JPH0797323A - 鉄吸収促進剤 - Google Patents

鉄吸収促進剤

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JPH0797323A
JPH0797323A JP6095176A JP9517694A JPH0797323A JP H0797323 A JPH0797323 A JP H0797323A JP 6095176 A JP6095176 A JP 6095176A JP 9517694 A JP9517694 A JP 9517694A JP H0797323 A JPH0797323 A JP H0797323A
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iron
anserine
food
carnosine
iron absorption
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JP6095176A
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Masami Harada
雅己 原田
Masahiro Nakao
正宏 中尾
Koichi Hirai
孝一 平井
Taeko Umeyama
妙子 梅山
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Suntory Ltd
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Suntory Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 新しいタイプの鉄吸収促進剤並びに鉄吸収促
進作用を有する飲食品を提供する。 【構成】 カルノシン、アンセリン、バレニン、及びπ
−メチルヒスチジンの群から選ばれた1種以上のイミダ
ゾール化合物を有効成分として含有する鉄吸収促進剤;
並びにカルノシン、アンセリン、バレニン、及びπ−メ
チルヒスチジンを実質上含有しない飲食物に、カルノシ
ン、アンセリン、バレニン、及びπ−メチルヒスチジン
の群から選ばれた1種以上のイミダゾール化合物、又は
これを主成分とする抽出物を添加して成る、鉄吸収促進
作用を有する飲食品及びその製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、カルノシン、アンセリ
ン、バレニン、π−メチルヒスチジン、又はこれらを主
成分とする抽出物を含有する鉄吸収促進剤、並びに鉄吸
収促進作用を有する飲食品及びその製造方法に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】鉄は人間にとって生命を維持する上で不
可欠の必須微量栄養素の一つであって、酸素を運搬する
赤血球中のヘモグロビンの主要成分であると共に、筋肉
中のミオグロビンおよび体内の酸化還元に関与する酵素
の成分として重要である。
【0003】近年の国民栄養調査によれば、国の定めた
標準値としての鉄分の摂取量は男女平均ではほぼ満たさ
れているにもかかわらず、有経女性の半数が鉄欠乏であ
るといわれており、また成長期の子供が鉄欠乏となる傾
向が増加しているという指摘もあり、鉄欠乏によって生
じる貧血等の諸症状の予防改善が必要とされている。ま
た、献血や手術後、産後には血清鉄、ヘモグロビン含量
等が減少するが、これが元の正常値に戻るまでに長期を
必要としており、この回復期間をできる限り短縮するこ
とが望まれてもいる。
【0004】有経女性は成人男性の2倍近い鉄が必要と
考えられているが、摂取鉄量は摂取カロリー量にほぼ比
例していることから、男性に比較して摂取カロリーの少
ない女性の摂取鉄量は必要量を下回ると考えられてい
る。また、女性の嗜好性、ダイエット志向からも吸収率
の良いヘム鉄を含む肉、レバーなどの摂取量が男性に比
較して少ないことも問題であった。
【0005】さらに、鉄の体内動態を鑑みた場合、鉄を
補給することが必ずしも体内における鉄の代謝改善につ
