JP2735375B2 - 鉄剤、その製造法及び鉄強化食品の製造法 - Google Patents
鉄剤、その製造法及び鉄強化食品の製造法Info
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Description
が沈澱しない状態の鉄を言い、ラクトフェリンに対する
鉄の割合は総量を言う。
物質を有効成分として含有する鉄剤、該鉄剤の製造法、
及び非遊離状態の鉄を増強した鉄強化食品の製造法に関
する。
一方で、個食、偏食が強まる傾向にあり、厚生省の国民
栄養調査では鉄の摂取量が必要摂取量を満たしていない
ことが指摘されている。鉄の欠乏により、ヘモグロビン
の産生を減少せしめ、鉄欠乏性貧血の症状を招来する。
鉄欠乏は、偏食、節食等により鉄摂取量の減少による供
給不足、運動等による需要の増大、消化管出血や月経過
多等による喪失の何れか、あるいはこれらの組み合わせ
で発生する。現在、鉄の補給、貧血の予防・治療を目的
とした各種の鉄供給製剤・飲料等にはクエン酸鉄、ピロ
リン酸鉄、グルコン酸鉄、硫酸鉄、塩化鉄等の鉄剤が用
いられているが、これらの鉄剤は一般に生体における利
用性が低く、また摂取したときに鉄剤特有の収斂味を感
じるなど、飲み易さ、後味にも問題が多く、十分な量を
摂取することが困難である。
溶性になる第二鉄化合物よりも消化管内で可溶性である
第一鉄化合物の方が生体における利用性が高いことが知
られているが、第一鉄は水溶液中で酸化されて、第二鉄
となり沈澱する。また鉄剤又は鉄を強化した食品には特
有の収斂味が発生する。これらの点を改善するための種
々の試みがなされており、ヘム鉄(例えば、特開平2−
6408号公報)、脱色ヘモグロビン(例えば、特開昭63−
44868号公報)、鉄糖錯体(例えば、特開平1−80260号
公報)、鉄カゼイン(例えば、特開平2−83400号公
報)等の化合物を使用した発明、あるいは沈澱を生じな
い鉄化合物の処理法(例えば、特開昭63−294761号公
報)の発明が開示されている。
など種々の生理活性を有する糖蛋白質として注目されて
おり、ラクトフェリン1分子当たり2分子の鉄を結合し
ている鉄ラクトフェリン(ラクトフェリン1g当たり約1.
4mgの鉄に相当する)は貧血を予防できること[ジャー
ナル・オブ・ベディアトリック・ガストロエンテロロジ
ー・アンド・ニュートリーション(Journal of Paediat
ric Gastroenterology and Nutrition)、第2巻、第69
3ページ、1983年]、及びラクトフェリンと結合した鉄
は、3価の鉄であるにもかかわらず2価の鉄と同程度の
生体利用性を示すこと[ニュートリーション・リサーチ
(Nutrition Research)、第3巻、第373ページ、1983
年]が報告されている。またラクトフェリン1分子に第
二鉄イオン1〜2分子をキレート結合させた増血剤も開
示されている(特開昭63−22525号公報)。
クトフェリンを利用する場合、所望の鉄量に対して多量
のラクトフェリンを必要とするため、鉄補給剤あるいは
鉄強化用添加物としての鉄ラクトフェリンは、従来実用
化されていなかった。
鉄強化食品における上述の収斂味の問題を解決すること
にある。本発明者等は、これらの問題につき鋭意研究を
重ねた結果、ラクトフェリンが2分子の鉄をキレート結
合する以外に、多量の鉄分子を水溶液中において非遊離
状態で、かつ安定に維持し得るという事実を発見した。
本発明は、この新規な事実の発見に基づいている。
は獣乳から分離されたラクトフェリン1gに対して少なく
とも1.5mg(1.5〜120mgの範囲を除く)の割合の非遊離
状態の鉄を含む物質を有効成分として含有することを特
徴とする鉄剤を提供する。
ェリンを水に溶解し、ラクトフェリン1gに対して少なく
とも1.5mg(1.5〜120mgの範囲を除く)の割合の鉄を含
有する鉄化合物を添加し、ラクトフェリンと鉄とを反応
せしめ、溶液中の鉄を非遊離状態に維持することを特徴
とする鉄剤の製造法を提供する。
ら分離されたラクトフェリンを溶解し、ラクトフェリン
1gに対して少なくとも1.5mg(1.5〜120mgの範囲を除
く)の割合の鉄を含有する鉄化合物を添加し、ラクトフ
ェリンと鉄とを反応せしめ、非遊離状態の鉄を増強する
ことを特徴とする鉄強化食品の製造法を提供する。
獣乳、これらの加工物(例えば、脱脂乳、ホエー等)等
(以下、これらを乳等と記載する)から公知の方法(例
えばイオン交換クロマトグラフィー)により分離された
ままのラクトフェリン、これらをクエン酸、塩酸等で脱
鉄したアポラクトフェリン、鉄,銅等の金属で飽和した
金属飽和ラクトフェリン等及びこれらの任意の混合物
(以下、これらをまとめてLFと記載する)である。尚、
鉄,銅等の金属で飽和した金属飽和ラクトフェリン等
は、予め2分子の金属を結合しているので、本発明にお
けるラクトフェリンに対する鉄の割合は予め結合してい
るこの金属を含む総量である。鉄で飽和した1分子の鉄
ラクトフェリンは2分子の鉄を結合しているので、ラク
トフェリンの分子量を8万とし、鉄の分子量を55として
計算すると、鉄飽和ラクトフェリン1g中に1.375mgの鉄
を含むことになる。本発明の鉄ラクトフェリンにおいて
はこのキレート結合した鉄の量を含めて、少なくとも1.
