JP3693377B2 - 生体内で感染防御作用を有するペプチド混合物と、このペプチド混合物を含有する組成物 - Google Patents

生体内で感染防御作用を有するペプチド混合物と、このペプチド混合物を含有する組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、ラクトフェリン加水分解物より分画され、生体内において感染防御作用を有し、かつ糖鎖を有するペプチド混合物(以下糖鎖ペプチド混合物と記載する)と、この糖鎖ペプチド混合物を有効成分として含有する食品、医薬品または飼料等の組成物に関するものである。さらに詳しくは、この発明は、それ自体生体外では全く抗菌活性を示さず、ヒトおよび動物に経口的に投与することにより、生体内において細菌、ウイルス、かび、酵母等の病原性微生物による感染を防御し、下痢、食中毒、細菌性腸炎、敗血症、消化管からの微生物の臓器侵入等の疾病を予防する効果を有するラクトフェリン由来の糖鎖ペプチド混合物と、この糖鎖ペプチド混合物を有効成分として含有する組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近代における衛生、栄養の向上、または抗生物質等を用いた化学療法の発展により、細菌、ウイルス、かび、酵母等の病原性微生物による感染症は著しく減少した。しかしながら、耐性微生物の出現により、新たな抗生物質の開発が常に余儀なくされており、抗生物質投与によるショック死、菌交代症等の副作用の深刻な問題を惹起している。従って、安全で副作用のない新たな抗菌剤または感染防御剤の開発が期待されている。
【0003】
ラクトフェリンは涙、唾液、末梢血、乳汁中に含まれている鉄結合性糖蛋白質であり、従来より大腸菌、カンジダ菌、クロストリジウム菌等の有害微生物に対して生体外で抗菌作用を示すことが知られている[ジャーナル・オブ・ペディアトリクス(Journal of Pediatrics )、第94巻、第1〜9ページ、1979年]。
【0004】
ラクトフェリンに結合している糖鎖の機能については、ヒトラクトフェリンの加水分解物からクロマトグラフィーにより精製して得られた糖ペプチドに赤痢菌(Shigella flexneri )の腸管粘膜細胞への付着を生体外で阻害する活性が認められている[インフェクション・アンド・イミュニティー(Infection and Immunity)、第35巻、第1110〜1118ページ、1982年]。また、ラクトフェリンの糖鎖構造は生物種の間で差異のあることが明らかにされている[バイオキミー(Biochimie )、第70巻、第1459〜1469ページ、1988年]が、ウシラクトフェリン由来糖鎖ペプチドの生体内における生理活性に関する報告は現在に至るまで全くなされていない。
【0005】
一方、ウシラクトフェリンの生理作用については、病原性大腸菌の腸管粘膜への付着に対する阻止作用[第25回日本無菌生物ノートバイオロジー学会総会、抄録第22ページ、、1992年]、リゾチーム共存下での大腸菌の菌体凝集活性[ジャーナル・オブ・アグリカルチュラル・アンド・バイオロジカル・ケミストリー(Journal of Agricultural and Biological Chemistry)、第53巻、第1705〜1706ページ、1989年]等が報告されている。さらに、ラクトフェリン、その加水分解物およびラクトフェリン由来の抗菌性ペプチドについては、、アポラクトフェリンおよびリゾチームを有効成分とする抗菌性組成物(特開昭62ー249931号公報)、ラクトフェリン加水分解物を有効成分とする抗菌剤(特開昭5ー320068号公報)、抗菌性ペプチドおよび抗菌剤(特開平5ー92994号公報)、病原性菌付着防止剤およびそれを含有する飲食品(特開平3ー220130号公報)等、多くの食品、医薬品への応用例が報告されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記のラクトフェリンおよびラクトフェリン関連物質は、いずれも生体外で抗菌活性が既に確認されたものであり、それ自体生体外では抗菌活性を示さない糖鎖ペプチド混合物、特にラクトフェリン加水分解物から分画された糖鎖ペプチド混合物の生理活性は全く知られておらず、その用途に関する報告も皆無である。
