象とされた移動棚10間の作業通路14の全てに対応する隙間が無いと判断されると、次ステップS5に進む。
ステップS5では、移動対象とされた移動棚10全てに停止指示を与え、処理を終了する。
次に、図5を参照して副制御部24の処理内容について説明する。
すなわち、いずれかの作業通路14が形成されている状態で、ステップS11において、主制御部20からの移動指示の有無が判断される。主制御部20からの移動指示が無い場合、ステップS11を繰返す。主制御部20から移動方向を含む移動指示が与えられると、ステップS12に進む。
ステップS12では、移動順に応じた遅延時間をセットする。
この移動順は、移動対象とされた移動棚10のうち移動方向後側(形成予定となる作業通路14側)から移動方向前側(閉じられる予定である既存の作業通路14側)に向う順で決定される。つまり、移動対象とされた移動棚10のうち最も移動方向後側(形成予定となる作業通路14側)に存在するものが1番目であり、これよりも移動方向前側(閉じられる予定である既存の作業通路14側)のものが2番目であり、以下同様にして、移動対象とされた移動棚10に対して移動順が決定される。この移動順は、主制御部20が決定して副制御部24に与えるものであっても、副制御部24が上記指示された移動内容(移動対象及び移動方向を含む指示)に基づいて決定するものであってもよい。
また、このように決定された移動順位に応じて、遅延時間が決定される。この遅延時間は、移動順が大きくなるほど、長い時間となるように、換言すれば、遅れて移動を開始するように決定される。つまり、移動対象となる移動棚10が少なくとも2つ存在し、その移動順がn番であるものの遅延時間をT(n)(秒)(但し、nは1以上でかつ移動対象となる移動棚10の個数Nよりも小さい)とすると、全てのnに対して、T(n−1)<T(n)となるように設定される。
このような遅延時間T(n)(秒)は、例えば、予め設定された所定の基準遅延時間Ta(秒)に(n−1)を乗じることで求められる。この場合、移動順1番目の移動棚10の遅延時間T(1)=Ta×0(秒)、移動順2番目の移動棚10の遅延時間T(2)=Ta×1(秒)、移動順3番目の移動棚10の遅延時間T(3)=Ta×2(秒)、以下同様にして遅延時間T(n)(秒)が求められる。本実施形態では、このようにして遅延時間T(n)(秒)が設定される例で説明する。
もっとも、遅延時間T(n)の設定例は上記例に限られない。例えば、遅延時間T(n)(秒)は、nを変数とする関数が予め設定されており、当該関数に基づいて決定されるものであってもよい。また、遅延時間T(n)(秒)は、nに遅延時間T(n)(秒)を対応づけたテーブルが事前に準備されており、当該テーブルを参照して決定されるものであってもよい。
ところで、上記基準遅延時間Taは、各移動棚10が移動する際の時間差を示している。このような時間差は、各移動棚10間に生じる隙間の寸法や移動棚10の移動速度等を考慮して、当該隙間を解消できる程度に決定される。時間差は、最大でも、各移動棚10間に生じ得ると想定される最大寸法の隙間を、移動棚10の移動速度を考慮して解消できる程度に設定されることが好ましい。一般的な移動棚装置では、このような時間差は、好ましくは、略0.003msであり、大きくとも略2秒である。このような時間差は、各移動棚装置の実際の動作等を考慮して実験的、経験的に決定されてもよい。
ステップS12で移動順に応じた遅延時間T(n)がセットされると、次ステップS13に進む。ステップS13では、遅延時間T(n)が経過したか否かが判断される。遅延時間T(n)経過前と判断されるとステップS13を繰返し、遅延時間T(n)が経過したと判断されると、ステップS14に進む。
ステップS14では、副制御部24は駆動用モータ29を駆動して移動棚10の移動を開始させ、次ステップS15に進む。
ステップS15では、主制御部20からの停止指令の有無が判断される。停止指令が無いと判断されると、移動を継続する。一方、停止指令有りと判断されると、ステップS16に進む。
ステップS16では、副制御部24は駆動用モータ29の駆動を停止して移動棚10の移動を停止させる。そして、処理を終了する。
このように、図5に示す処理が各移動棚10の副制御部24で実行されると、移動対象となる移動棚10は、主制御部20から移動指示が与えられた後、それぞれ遅延時間T(n)経過後に移動を開始することになる。ここで、少なくとも2つの移動棚10が移動対象とされた場合、移動方向後側から移動方向前側の順で、時間差(基準遅延時間Ta(秒))をあけて順次移動を開始することになる。