5mgの鉄を非遊離状態で維持している。
鉄、クエン酸鉄等の有機鉄またはこれらの混合物であ
り、水溶性であって食品衛生上無害な食品添加物が望ま
しい。鉄化合物はそれぞれ分子量が異なるので、使用す
る鉄化合物の分子量から鉄の量を計算して本発明方法に
使用する。
合の非遊離状態の鉄を含む物質を有効成分としている。
LFと鉄との割合を上記のように決定したのは、できるだ
け多くの割合で非遊離状態の鉄を含有せしめること、及
び後述の試験例2から明らかなように、LF1gに対して10
00mgを越える割合で鉄を添加した場合、水溶液中で遊離
状態の鉄の生成を阻止できないことからである。従っ
て、本発明における鉄の量はLF1gに対して1.5〜1000mg
の割合である。
%以下の濃度で水に溶解し、LF1gに対して1.5mgから100
0mgの割合の鉄を含有する量の鉄化合物を添加し、溶解
し、十分に混合する。LFと鉄化合物の溶解順序は、上記
の逆であってもよい。又、これらのほかに、他の成分を
任意の順序で溶解又は添加し、混合してもよい。その
後、必要に応じて希釈、濃縮、濾過、加熱、加圧等の処
理を行うこともできる。以上のようにして製造した鉄剤
を水溶液状態あるいは乾燥して粉末状態としてそのま
ま、あるいはこれらを飲食物、医薬品、飼料に添加し
て、鉄補給剤あるいは鉄強化食品又は鉄強化飼料として
利用することもできる。
て1.5mgから1000mgの割合の鉄を含有する量の鉄化合物
を添加し、溶解し、十分に混合する。LFと鉄化合物の溶
解順序は上述の逆であってもよい。又、これらのほか
に、他の成分を任意の順序で溶解又は添加し、混合して
もよい。その後、必要に応じて希釈、濃縮、濾過、加
熱、加圧等の処理を行うこともでき、液状、粉末状、ゲ
ル状、固形状、ペースト状等の鉄強化食品が得られる。
又、上記のようにして製造した鉄剤の所望量をそのまま
食品に添加することもできる。これらの鉄強化食品をそ
のまま、又は他の食品に添加、混合することにより鉄強
化食品を得ることもできる。尚、食品の風味の観点か
ら、最終製品中のLFの濃度は1%以下が好ましい。
溶液は鉄LFに特有の色である淡桃色を呈するようになる
が、この淡桃色は鉄強化飲料などの着色に使用される天
然の着色料としても利用し得る。
鉄を非遊離状態で、安定に維持する性質を有することを
確認するために行われた。
示す濃度の鉄を硫酸第一鉄7水和物(和光純薬工業社
製)として加え、更に市販のLF(ベルギーのオレオフィ
ナ社製)を1%の濃度で添加し、各溶液を0.45μmのフ
ィルターで無菌濾過した後、37℃で1週間保存し、鉄の
沈澱により生じる溶液の濁度を分光光度計(日立製作所
製)を用いて660nmで測定した。又、LFを添加しないこ
とを除いては、上記と同様の処理を行った試料、LFの代
わりに牛血清アルブミン(和光純薬工業社製)及び市販
のカゼイン分解物(極東製薬社製)を添加した外はすべ
て同様の処理を行った試料を調製し、同様に試験した。
で、かなりの沈澱を生じるのに対して、LFを添加した試
料では鉄濃度1.0%でもほとんど沈澱が生成せず、遊離
状態の鉄を生じないことが判明した。一方、血清アルブ
ミン及びカゼイン分解物を添加した試料では鉄の沈澱生
成物が抑制されず、逆に蛋白質の凝集により沈澱の生成
が促進される現象が認められた。従って、LFは水溶液中
の鉄を非遊離状態で安定に維持することが判明した。
する割合を決定するために行われた。
2に示す濃度で硫酸第一鉄7水和物として加え、更に市
販のLF(ベルギーのオレオフィナ社製)を表2に示す濃
度で添加した以外は、試験例1と同様の方法で試験し
た。この試験結果を表2に示した。
し得る鉄の量は増加し、1%のLF濃度では1%の濃度の
鉄を非遊離状態に維持し得ることが判明した。これらの
濃度からLF1gは最大で鉄1000mgを、非遊離状態に維持し
得る。従って、鉄剤として又は食品に鉄を強化するた
め、通常使用される範囲の鉄濃度(0.1%以下)であれ
ばLFの濃度に関係無く、LFは非遊離状態で鉄を安定に維
持し得ることが判明した。
に行われた。
調製した。又、LFを添加しないことを除いて実施例5と
同様に調製した対照試料を調製した。
た。男女各20名のパネルにより、対照と試料との3点識
別試験法及び3点嗜好試験法(「推計学の化学及び生物
学への応用、第3集」、145ページ、南江堂発行、昭和3
6年)を同時に実施した。即ち、対照と試料との一組を
つくり、それに対照と試料との何れかひとつを加えて、
対照と試料とのいずれかを2個、他を1個、計3個を任