ながらないことが問題であった。すなわち、食物を通じ
て体内に取り込まれた鉄は、まず消化管の粘膜上皮細胞
中でフェリチンと結合し貯蔵鉄として貯えらるが、鉄の
腸管吸収はこの粘膜上皮細胞における鉄の貯蔵状態によ
って厳密に支配、調節されているため、鉄を多量に供給
しても、粘膜上皮細胞中のフェリチンに対し鉄が飽和状
態になると、余剰の鉄はそのまま排泄されてしまうので
ある。
【0006】粘膜上皮細胞中に貯蔵された鉄は、二価の
鉄イオンとして遊離され、フェロオキシダーゼによって
三価の鉄イオンに変換され、これがアポトランスフェリ
ンに結合してトランスフェリン(輸送鉄)となり、血漿
を移行して各組織に運搬され利用されるとともに、粘膜
上皮細胞では貯蔵鉄が減少することによって鉄の腸管吸
収が開始される。また各組織に運ばれた鉄は、特に肝臓
で貯蔵鉄として貯蔵され、該貯蔵鉄も必要に応じてフェ
ロオキシダーゼによって輸送鉄に変換され利用される。
従って食物として摂取された鉄が吸収され各組織で利用
されるためには、もしくは各組織に貯蔵されている鉄が
利用されるためには、貯蔵鉄が輸送鉄に変換されること
が必要であると言える。
【0007】一方、The Journal of Biological Chemis
try Vol.246 No.9, 3018-3023 (1971)には、灌流肝にフ
ェロオキシダーゼ(セルロプラスミン)を与えると、肝
内に貯蔵されていた二価の鉄をトランスフェリン(三価
の鉄とアポトランスフェリンの結合体)の形で血液中に
遊離させる反応が促進されることが報告されている。
【0008】しかしながら、貯蔵鉄を輸送鉄に変換し鉄
の代謝を促進させることによって、鉄の吸収を促進させ
る作用を有する安全な低分子化合物はいままで得られて
おらず、貯蔵鉄を少なくとも酸化することにより輸送鉄
に変換し、鉄の吸収を促進させる作用を有し、かつ安全
性の高い鉄吸収促進剤、並びに鉄吸収促進作用を有する
飲食物の開発が強く望まれていた。
【0009】一方、カルノシン(β−アラニル−L−ヒ
スチジン)、アンセリン(β−アラニル−π−メチル−
L−ヒスチジン)、バレニン(β−アラニル−τ−メチ
ル−L−ヒスチジン)は、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生
類などの筋肉組織中に存在するジペプチドであり、既に
公知の物質である。これらのペプチドが今世紀はじめに
発見されて以来、多くの研究がなされ、カルノシンやア
ンセリンは脊椎動物の骨格筋中に1−20mMの濃度範囲
で存在することが報告されており、その含量は筋肉の種
類や動物の年齢とともに変化することが知られている。
【0010】しかしながら近年になり作用効果の研究が
行われ、L−カルノシンに、熱傷治癒作用(特開昭53
−127835号公報)があることが発見され、その作
用機序がL−カルノシンの組織修復促進作用(Surgery 1
00:815-821, 1986)及び免疫調節作用(特開昭61−1
86322号公報)によることが解明されている。また
L−カルノシンを、歯槽膿漏の治療剤(特公昭55−4
3450号公報)、痔の治療剤(特公平1−9964号
公報)、湿疹性皮膚疾患及び薬疹治療剤(特公平1−4
5451号公報)、抗腫瘍剤(特公平3−12045号
公報)、化学療法剤の副作用除去剤(特公平5−139
28号公報)、抗潰瘍剤(特開平1−42471号公
報)、体質強化改善剤(特開平2−221230号公
報)等に用いることが開示されている。
【0011】さらに特開平1−246218号公報で
は、L−アンセリンが免疫調節作用を有することが、特
開平4−16166では、カルノシン、アンセリン、バ
レニンが血圧上昇抑制作用を有することが、特開平4−
187067号公報では、カルノシン、アンセリン、バ
レニンがタンパク質食品の酸化防止効果を有すること
が、特公昭63−47435号公報では、カルノシン、
アンセリン、バレニンを製品含有量で0.1%以上とな
るように添加し、かつpHを6.5以上とすることにより
製品の呈味を改善することが、また特開平2−3505
