JP2000229865A - ヘリコバクター・ピロリ定着阻害剤 - Google Patents
ヘリコバクター・ピロリ定着阻害剤Info
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Abstract
着阻害剤を得て、食品に添加して消化性潰瘍等に対する
予防、改善用食品を提供する。 【解決手段】 ムチン、特に牛乳汁または鶏卵卵白由来
のムチンを有効成分とするヘリコバクター・ピロリ定着
阻害剤、およびムチンと胃酸分泌抑制剤を含有するヘリ
コバクター・ピロリ定着阻害剤、並びにムチンを含有す
る抗ヘリコバクター・ピロリ機能性食品や医療用食品な
どの食品。
Description
に関与するヘリコバクター・ピロリを胃内から排除しう
るヘリコバクター・ピロリ定着阻害剤、およびこの定着
阻害剤を含有する食品、特に抗ヘリコバクター・ピロリ
機能性食品に関する。
コバクター・ピロリ(Helicobacter pylori : 以下Hp)
の除菌が不可欠であると考えられており、その除菌療法
として以下に説明するように抗生物質と胃酸分泌抑制剤
との併用療法が広く提唱されている。
つ、螺旋型をしたグラム陰性桿菌で、ヒトの胃粘膜に生
息する菌である。この菌は、1983年オーストラリアのMa
rshall,B.J. とWarren,J.Rによって胃炎、胃潰瘍患者の
胃生検材料から高率に検出されることが報告された。当
時は形態および増殖性状からカンピロバクターに類似し
ていたので、カンピロバクター・ピロリ(Campylobacter
pylori)と命名された。その後、外膜の脂肪酸組成やリ
ポゾームの16S-RNA 配列の相同性がカンピロバクターと
大きく相違していることが分かり、新たにヘリコバクタ
ー属が設けられて、今日、この菌はHp と呼ばれてい
る。
潰瘍、十二指腸潰瘍の起因菌であり、さらには胃癌など
の疾患と関連があるとの報告が相次いで発表されてい
る。Hp が一旦胃粘膜に定着すると、感染に対する免疫
応答が強い (抗体価が高い) にもかかわらず、除菌され
ず胃内に生息し続ける。そのため、抗生物質による治療
によって完全に除菌できない限り、投薬を中止すると約
1ヶ月以内に治療前の感染状態に戻ってしまう。しかも
胃内は酸度の高い塩酸によってpHが非常に低く保たれて
いるので、多くの抗生物質は不活化される。このような
理由で、Hp の除菌には、胃酸分泌を強力に抑制するプ
ロトンポンプインヒビターと除菌薬 (抗生物質) が併用
の形でしばしば常用量を超える量で使用されている。ま
た、現状ではHp の除菌には次サリチル酸ビスマス(bis
muth subsalicylate) 、メトロニダゾールおよびテトラ
サイクリンの新3剤併用療法が最も高い除菌率を示すこ
とが分かっているが、この併用に使うメトロニダゾール
は単独使用で耐性発現が急速に起こることが知られてい
る。発展途上国では下痢患者に対してこの薬剤が広く使
用された結果、メトロニダゾールに耐性のHp 感染が高
率で生じているとの報告もある。このように、抗生物質
の長期間投与は、その副作用に加え、耐性菌の増加とい
う非常に重大な問題が危惧される。
作用および耐性菌の増加などの問題を解決する方法とし
て、現在、経口ワクチンによる免疫療法のアプローチが
見られる。しかし、この目的の達成には、Hp に対する
感染モデル動物の作出が必須の条件であるが、マウスや
ラット等の小動物には感染が容易に成立せず、そのため
無菌動物を用いなければならなかったり、また、感染を
長期間持続させるには新鮮分離株を用いる必要があるな
どの複雑な条件が障害となって、新しい予防、治療法の
確立を目指した研究はほとんど進展していない。また、
経口ワクチンではアジュバントとして大腸菌由来の易熱
性毒素(LT)、コレラトキシンを加えることが普通であ
り、これらのアジュバントなしでは粘膜免疫は成立しな
い。実用化への問題点として、大腸菌のLTもコレラトキ
