JP5031321B2 - 軽度慢性歯周炎患者におけるプレボテラ・インターメディアの増殖抑制剤 - Google Patents
軽度慢性歯周炎患者におけるプレボテラ・インターメディアの増殖抑制剤 Download PDFInfo
- Publication number
- JP5031321B2 JP5031321B2 JP2006284035A JP2006284035A JP5031321B2 JP 5031321 B2 JP5031321 B2 JP 5031321B2 JP 2006284035 A JP2006284035 A JP 2006284035A JP 2006284035 A JP2006284035 A JP 2006284035A JP 5031321 B2 JP5031321 B2 JP 5031321B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- lactoferrin
- prevotella intermedia
- inhibitor
- food
- present
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Landscapes
- Medicinal Preparation (AREA)
- Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
Description
歯周病の発生・進行のメカニズムは以下のように考えられている。すなわち、歯周病に罹患すると、歯と歯肉の間に歯周ポケットが形成され、該歯周ポケット内で、内毒素(エンドトキシン)を持つ歯周病原性細菌が激増し、プラークが作られる。歯周ポケット内の歯周病原性細菌の作る内毒素は、直接的および間接的にその周辺部の炎症を引き起こし、歯を支える歯槽骨を破壊する。さらに歯周病原性細菌の産生するタンパク質分解酵素は、歯周組織を傷害して歯周病を進行させ、口臭の原因となる硫化水素やメチルメルカプタンなどの揮発性硫黄化物を発生させる(非特許文献2参照)。
歯周ポケット内に存在する歯周病原性細菌としては、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)、プレボテラ・インターメディア(Prevotella intermedia)、プレボテラ・ニグレセンス(Prevotella nigrescens)、タネレラ・フォルシセンシス(Tannerella forsythensis)、アクチノバシラス・アクチノミセテムコミタンス(Actinobacillus actinomycetemcomitans)、フソバクテリウム・ヌクレアトゥム(Fusobacterium nucleatum)などのグラム陰性嫌気性桿菌が知られている(非特許文献2参照)。
歯周病の治療方法としては、スケーリング等により機械的にプラークや歯石を除去する方法や、抗生物質や消毒剤のような化学物質を用いる方法が一般的である。しかし、これらの方法はいずれもヒトに与える影響が大きく、たとえば抗生物質の使用では投与法、副作用、耐性菌、宿主に有益な微生物の死滅などの問題がある(非特許文献2参照)。
そのため、より安全性の高い歯周病の予防法および治療法が必要とされていた。
ラクトフェリンは、ヒトを含む哺乳類の乳、唾液、涙液などの外分泌液や好中球に含まれる分子量約8万の鉄結合性の糖タンパク質である。たとえばヒトの唾液中には約5μg/mlのラクトフェリンが含まれているといわれている(非特許文献3参照)。
ラクトフェリンは、抗菌作用、抗ウイルス作用、抗酸化作用、免疫調節作用、抗炎症作用や、その他様々な細胞機能調節作用を有することが知られている(非特許文献4参照)。また、ラクトフェリンは病原菌に対しては抗菌活性を示す一方で、乳酸菌やビフィズス菌といった宿主に有益な細菌の増殖を促進する作用のあることが知られている(非特許文献5参照)。
非特許文献7においては、ウシ・ラクトフェリンのN末端側17−30残基、または19−37残基に相当するペプチドが、ポルフィロモナス・ジンジバリス、プレボテラ・インターメディア、フソバクテリウム・ヌクレアトゥムの発育を抑制するとの報告がなされている。
非特許文献8においては、ヒトおよびウシ・ラクトフェリンが、アクチノバシラス・アクチノミセテムコミタンスとプレボテラ・インターメディアの繊維芽細胞や上皮細胞への付着を抑制することが報告されている。
また、プレボテラ・インターメディアは、抗生物質に対する耐性が高く、そのため抗生物質での治療で効かない可能性がある。たとえばポルフィロモナス・ジンジバリスの31株が、調べた18の抗生物質全てに感受性を示したのに対し、プレボテラ・インターメディアの99株のうち、β−ラクタム、エリスロマイシン、クリンダマイシン、テトラサイクリンに耐性を示したのは10%程度であり、それらの菌株は耐性遺伝子を有していた。
