JP4694343B2 - 仔馬の造血機能改善方法及び仔馬の造血機能改善剤 - Google Patents

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Description

本発明は、ラクトフェリンを投与することにより仔馬の造血機能を改善する方法、及びラクトフェリンを有効成分として含有することを特徴とする仔馬の造血機能改善剤に関する。
馬、特にサラブレッドは、競走馬としてより速く走ることができるように運動能力を高めることを目的として改良された品種であり、非常に高い運動能力を有している。これは馬体を構成している各臓器及び各器官が高い運動性を有することによるもので、なかでも、赤血球系の血液性状や心臓循環系機能はきわめて優秀であると考えられている。
馬の血液性状(赤血球系)の特徴としては、下記1)〜4)等が挙げられる。
1)単位容積あたりの赤血球数が多いこと
サラブレッドの単位容積あたりの赤血球数は平均9,450,000/mmと他の動物のほぼ2倍の値を示している(牛:6,000,000/mm)。赤血球1個あたりの容積は小さく、人のほぼ半分であるが、容積が半分になると、その表面積は約25%程度増加することになり、肺あるいは各組織、特に筋肉における酸素の授受に役立つ構造と考えられている。
2)予備赤血球量がきわめて多いこと
生体には緊急の場合に備えて、脾臓・肺・肝臓等にかなりの量の赤血球が貯蔵されている。馬では、その大部分は濃縮した状態で脾臓に貯えられている。切除直後の脾臓重量比は、他の動物に比較すると数倍以上にもなる(脾臓重:平均10.29kg、含有血液量:平均4.59kg)。
3)運動強度の増加に伴って血球容積比(PCV)及びヘモグロビン量が増加すること
馬では運動強度の増加にともなって、PCVがほぼ運動強度に比例して増加する。安静時のPCVは35〜45%(成馬)であるが、速歩程度の低強度の運動においても45〜50%程度に上昇し、さらに最大酸素摂取量に達するような最大強度の運動となると55〜60%にも達するようになる。またそれに関連して赤血球に含まれるヘモグロビン量も増加する。運動時のこのようなPCVの著明な増加を示す動物は馬以外では競走犬(グレイハウンド)のみであり、運動能力の高い動物に特異的なものと思われている。馬の運動時に起こるPCVの増加は、脾臓に貯蔵された予備血液の関与が大きいものと考えられている。
4)網赤血球が貧血時にも末梢血液にみられないこと
馬以外の動物では網赤血球は貧血に反応して増加するが、この場合、出血よりも溶血性貧血に強く反応する。貧血が重度の場合、塩基性大型網赤血球あるいはストレス網赤血球と呼ばれる細胞が血中に放出される。馬では正常時には血中に網赤血球はみられないし、また貧血時に反応して放出されることもない。
一方、従来、ヒト、ウシ等の哺乳動物の貧血の予防または改善のために、硫酸鉄等の鉄化合物(鉄剤)を投与することが行われていたが、これらの鉄剤は、経口投与した場合に、吸収されにくいという問題があった。
このような問題に対し、ラクトフェリンを利用することが提案されている。ラクトフェリンは、乳等に存在する糖タンパク質であり、抗菌活性、鉄吸収作用等種々の生理活性を有するとして注目されている。例えば非特許文献1には、ラクトフェリン1分子当たり2分子の鉄を結合している鉄飽和ラクトフェリン(ラクトフェリン100g当たり約140mgの鉄に相当する)は貧血を予防できることが報告されている。また、非特許文献2には、ラクトフェリンと結合した鉄は、3価の鉄であるにもかかわらず2価の鉄と同程度の生体利用性を示すことが報告されている。
また、鉄剤とともにラクトフェリンを投与する方法(例えば特許文献1参照。)や、予め鉄化合物を用いてラクトフェリンに鉄を結合させた鉄飽和ラクトフェリンを投与する方法(例えば特許文献2,3参照。)が提案されている。