【0007】
この発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、経口的に摂取しても安全であり、生体内における細菌、ウイルス、かび、酵母等の病原性微生物による感染症を効果的に防御するペプチド混合物と、このペプチド混合物を有効成分として含有する組成物を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この発明は、前記の課題を解決するものとして、ウシラクトフェリンのペプシン加水分解物又はトリプシン加水分解物から、ゲル濾過クロマトグラフィーにより分画され、次のa)〜d)
a)消化管内で病原性微生物による感染を防御すること、
b)生体外では全く抗菌作用を示さないこと、
c)SDS−ポリアクリルアミド電気泳動で測定した分子量が42,000以下であること、および
d)糖含有量が20%(重量)以上であること、
の理化学的および生物学的活性を有し、かつ糖鎖を有するペプチド混合物を提供する。
【0009】
さらにこの発明は、ウシラクトフェリンのペプシン加水分解物又はトリプシン加水分解物から、ゲル濾過クロマトグラフィーにより分画され、次のa)〜d)
a)消化管内で病原性微生物による感染を防御すること、
b)生体外では全く抗菌作用を示さないこと、
c)SDS−ポリアクリルアミド電気泳動で測定した分子量が42,000以下であること、および
d)糖含有量が20%(重量)以上であること、
の理化学的および生物学的活性を有し、かつ糖鎖を有するペプチド混合物を有効成分として含有し、かつ当該ペプチド混合物以外の前記ゲル濾過クロマトグラフィー分画物を添加成分としない組成物をも提供する。
【0010】
そして、この組成物においては、ペプチド混合物が、使用時の状態において少なくとも0.01%(重量。以下断りのない限り同じ)含有されていることを望ましい態様としてもいる。
以下、この発明について詳しく説明する。
この発明の糖鎖ペプチド混合物の出発物質となるラクトフェリンは、市販のラクトフェリン、牛乳、脱脂乳、ホエー等から常法(例えば、イオン交換クロマトグラフィー)により分離したラクトフェリン、それらを塩酸、クエン酸等により脱鉄したアポラクトフェリン、アポラクトフェリンを鉄、銅、亜鉛、マンガン等の金属で結合させた金属飽和若しくは部分飽和ラクトフェリン、またはこれらの混合物であり、公知の方法により調製することができる。出発物質となるラクトフェリンは、ウシ由来のものが最も望ましいが、ヒト、ヤギ、ヒツジ、水牛等から得られるものであってもよい。
【0011】
この発明の糖鎖ペプチド混合物を得るために用いられるラクトフェリン加水分解物は、例えば、特開平5ー238948号公報に記載の方法により製造することができる。ラクトフェリンの加水分解にはどのようなプロテアーゼを用いてもよいが、糖鎖ペプチド混合物の高い感染防御活性が得られるペプシンまたはトリプシンが望ましい。
【0012】
また、この発明の糖鎖ペプチド混合物は、ラクトフェリンの加水分解物から(例えば疎水性クロマトグラフィーによって)生体外で抗菌性を有するペプチドを分画した残渣として得られるペプチドの混合物から分画することもできる。
この発明の糖鎖ペプチド混合物は、これらのラクトフェリンの加水分解物またはペプチドの混合物から、ゲル濾過クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー、限外濾過等の常法により分画することができる。分画した糖鎖ペプチド混合物は、常法(例えば、減圧加熱濃縮、真空濃縮、膜濃縮等)により濃縮した濃縮液に、またはこの濃縮液を常法(例えば、噴霧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等)により乾燥した粉末に、加工することもできる。