さらに、プレボテラ・インターメディアが産生するLPSはIL−8を誘導する等により炎症を引き起こす。また、プレボテラ・インターメディアの菌体成分は、感染防御において重要な細胞性免疫を担うリンパ球(B細胞、T細胞)の増殖を抑制する。そのため、プレボテラ・インターメディアは生体から排除されにくいと考えられる。
また、プレボテラ・インターメディアは、性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン、テストステロン)によって増加する傾向があり、思春期や妊娠期において歯周病の発生を引き起こす。特に妊娠中の歯周病は早産など妊娠障害の原因になる。
そして、これまで、ラクトフェリンによって、実際に、生体内、特に口腔内でのプレボテラ・インターメディアの増殖を、歯周病の発症に至らない程度に充分に抑制できるかどうかについては検討されておらず、当然、プレボテラ・インターメディア抑制のために効果的なラクトフェリンの投与経路、投与量および投与間隔についても検討はなされていない。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、口腔内でのプレボテラ・インターメディアの増殖を効果的に抑制できるプレボテラ・インターメディア抑制剤を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、鉄飽和度が10〜30%のウシ由来のラクトフェリンを有効成分として含有し、前記ラクトフェリン量として、1日あたり10〜50mg/kg体重の量にて深さ4〜5mmの歯周ポケットを有するプレボテラ・インターメディア菌に感染した軽度慢性歯周炎患者に毎日3回経口投与されることを特徴とする軽度慢性歯周炎患者におけるプレボテラ・インターメディアの増殖抑制剤である。
本発明の軽度慢性歯周炎患者におけるプレボテラ・インターメディアの増殖抑制剤は、トローチ剤の形態であることを好ましい態様としている。
本発明のプレボテラ・インターメディア(Prevotella intermedia)抑制剤(以下、「本発明の抑制剤」と略記することがある。)は、プレボテラ・インターメディア、特に、口腔内歯周ポケットに存在するプレボテラ・インターメディアに対して顕著な抑制効果を有する。ここで、本発明におけるプレボテラ・インターメディアの「抑制」とは、その増殖を、歯周病の発症に至らない程度に抑えることができることを意味する。そのため、本発明の抑制剤は、歯周病の予防及び/又は治療に有効である。
ここで、「鉄飽和度(%)」は、当該ラクトフェリンの「理論上の鉄結合能」に対する、「実際に含まれる鉄含有量」の割合(%)である。ラクトフェリンには、理論上、1分子当たり2分子の鉄(Fe:分子量=56)原子が結合可能であり、ラクトフェリンの鉄結合能は、次式によって計算される。
鉄結合能=56×2/ラクトフェリンの分子量
たとえばラクトフェリンの分子量を約8万ダルトンとすると、当該ラクトフェリン100g中には、理論上、最大で140mgの鉄が結合し得る。つまり、分子量約8万ダルトンのラクトフェリンの鉄結合能は約140mg/100gである。
投与量は、剤型、症状、患者の年齢、体重等によっても異なるが、ラクトフェリン量として、1日あたり20〜40mg/kg体重が好ましく、25〜35mg/kg体重がより好ましい。
製剤の具体例としては、錠剤(糖衣錠、腸溶性コーティング錠、バッカル錠を含む。)、散剤、カプセル剤(腸溶性カプセル、ソフトカプセルを含む。)、顆粒剤(コーティングしたものを含む。)、丸剤、トローチ剤、封入リポソーム剤、液剤、又はこれらの製剤学的に許容され得る徐放製剤等を例示することができる。
医薬組成物中のラクトフェリンの含有量は、剤形にもよるが、通常、当該医薬組成物の総固形分に対し、0.1〜50質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましく、10〜20質量%が特に好ましい。
賦形剤としては、乳糖、ブドウ糖、白糖、マンニトール、馬鈴薯澱粉、トウモロコシ澱粉、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、結晶セルロース、カンゾウ末、ゲンチアナ末など、結合剤としては例えば澱粉、ゼラチン、シロップ、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等を例示することができる。