シンも毒性のレベルが非常に高く、ヒトへの応用に関し
て安全性の面で未解決な問題を抱えている。また、ワク
チンはあくまで予防を主体とするものであり、一旦Hp
が感染した患者に対しては効果は望めない。
て、Hp全菌体を抗原として得られた鶏卵抗体の使用が
提案されているが、全菌体に対する抗体では完全な除菌
は望めず、また実際の胃内での除菌効果については確認
されていない。
体、これらの菌体から抽出した多糖類が胃潰瘍の予防、
治療に有用であること (特開平4−5236号公報)、ある
種の海藻由来のラムノース多糖・ラムナンやラムノース
オリゴ糖が抗潰瘍剤として有用である(特開平6−2478
61号公報) と報告されている。
ンがHpの胃粘膜への定着を阻止し、抗潰瘍性を有する
とされている (特開平7−138166号公報) が、この公報
における潰瘍治癒作用の証明には、Hpによる潰瘍形成
とは病理発生が基本的に異なる酢酸誘発潰瘍が用いられ
ており、従ってHpの定着阻害の効果を示すものではな
い。さらに、この公報にはフコース(単糖類)が定着因
子と考えられるとの記載があり、その考えに基づき、H
pのフコイダンによる定着阻害をみるインビトロ実験に
おいてはビオチン化フコースが接着マーカーとして使用
されているが、現時点ではフコースは接着因子とは考え
られていないので、やはりHp定着阻害の効果を示すも
のではない。
除菌するために、抗生物質を長期にわたり使用すると副
作用と共に耐性菌の増加の恐れがある等種々の問題があ
った。本発明の目的は、消化性潰瘍の発生に関与するH
pの胃内での定着を有効に阻害する物質であり、従来の
抗生物質の使用に伴う副作用や耐性菌増加等の欠点を持
たず効果的で安全性の高いHpの定着阻害剤を提供する
ことである。また、消化性潰瘍の改善または予防に有用
な機能性食品、医療用食品等を含む食品を提供すること
である。
するためには細菌が宿主細胞に接着し、そこで増殖する
ことによって定着することが感染の第一歩となる。細菌
が宿主細胞に接着するには接着因子(adhesin) が宿主細
胞表面の受容体(receptor)に結合しなくてはならない。
細菌の感染部位特異性はこの接着因子と受容体の組合せ
によって決まる。細菌が宿主細胞に接着する際に、受容
体分子が共存すると競合阻止(competitive inhibition)
が起こり感染は成立しない。
つ受容体はいずれもHp の感染阻止の標的分子と考えら
れる。本発明者等は、Hp の接着機構に関する研究を通
して、これまで解明されていなかったHp の接着因子が
Hpが産生するウレアーゼであることを明らかにし、こ
のウレアーゼに対する鶏卵黄抗体をHp 定着マウスに経
口投与したところ、Hp の胃内増殖を顕著に抑制するこ
とを示した (特開平10−287585号) 。
を阻止しうる物質を種々検討した結果、牛乳汁由来ムチ
ンや鶏卵卵白由来ムチン等のムチンが、Hp の菌体表層
に局在している接着因子であるウレアーゼに特異的に結
合することによって胃内に定着しているHp を排除する
機能のあることを見出し、本発明を完成させた。
ムチン以外のムチンを有効成分とするヘリコバクター・
ピロリ定着阻害剤にある。この定着阻害剤は消化性潰瘍
の予防または改善に有用である。使用するムチンとして
は牛乳汁または鶏卵卵白由来のムチンが好ましい。
ピロリ定着阻害剤を含有する食品にも関し、ムチンとし
ては、牛乳汁または鶏卵卵白由来のものが好ましい。ム
チンは食品中0.5 〜60重量%含まれるのが好ましい。
管由来のムチン以外のムチンおよび胃酸分泌抑制剤を含
むヘリコバクター・ピロリ定着阻害剤も提供される。こ
の定着阻害剤は消化性潰瘍の予防または治療に有用であ
る。使用するムチンとしては牛乳汁または鶏卵卵白由来
のムチンが好ましい。
る。本発明では定着阻害剤の有効成分として哺乳動物の
消化管由来のムチン以外のムチンを用いる。
どが生産する粘液性物質として知られ、種々の糖タンパ
