JP5010248B2 - アルコール酔い軽減用組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、飲酒後の生体内のアルコール代謝を改善し、悪酔い、二日酔いなどのアルコール酔いの症状を予防・緩和するアルコール酔い軽減用組成物に関する。
アルコール飲料を摂取すると、血中アルコール(エタノール)濃度が上昇し、アルコール(エタノール)は中枢神経系に対して働きかけ、アルコール(エタノール)による脳の麻痺が引き起こされる。更に、急性アルコール中毒のように、アルコール(エタノール)が運動神経、脳幹にまで影響を及ぼし、時には死に至ることもある。
飲酒後、摂取したアルコール(エタノール)はアルコール脱水素酵素によって酸化され、アセトアルデヒドに変換される。アセトアルデヒドは更にアセトアルデヒド脱水素酵素により酢酸に変換され無毒化される。この中間代謝産物であるアセトアルデヒドは構造中にアルデヒド基を含み、タンパク質の側鎖などのアミノ基と非常に反応性が高い。そのため、毒性が高く、頭痛、吐き気、動悸などの症状を引き起こす原因物質となっている。
日本人には、アセトアルデヒドを代謝する酵素であるアセトアルデヒド脱水素酵素が遺伝的に欠損している人が全体の約50%に見られ、生まれつきアルコールに弱い人が多い。更に、アルコールに強い人においても、ストレス、睡眠不足であるにも関わらず、ストレス発散のために体調が十分ではないままに飲酒をする機会が多い。また多忙であるため、肝臓がアルコール(エタノール)を解毒するのに十分な休養時間をとることができない。そのため、アルコール酔いの症状に有効であるとされる各種の化合物や組成物の開発が望まれている。
飲酒によって引き起こされる症状を軽減する方法としては、例えば、下記特許文献1には、L−α−アラニンを有効成分とするアセトアルデヒドの毒性抑制剤が開示されている。また、下記特許文献2には、アラニンとオルニチンを用いた抗アルコール性肝障害組成物が開示され、下記特許文献3には、アラニン由来ジペプチドを有効成分とするアセトアルデヒドの毒性抑制剤が開示されている。更に、下記特許文献4には、プロリンまたはリジンを含有するアルコール性肝障害予防用組成物が開示されており、下記特許文献5には、ホウトウクウ(ヤマブシダケ)由来の成分を含む、飲酒による作用を予防または処置するための組成物が開示されている。
特開昭61−134313号公報 特開昭61−050917号公報 特開平4−021635号公報 特開平6−116144号公報 特開2006−022056号公報
上記のように、アルコール酔いの症状に有効であるとされる各種の化合物や組成物が報告されているが、いずれも十分な効果を有するものではなかった。
したがって、本発明の目的は、人体にとって安全であり、かつ効果が高いアルコール酔い軽減用組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究し、イミダゾールジペプチド類化合物、あるいはイミダゾールジペプチド類化合物を含有する魚介類、鳥肉、畜肉由来の抽出物を摂取することにより、飲酒後の生体内でのアルコール代謝を改善し、悪酔い、二日酔いなどのアルコール酔いの症状を予防・緩和することができることを発見し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のアルコール酔い軽減用組成物は、アンセリンを有効成分として含有し、悪酔い、二日酔いを予防・緩和するために用いられることを特徴とする。
本発明のアルコール酔い軽減用組成物によれば、イミダゾールジペプチド類化合物及び/又はその塩を有効成分として含有するので、飲酒前、飲酒中、又は飲酒後にこれを摂取することにより、飲酒後の生体内でのアルコール代謝を改善して、悪酔い、二日酔いなどのアルコール摂取を原因とするアルコール酔いの症状を予防・緩和することができる。
本発明のアルコール酔い軽減用組成物は魚肉、鳥肉、及び畜肉からなる群から選ばれた少なくとも一種以上から得られた抽出物であって、アンセリンの含有量が固形分換算で1〜99.9質量%である抽出物からなることが好ましい。これによれば、一般には調味料として広く利用されている魚肉、鳥肉、及び畜肉から得られるエキス類から、安全に、コスト安く、かつ効率よく、前記イミダゾールジペプチド類化合物及び/又はその塩を調製することができる。
