図1は、本発明の第1の実施形態を採用した孔版印刷装置の要部概略正面図を示している。同図において孔版印刷装置1は、印刷部2、製版部3、排紙部4等を有している。
印刷部2は、装置本体23(図3参照)のほぼ中央部に位置し図示しない版胴駆動手段によって図1において時計回り方向に回転駆動される版胴5と、版胴5の外周面に対して接離自在に設けられ図示しない給紙部から給送される用紙を版胴5に対して押圧する押圧手段としてのプレスローラ6とを有している。
版胴5は、その両側縁部を図示しない一対の端板の各周面にそれぞれ取り付けられた多孔性支持板と、多孔性支持板の外周に複数層巻装された図示しないメッシュスクリーンとを有しており、多孔性支持板には複数の開孔を有する開孔部が形成されている。多孔性支持板の非開孔部には版胴5の一母線に沿った平面をなすステージ部7が設けられており、ステージ部7上には支軸によって開閉自在に支持されたクランパ8が配設されている。クランパ8は、版胴5が所定位置を占めたときに図示しない開閉手段によって開閉される。
版胴5の内部にはインキ供給手段9が配設されている。インキ供給手段9は、版胴5の支軸を兼ねたインキ供給パイプ10、インキローラ11、ドクターローラ12等を有している。インキ供給パイプ10は図示しない一対の端板間に配設されており、図示しない軸受を介して各端板をそれぞれ回転自在に支持している。インキ供給パイプ10にはそれぞれ図示しないインキポンプ及びインキパックが接続されており、インキポンプの作動によりインキパック内のインキがインキ供給パイプ10に複数設けられたインキ供給孔10aから版胴5の内部に供給される。
インキローラ11は、図示しない一対の端板間に配設されそれぞれインキ供給パイプ10に固設された図示しない一対の側板間に回転自在に支持されており、図示しない回転駆動手段によって版胴5と同期して同方向に回転駆動される。インキローラ11は、その周面と版胴5の内周面との間に僅かな隙間が生じる位置に配置されている。
インキローラ11の近傍にはドクターローラ12が配設されている。ドクターローラ12もインキローラ11と同じ図示しない側板間に回転自在に支持されており、図示しない回転駆動手段によってインキローラ11と同期して逆方向に回転駆動される。ドクターローラ12は、その周面とインキローラ11の周面との間に僅かな隙間が生じる位置に配置されている。
インキローラ11とドクターローラ12との近接部には断面楔形状の空間が形成され、この空間にインキ供給孔10aから供給されたインキが溜まることによりインキ溜まり13が形成される。インキ溜まり13のインキは、インキローラ11とドクターローラ12との近接部を通過する際にインキローラ11の周面上に薄層状に供給され、後述するプレスローラ6によって版胴5が押圧された際に、インキローラ11の周面と版胴5の内周面とが接触することにより版胴5の内周面に供給される。
版胴5の下方にはプレスローラ6が配設されている。図2に示すように版胴5の軸方向長さとほぼ同じ長さを有し、芯部6aの周囲にゴム等の弾性体を巻成してなるプレスローラ6は、芯部6aの両端を一対のプレスローラアーム14の一端間にそれぞれ回転自在に支持されている。ほぼL字形状を呈した板状部材である各プレスローラアーム14は支持部材15に取り付けられた支軸16に曲折部をそれぞれ回転自在に支持されている。支持部材15は、装置本体23に配設されたレール等の着脱案内部材18に沿って装置本体23に対して図3に示すように装置手前側に引き出し自在に設けられており、図示しないロック装置によって装置本体23に固定される。各プレスローラアーム14の他端近傍にはカムフォロア17がそれぞれ回転自在に取り付けられている。
カムフォロア17配設位置の近傍には、支持部材15に回転自在に支持されたカム軸19aに固着された2枚のカム19が配設されている。カム軸19aの一端にはピン19bが貫通固着されており、支持部材15が装置本体23に装着されたときピン19bには装置本体23に設けられた図2に示すカップリング20が係合する。カップリング20には図示しない版胴駆動手段からの回転力が伝達され、ピン19bとカップリング20とが係合した際に各カム19は版胴5の回転と同期して回転駆動される。
各プレスローラアーム14の他端には引張ばね21の一端がそれぞれ取り付けられており、各引張ばね21の他端はそれぞれ支持部材15に取り付けられている。これにより各プレスローラアーム14には支軸16を中心に図1において時計回り方向の回動付勢力が付与されており、この付勢力により各カムフォロア17は各カム19の凸部に接触可能に構成されている。各カム19の凸部が各カムフォロア17に接触すると、各プレスローラアーム14は各引張ばね21の付勢力に抗して図1において反時計回り方向に回動し、プレスローラ6の周面が版胴5の外周面より離間する。各カム19の凸部が各カムフォロア17との接触を解除すると、各プレスローラアーム14は各引張ばね21の付勢力によって図1において時計回り方向に回動し、プレスローラ6の周面が版胴5の外周面に圧接する。プレスローラ6と版胴5との圧接時において、各カム19の周面と各カムフォロア17との間には所定の隙間が形成される。
上述の構成中、各プレスローラアーム14、支軸16、各カムフォロア17、各カム19、カム軸19a、ピン19b、カップリング20、各引張ばね21等によってプレスローラ6を版胴5の外周面に対して接離させる接離手段22が構成される。接離手段22の働きによりプレスローラ6は、その周面を版胴5の外周面から離間させる図1に示す離間位置と、その周面を所定の圧接力で版胴5の外周面に接触させる押圧位置とを選択的に占める。
