JP3842667B2 - 孔版印刷装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、版胴の外周面に製版されたマスタを巻装して印刷を行う孔版印刷装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
多孔性の支持円筒体である多孔性支持板の周面に樹脂あるいは金属網体のメッシュスクリーンを複数層巻装してなる回転自在な版胴と、熱可塑性樹脂フィルム(厚み1〜3μm程度のものが一般的に用いられる)と和紙繊維あるいは合成繊維あるいは和紙繊維と合成繊維とを混抄したものとを貼り合わせてなるラミネート構造のマスタとを用い、マスタの熱可塑性樹脂フィルム面をサーマルヘッド等により加熱穿孔製版した後に版胴に巻装し、版胴内部に設けられたインキ供給手段よりインキを供給しつつプレスローラー等の押圧手段によって給紙手段より給送された用紙を版胴外周面上の製版済みマスタに連続的に押圧することにより、版胴開孔部及びマスタ穿孔部よりインキを滲出させて用紙に転写することで印刷を行う感熱デジタル孔版印刷装置が一般的に知られている。
【0003】
このような押圧手段としてプレスローラーを用いる孔版印刷装置では、版胴内部より供給されるインキの粘着力によって版胴外周面上のマスタに貼り付いた用紙を剥離させるものとして剥離爪が用いられている。この剥離爪は、樹脂製で20mm程度の幅を有し鋭角上に尖った先端部を有するものが一般的であり、これが版胴の軸方向に複数個配設されている。各剥離爪は、自身の腰によってマスタ上より浮き上がった用紙とマスタとの間にその先端部を挿入して用紙の分離を行っている。
【0004】
しかし、インキの流動性が向上する高温環境下での印刷時には版胴開孔部を介してマスタ穿孔部から滲出するインキ量が増加し、特に画像先端部にべた画像部が存在しかつ印刷速度が高速の場合等には、インキの粘着力が増加すると共にプレスローラーによりマスタに押圧された用紙の先端が剥離爪に到達するまでの時間が短くなって用紙の浮き上がり量が少なくなることも重なり、自身の腰だけでは用紙先端がマスタより浮き上がれなくなるという状態が生じる。この状態では剥離爪が用紙とマスタとの間に入り込めないため、用紙が剥離爪で剥離されずに版胴に貼り付いて排紙されない、いわゆる巻き上がりという不具合が発生してしまう。
【0005】
また、マスタを構成している熱可塑性樹脂フィルム(一般的にポリエステルあるいはポリエチレンテレフタラート樹脂)は高絶縁体であり、静電気が逃げにくい低温環境下では高絶縁体である熱可塑性樹脂フィルムと用紙との接触等により発生した静電気が蓄積され、用紙がさらにマスタに貼り付き易くなって巻き上がりが発生してしまうという問題点があった。
そこで、剥離爪による用紙の剥離を補助するため、剥離爪の近傍に送風手段を設けて版胴に向けて送風を行い、用紙先端をマスタから浮き上がらせて用紙の剥離を行う技術が、例えば特許第2598790号公報に開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記公報に開示された技術では送風手段からの送風の風量は条件が最も悪い場合を想定して設定されているために非常に大きく、用紙が薄く非常に用紙自身の腰が弱い場合や用紙先端部に全く画像がない場合等では、送風手段からの送風によって用紙が下方に撓んでしまい、プレスローラーと排紙搬送装置との間に潜って排紙されない、いわゆる巻き下がりという不具合が発生してしまう。
【0007】
本発明は上記問題点を解決し、送風手段を備え巻き上がりの発生を防止することが可能であると共に巻き下がりの発生をも防止可能である孔版印刷装置の提供を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、マスタを巻装する版胴と、前記版胴上の前記マスタに用紙を押圧するプレスローラーと、前記マスタと前記用紙の先端との間に向けて送風を行う送風手段を有し前記マスタより前記用紙を剥離する剥離部材とを具備する孔版印刷装置において、前記プレスローラー側から前記版胴側に向けて送風を行う補助送風手段を有することを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の孔版印刷装置において、さらに前記マスタより剥離された前記用紙を搬送する搬送ベルト及び該搬送ベルト上に前記用紙を吸引する吸引ファンを有する排紙搬送部材を具備し、前記吸引ファンが前記補助送風手段として機能することを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の孔版印刷装置において、さらに前記補助送風手段として機能する前記吸引ファンの風量を調節する風量調節部材を有することを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし請求項3のうちの何れか1つに記載の孔版印刷装置において、さらに前記用紙の厚みを検出する用紙厚み検出手段を有し、前記用紙の厚みが薄くなるに連れて前記補助送風手段の風量を多くすることを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし請求項4のうちの何れか1つに記載の孔版印刷装置において、さらに前記マスタに形成される製版画像量を検知する製版画像量検知手段を有し、前記製版画像量が少なくなるに連れて前記補助送風手段の風量を多くすることを特徴とする。
【0013】
【実施例】
図1は、本発明の第1の実施例を採用した孔版印刷装置の要部概略正面図である。同図において孔版印刷装置1は、図示しない装置本体のほぼ中央部に図示しない版胴駆動手段によって回転駆動される版胴2を有している。版胴2は、その両側縁部を図示しない一対のフランジの各周面にそれぞれ取り付けられた多孔性支持板2aと、多孔性支持板2aの外周に複数層巻装された図示しないメッシュスクリーンとを有しており、多孔性支持板2aには複数の開孔2bを有する開孔部が形成されている。多孔性支持板2aの非開孔部には、版胴2の一母線に沿った平面をなすステージ部3が設けられており、ステージ部3上には支軸4aによって回動自在に支持されたクランパー4が配設されている。クランパー4は版胴2が所定位置を占めたときに図示しない開閉手段によって開閉される。
【0014】
版胴2の内部にはインキ供給手段5が配設されている。インキ供給手段5は、版胴2の支軸を兼用するインキ供給パイプ6、インキローラー7、ドクターローラー8等を有している。
インキ供給パイプ6は図示しない一対のフランジ間に設けられており、図示しない軸受を介して各フランジをそれぞれ回転自在に支持している。インキ供給パイプ6には図示しないインキポンプ及びインキパックが接続されており、図示しないインキポンプの作動により図示しないインキパック内のインキがインキ供給パイプ6に複数設けられたインキ供給孔6aから版胴2の内部に供給される。
【0015】
インキローラー7は、図示しない一対のフランジ間に配設されそれぞれインキ供給パイプ6に固設された図示しない一対の側板間に回転自在に支持されており、図示しない回転駆動手段によって版胴2と同期して同方向に回転駆動される。インキローラー7は、その周面と版胴2の内周面との間に僅かな隙間が生じる位置に配設されている。
【0016】
インキローラー7の近傍にはドクターローラー8が配設されている。ドクターローラー8もインキローラー7と同じ図示しない側板間に回転自在に支持されており、図示しない回転駆動手段によってインキローラー7と同期して逆方向に回転駆動される。ドクターローラー8は、その周面とインキローラー7の周面との間に僅かな隙間が生じる位置に配設されている。
【0017】
インキローラー7とドクターローラー8との近接部には断面楔形状の空間が形成され、この空間にインキ供給孔6aから供給されたインキが溜まることによりインキ溜まり9が形成される。インキ溜まり9のインキは、インキローラー7とドクターローラー8との近接部を通過する際にインキローラー7の周面上に薄層状に供給され、後述するプレスローラー10によって版胴2が押圧された際に、インキローラー7の周面と版胴2の内周面とが接触することにより版胴2の内周面に供給される。
【0018】