特許第2590449号公報 特公平6−21077号公報 特許第2735375号公報 ジャーナル・オブ・ベディアトリック・ガストロエンテロロジー・アンド・ニュートリーション(Journal of Paediatric Gastroenterology and Nutrition)、第2巻、第693ページ、1983年 ニュートリーション・リサーチ(Nutrition Research)、第3巻、第373ページ、1983年
従来、特許文献1には新生子牛に対して特定量以上のラクトフェリンと鉄化合物とを投与する方法が開示されているが、馬は独特の血液性状(赤血球系)を有しており、造血機構がヒトやウシとは異なることが考えられる。具体的には、例えば、馬と牛とを比較すると、ヘモグロビン(Hb)や赤血球の性状に下記表1に示すような種々の差異がある(久保田周一郎、友田勇監訳,獣医臨床生化学第四版,近代出版,第194、195、206、209、211、222頁参照)。この差異は、仔、特に、出生直後から8週目頃までの新生仔において大きく、例えば仔牛と仔馬とではその造血機構が大きく異なると考えられる。
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さらに、仔馬は、血清中鉄含量から、鉄欠乏状態ではないことがわかっている。つまり、仔馬の貧血状態は、鉄の不足ではなく、それ以外の理由によって造血機構が充分に機能しないことによって生じている可能性が高いことが示唆されている。例えば、仔馬は、出生後に赤血球数やヘモグロビン量、ヘマトクリット値等の値が漸減して貧血状態となりやすい傾向があるが、仔馬の血清鉄濃度は成獣と同等以上であり、ほとんど鉄欠乏症は生じないことが知られている(例えば、日本中央競馬会競走馬総合研究所編「軽種馬飼養標準」1998年版,第31頁;Am.J.Vet.Res.48(9),1987年,第1348−1352頁参照。)。このことから、仔馬の貧血の原因は鉄の不足によるものではないと推測されている。
そして、上述のように鉄欠乏症がほとんど生じていない仔馬に対する鉄剤の投与は、かえって肝毒性、血小板減少等の副作用を生じる可能性が高く、例えば特許文献1に記載されている仔牛に対するラクトフェリンおよび鉄剤を投与する方法を仔馬に適用した場合、鉄が過剰となって副作用を引き起こす可能性が示唆される。
そのため。鉄剤を投与せずに仔馬の造血機能を改善、又は貧血を予防・改善することが可能な方法が希求されている。
本発明の目的は、仔馬の貧血を予防又は改善することが可能な、仔馬の造血機能の改善方法及び該方法に好適に使用できる仔馬の造血機能改善剤を提供することにある。
前記課題を解決する本発明の第一の発明は、生後8週目までの仔馬に対して鉄飽和率が25%である分離ラクトフェリンを一日あたり3g投与し、一日あたりの鉄の摂取量を30mg未満とすることを特徴とする仔馬の造血機能改善方法である。
前記課題を解決する本発明の第二の発明は、鉄飽和率が25%である分離ラクトフェリン、生後8週目までの仔馬に対して前記分離ラクトフェリンが一日あたり3g投与され、一日あたりの鉄の摂取量が30mg未満となるように用いられることを特徴とする仔馬の造血機能改善剤である。
本発明の仔馬の造血機能改善方法は、造血機能改善の有効成分であるラクトフェリンが乳等に由来する天然物である等、安全性に優れたものであり、長期連用することが可能である。そのため、本発明の仔馬の造血機能改善方法は、哺乳動物の中でも独特の血液性状を有する馬、特に仔馬の貧血を予防及び/又は改善するのに有効である。
また、仔馬の貧血等の予防・改善において、鉄剤を投与するという必要はなく、例えばラクトフェリンのみを投与した場合でも仔馬の造血機能を改善することが可能である。そのため、本発明は、簡便性かつ経済性に優れた方法である。
本発明の仔馬の造血機能改善剤は、前記本発明の仔馬の造血機能改善方法に好適に使用することができる。
本発明は、仔馬の造血機能改善するために特に有効なものであるが、同様の造血機構を有する成獣の馬の造血機能の改善にも有用である。
