JP3580517B2 - 鉄カゼインホスホペプチド複合体及びその製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭酸及び/又は重炭酸−鉄−カゼインホスホペプチド複合体に関する。
また、本発明は、炭酸及び/又は重炭酸−鉄−カゼインホスホペプチド複合体を製造する方法に関する。
本発明の炭酸及び/又は重炭酸−鉄−カゼインホスホペプチド複合体は、溶解性が良好で、耐熱性を有しており、鉄独特の収斂味を呈することがないという特徴を有するので、貧血の予防又は治療や鉄強化を目的とした飲食品、医薬品、飼料等の原料として有用である。
【0002】
【従来の技術】
日本人の鉄摂取量は、昭和50年以降、所要量の充足率 100%前後を横ばいで推移しており、鉄分は食事上、気をつけて摂取しなければならない栄養素の一つといえる。また、世界的にみても、鉄分は不足しがちな栄養素とされている場合が多く、特に、1歳未満の乳児、スポーツ選手、貧血傾向の人、妊産婦向けの鉄強化食品や医薬品の供給が望まれている。しかし、一般に鉄強化に用いられる硫酸鉄やクエン酸鉄等の鉄塩は、飲食品等に添加すると鉄独特の収斂味を感じるという問題や胃腸の粘膜を傷める等の懸念から、その添加量に限界がある。また、有機鉄のヘム鉄も金属味や生臭味等の風味上の問題があり、飲食品等への添加には制約が多い。
【0003】
また、鉄吸収を促進する目的で、ラクトフェリンを添加すること(特開昭 63− 22525号公報)やカゼインホスホペプチドを添加すること(特開昭 59−162843号公報)等が試みられているが、これらの物質を多量の鉄塩と混合すると沈澱が生成するという問題があり、水溶性の飲食品や医薬品の原料として使用することはできなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、先に、鉄とカゼインとを結合させることにより、鉄独特の収斂味を弱めた鉄剤を開発した (特開平2− 83400号公報) 。しかし、この鉄とカゼインとを結合させた鉄カゼインは、耐熱性に乏しく、90℃10分間の加熱殺菌、 120℃2〜3秒間の加熱殺菌、あるいは、レトルト滅菌等の加熱処理を行うと、鉄独特の収斂味を呈するという欠点を有していた。この欠点は、鉄とカゼインとの結合が弱い為に加熱により鉄がカゼインから遊離し、水酸化鉄等が生成することによると考えられる。
【0005】
そこで、本発明者らは、更に研究を進め、炭酸及び/又は重炭酸を用いることで鉄とカゼインとの結合性を強固にすることができることを見出し、炭酸及び/又は重炭酸−鉄−カゼイン複合体を得ることに成功した (特願平7−259572号) 。この炭酸及び/又は重炭酸−鉄−カゼイン複合体は、耐熱性を有しており、加熱殺菌しても鉄独特の収斂味を呈することがないという特徴を有するので、貧血の予防又は治療や鉄強化を目的とした飲食品、医薬品、飼料等の原料として有用なものである。
【0006】
そして、本発明者らは、耐熱性を有しており、加熱殺菌しても鉄独特の収斂味を呈することがないという特徴を有すると共に、より溶解性の良好な鉄結合性の物質を得るべく、鋭意研究を進めていたところ、炭酸及び/又は重炭酸、鉄及びカゼインホスホペプチドを混合することにより、溶解性が良好で、耐熱性を有しており、鉄独特の収斂味を呈することがないという特徴を有する炭酸及び/又は重炭酸−鉄−カゼインホスホペプチド複合体を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。したがって、本発明は、溶解性、特に水に対する溶解性が良好で、耐熱性を有しており、鉄独特の収斂味を呈することがない、新規な炭酸及び/又は重炭酸−鉄−カゼインホスホペプチド複合体を提供することを課題とする。また、本発明は、この新規な炭酸及び/又は重炭酸−鉄−カゼインホスホペプチド複合体を製造する方法を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の水に対する溶解性が良好で、耐熱性を有しており、鉄独特の収斂味を呈することがない炭酸及び/又は重炭酸−鉄−カゼインホスホペプチド複合体は、i)炭酸、 ii)重炭酸、又はiii)炭酸及び重炭酸を含む溶液 (A溶液) と、 iv)カゼインホスホペプチドを含む溶液 (B溶液) と、v)鉄を含む溶液 (C溶液) とを混合し、これらの成分を反応させることにより得ることができる。