上記の処理内容を移動棚装置全体の処理としてまとめると、移動対象となる少なくとも2つの移動棚10のうち移動方向後側から移動方向前側に向けてn−1番目(但し、nは1以上でかつ移動対象となる移動棚10の個数Nより小さい整数)のものの移動を開始するステップと、当該移動対象とされた移動棚10のうち移動方向後側から移動方向前側に向けてn番目のものの移動を、前記n−1番目の移動棚の移動開始時点よりも遅れて開始するステップとを備えているということになる。
そして、主制御部20から移動対象とされた移動棚10に移動停止指令が与えられると、当該移動対象とされた移動棚10は略同時に移動を停止することになる。ここで、略同時とは、移動前に生じていた移動棚10間の隙間が、停止後に小さくなっている程度であればよいとする意味であり、各移動棚10での通信時間差や処理時間差、駆動用モータ29の停止動作による時間差等、僅かな時間差を有して停止する場合をも含む。
以下では、各移動棚10の具体的な移動動作例について説明する。以下の図6〜図17では、5つの移動棚10(1),・・・、10(5)に着目し、作業通路14(0)が形成されている状態において、移動棚10(5)の通路形成スイッチ10a(5)が操作されて、作業通路14(5)を形成するという状況で説明する。また、図6〜図17の各図の下方両端部に付された三角の記号は、上記状況において、移動棚10(1),・・・、10(5)の移動範囲両端を示している。
まず、図6及び図7は、上記状況における各移動棚10(1),・・・、10(5)の動作順を概略的に示す図である。
すなわち、図6に示すように、作業通路14(0)が形成され、移動棚10(1),・・・、10(5)が近接した状態で整列配置されている。ここで、各移動棚10(1),・・・、10(5)間には、それぞれ隙間が生じている。
この状態で、移動棚10(5)の通路形成スイッチ10a(5)が操作され、作業通路14(5)を形成すべき指示が入力される。
すると、移動対象として移動棚10(1),・・・、10(5)が決定され、また、移動方向Aは、作業通路14(0)を閉じる方向、即ち、図における右方向と決定される。そして、その移動方向Aを含む移動指示が、移動対象とされた10(1),・・・、10(5)に与えられる。
すると、移動順1番目(つまり、n=1)の移動棚10(5)は、Ta×(1−1)=0(秒)から、つまり、移動指示後、即移動を開始する。続いて、移動順2番目(つまり、n=2)の移動棚10(4)は、Ta×(2−1)=Ta(秒)後に移動を開始する。同様に、移動順3番目(つまり、n=3)の移動棚10(3)は、Ta×2(秒)後に移動を開始し、移動順4番目(つまり、n=4)の移動棚10(2)は、Ta×3(秒)後に移動を開始し、移動順5番目(つまり、n=5)の移動棚10(1)は、Ta×4(秒)後に移動を開始する。
上記のような動作によって各移動棚10(1),・・・、10(5)間の隙間を小さくできる理由について図8〜図17を参照してより具体的に説明する。図8及び図9はT((1)(秒)経過後から(移動開始後)からT(2)(秒)経過前の状態、図10及び図11はT(2)(秒)経過後からT(3)(秒)経過前の状態、図12及び図13はT(3)(秒)経過後からT(4)(秒)前の状態、図14及び図15はT(4)(秒)経過後からT(5)(秒)経過前の状態、図16はT(5)(秒)経過後から通路形成完了前の状態、図17は通路形成完了後の状態をそれぞれ示している。なお、初期状態において(図6参照)、移動棚10(1)と移動棚10(2)間の隙間と、移動棚10(4)と移動棚10(5)間の隙間は、基準遅延時間Ta(秒)ぶんの各移動棚10(1),・・・、10(5)の移動量よりも小さく、移動棚10(3)と移動棚10(4)間の隙間は基準遅延時間Ta(秒)ぶんの各移動棚10(1),・・・、10(5)の移動量とほぼ同じで、移動棚10(2)と移動棚10(3)間の隙間は基準遅延時間Ta(秒)ぶんの各移動棚10(1),・・・、10(5)の移動量よりも大きいとする。
そして、移動棚10(5)の通路形成スイッチ10a(5)が操作されると、図8に示すように、移動順1番目(つまり、n=1)の移動棚10(5)は、即移動を開始する。すると、図9に示すように、移動開始時であるT(1)(秒)経過後からT(2)秒経過前における移動棚10(5)の移動によって、移動棚10(5)が移動棚10(4)に当接し、それらの間の隙間が解消される。