次に、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の好ましい実施形態に限定されず、本発明の範囲内で自由に変更することができるものである。尚、本明細書において百分率は特に断りのない限り質量による表示である。
本発明において、「仔馬の造血機能の改善」とは、哺乳動物の中でも独特の血液性状を有する馬の仔(仔馬)の貧血を予防及び/又は改善する効果、具体的には、赤血球数、ヘモグロビン量、ヘマトクリット値の減少を改善する効果を意味する。
また、「仔馬」とは、母乳を主食として与えられる馬を意味する。
<仔馬の造血機能改善方法>
本発明の仔馬の造血機能改善方法は、仔馬に対してラクトフェリンを一日あたり少なくとも3g投与することを特徴とする。
ラクトフェリンは、分子量が約8万ダルトンの糖タンパク質であり、1分子当たり2分子の鉄原子が可逆的に結合可能であって、哺乳動物の乳中等に存在している。ラクトフェリンは、抗菌活性、免疫賦活作用、細胞増殖作用、抗腫瘍作用等の様々な生理活性を有することが知られている。
本発明で用いられるラクトフェリンとしては、哺乳動物(例えばヒト、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ウマ等)の乳(初乳、移行乳、常乳、末期乳等)又はこれらの乳の処理物(脱脂乳、ホエー等)等を原料とし、該原料から、常法(例えばイオン交換クロマトグラフィー等)により分離精製して得られるラクトフェリン(以下、分離ラクトフェリンということがある);該分離ラクトフェリンを塩酸、クエン酸等により脱鉄した状態のアポラクトフェリン;遺伝子操作により、微生物、動物細胞、トランスジェニック動物等で生産した各種ラクトフェリン等が挙げられる。これらのラクトフェリンは、いずれか1種を用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
なお、本明細書におけるラクトフェリンは、上記に挙げたラクトフェリン類の総称であり、馬の造血機能改善作用において、これらのラクトフェリン類はほぼ同等の活性を有する。
本発明において、ラクトフェリンとしては、市販品を用いてもよく、乳等の原料から調製して用いてもよい。
以下に分離ラクトフェリンの調製(乳等の原料からのラクトフェリンの分離、精製)方法の一例を示す。まず、イオン交換体(例えば、CM−セファロースFF:商品名、アマシャムファルマシア社製。)をカラムに充填し、塩酸を通液し、水洗してイオン交換体を平衡化する。続いて、4℃に冷却したpH6.9の脱脂牛乳をカラムに通液し、透過液を回収し、再度同様にカラムに通液する。次いで、蒸留水をカラムに通液し、食塩水を通液し、イオン交換体に吸着した塩基性蛋白質の溶出液を得る。この溶出液に飽和度80%の硫酸アンモニウムを添加し、タンパク質を沈殿させ、遠心分離して沈殿物を回収する。回収した沈殿物を、飽和度80%の硫酸アンモニウム溶液で洗浄し、脱イオン水を添加して溶解し、得られた溶液を限外濾過膜モジュール(例えば、SLP0053:商品名、旭化成社製。)を用いて脱塩し、凍結乾燥して、粉末状ウシラクトフェリンを得る。このようにして、純度が95質量%以上のウシラクトフェリンが得られる。
ここで、本明細書におけるラクトフェリンの純度は、液体クロマトグラフ法、又は電気泳動法等により測定することが可能である。
また、凍結乾燥前の各精製工程において得られるラクトフェリン含有液も、分離ラクトフェリンとして本発明に使用できることは言うまでもない。
本発明の仔馬の造血機能改善方法において、ラクトフェリンを仔馬に対して一日あたり少なくとも3g投与することにより、仔馬の造血機能を改善できる。
ラクトフェリンの投与量の上限は、特に限定されず、仔馬の貧血状態、投与方法、投与期間、年齢、体重、性別、その他の条件によって適宜設定することが可能である。
