JP5014329B2 - 防振装置 - Google Patents

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Description

本発明は、エンジン等の振動発生部からの振動を吸収して車体等の振動受部への振動伝達を防止する液体封入式の防振装置に関し、例えば一般産業機械或いは、自動車におけるエンジンマウント等として用いられるものである。
例えば、車両の振動発生部となるエンジンと、振動受部となる車体との間にはエンジンマウントとしての防振装置が配設されており、この防振装置はエンジンが発生する振動を吸収し、車体側への振動の伝達を抑制している。このような防振装置としては、弾性体、受圧液室及び副液室等が内部に設けられると共に、これら受圧液室と副液室との間が制限通路とされるオリフィスを介して互いに連通した液体封入式のものが知られている。
このような液体封入式の防振装置によれば、搭載されたエンジンが作動して振動が発生した場合には、弾性体の制振機能及び、受圧液室と副液室との間を連通するオリフィス内で流通する液体の粘性抵抗等によって振動を吸収することにより、車体側への振動の伝達を抑制している。
そして、このような防振装置の従来技術として下記の特許文献に示されるような構造が考えられ、これらの特許文献の内の例えば特許文献1に示す防振装置に基づき、以下に従来技術を説明する。
つまり、この防振装置では、中間筒の内側にゴム材等による弾性体が接着されて配置されていて、防振装置の軸方向である上下方向の振動を減衰する為の受圧液室である上液室及びこの上液室に連通する副液室である下液室を有している。
さらにこれら液室だけでなく、複数の周液室が存在していて、上下方向と交差する前後方向或いは左右方向の振動をこれら複数の周液室で減衰するような構造にされている。
そして、これら周液室を弾性体の隔壁部で仕切る構造ともされている。
特開2004−68938号公報
しかし、上記のような構造の従来の防振装置では、弾性体の隔壁部と中間筒との間が接着された構造となっている為、軸方向に沿って大振幅の振動が入力されて弾性体が大きく変形した時に、このゴム製の隔壁部に応力が集中するのに伴い、歪みが大きくなり過ぎてこの部分が疲労し易く、防振装置の耐久性が低い欠点を有していた。
また、防振装置がエンジンの分担加重を受ける場合、中間筒と、弾性体の隔壁部との間の加硫接着面に応力が集中し、この部分に大きな歪みが生じ易くなるため、加硫接着面及びその近傍の隔壁部の耐久性を得難い欠点が指摘されている。
本発明は上記事実を考慮し、隔壁部への応力の集中を防いで、この部分の歪みが大きくなり過ぎないようにすることにより耐久性を向上した防振装置を提供することが目的である。
請求項1に係る防振装置は、振動発生部又は振動受部の一方に連結され且つ、筒状に形成された第1取付部材と、
振動発生部又は振動受部の他方に連結され且つ、第1取付部材の内周側に配置された第2取付部材と、
第1取付部材の内周面に嵌合され且つ、半径方向の内外に貫通する開口を有した中間筒と、
中間筒と第2取付部材との間に配置されて中間筒と第2取付部材とを弾性変形可能に連結する弾性体と、
中間筒の内周側に配設されると共に、内壁の少なくとも一部が弾性体により形成されて液体が充填される第1受圧液室と、
第1受圧液室と連通され且つ、隔壁の一部が変形可能に形成されて液圧変化に応じて内容積が拡縮可能とされる副液室と、
第2取付部材を挟んだ弾性体の部分に形成され且つ、液体が充填される一対の第2受圧液室と、
中間筒の開口に対応する弾性体の部分に配置されて一対の第2受圧液室間を区画する隔壁部と、
を有することを特徴とする。
請求項1に係る防振装置の作用を以下に説明する。
本請求項では、第1取付部材又は第2取付部材の何れか一方に振動発生部側から振動が防振装置に入力されると、この入力振動により第1取付部材の内周面に嵌合された中間筒と第2取付部材との間に配置された弾性体が弾性変形し、この弾性体の内部摩擦等に基づく減衰作用によって振動が吸収され、振動受け部側へ伝達される振動が低減される。
このとき、入力振動が防振装置の軸方向と略一致する主振幅方向の振動であっても、この主振幅方向と略直交する副振幅方向の振動であっても、この弾性体の減衰作用により、その一部が吸収される。
また、第1取付部材の内周面に嵌合された中間筒の更に内周側に、内壁の少なくとも一部を弾性体により形成した第1受圧液室が配設され、この第1受圧液室が、隔壁の一部を変形可能に形成した副液室に連通されていることにより、第1取付部材又は第2取付部材に振動発生部側から主振幅方向に沿った振動が入力された場合、弾性体がこの主振幅方向に沿って弾性変形すると共に第1受圧液室の内容積を拡縮させる。
この為、液圧変化に応じて内容積が拡縮可能とされる副液室と第1受圧液室とを液体が相互に流通することになるのに伴い、入力振動に同期してこの液体に共振現象が生じるので、この液体の共振現象に伴う圧力変化及び粘性抵抗によって、主振幅方向に沿った入力振動を効果的に吸収することができる。
さらに、第1取付部材又は第2取付部材に振動発生部側から副振幅方向に沿った振動が入力した場合は、弾性体が副振幅方向に沿って弾性変形するのに伴い、第2取付部材を挟んだ弾性体の部分に形成されて液体が充填される一対の第2受圧液室の内容積が交互に拡縮する。この結果、一対の第2受圧液室の相互間或いは副液室との間で液体が相互に流通して、液体の共振現象に伴う圧力変化及び粘性抵抗によって、副振幅方向に沿った入力振動も吸収できる。