また、上記抽出物が、イミダゾールジペプチド類化合物以外のアミノ酸、ペプチド等の成分を含有する場合には、それらの成分が促進的又は相乗的に作用して、より効果的に、飲酒後の生体内でのアルコール代謝を改善して、悪酔い、二日酔いなどのアルコール摂取を原因とするアルコール酔いの症状を予防・緩和することが期待できる。また、一般には調味料として広く利用されている魚肉、鳥肉、及び畜肉から得られるエキス類は、機能性食品素材として大量に供給可能であり、化学的に安定で、また天然物から抽出した成分であるため安全性も高く、味も良いことから、様々な剤形、配合に対応でき、幅広い形態での供給が可能である。
本発明のアルコール酔い軽減用組成物によれば、飲酒前、飲酒中、又は飲酒後にこれを摂取することにより、飲酒後の生体内でのアルコール代謝を改善して、悪酔い、二日酔いなどのアルコール摂取を原因とするアルコール酔いの症状を予防・緩和することができる。
一般に、魚肉、鳥肉、及び畜肉等に含まれているイミダゾールジペプチド類化合物としては、アンセリン(β‐アラニル‐1‐メチルヒスチジン)、カルノシン(β‐アラニルヒスチジン)、バレニン(β‐アラニル‐3‐メチルヒスチジン)等が挙げられる。
た、その塩としては、塩酸、乳酸、酢酸、硫酸、クエン酸、アスコルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、アジピン酸、グルコン酸、酒石酸等の塩が挙げられる。
えば、アンセリンは、カツオ、マグロ、ウシ、鶏等の肉に多く含まれており、カルノシンは豚肉に多く含まれており、バレニンは鯨肉(例えばヒゲクジラ類)に多く含まれている。したがって、それらから水抽出、熱水抽出、アルコール抽出、超臨界抽出等の方法により抽出したエキスを精製することにより得ることができる。
具体的には、アンセリンは以下のようにして得ることができる。まず、常法に従ってカツオ、マグロ、ウシ、ニワトリ等の肉からエキスを調製し、適宜水を加えて該エキスのブリックス(Bx.)値(屈折糖度計示度)を1〜10%に調整した後、限外濾過膜(分画分子量5,000〜50,000)を用いて高分子タンパク質を除去し、低分子ペプチド画分を回収する。次いで、文献(Suyama et al:Bull. Japan. Soc. Scient. Fish., 33, 141-146, 1967)の方法に従って、適宜濃縮した低分子ペプチド画分を強酸性樹脂を用いたイオン交換クロマトグラフィーに供し、溶出液を回収する。そして、この溶出液を脱塩した後pH調整し、凍結乾燥等により乾燥して得ることができる。
また、カルノシンはブタ肉を原料として、バレニンは鯨肉(例えばヒゲクジラ類)を原料として、上記と同様の方法により得ることができる。
本発明のアルコール酔い軽減用組成物は、上記イミダゾールジペプチド類化合物のうちアンセリンを有効成分として含有し、当該アンセリン換算で1〜99.9質量%含有することが好ましく、50〜99.9質量%含有することがより好ましい。アンセリンの含有量が1質量%未満であると充分なアルコール酔い軽減効果が期待できないため好ましくない。また、アンセリンを基本的成分として、他の成分に、賦形剤、ミネラル類、ビタミン類、糖類、香料等を適宜含むことができる。
本発明のアルコール酔い軽減用組成物は、上記のように、高度に精製したアンセリンに、賦形剤、ミネラル類、ビタミン類、糖類、香料等を配合して構成されるものであってもよく、また、アンセリンの含有量が高められるように部分精製された、抽出エキス類をそのまま用いることもできる。
すなわち、本発明のアルコール酔い軽減用組成物においては、魚肉、鳥肉、及び畜肉からなる群から選ばれた少なくとも一種以上から得られた抽出物であって、アンセリンの含有量が固形分換算で1〜99.9質量%である抽出物からなることが好ましく、アンセリンの含有量が固形分換算で50〜99.9質量%である有抽出物からなることがより好ましい。
上記のようなイミダゾールジペプチド類化合物含有抽出物を得る抽出法としては、特開2003−92996に記載された公知の方法に準じておこなうことができる。以下にその概略を説明する。
<抽出法1>
原料として用いられるエキス類は、魚肉、鳥肉、及び畜肉等を、水抽出、熱水抽出、アルコール抽出、超臨界抽出等の方法により抽出して得ることができ、市販のものを用いてもよい。例えば、アンセリンは、カツオ、マグロ、ウシ、鶏等の肉に多く含まれており、カルノシンは豚肉に多く含まれており、バレニンは鯨肉(例えばヒゲクジラ類)に多く含まれていることは上述したとおりである。
