JP4306828B2 - 病原性細菌感染防御剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な病原性細菌に対する感染防御剤に関する。また、本発明は、病原性細菌に対する感染防御機能を賦与した新規な医薬及び飲食品に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、病原性細菌の生体への感染は、標的細胞すなわち生体上皮の細胞表層に存在する複合糖質の糖鎖構造(レセプター)を認識して結合することによりなるといわれている。そして、この病原性細菌の生体への感染に対する一般的な治療法として、抗生物質の使用がある。この抗生物質は、増殖した病原性細菌を死滅させることにより、感染による病気を治療するというもので、病原性細菌の感染過程の最終段階で行われるものである。このように、抗生物質による病原性細菌感染症の治療は、発病後の生体に対する治療法として非常に有効であるが、抗生物質の性格上、様々な副作用やアレルギー症状を引き起こす等の問題も多い。
【0003】
一般に、生体は、病原性細菌による感染に対し、その感染初期の段階においての防御機構を備えている。例えば、消化管における分泌型免疫グロブリンAを主とする免疫グロブリンによる防御機構がそれであり、これらの免疫グロブリンは、病原性細菌の標的細胞への付着を阻止することにより、病原性細菌による感染から生体を守っている。
【0004】
ところで、一般に、レセプターやレセプターと類似した構造をもつ物質は、病原性細菌の細胞表層のレセプター結合部位に特異的に結合し、病原性細菌の標的細胞への結合を特異的に阻害することが期待されている。この特異的な作用は、病原性細菌の感染を初期の段階で阻止するという意味で、前述した免疫グロブリンによる防御機構に類似しているといえる。すなわち、このような病原性細菌のレセプター結合部位に特異的に結合する物質は、病原性細菌の感染を未然に防ぐことができ、しかも、作用が穏やかで副作用が少ない病原性細菌感染防御剤となり得る。
【0005】
一方、ウイルス感染症については、現在までに抗ウイルス剤に関する多くの研究がなされている。しかし、ウイルスは、宿主細胞の増殖機能に依存して増殖するという性質を有するため、薬剤によってウイルス感染症を治療することは極めて困難である。例えば、ウイルスの細胞への侵入を阻害するアマンタジンは、インフルエンザウイルスAに効果があるといわれているが、治療効果が弱い上に中枢神経毒性等の副作用も出現し、臨床薬としては殆ど利用されていない現状にある。現在、わが国で使用が認可されている抗ウイルス剤としては、ウイルス遺伝子の合成を阻害するアシクロビル(単純ヘルペスや単純ヘルペス脳炎等に適用)、ビダラビン(単純ヘルペスや単純ヘルペス脳炎等に適用)、点眼剤用のイドクスウリジン(ヘルペス角膜炎に適用)、アジドチミジン(AIDSに適用)等が知られているが、アジドチミジンは、全身投与によりしばしば重篤な副作用が出現し、治療薬としては未だ問題を抱えている。
【0006】
また、抗ウイルス剤として、近年、注目を集めているインターフェロンが知られている。このインターフェロンは、ウイルスの細胞内増殖を抑制する因子であり、遺伝子組み換えの技術を利用して生産されているが、高価であり、副作用も問題となっている。
【0007】