他方、中間筒を半径方向に貫通する開口がこの中間筒に設けられていて、この開口に対応する弾性体の部分に、一対の第2受圧液室間を区画する隔壁部が、開口のはめ込み姿勢で配置されている。
この結果、一対の第2受圧液室を仕切るための隔壁部が中間筒に対して非接着の構造になり、弾性体の隔壁部が大変形するような振動が振動発生部側から防振装置に入力された場合でも、隔壁部が中間筒に対して非接着となっていることから、隔壁部が自由に変形して応力を緩和し、隔壁部に疲労が生じないようになるのに伴い、防振装置の耐久性が向上する。
請求項2に係る防振装置は、請求項1に記載した装置において、一対の第2受圧液室のそれぞれが副液室に連通されるという構成を有している。
つまり、一対の第2受圧液室の各々と副液室との間がそれぞれが連通されることで、入力振動に同期してこれら一対の第2受圧液室と副液室との間を相互に流通する液体に共振現象が生じるようになり、この液体の共振現象に伴う圧力変化及び粘性抵抗によって、副振幅方向に沿った入力振動も効果的に吸収できる。
請求項3に係る防振装置を以下に説明する。
本請求項に係る防振装置は、請求項1もしくは2に記載した装置と同一の作用を奏するが、本請求項では、弾性体の隔壁部が中間筒の開口から第1取付部材側に突出するように開口にはまり込んでいるという構成を有しており、第1取付部材側に突出するように開口にはまり込んだ弾性体の隔壁部が、第1取付部材或いは第1取付部材との間に介在される部材に当接してシールする機能を発揮ことで、一対の第2受圧液室内の液体の漏れ出しが確実に防止される。
請求項4に係る防振装置は、請求項1〜3のいずれかに記載の装置と同一の作用を奏する。
但し、本請求項では、開口が中間筒に一対形成され、弾性体の隔壁部の両端部がこれら一対の開口にそれぞれはまり込んでいるという構成を有している。
つまり、弾性体の隔壁部の両端部が一対の開口にそれぞれはまり込むことで、隔壁部の中間筒に対する接着をより確実に無くすことができ、これに伴って、一対の第2受圧液室内の液体の漏れ出しを確実に防ぎつつ隔壁部が自由に変形できるようになる結果、隔壁部に生じる応力が一層緩和されて耐久性がより向上するようになる。
請求項5に係る防振装置は、請求項1〜4のいずれかに記載の装置と同一の作用を奏することになるも、本請求項では、第1受圧液室が第2取付部材の端部と対向して配置されると共に、一対の第2受圧液室が第2取付部材を挟んで対称の位置に配置されるという構成を有している。
つまり、防振装置内の狭い空間内への第1受圧液室及び一対の第2受圧液室の最適な配置と考えられる上記の構成を採用することにより、装置の小型化を図りつつ防振装置の耐久性を向上することが可能となった。
請求項6に係る防振装置は、請求項1〜5のいずれかに記載の装置と同様の作用を奏する。
但し、本請求項では、、中間筒の開口から突出した弾性体の隔壁部の部分と第1取付部材側との間を非接着状態で圧接させる構成としたことにより、上述したところに加え、前述の加硫接着面及びその近傍への応力集中や歪みを、第1取付部材である例えば外筒側との間を非接着状態で圧着した前記弾性体の隔壁部の変位や変形によって吸収できるので、エンジンの分担加重を受ける場合においても、耐久性が向上する。
請求項7に係る防振装置は、上述したいずれかの防振装置において、一対の第2受圧液室のそれぞれを副液室に連通させるそれぞれの通路をともに、シェイク振動の周波数よりも振動周波数の高いアイドル振動の周波数に対応するように設定してなるものである。
これによれば、たとえば、20〜30Hzの周波数のアイドル振動が、主振幅方向および/または副振幅方向から入力されても、第2受圧液室と、副液室との間での液体の相互流通を十分に担保して、液体の共振現象の下で、入力振動を有効に吸収することができる。
また、請求項8に係る防振装置は、請求項1〜6のいずれかに記載した装置において、一対の第2受圧液室のそれぞれを副液室に連通させるそれぞれの通路の流動抵抗、たとえば、通路長さおよび/または通路断面積を相互に相違させてなるものであり、これによれば、それぞれの通路に、相互に独立させたチューニングを施すことによって、より広範囲の周波数帯域の入力振動に対して減衰機能を発揮させることができる。
そしてこの場合は、請求項9に係る防振装置のように、一対の第2受圧液室のそれぞれを副液室に連通させるそれぞれの通路の一方を、たとえば、8〜15Hz程度の低周波のシェイク振動の周波数に対応するよう設定し、他方を、シェイク振動の周波数よりも振動周波数の高い前記アイドル振動の周波数に対応するよう設定してなるものとすることが好ましく、これによれば、シェイク振動とアイドル振動とのそれぞれをともに大きく減衰させることができる。
以上説明したように本発明の上記構成によれば、隔壁部への応力の集中を防いで、その部分の歪みが大きくなり過ぎないようにすることにより耐久性を向上した防振装置を提供できるという優れた効果を奏することができる。