上記エキス類は、更に酵素処理することにより、後述する膜処理工程におけるイミダゾールジペプチド類化合物の精製効率を上げることができる。
上記酵素としては、例えば中性プロテアーゼ(例えば「パンチダーゼ」(商品名、ヤクルト薬品工業社製)等)、アルカリ性プロテアーゼ(例えば「アロアーゼAP−10」(商品名、ヤクルト薬品工業社製)等)を用いることができる。
また、上記エキス類は、適宜濃縮又は希釈してブリックス1〜40%に調整して後述する膜処理工程に供することが好ましく、操作性及び効率性の点から、ブリックス5〜15%に調整することがより好ましい。
(1)前処理工程
上記エキス類には、夾雑物としてタンパク質や脂肪等が含まれており、後述する膜処理工程において膜の目詰まりの原因となるため、予め除去しておく。
タンパク質や脂肪の除去方法は、特に制限されないが、操作性及び効率性等の点から、活性炭による吸着除去、限外濾過膜による除去等の手段を適宜組み合わせて行なうことが好ましい。例えば、活性炭による吸着除去は、エキス類に対して10〜100質量%の活性炭を添加して0.5〜3時間撹拌した後、濾過して活性炭を除去することにより行なうことができる。また、限外濾過膜を用いる場合は、分画分子量5,000〜50,000の限外濾過膜を用いて処理し、その透過液を回収して、必要に応じて濃縮すればよい。
(2)膜処理工程
前処理工程で得られた処理液を、食塩阻止率の異なる2種以上の逆浸透膜(以下、RO膜という)を組み合わせて用いて処理することにより、目的物(イミダゾールジペプチド類化合物)の高分子側及び低分子側の夾雑物をそれぞれ除去する。
高分子側の夾雑物の除去を食塩阻止率10〜50%のRO膜を用いて行ない、低分子側の夾雑物の除去を食塩阻止率60〜98%のRO膜を用いて行なうことが好ましい。これにより、各夾雑物をそれぞれ効率よく除去することができる。
また、各RO膜処理の順序については、特に制限はないが、作業効率の点から、第一膜処理工程として食塩阻止率10〜50%のRO膜を用いて濃縮を行ない、その透過液を回収し、第二膜処理工程として該透過液を食塩阻止率60〜98%のRO膜を用いて濃縮を行ない、その濃縮液を回収することが好ましい。これによれば、第二膜処理工程が低分子側の夾雑物除去とイミダゾールジペプチド類化合物を含む溶液の濃縮を兼ねており、作業工程を簡略化できる。
なお、各膜処理工程の処理条件は、エキス類の濃度、pHの他、温度、運転圧力等の操作条件によりRO膜の分離性能が変化するため、適宜設定すればよい。
上記の食塩阻止率10〜50%のRO膜を用いた第一膜処理工程において、処理液のpHを2〜6(より好ましくはpH4〜5)に調整して膜処理を行なうことが好ましい。上記pHの範囲内で膜処理を行なうことにより、理由はよく分からないが、イミダゾールジペプチド類化合物の回収率を上げることができる。
そして、上記のようにして夾雑物を除去した処理液を、適宜濃縮して、あるいは乾燥して粉末化することによりイミダゾールジペプチド類化合物含有抽出物を得ることができる。
このようにして得られたイミダゾールジペプチド類化合物含有抽出物は、固形分中に大体5質量%以上のイミダゾールジペプチド類化合物を含んでいる。
また、上記の各膜処理工程において、適宜加水操作を行なうことにより、イミダゾールジペプチド類化合物の含有量(固形分中)が10質量%以上のイミダゾールジペプチド類化合物含有抽出物を得ることができる。加水操作は、膜処理液の量の2〜5倍量の水を数回に分けて加えて行うことが好ましい。
<抽出法2>
本発明においては、上記イミダゾールジペプチド類化合物含有抽出物として、特に魚肉からの抽出物を用いる場合には、魚介類に多く含まれるヒ素を低減させるために、以下に示す抽出法で抽出物を調製してもよい。
すなわち、その抽出法は、エキス類を脱塩処理する脱塩処理工程と、脱塩処理工程で得られた脱塩処理液を弱酸性イオン交換樹脂に通液させる吸着工程と、吸着工程後の弱酸性イオン交換樹脂を水洗浄する洗浄工程と、洗浄工程後の弱酸性イオン交換樹脂に塩酸及び/又は食塩水を通液させて弱酸性イオン交換樹脂に吸着させた吸着物質を溶出させる溶出工程とから主に構成されている。以下にその概略を説明する。