崩壊剤としては、澱粉、寒天、ゼラチン末、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、結晶セルロース、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、及びアルギン酸ナトリウム等を、それぞれ例示することができる。
滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、水素添加植物油、及びマクロゴール等、着色剤としては医薬品に添加することが許容されている赤色2号、黄色4号、及び青色1号等を、それぞれ例示することができる。
製剤が錠剤または顆粒剤である場合、必要に応じ、該製剤を、白糖、ヒドロキシプロピルセルロース、精製セラック、ゼラチン、ソルビトール、グリセリン、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、フタル酸セルロースアセテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルメタクリレート、及びメタアクリル酸重合体等により被膜することもできる。
本発明の抑制剤がトローチ剤の形態である場合、ラクトフェリンが口腔内に40μg/ml以上の濃度で1時間以上残存するように製剤化することが好ましい。
口腔内におけるラクトフェリンの濃度40μg/ml以上での残存時間は、たとえば、トローチ剤の大きさ、質量、硬度等の物性や、ラクトフェリンの配合量、使用する添加剤の種類や配合量、打錠速度等の打錠条件などを調整することにより調整できる。具体的には、たとえばトローチ剤1錠あたりの質量を1〜3gにすることにより残存時間を長くできる。
トローチ剤中のラクトフェリンの含有量は、当該トローチ剤の総質量に対し、10〜30質量%が好ましく、15〜25質量%がより好ましい。
また、本発明の抑制剤は、口腔内におけるプレボテラ・インターメディアの増殖を、歯周病が発症しない程度に抑制する効果を奏するため、歯周病の予防または治療に有用である。
また、本発明の抑制剤の有効成分であるラクトフェリンは、食品成分の一つであるため、安全性が高く、長期間連続的に投与しても副作用のおそれが少ない。そのため、本発明の抑制剤によれば、これまでの歯周病の治療法である抗生物質や消毒剤の投与による副作用、耐性菌、宿主に有益な微生物の死滅などの問題を回避することができる。
さらに、本発明の抑制剤は、副作用が殆ど無く、耐性菌が生じる心配が少ないことから、年齢や性別に関係なく、多くの歯周病患者等に適用することが可能である。また、本発明の抑制剤によれば、歯科医院での通院治療の負担を軽減することもできる。
本発明の抑制剤と併用される医薬組成物または飲食品は、ラクトフェリンを含有するものであってもよく、含有しないものであってもよい。
前記他の医薬組成物または飲食品は、本発明の抑制剤とは別個の医薬組成物または飲食品等として、本発明の抑制剤と組み合わせて商品化してもよい。
本発明の抑制剤を含有する飲食品は、たとえば飲料又は食品素材にラクトフェリンを添加することにより製造できる。飲食品として好ましい形態は、例えば、錠菓、清涼飲料、乳製品、健康食品、菓子類等を例示することができる。
なお、以上のような表示を行うために使用する文言は、「プレボテラ・インターメディアの抑制用」という文言のみに限られるわけではなく、それ以外の文言であっても、プレボテラ・インターメディアの抑制効果、若しくはプレボテラ・インターメディアが原因で引き起こされる疾患、例えば歯周病等の予防又は治療効果を表す文言であれば、本発明の範囲に包含されることはいうまでもない。そのような文言としては、例えば、需要者に対して、プレボテラ・インターメディアの抑制効果及び/又はプレボテラ・インターメディアが原因で引き起こされる疾患の予防又は治療効果を認識させるような種々の用途に基づく表示も可能である。
前記「表示」の行為(表示行為)には、需要者に対して上記用途を知らしめるための全ての行為が含まれ、上記用途を想起・類推させうるような表示であれば、表示の目的、表示の内容、表示する対象物・媒体等の如何に拘わらず、すべて本発明の「表示」の行為に該当する。しかしながら、需要者が上記用途を直接的に認識できるような表現により表示することが好ましい。具体的には、本発明の飲食品に係る商品又は商品の包装に上記用途を記載する行為を表示行為として挙げることができ、さらに商品又は商品の包装に上記用途を記載したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸入する行為、商品に関する広告、価格表若しくは取引書類に上記用途を記載して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に上記用途を記載して電磁気的(インターネット等)方法により提供する行為、等を例示できる。