7号公報では、L−カルノシンを高濃度に含有する機能
性食品が開示されている。
【0012】またL−カルノシンは1969年から19
年以上にわたりメルク・イゴダ社からCarnibion の商品
名でスペインで保健用一般薬として市販されていた。
(1日1g内服が保健用として能書に記載されてい
る。)しかしながらカルノシン、アンセリン、バレニン
が、フェロオキシダーゼ様活性を呈し、鉄吸収促進作用
を有することは全く知られていなかった。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】従って本発明は、フェ
ロオキシダーゼ様活性を有しかつ安全性の高い鉄吸収促
進剤、並びに鉄吸収促進作用を有する飲食物を提供しよ
うとするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明者は上記課題を解
決するため、鋭意研究を行った結果、カルノシン、アン
セリン、バレニン、π−メチルヒスチジン、又はこれら
を主成分とする抽出物が、フェロオキシダーゼ様活性を
呈し鉄吸収促進作用を有することを見い出し、本発明を
完成するに至った。
【0015】従って本発明は、カルノシン、アンセリ
ン、バレニン、π−メチルヒスチジンの群から選ばれた
1種以上のイミダゾール化合物を含有して成る鉄吸収促
進剤を提供しようとするものである。本発明はまた、カ
ルノシン、アンセリン、バレニン、及びπ−メチルヒス
チジンを実質上含有しない飲食物に、カルノシン、アン
セリン、バレニン、π−メチルヒスチジン、又はこれら
を主成分とする抽出物を添加して成る、鉄吸収促進作用
を有する飲食品に関する。さらにカルノシン、アンセリ
ン、バレニン、及びπ−メチルヒスチジンを生来的に実
質上含有しない飲食物に、カルノシン、アンセリン、バ
レニン、π−メチルヒスチジン、又はこれらを主成分と
する抽出物を添加することを特徴とする鉄吸収促進作用
を有する飲食品の製造方法に関する。
【0016】
【作用】本発明の有効成分であるカルノシン、アンセリ
ン、バレニン、又はπ−メチルヒスチジンが体内に摂取
されると、該イミダゾール化合物は生体内の微量元素と
錯体を形成し、該錯体がフェロオキシダーゼ様活性を呈
することによって貯蔵鉄が輸送鉄に変換され、鉄の代謝
すなわち食物として摂取された鉄の吸収や肝臓等に貯蔵
されている鉄の活用を促進したりするものと思われる。
すなわち貯蔵鉄が輸送鉄に変換されることによって消化
管の粘膜上皮細胞中のフェリチンがフリーの状態にな
り、食物を通じて体内に取り込まれた鉄を貯蔵鉄として
蓄えることができ、吸収が促進される。
【0017】
【具体的な説明】本発明のカルノシン(β−アラニル−
L−ヒスチジン)、アンセリン(β−アラニル−π−メ
チル−L−ヒスチジン)、バレニン(β−アラニル−τ
−メチル−L−ヒスチジン)は、天然物、例えばカツオ
節あるいは煮干しの製造時に排出される煮汁や、マグロ
缶詰の製造時に排出される煮汁、あるいは廃鶏肉等の安
価な原料から抽出・分離・精製されたものであっても、
化学的又は酵素的に合成されたものであっても、また微
生物によって産生されたものであってもよい。
【0018】さらに本発明のπ−メチルヒスチジンも、
天然物から抽出したものであっても、化学的、酵素的に
合成されたものであっても、また微生物によって産生さ
れたものであってもよい。また本発明のカルノシン、ア
ンセリン、バレニン、π−メチルヒスチジンは、D体、
L体、DL体のいずれであってもよく、また酸付加塩で
あってもよく、これらは単独で又は組み合せて使用する
ことができる。酸付加塩としては製薬上許容される塩、
例えば塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、コハク酸塩、クエン酸
塩、酒石酸塩などが好ましいものとして挙げられる。
【0019】本発明の鉄吸収促進作用を有する飲食品に
おいて、本発明のカルノシン、アンセリン、バレニン、
π−メチルヒスチジンは、必ずしも高純度精製品に限っ
たことはなく、本発明のイミダゾール化合物を主成分と
する抽出物を使用することもできる。