原料として用いられるエキス類は、魚肉、鳥肉、及び畜肉等を、水抽出、熱水抽出、アルコール抽出、超臨界抽出等の方法により抽出して得ることができ、市販のものを用いてもよい。例えば、アンセリンは、カツオ、マグロ、ウシ、鶏等の肉に多く含まれており、カルノシンは豚肉に多く含まれており、バレニンは鯨肉(例えばヒゲクジラ類)に多く含まれていることは上述したとおりである。
上記エキス類は、塩分濃度が高いため、塩分を低減させるべく、エキス類を脱塩処理する必要があり、塩分濃度が1質量%以下となるように脱塩処理することが好ましい。エキス類の脱塩処理方法としては、イオン交換膜を用いた電気透析法、逆浸透膜を用いた方法等が挙げられる。
電気透析法による脱塩処理において、イオン交換膜としては、特に限定されないが、例えば、商品名「ネオセプタCL−25T、CM−1〜2、AM−1〜3」(徳山曹達社製)、商品名「セレミオンCMV/AMV」(旭硝子社製)等が挙げられる。
また、逆浸透膜による脱塩処理において、逆浸透膜としては、食塩阻止率60〜80%のいわゆるルーズRO膜と呼ばれる種類の逆浸透膜が挙げられ、具体的には、商品名「NTR−7250」(日東電工社製)、商品名「SU−610」(東レ社製)等が挙げられる。上記食塩阻止率の逆浸透膜を装着した膜分離装置に、Brixが1〜20%となるように希釈したエキス類を通液して、脱塩処理を行うことで、イミダゾールジペプチド類化合物が膜を透過することなく、塩分のみが透過し、エキス類から効率よく脱塩をすることができる。なお、食塩阻止率が上記よりも低い場合は、イミダゾールジペプチド類化合物が膜を透過するため、イミダゾールジペプチド類化合物の回収率が低下し、上記よりも高い場合は、脱塩効率が低下する傾向にある。
次に、上記脱塩処理後のエキス類(以下より、「脱塩処理液」と記す)を、H型に置換された弱酸性イオン交換樹脂(以下より、「弱酸性イオン交換樹脂」と記す)に通液し、イミダゾールジペプチド類化合物を吸着させる。上記イミダゾールジペプチド類化合物を吸着させるにあたり、強酸性イオン交換樹脂を用いた場合、イミダゾールジペプチド類化合物以外の中性・酸性アミノ酸や、ペプチドがイオン交換樹脂に吸着されてしまうため、イミダゾールジペプチド類化合物の含量を高めることが困難になり、更には、吸着成分が増加するために樹脂量に対する処理量が低下してしまう。そして、ヒ素化合物も強く吸着してしまうため、イミダゾールジペプチド類化合物とヒ素化合物の分離が困難となり、目的を達成することが出来ない。弱酸性イオン交換樹脂を用いることで、イミダゾールジペプチド類化合物の含量を高めることができ、更には、ヒ素含有量を低減もしくはヒ素化合物を除去できる。
上記弱酸性イオン交換樹脂とは、カルボキシル基等の弱酸性の官能基を有するイオン交換樹脂であり、強酸性イオン交換樹脂とはスルホ基等の強酸性の官能基を有するイオン交換樹脂である。
弱酸性イオン交換樹脂としては、特に限定されるものではなく、市販のものが幅広く利用でき、例えば商品名「アンバーライトIRC76」(オルガノ社製)、商品名「ダイアイオンWK‐40」(三菱化学社製)、商品名「デュオライトC476」(住化ケムテックス社製)等が挙げられる。
上記弱酸性イオン交換樹脂への上記脱塩処理液の濃度及び負荷量は、原料や抽出液の製造方法、塩分濃度、及び使用するイオン交換樹脂により異なるので、使用するイオン交換樹脂の吸着容量範囲内で適宜決定すればよい。また、流速については特に制限されず、通液する上記脱塩処理液の性状や、使用する樹脂に応じて適宜決定し、例えば0.5〜8SVの流速で通液させる。なお、SVとは、単位時間当たりにカラムに通液した溶液の樹脂量に対する量を表し、1時間に樹脂量と同量の溶液を通液した場合の流速を1SVとする。
上記弱酸性イオン交換樹脂に脱塩処理液を通液させた後、該弱酸性イオン交換樹脂に水を通液して非吸着成分、及び吸着力の弱い成分を溶出させる、すなわち弱酸性イオン交換樹脂の水洗浄を行う。
上記水洗浄は、2〜20RVの通液量で行うことが好ましく、より好ましくは4〜10RVである。なお、RVとは樹脂量を表し、樹脂量と同量の溶液を通液した場合の通液量を1RVとする。
弱酸性イオン交換樹脂に対するヒ素化合物の吸着力は、イミダゾールジペプチド類化合物のそれよりも弱く、水洗浄においても溶出でき、使用する樹脂により異なるものの、上記通液条件による水洗浄によってほぼ完全に溶出でき、イミダゾールジペプチド類化合物とヒ素化合物の分離が可能となる。通液量が上記よりも多い場合、水洗浄によってヒ素化合物と共にイミダゾールジペプチド類化合物も溶出してしまうおそれがあり、イミダゾールジペプチド類化合物の回収率が劣る傾向にあり、通液量が上記よりも少ない場合、ヒ素化合物を十分分離溶出させることができず、イミダゾールジペプチド類化合物の精製が不十分となる傾向にある。