これらの現状から、ウイルス性疾患に対する対策として、ウイルスによる感染を予防するワクチンの投与が最も普及している。このワクチンには、ウイルスを何らかの方法で弱毒化した生ワクチンやウイルスをホルマリン等で処理して作成した不活性化ワクチン、ウイルスの抗原部分のみを精製したコンポーネントワクチンがある。そして、これらのワクチンにより、大部分のウイルス性疾患を予防することが可能となっている。しかし、最も代表的なウイルス性疾患の一つであるインフルエンザでは、ワクチンによる感染予防は困難である。なぜなら、インフルエンザの場合、インフルエンザウイルスのエンベロープに存在する抗原をワクチンとして使用しているが、この抗原部分がしばしば変異を繰り返し、元のウイルスに対するワクチンは変異型のウイルスに対して何ら効果を示さないからである。また、HIVのようにワクチンとして利用可能な抗原が不明な場合や臓器移植後の免疫抑制剤投与による免疫機能低下時にしばしば発症するサイトメガロウイルス感染症等に対しては、ワクチンによる感染予防は困難である。さらに、ワクチンによっては、病気に罹患する危険があり、ワクチンの接種による副作用も考慮すべき問題である。
【0008】
近年、ウイルス学の研究進展により、ウイルスのヒトへの感染についても、前述した病原性細菌による感染の場合と同様、標的細胞すなわち生体上皮の表層に存在する複合糖質の糖鎖構造等からなるレセプターにウイルスが結合して細胞内へウイルスが侵入することが明らかになっている。例えば、HIVは、Tリンパ球の表面に存在するCD4レセプターに結合して感染するので、CD4を大量に血中に投与することによりAIDSの発症を予防することができるといわれている。また、インフルエンザウイルスも、細胞の表面に存在するシアル酸結合複合糖質分子からなるレセプターに結合して感染するので、このシアル酸結合複合糖質分子や類似の糖鎖構造を有する物質を投与することにより、インフルエンザウイルスによる感染を予防したり、感染後の他の細胞や組織へのインフルエンザウイルスの伝搬を防御することが考えられている。
【0009】
従来、病原性細菌やウイルスのレセプターへの結合を阻害して感染を防御する効果を有する物質として、κカゼインやそのプロテアーゼ分解物であるκカゼイングリコマクロペプチドが知られている (特開昭 63-284133号公報) 。また、同様のメカニズムでκカゼイングリコマクロペプチドが抗歯垢及び抗齲歯剤として有効であることも知られている (特開昭 63-233911号公報) 。さらに山川らは、インフルエンザウイルスによる赤血球凝集を阻害する物質をヒト血球から単離して、この物質がシアル酸を構成糖とする糖タンパク質であることを明らかにした(生化学, vol.31, pp.416-421, 1959) 。
【0010】
ところで、乳中に含まれる感染防御機能を有するタンパク質として、ラクトフェリンが知られている。このラクトフェリンの病原性細菌に対する感染防御機能は、ラクトフェリンのもつ鉄キレート力により、その増殖に必要な鉄が病原性細菌から奪い取られて増殖が抑制されることによる。しかしながら、このラクトフェリンによる病原性細菌増殖抑制効果は一時的なものであり、また、他の食品と同時にラクトフェリンを摂取する場合には、ラクトフェリンが食品中に含まれる全ての鉄分をキレートするので、多量のラクトフェリンを摂取する必要があるという問題がある。
【0011】
なお、ラクトフェリンに関しては、その鉄キレート力による病原性細菌増殖抑制機能とは全く別のメカニズムによる病原性細菌の腸管細胞への付着を阻止する感染防御機能が示唆されているが、この病原性細菌感染防御機能における鉄結合型ラクトフェリンの役割については、全く明らかにされていない。
また、分子中の糖鎖構造がウイルスの細胞への付着を阻止するので、抗ウイルス剤としてもラクトフェリンは有効であることが知られている(特開平2-233619号公報)。しかし、このウイルス感染防御機能においても、鉄結合型ラクトフェリンの役割は全く明らかにされていない。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、従来より、ラクトフェリンのもつ薬理作用に注目し、鋭意研究を進めていたところ、したがって、本発明は、病原性細菌に対する新規な感染防御剤あるいはこのような感染防御機能を賦与した新規な医薬品及び飲食品を提供することにある。さらに、具体的には本発明は、鉄結合型ラクトフェリンを有効成分とする病原性細菌感染防御剤を提供することを課題とする。また、本発明は、鉄結合型ラクトフェリンを配合して病原性細菌感染防御機能を賦与した医薬品及び飲食品を提供することを課題とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、病原性細菌に対する感染防御剤の有効成分として、あるいは病原性細菌に対する感染防御機能を医薬及び飲食品に賦与するために、鉄結合型ラクトフェリンを使用することを特徴とする。
【0014】
本発明で使用する鉄結合型ラクトフェリンは、ウシ等の哺乳動物の乳、あるいは、これらの脱脂乳やホエー等を原料としてイオン交換クロマトグラフィー等の処理を施すことにより得られるラクトフェリンに、例えば、塩化第二鉄を溶解したクエン酸ナトリウム等の溶液中で鉄イオンをキレートさせた後、透析して脱塩することにより調製することができる。また、ラクトフェリンに鉄イオンをキレートさせる際には、遺伝子組み換えの技術により得られたラクトフェリンを使用しても良いし、市販のラクトフェリンを使用しても良い。
【0015】
ウシ等の哺乳動物の乳、あるいは、これらの脱脂乳やホエー等から、ラクトフェリンを得る方法としては、モノクローナル抗ラクトフェリン抗体を使用する方法 (特開昭 60-166619号公報、特開昭 60-145200号公報) 、ヘパリンを固定化した架橋型のセルロースやキトサンを担体として使用する方法 (特開昭 63-255299号公報) 、架橋型ポリサッカライドの硫酸エステル化物を担体として使用する方法 (特開昭 63-255300号公報) 、スルホン基を導入した多糖類アフィニティ担体を使用する方法 (特開平3-109400号公報) 、陽イオン交換体を担体として使用し、イオン強度及びpHを調整することにより溶出する方法 (特開平5-202098号公報) 等が知られている。本発明で使用する鉄結合型ラクトフェリンの鉄飽和度として、より好ましくは100%である。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の病原性細菌感染防御剤は、鉄飽和度が50〜 100%である鉄結合型ラクトフェリンを有効成分としたものである。病原性細菌感染防御剤の剤型は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、粉剤等とすることが望ましい。これらは経口的に投与することが望ましい。また、これらの剤型は、従来知られている普通の方法で製造することができる。例えば製剤製造上許容される担体、賦形剤等と混合して成型する。また、本発明の病原性細菌感染防御機能を賦与した医薬及び飲食品は、鉄結合型ラクトフェリンを前記のような剤型として医薬、特に経口剤に配合したり、鉄結合型ラクトフェリンを牛乳、乳飲料、コーヒー飲料、ジュース、ゼリー、ビスケット、パン、麺、ソーセージ等の飲食品、さらには、各種粉乳の他、乳児、幼児及び低出生体重児等を対象とする栄養組成物に配合したりしたものである。これらは、病原性細菌に対する感染防御機能を有するので、これらの病原性細菌に感染する疾病を予防し、あるいは疾病を治療する用途に用いられる。このような疾病には、大腸菌に基づく下痢、食中毒、ストレプトコッカス ミュータンスに基づく齲蝕病が例示される。
【0017】
本発明で、病原性細菌に対する感染防御効果を発揮させるためには、成人の場合、鉄結合型ラクトフェリンを1日当たり 0.1〜 5,000mg摂取できるように配合量等を調整すれば良い。
【0018】
次に、実施例及び試験例を示し、本発明を詳しく説明する。
【実施例1】
鉄結合型ラクトフェリン ( 鉄飽和度 100 % ) の調製
市販のラクトフェリン (オレオフィナ社製) 5gの1%水溶液に1/5量の0.003M塩化鉄(III) を含む0.1Mクエン酸三ナトリウム溶液を加えて1時間撹拌し、鉄飽和度 100%の鉄結合型ラクトフェリン溶液を調製した。この溶液に含まれるラクトフェリンについては、全てのラクトフェリン分子に鉄イオンが結合して鉄飽和度が 100%になっていることを確認した。次に、この鉄結合型ラクトフェリン溶液を透析チューブに封入し、蒸留水に対して透析して余分な塩類を除去した後、凍結乾燥して、鉄飽和度 100%の鉄結合型ラクトフェリン粉末5gを得た。
【0019】
鉄非結合型ラクトフェリン ( 鉄飽和度0%、アポラクトフェリン ) の調製
市販のラクトフェリン (オレオフィナ社製) 5gの1%水溶液を透析チューブに封入し、20倍量の0.05%EDTAを含む0.1Mクエン酸水溶液に対して4℃で30時間透析した。引き続き、この透析チューブを取り出して、蒸留水に対して24時間透析し、鉄飽和度0%の鉄非結合型ラクトフェリン(アポラクトフェリン)溶液を調製した。この溶液に含まれるラクトフェリンについては、全てのラクトフェリン分子に鉄イオンが結合しておらず鉄飽和度が0%になっていることを確認した。次に、透析を完了した溶液を凍結乾燥して、鉄飽和度0%の鉄非結合型ラクトフェリン粉末5gを得た。
【0020】
鉄結合型ラクトフェリン ( 鉄飽和度 20 %及び鉄飽和度 50 % ) の調製
得られた鉄結合型ラクトフェリン (鉄飽和度 100%) 粉末を水に溶解し、濃度が 10mg/mlの鉄結合型ラクトフェリン (鉄飽和度 100%) 水溶液を調製すると共に、得られた鉄非結合型ラクトフェリン (鉄飽和度0%) 粉末を水に溶解し、濃度が 10mg/mlの鉄非結合型ラクトフェリン (鉄飽和度0%) 水溶液を調製した。
そして、この鉄結合型ラクトフェリン (鉄飽和度 100%) 水溶液と鉄非結合型ラクトフェリン (鉄飽和度0%) 水溶液を2:8の割合で混合することにより、鉄飽和度20%の鉄結合型ラクトフェリン溶液を調製し、凍結乾燥して、鉄飽和度20%の鉄結合型ラクトフェリン粉末を得た。
【0021】
また、この鉄結合型ラクトフェリン (鉄飽和度 100%) 水溶液と鉄非結合型ラクトフェリン (鉄飽和度0%) 水溶液を5:5の割合で混合することにより、鉄飽和度50%の鉄結合型ラクトフェリン溶液を調製し、凍結乾燥して、鉄飽和度50%の鉄結合型ラクトフェリン粉末を得た。
【0022】
【試験例1】
実施例1に示した方法で調製した各鉄飽和度の鉄結合型ラクトフェリン及び鉄非結合型ラクトフェリンを試料として、病原性大腸菌に対する感染防御効果を調べた。感染防御試験は、次のように行った。
ヒト小腸細胞(JTC-17)(東京医科大より分譲を受けた)を 25cm2底面積培養フラスコで、5%牛胎児血清を含むダルベッコ変法イーグル培地(5%FCS/DMEM)により、37℃、二酸化炭素濃度5%で培養した。細胞がほぼコンフルエントの状態に増殖したら、常法に従ってトリプシン−EDTAで細胞を剥がし取り、遠心操作により細胞を集めた。上清を吸い出し、新たに5%FCS/DMEM 8mlに細胞を懸濁した。得られた細胞懸濁液各1mlを10ml容ポリスチレンチューブ(ファルコン社2095)に入れ、37℃で3日間培養した。
【0023】
病原性大腸菌H10407株、Pb176 株(都立衛生研より分譲を受けた)をそれぞれ1白金耳取り、普通ブイヨン培地4mlで、37℃で1夜培養した。そして、培養終了後、3,000rpm、10分間遠心分離することにより集菌し、これをpH8に調整したPBSで3回洗浄した。その後、病原性大腸菌をpH8に調整したPBS 1mlに懸濁し、FITC(フルオレッセン イソチオシアネート Fluorescein Isothiocyanate) 1mg を加えてよく溶解し、4℃で3時間ゆっくり撹拌しながら反応させて病原性大腸菌をFITCラベルした。ラベルした病原性大腸菌は、PBSにて3回洗浄した後、PBS 3mlに懸濁した。このようにして調製したFITCラベル化病原性大腸菌懸濁液 400μl に、各試料のPBS溶液 200μl を混合し、37℃で1時間インキュベートした。
【0024】
一方、3日間の培養を終えたJTC-17細胞を1,000rpmで5分間遠心分離して上清の培地を除き、さらにPBSで3回洗浄し、これに上述の病原性大腸菌と各試料とを混合してインキュベートした溶液 600μl を加え、37℃で30分間インキュベートした。インキュベート終了後、750rpmで5分間遠心分離し、細胞だけを沈澱させ、細胞に付着せずに上清に残った病原性大腸菌を吸い出した。さらに、PBSにて細胞を2回洗浄した。PBSで洗浄した細胞に 200U トリプシン/PBS900μl を加えて激しく撹拌した。これに 0.1%SDS 100μl 、1mlの脱イオン水を加えて激しく撹拌し、30分静置することにより細胞を溶解した。この溶液を蛍光分光光度計(日立フルオレッセンススペクトロメーターF-3000)にて励起波長 520nm、蛍光波長 520nmで相対蛍光強度を測定し、蛍光ラベルした病原性大腸菌のJTC-17細胞への付着を評価した。表1には試料を添加しない時の相対蛍光強度(ブランク)を付着率 100%、蛍光ラベルした病原性大腸菌のポリスチレンチューブへの非特異的な吸着(ポリスチレンチューブ内に検体と同じ条件で測定した相対蛍光強度)を付着率0%とし、各試料を添加した際の付着阻止率(%)を示している。実験は3連で行った。
【0025】
【表1】
【0026】
【試験例2】
実施例1に示した方法で調製した各鉄飽和度の鉄結合型ラクトフェリン及び鉄非結合型ラクトフェリンを試料として、ストレプトコッカス・ミュータンスに対する感染防御効果を調べた。試験は、次のように行った。3種のストレプトコッカス ミュータンス(ATCC-27670, ATCC-25175, ATCC-27351)を1白金耳取り、ブレインハートフージョン(BHI)培地4mlで一夜培養した。一夜後、3,000rpmで10分間遠心することにより集菌し、上清の培地を吸い出した。さらに、これをPBSで3回洗浄し、これをOD650=0.8 となるようにPBSに懸濁した。この菌懸濁液と試料溶液を当量混合し、10mlのポリスチレンチューブ(ファルコン社2095)に入れ、よく撹拌し、37℃で3時間インキュベートした。インキュベート終了後、OD650 を測定し、次式から付着率(%)を求めた。
付着率(%)=(0.4 − X)/0.4× 100
X:(試料のOD650)
実験は2連で行い、その結果(付着阻止率)を表2に示した。これによると、鉄非結合型ラクトフェリンに比べ鉄結合型ラクトフェリンは、う歯原菌のポリスチレンチューブへの付着を阻止し、鉄飽和度が大きい程その阻止効果は高くなる傾向を示した。
【0027】
【表2】
【0028】
[参考例1]
実施例1に示した方法で調製した各鉄飽和度の鉄結合型ラクトフェリン及び鉄非結合型ラクトフェリンを試料として、インフルエンザウイルスに対する感染防御効果を調べた。試験は、次のように行った。インフルエンザウイルスのヒヨコ安定化赤血球(武田薬品工業製)及びヒト赤血球(O型)に対する凝集反応阻止(HI)活性を測定した。HI活性は、前述した山川らの方法(生化学, vol.31, pp.416-421, 1959) に準じて測定した。インフルエンザウイルスとしては、デンカ生研より入手した不活化インフルエンザウイルスのA/山形/120/86(H1N1)、A/新潟/102/81(H3N2)、A/四川/α/87(H3N2)、A/福岡/C29/85(H2N2)、B/長崎/1/87、B/シンガポール/222/79、及び静岡薬科大学より入手した不活化されていないインフルエンザウイルスのA/PR/8/34(H1N1)を用いた。ヒヨコ安定化赤血球に対するHI活性を表3に、ヒト赤血球に対するHI活性を表4にそれぞれ示す。これによると、鉄非結合型ラクトフェリンに比べ鉄結合型ラクトフェリンは、インフルエンザウイルスに対して強いHI活性を示し、鉄飽和度が大きい程その阻止効果は高くなる傾向を示した。
【0029】
【表3】
【0030】
【表4】
【0031】
[参考例2]
実施例1に示した方法で調製した各鉄飽和度の鉄結合型ラクトフェリン及び鉄非結合型ラクトフェリンを試料として、静岡薬科大学より入手した不活化されていないインフルエンザウイルスのA/PR/8/34(H1N1)及びA/愛知/2/68(H3N2)を段階的に希釈し、5個のニワトリ10日卵に 0.1mlずつ尿液喰内腔内に接種し、3日後、個々の卵の尿液50μl を取り、これを 0.5%ヒヨコ安定化赤血球と混合、撹拌し、赤血球の凝集によって感染率を決定した。 100%の感染率を示した希釈倍率のウイルス希釈液の 0.1mlにそれぞれの鉄飽和度に調整した鉄結合型ラクトフェリン又は鉄非結合型ラクトフェリンをそれぞれ 0.5mg溶解し、室温で30分間インキュベートした後、ニワトリ10日卵に 0.1mlずつ尿液腔内に接種した。3日後、個々の卵の尿液50μl を取り、赤血球凝集反応により感染率を決定した。1群5個の卵を使用し、各群の感染率(%)を得た。その結果を表5に示す。これによると、鉄非結合型ラクトフェリンに比べ鉄結合型ラクトフェリンは、インフルエンザウイルスに対して強い感染防御効果を示した。
【0032】
【表5】
【0033】
[参考例3]
実施例1に示した方法で調製した各鉄飽和度の鉄結合型ラクトフェリン及び鉄非結合型ラクトフェリンを試料として、サイトメガロウイルス(CMV)に対する感染防御効果を調べた。なお、各鉄飽和度に調整した鉄結合型ラクトフェリン及び鉄非結合型ラクトフェリンを2%血清添加MEM培地に5mg/mlとなるように溶解し、0.45μm のフィルターで濾過滅菌し、ストック溶液を必要に応じて2%血清添加MEM培地により希釈して用いた。ヒトCMV(Towne株) を各鉄飽和度の鉄結合型ラクトフェリン含有培溶液(0.1mg/ml)で1時間インキュベート後、ヒト胎児線維芽細胞(HEL細胞)に感染させた。さらにラクトフェリンを含まない培養液をコントロールとした。24時間培養後、ヒトCMV陽性血清で蛍光染色し細胞へのヒトCMVの吸着能力を測定した。そして、カバースリップ当たりの蛍光陽性細胞数の平均値を求めた。その結果を表6に示す。これによると、鉄非結合型ラクトフェリンに比べ鉄飽和度が大きい鉄結合型ラクトフェリン程CMV吸着侵入能力を抑制することが確認された。
【0034】
【表6】
【0035】
【実施例2】
表7に示した配合により原料を混合した後、打錠機で打錠して、病原性細菌感染防御機能を賦与したタブレットを製造した。
【0036】
【表7】
【0037】
【実施例3】
表8に示した配合により原料を混合し、容器に充填した後、加熱殺菌して、病原性細菌感染防御機能を賦与した飲料を製造した。
【0038】
【表8】
【0039】
【発明の効果】
本発明の病原性細菌感染防御剤や病原性細菌感染防御機能を賦与した医薬及び飲食品は、病原性細菌に対して優れた感染防御効果を示す。しかも鉄飽和度を高めた鉄結合型ラクトフェリンを使用するので、比較的安価に大量供給が可能であり、しかも、極めて安全性が高いという特徴を有している。
Claims (2)
- 鉄飽和度が100%である鉄結合型ラクトフェリンを有効成分とする病原性細菌感染防御剤。
- 鉄飽和度が100%である鉄結合型ラクトフェリンを配合した病原性細菌感染防御用医薬品。
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JPH11286452A (ja) | 1999-10-19 |
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