【0020】ここで本発明のイミダゾール化合物を主成
分とする抽出物とは、例えばカツオ節あるいは煮干しの
製造時に排出される煮汁やマグロ缶詰の製造時に排出さ
れる煮汁の濃縮液や廃鶏肉等から常法に従って抽出され
た抽出物、あるいはカツオ節あるいは煮干しの製造時に
排出される煮汁や、マグロ缶詰の製造時に排出される煮
汁等から常法に従って分離された本発明のイミダゾール
化合物を含有する画分等を挙げることができる。
【0021】特にマグロ缶詰の製造時に排出される煮汁
からの画分にはアンセリンが豊富に含まれているため好
ましい。なお本発明のイミダゾール化合物を主成分とす
る抽出物のイミダゾール化合物の含量は2%以上、好ま
しくは10%以上、より好ましくは50%以上がよく、
特にアンセリンの含量は1%以上、好ましくは5%以
上、より好ましくは20%以上がよい。
【0022】さらに本発明のイミダゾール化合物は、鉄
吸収促進効果が認められているビタミンC等の他の鉄吸
収代謝促進剤と組み合わせて使用することもできる。ま
た本発明のイミダゾール化合物は生体内の微量元素と錯
体を形成し該錯体がフェロオキシダーゼ様活性を呈する
ことによって貯蔵鉄が輸送鉄に変換され鉄吸収促進作用
を呈するものであるから、生体内の微量元素が欠乏して
いる状態では本発明の作用を十分発揮し得ない虞れがあ
る。従って、微量元素が欠乏している場合にはその補充
が必要であり、この意味から本発明のイミダゾール化合
物と微量元素とを併用する。
【0023】微量元素とは、生体にとって必須ではある
が必要量の少ない元素であり、鉄、銅、亜鉛、マンガ
ン、セレン、フッ素、ケイ素、バナジウム、クロム、コ
バルト、ニッケル、ヒ素、モリブデン、スズ、ヨウ素、
鉛が挙げられる。本発明のイミダゾール化合物が、フェ
ロオキシダーゼ様活性を発揮するためには、微量元素に
対するイミダゾール化合物の局所での存在比(モル比)
が、50以上であれば良く、好ましくは100以上であ
るのが良い。
【0024】また本発明のイミダゾール化合物によって
鉄の吸収が促進されても鉄分が欠乏していては意味がな
いため、本発明のイミダゾール化合物と鉄化合物を併用
することもできる。鉄化合物としては、特に限定される
ことなく、塩化鉄、硫酸第一鉄、クエン酸第一鉄、クエ
ン酸鉄アンモニウム、コハク酸クエン酸鉄ナトリウム、
乳酸鉄、ピロリン酸鉄、その他無機ないし有機の鉄化合
物が適宜使用できるし、配合量も市販鉄剤と同様にすれ
ばよい。
【0025】本発明においては、鉄の吸収促進効果が高
いので、少量の鉄分を配合してもこれを有効に利用する
ことができる。特にアンセリンはそれ自体が生体内で微
量元素と錯体を形成しフェロオキシダーゼ様活性を示す
とともに、代謝(加水分解)によってπ−メチルヒスチ
ジンが生成され、該アミノ酸がアンセリンと同様の活性
を示すため、より効果的である。
【0026】また「フェロオキシダーゼ様活性を有す
る」とは、鉄の代謝においてフェロオキシダーゼ(二価
の鉄イオンを酸化する酵素)と同様の活性を発揮するこ
とを意味するものである。
【0027】本発明の鉄吸収促進剤は、フェロオキシダ
ーゼ様活性を有しているため、貧血、頭痛、耳鳴り、息
切れ、眩暈、運動障害、倦怠感等の鉄の利用が不十分で
あるために起こる種々の症状に非特異的に適用されるこ
とが期待できる。また献血後や手術後、産後の鉄吸収促
進剤としても適用できると考えられる。
【0028】本発明の鉄吸収促進剤を医薬品として用い
る場合、投与形態は、経口投与または非経口投与が都合
よく行われるものであればどのような剤形のものであっ
てもよく、例えば注射液、輸液、散剤、顆粒剤、錠剤、
カプセル剤、腸溶剤、坐剤、軟膏剤、吸入剤、トローチ
等を挙げることができ、これらを症状に応じてそれぞれ
単独で、または組み合わせて使用することができる。こ
れら各種製剤は、常法に従って目的に応じて主薬に賦形
剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味剤などの医薬の製剤
技術分野において通常使用しうる既知の補助剤を用いて
製剤化することができる。