【0013】
分画して得られた糖鎖ペプチド混合物は、未分画のラクトフェリンおよびラクトフェリン加水分解物から分離された公知の抗菌性ペプチドと比較して、より多くの糖を含有していること、および後記する試験例から明らかなように、そのものは生体外において全く抗菌活性を示さないこと、の顕著な相違を有している。
なお、この発明の糖鎖ペプチド混合物は、ラクトフェリンの加水分解後に、酵素を加熱失活させるため、既に殺菌されているが、必要があればさらに加熱殺菌することもできる。
【0014】
以上のようにして得られたラクトフェリン由来の糖鎖ペプチド混合物は、
a)消化管内で病原性微生物による感染を防御すること
b)生体外では全く抗菌作用を示さないこと
c)SDS−ポリアクリルアミド電気泳動で測定した分子量が42,000以下であること
d)糖含有量が20%以上であること
の理化学的および生物学的性質を有している。
【0015】
その他に、この発明の糖鎖ペプチド混合物は、ラクトフェリンをプロテアーゼで加水分解し、分画操作によって得られた糖鎖ペプチド混合物であるから、水溶性、耐熱性、低抗原性、消化吸収性等に優れ、かつ副作用もないという優れた特徴を有している。
次に、この発明の組成物について説明する。この発明の組成物は、通常の加工食品、加工乳、乳性飲料、育児用ミルク、治療用ミルク、通常の飼料、飼料用ミルク、通常の医薬品、経腸または経管栄養剤等、経口的または経管的に摂取可能な食品、飼料、医薬品等であり、その形態は溶液状、流動状、半固形状、固形状、粉末等どのような形態であってもよい。経腸または経管栄養剤としては、普通流動食、ブレンダー食、濃厚流動食等の完全流動食、低蛋白流動食、低コレステロール流動食、低ナトリウム流動食、治療乳、成分栄養流動食等の特殊流動食であってもよい。
【0016】
この発明の組成物には、糖鎖ペプチド混合物が、使用時の状態において少なくとも0.01%、望ましくは0.1〜1%含有されている。使用時の状態とは、各種組成物を摂取のために調整した状態を意味し、例えば、粉末組成物の場合、所定濃度で水に溶解した状態である。
この発明の組成物に添加する糖鎖ペプチド混合物は、加熱による変性がほとんどないので、食品、医薬品、飼料等への添加は、製造工程のいずれの段階であっても可能である。この発明の組成物は、糖鎖ペプチド混合物を含有し、病原性微生物による感染を防御する効果がある。
【0017】
次に試験例を示してこの発明をさらに詳しく説明する。
試験例1
この試験は、この発明の糖鎖ペプチド混合物の調製法を調べるために行った。
すなわち、チーズホエーから分離した市販のラクトフェリン(森永乳業社製)を以下の方法により加水分解した。
1)ペプシンで加水分解する場合
ラクトフェリンを精製水に5〜10%の濃度に溶解し、pHを3.0に調整し、ラクトフェリンの約3%の市販の豚ペプシン(1:10,000。和光純薬工業社製)を添加して均一に混合し、37℃で約4時間保持し、のち加熱して酵素を失活させた。次いでpHを中性に調整し、不溶物を濾過して除去し、ラクトフェリン分解物溶液を得た。
2)トリプシン、プロナーゼ等の中性プロテアーゼによって分解する場合
ラクトフェリン溶液のpHを中性とした後にラクトフェリンの1〜5%の酵素を添加して前記と同様に加水分解した。
3)分画
前記1)および2)のラクトフェリン分解物を常法により凍結乾燥し、乾燥粉末を10〜30%の濃度でを精製水に溶解し、ゲル濾過材を充填したカラムで分画した。分画した各フラクションの糖含量を測定し、糖を含有するフラクションを混合し、凍結乾燥し、糖鎖ペプチド混合物を得た。なお、分画方法としては、ゲル濾過クロマトグラフィーの他、限外濾過膜を用いた方法、レクチン固定化担体を用いた親和性クロマトグラフィー等、糖鎖ペプチド混合物を分画できれば、どのような方法であってもよい。
4)得られた糖鎖ペプチド混合物