印刷部2の左上方には製版部3が配設されている。製版部3は、マスタ貯容手段24、サーマルヘッド25、プラテンローラ26、マスタ切断手段27、マスタ搬送ローラ対28等を有している。マスタ貯容手段24は、マスタ29をロール状に巻成してなるマスタロール29aを回転自在かつ着脱自在に支持する。
複数の発熱素子を有するサーマルヘッド25は製版部3の図示しない側板に支持されており、図示しない付勢手段によってその発熱素子面をプラテンローラ26の周面に圧接されている。プラテンローラ26は製版部3の図示しない側板間に回転自在に支持されており、図示しないステッピングモータによって回転駆動される。
マスタ切断手段27は、製版部3に固定された固定刃とこの固定刃に対して移動自在な可動刃とを有しており、可動刃が固定刃に対して回転移動あるいは上下動してマスタ29を切断する。マスタ搬送ローラ対28は、図示しない駆動手段によって回転駆動される駆動ローラとこの駆動ローラに圧接配置され駆動ローラの回転時に従動回転する従動ローラとを有しており、サーマルヘッド25とプラテンローラ26とによって製版搬送されたマスタ28を印刷部2に向けて搬送する。
製版部3の下方には排紙部4が配設されている。排紙部4は、剥離爪30、剥離ファン31、排紙搬送部材32、排紙トレイ33等から主に構成されている。
剥離爪30はその基端を装置本体23の図示しない側板に揺動自在に支持されており、図示しない爪揺動手段によって揺動されることにより鋭角状に形成されたその先端を版胴5の外周面に対して近接離間自在に配設されている。剥離ファン31は装置本体23に取り付けられており、版胴5と剥離爪30との近接部位に向けて送風を行う。剥離爪30と剥離ファン31との協働動作によって版胴5の外周面から印刷済みの用紙が剥離される。
剥離爪30の下方には排紙搬送部材32が配設されている。排紙搬送部材32は、駆動ローラ、従動ローラ、各ローラ間に掛け渡された開孔を有する複数の無端ベルト、吸引ファン等を有する周知の搬送コンベヤであり、吸引ファンの吸引力によって無端ベルト上に用紙を吸引しつつ、各無端ベルトの移動によって図1において左方へと用紙を搬送する。
排紙搬送部材32の左方には排紙トレイ33が配設されている。排紙トレイ33は、1つのエンドフェンス33aと図示しない一対のサイドフェンスとを有しており、その上面に多数の印刷済み用紙を積載する。エンドフェンス33aは用紙搬送方向と同方向に、各サイドフェンスは用紙幅方向と同方向にそれぞれ移動自在に設けられており、排紙トレイ33上において多数の印刷済み用紙の整合が行われる。
印刷部2の右下方には、印刷部2に用紙を供給する図示しない給紙部が配設されている。図示しない給紙部は、給紙トレイ、給紙ローラ、分離給送手段、レジストローラ対34を有しており、給紙トレイ上に積載された多数の用紙のうちの最上位の1枚を給紙ローラ及び分離給送手段によって分離給送し、レジストローラ対34において一時停止させた後、版胴5上に巻装された製版済みのマスタ29の画像と一致する所定のタイミングでレジストローラ対34が回転駆動されることにより、用紙を印刷部2に給送する周知の構成である。
印刷部2の右上方には、版胴5の外周面上より使用済みのマスタを剥離して廃棄する図示しない排版部が配置されている。図示しない排版部は、排版ローラ対、排版ボックス、圧縮板等を有しており、排版ローラ対によって版胴5の外周面上より使用済みのマスタの端部をすくい上げて搬送し、搬送した使用済みのマスタを排版ボックス内に収容して圧縮板で圧縮する周知の構成である。
上述の構成に基づき、以下に孔版印刷装置1の動作を説明する。
装置本体23の上部に設けられた図示しない画像読取部に印刷すべき原稿がセットされ、図示しない操作パネル上の製版スタートキーが押下されると、図示しない画像読取部において原稿画像の読み取り動作が行われると共に、図示しない排版部において版胴5の外周面上から使用済みのマスタを剥離して廃棄する排版動作が行われる。排版動作が完了すると、クランパ8がほぼ真上に位置するホームポジションまで版胴5が回転して停止し、図示しない開閉手段が作動してクランパ8が開放され、孔版印刷装置1は給版待機状態となる。
孔版印刷装置1が給版待機状態となると、続いて製版動作が行われる。図示しないステッピングモータ及び駆動手段が作動してプラテンローラ26及びマスタ搬送ローラ対28が回転駆動され、マスタロール29aからマスタ29が引き出される。引き出されたマスタ29はサーマルヘッド25を通過する際に複数の発熱素子によって加熱穿孔され、製版画像を形成される。製版画像を形成された製版済みのマスタ29は、プラテンローラ26及びマスタ搬送ローラ対28によって開放されているクランパ8に向けて搬送される。
図示しないステッピングモータのステップ数より、マスタ29の先端がステージ部7とクランパ8との間の所定位置まで到達したことを図示しない制御手段が判断すると、図示しない開閉手段が作動してクランパ8が閉じられ、マスタ29はその先端部を版胴5の外周面上に係止される。その後、版胴5がマスタ29の搬送速度と同じ周速度で図1において時計回り方向に回転駆動され、マスタ29の版胴5への巻装動作が行われる。そして、図示しないステッピングモータのステップ数より1版分の製版が完了したと判断されると、プラテンローラ26及びマスタ搬送ローラ対28の回転が停止すると共にマスタ切断手段27が作動してマスタ29が切断される。切断されたマスタ29は版胴5の回転によって製版部3から引き出され、版胴5が再びホームポジションにおいて停止すると製版動作及び巻装動作が完了する。