【0029】本発明の鉄吸収促進剤の投与量は投与経
路、剤形、症状、年齢、体重などによって異なるが、通
常は成人に対し、経口投与の場合、本発明のイミダゾー
ル化合物の総量として50mg〜5g/日、好ましくは1
00mg〜2g/日、より好ましくは50mg〜2g/日、
より好ましくは50〜500mg/日、さらに好ましくは
50〜180mg/日、さらに好ましくは50〜100mg
/日、
【0030】またカルノシンとして50mg〜5g/日、
好ましくは100mg〜2g/日、より好ましくは50mg
〜2g/日、より好ましくは50〜500mg/日、さら
に好ましくは50〜180mg/日、さらに好ましくは5
0〜100mg/日、
【0031】またアンセリンとして50mg〜5g/日、
好ましくは100mg〜2g/日、より好ましくは50mg
〜2g/日、より好ましくは50〜500mg/日、さら
に好ましくは50〜180mg/日、さらに好ましくは5
0〜100mg/日、またπ−メチルヒスチジンとして3
5mg〜5g/日、好ましくは70mg〜2g/日、より好
ましくは35mg〜2g/日、より好ましくは35〜50
0mg/日、
【0032】非経口投与の場合、本発明のイミダゾール
化合物の総量として5〜500mg/日、好ましくは10
〜200mg/日、より好ましくは5〜200mg/日、よ
り好ましくは5〜50mg/日、さらに好ましくは5〜1
8mg/日、さらに好ましくは5〜10mg/日、またカル
ノシンとして5〜500mg/日、好ましくは10〜20
0mg/日、より好ましくは5〜200mg/日、より好ま
しくは5〜50mg/日、さらに好ましくは5〜18mg/
日、さらに好ましくは5〜10mg/日、
【0033】またアンセリンとして5〜500mg/日、
好ましくは10〜200mg/日、より好ましくは5〜2
00mg/日、より好ましくは5〜50mg/日、さらに好
ましくは5〜18mg/日、さらに好ましくは5〜10mg
/日、またπ−メチルヒスチジンとして3.5〜500
mg/日、好ましくは7〜200mg/日、より好ましくは
3.5〜200mg/日、より好ましくは3.5〜50mg
/日である。
【0034】本発明のカルノシン、アンセリン、バレニ
ン、π−メチルヒスチジンや微量元素は、元来生体内に
存在する物質であるため、低毒性で安全性も高いことか
ら、鉄吸収促進剤としての意義も大きい。例えばL−カ
ルノシンの安全性については特開平2−35057号公
報の急性毒性の項に記載されている通りである。
【0035】本発明の鉄吸収促進剤を飲食品の形態で使
用する場合には、上記製剤の形態でもよいが、所要量の
本発明のカルノシン、アンセリン、バレニン、π−メチ
ルヒスチジン、又はこれらを主成分とする抽出物を飲食
品原料、特にカルノシン、アンセリン、バレニン、π−
メチルヒスチジンを本来実質的に含有しない飲食品原料
に加えて、一般の製造法により加工製造することができ
る。その配合量は剤型、食品の形態性状により異なる
が、一般には0.001〜50%が好ましいが特に限定
されるものではない。
【0036】本発明において、カルノシン、アンセリ
ン、バレニン、π−メチルヒスチジンを実質上含有しな
い飲食物としては、例えば牛肉、豚肉、鶏肉、魚肉、鯨
肉等の肉類を原料としない飲食物や、牛肉、豚肉、鶏
肉、魚肉、鯨肉等の肉類のエキスを使用していない飲食
物が挙げられるが、
【0037】牛肉、豚肉、鶏肉、魚肉、鯨肉等の肉類を
原料とする飲食物や、牛肉、豚肉、鶏肉、魚肉、鯨肉等
の肉類のエキスを用いた飲食物であっても、カルノシ
ン、アンセリン、バレニン、π−メチルヒスチジンの製
品含量が極微量であるため、1食あたりのカルノシン、
アンセリン、バレニン、π−メチルヒスチジンの総含量
が50mg未満のもの、あるいは1食あたりのアンセリン
含量が50mg未満のものは、本発明のカルノシン、アン
セリン、バレニン、π−メチルヒスチジンを実質上含有
しない飲食物に含まれる。
【0038】食品の形態としては、カルノシン、アンセ
リン、バレニン、π−メチルヒスチジンを単独で又は組
み合せてもしくはイミダゾール化合物を主成分とする抽