そして、移動開始後T(2)(秒)経過すると、図10に示すように、移動順2番目(n=2)の移動棚10(4)が移動を開始する。これにより、移動棚10(5),10(4)がそれらの間の隙間を無くした状態で移動する。すると、図11に示すように、移動棚(4)と移動棚10(3)間の隙間が徐々に小さくなる。
そして、移動開始後T(3)(秒)経過すると、図12に示すように、移動棚10(4)が移動棚10(3)に当接し、それらの間の隙間が解消される。これとほぼ同時に、移動順3番目(n=3)の移動棚10(3)が移動を開始する。すると、図13に示すように、移動棚10(5),10(4),10(3)がそれらの間の隙間を無くした状態で移動する。そして、移動棚(3)と移動棚10(2)間の隙間が徐々に小さくなる。
さらに、移動開始後T(4)(秒)経過すると、図14に示すように、移動順4番目(n=4)の移動棚10(2)が移動を開始する。これにより、移動棚10(5),10(4),10(3),10(2)が、移動棚(3)と移動棚10(2)間に僅かの隙間を保つと共に、他間では隙間を解消した状態で移動する。すると、図15に示すように、移動棚10(2)が移動棚10(1)に当接し、それらの間の隙間が解消される。
さらに、移動開始後T(5)(秒)経過すると、図16に示すように、移動順5番目(n=5)の移動棚10(1)が移動を開始する。これにより、移動棚10(5),10(4),10(3),10(2),10(1)が、移動棚(3)と移動棚10(2)間に僅かの隙間を保つと共に、他間では隙間を解消した状態で移動する。
最後に、作業通路14(0)が閉じられる程度に移動棚10(5),10(4),10(3),10(2),10(1)が移動し、閉じるべきとされた既存の作業通路14(0)及び移動対象とされた移動棚10(5),10(4),10(3),10(2),10(1)の全てに対応する隙間が無いと判断されると、移動棚10(5),10(4),10(3),10(2),10(1)は移動を停止する。
ここで、移動棚(3)と移動棚10(2)間の隙間が、当該隙間に対応する棚近接スイッチ28をオンにできる程度、つまり、隙間が無いと判断される程度の隙間であった場合には、当該作業通路14(0)の隙間が無くなったと判断された時点で、移動棚10(5),10(4),10(3),10(2),10(1)は移動を停止する。
一方、移動棚(3)と移動棚10(2)間の隙間が、当該隙間に対応する棚近接スイッチ28をオンにできない程度、つまり、隙間が有ると判断される程度の隙間であった場合には、移動棚10(1)が当該作業通路14(0)側の壁面等に押し当るので、移動棚10(2),10(1)は停止しつつ、移動棚10(5),10(4),10(3)の移動が継続する。そして、移動棚(3)と移動棚10(2)間の隙間が無くなったと判断された時点で、移動棚10(5),10(4),10(3),10(2),10(1)は移動を停止する。
なお、上記の停止状態では、移動棚(3)と移動棚10(2)間には、棚近接スイッチ28の遊び分の隙間が生じ得る。しかしながら、当該隙間は、初期状態よりも小さいし、また、上記動作を繰返すことにより小さくなり、やがては無くなる。
また、上記各移動棚10(5),10(4),10(3),10(2),10(1)の移動途中において、移動棚10(5),10(4),10(3),10(2),10(1)間の隙間が、基準遅延時間Ta(秒)ぶんの各移動棚10(1),・・・、10(5)の移動量よりも小さい場合、所定の移動順における移動棚10(5),10(4),10(3),10(2),10(1)は、その移動途中で停止中である次順の移動棚10(5),10(4),10(3),10(2),10(1)に当接してしまう。この場合、移動を開始した移動棚10(5),10(4),10(3),10(2),10(1)は、次順の移動棚10(5),10(4),10(3),10(2),10(1)に当接して駆動を継続されつつ停止する構成であっても、或は、次順の移動棚10(5),10(4),10(3),10(2),10(1)を押しつつ移動する構成であってもよい。
