JP5000034B2 - 回転ガス圧縮機用潤滑油組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は回転ガス圧縮機に使用される潤滑油組成物に関し、詳しくはミスト分離能力がストレーミスト量0.02g/Nm3未満であるミスト分離フィルタを装備した回転ガス圧縮機に使用される潤滑油組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
空気、窒素ガス、酸素ガス、アンモニアガス、炭酸ガス、炭化水素ガス、燃焼排ガス、燃焼ガス等のガス状物質の圧縮を目的とするベーン型、スクリュー型、スクロール型等の回転圧縮機に使用される潤滑油(圧縮機油とも称される)は、従来より、▲1▼ 酸化安定性の向上、 ▲2▼ スラッジ発生の低減、 に力点を置いた開発が進められてきた。
従来の回転ガス圧縮機用潤滑油は、RBOT値約25分、硫黄分含有量1質量ppm程度の高度精製鉱油などの基油に、ヒンダートフェノール系酸化防止剤又は芳香族アミン系酸化防止剤を配合したものが多く、基油の性状を勘案した酸化防止剤の選択により、潤滑油内に発生するスラッジ量は極限まで低減されてきた。
従って、回転ガス圧縮機のミスト分離機構に課する条件が比較的緩慢で、ストレーミスト量が0.02g/Nm3以上であり、しかもオイル交換のインターバルが3000〜6000時間程度と比較的短い場合は、上記した従来の潤滑油でも、充分その役割を全うすることができた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、回転ガス圧縮機用潤滑油の寿命は、その酸化安定性に比例するので、潤滑油の寿命を延ばすためには、潤滑油の酸化安定性を向上させる必要がある。
従来の潤滑油は、これに使用する基油の酸化安定性に限界があるため、その酸化安定性を向上させるためには、基油に配合する酸化安定剤の増量に頼らざるを得ない。しかし、酸化安定剤の増量は、必然的にスラッジを増加させる結果を招き、これに原因して回転ガス圧縮機に設置された各種フィルターが目詰まりを起す虞がある。
特に、近年は圧縮ガス中のミストを嫌うクリーン指向が強まり、圧縮ガス中のストレーミスト量が0.02g/Nm3未満に規制されることも珍しくないが、この種の回転ガス圧縮機では、スラッジの増加によってミスト分離機構のフィルターが閉塞されてしまう頻度は著しく増大する。
従って、ストレーミスト量0.02g/Nm3未満の条件を満たすミスト分離機構を備えた回転ガス圧縮機用の潤滑油として、あるいはオイル交換インターバルを従来の3000〜6000時間から6000〜12000時間に延長できる潤滑油として、従来の回転ガス圧縮機用潤滑油を使用することは事実上不可能であった。
本発明の目的は、オイル交換インターバルを6000〜12000時間程度に延長できる酸化安定性を付与することが可能であり、しかも、ストレーミスト量を0.02g/Nm3未満に抑えることができるミスト分離機構を備えた回転ガス圧縮機に使用しても、ミスト分離フィルタを目詰まりさせることのない回転ガス圧縮機用潤滑油を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る潤滑油組成物は、ストレーミスト量を0.02g/Nm未満に維持できるミスト分離フィルタを備えた回転ガス圧縮機に使用される潤滑油組成物であって、(A)当該潤滑油組成物の基油のRBOT値が50分以上であり、且つ、硫黄分含有量が0.09質量%未満であり、(B)当該潤滑油組成物がリン酸エステルを含有していることを特徴とする。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の潤滑油組成物において、その基油としては、RBOT値が50分以上、好ましくは60分以上であり、硫黄分含有量が0.09質量%未満、好ましくは0.05質量%未満、より好ましくは0.01質量%未満である鉱油及び/又は合成油が使用される。
基油のRBOT値及び硫黄分含有量は、酸化安定性に優れ、しかもスラッジ生成の少ない潤滑油組成物を得るための重要な条件である。ちなみに、RBOT値50分未満又は硫黄分含有量0.09質量%以上の基油を使用した場合には、圧縮機油に必要な酸化安定性を確保するために、これに比較的多量の酸化防止剤を配合しなければならないことから、スラッジの発生が増加する虞がある。
なお、ここでいうRBOT値とは、JIS K2514−1993「潤滑油−酸化安定度試験方法」の「6.回転ボンベ式酸化安定度試験方法」に準拠して測定される値を意味し、また、硫黄分含有量とは、JIS K2541−1996「原油及び石油製品−硫黄分試験方法」の「4.微量電量滴定式酸化法」に準拠して測定される値を意味する。
硫黄分含有量はともかく、RBOT値が50分以上である鉱油は、事実上、これを取得することが困難であるので、本発明の潤滑油組成物の基油は、通常、合成油のみか、あるいは合成油と鉱油の混合物からなる。しかし、基油に使用する鉱油は単種である必要はなく、同様にして合成油も単種である必要なない。そして、基油に使用する個々の鉱油及び/又は合成油は、個々に上記したRBOT値及び硫黄分含有量の関する上記の規定を満たしている必要はなく、混合後の油のRBOT値が50分以上で、硫黄分含有量が0.09質量%以下あればよい。
基油に使用可能な鉱油としては、例えば、原油を常圧蒸留および減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理等の精製処理などを適宜組み合わせて精製したパラフィン系、ナフテン系などの油を挙げることができる。
また、基油に使用可能な合成油としては、例えば、プロピレンオリゴマー、ポリブテン、ポリイソブチレン、1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー、エチレンとプロピレンのコオリゴマー、エチレンと1−オクテンのコオリゴマー、エチレンと1−デセンのコオリゴマー等のポリα−オレフィン又はそれらの水素化物;イソパラフィン;モノアルキルベンゼン、ジアルキルベンゼン、ポリアルキルベンゼン等のアルキルベンゼン、モノアルキルナフタレン、ジアルキルナフタレン、ポリアルキルナフタレン等のアルキルナフタレン;ジオクチルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート、ジトリデシルグルタレート等の二塩基酸エステル;トリメリット酸エステル等の三塩基酸エステル;トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等のポリオールエステル;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンオキシプロピレングリコール、ポリエチレングリコールモノエーテル、ポリプロピレングリコールモノエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレングリコールモノエーテル、ポリエチレングリコールジエーテル、ポリプロピレングリコールジエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレングリコールジエーテル等のポリグリコール;モノアルキルジフェニルエーテル、ジアルキルジフェニルエーテル、モノアルキルトリフェニルエーテル、ジアルキルトリフェニルエーテル、テトラフェニルエーテル、モノアルキルテトラフェニルエーテル、ジアルキルテトラフェニルエーテル、ペンタフェニルエーテル等のフェニルエーテル;シリコーン油;パーフルオロエーテル等のフルオロエーテル;等を例示することができる。
【0006】
本発明で使用する基油としては、硫黄分を通常含まず、基油自体の酸化安定性が優れている点で、
(A−1)アルキル基を少なくとも1個以上有するアルキルナフタレン、
(A−2)アルキル基を少なくとも1個以上有するアルキルフェニルエーテル、
(A−3)シリコーン油
(A−4)フルオロエーテル
の群から選ばれる合成油の1種又は2種以上を使用することが好ましい。
(A−1)に属する合成油としては、炭素数1〜24、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基を1〜7個、好ましくは1〜4個有するアルキルナフタレンが挙げられる。
アルキルナフタレンのアルキル基は直鎖状でも分枝状でも良く、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、直鎖状又は分枝状ペンチル基、直鎖状又は分枝状ヘキシル基、直鎖状又は分枝状ヘプチル基、直鎖状又は分枝状オクチル基、直鎖状又は分枝状ノニル基、直鎖状又は分枝状デシル基、直鎖状又は分枝状ウンデシル、直鎖状又は分枝状ドデシル基、直鎖状又は分枝状トリデシル基、直鎖状又は分枝状テトラデシル基、直鎖状又は分枝状ペンタデシル基、直鎖状又は分枝状ヘキサデシル基、直鎖状又は分枝状ヘプタデシル基、直鎖状又は分枝状オクタデシル基、直鎖状又は分枝状ノナデシル基、直鎖状又は分枝状イコシル基、直鎖状又は分枝状ヘンイコシル基、直鎖状又は分枝状ドコシル基、直鎖状又は分枝状トリコシル基、直鎖状又は分枝状テトラコシル基などが挙げられる。
アルキルナフタレンのなかでも、潤滑性および冷却性に優れる点から、炭素数8〜20の直鎖状又は分枝状長鎖アルキル基を少なくとも1個以上有するものが好ましく、特に炭素数8〜20の直鎖状又は分枝状長鎖アルキル基を1個有するモノ長鎖アルキルナフタレン、モノ長鎖アルキルメチルナフタレン、モノ長鎖アルキルジメチルナフタレン;炭素数8〜20の直鎖状又は分枝状長鎖アルキル基を2個有するジ長鎖アルキルナフタレン、ジ長鎖アルキルメチルナフタレン、炭素数8〜20の直鎖状又は分枝状長鎖アルキル基を3個有するトリ長鎖アルキルナフタレン、トリ長鎖アルキルメチルナフタレン、炭素数8〜20の直鎖状又は分枝状長鎖アルキル基を4個有するテトラ長鎖アルキルナフタレン、テトラ長鎖アルキルメチルナフタレンなどが好ましい。
【0007】
(A−2)に属する合成油としては、炭素数1〜24、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基を1〜7個、好ましくは1〜4個有するアルキルフェニルエーテルが挙げられ、当該フェニルエーテル骨格としては、ジフェニルエーテル、トリフェニルエーテルおよびテトラフェニルエーテルが好ましく用いられる。
アルキルフェニルエーテルのアルキル基は、直鎖状でも分枝状でも良く、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、直鎖状又は分枝状ペンチル基、直鎖状又は分枝状ヘキシル基、直鎖状又は分枝状ヘプチル基、直鎖状又は分枝状オクチル基、直鎖状又は分枝状ノニル基、直鎖状又は分枝状デシル基、直鎖状又は分枝状ウンデシル、直鎖状又は分枝状ドデシル基、直鎖状又は分枝状トリデシル基、直鎖状又は分枝状テトラデシル基、直鎖状又は分枝状ペンタデシル基、直鎖状又は分枝状ヘキサデシル基、直鎖状又は分枝状ヘプタデシル基、直鎖状又は分枝状オクタデシル基、直鎖状又は分枝状ノナデシル基、直鎖状又は分枝状イコシル基、直鎖状又は分枝状ヘンイコシル基、直鎖状又は分枝状ドコシル基、直鎖状又は分枝状トリコシル基、直鎖状又は分枝状テトラコシル基などが挙げられる。
アルキルフェニルエーテルのなかでも、潤滑性および冷却性に優れる点から、炭素数8〜20の直鎖状又は分枝状長鎖アルキル基を少なくとも1個以上有するものが好ましく、特に炭素数8〜20の直鎖状又は分枝状長鎖アルキル基を1個有するモノ長鎖アルキルジフェニルエーテル、モノ長鎖アルキルトリフェニルエーテル、モノ長鎖アルキルテトラフェニルエーテル;炭素数8〜20の直鎖状又は分枝状長鎖アルキル基を2個有するジ長鎖アルキルジフェニルエーテル、ジ長鎖アルキルトリフェニルエーテル、ジ長鎖アルキルテトラフェニルエーテル;炭素数8〜20の直鎖状又は分枝状長鎖アルキル基を3個有するトリ長鎖アルキルジフェニルエーテル、トリ長鎖アルキルトリフェニルエーテル、トリ長鎖アルキルテトラフェニルエーテル;炭素数8〜20の直鎖状又は分枝状長鎖アルキル基を4個有するテトラ長鎖アルキルジフェニルエーテル、テトラ長鎖アルキルトリフェニルエーテル、テトラ長鎖アルキルテトラフェニルエーテルなどが好ましい。
【0008】
(A−3)のシリコーン油には、各種構造のものが使用可能であるが、好ましくは下記の一般式(1)で表されるジアルキルポリシロキサンの1種又は2種以上が用いられる。
【化1】
Figure 0005000034
上記(1)式中、R1〜R4はそれぞれ個別に、炭素数1〜4の直鎖状又は分枝状のアルキル基を示し、aは2以上、好ましくは2〜200の整数を示している。
1〜R4としては、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が例示でき、これらの中でもメチル基又はエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
(A−4)のフルオロエーテルにも、各種構造のものが使用可能であるが、好ましくは下記の一般式(2)で表されるパーフルオロエーテルの1種又は2種以上が用いられる。
【化2】
Figure 0005000034
上記(2)式中、R5及びR6はそれぞれ個別に、フッ素原子又は炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のパーフルオロアルキル基を示し、R7は炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のパーフルオロアルキレン基を示し、bは2以上の整数を示す。
パーフルオロアルキル基としては、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、n−パーフルオロプロピル基、イソパーフルオロプロピル基、n−パーフルオロブチル基、イソパーフルオロブチル基、sec−パーフルオロブチル基、tert−パーフルオロブチル基が例示でき、パーフルオロアルキレン基としては、パーフルオロメチレン基、パーフルオロエチレン基、パーフルオロトリメチレン基、パーフルオロプロピレン基、パーフルオロテトラメチレン基、パーフルオロブチレン基、パーフルオロ−1,2−ジメチルエチレン基、パーフルオロ−1−メチルトリメチレン基、パーフルオロ−2−メチルトリメチレン基等が例示できる。
5及びR6はそれぞれ個別に、フッ素原子、パーフルオロメチル基又はパーフルオロエチル基であることが好ましく、フッ素原子又はパーフルオロメチル基であることがより好ましい。
一般式(2)で示すパーフルオロエーテルは、1分子中に異なった構造のオキシパーフルオロアルキレン基、例えば、オキシパーフルオロメチレン基とオキシパーフルオロプロピレン基が共存して差し支えない。その場合、異なった構造のオキシパーフルオロアルキレン基は、ランダム共重合していても、交互共重合していても、またブロック共重合していても良い。
【0009】
本発明において使用する基油は、その粘度に特に条件はない。しかし、潤滑性、冷却性(熱除去性)、熱安定性に優れ、かつ攪拌抵抗による摩擦ロスが少ない等の点から、通常、基油の40℃における動粘度は、好ましくは5〜150mm2/s、より好ましくは10〜110mm2/sの範囲にあることが望ましい。
【0010】
本発明の回転ガス圧縮機用潤滑油組成物は、必須の添加剤としてリン系化合物を化合物(以下、これを(B)成分と呼ぶ)を含有する。組成物に含まれる(B)成分の下限値は、組成物全量基準で0.0001質量%、好ましくは0.01質量%であり、一方、その上限値は、組成物全量基準で10質量%、好ましくは6質量%である。(B)成分の含有量が組成物全量基準で0.0001質量%に満たない場合は、潤滑性向上効果に乏しく、一方、含有量が組成物全量基準で10質量%を越える場合は、圧縮機内部の腐食磨耗の虞がある。
本発明で使用可能な(B)成分は、下記の一般式(3)で表される亜リン酸エステル及びその誘導体、一般式(4)で表されるリン酸エステル及びその誘導体並びに後記の一般式(5)で表されるチオリン酸亜鉛から選ばれる。
【化3】
Figure 0005000034
上記の式(3)中、R8、R9及びR10の少なくとも一つは、炭素数1〜30の炭化水素基を示し、残りはそれぞれ個別に、水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示す。また、X1、X2、X3及びX4は、それぞれ個別に、酸素原子又は硫黄原子を示す。
【化4】
Figure 0005000034
上記の式(4)中、R11、R12及びR13の少なくとも一つは、炭素数1〜30の炭化水素基を示し、残りはそれぞれ個別に、水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示し、X5、X6及びX7は、それぞれ個別に、酸素原子又は硫黄原子を示す。
上述したとおり、一般式(3)におけるR8、R9及びR10の少なくとも一つは、炭素数1〜30の炭化水素基であるが、炭素数1〜18の炭化水素基であることが好ましく、炭素数4〜18の炭化水素基であることがより好ましく、炭素数6〜18の炭化水素基であることが最も好ましい。そして、R8、R9及びR10のいずれか一つ又は二つは、水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基であって差し支えないが、水素原子又は炭素数1〜18の炭化水素基が好ましく、水素原子又は炭素数4〜18の炭化水素基がより好ましく、水素原子又は炭素数6〜18の炭化水素基が最も好ましい。
同様にして、一般式(4)におけるR11、R12及びR13の少なくとも一つは、炭素数1〜30の炭化水素基であるが、炭素数1〜18の炭化水素基であることが好ましく、炭素数4〜18の炭化水素基であることがより好ましく、炭素数6〜18の炭化水素基であることが最も好ましい。そして、R8、R9及びR10のいずれか一つ又は二つは、水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基であって差し支えないが、水素原子又は炭素数1〜18の炭化水素基が好ましく、水素原子又は炭素数4〜18の炭化水素基がより好ましく、水素原子又は炭素数6〜18の炭化水素基が最も好ましい。
一般式(3)及び(4)におけるR8〜R12のいずれかの炭化水素基の炭素数が30を超える場合は、潤滑油組成物の潤滑性を悪化させるので好ましくない。
【0011】
8〜R12がとり得る炭化水素基を具体的に例示すれば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、トリアコンチル基等のアルキル基(これらアルキル基は直鎖状でも分枝状でも良い);ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基、テトラコセニル基、ペンタコセニル基、ヘキサコセニル基、ヘプタコセニル基、オクタコセニル基、ノナコセニル基、トリアコンテニル基等のアルケニル基(これらアルケニル基は直鎖状でも分枝状でも良く、また二重結合の位置も任意である);シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の炭素数5〜7のシクロアルキル基;メチルシクロペンチル基、ジメチルシクロペンチル基、メチルエチルシクロペンチル基、ジエチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、メチルエチルシクロヘキシル基、ジエチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘプチル基、ジメチルシクロヘプチル基、メチルエチルシクロヘプチル基、ジエチルシクロヘプチル基等の炭素数6〜11のアルキルシクロアルキル基(アルキル基の置換位置は任意である);フェニル基、ナフチル基等のアリール基:トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、ドデシルフェニル基等の炭素数7〜18の各アルキルアリール基(アルキル基は直鎖状でも分枝状でも良く、また二重結合の位置も任意である);ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基等の炭素数7〜12の各アリールアルキル基(アルキル基は直鎖状でも分枝状でも良く,またアリール基の置換位置も任意である)等が挙げられるが、これらの中でもアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアルキルアリール基であるのが好ましい。
一般式(3)で表されるリン酸エステル及び一般式(4)で表される亜リン酸エステルは、いずれもその1種又は2種以上を(B)成分として使用可能である。
【0012】
一般式(3)で表されるリン酸エステルの誘導体並びに一般式(4)で表される亜リン酸エステルの誘導体の1種又は2種以上も、また、本発明の(B)成分として使用することができる。ここでいう誘導体とは、一般式(3)のR8〜R10のいずれか一つ又は二つが水素である酸性リン酸エステル若しくは一般式(4)のR11〜R13のいずれか一つ又は二つが水素である酸性亜リン酸エステルに、アンモニア若しくは下記に例示する炭素数1〜16のアミン化合物を作用させて、残存する酸性水素の一部又は全部を中和した塩を言う。
この中和反応には、アンモニアが使用できるほか、モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノプロピルアミン、モノブチルアミン、モノペンチルアミン、モノヘキシルアミン、モノヘプチルアミン、モノオクチルアミン、ジメチルアミン、メチルエチルアミン、ジエチルアミン、メチルプロピルアミン、エチルプロピルアミン、ジプロピルアミン、メチルブチルアミン、エチルブチルアミン、プロピルブチルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン等のアルキルアミン(アルキル基は直鎖状でも分枝状でも良い);モノメタノールアミン、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、モノブタノールアミン、モノペンタノールアミン、モノヘキサノールアミン、モノヘプタノールアミン、モノオクタノールアミン、モノノナノールアミン、ジメタノールアミン、メタノールエタノールアミン、ジエタノールアミン、メタノールプロパノールアミン、エタノールプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、メタノールブタノールアミン、エタノールブタノールアミン、プロパノールブタノールアミン、ジブタノールアミン、ジペンタノールアミン、ジヘキサノールアミン、ジヘプタノールアミン、ジオクタノールアミン等のアルカノールアミン(アルカノール基は直鎖状でも分枝状でも良い)などの1種又は2種以上が使用できる。
【0013】
(B)成分として使用して好適なリン酸エステルの具体例を摘記すると、モノブチルホスフェート、モノペンチルホスフェート、モノヘキシルホスフェート、モノペプチルホスフェート、モノオクチルホスフェート、モノノニルホスフェート、モノデシルホスフェート、モノウンデシルホスフェート、モノドデシルホスフェート、モノトリデシルホスフェート、モノテトラデシルホスフェート、モノペンタデシルホスフェート、モノヘキサデシルホスフェート、モノヘプタデシルホスフェート、モノオクタデシルホスフェート、モノノナデシルホスフェート、モノイコシルホスフェート、モノヘンイコシルホスフェート、モノドコシルホスフェート、モノトリコシルホスフェート、モノテトラコシルホスフェート等のモノアルキルホスフェート(アルキル基は直鎖状でも分枝状でも良い。);モノオクタデセニルホスフェート等のモノアルケニルホスフェート(アルケニル基は直鎖状でも分枝状でも良く、二重結合の位置も任意である。);モノフェニルホスフェート、モノクレジルホスフェート等のモノ(アルキル)アリールホスフェート(アルキル基の置換位置は任意である。);ジブチルホスフェート、ジペンチルホスフェート、ジヘキシルホスフェート、ジペプチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジノニルホスフェート、ジデシルホスフェート、ジンウンデシルホスフェート、ジドデシルホスフェート、ジトリデシルホスフェート、ジテトラデシルホスフェート、ジペンタデシルホスフェート、ジヘキサデシルホスフェート、ジヘプタデシルホスフェート、ジオクタデシルホスフェート、ジノナデシルホスフェート、ジイコシルホスフェート、ジヘンイコシルホスフェート、ジドコシルホスフェート、ジトリコシルホスフェート、ジテトラコシルホスフェート等のジアルキルホスフェート(アルキル基は直鎖状でも分枝状でも良い。);ジオクタデセニルホスフェート等のジアルケニルホスフェート(アルケニル基は直鎖状でも分枝状でも良く、二重結合の位置も任意である。);ジフェニルホスフェート、ジクレジルホスフェート等のジ(アルキル)アリールホスフェート(アルキル基の置換位置は任意である。);トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリペプチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリノニルホスフェート、トリデシルホスフェート、トリウンデシルホスフェート、トリドデシルホスフェート、トリトリデシルホスフェート、トリテトラデシルホスフェート、トリペンタデシルホスフェート、トリヘキサデシルホスフェート、トリヘプタデシルホスフェート、トリオクタデシルホスフェート、トリノナデシルホスフェート、トリイコシルホスフェート、トリヘンイコシルホスフェート、トリドコシルホスフェート、トリトリコシルホスフェート、トリテトラコシルホスフェート等のトリアルキルホスフェート(アルキル基は直鎖状でも分枝状でも良い。);トリオクタデセニルホスフェート等のトリアルケニルホスフェート(アルケニル基は直鎖状でも分枝状でも良く、二重結合の位置も任意である。);トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート等のトリ(アルキル)アリールホスフェート(アルキル基の置換位置は任意である。)などを挙げることができる。これらの各ホスフェートのうち、酸性リン酸塩に該当するものは、これとアンモニア又は上記したアミン化合物との塩も、(B)成分として好適に使用できる。
【0014】
また、(B)成分として使用して好適な亜リン酸エステルの具体例を摘記すると、モノブチルホスファイト、モノペンチルホスファイト、モノヘキシルホスファイト、モノペプチルホスファイト、モノオクチルホスファイト、モノノニルホスファイト、モノデシルホスファイト、モノウンデシルホスファイト、モノドデシルホスファイト、モノトリデシルホスファイト、モノテトラデシルホスファイト、モノペンタデシルホスファイト、モノヘキサデシルホスファイト、モノヘプタデシルホスファイト、モノオクタデシルホスファイト、モノノナデシルホスファイト、モノイコシルホスファイト、モノヘンイコシルホスファイト、モノドコシルホスファイト、モノトリコシルホスファイト、モノテトラコシルホスファイト等のモノアルキルホスファイト(アルキル基は直鎖状でも分枝状でも良い、またチオホスファイトであっても良い);モノオクタデセニルホスファイト等のモノアルケニルホスファイト(アルケニル基は直鎖状でも分枝状でも良く、二重結合の位置も任意であり、またチオホスファイトであっても良い);モノフェニルホスファイト、モノクレジルホスファイト等のモノ(アルキル)アリールホスファイト(アルキル基の置換位置は任意であり、またチオホスファイトであっても良い);ジブチルホスファイト、ジペンチルホスファイト、ジヘキシルホスファイト、ジペプチルホスファイト、ジオクチルホスファイト、ジノニルホスファイト、ジデシルホスファイト、ジンウンデシルホスファイト、ジドデシルホスファイト、ジトリデシルホスファイト、ジテトラデシルホスファイト、ジペンタデシルホスファイト、ジヘキサデシルホスファイト、ジヘプタデシルホスファイト、ジオクタデシルホスファイト、ジノナデシルホスファイト、ジイコシルホスファイト、ジヘンイコシルホスファイト、ジドコシルホスファイト、ジトリコシルホスファイト、ジテトラコシルホスファイト等のジアルキルホスファイト(アルキル基は直鎖状でも分枝状でも良く、またチオホスファイトであっても良い);ジオクタデセニルホスファイト等のジアルケニルホスファイト(アルケニル基は直鎖状でも分枝状でも良く、二重結合の位置も任意であり、またチオホスファイトであっても良い);ジフェニルホスファイト、ジクレジルホスファイト等のジ(アルキル)アリールホスファイト(アルキル基の置換位置は任意であり、またチオホスファイトであっても良い);トリブチルホスファイト、トリペンチルホスファイト、トリヘキシルホスファイト、トリペプチルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリノニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリウンデシルホスファイト、トリドデシルホスファイト、トリトリデシルホスファイト、トリテトラデシルホスファイト、トリペンタデシルホスファイト、トリヘキサデシルホスファイト、トリヘプタデシルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、トリノナデシルホスファイト、トリイコシルホスファイト、トリヘンイコシルホスファイト、トリドコシルホスファイト、トリトリコシルホスファイト、トリテトラコシルホスファイト等のトリアルキルホスファイト(アルキル基は直鎖状でも分枝状でも良い、またチオホスファイトであっても良い);トリオクタデセニルホスファイト等のトリアルケニルホスファイト(アルケニル基は直鎖状でも分枝状でも良く、二重結合の位置も任意であり、またチオホスファイトであっても良い);トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト等のトリ(アルキル)アリールホスファイト(アルキル基の置換位置は任意であり、またチオホスファイトであっても良い)などを挙げることができる。
これらの各ホスファイト又はチオホスファイトのうち、酸性亜リン酸塩に該当するものは、これとアンモニア又は上記したアミン化合物との塩も、(B)成分として好適に使用できる。
【0015】
本発明の(B)成分としては、チオリン酸亜鉛も使用可能であって、このチオリン酸亜鉛の代表例は、下記の一般式(5)で表されるジチオリン酸亜鉛である。
【化5】
Figure 0005000034
上記式(5)中、R14、R15、R16及びR17は、それぞれ個別に、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基又は炭素数7〜18のアルキルアリール基を示す。
上記のアルキル基の具体例には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等が挙げられ、特に炭素数3〜8のアルキル基が好ましい。これらアルキル基は直鎖状でも分枝状でも良い。
上記アリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられ、アルキルアリール基の具体例としては、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、ドデシルフェニル基等(これらのアルキル基は直鎖状でも分枝状でも良く、また全ての置換異性体を含む)が挙げられる。
上記のジチオリン酸亜鉛の合成原料として、α−オレフィンの混合物を使用した場合には、得られるジチオリン酸亜鉛は、一般式(5)のR14、R15、R16及びR17のアルキル基の種類が異なった複数種のジアルキルジチオリン酸亜鉛の混合物となる。
【0016】
本発明の(B)成分には、上述した亜リン酸エステル、その誘導体、リン酸エステル、その誘導体及びチオリン酸亜鉛が任意に使用可能であるが、スラッジ防止に優れる点から亜リン酸エステル及びリン酸エステルがより好ましく、リン酸エステルがさらに好ましい。
【0017】
本発明の回転ガス圧縮機用潤滑油組成物には、その各種性能をさらに高める目的で、公知の潤滑油添加剤、例えば、酸化防止剤、さび止め剤、金属系清浄剤、腐食防止剤、無灰分散剤、摩耗防止剤、流動点降下剤、消泡剤などを単独で、又は数種類組み合わせて配合することができる。
酸化防止剤としては、フェノール系化合物やアミン系化合物など、潤滑油に一般的に使用されているものであれば使用可能である。具体的には、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールなどのアルキルフェノール類、メチレン−4,4−ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール)などのビスフェノール類、フェニル−α−ナフチルアミンなどのナフチルアミン類、ジアルキルジフェニルアミン類などが挙げられる。
さび止め剤としては、脂肪族アミン類、有機スルフォン酸金属塩、有機リン酸金属塩、アルケニルコハク酸エステル、多価アルコールエステルなどが挙げられる。
金属系清浄剤としては、中性、塩基性又は過塩基性のアルカリ金属スルフォネート、アルカリ金属フェネート、アルカリ金属サリシレート、アルカリ土類金属スルフォネート、アルカリ土類金属フェネート、アルカリ土類金属サリシレート等が例示でき、アルカリ金属としてはナトリウム、カリウム等が、アルカリ土類金属としてはマグネシウム、カルシウム等が例示できる。
無灰分散剤としては、アルケニルコハク酸イミド、ポリアルケニルポリアミン、ベンジルアミン等の、いわゆる潤滑油用の無灰分散剤だけでなく。ポリメタクリレートやポリアクリレート等のポリマーに窒素を含有する極性モノマーを導入して、いわゆる分散型粘度指数向上剤等も使用可能である。
腐食防止剤としては、ベンゾトリアゾール系、チアジアゾール系、イミダゾール系の化合物などが挙げられる。
摩耗防止剤としては、例えば、硫黄系化合物が使用できる。硫黄系化合物としては、例えば、ジスルフィド類、硫化オレフィン類、硫化油脂類が挙げられる。
流動点降下剤としては、潤滑油基油に適合するポリメタクリレート系のポリマーなどが挙げられ、消泡剤としては、例えば、ジメチルシリコーンなどのシリコーン類が挙げられる。
これら公知の添加剤の配合量は任意に選ぶことができるが、潤滑油組成物全量基準での各添加剤の含有量は、通常、酸化防止剤で0.01〜5.0質量%、さび止め剤及び腐食防止剤でそれぞれ0.01〜3.0質量%、摩耗防止剤では0.1〜5.0質量%、流動点降下剤で0.05〜5.0質量%、消泡剤で0.0001〜0.05質量%となるように配合するのが望ましい。
【0018】
本発明の潤滑油組成物は、あらゆるタイプの回転ガス圧縮機の圧縮機油として使用可能であるが、特にミスト分離能力がストレーミスト量0.02g/Nm3未満であるミスト分離フィルタを備えた回転ガス圧縮機の圧縮機油として使用した場合に、際立って優れた効果を発揮する。上記のミスト分離フィルタを備えた回転ガス圧縮機は、ベーン式、スクリュー式、スクロール式など、任意の回転圧縮方式を採用した圧縮機であって差し支えない。また、圧縮対象となるガスについても制限はなく、空気、窒素ガス、酸素ガス、アンモニアガス、炭酸ガス、炭化水素ガス、燃焼排ガス、燃焼ガス等の任意のガスを圧縮する回転圧縮機に、本発明の潤滑油組成物は適用可能である。
【0019】
なお、本発明でいうストレーミスト量0.02g/Nm3未満のミスト分離フィルタを備えた回転ガス圧縮機とは、圧縮機のミスト分離フィルタを通過した吐出ガス中に含まれるストレーミスト量が、0.02g/Nm3未満である回転ガス圧縮機を意味し、そのストレーミスト量は、例えば、次のようして測定することができる。
1.図1の如く、回転ガス圧縮機1の出口(圧縮機が有するミスト分離フィルタ通過後のガスの吐出口)に、符号2,3で示す2連のストレーミスト捕集用フィルタ(共にCKD社製の油分除去用フィルタであるマイクロエレッサ・マイクロノート型フィルタ1144−2・3C−EYを使用)を装備したストレーミスト量測定装置を連結する。なお、この連結に先立って、各ストレーミスト捕集用フィルタを50℃の乾燥デシケータに24時間入れて予め乾燥し、その乾燥重量(g)を秤量しておく。
2.ストレーミスト量測定装置のバルブ4,5を閉じ、バルブ6,7を開いて回転ガス圧縮機の吐出口ガスがバイパスライン8を通るようする。
3.回転ガス圧縮機の吐出ガスを2時間以上連続してバイパスライン8に通し、ガス流量計(図示略)での吐出ガス温度が一定温度(定常温度状態)になったことを確認する。
4.吐出ガスが定常温度状態であることを確認した後、ストレーミスト量測定装置のバルブ4,5を開き、バルブ6,7を閉じて吐出ガスを2連のストレーミスト捕集用フィルタに24時間連続して通過させる。この際、ガス流量計で計測される総通過ガス量(m3)と吐出ガス温度(℃)を記録し、標準状態での総通過ガス量(Nm3)を求めておく。
5.吐出ガスを24時間通過させたストレーミスト捕集用フィルタを、50℃の乾燥デシケータに24時間入れて乾燥し、その重量(g)を秤量する。
6.次式によって回転ガス圧縮機吐出ガス中のストレーミスト量(g/Nm3)を求める。式中、回収油分量(g)は2個のストレーミスト捕集用フィルタの試験後の合計重量(g)と試験前の合計重量(g)との差である。
ストレーミスト量(g/Nm3)=
[回収油分量(g)]/[ 標準状態での総通過ガス量(Nm3)]
【0020】
【実施例】
表1〜表3に示す組成と性状を持ったそれぞれの潤滑油組成物を用いて、回転ガス圧縮機を連続運転し、平均運転油温80℃、平均運転圧力0.7MPa、連続全負荷無補給運転において、各潤滑油組成物のRBOT値が30分未満になるまでの時間(実機寿命)を測定した。
また、回転ガス圧縮機を連続運転し、6000時間経過した時点及び9000時間した時点で、回転ガス圧縮機が備えるストレーミスト分離フィルタの上流側並びに下流側の吐出ガス圧を計測して差圧を求めた。
いずれの場合とも、回転ガス圧縮機には神戸製鋼所社製回転ガス圧縮機 KST6Pを使用した。この回転ガス圧縮機の吐出ガスに含まれるストレーミスト量を、図1を用いて先に説明したストレーミスト量測定法で測定したところ、その量は0.01g/Nm3であった。但し、潤滑油には市販の圧縮機油「フェアコールRA32」(日石三菱株式会社製)を使用した。
試験結果を表1〜表3に示す。
【0021】
【表1】
Figure 0005000034
【0022】
【表2】
Figure 0005000034
【0023】
【表3】
Figure 0005000034
【0024】
表1〜表2に示す試験結果と、表3に示す試験結果との対比から明らかなとおり、本発明の潤滑油組成物は、比較例のそれに比べて実機寿命が長く、ストレーミスト分離フィルタで生ずる吐出ガスの圧力降下が小さい。実機寿命が長いことは、その潤滑油組成物が酸化安定性に優れていることを意味し、吐出ガスの圧力降下が小さいことは、その潤滑油組成物にスラッジが生じ難いことを意味している。
【0025】
【発明の効果】
本発明の潤滑油組成物に配合されるリン系化合物は、酸化安定剤ほどではないものの、酸化安定性の向上に寄与し、しかも、スラッジを生じさせることがないので、基油の優れた酸化安定性と相俟って、本発明の潤滑油組成物はその寿命が長い。また、スラッジの増加を懸念しなければならないほど酸化安定剤の配合量を増加させなくても、本発明の潤滑油組成物は酸化安定性に優れているので、ストレーミスト量が0.02g/Nm3未満に規制される回転ガス圧縮機にこれを使用しても、ミスト分離フィルタを目詰まりさせることがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】回転ガス圧縮機のストレーミスト量を測定する装置の概念図である。
【符号の説明】
1:回転ガス圧縮機
2,3:ストレーミスト捕集用フィルタ
4.5.6,7:バルブ
8:バイパスライン

Claims (1)

  1. ストレーミスト量が0.02g/Nm未満であるミスト分離フィルタを備えた回転ガス圧縮機に使用される潤滑油組成物において、(A)当該潤滑油組成物に使用されている基油のRBOT値が50分以上であり、且つ、硫黄分含有量が0.09質量%未満であり、(B)当該潤滑油組成物がリン酸エステルを含有していることを特徴とする前記の回転ガス圧縮機用潤滑油組成物。
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