出物を、蛋白質(蛋白質源としてはアミノ酸バランスの
とれた栄養価の高い乳蛋白質、大豆蛋白質、卵アルブミ
ン等の蛋白質が最も広く使用されるが、これらの分解
物、卵白のオリゴペプチド、大豆加水分解物等の他、ア
ミノ酸単体の混合物も使用される)、糖類、脂肪等に、
微量元素、ビタミン類、乳化剤、香料等とともに配合
し、
【0039】自然流動食、半消化態栄養食および成分栄
養食とするか、もしくは固形、あるいは液状の食品ない
しは嗜好品、例えばパン、めん類、ごはん、菓子類(ビ
スケット、ケーキ、キャンデー、チョコレート、和菓
子)、豆腐およびその加工品などの農産食品、清酒、薬
用酒などの発酵食品、みりん、食酢、醤油、味噌、ドレ
ッシング、ヨーグルト、ハム、ベーコン、ソーセージ、
マヨネーズなどの畜農食品、かまぼこ、揚げ天、はんぺ
んなどの水産食品、果汁飲料、清涼飲料、スポーツ飲
料、アルコール飲料、茶などの飲料等の形態にすること
ができる。
【0040】また鉄の利用が不十分であるために起こる
種々の症状に対する予防改善や健康維持、また献血後や
手術後、産後の鉄吸収促進を目的として、医師の食事箋
に基づく栄養士の管理の下に、病院給食の調理の際に任
意の食品に本発明のイミダゾール化合物の粉末を加え、
その場で調整した機能性食品の形態で患者に与えること
もできる。また本発明の飲食品にはビタミン剤やホルモ
ン剤その他の栄養剤、また微量元素や、ビタミンC等の
他の鉄吸収代謝促進剤や鉄化合物を混入させてもよい。
【0041】また本発明の鉄吸収促進作用を有する飲食
品は、鉄の利用が不十分であるために起こる種々の症状
に対する予防改善や健康維持、また献血後や手術後、産
後の鉄吸収促進を目的として、本発明のイミダゾール化
合物の総量として1日あたり50mg以上、好ましくは1
00mg以上、より好ましくは50mg〜5g、より好まし
くは100mg〜2g、より好ましくは50mg〜2g、よ
り好ましくは50〜500mg、さらに好ましくは50〜
180mg、さらに好ましくは50〜100mgの範囲で経
口摂取されることが望ましい。
【0042】またカルノシンとして1日あたり50mg以
上、好ましくは100mg以上、より好ましくは50mg〜
5g、より好ましくは100mg〜2g、より好ましくは
50mg〜2g、より好ましくは50〜500mg、さらに
好ましくは50〜180mg、さらに好ましくは50〜1
00mgの範囲で経口摂取されることが望ましい。
【0043】またアンセリンとして1日あたり50mg以
上、好ましくは100mg以上、より好ましくは50mg〜
5g、より好ましくは100mg〜2g、より好ましくは
50mg〜2g、より好ましくは50〜500mg、さらに
好ましくは50〜180mg、さらに好ましくは50〜1
00mgの範囲で経口摂取されることが望ましい。
【0044】またπ−メチルヒスチジンとして1日あた
り35mg以上、好ましくは70mg以上、35mg〜5g、
好ましくは70mg〜2g、より好ましくは35mg〜2
g、より好ましくは35〜500mgの範囲で経口摂取さ
れることが望ましい。
【0045】
【実施例】以下、実施例により本発明を説明するが、こ
れらは本発明を制限するものではない。
【0046】実施例1. フェロオキシダーゼ活性の測
30mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.40)にアポト
ランスフェリン(牛血漿高純度鉄フリー:ナカライテス
ク製あるいは伊藤ハム製)を123μMの濃度で溶解
し、試験管に900μlとった。これに、本発明のペプ
チド又はアミノ酸と微量元素の混合液(サンプルとして
下記表に示す)900μlを加えて、30℃で5分間保
温した。なお本試験では、カルノシンとしてナカライテ
スク社製のL−カルノシンを、アンセリンとしてシグマ
社製のL−アンセリン硝酸塩を、π−メチルヒスチジン
としてシグマ社製の1−メチルヒスチジンを、τ−メチ
ルヒスチジンとしてシグマ社製の3−メチルヒスチジン
を使用した。
【0047】これを3ml容のスターラーマグネット付き
キュベットに移し、30℃に保温しつつ攪拌した。1.