前記のとおり得られたラクトフェリン由来の糖鎖ペプチド混合物は次のa)〜d)の理化学的および生物学的性質を有することが、後記する試験方法により確認された。
a)病原性微生物による感染を防御すること、
b)生体外で抗菌作用を有さないこと、
c)SDS−ポリアクリルアミド電気泳動で測定した分子量が42,000以下であること、
d)糖含有量が20%以上であること。
試験例2
この試験では、病原性微生物感染モデルマウスを作出し、生体内におけるこの発明の糖鎖ペプチド混合物の感染防御能を評価した。
【0018】
公知の腸管病原性大腸菌(Escherichia coli O111 :東京大学医科学研究所から分譲された菌株。以下単に大腸菌と記載する)をマウスに胃内投与し、高頻度に感染を惹起するモデルマウスを作出した。すなわち、4週令の無菌マウス(ビニールアイソレーター中で交配し、維持したもの)、BALB/c、雌、20匹を10匹づつ2群に分け、別々のビニールアイソレーター中で糞食防止ネットを敷設したケージに入れ、放射線滅菌した固形飼料F−2(船橋農場製)および滅菌水を自由摂取させて1週間飼育した。
【0019】
ブレイン・ハート・インヒュージョン液体培地(ベクトン・ディッキンソン社製)で前記大腸菌を24時間静置培養し、培養液を遠心分離し、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.0)で菌体を3回洗浄し、同リン酸緩衝生理食塩水で5×1010/mlの生菌濃度で懸濁した。次いで、1群のマウスに菌液0.2mlを、他の1群にはリン酸緩衝生理食塩水(pH7.0)0.2mlをゾンデで胃内に単回投与した。菌投与後、両群のマウスを前記飼料でさらに24時間飼育した。飼育終了後のマウスの死亡数を調べ、各群の感染死亡率を比較した。
【0020】
その結果、大腸菌投与群の死亡頭数は、7/10(10匹中7匹が死亡したことを示す。以下特に断りのない限り同じ)であったのに対し、非投与群の死亡頭数は0/10であった。
試験例3
この試験は、前記病原性微生物感染モデルマウスに対する糖鎖ペプチド混合物の生体内における感染防御能を調べるために行った。
【0021】
試験例2と同一の方法により作成した無菌雌マウス、50匹を10匹づつ5群に分け、別々のビニールアイソレーター中で糞食防止ネットを敷設したケージに入れた。実施例1の方法により製造した糖鎖ペプチド混合物を0、0.01、0.1、1または5%の各濃度で無菌水に添加し、フィルターユニット(ナルゲン社製)で再度除菌した。この溶液および放射線滅菌した固形飼料F−2(船橋農場製)を無菌マウスに1週間自由摂取させた。
【0022】
試験例2と同一の方法ですべての群に前記大腸菌を投与し、各群を前記と同一の飼料でさらに24時間飼育し、のち感染死亡頭数を比較した。
この試験の結果は表1に示すとおりである。表1の結果からこの発明の糖鎖ペプチド混合物は0.01%、望ましくは0.1%以上の添加濃度で病原性大腸菌による感染を顕著に抑制することが認められた。
【0023】
一方、対照として卵白アルブミン(シグマ社製)から、試験例1と同一のペプシン加水分解により調製した糖鎖を有するペプチド混合物を無菌水に5%の濃度で添加し、同様に試験したが、感染死亡頭数は7/10であり、感染防御効果は認められなかった。
なお、他の方法により製造したこの発明の糖鎖ペプチド混合物を用いて同様の試験を行ったが、ほぼ同様の感染防御効果が認められた。
【0024】
【表1】
Figure 0003693377
【0025】
試験例4
この試験は、生体外におけるこの発明の糖鎖ペプチド混合物の抗菌活性を調べるために行った。
1%バクトペプトン(ディフコ・ラボラトリー社製)水からなる液体培地2mlに、0〜50mg/mlの濃度範囲で段階的にこの発明の糖鎖ペプチド混合物(実施例1と同一の方法により製造)を添加し、大腸菌を106 /mlの生菌数濃度で接種し、37℃で16時間静置培養した。培養後の供試菌の発育状態を660nmの吸光度で測定した結果、糖鎖ペプチド混合物をいずれの濃度に添加した場合にも供試菌の増殖抑制は認められず、この糖鎖ペプチド混合物には生体外における抗菌活性は全く存在しないことが認められた。