また、上記水洗浄における、水の流速は特に制限されず、使用する樹脂に応じて適宜決定し、例えば0.5〜8SVの流速で通液させることが好ましい。
弱酸性イオン交換樹脂の水洗浄後、弱酸性イオン交換樹脂に塩酸及び/又は食塩水を通液させて、弱酸性イオン交換樹脂に吸着させた吸着物質を溶出させる。
弱酸性イオン交換樹脂から吸着物質を溶出させるにあたり、塩酸、食塩水の濃度及び通液量については、イミダゾールジペプチド類化合物を溶出できる条件であれば特に制限はなく、使用するイオン交換樹脂によっても異なるため特に限定は出来ないが、例えば、1〜2Nの塩酸を2〜4RVの通液量で溶出させる、又は1〜2mol/lの食塩水を2〜8RVの通液量で溶出させることが好ましい。また、塩酸と食塩水とを併用して溶出する場合、上記塩酸及び食塩水を連続的に通液するか、塩酸と食塩の合計として1〜2mol/lの溶液を2〜6RVの通液量で溶出させることが好ましい。
ここで、上記洗浄工程において、水洗浄が不十分であった場合においては、上記溶出画分にヒ素化合物が混在してしまう。しかしながら、ヒ素化合物はイミダゾールジペプチド類化合物よりも、弱酸性イオン交換樹脂から溶出しやすいため、弱酸性イオン交換樹脂に塩酸及び/又は食塩水を通液させてから、上記通液量2RV未満で回収した上記溶出画分には、ヒ素化合物が含有している可能性があるが、弱酸性イオン交換樹脂に塩酸及び/又は食塩水を通液させてから、上記通液量2RV以降の上記溶出画分を回収することで、ヒ素化合物とイミダゾール化合物とを分離することができる。なお、上記洗浄工程において十分量の水を通液した場合には、同工程中でヒ素化合物をほぼ完全に除去されているため、上記溶出画分の全量を回収してもヒ素化合物が混入することはない。
例えば、魚介類から抽出して得られたエキス類を、上述のようにして処理することで、固形分あたりのイミダゾールジペプチド類化合物の含量が5〜80質量%であり、ヒ素化合物の含量が、イミダゾールジペプチド類化合物の1に対して150ppm以下であるイミダゾールジペプチド類化合物含有抽出物を得ることができる。固形分あたりのイミダゾールジペプチド類化合物の含量は、10〜80質量%がより好ましく、20〜80%が特に好ましい。また、ヒ素化合物の含量は、質量比でイミダゾールジペプチド類化合物を1としたとき15ppm以下がより好ましく、1.5ppm以下が特に好ましい。
上記溶出工程で得られた上記溶出画分は、活性炭を用いて脱色処理するか、脱塩処理(二次脱塩処理)することが好ましく、活性炭脱色を行った後、更に脱塩処理することが特に好ましい。
活性炭による脱色処理は、上記溶出画分を塩酸、もしくは苛性ソーダやソーダ灰等のナトリウム塩を用いて溶出液のpHを2.5〜5.5に調整することが好ましい。pHが上記範囲外であると、活性炭による脱色効果が不十分となる傾向にある。
活性炭による脱色処理方法としては、特に制限は無く、pH調整を行った上記溶出画分(以下、「溶出画分中和液」と記す)に、直接活性炭を添加するバッチ方式や、活性炭をあらかじめ充填したカラムに、上記溶出画分中和液を通液するカラム方式等が例示できる。
溶出工程で得られた上記溶出画分を、このように活性炭脱色処理し、イミダゾールジペプチド類化合物の含量が1.0質量%の水溶液とした際の波長420nmの吸光値を0.5以下とすることが好ましく、0.3以下がより好ましい。
また、脱塩処理(以下より「二次脱塩処理」と記す)は、上記溶出画分を塩酸、もしくは苛性ソーダやソーダ灰等のナトリウム塩を用いて、pH3.5〜7.0に調整した後に行うことが好ましい。二次脱塩処理は、食塩阻止率80〜98%の逆浸透膜を用いて脱塩を行うことが好ましく、このような逆浸透膜としては、例えば、商品名「NTR−729」(日東電工社製)等が挙げられる。上記食塩阻止率の逆浸透膜を装着した膜分離装置にBrixが1〜20%となるように調整した上記中和液を通液して、脱塩処理を行うことで、イミダゾールジペプチド類化合物が膜を透過することなく、塩分のみが透過し、溶出画分中和液から効率よく脱塩をすることができる。なお、電気透析法や食塩阻止率60〜80%の逆浸透膜を用いて脱塩を行った場合、イオン交換樹脂処理を行う前では、イミダゾールジペプチド類化合物を透過させずに塩分のみを透過させるため、効率よく脱塩処理できるが、イオン交換樹脂処理後では、理由は明らかではないが、イミダゾールジペプチド類化合物が塩分と共に膜を透過してしまい、イミダゾールジペプチド類化合物の回収率が著しく低下してしまう。また、上記弱酸性イオン交換樹脂の溶出工程において、硫酸や硝酸、有機酸及びこれらの塩を用いた場合や、その後のpH調整工程において、有機酸やカルシウム塩、マグネシウム塩等のナトリウム塩以外を用いた場合、食塩阻止率80〜98%の逆浸透膜では、膜に対する透過率が低いため、脱塩が困難となる。上記弱酸性イオン交換樹脂の溶出工程において塩酸及び/又は食塩水を用いて、更にpH調整において塩酸、及び苛性ソーダやソーダ灰等を用いて、脱塩の対象となる塩類を食塩とした上で、食塩阻止率80〜98%の逆浸透膜を用いることにより、食塩のみが膜を透過するため、食塩を効率よく除去しつつ、イミダゾールジペプチド類化合物を高い収率で回収することができる。
溶出工程で得られた上記溶出画分を、このように二次脱塩処理し、塩分含量を、質量比でイミダゾールジペプチド類化合物を1としたとき0.8以下とすることが好ましく、0.4以下がより好ましく、0.2以下が特に好ましい。
以上のようにして得られたイミダゾールジペプチド類化合物含有抽出物は、イミダゾールジペプチド類化合物を高濃度で含有し、かつヒ素化合物、塩分等の不純物が少なく、色調も薄いため、飲食品等に配合するのにも適している。
本発明のアルコール酔い軽減用組成物の製品形態は、錠剤、粉末、顆粒、溶液、カプセル剤等が挙げられるが、特に制限されない。
本発明のアルコール酔い軽減用組成物によれば、これを飲酒前、飲酒中、又は飲酒後に摂取することにより、飲酒後の生体内でのアルコール代謝を改善して、悪酔い、二日酔いなどのアルコール摂取を原因とするアルコール酔いの症状を予防・緩和することができる。特に、飲酒の0〜30分前に経口的に服用することで、アルコール脱水素酵素及びアセトアルデヒド脱水素酵素の活性を高める優れた作用を発揮するため、飲酒の直前に飲料や錠剤等として容易に摂取することにより、悪酔いや二日酔いを予防する効果が得られる。
また、本発明のアルコール酔い軽減用組成物によれば、これを継続的に摂取することによって、アルコール代謝能力を改善し、アルコール依存症や、肝臓などの臓器障害の予防にも役立つと考えられる。
本発明のアルコール酔い軽減用組成物の1日当りの有効摂取量は、イミダゾールジペプチド類化合物換算で0.5〜200mg/体重kg、より好ましくは0.5〜10mg/体重kgである。
一方、本発明のアルコール酔い軽減用組成物様々な飲食品に配合することも、特に制限はない。例えば、(1)清涼飲料、炭酸飲料、果実飲料、野菜ジュース、乳酸菌飲料、乳飲料、豆乳、ミネラルウォーター、茶系飲料、コーヒー飲料、スポーツ飲料、アルコール飲料、ゼリー飲料等の飲料類、(2)トマトピューレ、キノコ缶詰、乾燥野菜、漬物等の野菜加工品、(3)乾燥果実、ジャム、フルーツピューレ、果実缶詰等の果実加工品、(4)カレー粉、わさび、ショウガ、スパイスブレンド、シーズニング粉等の香辛料、(5)パスタ、うどん、そば、ラーメン、マカロニ等の麺類(生麺、乾燥麺含む)、(6)食パン、菓子パン、調理パン、ドーナツ等のパン類、(7)アルファー化米、オートミール、麩、バッター粉等、(8)焼菓子、ビスケット、米菓子、キャンデー、チョコレート、チューイングガム、スナック菓子、冷菓、砂糖漬け菓子、和生菓子、洋生菓子、半生菓子、プリン、アイスクリーム等の菓子類、(9)小豆、豆腐、納豆、きな粉、湯葉、煮豆、ピーナッツ等の豆類製品、(10)蜂蜜、ローヤルゼリー加工食品、(11)ハム、ソーセージ、ベーコン等の肉製品、(12)ヨーグルト、プリン、練乳、チーズ、発酵乳、バター、アイスクリーム等の酪農製品、(13)加工卵製品、(14)干物、蒲鉾、ちくわ、魚肉ソーセージ等の加工魚や、乾燥わかめ、昆布、佃煮等の加工海藻や、タラコ、数の子、イクラ、からすみ等の加工魚卵、(15)だしの素、醤油、酢、みりん、コンソメベース、中華ベース、濃縮出汁、ドレッシング、マヨネーズ、ケチャップ、味噌等の調味料や、サラダ油、ゴマ油、リノール油、ジアシルグリセロール、べにばな油等の食用油脂、(16)スープ(粉末、液体含む)等の調理、半調理食品や、惣菜、レトルト食品、チルド食品、半調理食品(例えば、炊き込みご飯の素、カニ玉の素)等が挙げられる。