本発明の一実施の形態に係る防振装置を示す断面図であって、図3の1−1矢視線断面図である。 本発明の一実施の形態に係る防振装置を示す断面図であって、図3の2−2矢視線断面図である。 本発明の一実施の形態に係る防振装置のブラケットを除いた状態の断面図であって、図1の3−3矢視線断面図である。 本発明の一実施の形態に係る防振装置のブラケットを除いた状態の断面図であって、図1の4−4矢視線断面図である。 本発明の一実施の形態に係る防振装置に適用される中間筒、ゴム弾性体及び取付金具が一体的に形成された状態を示す断面図であって、図6の5−5矢視線断面図である。 本発明の一実施の形態に係る防振装置に適用される中間筒、ゴム弾性体及び取付金具が一体的に形成された状態を示す断面図であって、図5の6−6矢視線断面図である。 他の実施形態の仕切部材を示す斜視図である。 図7に示す仕切部材の平面図および正面図である。 さらに他の実施形態の仕切部材を示す斜視図である。 図9に示す仕切部材の平面図および正面図である。 実施例の結果を示すグラフである。
符号の説明
10 防振装置
16 外筒金具(第1取付部材)
18 取付金具(第2取付部材)
20 中間筒
22 ゴム弾性体(弾性体)
22D 隔壁部
23 両端部
24,90 仕切部材
30 第1受圧液室
32 左側第2受圧液室
34 右側第2受圧液室
36 副液室
38 第1オリフィス
40,42 第2オリフィス
44 第1開口部(開口)
46 第2開口部(開口)
90A リング部
90B リブ
92 第1溝部
93 第2溝部
本発明の一実施の形態に係る防振装置を図1から図6に示し、これらの図に基づき本実施の形態を説明する。
図1から図4に示すような本実施の形態に係る防振装置10は、例えば自動車におけるエンジンマウントとして用いられるものであり、振動受部である車体と振動発生部となるエンジンとの間に配置されてエンジンを支持する形になる。
なお、図中、符号Sは装置の軸心を示しており、この軸心Sに沿った方向を防振装置10の軸方向、軸心Sに直交する方向を防振装置10の径方向として以下の説明を行う。
図1に示されるように、防振装置10は、それを車体側へ連結固定するためのブラケット12を具えている。このブラケット12には、円筒状のホルダ部12A及び、このホルダ部12Aの括れ部の下端から径方向外方へ延出する一対の脚部12Bが設けられている。これら一対の脚部12Bの先端部分には、車体連結用の取付穴14がそれぞれ設けられている。
ブラケット12のホルダ部12A内には、軸方向の両端部を開口した薄肉円筒状の第1取付部材である外筒金具16が嵌合して配置されており、この外筒金具16の内周側には、円柱状に形成された第2取付部材である取付金具18が外筒金具16と同軸的に配置されている。
ホルダ部12Aの全体又は上端部付近が内周側へかしめられることにより、外筒金具16は、ブラケット12の所定位置に十分な強度で固定されている。そして、この外筒金具16の下端部には、内周側に屈曲される段差部16Aが形成されると共に、この段差部16Aを介して上部側よりも小径の円筒状とされた小径部16Bが設けられている。
ここで、防振装置10を車体側へ連結する際には、一対の脚部12Bの取付穴14にそれぞれボルト(図示省略)を挿入し、その先端部分を車体側にねじ込み固定することにより、防振装置10がブラケット12を介して車体側に締結固定される。
また、取付金具18には、その上面部分に軸心Sに沿って上方へ突出するボルト軸18Aが立設されており、このボルト軸18Aを介して取付金具18が車両のエンジン側に連結固定される。
さらに、外筒金具16の内周面には、金属材により円筒状に形成された中間筒20が嵌合されている。この中間筒20と取付金具18との間には、ゴム製で、全体として厚肉の円筒状に形成されるゴム弾性体22が配置されており、このゴム弾性体22の下面中央部には、軸直角方向に沿った断面を円形とする形に窪んだ凹部22Aが設けられている。
そして、このゴム弾性体22の外周面は、中間筒20の内周面に加硫接着或いは嵌合して連結されており、ゴム弾性体22の内周面は、取付金具18の外周面に加硫接着されている。これにより、取付金具18と中間筒20との間がゴム弾性体22により弾性的に連結される。
一方、図1及び図2に示されるように、金属材により、厚肉の円板状に形成された仕切部材24の外周部分が外筒金具16の段差部16Aに当接するように、この仕切部材24が外筒金具16内に嵌挿されている。また、ゴム弾性体22の下面における凹部22Aの周縁部が、この仕切部材24の外周部分に圧接されている。
これにより、仕切部材24は凹部22Aの下面側を閉止して、凹部22A内に外部から区画された空間を形成している。この空間はエチレングリコール、シリコンオイル等の液体が充填された第1受圧液室30とされる。つまり、中間筒20の内周側に配設されることになるこの第1受圧液室30の内壁の少なくとも一部が、ゴム弾性体22により形成された構造になっている。
図1及び図2に示されるように、この中間筒20の上部側部分を大径で円筒状の大径部20Aが形成し、中間筒20の中央部分及び下部側部分を大径部20Aよりも小径で円筒状の小径部20Bが形成していて、これらが段部を介して一体的に形成されている。
ここで、大径部20Aは外筒金具16の内径に対応する外径を有しており、この大径部20Aの外周面を外筒金具16の内周面の上端部へ圧接させている。そして、小径部20Bの下端部を仕切部材24の上面部に当接させることにより、その仕切部材24は、中間筒20の小径部20Bと外筒金具16の段差部16Aとの間に挟まれて、軸方向への移動が拘束されている。