巻装動作に引き続き版付け動作が行われる。版胴5が低速で回転を開始し、図示しない給紙部から用紙が1枚給送されてレジストローラ対34にくわえ込まれる。そして、版胴5に巻装されたマスタ29に形成された製版画像の先端がプレスローラ6と対応する位置に到達するタイミングでレジストローラ対34が回転し、用紙が版胴5とプレスローラ6との間に向けて給送される。この直後のタイミングで各カム19の大径部が各カムフォロア17よりそれぞれ離脱し、各プレスローラアーム14が各引張ばね21の付勢力によって回動されることにより、プレスローラ6はその周面を版胴5の外周面に圧接させる。
この押圧動作により、プレスローラ6と用紙とマスタ29と版胴5の外周面とが圧接し、インキローラ11によって版胴5の内周面に供給されたインキが版胴5の開孔部、図示しないメッシュスクリーン、マスタ29の多孔性支持体及び熱可塑性樹脂フィルムの穿孔部を介して用紙に転移され、いわゆる版付けが行われる。版付けによりインキを転移された用紙は、剥離爪30及び剥離ファン31により版胴5の外周面より剥離されて下方へと落下し、排紙搬送部材32により搬送されて排紙トレイ33上に排出される。この一連の工程により版付け動作が完了し、孔版印刷装置1は印刷待機状態となる。
その後、オペレータによって図示しない操作パネル上の試し刷りキーが押下されると、版胴5が版付け時よりも高速で回転駆動されると共に図示しない給紙部より用紙が1枚給送される。給送された用紙は、上述と同様にプレスローラ6によって版胴5の外周面に押圧されて印刷を行われた後、版胴5の外周面上より剥離されて排紙トレイ33上に排出される。
試し刷りによって印刷画像の濃度あるいは位置等を確認し、これらを図示しない操作パネル上の各種キーで調整して再度試し刷りを行った後、印刷枚数及び印刷速度を設定した後にオペレータにより図示しない操作パネル上の印刷スタートキーが押下されると、版胴5が設定された印刷速度に応じた回転周速度で回転すると共に図示しない給紙部より用紙が連続的に給送されて印刷動作が行われる。そして設定された印刷枚数が消化されると、版胴5がホームポジションで停止して孔版印刷装置1は再び印刷待機状態となる。
上述した版付け時、試し刷り時、印刷時において、レジストローラ対34から送られた用紙がプレスローラ6の下にもぐってしまった場合あるいはプレスローラ6に巻きついてしまった場合等の不具合発生時には、図示しないセンサからの情報に基づき、クランパ8がほぼ真下に位置する所定位置に版胴5が到達した時点で孔版印刷装置1の動作が停止される。このとき各カム19はそれぞれの大径部を各カムフォロア17に接触させており、プレスローラ6は離間位置を占めている。
孔版印刷装置1の停止後、図示しないロック装置が解除され支持部材15が着脱案内部材18に沿って装置本体23から手前側に引き出された後に、オペレータによってジャムした用紙の除去作業が行われる。除去作業完了後、支持部材15が装置本体23内部の所定位置に戻された後に図示しないロック装置がロックされると、印刷動作中であった場合には残りの印刷動作が行われる。なお、装置本体23に対する支持部材15の着脱を、リードねじあるいはモータ等を用いて自動的に行う構成としてもよい。また、プレスローラ6が離間位置を占めた際にこれを保持する保持手段を支持部材15に設けてもよい。
上述の構成とすることにより、プレスローラ6周辺において用紙ジャムが発生した後の除去作業を、プレスローラ6が支持された支持部材15を装置本体23より手前側に引き出した後に行うことができ、広い作業空間を確保することで作業効率を大幅に向上することができる。また、用紙の除去作業のみならず、プレスローラ6の交換作業や支持部材15に設けられた他部品の交換調整作業時における作業効率も大幅に向上することができる。
図4は、本発明の第2の実施形態を採用した1工程両面印刷が可能な孔版印刷装置を示している。この孔版印刷装置35は、特開2005−125716号公報に開示された両面印刷装置と関連する構成を有しているので、各部位の説明をできるだけ簡略化する。
図示しない装置本体のほぼ中央に配置された印刷部36は、版胴37、押圧手段としてのプレスローラ38、再給紙手段39、切替爪40等を有している。
版胴37は版胴5と同様に構成されており、複数の開孔を有する多孔性支持板と図示しないメッシュスクリーンとを有している。多孔性支持板の非開孔部にはステージ部41が設けられており、ステージ部41上には支軸によって開閉自在に支持されたクランパ42が配設されている。クランパ42は、版胴37が所定位置を占めたときに図示しない開閉手段によって開閉される。
版胴37の内部には、インキ供給手段9と同様のインキ供給手段43が配設されている。インキ供給手段43は、版胴37の支軸を兼ねたインキ供給パイプ44、インキローラ45、ドクターローラ46等を有しており、インキ供給パイプ44から供給されたインキがインキローラ45とドクターローラ46との近接部に断面楔形状のインキ溜まり47を形成し、インキ溜まり47のインキがインキローラ45の周面を介して版胴37の内周面に供給される。
版胴37の下方にはプレスローラ38が配設されている。特開2005−125716号公報に開示されたプレスローラ21と同様に構成され、その表面にガラスあるいはセラミック等からなる微粒子が均一に被覆されたプレスローラ38は、図5に示すようにプレスローラアーム14と同様に構成された一対のプレスローラアーム48の一端間に芯部38aの両端をそれぞれ回転自在に支持されており、特開2005−125716号公報に開示されたプレスローラ21と同様に図示しない駆動モータによって回転駆動される。各プレスローラアーム48は支持部材49に取り付けられた支軸50に曲折部をそれぞれ回転自在に支持されており、支持部材49は図示しない装置本体に配設されたレール等の着脱案内部材51に沿って装置手前側に引き出し自在に構成され、図示しないロック装置によって図示しない装置本体に固定される。