また、ラクトフェリン自体は、鉄原子が可逆的に結合可能なものであることから、本発明において、ラクトフェリンを仔馬に投与するにあたっては、ラクトフェリンに由来する鉄の量を考慮することが好ましい。
仔馬における鉄による副作用を抑えることを考慮すれば、仔馬の一日あたりの鉄の摂取量は、30mg未満であることが好ましい。ここで、「仔馬の一日あたりの鉄の摂取量」とは、経口摂取により鉄が投与される場合において、経口摂取されるすべてのものの中に含まれている鉄の量を意味し、本発明において仔馬に投与されるラクトフェリンに由来する鉄の量も含まれる。
上述したように、ラクトフェリンには、理論上、1分子当たり2分子の鉄(Fe:分子量=56)原子が結合可能である。そのため、ラクトフェリンの分子量を約8万ダルトンとすると、理論的にラクトフェリンに結合可能な鉄の量(鉄結合能)は次式によって計算される。
鉄結合能=56×2/80,000=0.0014(g/g)=140(mg/100g)
すなわち、ラクトフェリン100g中には最大で140mgの鉄が含まれている可能性がある。
ここで、ラクトフェリン100g中に実際に含まれている鉄の量を「鉄含有量(mg/100g)」とする。
また、鉄結合能に対する鉄含有量の割合(%)を「鉄飽和率%」とする。例えば鉄飽和率が100%のラクトフェリンとは、理論上最大限の鉄が結合している状態のラクトフェリン(鉄含有量が140mg/100gのラクトフェリン)を意味する。
仔馬に鉄飽和率100%のラクトフェリンを投与する場合、一日あたりの鉄の摂取量を30mg未満とするためには、ラクトフェリンの一日あたりの投与量(g)の上限は、次式によって計算される。
投与量(g)×140mg/100g<30mg
つまり、投与量(g)<30mg×100g/140mg≒21.4gとなる。
したがって、仔馬に鉄飽和率100%のラクトフェリンを用いる場合、ラクトフェリンの投与量は21.4g未満であることが好ましい。ラクトフェリンの投与量が21.4g未満であれば、例えば鉄飽和率が100%のラクトフェリンを用いた場合であっても、鉄摂取量を30mg未満とすることが可能である。
なお、一般的なラクトフェリンの鉄含有量(鉄飽和率)は、由来する動物の種類や製造方法等によって異なると考えられる。そのため、使用するラクトフェリンの鉄含有量(鉄飽和率)に応じて種々の最大投与量を決定することが可能である。
ラクトフェリンは、1日1回投与してもよく、複数回に分けて投与してもよい。
ラクトフェリンの投与は経口投与により行うことができ、例えば液状または固形状のラクトフェリンを水や乳等に混合または溶解し、シリンジ等を用いて仔馬の口内に投与してもよく、また、液状または固形状のラクトフェリンを、そのまま投与してもよい。
尚、前記のいずれの投与形態によっても、一日の鉄の摂取量が30mg未満であることが好ましく、このとき、経口摂取される鉄は、乳に由来する鉄であることが好ましい。
ここで、「乳に由来する鉄」とは、哺乳動物の乳中に天然に存在する形態の鉄であって、その供給源としては、哺乳動物の乳(例えば馬の母乳)や、乳から分離された鉄含有物、例えば上述した分離ラクトフェリン等が例示される。すなわち、一般的に仔馬の主食が馬の母乳であることを考慮すると、仔馬の餌等に含まれると考えられる鉄は、そのほとんどが乳に由来するものであって、母乳やラクトフェリン等の乳に由来する鉄量をコントロールすることによって本発明の効果が効率的に発揮されると考えられる。
一般的に、馬の母乳中の鉄含有量は、仔馬を出産した直後(仔馬生後0日目)の初乳中が最も高いことが知られており、この時の鉄の濃度は、1.7mg/kgである。また、標準的な仔馬は、一日あたり馬母乳を16kg摂取することが知られている。これらのことから、仔馬は、標準的には、馬母乳摂取により、およそ1.7mg/kg×16kg=27.2mg以下の鉄を摂取していると推測される。
したがって、一日あたり3gのラクトフェリンを投与する場合、例えば鉄飽和率が100%のラクトフェリンを使用したとすると、27.2mg+140mg×3g/100g=31.4mgとなり、30mgを越えてしまう。
これに対し、次式に示すように、鉄飽和率が67%未満のラクトフェリンを使用すれば、通常、仔馬の一日あたりの鉄の摂取量を30mg未満とすることができる
鉄飽和率(%)<(30mg−27.2mg)/(140mg×3g)×100g×100≒67%
すなわち、一日あたり3gのラクトフェリンを投与する場合、使用するラクトフェリンの鉄飽和率は67%未満であることが好ましい。
例えば、鉄含有量が35mg/100g(鉄飽和率:25%)のラクトフェリンを投与する場合、ラクトフェリン3g中に含まれる鉄含有量は35mg×3g/100g=1.05mgであることから、母乳摂取による鉄量を考慮すると、仔馬の一日あたりの鉄の総摂取量は27.2mg+1.05mg≒28.3mgと算出される。
本発明の仔馬の造血機能改善方法を適用可能な仔馬としては、母乳を主食として与えられる馬であれば特に限定されず、ウマ科ウマ属に属すればいずれの種であっても可能であり、馬齢や牡牝にかかわらず使用することが可能である。中でも、授乳期の仔馬が好適であり、特に、出生直後から8週目頃までの新生仔馬が好適である。
<仔馬の造血機能改善剤>
本発明の仔馬の造血機能改善剤は、ラクトフェリンを有効成分として含有することを特徴とする。かかる仔馬の造血機能改善剤は、前記本発明の仔馬の造血機能改善方法に好適に用いることができる。
本発明の仔馬の造血機能改善剤は、ラクトフェリン自体であってもよいし、ラクトフェリンとともに、ラクトフェリン以外の他の任意成分を含有していてもよい。
本発明の仔馬の造血機能改善剤に用いられるラクトフェリンとしては、前記本発明の仔馬の造血機能改善方法で挙げたものと同様のものが挙げられる。
本発明の仔馬の造血機能改善剤中、ラクトフェリンの含有量は、仔馬の造血機能改善剤の総固形分に対し、0.00001〜100質量%が好ましく、0.0001〜50質量%がより好ましい。
本発明の仔馬の造血機能改善剤に含まれていてもよい他の任意成分としては、乳に含まれる各種成分、乳酸菌、特にビフィズス菌、及び/又はその他の賦形剤等が例示される。
また、本発明の仔馬の造血機能改善剤は、前記の仔馬の造血機能改善方法で例示されるとおり、造血機能改善剤を投与した際に鉄量が30mg未満となるようにコントロールすることが可能であれば、乳に由来する鉄をさらに含有させることも可能である。
本発明の仔馬の造血機能改善剤は、液状であってもよく、また、粉末状、顆粒状等の固形状であってもよい。すなわち、当該造血機能改善剤は、例えば粉末状ラクトフェリンを、前記の「他の任意成分」等とともに、水又は乳等に溶解する等により製造できる。さらに、前記で製造した液状の造血機能改善剤を、必要に応じて希釈、濃縮、濾過し、加熱乾燥、噴霧乾燥又は凍結乾燥等の処理を行って、粉末状又は顆粒状等の固形状として製造することも可能である。また、粉末状ラクトフェリンを前記の「他の任意成分」等と混合することにより製造することもできる。
本発明の仔馬の造血機能改善剤は、有効成分であるラクトフェリンの量として、一日当たり少なくとも3g投与されることが好ましい。
一日あたりのラクトフェリンの投与量が3gとなる量の造血機能改善剤を仔馬に投与する場合、上述した本発明の仔馬の造血機能改善方法において、一日あたり3gのラクトフェリンを仔馬に投与する場合として既に説明したとおり、ラクトフェリンの鉄飽和率は67%未満であることが好ましい。これにより、1日あたりの鉄の摂取量が30mg未満となるため、過剰の鉄による副作用を生じることなく仔馬の造血機能を改善できる。
次に実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
試験例1
[目的]
新生仔軽種馬に対するラクトフェリンの経口投与による造血機能改善効果の検討
[試験期間]
2002〜2004年
[試験方法]
<赤血球数、ヘモグロビン量、ヘマトクリット値>
ラクトフェリン(LF:牛乳から分離したラクトフェリン、商品名:MLF−1、鉄含有量:35mg/100g(鉄飽和率:25%)以下、森永乳業社製)を15質量%濃度に水に溶解してラクトフェリン溶液を調製した。
軽種馬の仔馬14頭に対し、それぞれ分娩後から第8週目までの間、調製したラクトフェリン溶液を、1回あたり10mL(ラクトフェリン1.5g)の投与量で1日2回(朝夕)、シリンジを用いて経口投与した(一日あたりのラクトフェリン投与量3.0g)(LF群)。
分娩後の0週目、1週目、2週目、4週目、6週目および8週目の計7回の採血を行い、血液中の赤血球数(万個/μL)、ヘモグロビン量(g/dl)、ヘマトクリット値(%)について、多項目自動血球分析装置(シスメックス株式会社製、型式:SE−9000)を用いて測定した。
また、対照として、ラクトフェリンを投与しない軽種馬の仔馬12頭(無処置群)についても採血を行い、赤血球数(万個/μL)、ヘモグロビン量(g/dl)、ヘマトクリット値(%)について前記LF群と同様に測定した。
LF群および無処置群の結果について、試験年度及び母馬を固定効果として、ラクトフェリン投与開始前値を共変量とした共分散分析を行い、最小二乗平均値(本発明においては、試験年度による違い、母馬による違い、LF投与開始前の値の違い、のそれぞれ因子に起因する影響を調整した平均値である。)を算出した。その結果を図1〜3に示す。
ここで、図1〜3はそれぞれ最小二乗平均値をプロットし、各プロットに残差標準偏差(本発明においては、試験年度による違い、母馬による違い、LF投与開始前の値の違い、の3因子を考慮した際に算出される予測値と実測値との差(残差)の標準偏差である。)を付した。ただし、0週における各値は総平均値として記載した。また、LF群においては、残差標準偏差の下半分を、無処置群については、残差標準偏差の上半分をそれぞれ省略して記載した。
[試験結果]
図1〜3から明らかなように、25%以下という低い鉄飽和率のラクトフェリンの投与により、赤血球数、ヘモグロビン量、ヘマトクリット値に有意な増加が認められ、馬の造血機能を改善する効果が確認された。尚、LF群及び無処置群とも鉄の過剰摂取によると考えられるような副作用等の健康障害は認められなかった。
馬、特にサラブレッドは競走馬としてより速く走ることができるように運動能力を高めることを目的として改良された品種であり、例えば産肉性や泌乳量を目的として改良された牛とは改良の方向性が異なっている。馬は、赤血球系の血液性状や心臓循環系に上記のような優れた能力を持っていることからこそ、その運動能力をトレーニングによって高めることができる。このことは牛等の他の動物には見出せない特徴であると判断できる。
このような元来優れた能力を持っている馬に対して何らかの物質を投与して赤血球系の血液性状をより優れた数値にすることは極めて困難であると容易に想像されるなか、本発明の馬へのラクトフェリンの投与による赤血球数、ヘモグロビン量及びヘマトクリット値の有意差をもった増加は、非常に意義のある結果であると考えられる。
試験例1の結果(赤血球数)を示すグラフである。 試験例1の結果(ヘモグロビン量)を示すグラフである。 試験例1の結果(ヘマトクリット値)を示すグラフである。

Claims (2)

  1. 生後8週目までの仔馬に対して鉄飽和率が25%である分離ラクトフェリンを一日あたり3g投与し、一日あたりの鉄の摂取量を30mg未満とすることを特徴とする仔馬の造血機能改善方法。
  2. 鉄飽和率が25%である分離ラクトフェリンを有効成分として含有し、生後8週目までの仔馬に対して前記分離ラクトフェリンが一日あたり3g投与され、一日あたりの鉄の摂取量が30mg未満となるように用いられることを特徴とする仔馬の造血機能改善剤。
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