さらに、中間筒20の小径部20Bの内周側に対応するゴム弾性体22の部分であって、図1における取付金具18を挟んだ左側及び右側には、それぞれ外周面から内周側へ向って凹状とされた第1空洞部22B及び第2空洞部22Cが形成されている。これらの空洞部22B,22Cの軸方向に沿った断面形状は凹状とされており、図3に示される、空洞部22B,22Cの径方向に沿った断面形状は半円状に形成されている。これら第1空洞部22Bと第2空洞部22Cとの間のゴム弾性体22の部分には、ゴム弾性体22の内周側から外周側へ向って一定幅を有してこれら空洞部22B,22Cを仕切る隔壁部22Dが形成されている。
また、第1空洞部22B及び第2空洞部22Cのそれぞれの外周側は、中間筒20の内周面により閉塞されており、これに伴って、第1空洞部22B及び第2空洞部22C内には外部から区画された空間がそれぞれ形成されることになる。取付金具18や隔壁部22Dを挟んだゴム弾性体22の部分に形成された第1空洞部22B及び第2空洞部22C内の空間は、エチレングリコール、シリコンオイル等の液体が充填された一対の第2受圧液室32,34とされる。
つまり、図1及び図3に示されるように、左側第2受圧液室32が第1空洞部22Bに対応し、右側第2受圧液室34が第2空洞部22Cに対応している。
そして、図2に示されるように、中間筒20の小径部20Bには、ゴム弾性体22の隔壁部22Dの両端部23にそれぞれ面して軸方向へ細長い略長方形の開口である第1開口部44及び第2開口部46が、中間筒20の半径方向の内外に貫通するように形成されている。
すなわち、中間筒20の一対の開口部44、46に対向するゴム弾性体22の部分に隔壁部22Dが配置されており、図5及び図6に示されるように、ゴム弾性体22の隔壁部22Dの両端部23が中間筒20の一対の開口部44、46から外周側である外筒金具16側に突出するように、これら一対の開口部44、46にそれぞれはまり込んでいる。これに伴い、一対の第2受圧液室32,34間をこの隔壁部22Dが区画している。そして、前記隔壁部22Dの両端部23の外筒金具16と対向する接合部は、後述の仕切部材24のリング部24Aを介して外筒金具16に、非接着状態で圧接されている。
一方、外筒金具16の下部寄りの小径部16Bの内周面には、薄膜状に形成されたゴム製のダイヤフラム48が外筒金具16の下端部を閉止するように加硫接着されている。これに伴い、外筒金具16内の下部側にはダイヤフラム48及び仕切部材24により外部から区画された空間が形成され、この空間はエチレングリコール、シリコンオイル等の液体が充填された副液室36とされている。そして、副液室36内に充填された液体の圧力変化に応じて副液室36の内容積を拡縮するように、隔壁の一部とされるダイヤフラム48が軸方向に沿って弾性変形可能になっている。
さらに、図4に示されるように、仕切部材24の上面部分には、軸心Sを中心とする周方向に沿って環状の溝部54が一周近くに亘って形成されている。この溝部54の一端部には、仕切部材24の下面まで貫通する連通穴56が穿設されている。また、図1に示されるように、仕切部材24における溝部54の内周側部分には、円形の凹部58が形成されており、この凹部58の底板部には、仕切部材24の下面まで貫通する複数の開口部60が形成されている。
この仕切部材24には、凹部58の上面部分を塞ぐ形で円板状の閉止板62が接着やねじ止め、かしめ等により固着されている。この閉止板62における溝部54の他端部に対向する部位には、連通穴64が穿設されており、凹部58に面する閉止板62の部位には、複数の開口部65が穿設されている。
ここで、仕切部材24における連通穴56及び溝部54と、閉止板62の連通穴64は、第1受圧液室30と副液室36とを連通させる制限通路である第1オリフィス38を形成している。この第1オリフィス38を介して、第1受圧液室30と副液室36とは互いに連通され、第1受圧液室30と副液室36との間を液体が相互に流通可能となっている。
また、閉止板62により上面側が閉止された仕切部材24の凹部58は、メンブランであるゴム製の可動板68を収納する収納室70として構成されている。この可動板68は肉厚がほぼ一定の円板状に形成されているものの、可動板68の外周部分にはリング状に上下に突出する外周ガイド部68Aが形成されており、可動板68の中央部分には上下に突出する中央ガイド部68Bが形成されている。
そして、これら外周ガイド部68A及び中央ガイド部68Bの高さが収納室70の軸方向に沿った高さよりも若干高く設定されており、閉止板62の取付時に前記両ガイド部68A、68Bに予圧縮がかかる構成となっている。また、可動板68の外径が収納室70の内径とほぼ同一とされている。
以上より、可動板68は、外周ガイド部68A及び中央ガイド部68Bを除く部分の肉厚と収納室70の高さとの差の範囲で、軸方向に沿って移動(振動)可能となる。但し、可動板68の中央部分に中央ガイド部68Bが存在していることで、この中央部分の大きな振動が抑えられる結果、急激な液圧変動による可動板68の大変形を抑えることが可能となり、凹部58の底板部や閉止板62と可動板68との接触に起因する異音や打音を抑えることが出来る。
ここで、車両におけるエンジンを振動源として発生する上下方向の振動(主振動)としては、比較的低い周波数(例えば、8〜15Hz)を有するシェイク振動が知られているが、このシェイク振動を更に細かく分類すると、一般的に、シェイク振動は、10Hz未満の周波数を有するエンジンバウンス振動(以下、単に「バウンス振動」)と、10Hz〜15Hzの周波数を有するピッチング振動とに分類できる。本実施の形態に係る防振装置10では、第1受圧液室30と副液室36とを連通する第1オリフィス38の路長及び断面積がバウンス振動の周波数(10Hz未満)に対応するように設定(チューニング)されている。