各プレスローラアーム48の他端近傍にはカムフォロア52がそれぞれ回転自在に取り付けられており、カムフォロア52配設位置の近傍には、支持部材49に回転自在に支持されたカム軸53aに固着された2つのカム群53が配設されている。カム軸53aの一端にはピン53bが貫通固着されており、支持部材49が図示しない装置本体に装着されたときピン53bには図示しない装置本体に設けられた図5に示すカップリング54が係合する。カップリング54には図示しない版胴駆動手段からの回転力が伝達され、ピン53bとカップリング54とが係合した際に各カム群53は版胴37の回転と同期して回転駆動される。
各カム群53は、特開2005−125716号公報に開示された印圧範囲可変手段28と同様に複数のカム板を有しており、これら複数のカム板を開閉して各カムフォロア52との接触範囲を変更することにより、版胴37の外周面に対するプレスローラ38の接触範囲を変更可能に構成されている。版胴37の外周面に対するプレスローラ38の接触範囲は、後述する分割製版済みマスタの第1製版画像形成部位に対応する第1の範囲、分割製版済みマスタの第2製版画像形成部位に対応する第2の範囲、第1製版画像と第2製版画像とを合わせた部位に対応する第3の範囲の何れかに選択的に設定される。
各プレスローラアーム48の他端には引張ばね65の一端がそれぞれ取り付けられており、各引張ばね65の他端はそれぞれ支持部材49に取り付けられている。これにより各プレスローラアーム48には支軸50を中心に図4において時計回り方向の回動付勢力が付与されており、この付勢力により各カムフォロア52は各カム群53を構成する各カム板の凸部に選択的に接触可能に構成されている。各カム板の凸部が各カムフォロア52に接触すると、各プレスローラアーム48は各引張ばね65の付勢力に抗して図4において反時計回り方向に回動し、プレスローラ38の周面が版胴37の外周面より離間する。各カム板の凸部が各カムフォロア52との接触を解除すると、各プレスローラアーム48は各引張ばね65の付勢力によって図4において時計回り方向に回動し、プレスローラ38の周面が版胴37の外周面に圧接する。プレスローラ38と版胴37との圧接時において、各カム板の周面と各カムフォロア52との間には所定の隙間が形成される。
上述の構成中、各プレスローラアーム48、支軸50、各カムフォロア52、各カム群53、カム軸53a、ピン53b、カップリング54、各引張ばね65等によってプレスローラ38を版胴37の外周面に対して接離させる接離手段66が構成される。接離手段66の働きによりプレスローラ38は、その周面を版胴37の外周面から離間させる図4に示す離間位置と、その周面を所定の圧接力で版胴37の外周面に接触させる押圧位置とを選択的に占める。
各プレスローラアーム48間であってプレスローラ38の近傍には、特開2005−125716号公報に開示されたローラガイド板50及び再給紙ローラ51と同様のローラガイド板55及び再給紙ローラ56が配設されている。ローラガイド板55はプレスローラ38の外周面と所定の間隔をおいて各プレスローラアーム48間に固定されており、再給紙ローラ56はプレスローラ38の外周面下部にその周面を圧接した状態で各プレスローラアーム48間に回転自在に支持されている。
プレスローラ38の図4において左下方には、特開2005−125716号公報に開示された再給紙搬送装置104及び移動ガイド81と同様の再給紙搬送装置57及び移動ガイド58が配設されている。
再給紙搬送装置57は、駆動ローラ59、従動ローラ60、複数の無端ベルト61、吸引ファン62等を有するコンベヤであり、各プレスローラアーム48間に従動ローラ60側の端部を揺動自在に支持されている。駆動ローラ59の支軸59aは支持部材49に回転自在に支持されており、支持部材49より突出したその一端には図6に示すように駆動ギヤ63が固着されている。駆動ギヤ63は、支持部材49が図示しない装置本体に取り付けられた際に図示しない装置本体に配設された駆動モータ64の出力軸に取り付けられたピニオン64aと噛合可能に構成されており、駆動モータ64の作動によって再給紙搬送装置57が作動される。
移動ガイド58は、再給紙搬送装置57の上方に位置する装置本体に往復移動可能に支持されており、図示しない駆動手段によってプレスローラ38の外周面近傍に位置する第1の位置と、図4に示す第2の位置との間を往復移動する。移動ガイド58は、第1の位置を占めた際に印刷部36において印刷された表面印刷済み用紙の先端を挟持し、第2の位置へと搬送した後に開放する。
上述したローラガイド板55、再給紙ローラ56、再給紙搬送装置57、移動ガイド58、駆動モータ64等によって、印刷部36において印刷がなされた表面印刷済み用紙を再び印刷部36へと再給紙する再給紙手段39が構成される。
プレスローラ38の図4において左方であって再給紙搬送装置57の上方に位置する部位には切替爪40が配設されている。切替爪40はその基端を装置本体に揺動自在に支持されており、ソレノイドやモータ等の図示しないアクチュエータによって、鋭角状に形成されたその先端を版胴37の周面より離間させる図4に実線で示す第1の位置と、その先端を版胴37の周面に近接させる図4に二点鎖線で示す第2の位置とを選択的に占める。切替爪40が第1の位置を占めたときに印刷部36において印刷がなされた用紙は後述する排紙部74へと送られ、切替爪40が第2の位置を占めたときに印刷部36において印刷がなされた用紙は再給紙搬送装置57へと送られる。
図4において、装置本体の版胴37配設位置の左上方に位置する部位には、製版部67が配設されている。製版部67は、マスタ貯容手段68、サーマルヘッド69、プラテンローラ70、マスタ切断手段71、マスタ搬送ローラ対72等を有している。マスタ貯容手段68は、マスタ73をロール状に巻成してなるマスタロール73aを回転自在かつ着脱自在に支持する。
複数の発熱素子を有するサーマルヘッド69は製版部67の図示しない側板に支持されており、図示しない付勢手段によってその発熱素子面をプラテンローラ70の周面に圧接されている。プラテンローラ70は製版部67の図示しない側板間に回転自在に支持されており、図示しないステッピングモータによって回転駆動される。
マスタ切断手段71は、製版部67に固定された固定刃とこの固定刃に対して移動自在な可動刃とを有しており、可動刃が固定刃に対して回転移動あるいは上下動してマスタ73を切断する。マスタ搬送ローラ対72は、図示しない駆動手段によって回転駆動される駆動ローラとこの駆動ローラに圧接配置され駆動ローラの回転時に従動回転する従動ローラとを有しており、サーマルヘッド69とプラテンローラ70とによって製版搬送されたマスタ73を印刷部36に向けて搬送する。
上述の製版部67では、マスタ73に対して単一の製版画像が形成された片面印刷用の製版済みマスタと、マスタ73に対して第1製版画像と第2製版画像とが形成された両面印刷用の分割製版済みマスタとが作成される。製版済みマスタは孔版印刷装置35が片面印刷モードに設定された際に作成され、分割製版済みマスタは孔版印刷装置35が両面印刷モードに設定された際に作成される。本実施形態において、版胴37は最大A3サイズの印刷が可能に構成されており、この場合には製版済みマスタとしては最大A3サイズの製版画像を有するものが、分割製版済みマスタとしてはそれぞれ最大A4サイズの第1製版画像と第2製版画像とを有するものがそれぞれ作成される。
製版部67の下方には排紙部74が配設されている。排紙部74は、剥離爪75、剥離ファン76、排紙搬送部材77、排紙トレイ78等から主に構成されている。
剥離爪75はその基端を装置本体の図示しない側板に揺動自在に支持されており、図示しない爪揺動手段によって揺動されることにより鋭角状に形成されたその先端を版胴37の外周面に対して近接離間自在に配設されている。剥離ファン76は装置本体に取り付けられており、版胴37と剥離爪75との近接部位に向けて送風を行う。剥離爪75と剥離ファン76との協働動作によって版胴37の外周面から印刷済みの用紙が剥離される。
剥離爪75の下方には排紙搬送部材77が配設されている。排紙搬送部材77は、駆動ローラ、従動ローラ、各ローラ間に掛け渡された開孔を有する複数の無端ベルト、吸引ファン等を有する周知の搬送コンベヤであり、吸引ファンの吸引力によって無端ベルト上に用紙を吸引しつつ、各無端ベルトの移動によって図4において左方へと用紙を搬送する。
排紙搬送部材77の左方には排紙トレイ78が配設されている。排紙トレイ78は、1つのエンドフェンス78aと図示しない一対のサイドフェンスとを有しており、その上面に多数の印刷済み用紙を積載する。エンドフェンス78aは用紙搬送方向と同方向に、各サイドフェンスは用紙幅方向と同方向にそれぞれ移動自在に設けられており、排紙トレイ78上において多数の印刷済み用紙の整合が行われる。
印刷部36の右下方には、印刷部36に用紙を供給する図示しない給紙部が配設されている。図示しない給紙部は、給紙トレイ、給紙ローラ、分離給送手段、レジストローラ対79を有しており、給紙トレイ上に積載された多数の用紙のうちの最上位の1枚を給紙ローラ及び分離給送手段によって分離給送し、レジストローラ対79において一時停止させた後、版胴37上に巻装された製版済みのマスタ73の画像と一致する所定のタイミングでレジストローラ対79が回転駆動されることにより、用紙を印刷部36に給送する周知の構成である。
印刷部36の右上方には、版胴37の外周面上より使用済みのマスタを剥離して廃棄する図示しない排版部が配置されている。図示しない排版部は、排版ローラ対、排版ボックス、圧縮板を有しており、排版ローラ対によって版胴37の外周面上より使用済みのマスタの端部をすくい上げて搬送し、搬送した使用済みのマスタを排版ボックス内に収容し、収容したマスタを圧縮板で圧縮する周知の構成である。
上述の構成に基づき、以下に孔版印刷装置35の動作を説明する。この孔版印刷装置35では、印刷に先立ち装置本体に設けられた図示しない操作パネル上で片面印刷モードあるいは両面印刷モードが設定され、設定されたモードに応じた片面印刷あるいは両面印刷が行われる。片面印刷モードが設定された片面印刷動作は、切替爪40が第1の位置を占めた後に上述した孔版印刷装置1における一連の動作と同じ動作が行われるのでここでは説明を省略し、以下に両面印刷モードが設定された両面印刷動作を説明する。
装置本体の上部に設けられた図示しない画像読取部に印刷すべき2枚の原稿がセットされ、図示しない操作パネル上の製版スタートキーが押下されると、図示しない画像読取部において各原稿画像の読み取り動作が行われると共に、図示しない排版部において版胴37の外周面上から使用済みのマスタを剥離して廃棄する排版動作が行われる。排版動作が完了すると、クランパ42がほぼ真上に位置するホームポジションまで版胴37が回転して停止し、図示しない開閉手段が作動してクランパ42が開放され、孔版印刷装置35は給版待機状態となる。
孔版印刷装置35が給版待機状態となると、続いて製版動作が行われる。図示しないステッピングモータ及び駆動手段が作動してプラテンローラ70及びマスタ搬送ローラ対72が回転駆動され、マスタロール73aからマスタ73が引き出される。引き出されたマスタ73はサーマルヘッド69を通過する際に複数の発熱素子によって加熱穿孔され、第1製版画像と第2製版画像とを形成される。各製版画像を形成された分割製版済みのマスタ73は、プラテンローラ70及びマスタ搬送ローラ対72によって開放されているクランパ42に向けて搬送される。
図示しないステッピングモータのステップ数より、マスタ73の先端がステージ部41とクランパ42との間の所定位置まで到達したことを図示しない制御手段が判断すると、クランパ42が閉じられてマスタ73はその先端部を版胴37の外周面上に係止される。その後、版胴37がマスタ73の搬送速度と同じ周速度で図4において時計回り方向に回転し、マスタ73の版胴37への巻装動作が行われる。そして、図示しないステッピングモータのステップ数より1版分の製版が完了したと判断されると、プラテンローラ70及びマスタ搬送ローラ対72の回転が停止すると共にマスタ切断手段71が作動してマスタ73が切断される。切断されたマスタ73は版胴37の回転によって製版部67より引き出され、版胴37が再びホームポジションにおいて停止すると製版動作及び巻装動作が完了する。
巻装動作に引き続き版付け動作が行われる。版胴37が低速で回転を開始し、図示しない給紙部から用紙が1枚給送されてレジストローラ対79にくわえ込まれる。そして、版胴37に巻装されたマスタ73に形成された第1製版画像の先端がプレスローラ38と対応する位置に到達するタイミングでレジストローラ対79が回転し、用紙が版胴37とプレスローラ38との間に向けて給送される。このとき、各カム群53では版胴37の外周面に対するプレスローラ38の接触範囲を第1の範囲とするカム板が選択されており、切替爪40は第2の位置を占めている。レジストローラ対79の回転後、各カム群53の各カム板の大径部が各カムフォロア52よりそれぞれ離脱し、各プレスローラアーム48が各引張ばね65の付勢力によって回動されることにより、図示しない駆動モータによって回転駆動されているプレスローラ38はその周面を版胴37の外周面に圧接させる。
この押圧動作により、プレスローラ38と用紙とマスタ73と版胴37の外周面とが圧接し、インキローラ45によって版胴37の内周面に供給されたインキが版胴37の開孔部、図示しないメッシュスクリーン、マスタ73の多孔性支持体及び熱可塑性樹脂フィルムに形成された第1製版画像の穿孔部を介して用紙に転移され、第1製版画像の版付けが行われる。版付けによりその表面にインキを転移された用紙は、第2の位置を占めている切替爪40の先端によって版胴37の外周面より剥離されて下方へと落下し、第1の位置を占めた移動ガイド58によってその先端を挟持される。その後、移動ガイド58が用紙搬送速度すなわち版胴37及びプレスローラ38の回転周速度と同じ速度で第2の位置へと移動することにより、その表面にインキを転移された用紙は再給紙搬送装置57の上面に一時的に貯溜される。
そして、版胴37が1回転して版胴37に巻装されたマスタ73に形成された第2製版画像の先端がプレスローラ38と対応する位置に到達するよりも早いタイミングで再給紙搬送装置57が作動され、貯留されていた用紙がプレスローラ38と再給紙ローラ56との間へ向けて送られる。送られた用紙はローラガイド板55によって案内されつつプレスローラ38の回転力によってプレスローラ38の周面に沿って搬送され、第2製版画像の先端がプレスローラ38と対応するタイミングで版胴37とプレスローラ38との間に再給紙される。このとき、各カム群53では版胴37の外周面に対するプレスローラ38の接触範囲を第2の範囲とするカム板が選択されており、切替爪40は第1の位置を占めている。再給紙搬送装置57の作動後、各カム群53の各カム板の大径部が各カムフォロア52よりそれぞれ離脱し、各プレスローラアーム48が各引張ばね65の付勢力によって回動されることにより、プレスローラ38はその周面を版胴37の外周面に再び圧接させる。
この再度の押圧動作により、プレスローラ38と用紙とマスタ73と版胴37の外周面とが再び圧接し、インキローラ45によって版胴37の内周面に供給されたインキが版胴37の開孔部、図示しないメッシュスクリーン、マスタ73の多孔性支持体及び熱可塑性樹脂フィルムに形成された第2製版画像の穿孔部を介して用紙に転移され、第2製版画像の版付けが行われる。版付けによりその裏面にインキを転移された用紙は、第1の位置を占めている切替爪40の先端によって排紙部74へと案内され、剥離爪75及び剥離ファン76により版胴37の外周面より剥離されて下方へと落下し、排紙搬送部材77により搬送されて排紙トレイ78上に排出される。この一連の工程により版付け動作が完了し、孔版印刷装置35は印刷待機状態となる。
その後、オペレータによって図示しない操作パネル上の試し刷りキーが押下されると、版胴37が版付け時よりも高速で回転駆動されると共に図示しない給紙部より用紙が1枚給送される。給送された用紙は、上述と同様にプレスローラ38によって版胴37の外周面に押圧されてその表面に印刷を行われた後、再給紙搬送装置57へと送られて一時貯留される。その後、再給紙手段39により再給紙されてその裏面に印刷を行われ、版胴37の外周面より剥離されて排紙トレイ78上に排出される。
試し刷りによって印刷画像の濃度あるいは位置等を確認し、これらを図示しない操作パネル上の各種キーで調整して再度試し刷りを行った後、印刷枚数及び印刷速度を設定した後にオペレータにより図示しない操作パネル上の印刷スタートキーが押下されると、版胴37が設定された印刷速度に応じた回転周速度で回転すると共に図示しない給紙部より用紙が連続的に給送されて印刷動作が行われる。
この印刷動作時において、1枚目の用紙が上述と同様に再給紙搬送装置57に案内された後、各カム群53では版胴37の外周面に対するプレスローラ38の接触範囲を第3の範囲とするカム板が選択され、2枚目の用紙が1枚目の用紙と同様に再給紙搬送装置57に案内されると共に再給紙搬送装置57より1枚目の用紙が印刷部36に向けて再給紙される。そして、2枚目の用紙の後端が通過する直前に切替爪40が第1の位置に切り替えられ、再給紙されて印刷部36において第2製版画像を転写された1枚目の用紙は第1の位置を占めた切替爪40によって排紙部74へと案内され、排紙トレイ78上に排出される。1枚目の用紙の後端が通過する直前に切替爪40が第2の位置に切り替えられ、給紙部より3枚目の用紙が給送されてその表面に第1製版画像を転写される。
以下、この動作が繰り返され、最後の用紙が第1製版画像を転写されて再給紙搬送装置57に案内された後に、各カム群53では版胴37の外周面に対するプレスローラ38の接触範囲を第2の範囲とするカム板が選択される。そして、再給紙搬送装置57より印刷部36に向けて再給紙された最後の用紙は、その裏面に第2製版画像を転写された後、第1の位置を占めた切替爪40によって排紙部74へと案内され、排紙トレイ78上に排出される。その後、版胴37がホームポジションで停止して孔版印刷装置35は再び印刷待機状態となる。
上述した版付け時、試し刷り時、印刷時において、レジストローラ対79あるいは再給紙手段39から送られた用紙がプレスローラ38の下にもぐってしまった場合あるいはプレスローラ38に巻きついてしまった場合等の不具合発生時には、図示しないセンサからの情報に基づき、クランパ8がほぼ真下に位置する所定位置に版胴37が到達した時点で孔版印刷装置35の動作が停止される。このとき各カム群53はそれぞれ何れかのカム板の大径部を各カムフォロア52に接触させており、プレスローラ38は離間位置を占めている。
孔版印刷装置35の停止後、図示しないロック装置が解除された後に支持部材49が着脱案内部材51に沿って装置本体から手前側に引き出された後に、オペレータによってジャムした用紙の除去作業が行われる。除去作業完了後、支持部材49が装置本体内部の所定位置に戻された後に図示しないロック装置がロックされると、印刷動作中であった場合には残りの印刷動作が行われる。なお、装置本体に対する支持部材49の着脱を、リードねじあるいはモータ等を用いて自動的に行う構成としてもよい。また、プレスローラ38が離間位置を占めた際にこれを保持する保持手段を支持部材49に設けてもよい。
上述の構成とすることにより、プレスローラ38周辺及び再給紙手段39周辺において用紙ジャムが発生した後の除去作業を、プレスローラ38及び再給紙手段39が支持された支持部材49を装置本体より手前側に引き出した後に行うことができ、広い作業空間を確保することで作業効率を大幅に向上することができる。また、用紙の除去作業のみならず、プレスローラ38の交換作業や支持部材49に設けられた再給紙手段39等の他部品の交換調整作業時における作業効率も大幅に向上することができる。
図7は、本発明の第3の実施形態を示している。この第3の実施形態は、第2の実施形態と比較すると、支持部材49に代えて各プレスローラアーム48及び各カム群53をそれぞれ支持する支持部材80及び再給紙搬送装置57を支持する支持部材81を用いる点、再給紙搬送装置57が各プレスローラアーム48に揺動自在かつ着脱自在に支持されている点においてのみ相違し、他の構成は同一である。
支持部材80は装置本体に配設されたレール等の着脱案内部材82に沿って、支持部材81は着脱案内部材82と同様の着脱案内部材83に沿って、それぞれ装置手前側に引き出し自在に構成されている。各支持部材80,81は、図示しないロック装置によって装置本体に固定される。
上述の構成とすることにより、第2の実施形態と同様の作用効果を奏すると共に、プレスローラ38及び接離手段66と再給紙搬送装置57とをそれぞれ独立して装置本体から引き出すことができるので、ジャム処理作業あるいは交換メンテナンス作業の効率を向上することができる。
第1の実施形態では装置本体23に対して支持部材15を、第2の実施形態では図示しない装置本体に対して支持部材49を、第3の実施形態では図示しない装置本体に対して各支持部材80,81をそれぞれ引き出し自在に構成したが、各支持部材15,49,80,81を装置本体23あるいは図示しない装置本体に対してそれぞれ着脱自在に構成してもよい。着脱自在とすることにより、部品の交換作業等の作業効率を装置本体より引き出した状態で行う場合よりも向上することができる。
図8は、本発明の第4の実施形態を示している。この第4の実施形態は、第2の実施形態と比較すると、図示しない装置本体に代えて装置本体88を用い、この装置本体88に対して支持部材49を引き出し自在に構成した点、支持部材49が装置本体88から引き出された際に再給紙搬送装置57上に載置されている用紙を再給紙搬送装置57と共に装置本体88の外部に排出させる排出部材89を有する点においてのみ相違しており、他の構成は同一である。
排出部材89は、図9に示すように、側面視L字形状を呈する板材により構成されており、その立ち曲げ部は用紙搬送方向下流側に向かうに従い低くなるように形成されている。排出部材89は再給紙搬送装置57の上面板57aの装置奥側側部に固定されており、再給紙搬送装置57による用紙Pの搬送を妨げない位置に取り付けられている。
再給紙搬送装置57の用紙搬送方向下流側には、上述したように印刷部36において印刷された表面印刷済み用紙の先端を挟持する移動ガイド58が配設されている。従来の移動ガイドは特開2005−125716号公報に開示された移動ガイド81と同様に、図10に示すように、その両側面に装置本体88に設けられた図示しないレールに嵌合する支持部材としてのローラ58aを回転自在に支持する側板58bを有しており、再給紙搬送装置57上に載置されている用紙Pの先端が移動ガイド58上に載置している場合には、支持部材49を装置本体88から引き出しても用紙Pの先端が装置本体88の内部に設けられた移動ガイド58上に残ってしまい、支持部材49の引き出し時において用紙Pがジャムしてしまう。そこで本発明では、図11に示すように、ローラ58aを回転自在に支持する側板58c(図9では省略)を有する第1の部材としてのガイド部材58dと用紙Pの先端が載置される第2の部材としての載置部材58eとを一体的に構成し、ガイド部材58dの底面と載置部材58eの上面との間に用紙Pを装置外部に排出可能とするための空間58fを設けている。
上述の構成とすることにより、例え再給紙搬送装置57上に用紙Pが載置された状態で支持部材49が装置本体88から引き出される場合であっても、支持部材49と一体的に装置本体88から引き出される排出部材89が再給紙搬送装置57上に載置された用紙の側縁部を押し出すので、用紙が装置本体88の内部に残存して支持部材49の引き出し時においてジャムしてしまうことを防止でき、第2の実施形態よりもさらにジャム処理作業あるいは交換メンテナンス作業の効率を向上することができる。
上述した第4の実施形態は第2の実施形態における支持部材49に排出部材89を設けた例を示したが、第3の実施形態における支持部材81に排出部材89を設けた場合においても、第3の実施形態よりもさらにジャム処理作業あるいは交換メンテナンス作業の効率を向上することができる。
図12は、本発明の第5の実施形態を示している。この第5の実施形態は、第1の実施形態と比較すると、版胴5に代えて装置本体23に対して着脱自在な版胴84を用いる点においてのみ相違しており、他の構成は同一である。
版胴84は、その内部に版胴5と同様の図示しないインキ供給手段を有しており、外周面上には図示しないステージ部及びクランパを有している。版胴84は図示しないインキポンプ及びインキパックを一体的に有しており、その上面にはレール部材84aを、装置前面側端部には取っ手84bをそれぞれ一体的に有している。レール部材84aは装置本体23に設けられた図示しないレールガイドに対して係合可能に構成されており、レール部材84aをレールガイドに係合させて版胴84を滑らすことにより、版胴84を装置本体23に対して着脱する。
図13は、版胴84を装置本体23に対してロックする規制手段85を示している。規制手段85は、装置本体23に基端を回動自在に支持され自由端が鈎状に形成された離脱規制部材85a、装置本体23に取り付けられプランジャ85cを離脱規制部材85aに回動自在に係合されたプル型のソレノイド85b、離脱規制部材85aに対して図9において時計回り方向への回動付勢力を付与する引張ばね85d等から主に構成されている。規制手段85は、ソレノイド85bが不作動状態のときに版胴84が装置本体23の所定位置まで押し込まれると、離脱規制部材85aの自由端が引張ばね85dの付勢力により版胴84の所定部位に係合して版胴84をロックし、版胴84の装置本体23からの離脱を禁止する。
図14は、装置本体23の上部前面に配設された解除スイッチを示している。解除スイッチとしてはスイッチ86,87が設けられており、各スイッチ86,87にそれぞれ対応してLED86a,87aが設けられている。支持部材15及び版胴84が装置本体23に装着され、支持部材15が図示しないロック装置によって、版胴84が規制手段85によってそれぞれ装置本体23に固定された状態からスイッチ86が押下されると、LED86aが点灯すると共にソレノイド85bが作動し、離脱規制部材85aが図9において反時計回り方向に回動されて版胴84の装置本体23に対するロック状態が解除され、装置本体23からの版胴84の離脱が許容される。またスイッチ87が押下されると、LED87aが点灯すると共に規制手段85と同様に構成された図示しないロック装置が作動し、離脱規制部材85aと同様の図示しない離脱規制部材が移動して支持部材15の装置本体23に対するロック状態が解除され、装置本体23からの支持部材15の離脱が許容される。
上述の構成において、支持部材15が装置本体23から引き出された状態を検知する図示しない検知手段を設け、支持部材15が装置本体23から引き出されているときにスイッチ86を押下してもソレノイド85bを不作動として装置本体23からの版胴84の離脱を禁止する構成とすることにより、版胴84の装置本体23に対する着脱時に版胴84の外周面が装置本体23より引き出された状態の支持部材15に支持されたプレスローラ6及び接離手段22等の各部位に接触して傷付いてしまうことを防止でき、印刷不良の発生を防止することができる。同様に、版胴84が装置本体23から引き出された状態を検知する図示しない検知手段を設け、版胴84が装置本体23から引き出されているときにスイッチ87を押下しても図示しないロック装置を不作動として装置本体23からの支持部材15の離脱を禁止する構成とすることにより、支持部材15を装置本体23より引き出す際に支持部材15に支持された各部位が版胴84の外周面に接触して版胴84の外周面を傷付けてしまうことを防止でき、印刷不良の発生を防止することができる。
上述の第5の実施形態では、第1の実施形態で示した版胴5に代えて装置本体23に対して着脱自在な版胴84を用いる例を示したが、同様に、第2ないし第4の実施形態で示した版胴37に代えて図示しない装置本体に対して着脱自在な版胴を用いる構成としてもよい。第2または第4の実施形態において版胴84を適用する場合には、支持部材49の状態に応じた版胴84の着脱及び版胴84の状態に応じた支持部材49の引き出しをそれぞれ制御し、第3または第4の実施形態において版胴84を適用する場合には、各支持部材80,81の状態に応じた版胴84の着脱及び版胴84の状態に応じた各支持部材80,81の引き出しをそれぞれ制御する構成とすればよい。これにより第5の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。