1mMの硫酸鉄(II)アンモニウム水溶液200μlを添
加することにより反応を開始し、鉄−トランスフェリン
結合体の生成に伴う460nmの吸光度の増加を2分間に
わたり測定した。フェロオキシダーゼ活性は吸光度増加
の初速度を以て次式より算出した。
【0048】
【数1】
【0049】カルノシンの濃度を一定(5mM)とし、銅
(II)イオン濃度を変えて反応を行った時の、銅(II)
イオン濃度とフェロオキシダーゼ活性の関係を表1に示
す。(以下「濃度」とは反応液中の最終濃度を意味す
る。)
【0050】
【表1】
【0051】銅(II)イオンの濃度を一定(25μM)
とし、カルノシン濃度を変えて反応を行った時の、カル
ノシン濃度とフェロオキシダーゼ活性の関係を表2に示
す。
【0052】
【表2】
【0053】マンガン(II)又はコバルト(II)イオン
の濃度を25μMとし、カルノシン又はアンセリンの濃
度を5mMとして反応を行った時の、フェロオキシダーゼ
活性を表3に示す。
【0054】
【表3】
【0055】銅(II)イオンの濃度を25μMとし、ヒ
スチジン、π−メチルヒスチジン、又はτ−メチルヒス
チジンの濃度を5mMとして反応を行った時の、フェロオ
キシダーゼ活性を表4に示す。
【0056】
【表4】
【0057】実施例2.マグロ缶詰製造時に排出する煮
汁の濃縮液を分子量10000で分別する限外ろ過膜で
処理し、低分子画分の清澄液を得た。希塩酸を用いて清
澄液のpHを2.2に調製した後、この液をベックマン
社、MM81タイプイオン交換樹脂を充填したカラムに
流し、アンセリン、カルノシンを吸着させた。その後カ
ラムを57℃に保温した状態で、0.4Nクエン酸ナト
リウム液を流し、アンセリン、およびカルノシンを含有
する画分を得た。これを凍結乾燥し乾燥物を得た。この
乾燥物についてアミノ酸分析計によりアンセリン、ある
いはカルノシンの含量を測定したところ、それぞれ41
%、12%であった。
【0058】実施例3.乳糖50部、蔗糖39.8部、
トラガントガム5部、ペパーミント0.2部を混合し、
これにアンセリン5部、塩化第二銅0.002部を蒸留
水3.5部に溶解した溶液を加え、よく練り合わせた。
次に、澱粉を散布したガラス板上に上記の練合物をめん
棒で伸展して厚さ約5mmのシート状とした後、型で打ち
抜き、乾燥してトローチとした。
【0059】実施例4.小麦粉100部にカルノシン2
部、塩化マンガン0.001部、蔗糖4部、食塩1.1
部、脱脂粉乳2部、イースト3部、イーストフード0.
8部、水67.2部を加えてこねた後、更に油脂5部を
加えよくこねた。28℃で90分間の第一次発酵を行っ
た。その後、パンチングを行い、28℃、20分後、成
形型に詰めて190℃で30分焼き製造した。焼き上が
り後のパンの物性についてカルノシンを加えずに製造し
た製品と比較した結果、風味、食感ともに差は認められ
なかった。
【0060】実施例5.豚肉80部にアンセリン1部、
カルノシン1部、塩化第二銅0.001部、亜硝酸ナト
リウム0.02部、食塩2部、ピロリン酸ナトリウム
0.3部、アスコルビン酸ナトリウム0.06部、蔗糖
1部を加え、10℃で72時間塩漬の後、調味料、香辛
料を加えカッティングし、練り肉を調製した。この練り
肉をケーシングに詰めた後、常法に従いソーセージを製
造した。このソーセージを官能検査した結果、アンセリ
ン、カルノシンを加えずに製造したソーセージと比較し
て、色調、食感、風味ともに差は認められなかった。
【0061】実施例6.合成したアンセリンを用いて下
記処方により顆粒剤を製造した。 アンセリン 0.2g 塩化第二銅 0.02mg 乳糖 0.34g とうもろこしデンプン 0.45g ヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.01g
【0062】実施例7.ビタミンC20g、硫酸第一鉄
10g、グラニュー糖40g、コーンスターチと乳糖の
等量混合物30gに、実施例2で得た抽出物を50g加
えて混合した。混合物を100等分して袋に詰め、1袋
1.5gの鉄吸収促進作用を有するスティック状機能性