ク質からなる。ムチンは哺乳動物の初乳や常乳にも含ま
れており、また、鶏卵の卵白、カラザ、卵黄膜等にも多
量に含まれている。
る巨大な重合体であり、10〜20重量%のタンパク質と80
〜90重量%の糖質で構成されている。ムチンの構成成分
であるムチン型糖タンパク質は、D-ガラクトース、シア
ル酸、L-フコース、N-アセチル-D- ガラクトサミン等か
らなる糖鎖がペプチドに結合した複合タンパク質であ
り、N-アセチル-D- ガラクトサミンがセリンやトレオニ
ンのヒドロキシル基にO-グリコシド結合することによ
り、糖鎖とペプチドが結合している点が特徴である。ま
た、糖鎖の一部は硫酸基を含む。
の消化管の粘膜からのムチン以外であれば、その由来は
限定されず、哺乳動物の乳汁、鳥類の卵の卵白、カラ
ザ、卵黄膜などから調製できるが、牛乳汁および鶏卵卵
白由来のものがその効果の面から好ましい。
るムチンの原料として牛乳汁または鶏卵卵白を用いる場
合、これらの原料は安価にしかも大量に入手でき、また
これらからのムチンの分離、精製は簡便な方法で容易に
行うことができる。さらに、酵素等の夾雑物の混入が少
なく純度の高いムチンを得ることができる。また、牛乳
汁ムチンの調製においては、これまでチーズ等の製造工
程で副産物として大量にでるにもかかわらず、有効な利
用方法がなく廃棄されていた乳清(ホエー)を用いるこ
ともできるので、工業規模で大量のムチンを製造するこ
とも可能であり、価格的にも実用的にも非常に有利であ
る。
安定性が高く、加熱によっても、また低pHにおいてもそ
の生理活性を失わないので、原料からの回収、精製が容
易であるばかりでなく、食品や医薬品への配合、加工、
貯蔵においても有利である。牛乳汁中には様々な生理活
性を有する物質が含まれ、一例をあげると、ラクトフェ
リンは抗菌、抗ウイルス、抗がん作用等の多用な生理活
性の所在が報告されている。糖タンパク質からなる巨大
分子のムチンに関しては抗ロタウイルス作用の報告があ
るのみで、その他の生理機能についての報告はない。
インヒビター、アビジン、オボトランスフェリンなど)
においても多用な生理機能のあることが古くから知られ
ている。最近では、鶏卵タンパク質をプロテアーゼで消
化することによって得られるペプチドが抗高血圧作用、
ファゴサイトーシス作用などを示すことが報告されてい
る。また、オボムチン(鶏卵卵白由来ムチン)は抗ロタ
ウイルス作用を示すこと、あるいは、オボムチン、カラ
ザ並びに卵黄膜に共通して存在する硫酸化糖ペプチドが
マクロファージを活性化することによって腫瘍壊死因子
やサイトカインの放出を促進し、乳がん細胞のみを殺傷
する、との報告もある。
知の方法が使用できる。消化管粘膜や粘膜ゲル層などに
存在するムチンの回収は、ムチンをホモゲナイズや超音
波処理により可溶化した後、ゲル濾過やエタノール沈殿
により高分子量画分を分離回収する方法が一般的であ
る。ムチンの可溶化は、グアニジン塩酸、尿素、塩溶
液、界面活性剤により抽出する方法や、還元剤やプロテ
アーゼ処理によってもよい。また、ムチンの種類によっ
ては、第4級アンモニウム塩と不溶性複合体を形成させ
たり、酸性条件下で沈殿させて回収する方法が使用でき
る。
乳汁から常法により乳脂肪およびカゼインを除去して乳
清を得て、これからリポタンパク質を除去し、必要に応
じて濃縮、透析を行う。こうして得られたムチンを含む
材料から、セファロースカラム等を用いたゲル濾過、膜
処理等によりムチンを精製する。さらに、低分子化ムチ
ンが必要であればプロテアーゼ処理、アルカリ加水分解
等の処理を行う。なお、牛乳汁は、初乳、常乳のいずれ
も利用できる。
のような方法がある。集めた卵白から濃厚卵白を分離
し、超遠心分離によりゲル状部分を得て、これから不溶
型オボムチンを調製する。これを、超音波処理、ホモゲ
ナイズ等の方法により可溶化し、得られた可溶化物から
ゲル濾過、膜処理等の方法でムチンを回収する。さらに