また、この反応生成物を限外濾過膜で濃縮し、脱塩し、凍結乾燥して粉末としてもよい。
【0008】
このようにして得られた炭酸及び/又は重炭酸−鉄−カゼインホスホペプチド複合体は、次の1)〜4)の性質を示す。
1)カゼインホスホペプチド1分子当たり、鉄1〜50原子を含有すること、
2)20℃において、脱イオン水に5%(重量)以上溶解すること、
3)水溶液の90℃、10分間の加熱により沈澱を生じないこと、
4)鉄独特の収斂味がないこと。
なお、ここでいうカゼインホスホペプチドとは、カゼインを、トリプシン又はトリプシンを含有する蛋白分解酵素(例えば、パンクレアチン)等の蛋白質分解酵素で分解し、カゼインホスホペプチド画分を採取することによって得られた分子量が 2,500〜4,500 程度のペプチドである(British Journal of Nutrition, vol.43, pp.457−467, 1980)。また、市販のホスホペプチドを用いることもできる。
【0009】
以下に、本発明の炭酸及び/又は重炭酸−鉄−カゼインホスホペプチド複合体の性質を調べる為に行った試験例を示す。
【試験例1】
(A1溶液)重炭酸ナトリウム100gを含む水溶液 1L
(A2溶液)脱イオン水 1L
(B溶液)カゼインホスホペプチド(明治製菓製)4gを含む水溶液 0.8L
(C溶液)塩化第二鉄1.4gを含む水溶液 0.2L
A1溶液(1L)とB溶液(0.8L)を混合したD1溶液(1.8L)にC溶液(0.2L)を加えて調製した本発明品 (重炭酸−鉄−カゼインホスホペプチド複合体)とA2溶液(1L)とB溶液(0.8L)を混合したD2溶液(1.8L)にC溶液(0.2L)を加えて調製した対照品について、90℃、10分間の加熱殺菌(I) を行った。また、本発明品について、分画分子量 1,000カットの透析膜で、0.05mol イミダゾール及び0.15mol 食塩を含むpH 7.5の液状食品を模倣した緩衝液に対し、3日間透析を行った後、90℃、10分間の加熱殺菌(II)を行った。そして、調製直後の性状(1)、加熱殺菌(I) 後の性状(2)、透析及び加熱殺菌(II)後の性状(3)をそれぞれ観察した。その結果を表1に示す。
これによると、カゼインホスホペプチドと鉄のみを混合した対照品は、加熱により沈澱を生じるが、重炭酸を共存させて複合体を形成させた本発明品は、加熱しても沈澱を生じないことが判る。
【0010】
【表1】
【0011】
【試験例2】
試験例1に示したと同様の方法で調製した本発明品及び対照品について、分画分子量 1,000の透析膜で超純水に対し透析(4℃、1週間)を行い、完全に脱塩した後、凍結乾燥して、本発明品及び対照品の各粉末を得た。そして、これらの粉末を用いて溶解試験を行った。なお、溶解試験は、脱イオン水で各濃度となるよう粉末を溶解した後、20mlにメスアップして良く撹拌し、遠心分離(3,000rpm)を行って、沈澱の有無をそれぞれ観察した。その結果を表2に示す。
これによると、カゼインホスホペプチドと鉄のみを混合した対照品は溶解性が悪いが、重炭酸を共存させた本発明品は溶解性が良好であることが判る。
【0012】
【表2】
【0013】
【試験例3】
試験例1に示したと同様の方法で調製した本発明品の凍結乾燥粉末を1mg/mlとなるよう0.1M食塩を含む50mMトリス塩酸緩衝液(pH 9.0)で溶解した溶液を調製した。また、対照品として、カゼインホスホペプチド(明治製菓製)を1mg/mlとなるよう0.1M食塩を含む50mMトリス塩酸緩衝液(pH 9.0)で溶解した溶液を調製した。そして、0.1M食塩を含む50mMトリス塩酸緩衝液(pH 9.0)で平衡化したmonoQ HR10/10 カラム (ファルマシア社製) に各溶液50μl を添加した後、1M食塩を含む50mMトリス塩酸緩衝液(pH 9.0)でリニアグラジュエント溶出を行った。なお、流速は2ml/minとし、検出は214nm の吸光度を測定することにより行なった。得られたチャートを図1及び図2に示す。これによると、鉄が結合していない対照品のチャート(図2)では見られないピークが、本発明品のチャート(図1)ではピークAとして存在することが判る。
【0014】