以上のように構成された移動棚装置及びその制御方法によると、移動対象となる少なくとも2つの移動棚10を、移動方向A後側から移動方向A前側の順で、時間差をあけて順次移動を開始させる。このため、移動方向A前側の移動棚10が先行移動するぶん、各移動棚10間の隙間が解消され、各移動棚10間の隙間をなるべく小さくすることができる。これにより、形成される作業通路14の幅を広く使える。また、移動棚10の台数が多い場合でも、各移動棚10間の隙間が作業通路14を圧迫することなく、広い正規幅の作業通路14を確保できる。
特に、作業通路14の形成指示を受付けた場合に、既存の作業通路14と形成予定となる作業通路14間の少なくとも2つの移動棚10に関して、上記動作を行わせているため、作業通路14形成の度に隙間を解消することができる。
そして、移動開始後、上記各移動棚10を略同時に停止させるので、各移動棚10間の隙間をなるべく小さくした状態を保って停止させることができる。
特に、既存の作業通路14及び移動対象となる少なくとも2つの移動棚10の間の作業通路14の全てに対応する隙間が無いと判断されたときに、各移動棚10を略同時に停止させているので、各移動棚10間の隙間をなるべく小さくした状態、即ち、少なくとも棚近接スイッチ28によって隙間が無いと判断される程度に近接した状態で、各移動棚10を停止させることができる。
なお、各移動棚10を停止させるタイミングは上記例に限られない。例えば、図18のステップS24に示すように、作業通路検出部27からの出力に基づいて、所望位置に形成予定となる作業通路14が所定幅で形成されたと判断されたときに、移動対象とされた移動棚10を略同時に停止させるようにしてもよい。なお、図18に示すフローチャートは、図4のフローチャートに対して、ステップS4がステップS24に入れ替っているだけで、他は同じである。
この場合、各移動棚10間の隙間をなるべく小さくした状態を保ったままで、所望位置でより確実に所定幅の作業通路14を形成することができる。
また、この移動棚装置及びその制御方法では、棚移動部としての駆動用モータ及び駆動車輪29aが、所定の配列方向に略直交する方向において複数箇所(ここでは2箇所)で各移動棚10を移動駆動可能な構成を採用することで、移動棚10が斜行した場合にこれを補正することが可能となる。
すなわち、図19〜図21に示すように、移動棚10に2つの駆動車輪29aが設けられ、それぞれの駆動車輪29aがレール12上を走行可能とされている。これらの駆動車輪29aは、例えば、単一の駆動用モータ29によって正逆両方向に回転駆動可能とされている。
そして、図19に示すように、1つの移動棚10が配列方向(レール12の延在方向)に対して傾斜しているとする。この状態で、図示された2つの移動棚10を移動対象として、移動方向Aに向けて移動するように移動内容が決定されたとする。
すると、図20に示すように、まず、移動方向Aの後側の移動棚10が移動を開始し、次順の移動棚10に当接する。すると、当該移動棚10の2つの駆動車輪29aのうち次順の移動棚10に近いものはレール12上を滑る等して、移動棚10の一側部側の移動が抑制される。同時に、当該移動棚10の2つの駆動車輪29aのうち次順の移動棚10から遠いものは継続してレール12上を移動するので、移動棚10の他側部側の移動は継続される。これにより、図20に示すように、移動棚10の他側部が次順の移動棚10に押し当てられるまで移動を継続する。このようにして、先に移動を開始した移動棚10が傾斜している場合には、次に移動すべき移動棚10に押し当てられるので、当該次に移動すべき移動棚10の姿勢に倣って姿勢変更する。これにより、移動棚10が斜行している場合に、これを補正することが可能となる。
なお、配列方向に略直交する方向で3箇所に駆動車輪29aが設けられた場合や、複数の駆動車輪29aがそれぞれ別々のモータ等で駆動される場合にも、上記と同様に斜行補正できる。
本実施形態では、各作業通路14に対応する通路形成スイッチ10aが設けられている例で説明したが、必ずしもその必要はない。1つの入力受付部でいずれかの作業通路14の形成位置を特定して入力してもよい。
また、上記実施形態では、既存の作業通路14を閉じて、他の作業通路14を形成する場合で説明したが必ずしもその必要はない。各移動棚10の移動に関する指示を受付ける指示受付部が存在し、そこで受付けられた指示に応じて、少なくとも2つの移動棚を同一の移動方向に移動させる場合において、上記のように順次移動を開始させることで、各移動棚10間の隙間を小さくすることができる。