食品100袋を製造した。
【0063】実施例8.6週齢の正常雄ラットをウレタ
ンで麻酔し、大腿動脈にカニュレーションを留置した。
L−カルノシンを50mg/kgの用量で経口的に前投与し
た群と、生理食塩水を経口的に前投与した群に分け(各
群4匹使用)、各前投与の120分後に1mMの塩化第二
鉄水溶液2mlを経口投与した。前投与時を0分とし、6
0分、120分、135分、150分、180分後に採
血し、血清鉄を測定したところ、図1に示すようにL−
カルノシン前投与群において、鉄吸収の促進が認めら
れ、血清鉄値の増加が亢進した。
【0064】
【表5】
【0065】実施例9.4週齢の雌ラットを鉄欠乏食で
2週間飼育し、貧血ラットを作成した。次に鉄を40μ
g/g含有する試験食として米糠食群と、同米糠にL−
アンセリン含有粉末(鶏肉抽出物:2.5%アンセリ
ン)を0.2%または1%添加した食餌群とに分け(各
群5匹使用)、1週間飼育した後の血清鉄と不飽和鉄結
合能(UIBC)を測定した。その結果、L−アンセリ
ン含有粉末を添加した群は無添加群と比較して血清鉄が
増加し、不飽和鉄結合能が減少したことから鉄吸収の促
進が認められた(表6)。
【0066】
【表6】
【0067】
【発明の効果】本発明の鉄吸収促進剤は、フェロオキシ
ダーゼ様活性を発揮するため、鉄の吸収代謝を促進する
のに有用であり、本発明のカルノシン、アンセリン、バ
レニン、π−メチルヒスチジンが、元来生体内に存在す
るものであるため、低毒性で安全性が高い。さらにその
原因である鉄の利用が不十分であるために起こる種々の
症状、例えば貧血、頭痛、耳鳴り、息切れ、眩暈、運動
障害、倦怠感等や献血後や手術後、産後の鉄欠乏への適
用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1はカルノシンが血清鉄の上昇(鉄の吸収の
増加)効果を有することを示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 梅山 妙子 大阪府三島郡島本町若山台1丁目1番1号 サントリー株式会社研究センター内

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 カルノシン、アンセリン、バレニン、及
    びπ−メチルヒスチジンの群から選ばれた1種以上のイ
    ミダゾール化合物を含有して成る鉄吸収促進剤。
  2. 【請求項2】 アンセリンを含有して成る鉄吸収促進
    剤。
  3. 【請求項3】 カルノシン、アンセリン、バレニン、及
    びπ−メチルヒスチジンを実質上含有しない飲食物に、
    カルノシン、アンセリン、バレニン、及びπ−メチルヒ
    スチジンの群から選ばれた1種以上のイミダゾール化合
    物、又はこれを主成分とする抽出物を添加して成る、鉄
    吸収促進作用を有する飲食品。
  4. 【請求項4】 アンセリンを実質上含有しない飲食物
    に、アンセリン又はこれを主成分とする抽出物を添加し
    て成る、鉄吸収促進作用を有する飲食品。
  5. 【請求項5】 請求項4記載の飲食品が、50mg〜5g
    /日のアンセリンを摂取できるような形態であることを
    特徴とする鉄吸収促進作用を有する飲食品。
  6. 【請求項6】 鉄吸収促進作用を有する飲食品の製造方
    法であって、カルノシン、アンセリン、バレニン、及び
    π−メチルヒスチジンを実質上含有しない飲食物に、カ
    ルノシン、アンセリン、バレニン、及びπ−メチルヒス
    チジンの群から選ばれた1種以上のイミダゾール化合
    物、又はこれを主成分とする抽出物を添加することを特
    徴とする方法。
  7. 【請求項7】 鉄吸収促進作用を有する飲食品の製造方
    法であって、アンセリンを実質上含有しない飲食物に、
    アンセリン又はこれを主成分とする抽出物を添加するこ
    とを特徴とする方法。
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