版胴2の下方にはプレスローラー10が配設されている。版胴の軸方向長さとほぼ同じ長さを有し芯部10aの周囲にゴム等の弾性体を巻成してなるプレスローラー10は、芯部10aの両端を一対のプレスローラーアーム11の一端間にそれぞれ回転自在に支持されている。板状部材である一対のプレスローラーアーム11は、図示しない装置本体に回動自在に支持されたプレスローラー軸12にそれぞれの他端を固着されており、図示しないプレスローラー揺動手段によってそれぞれ一体的に揺動される。この揺動によりプレスローラー10は、その周面を版胴2の外周面から離間させる図1に示す離間位置と、その周面を所定の押圧力で版胴2の外周面に圧接させる押圧位置とを選択的に占める。
【0019】
版胴2の右上方にはマスタ貯容部材13が配設されている。マスタ貯容部材13は装置本体の図示しない一対の側板にそれぞれ設けられており、熱可塑性樹脂フィルムと多孔性支持体とを貼り合わせてなるマスタ14をロール状に巻成したマスタロール14aの芯部14bを回転自在かつ着脱自在に支持する。
【0020】
マスタ貯容部材13の左方にはプラテンローラー15が配設されている。プラテンローラー15はその軸方向長さがマスタ14の幅とほぼ同じ長さに形成されており、装置本体の図示しない側板間に回転自在に支持されている。プラテンローラー15は図示しないステッピングモーターから駆動力を伝達され、図1において時計回り方向に回転駆動される。
【0021】
プラテンローラー15の下方にはサーマルヘッド16が配設されている。サーマルヘッド16はその幅がプラテンローラー15の軸方向長さよりも大きく形成されており、その上面には複数の発熱素子が配設されている。サーマルヘッド16はその発熱素子面をプラテンローラー15に圧接させるように図示しない付勢手段によって付勢されており、各発熱素子は図示しないサーマルヘッドドライバーによってその作動を個々に制御される。
【0022】
プラテンローラー15及びサーマルヘッド16の左方には切断手段17が配設されている。切断手段17は、図示しない装置本体に固定されその幅がマスタ14の幅よりも長く形成された下刃17aと、下刃17a上をマスタ14の幅方向に移動しつつ回転自在に設けられた上刃17bとを有する周知の構成である。
【0023】
切断手段17の左方にはマスタ搬送ローラー対18が配設されている。マスタ搬送ローラー対18は、共に図示しない側板間に回転自在に支持された駆動ローラー18a及び従動ローラー18bを有しており、図示しないマスタ搬送駆動手段により回転駆動される駆動ローラー18aとこれに圧接された従動ローラー18bとによってマスタ14を挟持して搬送する。
マスタ搬送ローラー対18の左方には、マスタ搬送ローラー対18によって搬送されるマスタ14を版胴2へと案内するガイド板19が配設されている。ガイド板19は図示しない側板間に固定されている。
【0024】
版胴2の右下方にはレジストローラー対20が配設されている。共に図示しない側板間に回転自在に支持された駆動ローラー20a及び従動ローラー20bを有するレジストローラー対20は、図示しないレジスト駆動手段から駆動力を伝達されて回転する駆動ローラー20aとこれに圧接された従動ローラー20bとによって図示しない給紙トレイから給送された用紙Pを一時停止させた後、所定のタイミングで版胴2とプレスローラー10との間に向けて給送する。
【0025】
レジストローラー対20の右方近傍には用紙厚み検出手段21が配設されている。用紙厚み検出手段21は、厚み検出器22、アーム23、ころ24,25等から主に構成されている。内部に可変抵抗器を有する厚み検出器22は図示しない側板に固定されており、可変抵抗器の回転軸にはアーム23の一端が取り付けられている。アーム23の他端にはころ24が回転自在に取り付けられており、ころ24の下方には図示しない側板に回転自在に取り付けられたころ25が配設されている。アーム23には図示しない付勢手段が取り付けられており、ころ24はころ25に所定の圧接力で常時圧接するように構成されている。
【0026】
この構成より、用紙Pが各ころ24,25間に挟持されることでアーム23が可変抵抗器の回転軸を中心に図1において時計回り方向に揺動し、可変抵抗器の回転軸が回動することによりその抵抗値が変化し、これにより用紙Pの厚みが検出される。本実施例では用紙Pの厚みがXmm以上Y(Xよりも大きい値)mm以下の場合を普通紙、Xmm未満の場合を薄紙、Ymmを超える場合を厚紙として定義する。
【0027】
版胴2の左下方には剥離部材26が配設されている。版胴2の外周面上のマスタ14から用紙Pの先端を剥離する剥離部材26は、剥離爪27及び送風手段としての剥離ファン28を有している。剥離爪27は支軸27aによって図示しない装置本体に回動自在に支持されており、図示しない爪揺動手段によって揺動されることにより、断面鋭角状に形成されたその先端部が版胴2の外周面に近接する近接位置と、先端部が版胴2の外周面から離間する離間位置とを選択的に占める。剥離ファン28は剥離爪27の上方近傍に配設されており、図示しない送風駆動手段によって作動される。剥離ファン28からの送風Aは、剥離爪27によって版胴2の外周面上から剥離される用紙Pの先端部に向けて送られ、その風量は用紙Pの先端部近傍にべた画像がある場合でも用紙Pの先端を版胴2の外周面上から浮き上がらせることが可能となる風量に設定されている。
【0028】
剥離部材26の下方には排紙搬送部材29が配設されている。排紙搬送部材29は、駆動ローラー30、従動ローラー31、無端ベルト32、吸引ファン33等を有している。ころ状の駆動ローラー30及び従動ローラー31は、上面の一部が開放された箱形状を呈する図示しない搬送部材本体にそれぞれ回転自在に支持された支軸30a,31aにそれぞれ所定の間隔で複数固着されており、対応する駆動ローラー30と従動ローラー31間にはそれぞれ無端ベルト32が掛け渡されている。各駆動ローラー30は図示しない排紙駆動手段によって支軸30aが回転駆動されることでそれぞれ一体的に回転駆動され、これにより各無端ベルト32が図1の矢印方向に移動される。吸引ファン33は搬送部材本体に取り付けられており、図示しないファン駆動手段によって作動される。吸引ファン33の回転により搬送部材本体内に負圧が発生し、各無端ベルト32上を搬送される用紙Pは各無端ベルト32側に吸引される。
排紙搬送部材29の左方には、排紙搬送部材29によって搬送された用紙Pを積載する排紙トレイ34が配設されている。
【0029】
プレスローラー10と排紙搬送部材29との間の下方には補助送風手段としての送風ファン35が配設されている。送風ファン35は装置本体に図示しないブラケットを介して取り付けられており、出力可変型モーターである送風ファン駆動モーター36によって作動される。送風ファン35からの送風Bは、剥離爪27によって版胴2の外周面上から剥離される用紙Pの先端部に向けて送られ、その風量は剥離ファン28からの送風Aによって版胴2の外周面上から浮き上がった用紙Pの先端が排紙搬送部材29の下側に潜り込むことを防止することが可能となる風量に設定されている。本発明者等の実験により、送風Bの風量を送風Aの風量の10〜30%とすることで版胴2の外周面上から剥離された用紙Pを排紙搬送部材29に対して良好に受け渡すことができるということが確認された。本実施例では、送風ファン駆動モーター36の出力を3段階に変化させ、送風Bの風量を送風Aの風量の10%、20%、30%の3段階に変化させる。
【0030】
上述の構成に基づき、以下に孔版印刷装置1の動作を説明する。
オペレーターにより図示しない画像読取部に印刷すべき原稿がセットされた後、図示しない操作パネル上の製版スタートキーが押下されると、図示しない画像読取部において原稿画像の読取動作が行われる。読み取られた画像は画像データ信号として図示しない画像メモリ内に格納される。また、読取動作と同時に版胴2が回転を開始し、図示しない排版部では版胴2上からの使用済みマスタの排版動作が行われる。版胴2上より剥離された使用済みマスタは、排版部に設けられた図示しない排版ボックス内に廃棄される。排版動作が完了すると版胴2が再び回転を開始し、版胴2は図1に示す給版待機位置で停止する。版胴2が給版待機位置で停止すると図示しない開閉手段が作動し、図1に示すようにクランパー4が開放されて孔版印刷装置1は給版待機状態となる。
【0031】
孔版印刷装置1が給版待機状態となると、続いて製版動作が行われる。クランパー4が開放されると、プラテンローラー15を回転駆動する図示しないステッピングモーター及び駆動ローラー18aが回転駆動され、マスタロール14aからマスタ14が引き出される。引き出されたマスタ14は、サーマルヘッド16の各発熱素子が画像メモリに格納された画像データ信号に基づいて発熱することでその熱可塑性樹脂フィルム面を加熱溶融穿孔され、製版画像を形成される。
【0032】
マスタ14は、サーマルヘッド16により製版されつつプラテンローラー15及びマスタ搬送ローラー対18によって搬送され、ガイド板19に案内されて開放されたクランパー4へと送られる。そして、図示しないステッピングモーターのステップ数よりマスタ14の先端がクランパー4に挟持される所定位置まで到達したと判断されると、図示しない開閉手段が作動してクランパー4が閉じられて版胴2の外周面上に製版されたマスタ14の先端が保持される。
【0033】
その後、版胴2がマスタ14の製版搬送速度と同じ周速度で図1の時計回り方向に回転駆動され、マスタ14の版胴2への巻装動作が行われる。そして、図示しないステッピングモーターのステップ数より1版分の製版が完了したと判断されると、プラテンローラー15及びマスタ搬送ローラー対18の回転が停止すると共に上刃17bが回転移動してマスタ14が切断される。切断されたマスタ14は版胴2の回転によって引き出され、全てのマスタ14が版胴2上に巻装された後に版胴2がホームポジションで停止することにより巻装動作が完了する。
【0034】
巻装動作が完了すると、版胴2が低速で図1の時計回り方向に回転駆動されると共に、図示しない給紙部より1枚の用紙Pが分離給送される。図示しない分離搬送部材により分離給送された用紙Pはその先端を各ころ24,25間に進入させ、これによりアーム23が用紙Pの厚み分だけ図1の時計回り方向に回動され、厚み検出器22によって用紙Pの厚みが検出される。検出された用紙Pの厚みは図示しない制御手段によって普通紙、薄紙、厚紙の何れかに選別され、選別された用紙Pの厚みの情報は図示しない記憶手段に記憶される。
【0035】
用紙厚み検出手段21によりその厚みを検出された用紙Pはさらに図示しない分離搬送部材により搬送され、その先端をレジストローラー対20のニップ部に当接させた状態で一時停止される。一時停止させられた用紙Pは、版胴2上に巻装された製版済みのマスタ14の画像領域先端部がプレスローラー10と対応する位置に達する所定のタイミングでレジストローラー対20が回転駆動することにより、版胴2とプレスローラー10との間に向けて給送される。
【0036】
また、レジストローラー対20の回転時において、図示しない送風駆動手段、排紙駆動手段、ファン駆動手段がそれぞれ作動して剥離ファン28、排紙搬送部材29、吸引ファン33がそれぞれ駆動されると共に、送風ファン駆動モーター36が作動して送風ファン35から送風Bが所定の位置に向けて送られる。このときの送風ファン駆動モーター36の出力は図示しない記憶手段に記憶された用紙Pの厚み情報によって決定され、本実施例の場合、用紙Pの厚みが厚紙の場合には送風Bの風量が送風Aの風量の10%となるように、用紙Pの厚みが普通紙の場合には送風Bの風量が送風Aの風量の20%となるように、用紙Pの厚みが薄紙の場合には送風Bの風量が送風Aの風量の30%となるように、図示しない制御手段によってそれぞれ制御される。これは、用紙Pの厚みが薄ければ薄い程、自身の腰が少なくなるために用紙Pが送風Aの影響を受け易く、排紙搬送部材29の下側に潜り込み易くなるためである。なお、厚紙の場合は用紙P自身の腰が強いため、送風Bの風量を送風Aの風量の10%以下とする構成、あるいは送風ファン35からの送風を行わない構成としてもよい。
【0037】
駆動ローラー20aの回転とほぼ同時にプレスローラー揺動手段が作動してプレスローラー10がその外周面を版胴2の外周面に圧接させ、レジストローラー対20によって給送された用紙Pが版胴2に巻装されたマスタ14に押圧される。この押圧動作によりプレスローラー10と用紙Pとマスタ14と版胴2とが圧接し、インキローラー7によって版胴2の内周面に供給されたインキが版胴2の開孔部より滲出し、多孔性支持板2a、図示しないメッシュスクリーン、及びマスタ14の多孔性支持体に充填された後にマスタ14の穿孔部を介して用紙Pに転写され、いわゆる版付けが行われる。
【0038】
版付けにより画像を転写された用紙Pは、爪揺動手段によって先端部が近接位置を占めた剥離爪27及び剥離ファン28からの送風Aによって版胴2の外周面より剥離されて下方へと落下し、排紙搬送部材29上へと送られる。このとき送風ファン35から送風Bが送られていることにより用紙Pは排紙搬送部材29の下側へと潜り込むことを防止され、巻き下がりの発生が防止される。排紙搬送部材29へと送られた用紙Pは、吸引ファン33の吸引力によって無端ベルト32の上面に引き付けられつつ左方へと搬送され、排紙トレイ34上に排出される。その後、版胴2が再びホームポジションまで回転して停止し、版付け動作を終えて孔版印刷装置1は印刷待機状態となる。
【0039】
版付け動作完了後、印刷条件が設定された後にオペレーターによって図示しない操作パネル上の試し刷りキーが押下されることにより、給紙部より1枚の用紙Pが分離給送されると共に版胴2が設定された印刷速度に対応した周速度で回転駆動される。給送された用紙Pは、版付け時と同様にその厚みを用紙厚み検出手段21において検出された後、レジストローラー対20により所定のタイミングで版胴2とプレスローラー10との間に向けて給送され、プレスローラー10で版胴2の外周面に押圧されることにより画像を転写される。画像転写後の用紙Pは、版付け時と同様に剥離爪27、剥離ファン28、送風ファン35の相互作用によって良好に版胴2の外周面より剥離され、排紙搬送部材29を介して排紙トレイ34上に排出される。
【0040】
試し刷りによって画像位置や画像濃度等が決定されると、これらの印刷条件及び印刷枚数が設定された後にオペレーターによって図示しない印刷スタートキーが押下されることにより、給紙部より用紙Pが連続的に給送されて印刷が行われる。この印刷動作も試し刷り動作と同様に行われ、用紙厚み検出手段21において厚みを検出された用紙Pはレジストローラー対20により所定のタイミングで給送され、プレスローラー10で押圧されることによりその一面に画像を転写される。画像転写後の用紙Pは、試し刷り時と同様に剥離爪27、剥離ファン28、送風ファン35の相互作用によって良好に版胴2の外周面より剥離され、排紙搬送部材29を介して順次排紙トレイ34上に排出される。そして、設定された印刷枚数が消化されると、孔版印刷装置1は停止して再び印刷待機状態となる。
【0041】
上述の版付け時、試し刷り時、及び印刷時において、送風ファン35が用紙Pの厚みに応じた風量の送風Bをプレスローラー10側から版胴2側に向けて送るので、剥離ファン28からの送風Aによって用紙Pが排紙搬送部材29の下側へ潜り込むことを防止でき、巻き上がり及び巻き下がりの発生を防止して版胴2からの用紙Pの剥離を良好に行うことができる。
【0042】
図2は、本発明の第2の実施例を示している。この第2の実施例に示す孔版印刷装置37は、第1の実施例で示した孔版印刷装置1と比較すると、排紙搬送部材29及び送風ファン35に代えて排紙搬送部材38を用いる点においてのみ相違しており、他の構成は同一である。
【0043】
排紙搬送部材38は、駆動ローラー39、従動ローラー40、搬送ベルトとしての無端ベルト41、吸引ファン42、搬送部材本体43、風量調節部材44等を有している。ころ状の駆動ローラー39及び従動ローラー40は、上面の一部が開放されその用紙搬送方向上流側に開口43aを有する箱形状の搬送部材本体43にそれぞれ回転自在に支持された支軸39a,40aにそれぞれ所定の間隔で複数固着されており、対応する駆動ローラー39と従動ローラー40間にはそれぞれ無端ベルト41が掛け渡されている。各駆動ローラー39は図示しない排紙駆動手段によって支軸39aが回転駆動されることでそれぞれ一体的に回転駆動され、これにより各無端ベルト41が図2の矢印方向に移動される。
【0044】
補助送風手段として機能する吸引ファン42は搬送部材本体43に取り付けられており、図示しないファン駆動手段によって作動される。吸引ファン42の下方に位置する搬送部材本体43の開口43a近傍の位置には、吸引ファン42の作動によって発生し、開口43aから剥離爪27によって版胴2の外周面上から剥離される用紙Pの先端部に向けて送られる送風Bの風量を調節するための風量調節部材44が配設されている。風量調節部材44は、図示しないモーター等の調節手段によって、図2に実線で示す全閉位置と図2に二点鎖線で示す全開位置との間で無段階に開閉される。
【0045】
上述の構成に基づき、以下に孔版印刷装置37の動作を説明する。
オペレーターにより図示しない画像読取部に印刷すべき原稿がセットされた後、図示しない操作パネル上の製版スタートキーが押下されると、第1の実施例と同様に原稿画像の読取動作及び排版動作が行われて孔版印刷装置37は給版待機状態となる。その後、これに続いて第1の実施例と同様に製版動作及び巻装動作が行われ、版胴2の外周面上に製版済みのマスタ14が巻装される。
【0046】
巻装動作が完了すると、版胴2が低速で図2の時計回り方向に回転駆動されると共に、図示しない給紙部より1枚の用紙Pが給送される。分離給送された用紙Pはその厚みを用紙厚み検出手段21によって検出された後、レジストローラー対20で一時停止させられる。検出された用紙Pの厚み情報は図示しない記憶手段に記憶される。
【0047】
その後、第1の実施例と同様の所定のタイミングでレジストローラー対20が作動し、用紙Pが版胴2とプレスローラー10との間に向けて給送される。このとき図示しない排紙駆動手段及びファン駆動手段がそれぞれ作動して駆動ローラー39a及び吸引ファン42がそれぞれ駆動されると共に、図示しない調節手段が作動して風量調節部材44が所定の位置に位置決めされる。このときに風量調節部材44が位置決めされる所定の位置は図示しない記憶手段に記憶された用紙Pの厚み情報によって決定され、本実施例の場合、用紙Pの厚みが厚紙の場合は送風Bの風量が送風Aの風量の10%となるように、用紙Pの厚みが普通紙の場合には送風Bの風量が送風Aの風量の20%となるように、用紙Pの厚みが薄紙の場合には送風Bの風量が送風Aの風量の30%となるように、風量調節部材44の位置が図示しない制御手段によってそれぞれ制御される。
【0048】
レジストローラー対20の作動とほぼ同時にプレスローラー揺動手段が作動してプレスローラー10が揺動され、給送された用紙Pが版胴2上のマスタ14に押圧されて版付けが行われる。画像を転写された用紙Pは剥離部材26によって版胴2の外周面より剥離され、排紙搬送部材38上へと送られる。このとき開口43aから送風Bが送られていることにより用紙Pは排紙搬送部材38の下側へと潜り込むことを防止され、巻き下がりの発生が防止される。排紙搬送部材38へと送られた用紙Pは、吸引ファン42の吸引力によって無端ベルト41の上面に引き付けられつつ左方へと搬送され、排紙トレイ34上に排出される。その後、版胴2が再びホームポジションまで回転して停止し、版付け動作を終えて孔版印刷装置37は印刷待機状態となる。
【0049】
版付け動作後、印刷条件設定後にオペレーターによって図示しない操作パネル上の試し刷りキーが押下されると、給紙部より1枚の用紙Pが分離給送されると共に版胴2が設定された印刷速度に対応した周速度で回転駆動されて試し刷りが行われる。給送された用紙Pは、版付け時と同様にその厚みを検出された後に所定のタイミングで給送され、版胴2の外周面に押圧されることにより画像を転写される。画像転写後の用紙Pは、版付け時と同様に剥離爪27、剥離ファン28、吸引ファン42の相互作用によって良好に版胴2の外周面より剥離され、排紙搬送部材38を介して排紙トレイ34上に排出される。
【0050】
試し刷り後、印刷条件及び印刷枚数が設定された後にオペレーターによって図示しない印刷スタートキーが押下されることにより、給紙部より用紙Pが連続的に給送されて印刷が行われる。この印刷動作も試し刷り動作と同様に行われ、厚みを検出された用紙Pはレジストローラー対20により所定のタイミングで給送され、プレスローラー10で押圧されることによりその一面に画像を転写される。画像転写後の用紙Pは、試し刷り時と同様に剥離爪27、剥離ファン28、吸引ファン42の相互作用によって良好に版胴2の外周面より剥離され、排紙搬送部材38を介して順次排紙トレイ34上に排出される。そして、設定された印刷枚数が消化されると、孔版印刷装置37は停止して再び印刷待機状態となる。
【0051】
上述の版付け時、試し刷り時、及び印刷時において、吸引ファン42の作動によって発生した送風を風量調節部材44が用紙Pの厚みに応じた風量の送風Bに調節してプレスローラー10側から版胴2側に向けて送るので、剥離ファン28からの送風Aによって用紙Pが排紙搬送部材29の下側へ潜り込むことを防止でき、巻き上がり及び巻き下がりの発生を防止して版胴2からの用紙Pの剥離を良好に行うことができる。
【0052】
上記各実施例では、用紙Pの厚みを用紙厚み検出手段21によって検出し、この用紙Pの厚みに応じて送風ファン駆動モーター36の出力及び風量調節部材44の位置を変化させ、送風ファン35及び吸引ファン42からの送風Bの風量を変化させることにより、用紙Pの厚み、すなわち腰に応じて変化する下方への湾曲を防止して排紙搬送部材29,38下方への潜り込みを防止する構成としたが、読み取られた原稿画像を画像データ信号として格納する図示しない画像メモリに接続されマスタに製版される製版画像量を検知する製版画像量検知手段を設け、この製版画像量に応じて上述と同様に送風Bの風量を変化させる構成を採用してもよい。この場合、製版画像量が多い場合には送風Bの風量が送風Aの風量の10%となるように、製版画像量が中程度の場合には送風Bの風量が送風Aの風量の20%となるように、製版画像量が少ない場合には送風Bの風量が送風Aの風量の30%となるように、図示しない制御手段によってそれぞれ制御する。これは、製版画像量が少なければ少ない程、版胴2の外周面上のマスタ14から用紙Pが剥離され易くなるため、用紙Pが送風Aの影響により排紙搬送部材29の下側に潜り込み易くなるためである。なお、用紙厚み検出手段と製版画像量検知手段の双方を並設することにより、よりきめの細かい制御を行うことが可能となる。
【0053】
上記各実施例及び変形例では、用紙Pの厚みあるいは製版画像量に応じて変化する補助送風手段の風量を3段階としたが、これをさらに他段階とすることにより、より一層きめの細かい制御を行うことができ、巻き上がり及び巻き下がりの発生を確実に防止して排紙不良を排除した良好な孔版印刷装置を提供することが可能となる。
【0054】
【発明の効果】
本発明によれば、版胴外周面上のマスタと用紙先端との間に向けて送風を行う送風手段と、プレスローラー側から版胴側に向けて送風を行う補助送風手段とを用いることにより、巻き上がり及び巻き下がりの発生を防止して版胴からの用紙の剥離を良好に行うことが可能な孔版印刷装置を提供することができる。
【0055】
また、補助送風手段の風量を用紙の厚みあるいはマスタに形成される製版画像量のうちの少なくとも1つに応じて変化させることにより、用紙が排紙搬送部材の下側へと潜り込むことをきめ細かく防止することができ、巻き下がりの発生をより一層防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例を採用した孔版印刷装置の概略正面図である。
【図2】本発明の第2の実施例を採用した孔版印刷装置の概略正面図である。
【符号の説明】
1,37 孔版印刷装置
2 版胴
10 プレスローラー
14 マスタ
21 用紙厚み検出手段
26 剥離部材
28 送風手段(剥離ファン)
35 補助送風手段(送風ファン)
38 排紙搬送部材
41 搬送ベルト(無端ベルト)
42 吸引ファン
44 風量調節部材
P 用紙
【発明の属する技術分野】
本発明は、版胴の外周面に製版されたマスタを巻装して印刷を行う孔版印刷装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
多孔性の支持円筒体である多孔性支持板の周面に樹脂あるいは金属網体のメッシュスクリーンを複数層巻装してなる回転自在な版胴と、熱可塑性樹脂フィルム(厚み1〜3μm程度のものが一般的に用いられる)と和紙繊維あるいは合成繊維あるいは和紙繊維と合成繊維とを混抄したものとを貼り合わせてなるラミネート構造のマスタとを用い、マスタの熱可塑性樹脂フィルム面をサーマルヘッド等により加熱穿孔製版した後に版胴に巻装し、版胴内部に設けられたインキ供給手段よりインキを供給しつつプレスローラー等の押圧手段によって給紙手段より給送された用紙を版胴外周面上の製版済みマスタに連続的に押圧することにより、版胴開孔部及びマスタ穿孔部よりインキを滲出させて用紙に転写することで印刷を行う感熱デジタル孔版印刷装置が一般的に知られている。
【0003】
このような押圧手段としてプレスローラーを用いる孔版印刷装置では、版胴内部より供給されるインキの粘着力によって版胴外周面上のマスタに貼り付いた用紙を剥離させるものとして剥離爪が用いられている。この剥離爪は、樹脂製で20mm程度の幅を有し鋭角上に尖った先端部を有するものが一般的であり、これが版胴の軸方向に複数個配設されている。各剥離爪は、自身の腰によってマスタ上より浮き上がった用紙とマスタとの間にその先端部を挿入して用紙の分離を行っている。
【0004】
しかし、インキの流動性が向上する高温環境下での印刷時には版胴開孔部を介してマスタ穿孔部から滲出するインキ量が増加し、特に画像先端部にべた画像部が存在しかつ印刷速度が高速の場合等には、インキの粘着力が増加すると共にプレスローラーによりマスタに押圧された用紙の先端が剥離爪に到達するまでの時間が短くなって用紙の浮き上がり量が少なくなることも重なり、自身の腰だけでは用紙先端がマスタより浮き上がれなくなるという状態が生じる。この状態では剥離爪が用紙とマスタとの間に入り込めないため、用紙が剥離爪で剥離されずに版胴に貼り付いて排紙されない、いわゆる巻き上がりという不具合が発生してしまう。
【0005】
また、マスタを構成している熱可塑性樹脂フィルム(一般的にポリエステルあるいはポリエチレンテレフタラート樹脂)は高絶縁体であり、静電気が逃げにくい低温環境下では高絶縁体である熱可塑性樹脂フィルムと用紙との接触等により発生した静電気が蓄積され、用紙がさらにマスタに貼り付き易くなって巻き上がりが発生してしまうという問題点があった。
そこで、剥離爪による用紙の剥離を補助するため、剥離爪の近傍に送風手段を設けて版胴に向けて送風を行い、用紙先端をマスタから浮き上がらせて用紙の剥離を行う技術が、例えば特許第2598790号公報に開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記公報に開示された技術では送風手段からの送風の風量は条件が最も悪い場合を想定して設定されているために非常に大きく、用紙が薄く非常に用紙自身の腰が弱い場合や用紙先端部に全く画像がない場合等では、送風手段からの送風によって用紙が下方に撓んでしまい、プレスローラーと排紙搬送装置との間に潜って排紙されない、いわゆる巻き下がりという不具合が発生してしまう。
【0007】
本発明は上記問題点を解決し、送風手段を備え巻き上がりの発生を防止することが可能であると共に巻き下がりの発生をも防止可能である孔版印刷装置の提供を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、マスタを巻装する版胴と、前記版胴上の前記マスタに用紙を押圧するプレスローラーと、前記マスタと前記用紙の先端との間に向けて送風を行う送風手段を有し前記マスタより前記用紙を剥離する剥離部材とを具備する孔版印刷装置において、前記プレスローラー側から前記版胴側に向けて送風を行う補助送風手段を有することを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の孔版印刷装置において、さらに前記マスタより剥離された前記用紙を搬送する搬送ベルト及び該搬送ベルト上に前記用紙を吸引する吸引ファンを有する排紙搬送部材を具備し、前記吸引ファンが前記補助送風手段として機能することを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の孔版印刷装置において、さらに前記補助送風手段として機能する前記吸引ファンの風量を調節する風量調節部材を有することを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし請求項3のうちの何れか1つに記載の孔版印刷装置において、さらに前記用紙の厚みを検出する用紙厚み検出手段を有し、前記用紙の厚みが薄くなるに連れて前記補助送風手段の風量を多くすることを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし請求項4のうちの何れか1つに記載の孔版印刷装置において、さらに前記マスタに形成される製版画像量を検知する製版画像量検知手段を有し、前記製版画像量が少なくなるに連れて前記補助送風手段の風量を多くすることを特徴とする。
【0013】
【実施例】
図1は、本発明の第1の実施例を採用した孔版印刷装置の要部概略正面図である。同図において孔版印刷装置1は、図示しない装置本体のほぼ中央部に図示しない版胴駆動手段によって回転駆動される版胴2を有している。版胴2は、その両側縁部を図示しない一対のフランジの各周面にそれぞれ取り付けられた多孔性支持板2aと、多孔性支持板2aの外周に複数層巻装された図示しないメッシュスクリーンとを有しており、多孔性支持板2aには複数の開孔2bを有する開孔部が形成されている。多孔性支持板2aの非開孔部には、版胴2の一母線に沿った平面をなすステージ部3が設けられており、ステージ部3上には支軸4aによって回動自在に支持されたクランパー4が配設されている。クランパー4は版胴2が所定位置を占めたときに図示しない開閉手段によって開閉される。
【0014】
版胴2の内部にはインキ供給手段5が配設されている。インキ供給手段5は、版胴2の支軸を兼用するインキ供給パイプ6、インキローラー7、ドクターローラー8等を有している。
インキ供給パイプ6は図示しない一対のフランジ間に設けられており、図示しない軸受を介して各フランジをそれぞれ回転自在に支持している。インキ供給パイプ6には図示しないインキポンプ及びインキパックが接続されており、図示しないインキポンプの作動により図示しないインキパック内のインキがインキ供給パイプ6に複数設けられたインキ供給孔6aから版胴2の内部に供給される。
【0015】
インキローラー7は、図示しない一対のフランジ間に配設されそれぞれインキ供給パイプ6に固設された図示しない一対の側板間に回転自在に支持されており、図示しない回転駆動手段によって版胴2と同期して同方向に回転駆動される。インキローラー7は、その周面と版胴2の内周面との間に僅かな隙間が生じる位置に配設されている。
【0016】
インキローラー7の近傍にはドクターローラー8が配設されている。ドクターローラー8もインキローラー7と同じ図示しない側板間に回転自在に支持されており、図示しない回転駆動手段によってインキローラー7と同期して逆方向に回転駆動される。ドクターローラー8は、その周面とインキローラー7の周面との間に僅かな隙間が生じる位置に配設されている。
【0017】
インキローラー7とドクターローラー8との近接部には断面楔形状の空間が形成され、この空間にインキ供給孔6aから供給されたインキが溜まることによりインキ溜まり9が形成される。インキ溜まり9のインキは、インキローラー7とドクターローラー8との近接部を通過する際にインキローラー7の周面上に薄層状に供給され、後述するプレスローラー10によって版胴2が押圧された際に、インキローラー7の周面と版胴2の内周面とが接触することにより版胴2の内周面に供給される。
【0018】
版胴2の下方にはプレスローラー10が配設されている。版胴の軸方向長さとほぼ同じ長さを有し芯部10aの周囲にゴム等の弾性体を巻成してなるプレスローラー10は、芯部10aの両端を一対のプレスローラーアーム11の一端間にそれぞれ回転自在に支持されている。板状部材である一対のプレスローラーアーム11は、図示しない装置本体に回動自在に支持されたプレスローラー軸12にそれぞれの他端を固着されており、図示しないプレスローラー揺動手段によってそれぞれ一体的に揺動される。この揺動によりプレスローラー10は、その周面を版胴2の外周面から離間させる図1に示す離間位置と、その周面を所定の押圧力で版胴2の外周面に圧接させる押圧位置とを選択的に占める。
【0019】
版胴2の右上方にはマスタ貯容部材13が配設されている。マスタ貯容部材13は装置本体の図示しない一対の側板にそれぞれ設けられており、熱可塑性樹脂フィルムと多孔性支持体とを貼り合わせてなるマスタ14をロール状に巻成したマスタロール14aの芯部14bを回転自在かつ着脱自在に支持する。
【0020】
マスタ貯容部材13の左方にはプラテンローラー15が配設されている。プラテンローラー15はその軸方向長さがマスタ14の幅とほぼ同じ長さに形成されており、装置本体の図示しない側板間に回転自在に支持されている。プラテンローラー15は図示しないステッピングモーターから駆動力を伝達され、図1において時計回り方向に回転駆動される。
【0021】
プラテンローラー15の下方にはサーマルヘッド16が配設されている。サーマルヘッド16はその幅がプラテンローラー15の軸方向長さよりも大きく形成されており、その上面には複数の発熱素子が配設されている。サーマルヘッド16はその発熱素子面をプラテンローラー15に圧接させるように図示しない付勢手段によって付勢されており、各発熱素子は図示しないサーマルヘッドドライバーによってその作動を個々に制御される。
【0022】
プラテンローラー15及びサーマルヘッド16の左方には切断手段17が配設されている。切断手段17は、図示しない装置本体に固定されその幅がマスタ14の幅よりも長く形成された下刃17aと、下刃17a上をマスタ14の幅方向に移動しつつ回転自在に設けられた上刃17bとを有する周知の構成である。
【0023】
切断手段17の左方にはマスタ搬送ローラー対18が配設されている。マスタ搬送ローラー対18は、共に図示しない側板間に回転自在に支持された駆動ローラー18a及び従動ローラー18bを有しており、図示しないマスタ搬送駆動手段により回転駆動される駆動ローラー18aとこれに圧接された従動ローラー18bとによってマスタ14を挟持して搬送する。
マスタ搬送ローラー対18の左方には、マスタ搬送ローラー対18によって搬送されるマスタ14を版胴2へと案内するガイド板19が配設されている。ガイド板19は図示しない側板間に固定されている。
【0024】
版胴2の右下方にはレジストローラー対20が配設されている。共に図示しない側板間に回転自在に支持された駆動ローラー20a及び従動ローラー20bを有するレジストローラー対20は、図示しないレジスト駆動手段から駆動力を伝達されて回転する駆動ローラー20aとこれに圧接された従動ローラー20bとによって図示しない給紙トレイから給送された用紙Pを一時停止させた後、所定のタイミングで版胴2とプレスローラー10との間に向けて給送する。
【0025】
レジストローラー対20の右方近傍には用紙厚み検出手段21が配設されている。用紙厚み検出手段21は、厚み検出器22、アーム23、ころ24,25等から主に構成されている。内部に可変抵抗器を有する厚み検出器22は図示しない側板に固定されており、可変抵抗器の回転軸にはアーム23の一端が取り付けられている。アーム23の他端にはころ24が回転自在に取り付けられており、ころ24の下方には図示しない側板に回転自在に取り付けられたころ25が配設されている。アーム23には図示しない付勢手段が取り付けられており、ころ24はころ25に所定の圧接力で常時圧接するように構成されている。
【0026】
この構成より、用紙Pが各ころ24,25間に挟持されることでアーム23が可変抵抗器の回転軸を中心に図1において時計回り方向に揺動し、可変抵抗器の回転軸が回動することによりその抵抗値が変化し、これにより用紙Pの厚みが検出される。本実施例では用紙Pの厚みがXmm以上Y(Xよりも大きい値)mm以下の場合を普通紙、Xmm未満の場合を薄紙、Ymmを超える場合を厚紙として定義する。
【0027】
版胴2の左下方には剥離部材26が配設されている。版胴2の外周面上のマスタ14から用紙Pの先端を剥離する剥離部材26は、剥離爪27及び送風手段としての剥離ファン28を有している。剥離爪27は支軸27aによって図示しない装置本体に回動自在に支持されており、図示しない爪揺動手段によって揺動されることにより、断面鋭角状に形成されたその先端部が版胴2の外周面に近接する近接位置と、先端部が版胴2の外周面から離間する離間位置とを選択的に占める。剥離ファン28は剥離爪27の上方近傍に配設されており、図示しない送風駆動手段によって作動される。剥離ファン28からの送風Aは、剥離爪27によって版胴2の外周面上から剥離される用紙Pの先端部に向けて送られ、その風量は用紙Pの先端部近傍にべた画像がある場合でも用紙Pの先端を版胴2の外周面上から浮き上がらせることが可能となる風量に設定されている。
【0028】
剥離部材26の下方には排紙搬送部材29が配設されている。排紙搬送部材29は、駆動ローラー30、従動ローラー31、無端ベルト32、吸引ファン33等を有している。ころ状の駆動ローラー30及び従動ローラー31は、上面の一部が開放された箱形状を呈する図示しない搬送部材本体にそれぞれ回転自在に支持された支軸30a,31aにそれぞれ所定の間隔で複数固着されており、対応する駆動ローラー30と従動ローラー31間にはそれぞれ無端ベルト32が掛け渡されている。各駆動ローラー30は図示しない排紙駆動手段によって支軸30aが回転駆動されることでそれぞれ一体的に回転駆動され、これにより各無端ベルト32が図1の矢印方向に移動される。吸引ファン33は搬送部材本体に取り付けられており、図示しないファン駆動手段によって作動される。吸引ファン33の回転により搬送部材本体内に負圧が発生し、各無端ベルト32上を搬送される用紙Pは各無端ベルト32側に吸引される。
排紙搬送部材29の左方には、排紙搬送部材29によって搬送された用紙Pを積載する排紙トレイ34が配設されている。
【0029】
プレスローラー10と排紙搬送部材29との間の下方には補助送風手段としての送風ファン35が配設されている。送風ファン35は装置本体に図示しないブラケットを介して取り付けられており、出力可変型モーターである送風ファン駆動モーター36によって作動される。送風ファン35からの送風Bは、剥離爪27によって版胴2の外周面上から剥離される用紙Pの先端部に向けて送られ、その風量は剥離ファン28からの送風Aによって版胴2の外周面上から浮き上がった用紙Pの先端が排紙搬送部材29の下側に潜り込むことを防止することが可能となる風量に設定されている。本発明者等の実験により、送風Bの風量を送風Aの風量の10〜30%とすることで版胴2の外周面上から剥離された用紙Pを排紙搬送部材29に対して良好に受け渡すことができるということが確認された。本実施例では、送風ファン駆動モーター36の出力を3段階に変化させ、送風Bの風量を送風Aの風量の10%、20%、30%の3段階に変化させる。
【0030】
上述の構成に基づき、以下に孔版印刷装置1の動作を説明する。
オペレーターにより図示しない画像読取部に印刷すべき原稿がセットされた後、図示しない操作パネル上の製版スタートキーが押下されると、図示しない画像読取部において原稿画像の読取動作が行われる。読み取られた画像は画像データ信号として図示しない画像メモリ内に格納される。また、読取動作と同時に版胴2が回転を開始し、図示しない排版部では版胴2上からの使用済みマスタの排版動作が行われる。版胴2上より剥離された使用済みマスタは、排版部に設けられた図示しない排版ボックス内に廃棄される。排版動作が完了すると版胴2が再び回転を開始し、版胴2は図1に示す給版待機位置で停止する。版胴2が給版待機位置で停止すると図示しない開閉手段が作動し、図1に示すようにクランパー4が開放されて孔版印刷装置1は給版待機状態となる。
【0031】
孔版印刷装置1が給版待機状態となると、続いて製版動作が行われる。クランパー4が開放されると、プラテンローラー15を回転駆動する図示しないステッピングモーター及び駆動ローラー18aが回転駆動され、マスタロール14aからマスタ14が引き出される。引き出されたマスタ14は、サーマルヘッド16の各発熱素子が画像メモリに格納された画像データ信号に基づいて発熱することでその熱可塑性樹脂フィルム面を加熱溶融穿孔され、製版画像を形成される。
【0032】
マスタ14は、サーマルヘッド16により製版されつつプラテンローラー15及びマスタ搬送ローラー対18によって搬送され、ガイド板19に案内されて開放されたクランパー4へと送られる。そして、図示しないステッピングモーターのステップ数よりマスタ14の先端がクランパー4に挟持される所定位置まで到達したと判断されると、図示しない開閉手段が作動してクランパー4が閉じられて版胴2の外周面上に製版されたマスタ14の先端が保持される。
【0033】
その後、版胴2がマスタ14の製版搬送速度と同じ周速度で図1の時計回り方向に回転駆動され、マスタ14の版胴2への巻装動作が行われる。そして、図示しないステッピングモーターのステップ数より1版分の製版が完了したと判断されると、プラテンローラー15及びマスタ搬送ローラー対18の回転が停止すると共に上刃17bが回転移動してマスタ14が切断される。切断されたマスタ14は版胴2の回転によって引き出され、全てのマスタ14が版胴2上に巻装された後に版胴2がホームポジションで停止することにより巻装動作が完了する。
【0034】
巻装動作が完了すると、版胴2が低速で図1の時計回り方向に回転駆動されると共に、図示しない給紙部より1枚の用紙Pが分離給送される。図示しない分離搬送部材により分離給送された用紙Pはその先端を各ころ24,25間に進入させ、これによりアーム23が用紙Pの厚み分だけ図1の時計回り方向に回動され、厚み検出器22によって用紙Pの厚みが検出される。検出された用紙Pの厚みは図示しない制御手段によって普通紙、薄紙、厚紙の何れかに選別され、選別された用紙Pの厚みの情報は図示しない記憶手段に記憶される。
【0035】
用紙厚み検出手段21によりその厚みを検出された用紙Pはさらに図示しない分離搬送部材により搬送され、その先端をレジストローラー対20のニップ部に当接させた状態で一時停止される。一時停止させられた用紙Pは、版胴2上に巻装された製版済みのマスタ14の画像領域先端部がプレスローラー10と対応する位置に達する所定のタイミングでレジストローラー対20が回転駆動することにより、版胴2とプレスローラー10との間に向けて給送される。
【0036】
また、レジストローラー対20の回転時において、図示しない送風駆動手段、排紙駆動手段、ファン駆動手段がそれぞれ作動して剥離ファン28、排紙搬送部材29、吸引ファン33がそれぞれ駆動されると共に、送風ファン駆動モーター36が作動して送風ファン35から送風Bが所定の位置に向けて送られる。このときの送風ファン駆動モーター36の出力は図示しない記憶手段に記憶された用紙Pの厚み情報によって決定され、本実施例の場合、用紙Pの厚みが厚紙の場合には送風Bの風量が送風Aの風量の10%となるように、用紙Pの厚みが普通紙の場合には送風Bの風量が送風Aの風量の20%となるように、用紙Pの厚みが薄紙の場合には送風Bの風量が送風Aの風量の30%となるように、図示しない制御手段によってそれぞれ制御される。これは、用紙Pの厚みが薄ければ薄い程、自身の腰が少なくなるために用紙Pが送風Aの影響を受け易く、排紙搬送部材29の下側に潜り込み易くなるためである。なお、厚紙の場合は用紙P自身の腰が強いため、送風Bの風量を送風Aの風量の10%以下とする構成、あるいは送風ファン35からの送風を行わない構成としてもよい。
【0037】
駆動ローラー20aの回転とほぼ同時にプレスローラー揺動手段が作動してプレスローラー10がその外周面を版胴2の外周面に圧接させ、レジストローラー対20によって給送された用紙Pが版胴2に巻装されたマスタ14に押圧される。この押圧動作によりプレスローラー10と用紙Pとマスタ14と版胴2とが圧接し、インキローラー7によって版胴2の内周面に供給されたインキが版胴2の開孔部より滲出し、多孔性支持板2a、図示しないメッシュスクリーン、及びマスタ14の多孔性支持体に充填された後にマスタ14の穿孔部を介して用紙Pに転写され、いわゆる版付けが行われる。
【0038】
版付けにより画像を転写された用紙Pは、爪揺動手段によって先端部が近接位置を占めた剥離爪27及び剥離ファン28からの送風Aによって版胴2の外周面より剥離されて下方へと落下し、排紙搬送部材29上へと送られる。このとき送風ファン35から送風Bが送られていることにより用紙Pは排紙搬送部材29の下側へと潜り込むことを防止され、巻き下がりの発生が防止される。排紙搬送部材29へと送られた用紙Pは、吸引ファン33の吸引力によって無端ベルト32の上面に引き付けられつつ左方へと搬送され、排紙トレイ34上に排出される。その後、版胴2が再びホームポジションまで回転して停止し、版付け動作を終えて孔版印刷装置1は印刷待機状態となる。
【0039】
版付け動作完了後、印刷条件が設定された後にオペレーターによって図示しない操作パネル上の試し刷りキーが押下されることにより、給紙部より1枚の用紙Pが分離給送されると共に版胴2が設定された印刷速度に対応した周速度で回転駆動される。給送された用紙Pは、版付け時と同様にその厚みを用紙厚み検出手段21において検出された後、レジストローラー対20により所定のタイミングで版胴2とプレスローラー10との間に向けて給送され、プレスローラー10で版胴2の外周面に押圧されることにより画像を転写される。画像転写後の用紙Pは、版付け時と同様に剥離爪27、剥離ファン28、送風ファン35の相互作用によって良好に版胴2の外周面より剥離され、排紙搬送部材29を介して排紙トレイ34上に排出される。
【0040】
試し刷りによって画像位置や画像濃度等が決定されると、これらの印刷条件及び印刷枚数が設定された後にオペレーターによって図示しない印刷スタートキーが押下されることにより、給紙部より用紙Pが連続的に給送されて印刷が行われる。この印刷動作も試し刷り動作と同様に行われ、用紙厚み検出手段21において厚みを検出された用紙Pはレジストローラー対20により所定のタイミングで給送され、プレスローラー10で押圧されることによりその一面に画像を転写される。画像転写後の用紙Pは、試し刷り時と同様に剥離爪27、剥離ファン28、送風ファン35の相互作用によって良好に版胴2の外周面より剥離され、排紙搬送部材29を介して順次排紙トレイ34上に排出される。そして、設定された印刷枚数が消化されると、孔版印刷装置1は停止して再び印刷待機状態となる。
【0041】
上述の版付け時、試し刷り時、及び印刷時において、送風ファン35が用紙Pの厚みに応じた風量の送風Bをプレスローラー10側から版胴2側に向けて送るので、剥離ファン28からの送風Aによって用紙Pが排紙搬送部材29の下側へ潜り込むことを防止でき、巻き上がり及び巻き下がりの発生を防止して版胴2からの用紙Pの剥離を良好に行うことができる。
【0042】
図2は、本発明の第2の実施例を示している。この第2の実施例に示す孔版印刷装置37は、第1の実施例で示した孔版印刷装置1と比較すると、排紙搬送部材29及び送風ファン35に代えて排紙搬送部材38を用いる点においてのみ相違しており、他の構成は同一である。
【0043】
排紙搬送部材38は、駆動ローラー39、従動ローラー40、搬送ベルトとしての無端ベルト41、吸引ファン42、搬送部材本体43、風量調節部材44等を有している。ころ状の駆動ローラー39及び従動ローラー40は、上面の一部が開放されその用紙搬送方向上流側に開口43aを有する箱形状の搬送部材本体43にそれぞれ回転自在に支持された支軸39a,40aにそれぞれ所定の間隔で複数固着されており、対応する駆動ローラー39と従動ローラー40間にはそれぞれ無端ベルト41が掛け渡されている。各駆動ローラー39は図示しない排紙駆動手段によって支軸39aが回転駆動されることでそれぞれ一体的に回転駆動され、これにより各無端ベルト41が図2の矢印方向に移動される。
【0044】
補助送風手段として機能する吸引ファン42は搬送部材本体43に取り付けられており、図示しないファン駆動手段によって作動される。吸引ファン42の下方に位置する搬送部材本体43の開口43a近傍の位置には、吸引ファン42の作動によって発生し、開口43aから剥離爪27によって版胴2の外周面上から剥離される用紙Pの先端部に向けて送られる送風Bの風量を調節するための風量調節部材44が配設されている。風量調節部材44は、図示しないモーター等の調節手段によって、図2に実線で示す全閉位置と図2に二点鎖線で示す全開位置との間で無段階に開閉される。
【0045】
上述の構成に基づき、以下に孔版印刷装置37の動作を説明する。
オペレーターにより図示しない画像読取部に印刷すべき原稿がセットされた後、図示しない操作パネル上の製版スタートキーが押下されると、第1の実施例と同様に原稿画像の読取動作及び排版動作が行われて孔版印刷装置37は給版待機状態となる。その後、これに続いて第1の実施例と同様に製版動作及び巻装動作が行われ、版胴2の外周面上に製版済みのマスタ14が巻装される。
【0046】
巻装動作が完了すると、版胴2が低速で図2の時計回り方向に回転駆動されると共に、図示しない給紙部より1枚の用紙Pが給送される。分離給送された用紙Pはその厚みを用紙厚み検出手段21によって検出された後、レジストローラー対20で一時停止させられる。検出された用紙Pの厚み情報は図示しない記憶手段に記憶される。
【0047】
その後、第1の実施例と同様の所定のタイミングでレジストローラー対20が作動し、用紙Pが版胴2とプレスローラー10との間に向けて給送される。このとき図示しない排紙駆動手段及びファン駆動手段がそれぞれ作動して駆動ローラー39a及び吸引ファン42がそれぞれ駆動されると共に、図示しない調節手段が作動して風量調節部材44が所定の位置に位置決めされる。このときに風量調節部材44が位置決めされる所定の位置は図示しない記憶手段に記憶された用紙Pの厚み情報によって決定され、本実施例の場合、用紙Pの厚みが厚紙の場合は送風Bの風量が送風Aの風量の10%となるように、用紙Pの厚みが普通紙の場合には送風Bの風量が送風Aの風量の20%となるように、用紙Pの厚みが薄紙の場合には送風Bの風量が送風Aの風量の30%となるように、風量調節部材44の位置が図示しない制御手段によってそれぞれ制御される。
【0048】
レジストローラー対20の作動とほぼ同時にプレスローラー揺動手段が作動してプレスローラー10が揺動され、給送された用紙Pが版胴2上のマスタ14に押圧されて版付けが行われる。画像を転写された用紙Pは剥離部材26によって版胴2の外周面より剥離され、排紙搬送部材38上へと送られる。このとき開口43aから送風Bが送られていることにより用紙Pは排紙搬送部材38の下側へと潜り込むことを防止され、巻き下がりの発生が防止される。排紙搬送部材38へと送られた用紙Pは、吸引ファン42の吸引力によって無端ベルト41の上面に引き付けられつつ左方へと搬送され、排紙トレイ34上に排出される。その後、版胴2が再びホームポジションまで回転して停止し、版付け動作を終えて孔版印刷装置37は印刷待機状態となる。
【0049】
版付け動作後、印刷条件設定後にオペレーターによって図示しない操作パネル上の試し刷りキーが押下されると、給紙部より1枚の用紙Pが分離給送されると共に版胴2が設定された印刷速度に対応した周速度で回転駆動されて試し刷りが行われる。給送された用紙Pは、版付け時と同様にその厚みを検出された後に所定のタイミングで給送され、版胴2の外周面に押圧されることにより画像を転写される。画像転写後の用紙Pは、版付け時と同様に剥離爪27、剥離ファン28、吸引ファン42の相互作用によって良好に版胴2の外周面より剥離され、排紙搬送部材38を介して排紙トレイ34上に排出される。
【0050】
試し刷り後、印刷条件及び印刷枚数が設定された後にオペレーターによって図示しない印刷スタートキーが押下されることにより、給紙部より用紙Pが連続的に給送されて印刷が行われる。この印刷動作も試し刷り動作と同様に行われ、厚みを検出された用紙Pはレジストローラー対20により所定のタイミングで給送され、プレスローラー10で押圧されることによりその一面に画像を転写される。画像転写後の用紙Pは、試し刷り時と同様に剥離爪27、剥離ファン28、吸引ファン42の相互作用によって良好に版胴2の外周面より剥離され、排紙搬送部材38を介して順次排紙トレイ34上に排出される。そして、設定された印刷枚数が消化されると、孔版印刷装置37は停止して再び印刷待機状態となる。
【0051】
上述の版付け時、試し刷り時、及び印刷時において、吸引ファン42の作動によって発生した送風を風量調節部材44が用紙Pの厚みに応じた風量の送風Bに調節してプレスローラー10側から版胴2側に向けて送るので、剥離ファン28からの送風Aによって用紙Pが排紙搬送部材29の下側へ潜り込むことを防止でき、巻き上がり及び巻き下がりの発生を防止して版胴2からの用紙Pの剥離を良好に行うことができる。
【0052】
上記各実施例では、用紙Pの厚みを用紙厚み検出手段21によって検出し、この用紙Pの厚みに応じて送風ファン駆動モーター36の出力及び風量調節部材44の位置を変化させ、送風ファン35及び吸引ファン42からの送風Bの風量を変化させることにより、用紙Pの厚み、すなわち腰に応じて変化する下方への湾曲を防止して排紙搬送部材29,38下方への潜り込みを防止する構成としたが、読み取られた原稿画像を画像データ信号として格納する図示しない画像メモリに接続されマスタに製版される製版画像量を検知する製版画像量検知手段を設け、この製版画像量に応じて上述と同様に送風Bの風量を変化させる構成を採用してもよい。この場合、製版画像量が多い場合には送風Bの風量が送風Aの風量の10%となるように、製版画像量が中程度の場合には送風Bの風量が送風Aの風量の20%となるように、製版画像量が少ない場合には送風Bの風量が送風Aの風量の30%となるように、図示しない制御手段によってそれぞれ制御する。これは、製版画像量が少なければ少ない程、版胴2の外周面上のマスタ14から用紙Pが剥離され易くなるため、用紙Pが送風Aの影響により排紙搬送部材29の下側に潜り込み易くなるためである。なお、用紙厚み検出手段と製版画像量検知手段の双方を並設することにより、よりきめの細かい制御を行うことが可能となる。
【0053】
上記各実施例及び変形例では、用紙Pの厚みあるいは製版画像量に応じて変化する補助送風手段の風量を3段階としたが、これをさらに他段階とすることにより、より一層きめの細かい制御を行うことができ、巻き上がり及び巻き下がりの発生を確実に防止して排紙不良を排除した良好な孔版印刷装置を提供することが可能となる。
【0054】
【発明の効果】
本発明によれば、版胴外周面上のマスタと用紙先端との間に向けて送風を行う送風手段と、プレスローラー側から版胴側に向けて送風を行う補助送風手段とを用いることにより、巻き上がり及び巻き下がりの発生を防止して版胴からの用紙の剥離を良好に行うことが可能な孔版印刷装置を提供することができる。
【0055】
また、補助送風手段の風量を用紙の厚みあるいはマスタに形成される製版画像量のうちの少なくとも1つに応じて変化させることにより、用紙が排紙搬送部材の下側へと潜り込むことをきめ細かく防止することができ、巻き下がりの発生をより一層防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例を採用した孔版印刷装置の概略正面図である。
【図2】本発明の第2の実施例を採用した孔版印刷装置の概略正面図である。
【符号の説明】
1,37 孔版印刷装置
2 版胴
10 プレスローラー
14 マスタ
21 用紙厚み検出手段
26 剥離部材
28 送風手段(剥離ファン)
35 補助送風手段(送風ファン)
38 排紙搬送部材
41 搬送ベルト(無端ベルト)
42 吸引ファン
44 風量調節部材
P 用紙
Claims (5)
- マスタを巻装する版胴と、前記版胴上の前記マスタに用紙を押圧するプレスローラーと、前記マスタと前記用紙の先端との間に送風を行う送風手段を有し前記マスタより前記用紙を剥離する剥離部材とを具備する孔版印刷装置において、
前記プレスローラー側から前記版胴側に向けて送風を行う補助送風手段を有することを特徴とする孔版印刷装置。 - 前記マスタより剥離された前記用紙を搬送する搬送ベルト及び該搬送ベルト上に前記用紙を吸引する吸引ファンを有する排紙搬送部材を具備し、前記吸引ファンが前記補助送風手段として機能することを特徴とする請求項1記載の孔版印刷装置。
- 前記補助送風手段として機能する前記吸引ファンの風量を調節する風量調節部材を有することを特徴とする請求項2記載の孔版印刷装置。
- 前記用紙の厚みを検出する用紙厚み検出手段を有し、前記用紙の厚みが薄くなるに連れて前記補助送風手段の風量を多くすることを特徴とする請求項1ないし請求項3のうちの何れか1つに記載の孔版印刷装置。
- 前記マスタに形成される製版画像量を検知する製版画像量検知手段を有し、前記製版画像量が少なくなるに連れて前記補助送風手段の風量を多くすることを特徴とする請求項1ないし請求項4のうちの何れか1つに記載の孔版印刷装置。
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