一方、表示される内容(表示内容)としては、行政等によって認可された表示(例えば、行政が定める各種制度に基づいて認可を受け、そのような認可に基づいた態様で行う表示)であることが好ましく、そのような表示内容を、包装、容器、カタログ、パンフレット、POP等の販売現場における宣伝材、その他の書類等へ付することが好ましい。
また、例えば、健康食品、機能性食品、経腸栄養食品、特別用途食品、保健機能食品、特定保健用食品、栄養機能食品、医薬用部外品等としての表示を例示することができる。特に、厚生労働省によって認可される表示、例えば、特定保健用食品制度、これに類似する制度にて認可される表示を例示できる。後者の例としては、特定保健用食品としての表示、条件付き特定保健用食品としての表示、身体の構造や機能に影響を与える旨の表示、疾病リスク低減表示等を例示することができ、詳細にいえば、健康増進法施行規則(平成15年4月30日日本国厚生労働省令第86号)に定められた特定保健用食品としての表示(特に保健の用途の表示)、及びこれに類する表示が、典型的な例として列挙することが可能である。
[製造例1]
ラクトフェリン(森永乳業社製、鉄飽和度15%)300g、還元麦芽糖水飴(東和化成社製)810g、粉あめ(昭和産業社製)172.5g、コーンスターチ(三栄源エフ・エフ・アイ社製)165g、ステビア甘味料(三栄源エフ・エフ・アイ社製)1.5g、ヨーグルト香料(長谷川香料社製)6g、およびグリセリン脂肪酸エステル(三栄源エフ・エフ・アイ社製)45gを均一に混合して混合粉末を得た。
この混合粉末を、打錠機(畑鉄鋼所社製)を使用して、1錠当り1.5g、12錠/分の打錠速度で連続的に打錠し、硬度7.3kgのトローチ剤900錠(約1350g)を製造した。得られたトローチ剤1錠中のラクトフェリンの含有量は約0.3gである。
ラクトフェリン(森永乳業社製、鉄飽和度20%)250g、マルツデキストリン(松谷化学工業社製)635g、脱脂粉乳(森永乳業社製)85g、ステビア甘味料(三栄源エフ・エフ・アイ社製)1g、ヨーグルト・フレーバー(三栄源エフ・エフ・アイ社製)5g、およびグリセリン脂肪酸エステル(理研ビタミン社製)24gを均一に混合して混合粉末を得た。
この混合粉末を、打錠機(畑鉄鋼所社製)を使用して、1錠当り1.5g、12錠/分の打錠速度で連続的に打錠し、硬度8.5kgのトローチ剤600錠(約900g)を製造した。得られたトローチ剤1錠中のラクトフェリンの含有量は約0.3gである。
デキストリン(松谷化学工業社製)300.75g、還元麦芽糖水飴(東和化成社製)450g、粉あめ(昭和産業社製)450g、コーンスターチ(三栄源エフ・エフ・アイ社製)225g、ヨーグルト香料(長谷川香料社製)6g、グリセリン脂肪酸エステル(三栄源エフ・エフ・アイ社製)30g、ショ糖脂肪酸エステル(三栄源エフ・エフ・アイ社製)30g、および着色料(三栄源エフ・エフ・アイ社製)8.25gを均一に混合して混合粉末を得た。
この混合粉末を、打錠機(畑鉄鋼所社製)を使用して、1錠当り1.5g、12錠/分の打錠速度で連続的に打錠し、硬度7.3kgの、ラクトフェリンを含まないトローチ剤1000錠(約1500g)を製造した。
本試験は、本発明の抑制剤による、口腔内歯周ポケットに存在するプレボテラ・インターメディアの抑制効果を調べるために行った。
(1)試料の調製
製造例1で製造したトローチ剤を試験試料(ラクトフェリン群)とし、比較製造例1で製造したトローチ剤を対照試料(プラセボ群)とした。
(2)試験方法
「a.試料の投与」
深さ4〜5mmの歯周ポケットを有するプレボテラ・インターメディア菌に感染した軽度慢性歯周炎患者6名を対象(被験者A〜F)とし、二重盲検法により試験を行った。具体的には、前記試験試料(ラクトフェリン群)を3名に、残りの3名に対照試料(プラセボ群)を、1日3回、1回あたり2錠、経口投与した。この際、各トローチ剤は、咬まずに口腔内で溶かすように摂取してもらった。トローチ剤の投与は、3ヶ月間継続した。
「b.測定サンプルの回収」
試験試料又は対照試料の投与前、投与開始から1ヶ月経過時および3ヶ月経過時に、プラークを除去し、その後、各被験者の2被験歯(前歯および小臼歯)について、その歯周ポケット最深部に滅菌ペーパーポイントを2枚挿入し、滲出液を採取し、滅菌バイアルに入れ冷蔵保存した。
「c.プレボテラ・インターメディア菌数の測定」
上記のようにして各群、計6被験歯から回収した滲出液に含まれるプレボテラ・インターメディアの菌数を、リアルタイムPCR法によって測定した。