さらに、QセファロースFF(ファルマシア社製) を用いて、同様の溶出条件でピークAを大量に分取し、プロテインアッセイキット(ピアス社製)でペプチド含量を測定すると共に原子吸光分析機で鉄含量を測定したところ、複合体中のカゼインホスホペプチドに対して46重量%の鉄が含まれていることが判った。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の溶解性が良好で、耐熱性を有しており、鉄独特の収斂味を呈することがない炭酸及び/又は重炭酸−鉄−カゼインホスホペプチド複合体は、i)炭酸、 ii)重炭酸、又はiii)炭酸及び重炭酸を含む溶液 (A溶液) と、 iv)カゼインホスホペプチドを含む溶液 (B溶液) と、v)鉄を含む溶液 (C溶液) とを混合することにより得ることができる。
【0016】
本発明で、炭酸及び/又は重炭酸−鉄−カゼインホスホペプチド複合体を製造する際に使用する炭酸及び/又は重炭酸は、酸の形態で使用しても良く、水溶性塩の形態で使用しても良い。また、本発明で、炭酸及び/又は重炭酸−鉄−カゼインホスホペプチド複合体を製造する際に使用する鉄は、水溶性塩の形態で通常使用される。
【0017】
そして、本発明で、炭酸及び/又は重炭酸−鉄−カゼインホスホペプチド複合体を製造するに際し、i)炭酸及び/又は重炭酸、 ii)カゼインホスホペプチド、及びiii)鉄は、溶液として使用しても良いし、固形状態のi)炭酸塩類及び/又は重炭酸塩類、 ii)カゼインホスホペプチド、及びiii)鉄を同時に溶解して使用しても良い。
【0018】
本発明で、炭酸及び/又は重炭酸−鉄−カゼインホスホペプチド複合体を製造する際に使用する炭酸及び/又は重炭酸としては、炭酸水、重炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム等を例示することができる。また、pH調整剤として、水酸化ナトリウム、アンモニア、水酸化カリウム、塩酸、クエン酸、乳酸等を同時に使用しても構わない。
また、水溶性鉄塩として、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、クエン酸鉄アンモニウム等を例示することができる。
【0019】
また、本発明で、炭酸及び/又は重炭酸−鉄−カゼインホスホペプチド複合体を製造する際に使用するカゼインホスホペプチドとしては、カゼインをトリプシン等の蛋白質分解酵素で分解して得られる分子量 2,500〜4,000 のペプチドを使用しても良いが、市販のカゼインホスホペプチドを使用しても良い。
【0020】
以下に実施例を示し、本発明をさらに詳しく説明する。
【実施例1】
(A溶液)重炭酸ナトリウム100gを含む水溶液 1L
(B溶液)カゼインホスホペプチド(明治製菓製)1.6gを含む水溶液 0.8L
(C溶液)塩化第二鉄6水和物2.8gを含む水溶液 0.2L
A溶液(1L)とB溶液(0.8L)を混合してD溶液(1.8L)を調製した後、D溶液(1.8L)にC溶液(0.2L)を加えて重炭酸−鉄−カゼインホスホペプチド複合体を生成させた。次に、この重炭酸−鉄−カゼインホスホペプチド複合体を含む溶液を分画分子量 1,000の限外濾過膜で濃縮し、さらに、超純水を加えて濃縮するという操作により電気伝導度が10μs となるまで脱塩した後、凍結乾燥して、重炭酸−鉄−カゼインホスホペプチド複合体1.4gを得た。
【0021】
この重炭酸−鉄−カゼインホスホペプチド複合体について、プロテインアッセイキット (ピアス社製) でペプチド含量を測定し、原子吸光分析機で鉄含量を測定したところ、複合体中のカゼインホスホペプチドに対して11重量%の鉄が含まれていることが判った。また、上記の限外濾過膜で重炭酸−鉄−カゼインホスホペプチド複合体を含む溶液を濃縮した際に回収されたパーミエート側の鉄含量を原子吸光分析機で測定したところ、1μg/ml以下であった。
【0022】
また、この重炭酸−鉄−カゼインホスホペプチド複合体について、官能評価試験を行った。すなわち、男10名女10名のパネラーに、濃度が 50mg/mlとなるように重炭酸−鉄−カゼインホスホペプチド複合体を溶解した水溶液について、収斂味を感じるか否かを判定させた。また、対照として、濃度が 25mg/mlとなるように塩化第二鉄6水和物を溶解した水溶液についても同様の評価を行った。その結果を表3に示す。
これによると、本発明の重炭酸−鉄−カゼインホスホペプチド複合体は、鉄独特の収斂味を全く示さないことが判る。