必要であればゲル濾過等の処理により精製してもよい。
実証されるように、Hpの産生するウレアーゼが胃粘膜
のムチンに接着するのを抑制する。ウレアーゼはHp菌
体表面に局在しているので、胃内において本発明のムチ
ンは、ウレアーゼに優先的に結合することにより接着因
子であるウレアーゼをマスクしてHpの胃粘膜の受容体
への接着を阻止することができる。これは、動物実験に
おいても確認され、本発明ムチンの胃内におけるHp除
菌効果が認められた。従って、ムチンはHp定着阻害剤
として使用でき、消化性潰瘍等の予防、改善に有用であ
る。また、本発明で使用するムチンは、天然物由来であ
り安全性が高い。
医薬や食品に配合して利用することができる。特に、牛
乳汁由来もしくは鶏卵卵白由来のムチンでは食経験があ
るので、食品に配合し、抗Hp機能性食品や健康食品と
して、あるいは抗Hp作用を有する医療用食品として利
用することができる。
化方法によりムチンと担体あるいは賦形剤を混合して製
造すればよい。必要に応じて、その他の添加剤や薬剤、
例えば制酸剤(炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウ
ム、沈降炭酸カルシウム、合成ヒドロタルサイト等)、
胃粘膜保護剤(合成ケイ酸アルミニウム、スクラルファ
ート、銅クロロフィリンナトリウム等)や消化酵素(ビ
オジアスターゼ、リパーゼ等)を加えてもよい。本発明
定着阻害剤の投与は経口により行い、投与量は成人1日
当たりムチンとして通常0.6 〜2.6 g(乾物量)、好ま
しくは1〜2gである。
胃酸分泌抑制剤を併用することにより一層その効果を高
めることができる。使用できる胃酸分泌抑制剤として
は、ファモチジン、ニザチジン、ロキサチジン、ラニチ
ジン、シメチジン等のH2 インヒビターや、オメプラゾ
ール、ランソプラゾール、ラベプラゾールナトリウム等
のプロトンポンプインヒビターがある。胃酸分泌抑制剤
の投与量は成人1日当たり20〜30mgが好ましい。
は医療用食品として利用する場合、食品へ通常0.5 〜5.
0 重量%程度、好ましくは1.0 〜3.0 重量%添加する。
機能性食品としては、食品の種類は限定されないが、菓
子類、粉末スープ類、飲料等継続して摂取できるものが
好ましい。医療用食品としては、一例としてムチンにデ
キストリン等の賦形剤、カゼインナトリウム等の粘着
剤、必要に応じ、ビタミン類、ミネラル類等の栄養剤、
乳化剤、安定剤、香料等を添加し、流動食の形態としう
る。また、スープ、飲料、流動食等の食品にムチンを添
加して各種形態の医療用食品とすることができる。ムチ
ンを健康食品として利用する場合は、ムチンを有効成分
として30〜60重量%程度含有させ、これに乳糖、トウモ
ロコシデンプン、結晶セルロース、PVP 等の賦形剤や結
合剤を配合し、必要に応じビタミン類やミネラル等の栄
養剤を添加して、細粒、錠剤、顆粒剤等の各種形態に成
形して利用することができる。以下に、本発明を詳細に
説明するために実施例を示すが、本発明はそれらによっ
て限定されるものではない。
(常乳) を各々約1,000 ml準備した。乳脂肪を除去する
ため10,000r.p.m.で30分(+4℃) 遠心し、その上清を得
た。次に、カゼインを除去するため1Mの酢酸をpHが4.5
になるまで滴下し、室温に1時間静置し、その後遠心し
てカゼインを取り乳清を得た。次に、リポタンパク質を
除去するため、1NのNaOHでpHを中性にし、それを乳清1
mlに対して1MのCaCl2 0.1ml と10%硫酸デキストラン−
500 を0.02ml加え、室温に1時間放置後10,000r.p.m.で
30分(+4℃) 遠心して上清を得た。各々の上清を約1/20
に濃縮した後、100 倍量の精製水で透析し、使用時まで
−30℃以下で保存した。
精製するため、0.15M NaCl+2mM EDTA+0.02% NaN3 含有
50mM Tris-HCl 緩衝液(pH8.0) で平衡化したセファロー