PCR反応は、PRISM7700SDS(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて行い、PCRサイクルに伴って増加する蛍光強度をリアルタイムで測定し、当該装置によって対数増幅期と判断された一定の蛍光強度に達したPCRサイクル数を求めた。
これとは別に、前記プレボテラ・インターメディアDNAを鋳型として、前記の特異的なプライマーを用いて増幅したDNA断片を挿入したプラスミドについて、段階希釈したものを用いて上記と同様にリアルタイムPCRを行って検量線を作成し、先ほど求めたPCRサイクル数を換算することにより、プレボテラ・インターメディアDNAのコピー数(菌数)を算出した。
プレボテラ・インターメディア菌数の測定結果を表1に示す。
試料投与開始前と3ヶ月経過時のプレボテラ・インターメディア菌数を比較すると、プラセボ群では5被験歯で増加した。これに対し、ラクトフェリン群では、3被験歯で減少し、残りの3被験歯は、投与前、投与後ともに0のままであり、プレボテラ・インターメディア菌数が増加した被験歯はないことが判明した。
また、試料投与開始から1ヶ月経過時においても、上記と同様、プラセボ群では菌数が増加し、ラクトフェリン群で菌数が減少する傾向が確認された。
従って、本発明の抑制剤の経口投与によって、口腔内歯周ポケットのプレボテラ・インターメディアの抑制効果が得られることが明らかとなった。
本試験は、本発明の抑制剤を経口投与した際の、ウシ・ラクトフェリンの口腔内での残存効果を調べるために行った。
(1)試料の調製
実施例1で製造したトローチ剤を試験試料とした。
(2)試験方法
「a.試料の投与」
被験者3名(被験者G〜I)に前記試験試料を咬まずに舐めてもらい、約5分間かけて口腔内で溶かしてもらった。
「b.測定サンプルの回収とラクトフェリン濃度の測定」
試験試料摂取前、摂取(トローチ剤を口腔内に入れた時点から)5分後、30分後、60分後のそれぞれの時点で、被験者の唾液を測定サンプルとして採取し、該測定サンプル中のウシ・ラクトフェリン濃度を、ラテックス凝集法によって測定した。
ラテックスラテックス凝集法について、具体的には、唾液を3,000rpmで3分間遠心分離して上清を回収し、トリス塩酸緩衝液(pH7.5)にて10倍ごとに希釈して試験試料とした。次いで、抗ウシ・ラクトフェリン・ウサギIgGを結合させたポリスチレン・ラテックスビーズを試験試料とともに混合し、多目的分析器TMS−1024(東京貿易医学システム社製)を用いて、ウシ・ラクトフェリン量に応じて生じる濁度(OD:800nm)を2分間モニターし、1分あたりの濁度増加量を測定した。この値を、既知量のウシ・ラクトフェリン標準試料を用いて作成した検量線に対してプロットし、唾液中のウシ・ラクトフェリン量を算出した。
本試験の結果を表2に示す。その結果、被験者3名の唾液中のウシ・ラクトフェリン濃度は、試験試料の摂取開始から摂取5分後にかけて急激に増加し、その後、次第に減少した。このウシ・ラクトフェリン濃度の減少は、摂取30分後以降は緩やかなものであり、摂取60分後において、摂取30分後の濃度の30〜60%程度の濃度が維持されていた。また、その濃度も40μg/ml以上であり、一般的なヒト唾液中のラクトフェリン濃度(約5μg/ml)に比べ、非常に高かった。
このように、プレボテラ・インターメディアの増殖抑制の有効成分であるラクトフェリンが長時間にわたって一定濃度以上に残存することから、本発明の抑制剤が、プレボテラ・インターメディアの増殖を効果的に抑制することが示唆される。
また、本発明の抑制剤は、食品成分の一つであるラクトフェリンを有効成分とするものであり、副作用や耐性菌、宿主に有益な微生物の死滅などの問題について回避することが可能である。また、ラクトフェリンは食品の一部として摂取することが可能であることから、本発明の抑制剤に留まらず、特定保健用食品等の健康食品として適用することも可能である。
Claims (2)
- 鉄飽和度が10〜30%のウシ由来のラクトフェリンを有効成分として含有し、前記ラクトフェリン量として、1日あたり10〜50mg/kg体重の量にて深さ4〜5mmの歯周ポケットを有するプレボテラ・インターメディア菌に感染した軽度慢性歯周炎患者に毎日3回経口投与されることを特徴とする軽度慢性歯周炎患者におけるプレボテラ・インターメディアの増殖抑制剤。