【0023】
【表3】
【0024】
さらに、この重炭酸−鉄−カゼインホスホペプチド複合体について、動物実験を行った。すなわち、ビタミンCとしてアスコルビン酸及びアスコルビン酸ナトリウムを6.2mg/100g含む生理的リン酸緩衝液(pH 7.2)に、鉄濃度が20mg/100mlとなるよう実施例1の重炭酸−鉄−カゼインホスホペプチド複合体を溶解し、90℃で10分間の加熱殺菌を行った試料を調製した(本発明群)。一方、実施例1の重炭酸−鉄−カゼインホスホペプチド複合体に代えて硫酸第1鉄を用いた試料も調製した(対照群1)。さらに、ビタミンCとしてアスコルビン酸及びアスコルビン酸ナトリウムを6.2mg/100g含む生理的リン酸緩衝液(pH 7.2)を、90℃で10分間の加熱殺菌を行った試料も調製した(対照群2)。
【0025】
離乳直後の21日齢ウィスター系雌ラット(日本チャールスリバー製)のうち、体重が45〜50g のものを選んで除鉄食(鉄含量が 0.25mg/100gの飼料:オリエンタル酵母製)を2週間投与し、血中ヘモグロビン値が7g/100mL以下の貧血ラットを作成した。このラットを1群8〜11匹とし、その後も除鉄食を投与し続けながら各試験試料を1mL/日、6週間、強制経口(ゾンデ)投与した。そして、試験試料の投与を開始して6週間目に、各ラットの尾静脈より採血し、自動血球計測装置(東亜医用電子製)でヘモグロビン値を測定した。その結果を表4に示す。
これによると、鉄剤として使用されている硫酸第一鉄よりも、本発明の重炭酸−鉄−カゼインホスホペプチド複合体は、貧血に対する治療効果が優れていることが判る。
【0026】
【表4】
【0027】
【実施例2】
(A溶液)重炭酸ナトリウム108gを含む水溶液 1L
(B溶液)カゼインホスホペプチド(明治製菓製)50g を含む水溶液 1L
(C溶液)塩化第二鉄6水和物 84gを含む水溶液 1L
A溶液(1L)とB溶液(1L)を混合してD溶液(2L)を調製した後、D溶液(2L)にC溶液(1L)を加えて、重炭酸−鉄−カゼインホスホペプチド複合体を生成させた。そして、この重炭酸−鉄−カゼインホスホペプチド複合体を含む溶液を分画分子量 1,000の限外濾過膜で濃縮し、さらに、超純水を加えて濃縮するという操作により電気伝導度が10μs となるまで脱塩した後、凍結乾燥して、重炭酸−鉄−カゼインホスホペプチド複合体 46gを得た。
【0028】
この重炭酸−鉄−カゼインホスホペプチド複合体について、プロテインアッセイキット (ピアス社製) でペプチド含量を測定し、原子吸光分析機で鉄含量を測定したところ、複合体中のカゼインホスホペプチドに対して26重量%の鉄が含まれていた。また、この重炭酸−鉄−カゼインホスホペプチド複合体を3重量%となるまで水に添加し、90℃、10分間の加熱殺菌を行ったところ、沈澱は生じなかった。さらに、実施例1と同様の官能評価試験を行ったが、鉄独特の収斂味は全く認められなかった。
【0029】
【実施例3】
カゼインホスホペプチド(明治製菓製)100gを水5Lに溶解した溶液に、重炭酸ナトリウム250gを加えて溶解した後、硫酸第一鉄7水和物164gを水5Lに溶解した溶液を加えて、重炭酸−鉄−カゼインホスホペプチド複合体を生成させた。そして、この重炭酸−鉄−カゼインホスホペプチド複合体を含む溶液を分画分子量 1,000の限外濾過膜で1Lとなるまで濃縮し、脱塩した後、 100℃で5分間の加熱殺菌を行い、噴霧乾燥して、重炭酸−鉄−カゼインホスホペプチド複合体 71gを得た。
【0030】
この重炭酸−鉄−カゼインホスホペプチド複合体について、プロテインアッセイキット (ピアス社製) でペプチド含量を測定し、原子吸光分析機で鉄含量を測定したところ、複合体中のカゼインホスホペプチドに対して13重量%の鉄が含まれていた。また、この重炭酸−鉄−カゼインホスホペプチド複合体を13重量%となるまで水に添加したところ、完全に溶解した。さらに、実施例1と同様の官能評価試験を行ったが、鉄独特の収斂味は全く認められなかった。
【0031】
【実施例4】
重炭酸ナトリウム120gを水1Lに溶解した溶液に、カゼインホスホペプチド 50gを加えて溶解した後、クエン酸鉄アンモニウム100gを水2Lに溶解した溶液を加えて、重炭酸−鉄−カゼインホスホペプチド複合体を生成させた。そして、この重炭酸−鉄−カゼインホスホペプチド複合体を含む溶液を分画分子量 1,000の限外濾過膜で1Lとなるまで濃縮し、脱塩した後、凍結乾燥して、重炭酸−鉄−カゼインホスホペプチド複合体 44gを得た。