意に並べ(例えば、対照・試料・対照、試料・対照・試
料のように)、これらの組み合わせのうち半端な試料
(単一の試料)を識別させ、かつその半端な試料と他の
試料との好みを同時に試験した。そして半端な試料を正
しく識別した被験者の数を正解者の数とした。そして正
解者の好みに基づいて判定を行った。
に識別しているので、対照と試料との間には格段の差が
あり、3点嗜好試験では3点識別試験の正解者32名中30
名が試料を好むと判定した。従って、本発明の方法によ
り製造した鉄強化ゼリーは、鉄の収斂味が押さえられた
風味の良い製品であることが判明した。
本発明は以下の実施例により限定されるものではない。
製)100g及び硫酸第一鉄7水和物(和光純薬工業社製)
5gを溶解し、粉末状の鉄剤約100gを得た。この鉄剤には
鉄特有の収斂味が感じられなかった。
プルジュース2Kgに添加して鉄強化アップルジュース約2
Kgを得た。この鉄強化アップルジュースには鉄特有の収
斂味が感じられなかった。
方乳糖40gを添加し、乳鉢で均一に混合し、1gずつ分包
して鉄補給用散薬45包を得た。この鉄補給用散薬には鉄
特有の収斂味が感じられなかった。
ーのオレオフィナ社製)2g及び硫酸第一鉄7水和物(和
光純薬工業社製)0.1gを溶解し、鉄強化スポーツ飲料約
1Kgを得た。この鉄強化スポーツ飲料を37℃で1カ月保
存したが、保存後にも沈澱が認められず、収斂味などが
感じられず、風味は良好であった。
寒天0.05Kg、市販のグラニュー糖2.15Kg、LF(ベルギー
のオレオフィナ社製)3g、市販のクエン酸第一鉄ナトリ
ウム3gを加え、均一に混合し(この混合液のpHは5.0で
あった)、90℃で15分間加熱殺菌し、平底の容器に1cm
の深さで流し込み、冷却した。固化後、2cm角に切断
し、網上で半日乾燥し、市販のグラニュー糖をまぶして
鉄強化ゼリー500個を得た。この鉄強化ゼリーには鉄特
有の収斂味が感じられなかった。
物質であり、食品、医薬品等に添加しても安全である。
貧血の予防並びに治療に利用し得る天然の鉄吸収調製物
質を含有した鉄剤及び鉄強化食品を提供することができ
る。
るので、風味良好な鉄強化食品を提供することができ
る。
Claims (3)
- 【請求項1】人乳又は獣乳から分離されたラクトフェリ
ン1gに対して少なくとも1.5mg(1.5〜120mgの範囲を除
く)の割合の非遊離状態の鉄を含む物を有効成分として
含有することを特徴とする鉄剤。 - 【請求項2】人乳又は獣乳から分離されたラクトフェリ
ンを水に溶解し、ラクトフェリン1gに対して少なくとも
1.5mg(1.5〜120mgの範囲を除く)の割合の鉄に相当す
る鉄化合物を添加し、ラクトフェリンと鉄とを反応せし
め、溶液中の鉄を非遊離状態に維持することを特徴とす
る鉄剤の製造方法。 - 【請求項3】液体状の食品原料に人乳又は獣乳から分離
されたラクトフェリンを溶解し、ラクトフェリン1gに対
して少なくとも1.5mg(1.5〜120mgの範囲を除く)の割
合の鉄に相当する鉄化合物を添加し、ラクトフェリンと
鉄とを反応せしめ、非遊離状態の鉄を増強することを特
徴とする鉄剤の製造方法。
Priority Applications (1)
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JP2264885A JP2735375B2 (ja) | 1990-10-02 | 1990-10-02 | 鉄剤、その製造法及び鉄強化食品の製造法 |
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Family
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Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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Country Status (1)
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-
1990
- 1990-10-02 JP JP2264885A patent/JP2735375B2/ja not_active Expired - Lifetime
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