図1から図3に示されるように、円板状の仕切部材24には、外径を外筒金具16の内径に対応する寸法とされつつ、仕切部材24の外周部分から上側にリング状に延出するリング部24Aが形成されている。つまり、外筒金具16の内周面に嵌挿されたリング部24Aは、その外周面を外筒金具16の内周面に圧接させている。
また、リング部24Aの内径は、中間筒20の小径部20Bの外径に対応する方法を有しており、リング部24Aの内周面がこの小径部20Bの外周面に当接されている。そして、中間筒20の一対の開口部44、46から突出した隔壁部22Dの両端部23が、リング部24Aの内周面に強く当たって、小径部20Bの外周面とほぼ同一の面になっている。
他方、図1に示されるように、リング部24Aの外周面の、取付金具18を挟んで対称の位置には、上下方向に延在するそれぞれの外周溝80及び外周溝81が形成されており、これら外周溝80及び外周溝81は、仕切部材24の本体部分となる円板状の部分にそれぞれ繋がっている。
さらに、外周溝80の一端部からリング部24Aの内周面に貫通する上側連通口82がそのリング部24Aに形成されていると共に、中間筒20の対応部分には貫通孔20Cが形成されており、この外周溝80の他端部は、図4に示されるように、仕切部材24の本体部分に約半周に亘って周回する形で形成された溝部84の一端に繋がっている。
この溝部84の他端には、下方の副液室36に向かって貫通する下側連通口86が形成されている。
また、外周溝81の一端部からリング部24Aの内周面に貫通する上側連通口83がそのリング部24Aに形成されていると共に、中間筒20の対応部分に貫通孔20Dが形成されており、この外周溝81の他端部は、図4に示されるように、仕切部材24の本体部分に約半周に亘って周回する形で形成された溝部85の一端に繋がっている。
この溝部85の他端には、下方の副液室36に向かって貫通する下側連通口87が形成されている。
ここで、リング部24Aの外周溝80,81は、その外周側が外筒金具16の内周面により閉塞される。この外周側が閉塞された外周溝80及び溝部84は、副液室36と左側第2受圧液室32とを互いに連通させる第2オリフィス40を構成し、同じく外周溝81及び溝部85は、副液室36と右側第2受圧液室34とを互いに連通させる第2オリフィス42を構成する。
つまり、これら一対の第2オリフィス40,42は、一対の第2受圧液室32,34と副液室36との間で液体を相互に流通可能としている。
本実施の形態に係る防振装置10では、一対の第2受圧液室32,34と副液室36との間をそれぞれ連通する一対の第2オリフィス40,42の路長及び断面積が、主振幅方向に沿った振動に対してはピッチング振動の周波数(10Hz〜15Hz)に対応するように設定(チューニング)されると共に、副振幅方向に沿った振動に対しては5Hz〜20Hzの周波数範囲から選択された特定の周波数に対応するように設定(チューニング)されている。
また、本実施の形態では、取付金具18を介してゴム弾性体22に振動が入力されるのに伴い、左側第2受圧液室32及び右側第2受圧液室34が配列された図1の左右方向(第2の容積拡縮方向)に向かってゴム弾性体22が弾性変形すると、左側第2受圧液室32及び右側第2受圧液室34の内容積がそれぞれ拡縮する。
ここで、ゴム弾性体22は、第2の容積拡縮方向に沿って左側第2受圧液室32側へ向う入力荷重と右側第2受圧液室34側へ向う入力荷重に対する剛性が略等しくなるように、左側第2受圧液室32及び右側第2受圧液室34の容積等が調整されている。なお、本実施の形態の防振装置10は、車両に装着された状態で、前記第2の容積拡縮方向が後述する副振幅方向と実質的に一致するように取付方向が調整される。
本実施の形態の防振装置10の組み立てに際しては、仕切部材24と、ゴム弾性体22により連結された取付金具18及び中間筒20とを、外筒金具16内における所定位置に嵌挿し、この状態で外筒金具16全体を内周側へかしめることにより、仕切部材24及び中間筒20を外筒金具16に対して固定する。この後、この外筒金具16は、前述したようにブラケット12のホルダ部12A内へ嵌挿され、さらにかしめ固定される。
次に、上記のように構成された本実施の形態に係る防振装置10の作用を説明する。
本実施の形態では、取付金具18に連結されたエンジンが作動すると、エンジンからの振動が取付金具18を介して、外筒金具16の内周面に嵌合される中間筒20と取付金具18との間に配置されたゴム弾性体22に伝達される。この際、ゴム弾性体22は吸振主体として作用し、ゴム弾性体22が弾性変形して、このゴム弾性体22の内部摩擦等に基づく減衰作用によって振動が吸収され、車体側へ伝達される振動が低減される。
このとき、エンジンから防振装置10に入力する主要な振動としては、エンジン内のピストンがシリンダ内で往復移動することにより発生する振動(主振動)と、エンジン内のクランクシャフトの回転速度が変化することにより生じる振動(副振動)とが挙げられる。エンジンが直列型の場合、主振動は、その振幅方向(主振幅方向)が車両の上下方向と略一致するものとなり、副振動は、その振幅方向(副振幅方向)が主振動の振幅方向とは直交する車両の前後方向(エンジンが横置きの場合)又は左右方向(エンジンが縦置きの場合)と略一致するものになる。
そして、上記のゴム弾性体22は、入力振動が防振装置10の軸方向と略一致する主振幅方向に沿った主振動であっても、この主振幅方向と略直交する副振幅方向に沿った副振動であっても、その内部摩擦等による減衰作用により、振動の一部を吸収する。
また、中間筒20の内周側であって取付金具18の下端部と対向した位置に配設された第1受圧液室30が、隔壁の一部を変形可能に形成した副液室36に第1オリフィス38を介して連通されている。このことにより、取付金具18にエンジン側から主振幅方向に沿った振動が入力された場合、ゴム弾性体22がこの主振幅方向に沿って弾性変形すると共に第1受圧液室30の内容積を拡縮させる。この為、液圧変化に応じて内容積が拡縮可能とされる副液室36とこの第1受圧液室30との間を第1オリフィス38を介して液体が相互に流通する。
このとき、第1オリフィス38における路長及び断面積がバウンス振動の周波数に対応するように設定されていることから、入力する主振動がバウンス振動である場合には、第1オリフィス38を介して第1受圧液室30と副液室36との間を、入力振動に同期して相互に流通する液体に共振現象(液柱共振)が生じるので、この液柱共振に伴う液体の圧力変化及び粘性抵抗によって主振幅方向に沿って入力するバウンス振動を特に効果的に吸収できる。
また、入力する主振動の周波数がシェイク振動の周波数よりも高く、その振幅が小さい場合、例えば、入力振動がアイドル振動(例えば、20〜30Hz)で、その振幅が0.1mm〜0.2mm程度の場合には、シェイク振動に対応するようにチューニングされた第1オリフィス38が目詰まり状態となり、第1オリフィス38には液体が流れ難くなる。
しかし、可動板68が収納室70内で入力振動に同期して軸方向に沿って振動することにより、収納室70の内壁面と可動板68との隙間及び開口部60,65を通って液体が流通することになる。この結果、第1受圧液室30内の液圧上昇に伴う動ばね定数の上昇を抑えることができ、このような高周波振動の入力時もゴム弾性体22の動ばね定数を低く維持し、このゴム弾性体22の弾性変形等により高周波振動も効果的に吸収できる。
一方、取付金具18にエンジン側から副振幅方向に沿った振動が入力した場合、ゴム弾性体22が副振幅方向に沿って弾性変形するのに伴い、取付金具18を挟んだ対称の位置となるゴム弾性体22の部分に形成される一対の第2受圧液室32,34の内容積が交互に拡縮する。この結果、一対の第2オリフィス40,42を介して、一対の第2受圧液室32,34と副液室36との間がそれぞれ連通されていることで、入力振動に同期してこれら一対の第2受圧液室32,34と副液室36との間を液体が交互に流通する。
ここで、一対の第2オリフィス40,42における路長及び断面積が、副振幅方向に沿った振動に対しては5Hz〜20Hzから選択された特定の周波数に対応するように設定されている。この為、入力する副振動が特定の周波数を有する場合には、一対の第2オリフィス40,42を介して第2受圧液室32,34と副液室36との間を相互に流通する液体に共振現象が生じるので、この液体の共振現象に伴う圧力変化、粘性抵抗等によって副振幅方向に沿って入力する特定周波数の振動を特に効果的に吸収できる。
他方、本実施の形態では、図2及び図3に示されるように、中間筒20を半径方向の内外に貫通する開口部44,46がこの中間筒20に一対設けられていると共に、これら一対の開口部44,46に対応するゴム弾性体22の部分に、一対の第2受圧液室32,34間を区画する隔壁部22Dが形成されている。そして、このゴム弾性体22の隔壁部22Dの両端部23がこれら一対の開口部44,46から外筒金具16側に突出するように開口部44,46にそれぞれはまり込んでいる。
この結果、一対の第2受圧液室32,34を仕切るための隔壁部22Dが中間筒20に対して非接着の構造とされることになる。従って、ゴム弾性体22の隔壁部22Dが大変形するような振動がエンジン側から防振装置10に入力された場合でも、隔壁部22Dが中間筒20に対して非接着となっていることから、隔壁部22Dが自由に変形して応力を緩和して、隔壁部22Dに疲労が生じないようになるのに伴い、防振装置10の耐久性が向上する。
また、一対の開口部44,46にそれぞれはまり込んだゴム弾性体22の隔壁部22Dにおける両端部23が、外筒金具16側に突出し、外筒金具16との間に介在される部材である仕切部材24のリング部24Aに当接してシールすることで、一対の第2受圧液室32,34内の液体の漏れ出しが確実に防がれる。
つまり、ゴム弾性体22の隔壁部22Dの両端部23が中間筒20に一対形成された開口部44,46にそれぞれはまり込むことで、隔壁部22Dの中間筒20に対する接着をより確実に無くすことができ、これに伴って、一対の第2受圧液室32,34内の液体の漏れ出しを確実に防ぎつつ、隔壁部22Dが自由に変形して応力を緩和できる。
さらに、本実施の形態では、防振装置10内の狭い空間内への第1受圧液室30及び一対の第2受圧液室32,34の最適な配置と考えられるような、第1受圧液室30を取付金具18の下端部と対向して配置すると共に、一対の第2受圧液室32,34を取付金具18を挟んで対称の位置に配置したことで、小型化を図りつつ防振装置10の耐久性を向上することが可能ともなった。