【0026】
一方、対照として用いた未分解のラクトフェリンは2mg/ml以上の濃度で供試菌の増殖を完全に阻止し、またラクトフェリンのペプシン分解物は200μg/ml以上の濃度で供試菌の増殖を完全に阻止した。
なお、他の方法により製造したこの発明の糖鎖ペプチド混合物についても同様の試験を行ったが、いずれも生体外における抗菌活性は全く認められなかった。
試験例5
この試験は、この発明の糖鎖ペプチド混合物の糖含有量および分子量を調べるために行った。
1)糖含有量
実施例1と同一の方法により製造したこの発明の糖鎖ペプチド混合物の糖含有量を次の方法により測定した。
【0027】
糖鎖ペプチド混合物溶液0.2mlを試験管にとり、5%フェノール水溶液0.2mlを添加混合した後、濃硫酸(精密分析用。和光純薬工業社製)1mlをすばやく添加してよく混合し、この溶液の490nmにおける吸光度を測定した。糖含有量は、同時に標準ガラクトース(和光純薬工業社製)溶液を用いて測定した検量線から求めた。
【0028】
その結果、この発明の糖鎖ペプチド混合物の糖含有量は、25%であった。なお、他の方法により製造した糖鎖ペプチド混合物においても糖含有量は、いずれも20%以上であり、未分画のラクトフェリン加水分解物の糖含量11%と比較して顕著に多いことが判明した。
2)分子量
実施例1および実施例2と同一の方法により製造したこの発明の糖鎖ペプチド混合物の分子量を次の方法により測定した。
【0029】
15〜25%の濃度勾配を有するSDS−ポリアクリルアミド電気泳動用ゲル(第一化学薬品社製)に糖鎖ペプチド混合物10μgを供給し、常法により電気泳動を行った。また、分子量測定マーカー(第一化学薬品社製)を同時に供給し、これらのマーカーの泳動距離との比較から、供試した糖鎖ペプチド混合物の分子量を求めた。
【0030】
その結果は、図1に示すとおりであった。図1は、SDS−ポリアクリルアミド電気泳動写真であり、レーン1からレーン4は、それぞれマーカー、未分解のウシラクトフェリン、実施例1の糖鎖ペプチド混合物および実施例2の糖鎖ペプチド混合物である。
図1から明らかなとおり、実施例1および実施例2のこの発明の糖鎖ペプチド混合物の分子量は、それぞれ14,000以下および42,000以下であった。なお、他の方法により製造した糖鎖ペプチド混合物の分子量は、いずれも42,000以下であり、未分解のラクトフェリンの分子量80,000と比較して極めて小さいことが判明した。
試験例6
この試験は、この発明の糖鎖ペプチド混合物の急性毒性を調べるために行った。
1)使用動物
6週令のCD(SD)系のラット(日本SLCから購入)の両性を用い、雄および雌を無作為にそれぞれ各3群、計6群(1群5匹)に分けた。
2)試験方法
実施例1と同様の方法で製造した糖鎖ペプチド混合物を注射用水(大塚製薬社製)に10%の濃度で溶解し、体重1kg当たり1000または2000mgの割合で金属製玉付き針を用いて単回強制経口投与し、2週間観察して急性毒性を試験した。なお、対照として雄および雌の各1群に注射用水を体重100g当たり2gの割合で同様に経口投与した。
3)試験結果
この試験の結果は、表2に示すとおりである。表2から明らかなように、この糖鎖ペプチド混合物を1000mg/kg体重および2000mg/kg体重の割合で投与した群に死亡例は認められなかった。従って、この糖鎖ペプチド混合物のLD50は、2000mg/kg体重以上であり、毒性は極めて低いことが認められた。なお、他の製造方法により得られたこの発明の糖鎖ペプチド混合物についても試験を行ったが、ほぼ同様の結果が得られた。
【0031】
【表2】
Figure 0003693377
【0032】
試験例7
この試験は、実際に試作したこの発明の組成物と対照の組成物について、感染予防効果を比較するために行った。
1)試料の調製
実施例3と同一の方法によりこの発明の組成物を調製した(試料1)。