- トローチ剤の形態である請求項1に記載の軽度慢性歯周炎患者におけるプレボテラ・インターメディアの増殖抑制剤。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006284035A JP5031321B2 (ja) | 2006-10-18 | 2006-10-18 | 軽度慢性歯周炎患者におけるプレボテラ・インターメディアの増殖抑制剤 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006284035A JP5031321B2 (ja) | 2006-10-18 | 2006-10-18 | 軽度慢性歯周炎患者におけるプレボテラ・インターメディアの増殖抑制剤 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2008100935A JP2008100935A (ja) | 2008-05-01 |
JP5031321B2 true JP5031321B2 (ja) | 2012-09-19 |
Family
ID=39435550
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2006284035A Expired - Fee Related JP5031321B2 (ja) | 2006-10-18 | 2006-10-18 | 軽度慢性歯周炎患者におけるプレボテラ・インターメディアの増殖抑制剤 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP5031321B2 (ja) |
Families Citing this family (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2010041400A1 (ja) * | 2008-10-09 | 2010-04-15 | 森永乳業株式会社 | バイオフィルム形成抑制剤 |
JP6075950B2 (ja) * | 2011-12-26 | 2017-02-08 | 株式会社ロッテ | 口腔内細菌の共凝集阻害剤 |
US20160067315A1 (en) * | 2013-04-09 | 2016-03-10 | The University Of Tokyo | Inhibitor of extracellular trap formation in leukocytes |
JP6149132B2 (ja) * | 2016-02-08 | 2017-06-14 | 株式会社ロッテ | 口腔内細菌の共凝集阻害剤 |
JP2019034924A (ja) * | 2017-08-10 | 2019-03-07 | 株式会社Nrlファーマ | 妊娠中の母子の健康状態改善剤 |
Family Cites Families (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH05279266A (ja) * | 1992-04-02 | 1993-10-26 | Imuno Japan:Kk | 歯周病の治療・予防用医薬組成物 |
JP4233615B2 (ja) * | 1996-08-22 | 2009-03-04 | 森永乳業株式会社 | 経口抗ヒト爪白癬及び/又は爪白癬以外のヒト足部白癬用医薬品 |
JP4306828B2 (ja) * | 1998-03-31 | 2009-08-05 | 雪印乳業株式会社 | 病原性細菌感染防御剤 |
JP4318765B2 (ja) * | 1998-04-01 | 2009-08-26 | 雪印乳業株式会社 | ピロリ菌感染防御剤 |
JP4082782B2 (ja) * | 1998-04-30 | 2008-04-30 | 雪印乳業株式会社 | 歯周病予防及び改善剤 |
-
2006
- 2006-10-18 JP JP2006284035A patent/JP5031321B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2008100935A (ja) | 2008-05-01 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
EP1959988B1 (en) | Use of bovine lactoferrin for treating destructive inflammation of mucous membrane | |
JP4203120B2 (ja) | 口腔内用殺菌剤、及び該殺菌剤を含有する食品添加剤 | |
TW200305370A (en) | Vital cell preparations containing lactic acid bacterium as the active ingredient and lactic acid bacterium-containing foods | |