また、本実施の形態では、一対の第2受圧液室32,34が中間筒20と取付金具18との間に配設されているが、主振幅方向に沿った振動の入力時にも、ゴム弾性体22の弾性変形に伴って一対の第2受圧液室32,34が変形し、これら一対の第2受圧液室32,34の内容積が増減する。この時に一対の第2受圧液室32,34に生じる内容積の変化量は、第1受圧液室30の内容積の変化量に較べてかなり小さいものの、一対の第2受圧液室32,34には、ゴム弾性体22の変形量に対応する内容積の変化が確実に生じる。
従って、取付金具18にエンジン側から主振幅方向に沿った主振動が入力した場合にも、ゴム弾性体22が主振幅方向に沿って弾性変形するのに伴い、一対の第2受圧液室32,34の内容積が拡縮することから、一対の第2オリフィス40,42を通して一対の第2受圧液室32,34と副液室36とを液体が相互に流通する現象が生じる。
このとき、一対の第2オリフィス40,42における路長及び断面積が、主振幅方向に沿った振動に対してはピッチング振動の周波数に対応するように設定されているので、入力する副振動がピッチング振動の周波数を有する場合には、一対の第2オリフィス40,42を通して一対の第2受圧液室32,34と副液室36との間を相互に流通する液体に共振現象が生じるので、この液体の共振現象に伴う圧力変化、粘性抵抗等によって主振幅方向に沿って入力するピッチング振動を特に効果的に吸収できる。
尚、本実施の形態に係る防振装置10では、ブラケット12を介して外筒金具16を車体側へ連結すると共に、取付金具18をエンジン側に連結していたが、これとは逆に、外筒金具16をエンジン側へ連結すると共に、取付金具18を車体側に連結するようにしても良い。
さらに、上記実施の形態において、車両の車体の防振を目的としたが、本発明の防振装置は、車両以外の他の用途にも用いられることはいうまでもない。一方、外筒金具16、取付金具18及びゴム弾性体22等の形状、寸法なども実施の形態のものに限定されるものではない。
次に、本発明の第2の実施形態に係る防振装置について説明する。
これはとくに仕切部材に変更を加えたものであり、この実施形態の仕切部材は、図7および8のそれぞれに示すように、仕切部材90、とくにはそれのリング部90Aの外周面に、先の実施形態で述べた外周溝80,81に代えて、それらより広幅の第1溝部92および第2溝部93のそれぞれを、直径方向に対抗させて形成したものであり、この実施形態では、外筒金具16との協仂下で液体通路としてのそれぞれのオリフィスを画成するこれらの溝部92,93のうち、第1の溝部92の上端を、左側第2受圧液室32に開口させる一方、その下側を、他の特別の溝部等を介在させることなく、副液室36に直接的に開口させ、また、第2の溝部93の上端を左側第2受圧液室34に開口させるとともに、その下端を、副液室36に直接的に開口させる。
ここで、第1および第2の溝部92,93のそれぞれは、仕切部材90の中心軸線に対して、たとえば、45°もしくはそれ以上の傾斜角度で斜めに形成することができる他、中心軸線方向に延在させて形成することもできる。
またここでは、第1および第2の溝部92,93と外筒金具16とで画成されるそれぞれのオリフィスをともに、シェイク振動よりも振動周波数の高いアイドル振動の周波数(約20〜30Hz)に対応するよう設定(チューニング)する。
そしてまた、この実施形態では、図7に示すように、全体としてほぼカップ状をなす仕切部材90の底面中央部に、先の実施形態と同様の円形凹部58を形成し、この凹部58の底部に、前述した複数の開口部60に代えて、複数の扇形の貫通穴94を設ける。なお、これらの貫通穴94の周りには、前述したように、ほぼ環状をなす溝部54を設けるとともに、この溝部54の一端部に、それを副液室36に連通させる、前述したような連通穴56を設ける。
ところで、このような仕切部材90の底面上には、先の実施形態と同様に、閉止板62を固定もしくは固着し、この閉止板62に設けた連通穴64と、仕切部材90の溝部54および連通穴56とで、第1受圧液室30と副液室36とを連通させる制限通路である第1オリフィス38を形成する。
この場合、連通穴64の他、複数の開口部65を穿接した閉止板62によって上面側が閉止される仕切部材90の凹部58は、前述したと同様に、可動板68を収納配置する収納室70として機能させることができる。ここにおいては、可動板68は、外周および中央ガイド部68A,68Bを有しない、ほぼ一定の厚みのものとすることができるが、この可動板68は、それ自身の厚みと、収納室70の高との差の範囲内で軸方向に振動することができる。
このように構成してなる防振装置によれば、先の実施形態では、第1受圧液室30との連通をもたらす第1のオリフィス38を、シェイク振動中の、10Hz未満のバウンス振動用として、そして、一対の第2受圧液室32,34のそれぞれを副液室36に連通させる一対の第2オリフィス40,42のそれぞれを、シェイク振動中の、10〜15Hzのピッチング振動用として機能させているのに対し、第1および第2の溝部92,93をもって画成されて、それぞれの第2受圧液室32,34を副液室36に連通させる一対のオリフィスをともに、約20〜30Hzのアイドル振動用として機能させることにより、主振幅方向および副振幅方向のいずれの方向の振動に対しても、より高波域の振動までを有効に振動絶縁し、また減衰させることができる。