スCl-2B ゲルカラムに試料をアプライし、フラクション
コレクターで10mlずつ分画した。タンパク質の溶出パタ
ーンからF1、F2、F3およびF4の4分画に分けた。各分画
液をSDS-PAGEで分析した結果、F1分画は高濃度の糖タン
パク質を含有しており、巨大な構造体であることを認め
た。この巨大分子の糖タンパク質含量は初乳由来と常乳
由来で特別な差は認められなかった。そこで入手しやす
いことから常乳を用いてムチンの大量精製を行ったとこ
ろ、常乳1,000 mlから約100 mg(乾物量)が得られた。
白のみを集め、フルイにかけ濃厚卵白を分離した。さら
に、超遠心分離(100,000g×60分) により得たゲル状部
分を2%KCl 溶液にて繰り返し洗浄し、不溶型オボムチ
ンを調製した。精製水で洗浄した後、メンゼル緩衝液(p
H9.5、イオン強度=0.01) に懸濁し、100W、9KH2(2℃)
で10分間超音波処理することにより可溶化した。この可
溶化物を「牛乳汁由来ムチンの調製」の項に記載したと
同様のセファロース CL-2Bゲルカラムにアプライし、F1
分画を回収した。その性状をSDS-PAGEで分析したとこ
ろ、乳汁ムチンと同様で高濃度の糖タンパク質を含有し
ていた。分子量はおよそ 5.5〜8.3 ×106 であった。約
2,000 mg (乾物量) の鶏卵卵白由来ムチンを回収し、以
下の実験例に使用した。
製造した鶏卵卵白由来ムチンを用いて、Hpが産生する
ウレアーゼの胃粘膜への定着阻害効果をインビトロ実験
系において調べた。
号公報においてHp の胃粘膜への定着を阻止すると記載
された、モズク由来多糖体の一種、フコイダン(シグマ
社製)を用いた。なお、上記公報に記述されているイン
ビトロ実験系はHpの接着因子がフコースとの前提で組
み立てられており、また上記公報においては、Hp感染
マウスにフコイダンを投与したときの定着阻止効果に関
しては明らかにされていない。
に、Hpの接着因子がHpが産生するウレアーゼである
ことを見出したが、このウレアーゼは胃粘膜のムチンに
結合するので、ウレアーゼの付着試験に用いる豚胃ムチ
ンを以下のようにして調製した。
0.1Mリン酸塩+0.15MNaCl+5mM N-エチルマレイミド(NE
M) +1mM フェニルメチルスルホニルフルオライド(PMS
F)+1mM EDTA含有PBS(pH7.4)を加えて洗浄した。胃を切
開し、粘膜を削り取り、上記の緩衝液に浮遊させた。こ
の粘膜浮遊液を氷冷しながらポリトロンホモゲナイザー
を用いて均一にした。これを15,000×gで遠心し上清を
得た。この上清を25,000×gで再び遠心し、上清を回収
し、蒸留水で透析した後、凍結乾燥して粗精製胃ムチン
を得た。次いで、この乾燥粗精製胃ムチンをPBS(pH6.8)
(6M塩酸グアニジンおよびプロティアーゼインヒビター
(5mM NEM, mM PMSF, 1mM EDTA を含む) に溶解し、これ
を塩化セシウム密度勾配(1.5g/ml) に重層し、34,000×
gで48時間遠心した。シアル酸含有分画の検出はニトロ
セルローズ膜ブロッティングと過ヨウ素酸シフ試薬によ
る染色によって行った。発色した分画をプールし、再び
塩化セシウム密度勾配に重層して遠心した。染色陽性分
画をプールし、凍結乾燥した。次いで、0.1Mリン酸緩衝
液(0.1M NaCl含有、pH6.8)で平衡化したセファロースCL
-4B カラムを通してゲル濾過を行い、分画した。PAS 染
色陽性で、蛋白濃度の高い分画をプールし、PBS(pH6.8)
で透析し、精製豚胃ムチンを得た。これを使用時まで−
80℃に保存した (精製豚胃ムチン) 。なお、精製豚胃ム
チンはSDS-PAGEの結果、66kDの糖タンパク質であること
を認めた。
て作製した。96ウエルマイクロプレートの各々のウエル
に1.25%グルタルアルデヒド溶液を100 μl ずつ加え、
5分間感作した。次に、ウエルを蒸留水で3回洗浄し、