【0032】
この重炭酸−鉄−カゼインホスホペプチド複合体について、プロテインアッセイキット (ピアス社製) でペプチド含量を測定し、原子吸光分析機で鉄含量を測定したところ、複合体中のカゼインホスホペプチドに対して24重量%の鉄が含まれていた。また、この重炭酸−鉄−カゼインホスホペプチド複合体を20重量%となるまで水に添加したところ、完全に溶解した。さらに、実施例1と同様の官能評価試験を行ったが、鉄独特の収斂味は全く認められなかった。
【0033】
【参考例1】
マーガリン3kg及び精製上白糖2kgを混合してホイップした後、全卵 0.7kgを添加してさらにホイップした。そして、このホイップしたものに、小麦粉10kg、大豆蛋白質 0.2kg、脱脂粉乳 0.4kg及び実施例4で得られた重炭酸−鉄−カゼインホスホペプチド複合体 13gを混合したものを加えて混合し、 10gずつ成形カットした。これをバンド型オーブンで 180℃、11分間焼成してビスケットを製造した。なお、このビスケット1枚の中には鉄が約2mg含まれていた。
【0034】
【参考例2】
脱脂粉乳 6%、バター 1%、実施例1で得られた重炭酸−鉄−カゼインホスホペプチド複合体 0.038%及び濾過水を加えて全体を 100%として混合し、溶解した後、加熱殺菌して鉄強化乳飲料を製造した。なお、この鉄強化飲料 100mLの中には鉄が約10mg含まれていた。
【0035】
【参考例3】
脱脂粉乳33部、小麦粉19部、ブドウ糖8部、パン粉7部、魚粉7部、脱脂大豆粕4部、砂糖4部、ビタミン及びミネラル混合3部、動物性油脂2部、オリゴ糖1部及び実施例3で得られた重炭酸−鉄−カゼインホスホペプチド複合体 0.014部を配合し、養豚用飼料を製造した。なお、この養豚用飼料1kgの中には鉄が約40mg含まれていた。
【0036】
【発明の効果】
本発明の炭酸及び/又は重炭酸−鉄−カゼインホスホペプチド複合体は、溶解性が良好で、耐熱性を有しており、鉄独特の収斂味を呈することがないという特徴を有するので、貧血の予防又は治療や鉄強化を目的とした飲食品、医薬品、飼料等の原料として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】試験例3におけるmonoQ HR10/10 カラムでの本発明品の溶出チャートを示す。
【図2】試験例3におけるmonoQ HR10/10 カラムでの対照品の溶出チャートを示す。
Claims (3)
- 次の1)〜4)の性質を示す炭酸及び/又は重炭酸−鉄−カゼインホスホペプチド複合体。
1)カゼインホスホペプチド1分子当たり、鉄1〜50原子を含有すること、
2)20℃において、脱イオン水に5%(重量)以上溶解すること、
3)水溶液の90℃、10分間の加熱により沈澱を生じないこと、
4)鉄独特の収斂味がないこと。 - i)炭酸、 ii)重炭酸、又はiii)炭酸及び重炭酸を含む溶液 (A溶液) と、 iv)カゼインホスホペプチドを含む溶液 (B溶液) と、v)鉄を含む溶液 (C溶液) とを混合することにより得られる、次の1)〜4)の性質を示す炭酸及び/又は重炭酸−鉄−カゼインホスホペプチド複合体。
1)カゼインホスホペプチド1分子当たり、鉄1〜50原子を含有すること、
2)20℃において、脱イオン水に5%(重量)以上溶解すること、
3)水溶液の90℃、10分間の加熱により沈澱を生じないこと、
4)鉄独特の収斂味がないこと。 - i)炭酸、 ii)重炭酸、又はiii)炭酸及び重炭酸を含む溶液 (A溶液) と、 iv)カゼインホスホペプチドを含む溶液 (B溶液) と、v)鉄を含む溶液 (C溶液) とを混合することを特徴とする、次の1)〜4)の性質を示す炭酸及び/又は重炭酸−鉄−カゼインホスホペプチド複合体の製造法。
1)カゼインホスホペプチド1分子当たり、鉄1〜50原子を含有すること、
2)20℃において、脱イオン水に5%(重量)以上溶解すること、
3)水溶液の90℃、10分間の加熱により沈澱を生じないこと、
4)鉄独特の収斂味がないこと。
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