【0033】
これとは別に実施例3と同一の方法により調製した中間製品粉末0.5kgに蔗糖(ホクレン製)68g、ホエー蛋白酵素分解物(森永乳業社製)6gおよびアミノ酸混合粉末(味の素社製)3gを添加し、均一に混合し、粉末状の組成物約0.56kgを得た(試料2)。
2)試験方法
2種類の試料を、それぞれ別個に15%の濃度で水に溶解し、摂取時の状態で糖鎖ペプチド混合物を、0.16%(試料1)または0%(試料2)含有する試料(経腸栄養剤)を調製し、オートクレーブで常法により加熱殺菌した。この2種類の試料を無菌パックに分注し、無菌水および固形飼料の代わりに使用し、試験例3と同様の方法により4週令の無菌マウス(ビニールアイソレーター中で交配し、維持したもの)、BALB/c、雌各10匹に自由摂取させた。飼育1週間目に両群のマウスに試験例2と同一の方法で調製した大腸菌の菌液(生菌濃度5×1010/ml)0.2mlをゾンデで胃内に単回投与した。各群を上記と同様の経腸栄養剤でさらに飼育し、24時間後のマウスの感染死亡頭数を試験した。
3)試験結果
その結果、感染死亡頭数は、試料2を投与した群では8/10であったのに対し、この発明の糖鎖ペプチド混合物を含む試料1を投与した群では1/10であり、この発明の組成物により病原性微生物感染が、顕著に抑制されることが認められた。
【0034】
【実施例】
次に実施例を示してこの発明をさらに詳細かつ具体的に説明するが、この発明は以下の例に限定されるものではない。
実施例1
チーズホエーから分離した市販のラクトフェリン(森永乳業社製)1kgを精製水9lに溶解し、1規定の塩酸を添加してpHを3.0に調整し、市販の豚ペプシン(1:10,000。和光純薬工業社製)30gを添加して均一に混合し、37℃で4時間保持し、のち85℃で10分間加熱して酵素を失活させた。次いで、1規定水酸化ナトリウムを添加してpHを7.0に調整し、不溶物を濾過して除去し、ラクトフェリン分解物溶液を得た。このラクトフェリン分解物溶液を凍結乾燥し、ラクトフェリン分解物の粉末約960gを得た。
【0035】
前記粉末40gを精製水400mlに溶解し、セファデックス(商標。ファルマシア社製)G−50を充填し、予め精製水で平衡化したカラム(直径20cm×高さ55cm)に流速65ml/分で通液し、溶出液を100mlのフラクションとして分取し、各フラクションの280nmにおける吸光度および糖含量(前記試験例5と同一の方法による)を測定した。高分子域に溶出された糖を含有するフラクションをすべて混合し、逆浸透膜(旭化成社製)により濃縮し、凍結乾燥し、糖鎖ペプチド混合物約15gを得た。
【0036】
得られた糖鎖ペプチド混合物について、前記の各試験例と同様の方法により試験した結果、生体外における抗菌性活性は全く存在せず、糖含有量は25%であり、未分画のラクトフェリン加水分解物の糖含量11%の約2.3倍であった。また、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって測定した糖鎖ペプチド混合物の分子量は14,000以下に分布していることが確認された。
実施例2
チーズホエーから分離した市販のラクトフェリン(森永乳業社製)1kgを精製水9リットルに溶解し、pHを中性に調整し、市販の豚トリプシン(1,000単位/mg。シグマ社製)30gを添加して均一に混合し、37℃で4時間保持し、のち85℃で10分間加熱して酵素を失活させた。不溶物を濾過して除去し、ラクトフェリン分解物溶液を得た。このラクトフェリン分解物溶液を凍結乾燥し、ラクトフェリン分解物の粉末約960gを得た。
【0037】
前記粉末40gを精製水400mlに溶解し、セファデックス(商標。ファルマシア社製)G−50を充填し、予め精製水で平衡化したカラム(直径20cm×高さ55cm)に流速65ml/分で通液し、溶出液を100mlのフラクションとして分取し、各フラクションの280nmにおける吸光度および糖含量(前記試験例5と同一の方法による)を測定した。高分子域に溶出された糖を含有するフラクションをすべて混合し、逆浸透膜(旭化成社製)により濃縮し、凍結乾燥し、糖鎖ペプチド混合物約20gを得た。これら一連の分画操作を3回反復し、合計約60gの糖鎖ペプチド混合物の粉末を得た。