精製豚胃ムチン(1.27mg/ml) をウエル当たり50μl ずつ
加え、4℃に一夜静置することによって固相化した。使
用時には各々のウエルに3%BSA を加えて37℃60分間反
応させることによってブロッキングした後、0.05%ツイ
ン20加PBS で3回洗浄したプレートをウレアーゼ接着試
験に供した。
化された豚胃ムチンへのウレアーゼ接着試験は以下のよ
うに行った。精製したビチオン化ウレアーゼはpH域の異
なる接着培地(20mM リン酸緩衝液に0.01%ツイン20およ
び0.15M NaClを含む。接着培地のpHは予め2.0 、3.0 、
4.0、4.5 、5.0 、5.5 、6.0 および6.5 に調整してお
く) を用いて最終濃度が7.0μg/mlとなるように希釈し
た。調整したウレアーゼを前述のムチン固相化マイクロ
プレートの2穴ずつに加え、37℃で60分間感作した。次
に、各々のウエルを接着培地で3回洗浄した後、直ちに
10%中性ホルマリン(pH7.4) を加え、プレートを37℃で
30分静置することによって固定した。ウエルに接着した
ウレアーゼ量を測定するため、ストレプトアビジンHRP
を各々のウエルに加え、37℃で60分間反応させた。次い
で、基質としてオルトーフェニレンジアミン2塩酸およ
びH2O2を加え反応させた。反応停止液には3N H2SO4を用
いた。なお、ライニングプレートには2倍段階希釈した
既知量のウレアーゼを置いて、そのカリブレーションカ
ーブから未知量のサンプルを測定した。
ン) およびフコイダン(対照)を用いてウレアーゼ接着
抑制試験を行った。まず、種々の濃度に調整した試料と
ビオチン化ウレアーゼを混合し、この混合物を37℃で60
分間振盪しながら感作した。次に、この混合物を豚胃ム
チンを固相化した96ウエルマイクロプレートのウエルに
移し、プレートを振盪しながら再び37℃で60分間感作し
た。その後マイクロプレートのウエルを接着培地(pH3.
0) で3回洗浄し、各々のウエルを65℃10分間加熱する
ことによって固定した。固定した各々のウエルをPBS-ツ
イン20(0.5%)(pH6.8)で3回洗浄し、豚胃ムチンに接着
したビオチン化ウレアーゼを検出するため、各々のウエ
ルにストレプトアビジンHRP を加えた後、前述のELISA
により測定した。
着し、この接着パターンはpHに依存している。pH3.0 領
域でのウレアーゼ接着反応は胃粘膜におけるHp の定着
性を反映していると考えられ、このpH域でウレアーゼの
接着が阻止できる物質はHp の胃内定着を阻止する機能
があると考えられる。
は牛乳汁由来ムチンおよび鶏卵卵白由来ムチンによって
用量依存的に抑制されたが、フコイダンはウレアーゼ接
着阻止能が低かった。ウレアーゼはHp菌体表面に局在
しているので、胃内において、これらのムチンが菌体の
ウレアーゼに結合することによって接着因子であるウレ
アーゼがマスクされ感染阻止 (除菌) が起こりうる。
示すヘアレスマウス(NS: Hr/ICR 系、財団法人動物繁殖
研究所、受託番号 IAR-NHI-9701)(ATCC#72024)(Clin.D
iagn.Lab.Immunol. 5: 578-582,1998)を用いた。NSP335
株(1×109 CFU/マウス) をマウスに経口接種して1週間
飼育した後、飲水に各種濃度に溶解した試料を4週間投
与した。これ以外に、試料を含まない飲水を投与する群
も設定した。供試マウス数は各群とも10匹とした。マウ
スの1日当たりの飲水量は4〜8mlであった。投与終了
時に各群のマウスを屠殺し、胃を摘出し、内容物を除去
した後、ボルテックスミキサーを用いてPBS(pH7.2)で8
回洗浄し、ホモゲナイザーで乳剤を作製し、Hp 検出用
材料とした。Hp の検出は乳剤をHp 検出用培地 (ポア
メディアHp 分離培地、栄研化学) に接種し、ガスパッ
ク法で37℃、5日間培養し、コロニー数を計測すること
によって行った。