上記のように飲食品に配合する場合、一食当りの添加量はイミダゾールジペプチド類化合物換算で10〜2,000mgが好ましく、10〜500mgがより好ましい。
以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
<試験例1> 血中アルコール濃度測定
5%アンセリン含有かつお抽出物(焼津水産化学工業株式会社製、商品名「マリンアクティブ」)をハードカプセルに詰め、試験品とした。また、マルトデキストリン(松谷化学工業株式会社製、商品名「パインデックス#2」)をハードカプセルに詰め、対象品とした。
被験者に、上記試験品又は対象品を摂取量が男性600mg、女性450mgとなるように水で服用してもらい、服用後すぐに体重1kg当たり8mlのビールを摂取してもらった。そして、0、30、90、150分後に採血し、その血中アルコール濃度を血中アルコール濃度測定用キット(シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社製、商品名「NAD-ADH Reagent Multiple Test Vial」)で測定した。なお、試験は、試験品を摂取するアンセリン摂取群と対象品を摂取するプラセボ摂取群とに試験群を分け、男性2名、女性2名による二重盲検クロスオーバー法で行った。
得られた結果を、下記表1に示す。また、各試験群の平均を取ったグラフを図1に示す。
表1及び図1に明らかなように、アンセリン摂取群ではプラセボ摂取群に比べて血中アルコール濃度が低値を示す傾向があった。また、その傾向は、特に、ビール摂取後90分後において顕著であった。したがって、アンセリンを含有する5%アンセリン含有かつお抽出物には、生体内のアルコール代謝を促進する作用効果があることが明らかとなった。
<試験例2> アセトアルデヒド付加体形成に対する影響
アルコール依存症の薬として用いられるシアナミド、ジスルフィラムは、アセトアルデヒドの分解をわざと妨げ、アルコールの代謝産物であるアセトアルデヒドによる不快感により、アルコール摂取の制限を促す。このようにアセトアルデヒドが体内に蓄積すると、非常に高い毒性のため不快感を伴い、また、不快感以外にも、肝障害、遺伝損傷、発ガン作用、皮膚への刺激などを引き起こすことが報告されている(Soffritti M et al., Ann NY Acad Sci. 2002 Dec; 982: 87-105.; Singh NP et al., Mutat Res. 1995 Jul; 337 (1): 9-17.)。
このようなアセトアルデヒドによる害の作用機序の一つとして、「アセトアルデヒド付加体形成」がある。アセトアルデヒドのカルボニル基は例えばタンパク質のアミノ基と反応し、タンパク質−アセトアルデヒド結合体を形成し、そのタンパク質の機能を損なう。例えば、アルコール飲酒者にはヘモグロビン−アセトアルデヒド結合体が増えることが報告されている(Peterson CM et al., Alcohol 1988 Sep-Oct;5(5):371-4.)。
そこで、アルコールの代謝産物であるアセトアルデヒドの害に対するイミダゾールジペプチド類化合物の効果を評価するために、アルブミン−アセトアルデヒド付加体形成に対する影響を調べた。
試験は、100mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.4)、1%アルブミン、100mMアセトアルデヒドからなる反応溶液中で、37℃で7日間反応させることでアルブミン−アセトアルデヒド付加体生成反応を引き起こし、その反応溶液中に、10、50、100mMの各濃度となるようにアンセリン、カルノシン、又はリジンを添加することによる影響を評価することによって行った。そして、アセトアルデヒド及びアンセリン、カルノシン、又はリジンを添加しないものを陰対照(ネガティブコントロール)とし、アセトアルデヒドを添加し、アンセリン、カルノシン、又はリジンを添加しないものを陽対照(ポジティブコントロール)とした。
図2(a)は、常法に従い、上記反応後の反応溶液の一部をSDS−PAGEゲル電気泳動にかけ、電気泳動後のゲルをクマシーブルーにより染色した写真である。レーン1は陰対照であり、反応溶液に添加したアルブミンのバンドが確認できた(図中、矢印でその位置を示す。)。レーン2は陽対照であり、反応溶液に添加したアルブミンのバンドとともに移動度が小さいスメア状バンドが確認できた(図中、括弧でその位置を示す。)。この移動度が小さいスメア状バンドは、アルブミンのリジン残基等にアセトアルデヒドが化学結合すること等により生じたアルブミン−アセトアルデヒド付加体であると考えられる。