図9および10は、本発明のさらに他の実施形態なかでも、仕切部材のさらなる変更例を示す図であり、これはとくに、第1の溝部92は、図7および8に示すところと同様に、たとえば、中心軸線に対して約45°の角度で傾斜させて斜めに形成する一方で、第2の溝部93を、図示のように、仕切部材90の外周面に、それのほぼ円周方向に延在させて設けたリブ90Bに沿って、仕切部材90のほぼ半周にわたって延びる往復溝部とし、そして、第1の溝部92をもって画成されるオリフィスをアイドル振動の振動数に対応するように、また、第2の溝部93をシェイク振動の振動数に対応するように設定したものである。
すなわちここでは、リブ90Bを、第1溝部92に隣接する部分で切欠き除去することで、第2溝部93が、その切欠き部でUターンして仕切部材90の半周近くにわたって戻る形態に形成して、第2溝部93の延在長さを、図9の矢印Aに沿って、仕切部材90の一周近くの長さとすることで、左側の第2受圧液室32の、副液室36への連通をもたらす第1溝部92によって構成されるオリフィスと、右側の第2受圧液室34の、副液室36への連通をもたらす第2溝部93により構成されるオリフィスとの流動抵抗を大きく相違させるとともに、それぞれの溝部92,93の長さおよび横断面積の選択下で、第1溝部92をアイドル振動用として、そして、第2溝部93をシェイク振動用としてそれぞれ機能させる。
このように、それぞれの溝部92,93、ひいては、それぞれのオリフィスに相互に独立したチューニングを施した場合には、アイドル振動およびシェイク振動のそれぞれをともに大きく減衰させることができ、広範囲の周波数帯域の振動をより効果的に減衰させることができる。
図7および8に示す仕切部材90を用い、第1および第2の溝部92,93のそれぞれに画成されるオリフィスをともに、アイドル振動の周波数(20〜30Hz)の低振幅高周波振動に対応するよう設定してなる実施例防振装置と、従来防振装置とのそれぞれにつき、上下方向±0.1mmの振幅の振動入力に対する、防振装置の弾性係数および、上下方向±0.5mmの振幅の振動入力に対する減衰性能を求めたところ、図11(a)および(b)に示すような、入力振動周波数に応じた特性を得た。
図11(a)によれば、それぞれのオリフィスの横断面積をともに55mmに固定して、オリフィス長さを60mmとした実施例防振装置1および、オリフィス長さを40mmとした実施例防振装置2はいずれも、20〜30Hzの振動に対し、オリフィス長さを90mmとした従来装置に比して低い弾性係数の下で、すぐれた振動絶縁機能を発揮し得ることが解かる。
また図11(b)に示すところによれば、実施例防振装置1および2はともに、20〜30Hzの間で、従来装置に比してより大きな損失係数の下で、すぐれた振動減衰音機能を発揮し得ることが解かる。

Claims (9)

  1. 振動発生部又は振動受部の一方に連結され且つ、筒状に形成された第1取付部材と、
    振動発生部又は振動受部の他方に連結され且つ、第1取付部材の内周側に配置された第2取付部材と、
    第1取付部材の内周面に嵌合され且つ、内外に貫通する開口を有した中間筒と、
    中間筒と第2取付部材との間に配置されて中間筒と第2取付部材とを弾性変形可能に連結する弾性体と、
    中間筒の内周側に配設されると共に、内壁の少なくとも一部が弾性体により形成されて液体が充填される第1受圧液室と、
    第1受圧液室と連通され且つ、隔壁の一部が変形可能に形成されて液圧変化に応じて内容積が拡縮可能とされる副液室と、
    第2取付部材を挟んだ弾性体の部分に形成され且つ、液体が充填される一対の第2受圧液室と、
    中間筒の開口に対応する弾性体の部分に配置されて一対の第2受圧液室間を区画する隔壁部と、
    を有することを特徴とする防振装置。
  2. 一対の第2受圧液室がそれぞれ副液室に連通されることを特徴とする請求項1に記載の防振装置。
  3. 弾性体の隔壁部が中間筒の開口から第1取付部材側に突出するように開口にはまり込んでいることを特徴とする請求項1もしくは2に記載の防振装置。
  4. 開口が中間筒に一対形成され、弾性体の隔壁部の両端部がこれら一対の開口にそれぞれはまり込んでいることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の防振装置。
  5. 第1受圧液室が第2取付部材の端部と対向して配置されると共に、一対の第2受圧液室が第2取付部材を挟んで対称の位置に配置されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の防振装置。
  6. 中間筒の開口から突出した弾性体の隔壁部の部分と第1取付部材側とが、非接着状態で圧接されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の防振装置。
  7. 一対の第2受圧液室のそれぞれを副液室に連通させるそれぞれの通路をともに、シェイク振動の周波数よりも振動周波数の高いアイドル振動の周波数に対応するように設定してなる請求項1〜6のいずれかに記載の防振装置。
  8. 一対の第2受圧液室のそれぞれを副液室に連通させるそれぞれの通路の流動抵抗を相互に相違させてなる請求項1〜6のいずれかに記載の防振装置。
  9. 一対の第2受圧液室のそれぞれを副液室に連通させるそれぞれの通路のうちの一方を、シェイク振動の周波数に対応するように設定し、他方を、シェイク振動の周波数よりも振動周波数の高いアイドル振動の周波数に対応するように設定してなる請求項8に記載の防振装置。
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