白由来ムチンの除菌効果 図3に示したように、牛乳汁由来ムチンおよび鶏卵卵白
由来ムチンは濃度依存的に胃内のHp を除菌した。これ
に対し、フコイダンは高用量投与群においても本発明の
ムチン投与群と異なり、顕著な定着阻害効果は認められ
なかった。なお、対照群はHp に100 %(10/10) 感染し
ていた。これらの実験から、牛乳汁由来ムチンおよび鶏
卵卵白由来ムチンはHp の産生するウレアーゼと優先的
に結合することによって接着因子であるウレアーゼをマ
スクし、感染阻止が起こると考えられる。
ポンプインヒビター)との併用効果を動物実験により調
べた。
いて高い除菌率を示した牛乳汁由来ムチンを使用した。
動物実験の方法は実験例2と同じであるが、ただし、H
2 インヒビター(ファモチジン)またはプロトンポンプ
インヒビター(オメプラゾール)は攻撃1週間後から強
制経口投与にて1週間投与し、牛乳汁由来ムチンは攻撃
1週間後から飲水投与にて2週間投与した。表1に胃内
のHp除菌効果を示す。
制剤を併用すると、実験例2よりも投与期間が短く、ム
チン投与量が少ないにもかかわらず高い除菌率を示し
た。このように、ムチンと胃酸分泌抑制剤との併用にお
いてはムチン単独での投与よりも優れた除菌効果が得ら
れることが明らかである。以下の製造例においてムチン
としては実施例1で製造した牛乳汁由来ムチンを用い
た。
細粒を得た。
粒剤を得た。
優れたHp定着阻害剤およびそれを含有する食品が提供
される。従って、Hpによって引き起こされる消化性潰
瘍等を、副作用を生じることなく効果的に抑制すること
ができる。本発明で使用するムチンの原料として、安価
で大量に入手しうる牛乳汁や鶏卵を用いることもでき、
これらから簡便な方法で効果の優れたムチンを調製しう
る。また、従来消化性潰瘍の治療に用いられてきた抗生
物質とは異なり、耐性菌の問題も生じず、胃内のHpを
特異的に除菌することができる。
ンを示す図である。
る。
Claims (9)
- 【請求項1】 哺乳動物の消化管由来のムチン以外のム
チンを有効成分とするヘリコバクター・ピロリ定着阻害
剤。 - 【請求項2】 ムチンが牛乳汁または鶏卵卵白由来のム
チンである請求項1記載の定着阻害剤。 - 【請求項3】 消化性潰瘍の予防または改善のための請
求項1または2記載のヘリコバクター・ピロリ定着阻害
剤。 - 【請求項4】 請求項1ないし3のいずれかの項記載の
ヘリコバクター・ピロリ定着阻害剤を添加した食品。 - 【請求項5】 ムチンを食品中0.5 〜60重量%添加した
請求項4記載の食品。 - 【請求項6】 哺乳動物の消化管由来のムチン以外のム
チンおよび胃酸分泌抑制剤を含むヘリコバクター・ピロ
リ定着阻害剤。 - 【請求項7】 ムチンが牛乳汁または鶏卵卵白由来のム
チンである請求項6記載の定着阻害剤。 - 【請求項8】 哺乳動物の消化管由来のムチン以外のム
チンおよび胃酸分泌抑制剤を含む、消化性潰瘍の予防剤
および治療剤。 - 【請求項9】 ムチンが牛乳汁または鶏卵卵白由来のム
チンである請求項8記載の予防剤および治療剤。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
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JP2008507270A (ja) * | 2004-07-22 | 2008-03-13 | グロバス・エッグ・サイエンスィス・ビー.ブイ. | 抗高血圧性機能性食品 |
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-
1999
- 1999-12-10 JP JP35140599A patent/JP3255161B2/ja not_active Expired - Fee Related
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