図2(a)レーン3〜5は、反応溶液中にリジンを添加した場合の結果である。レーン3〜5ではレーン2の陽対照と同程度に移動度が小さいスメア状バンドが確認できた。したがって、アルブミン−アセトアルデヒド付加体形成は、リジンの添加により抑制されないことがわかる。
図2(a)レーン6〜8は、反応溶液中にアンセリンを添加した場合の結果である。レーン6〜8では、レーン1の陰対照と同程度にしか移動度が小さいスメア状バンドが確認できなかった。したがって、アンセリンの添加によりアルブミン−アセトアルデヒド付加体形成が抑制されることがわかる。
図2(a)レーン9〜11は、反応溶液中にカルノシンを添加した場合の結果である。レーン9〜11では、アンセリン添加の場合と同様に、レーン1の陰対照と同程度にしか移動度が小さいスメア状バンドが確認できなかった。したがって、カルノシンの添加によりアルブミン−アセトアルデヒド付加体形成が抑制されることがわかる。
図2(b)は、図中、矢印でその位置が示される上記染色ゲルのバンドを、常法に従い画像解析によって定量化して、未修飾アルブミンの残存比率をグラフ化したものである。
以上の結果から、アンセリンやカルノシンには、アルブミン−アセトアルデヒド付加体形成を抑制する作用効果があることが明らかとなった。また、その作用効果はリジンには認められず、イミダゾールジペプチド類化合物などの特定の化合物に特有のものであることが考えられた。
また、上述したように、アルコールの代謝産物であるアセトアルデヒドによる害には、「アセトアルデヒド付加体形成」の作用機序が深く関与していることが考えられることから、アンセリンやカルノシンなどのイミダゾールジペプチド類化合物を摂取することによって、生体内のタンパク質を「アセトアルデヒド付加体形成」から保護し、飲酒による悪酔い、二日酔いを予防・緩和できることが示唆された。
<試験例3> 体感評価試験
アルコール酔いの症状についての体感評価試験を以下のように行った。
5%アンセリン含有かつお抽出物(焼津水産化学工業株式会社製、商品名「マリンアクティブ」)を試験品とし、被験者13人に対して、一人当たり500mgを水で服用してもらい、服用後すぐに自由にビールを摂取してもらった。そして、ビール飲酒当日の調子、及びその翌日の二日酔いに関して、通常の飲酒時より増して不快感を感じる場合を0点、通常の飲酒時と同程度である場合を5点、通常の飲酒時より調子がよい場合を10点という基準のもとに、10段階で評価してもらった。また、対照として、マルトデキストリン(松谷化学工業株式会社製、商品名「パインデックス#2」)を対照品とし、被験者12人に対して同様に体感評価試験を行った。
その結果、上記表2又は図3に示すとおり、「当日の調子」についてアンセリン摂取群では有意に改善されており、「翌日の二日酔い」についても改善傾向が認められた。
したがって、アンセリンを含有する5%アンセリン含有かつお抽出物には、飲酒当日の調子を良くし、翌日の二日酔いを予防・緩和する作用効果があることが明らかとなった。
また、上記試験例2の結果を考え合わせると、このアルコール酔いの症状を軽減する効果は、5%アンセリン含有かつお抽出物に含まれるアンセリンに起因するものであることが強く示唆された。
ビール飲酒後の血中アルコール濃度の経時変化を示す図表である。 (a)アルブミン−アセトアルデヒド付加体形成反応後の反応溶液の一部をSDS−PAGEゲル電気泳動にかけ、電気泳動後のゲルをクマシーブルーにより染色した写真、及び(b)同染色ゲルから定量、算出された未修飾アルブミン残存比率を示す図表である。 ビール飲酒当日の調子、及びその翌日の二日酔いに関する評価点の平均及び統計的有意差を示す図表である。

Claims (2)

  1. アンセリンを有効成分として含有し、悪酔い、二日酔いを予防・緩和するために用いられることを特徴とするアルコール酔い軽減用組成物。
  2. 魚肉、鳥肉、及び畜肉からなる群から選ばれた少なくとも一種以上から得られた抽出物であって、アンセリンの含有量が固形分換算で1〜99.9質量%である抽出物からなる請求項1記載のアルコール酔い軽減用組成物。
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