【0038】
得られた糖鎖ペプチド混合物について、前記と同様の方法により試験した結果、生体外における抗菌性活性は全く存在せず、糖含量は20%であり、未分画のラクトフェリン加水分解物の糖含有量11%の約1.8倍であった。また、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動により測定した糖鎖ペプチド混合物の分子量は42,000以下に分布していることが確認された。
実施例3
ホエー蛋白酵素分解物(森永乳業社製)1.2kg、デキストリン(昭和産業社製)3.6kg並びに少量の水溶性ビタミンおよびミネラルを、水20kgを注入したタンク内で溶解し、水相を調製した。一方、大豆サラダ油(太陽油脂社製)0.3kg、パーム油(太陽油脂社製)0.85kg、サフラワー油(太陽油脂社製)0.25kg、レシチン(味の素社製)0.02kg、脂肪酸モノグリセリド(花王社製)0.02kgおよび少量の脂溶性ビタミンを混合物を均一に混合し、油相を調製した。
【0039】
タンク内の水相に油相を添加し、撹拌して混合し、70℃に加温し、ホモゲナイザーより150kg/cm2 の圧力で均質化し、90℃で10分間殺菌し、濃縮し、噴霧乾燥し、中間製品粉末約3.5kgを得た。
この中間製品粉末2.5kgに蔗糖(ホクレン製)0.34kg、実施例2と同一の方法により製造した糖鎖ペプチド混合物の粉末30gおよびアミノ酸混合粉末(味の素社製)15gを添加して均一に混合し、粉末状の経腸栄養剤約2.8kgを得た。
【0040】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この発明の糖鎖ペプチド混合物と、これを有効成分として含有する組成物は、下痢、食中毒、細菌性腸炎、敗血症、消化管からの微生物の臓器侵入等の細菌、ウイルス、かび、酵母等の病原性微生物による感染症からヒトおよび動物を防御する効果を有する。これらの使用により、抗生物質等の投与量を減少させ、それらによる副作用を緩和することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の糖鎖ペプチド混合物の、図面に代わるSDS−ポリアクリルアミド電気泳動写真である。

Claims (3)

  1. ウシラクトフェリンのペプシン加水分解物またはトリプシン加水分解物から、ゲル濾過クロマトグラフィーにより分画され、次のa)〜d)
    a)消化管内で病原性微生物による感染を防御すること、
    b)生体外では全く抗菌作用を示さないこと、
    c)SDS−ポリアクリルアミド電気泳動で測定した分子量が42,000以下であること、および
    d)糖含有量が20%(重量)以上であること、
    の理化学的および生物学的活性を有し、かつ糖鎖を有するペプチド混合物。
  2. ウシラクトフェリンのペプシン加水分解物またはトリプシン加水分解物から、ゲル濾過クロマトグラフィーにより分画され、次のa)〜d)
    a)消化管内で病原性微生物による感染を防御すること、
    b)生体外では全く抗菌作用を示さないこと、
    c)SDS−ポリアクリルアミド電気泳動で測定した分子量が42,000以下であること、および
    d)糖含有量が20%(重量)以上であること、
    の理化学的および生物学的活性を有し、かつ糖鎖を有するペプチド混合物を有効成分として含有し、かつ当該ペプチド混合物以外の前記ゲル濾過クロマトグラフィー分画物を添加成分としない組成物。
  3. ペプチド混合物が、使用時の状態において少なくとも0.01%(重量)含有されている請求項に記載の組成物。
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