JP5031321B2 (ja) | 軽度慢性歯周炎患者におけるプレボテラ・インターメディアの増殖抑制剤 | |
Tobita et al. | Effects of heat-treated Lactobacillus crispatus KT-11 strain consumption on improvement of oral cavity environment: a randomised double-blind clinical trial | |
JP2013075927A (ja) | バイオフィルム形成抑制剤 | |
JP4979596B2 (ja) | 腸疾患のための医薬組成物、飲食品、又は飼料 | |
TWI383798B (zh) | 改善口腔內細菌群的發酵乳酸桿菌SG-A95(Lactobacillus fermentum SG-A95)及其保健組合物 | |
JPH05279266A (ja) | 歯周病の治療・予防用医薬組成物 | |
JPWO2017033616A1 (ja) | 上気道保護剤及び上気道保護用飲食品組成物 | |
JP2022064821A (ja) | 歯周病の予防又は改善用食品組成物、歯周病の予防又は治療剤、歯周病菌に対する抗菌剤、骨吸収性疾患の予防又は改善用食品組成物、骨吸収性疾患の予防又は治療剤、歯強化用食品組成物、骨吸収抑制用食品組成物、骨吸収抑制剤及び破骨細胞分化抑制剤 | |
JPWO2002043753A1 (ja) | B型慢性肝炎治療剤 | |
WO2015182993A1 (ko) | 치주질환의 예방, 개선 또는 치료용 조성물 | |
JP7198547B1 (ja) | 予防又は治療剤、抗菌剤、及び口腔用組成物 | |
WO2023282283A1 (ja) | 口腔環境改善用組成物 | |
KR102217518B1 (ko) | 치주염 예방 또는 치료용 유산균 및 그의 용도 | |
WO2022202403A1 (ja) | 口腔内ナイセリア・ムコサ増加剤 | |
KR20190041801A (ko) | 징코라이드 c를 포함하는 구강질환 예방 또는 치료용 조성물 | |
WO2023175655A1 (ja) | 口腔疾患用剤 | |
CN117042781A (zh) | 口腔内粘液奈瑟菌增加剂 | |
JP2023132273A (ja) | 口腔内アクチノマイセス属及びロシア属菌増加剤 | |
JP6918529B2 (ja) | 口腔用組成物 | |
CN115279457A (zh) | 作为对抗牙周炎或牙龈炎的活性物质的胶原蛋白水解物 | |
JP2023540565A (ja) | 新規のバチルス・ベレゼンシス菌株、及びその使用 | |
JP2013103880A (ja) | 抗酸化機能賦活剤 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20080528 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20110201 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20110401 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821 Effective date: 20110401 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20110830 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20111011 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20111108 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20120619 |
|
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20120627 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 5031321 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150706 Year of fee payment: 3 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |