JP4402893B2 - 製版装置・孔版印刷装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、製版されたマスタをエアー吸引源により吸引して一時的に貯容するマスタストック手段を有する製版装置、該製版装置を有する孔版印刷装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
孔版印刷装置では、排版動作、製版動作、給版動作、印刷動作等の各動作を自動的に連続して行う一体型のものが主に用いられている。この一体型の孔版印刷装置では、オペレータにより原稿セット後にスタートキーが押下されると、排版動作、製版動作、給版動作が行われた後に印刷動作が行われる。
しかし、通常の装置では排版動作完了後に製版動作が行われるため、次版の製版に際して排版動作の完了を待たねばならず、ファーストプリントタイム(FPT)が長くなってしまうという問題があった。
そこで、製版済みのマスタを気流の負圧作用で吸引して一時的に貯留するマスタストック手段を設け、排版動作と並行して製版を行い、あるいは印刷動作中に次版の製版を行い、ファーストプリントタイムを短くすることにより作業効率を向上する技術が、例えば特開2000−353949号公報に開示されている。
【0003】
マスタストック手段は、L字状の吸引路(吸引ボックス)を有しており、吸引ボックスの奥部にはエアー吸引源としての吸引ファンが設けられている。吸引ボックスのマスタ導入口には、該マスタ導入口を開閉する可動マスタガイド板が設けられている。可動マスタガイド板は一端側を支点として回動可能に設けられ、マスタ導入口を略水平に塞いでマスタを搬送する搬送位置と、マスタ吸引時に邪魔にならない退避位置とに選択的に設定されるようになっている。
マスタ導入口のマスタ搬送方向下流側には、給版待機状態にある版胴のクランパ部へマスタを供給するマスタ搬送ローラ対が設けられており、マスタ搬送ローラ対のニップでマスタの先端部が挟持された後、過剰送りによってマスタ導入口の上方にマスタ溜まり(たわみ)を形成し、吸引時には可動マスタガイド板を退避位置に設定して一気に吸引するようになっている。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−103565号公報
【特許文献2】
特開2000−353949号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、従来では可動マスタガイド板は搬送位置と退避位置のいずれかの位置に設定され、マスタ吸引時には可動マスタガイド板を退避位置に設定した後、吸引ファンをオンしてマスタ溜まり部分を一気に吸引し、その後は製版されるマスタを連続的に吸引していた。
このため、吸引開始時、マスタ溜まりの部分が一気に吸引ボックス内のマスタ導入口近傍に引き込まれるが、その引き込み方向先端部は吸引ボックス空間内で自由端となっているため、吸引力により先端部が振れてビビリ振動を起こし、吸引初期に不快な吸引音が発生していた。この吸引音はコシの弱いマスタでは特に大きかった。
吸引音は、マスタの製版が進んで吸引ボックス内のマスタ貯容量が増えるにつれて低下していく。
【0006】
そこで、本発明は、マスタ吸引初期に発生するマスタの振れによる不快な吸引音を抑制でき、作業環境の静音化に寄与できる製版装置、該製版装置を有する孔版印刷装置の提供を、その目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明では、画像情報に基づいてマスタを製版し搬送する製版搬送手段と、該製版搬送手段により製版搬送されたマスタをエアー吸引源により吸引して貯容するマスタストック手段を有する製版装置において、上記マスタストック手段のマスタ導入口に、該マスタ導入口を開閉する可動マスタガイド部材が設けられ、該可動マスタガイド部材が上記マスタ導入口を開放する途中の段階でマスタが該可動マスタガイド部材に接触するように吸引する、という構成を採っている。
【0008】
請求項2記載の発明では、請求項1記載の製版装置において、上記可動マスタガイド部材を開方向へ徐々に移動させる、という構成を採っている。
【0009】
請求項3記載の発明では、請求項2記載の製版装置において、上記可動マスタガイド部材が一端側を支点として回動可能に設けられ、上記マスタ導入口を閉じてマスタを搬送する搬送位置から上記マスタ導入口を開放する吸引位置へ徐々に移動させる、という構成を採っている。
【0010】
請求項4記載の発明では、請求項3記載の製版装置において、上記可動マスタガイド部材の移動速度は、略U字状に吸引されるマスタの一方の面が上記可動マスタガイド部材に接触し、且つ、他方の面が上記マスタストック手段の内側面に接触した状態を維持できる程度である、という構成を採っている。
【0011】
請求項5記載の発明では、請求項2乃至4のうちの何れか1つに記載の製版装置において、上記可動マスタガイド部材の移動速度をマスタの種類に応じて変化させる、という構成を採っている。
【0012】
請求項6記載の発明では、請求項5記載の製版装置において、予め実験により求められたマスタの種類と上記可動マスタガイド部材の移動速度との関係データテーブルからマスタの種類に応じた移動速度を選択して自動的に上記可動マスタガイド部材の移動速度を設定する制御手段を有している、という構成を採っている。
【0013】
請求項7記載の発明では、製版装置により製版されたマスタを版胴の外周面に巻装して印刷を行う孔版印刷装置において、上記製版装置が、請求項1乃至6のうちの何れか1つに記載の製版装置である、という構成を採っている。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図1乃至図4に基づいて説明する。
図1は、本実施形態における孔版印刷装置の要部概略正面図である。同図において孔版印刷装置1は、印刷部2、製版装置3、給紙装置4を有している。
印刷部2は、図示しない装置本体のほぼ中央部に位置し、図示しない版胴駆動手段によって図1において時計回り方向に回転駆動される版胴5と、版胴5の外周面に対して接離自在に設けられ、給紙装置4から給送される用紙Pを版胴5に対して押圧するプレスローラ6を有している。
版胴5は、その両側縁部を図示しない一対のフランジの各周面にそれぞれ取り付けられた円筒状の多孔性支持板5aと、多孔性支持板5aの外周に複数層巻装された図示しないメッシュスクリーンとを有しており、多孔性支持板5aには複数の開孔5bを有する開孔部が形成されている。
【0015】
多孔性支持板5aの非開孔部には版胴5の一母線に沿った平面をなすステージ部7が設けられており、ステージ部7上には支軸8aによって開閉自在に支持されたクランパ8が配設されている。
クランパ8は、版胴5が所定位置を占めたときに図示しない開閉手段によって開閉される。
版胴5の内部にはインキ供給手段9が配設されている。インキ供給手段9は、版胴5の支軸を兼ねたインキ供給パイプ10、インキローラ11、ドクターローラ12等を有している。
【0016】
インキ供給パイプ10は図示しない一対のフランジ間に配設されており、図示しない軸受を介して各フランジをそれぞれ回転自在に支持している。インキ供給パイプ10にはそれぞれ図示しないインキポンプ及びインキパックが接続されており、インキポンプの作動によりインキパック内のインキがインキ供給パイプ10に複数設けられたインキ供給孔10aから版胴5の内部に供給される。
インキロ一ラ11は、図示しない一対のフランジ間に配設されそれぞれインキ供給パイプ10に固定された図示しない一対の側板間に回転自在に支持されており、図示しない回転駆動手段によって版胴5と同期して同方向に回転駆動される。
インキローラ11は、その周面と版胴5の内周面との間に僅かな隙間が生じる位置に配置されている。
【0017】
インキローラ11の近傍にはドクターローラ12が配設されている。ドクターローラ12もインキローラ11と同じく図示しない側板間に回転自在に支持されており、図示しない回転駆動手段によってインキローラ11と同期して逆方向に回転駆動される。ドクターローラ12は、その周面とインキローラ11の周面との間に僅かな隙間が生じる位置に配置されている。
インキローラ11とドクターローラ12との近接部には断面楔形状の空間が形成され、この空間にインキ供給孔10aから供給されたインキが溜まることによりインキ溜まり13が形成される。インキ溜まり13のインキは、インキロ一ラ11とドクターローラ12との近接部を通過する際にインキローラ11の周面上に薄層状に供給され、プレスロ一ラ6によって版胴5が押圧された際にインキロ一ラ11の周面と版胴5の内周面とが接触することにより版胴5の内周面に供給される。
【0018】
版胴5の下方にはプレスローラ6が配設されている。版胴5の軸方向長さとほぼ同じ長さを有し、芯部6aの周囲にゴム等の弾性体を巻成してなるプレスローラ6は、芯部6aの両端を一対のプレスローラアーム14の一端間にそれぞれ回転自在に支持されている。板状部材である一対のプレスローラアーム14は、図示しない装置本体に回動自在に支持されたプレスローラ軸15にそれぞれの他端を固定されており、図示しないプレスローラ揺動手段によってそれぞれ一体的に揺動される。この揺動により、プレスローラ6はその周面が版胴5の外側面から離間する図1に示す離間位置と、その周面が所定の押圧力で版胴5の外周面に接触する押圧位置とを選択的に占める。
【0019】
印刷部2の右上方には製版装置3が配設されている。製版装置3は、図示しないマスタ貯容部材、プラテンローラ16、サーマルヘッド17、フロントテンションローラ対40、カット手段(切断手段)18、マスタ搬送ガイド23、マスタストック手段19、マスタ搬送ローラ対20、可動マスタガイド部材としての可動マスタガイド板21、給版ガイド板22等を有している。
図示しないマスタ貯容部材は、製版装置3の図示しない一対の側板にそれぞれ設けられており、マスタ24をロール状に巻成したマスタロール24aの芯部24bを回転自在かつ着脱自在に支持している。本実施形態におけるマスタ24は、熱可塑性樹脂フィルムの一方の面に樹脂からなる多孔性樹脂膜を設け、更にその表面に繊維状物質からなる多孔性繊維膜を積層したラミネート構造を有している(特開平10−147075号公報参照)。このマスタはコシが弱く低強度ながらもインクを均一に転写でき(高画質化)、インク消費量を低減できる特性を有している。但し、使用するマスタが上記コシの弱いマスタに限定される趣旨ではない。
【0020】
マスタロール24aの配設位置の左方にはプラテンロ一ラ16が配設されている。プラテンローラ16は、その軸方向長さがマスタ24の幅とほぼ同じ長さに形戌されており、装置本体の図示しない側板間に回転自在に支持されている。
プラテンローラ16は、装置本体に設けられた図示しないステッピングモータから駆動力を伝達され、図1において時計回り方向に回転駆動される。
【0021】
プラテンローラ16の下方にはサーマルヘッド17が配設されている。サーマルヘッド17は、その幅がプラテンローラ16の幅方向長さよりも大きく形成され、その上面には複数の発熱素子が配設されており、その発熱素子をプラテンローラ16の周面に圧接させるように、図示しない付勢手段によって付勢されている。各発熱素子は図示しないサーマルヘッドドライバによってその作動を個々に制御され、図示しないサーマルヘドドライバには、装置本体の上部に設けられた図示しない画像読取部からの画像情報に応じた作動信号が入力される。
サーマルヘッド17と上述したプラテンローラ16により、マスタ24を製版搬送する製版搬送手段26が構成されている。
【0022】
プラテンローラ16の下流側には、上フロントテンションローラ40aと下フロントテンションローラ40bを有するフロントテンションローラ対40が配設されている。フロントテンションローラ対40はプラテンローラ16の下流側においてマスタ24にテンションを付与する機能を有し、プラテンローラ16と同一の駆動源により回転駆動される。
フロントテンションローラ対40の下流側には、マスタガイド板23、カット手段18が配段されている。カット手段18は、装置本体に固定され、下刃と上刃を有している。カット手段18はギロチンタイプ、回転刃タイプのいずれでもよい。
【0023】
カット手段18の下流側には、マスタ搬送面に開口するマスタ導入口19aを有するマスタストック手段19が配設されている。製版されたマスタ24を一時的に貯容するマスタストック手段19は、筐体状をなすストック本体部(吸引ボックス)34と、該ストック本体部34の奥部上方に設けられたエアー吸引源としての吸引ファン35と、ストック本体部34に対してマスタの引き込み経路に沿って出し入れ自在(抜き差し自在)に設けられたマスタ除去トレイ36を有している。
吸引ファン35の作動により密閉された空間であるマスタストック手段19の内部には負圧が発生し、矢印で示すような気流afが形成され、製版搬送されてきた製版済みのマスタ24はマスタストック手段19の奥部に向けて吸引されて貯容される(図4参照)。マスタストック手段19の詳細については後述する。なお、ストック本体部34における各側面(壁面)は実際には厚みを有しているが単線で表示している(他の図において同じ)。
【0024】
図1に示すように、マスタストック手段19の左方(下流側)には、マスタ搬送ローラ対20が配設されている。マスタ搬送ローラ対20は、共に図示しない側板間に回転自在に支持された駆動ローラ20a及び従動ローラ20bを有しており、図示しない駆動手段によって回転駆動される駆動ローラ20aとこれに圧接された従動ローラ20bとによってマスタ24を挟持して搬送する。駆動ローラ20aには図示しないワンウェイクラッチが設けられている。
マスタストック手段19のマスタ導入口19aには可動マスタガイド板21が配段されている。可動マスタガイド板21は、図示しない側板間に回動自在に支持された支軸21aにその基端を取り付けられており、製版装置3に設けられた図示しないステッピングモータにより、製版搬送されたマスタ24をマスタ搬送ローラ対20に案内する二点鎖線で示す搬送位置と、マスタ24がマスタストック手段19の内部に導かれる際に邪魔とならない実線で示す退避位置との間を回動可能(移動可能)に設けられている。
マスタ搬送ローラ対20の左方には、マスタ搬送ローラ対20によって搬送される製版済みのマスタ24を印刷部2(厳密には版胴5のクランパ8)へと案内するマスタガイド板22が配設されている。マスタガイド板22は図示しない側板間に固定されている。
【0025】
印刷部2の右方であって製版装置3の下方には給紙装置4が配設されている。給紙装置4は、給紙トレイ27、給紙ローラ28、レジストローラ対29等を有している。
その上面に多量の用紙Pを積載可能な給紙トレイ27は、図示しない装置本体に上下動自在に支持されており、図示しないトレイ昇降手段の作動によって上下動する。
【0026】
給紙トレイ27の上方であって用紙Pの搬送方向先端部と対応する位置には、給紙ローラ28が配設されている。周面に高摩擦抵抗部材を有する給紙ローラ28は給紙装置4の図示しない側板間に回転自在に支持されており、図示しない付勢手段によって図1の下方に向けて付勢されている。給紙ローラ28は、図示しないトレイ昇降手段によって給紙トレイ27が給紙位置まで上昇したときに、給紙トレイ27上の最上位の用紙Pに所定の圧接力で圧接し、給紙装置4に設けられた図示しない給紙モータによって図1において時計回り方向に回転駆動される。
給紙ローラ28の下方であって、給紙トレイ27上の用紙Pの搬送方向先端部よりも用紙搬送方向下流側の位置には、高摩擦抵抗部材からなる用紙分離部材30が配設されている。用紙分離部材30は、図示しない付勢手段によって所定の圧接力で給紙ローラ28の周面に圧接されている。
【0027】
給紙ローラ28及び用紙分離部材30よりも用紙搬送方向下流側の位置には、レジストローラ対29が配設されている。共に給紙装置4の図示しない側板間に回転自在に支持された駆動ローラ29a及び従動ローラ29bからなるレジストローラ対29は、図示しないレジスト駆動手段から駆動力を伝達されて回転する駆動ローラ29aとこれに圧接された従動ローラ29bとにより、給紙ローラ28によって給紙トレイ27上から引き出された用紙Pを一時停止させた後、所定のタイミングで版胴5とプレスローラ6との間に向けて給送する。
給紙ローラ28とレジストローラ対29との間の部位には用紙ガイド板31が、またレジストローラ対29よりも用紙搬送方向下流側の位置には用紙ガイド板32がそれぞれ配設されている。各用紙ガイド板31、32は、それぞれ給紙装置4の図示しない側板に固定されている。
【0028】
装置本体の上部には、原稿画像を読み取る図示しない画像読取部が設けられている。画像読取部で読み取られた画像データは、図示しない画像メモリに格納された後に呼び出され、サーマルヘッド17によってマスタ24に製版される。
印刷部2の左上方には、版胴5上に巻装された使用済みマスタを剥離する図示しない排版装置が設けられている。排版装置は、版胴5の周面に対して接離可能な排版部材を有する周知の構成であり、版胴5上より剥離した使用済みマスタを貯容する排版ボックス、及び排版ボックス内において使用済みマスタを圧縮する圧縮板等を有している。
印刷部2の左下方には、印刷部2において印刷された用紙Pを機外に排出するための図示しない排紙部が設けられている。排紙部は、版胴5の外周面より用紙Pを剥離する剥離爪、印刷済み用紙を搬送する用紙搬送ユニット、印刷済み用紙を積載可能な排紙トレイ等を有する周知の構成である。
【0029】
上述の構成に基づき、以下に孔版印刷装置1の動作を説明する。
画像読取部に原稿がセットされ、オペレータによって装置本体上部に設けられた図示しない操作パネルの製版スタートキーが押下されると、画像読取動作及び排版動作が並行して行われる。排版動作が完了すると、版胴5はクランパ8がほぼ右真横位置に位置する給版位置まで回転して停止し、開閉手段によりクランパ8が開放されて孔版印刷装置1は図4に示す給版待機状態となる。
画像読取動作に並行して、製版装置3では製版動作が行われる。製版スタートキーが押下されると、図示しないステッピングモータが作動してプラテンローラ16が回転駆動されるとともにに、図示しない駆動手段が作動してフロントテンションローラ対40、マスタ搬送ローラ対20が回転駆動され、セットされたマスタ24がマスタロール24aより引き出される。引き出されたマスタ24は、プラテンローラ16とサーマルヘッド17間を通過する際に読み取られた画像データに応じて製版される。このとき可動マスタガイド板21は図1に二点鎖線で示す搬送位置に設定されており、マスタストック手段19のマスタ導入口19aは塞がれている。
【0030】
マスタ24の先端がマスタ搬送ローラ対20のニップに挟持されると、図示しない駆動手段の作動が停止されてマスタ搬送ローラ対20の回転が停止される。図示しない制御手段(孔版印刷装置のメインコントローラが兼ねることができる)は、マスタ搬送ローラ対20の回転が停止した後もプラテンローラ16、フロントテンションローラ対40の回転を継続して所定量の過剰送り制御を行い、図2に示すように、マスタ導入口19aの上方にマスタ溜まり24eを形成する。
マスタ溜まり24eが形成されると、可動マスタガイド板21を駆動するステッピングモータが作動する。可動マスタガイド板21は時計回り方向に回動され、最終的に図1において実線で示す退避位置に位置決めされる。また、このステッピングモータの作動と同時に吸引ファン35が作動する。
【0031】
可動マスタガイド板21の退避位置への移動において、図3に示すように、制御手段は可動マスタガイド板21を搬送位置から徐々に退避位置へ移動させる制御を行う。
これによりU字状にストック本体部34内へ吸引されるマスタ24は、その一方の面が可動マスタガイド板21に接触し、他方の面がストック本体部34の内側面に接触した状態を維持されながら吸引される。
従ってマスタ導入口19aの近傍においてマスタ24の吸引される先端部は自由端として振れることはなく、ビビリ振動が抑制される。
サーマルヘッド17、プラテンローラ16、フロントテンションローラ対40の作動は継続しており、製版されたマスタ24は吸引ファン35に吸引されることによって、図4に示すようにマスタストック手段19の内部に貯容される。
【0032】
排版動作が完了して版胴5が図4に示す給版待機状態となり、マスタストック手段19内に所定量以上の製版されたマスタ24が貯容されると、図示しない駆動手段が作動してマスタ搬送ローラ対20が回転駆動され、ステージ部7と開放されているクランパ8との間に向けてマスタ24が搬送される。
【0033】
マスタ24の先端がステージ部7とクランパ8との間の所定位置に達したと判断されると、開閉手段が作動してクランパ8が閉じられ、マスタ24の先端部が版胴5の外周面上に保持されるとともに、図示しない駆動手段の作動が停止されてマスタ搬送ローラ対20の回転が停止される。クランパ8が閉じられた後、版胴5が図4において時計回り方向に低速で間欠的に回転駆動され、版胴5へのマスタ24の巻装が行われる。
製版動作が進行し、プラテンローラ16を駆動する図示しないステッピングモータのステップ数より1版分のマスタ24が製版されたと判断されると、該ステッピングモータの作動が停止されるとともにカット手段18が作動し、マスタ24が切断される。切断されたマスタ24は版胴5の回転によって製版装置3より引き出され、版胴5の外周面上に巻装される。
巻装動作が完了すると、図示しないステッピングモータが作動して可動マスタガイド板21が支軸21aを中心に反時計回り方向に回動され、図1において二点鎖線で示す搬送位置に位置決めされる。
【0034】
可動マスタガイド板21が搬送位置に位置決めされると、給紙ローラ28が回転駆動されて給紙装置4より1枚の用紙Pが給送されるとともに、版胴5が低速で時計回り方向に回転駆動される。用紙分離部材30によって分離給送された用紙Pは、その先端をレジストローラ対29のニップ部に挟み込まれて一時停止され、スキューを修正される。
版胴5上に巻装されたマスタ24の製版画像領域の先端部がプレスローラ6と対応する位置に到達するタイミングでレジストローラ対29が回転駆動され、用紙Pが印刷部2に向けて給送される。
【0035】
レジストロ一ラ対29の作動とほぼ同時にプレスローラ揺動手段が作動し、プレスローラ6は版胴5の外周面に接触する。この接触により、多孔性支持板5a、図示しないメッシュスクリーン、マスタ24、用紙P、プレスローラ6が所定の押圧力で接触し、インキローラ11によって版胴5の内周面に供給されたインキが開孔5b、図示しないメッシュスクリーンの開孔部、マスタ24の多孔性樹脂膜、多孔性繊維膜、熱可塑性樹脂フィルム穿孔部を介して用紙Pに転写され、いわゆる版付けが行われる。版付け後の用紙Pは、図示しない剥離爪によって版胴5の外周面より剥離され、図示しない用紙搬送ユニットを介して図示しない排紙トレイ上に排出される。
【0036】
版付け動作後、オペレータは操作パネル上のキーを操作して印刷画像位置あるいは印刷速度等を設定した後、図示しない試し刷りキーを押下する。試し刷りキーが押下されると、版胴5が設定された印刷速度に基づいた回転周速度で回転駆動されるとともに給紙装置4より1枚の用紙Pが給送され、版付け時と同様に試し刷りが行われる。オペレータは試し刷りによって画像を確認し、操作パネル上で印刷枚数を設定した後に印刷スタートキーを押下する。これにより給紙装置4より用紙Pが連続的に給送され、上述した試し刷りと同様に印刷が行われる。
設定された印刷枚数が消化されると全ての動作が停止し、孔版印刷装置1は再び待機状態となる。
【0037】
次に、マスタストック手段19の構成及びマスタ除去機能を説明する。図1に示すように、筐体ないし箱状のストック本体部34は、可動マスタガイド板21の動作によって開放されたマスタ導入口19aから製版済みのマスタ24を引き込んで貯容するための主貯容空間34Aと、仕切り板34aによって主貯容空間34Aの上側に折り返された副貯容空間34Bを有しており、副貯容空間34Bの吸引方向奥側に吸引ファン35が設けられている。副貯容空間34Bにおける吸引ファン35の右側(吸引方向手前)には、空気流を通過させ且つマスタ24のカット片の進入を阻止する金網等のフィルタ34bが設けられている。
フィルタ34bの吸引ファン35側には、マスタ24を検知するマスタ検知手段50が設けられている。本実施形態におけるマスタ検知手段50には、反射型フォトセンサを用いている。
【0038】
マスタ除去トレイ36は、主貯容空間34Aの底面(マスタストック手段19の底面)の内側をスライドする平板状のトレイ本体37と、該トレイ本体37の外側端に設けられた取っ手部材38を有している。トレイ本体37と取っ手部材38は合成樹脂により一体成形されている。
取っ手部材38は、主貯容空間34Aと副貯容空間34Bの後端側(版胴5から遠ざかる方向)の開口部を塞ぐ側面としての機能をも有している。
取っ手部材38によりマスタ除去トレイ36は出し入れ自在であり、これにより主貯容空間34Aの折り返し部は開放可能となっている。
【0039】
トレイ本体37の先端部は上方に屈曲されており、該屈曲部37aにはマスタストック手段19の内面である仕切り板34aの下面を摺擦するスクレーパ39が設けられている。スクレーパ39の幅は、搬送方向と直交するマスタ24の幅方向における仕切り板34aの幅と同程度に設定されている。
取っ手部材38は、主貯容空間34Aと副貯容空間34Bの後端側の開口面積よりも若干大きい面積を有する平板状に形成されており、特に下端は突出されて引き出し用操作部38aが形成されている。
マスタ24のセットにおいて、折れやカールが生じている場合にはマスタ24の先端の位置合わせを正確にするために先端部をカットするときがあるが、これによって生じたカット片24dはマスタストック手段19内に吸引された後、図1に二点鎖線で示すように、トレイ本体37を図中右側に引き出して取り除かれる。オペレータがカット片24dの除去を忘れた場合でも、カット片24dはフィルタ34bに張り付いてマスタ検知手段50により検知され、例えば図示しない操作パネルの液晶表示部に警告がなされるため、除去忘れによる吸引力低下に起因する給版トラブルは防止される。
【0040】
上記実施形態では、可動マスタガイド板21の移動速度を一律としたが、マスタの種類に応じて変化させるようにしてもよい。この場合、マスタの種類に対応した複数の速度変更キーを設けてもよく、制御手段により自動的に変更するようにしてもよい。
制御手段により自動的に変更する方式では、予め実験により求められたマスタの種類と可動マスタガイド板21の移動速度との関係データテーブルを制御手段のROMに記憶し、図示しない操作パネルにより入力されたマスタの種類の情報に基づいて対応する移動速度を選択し、自動的に可動マスタガイド板21の移動速度を設定するようにする。
可動マスタガイド部材の構成も上記実施形態に限定されるものではなく、例えば観音開き構造や水平移動構造など種々のものを採用できる。
【0041】
【発明の効果】
請求項1又は7記載の発明によれば、画像情報に基づいてマスタを製版し搬送する製版搬送手段と、該製版搬送手段により製版搬送されたマスタをエアー吸引源により吸引して貯容するマスタストック手段を有する製版装置において、上記マスタストック手段のマスタ導入口に、該マスタ導入口を開閉する可動マスタガイド部材が設けられ、該可動マスタガイド部材が上記マスタ導入口を開放する途中の段階でマスタが該可動マスタガイド部材に接触するように吸引する構成としたので、マスタ吸引時の不快な異常音(騒音)を抑制でき、作業環境の静音化を向上させることができる。
【0042】
請求項2又は7記載の発明によれば、請求項1記載の製版装置において、上記可動マスタガイド部材を開方向へ徐々に移動させる構成としたので、マスタ吸引時の不快な異常音(騒音)を抑制でき、作業環境の静音化を向上させることができる。
【0043】
請求項3又は7記載の発明によれば、請求項2記載の製版装置において、上記可動マスタガイド部材が一端側を支点として回動可能に設けられ、上記マスタ導入口を閉じてマスタを搬送する搬送位置から上記マスタ導入口を開放する吸引位置へ徐々に移動させる構成としたので、従来の構成に新たな要素を付加することなくマスタ吸引時の不快な異常音(騒音)を抑制でき、作業環境の静音化を向上させることができる。
【0044】
請求項4又は7記載の発明によれば、請求項3記載の製版装置において、上記可動マスタガイド部材の移動速度は、略U字状に吸引されるマスタの一方の面が上記可動マスタガイド部材に接触し、且つ、他方の面が上記マスタストック手段の内側面に接触した状態を維持できる程度である構成としたので、マスタの振れを確実に抑えることができ、マスタ吸引時の不快な異常音を高精度に抑制することができる。
【0045】
請求項5又は6記載の発明によれば、請求項2乃至4のうちの何れか1つに記載の製版装置において、上記可動マスタガイド部材の移動速度をマスタの種類に応じて変化させる構成としたので、マスタ吸引時の不快な異常音を高精度に抑制することができるとともに、マスタの吸引動作の効率を高めることができる。
【0046】
請求項6又は7記載の発明によれば、請求項5記載の製版装置において、予め実験により求められたマスタの種類と上記可動マスタガイド部材の移動速度との関係データテーブルからマスタの種類に応じた移動速度を選択して自動的に上記可動マスタガイド部材の移動速度を設定する制御手段を有している構成としたので、マスタ吸引時の不快な異常音を高精度に抑制することができるとともに、マスタの吸引動作の効率を高めることができ、且つ、使用容易性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態における孔版印刷装置の概要正面図である。
【図2】過剰送りによりマスタ溜まりを形成した状態を示す概要正面図である。
【図3】マスタ吸引時の可動マスタガイド板の移動状態を示す概要正面図である。
【図4】マスタストック手段内にマスタを貯容した給版前の状態を示す概要正面図である。
【符号の説明】
3 製版装置
19 マスタストック手段
19a マスタ導入口
21 可動マスタガイド部材としての可動マスタガイド板
24 マスタ
26 製版搬送手段
35 エアー吸引源としての吸引ファン
Claims (7)
- 画像情報に基づいてマスタを製版し搬送する製版搬送手段と、該製版搬送手段により製版搬送されたマスタをエアー吸引源により吸引して貯容するマスタストック手段を有する製版装置において、
上記マスタストック手段のマスタ導入口に、該マスタ導入口を開閉する可動マスタガイド部材が設けられ、該可動マスタガイド部材が上記マスタ導入口を開放する途中の段階でマスタが該可動マスタガイド部材に接触するように吸引することを特徴とする製版装置。 - 請求項1記載の製版装置において、
上記可動マスタガイド部材を開方向へ徐々に移動させることを特徴とする製版装置。 - 請求項2記載の製版装置において、
上記可動マスタガイド部材が一端側を支点として回動可能に設けられ、上記マスタ導入口を閉じてマスタを搬送する搬送位置から上記マスタ導入口を開放する吸引位置へ徐々に移動させることを特徴とする製版装置。 - 請求項3記載の製版装置において、
上記可動マスタガイド部材の移動速度は、略U字状に吸引されるマスタの一方の面が上記可動マスタガイド部材に接触し、且つ、他方の面が上記マスタストック手段の内側面に接触した状態を維持できる程度であることを特徴とする製版装置。 - 請求項2乃至4のうちの何れか1つに記載の製版装置において、
上記可動マスタガイド部材の移動速度をマスタの種類に応じて変化させることを特徴とする製版装置。 - 請求項5記載の製版装置において、
予め実験により求められたマスタの種類と上記可動マスタガイド部材の移動速度との関係データテーブルからマスタの種類に応じた移動速度を選択して自動的に上記可動マスタガイド部材の移動速度を設定する制御手段を有していることを特徴とする製版装置。 - 製版装置により製版されたマスタを版胴の外周面に巻装して印刷を行う孔版印刷装置において、
上記製版装置が、請求項1乃至6のうちの何れか1つに記載の製版装置であることを特徴とする孔版印刷装置。
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