JP4212748B2 - 二輪車用4サイクルエンジン油組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、省燃費性(低フリクション性)及びクラッチ滑り防止性に優れた二輪車用4サイクルエンジン油組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
二輪車用4サイクルエンジンでは、エンジンシステムだけでなくトランスミッションやトランスミッションの動力伝達部(クラッチ)を1つのクランクケースに納めた、いわゆるオールインワンタイプのものが多い。従って二輪車用4サイクルエンジンに供されるエンジン油としては、エンジンシステム及びトランスミッションシステム双方の要求性能を満たすものが必要とされる。
【0003】
近年の環境問題、特に二酸化炭素の排出量削減の観点から、二輪車においても四輪車と同様に省燃費性能への要求が高まっている。四輪車においては、省燃費性能(低フリクション性能)を付与するために、低粘度化させたものや、有機モリブデン化合物に代表される摩擦調整剤を配合した4サイクルエンジン油へと移行しつつある。一方、二輪車においては、四輪車用4サイクルエンジン油に省燃費性能が付与される前においては、これを二輪車用4サイクルエンジンに使用しても大きな問題は発生しなかったが、近年の摩擦調整剤を配合した省燃費型の四輪車用4サイクルエンジン油を二輪車用4サイクルエンジンに使用した場合には、クラッチの滑り等による重大な問題の発生が懸念されている。
省燃費型のエンジン油組成物として、特開平8−302378号公報には、特定の潤滑油基油に(1)アルカリ土類金属サリシレート系清浄剤、(2)ジアルキルジチオリン酸亜鉛、(3)特定の分子量のポリブテニル基を有するコハク酸イミド系無灰分散剤、(4)フェノール系無灰酸化防止剤、(5)モリブデンジチオカーバメート系摩擦低減剤及びこれらの成分を含む組成物の100℃における動粘度が5.6〜12.5mm2/sになるような量の粘度指数向上剤を含有したものが開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者は、上記公報に記載のエンジン油組成物を二輪車用4サイクルエンジンに適用したところ、モリブデンジチオカーバメート等の摩擦低減剤がクラッチ板の摩擦材に作用してクラッチの滑りが発生し、変速フィーリングが悪化することや動力が十分に伝達できないだけでなく、長時間のクラッチ滑りによる摩擦材の加熱、焼け、摩耗等によって、クラッチの破損という重大なトラブルに発展する場合があることが判明した。そのため、湿式クラッチを持つ多くの二輪車に対しては、上記公報に記載のような摩擦調整剤を配合した省燃費性能を持つエンジン油をそのまま適用することは好ましくなく、二輪車用4サイクルエンジンに適したエンジン組成物に改良する必要があった。
従って、本発明は、クラッチ滑りが生じにくい省燃費性能(低フリクション)の付与された二輪車用4サイクルエンジン油組成物を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、クラッチ滑りが生じにくくかつ優れた省燃費性能を備えた二輪車用4サイクルエンジン油組成物を求めて検討を重ねた結果、(A)有機モリブテン化合物、(B)ジチオリン酸亜鉛、(C)コハク酸イミド系無灰分散剤そして(D)リン酸エステル類、亜リン酸エステル類及び/又はそれらの塩の各成分を基油にそれぞれ適当量添加することで、省燃費性能及びクラッチ滑り防止性の両性能に優れた二輪車用4サイクルエンジン用の組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明は、潤滑油基油に、組成物全量基準で
(A)有機モリブデン化合物をモリブデン元素換算量で30〜1000質量ppm、
(B)ジチオリン酸亜鉛をリン元素換算量で0.05〜0.15質量%、
(C)コハク酸イミド系無灰分散剤を10質量%以下で、かつ窒素元素換算量での該コハク酸イミド系無灰分散剤の含有量が、モリブデン元素換算量での上記有機モリブデン化合物の含有量の1.0倍以上、及び
(D)リン酸エステル類、亜リン酸エステル類及びそれらの塩から選ばれる少なくとも1種をリン元素換算量で0.005〜0.2質量%含有することを特徴とする二輪車用4サイクルエンジン油組成物にある。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の二輪車用4サイクルエンジン油組成物を説明する。
本発明における潤滑油基油は、特に限定されるものではなく、通常エンジン油組成物の基油として用いられているものであれば、鉱油、合成油を問わず使用できる。鉱油系基油としては、原油を常圧蒸留及び減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄及び白土処理等の精製処理等を適宜組み合わせて精製したパラフィン系、ナフテン系等の潤滑油基油等が例示できる。
【0008】
また合成系基油としては、ポリ−α−オレフィン(ポリブテン、1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー、エチレン−プロピレンオリゴマー等)及びその水素化物、イソブテンオリゴマー及びその水素化物、イソパラフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ジエステル類(ジトリデシルグルタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート等)、ポリオールエステル(トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトールー2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等)、ジアルキルジフェニルエーテル、ポリフェニルエーテル等が例示できる。
【0009】
本発明における潤滑油基油は、上記鉱油系基油または合成系基油を単独で用いることができるほか、2種類以上の鉱油系基油、または2種類以上の合成系基油の混合物であっても差し支えなく、鉱油系基油と合成油系基油の混合物であっても差し支えない。そして、上記混合物における2種類以上の基油の混合比は、任意に選ぶことができる。
【0010】
本発明における潤滑油基油は、その粘度に格別の限定はないが、100℃における動粘度の下限値は2mm2/sであることが好ましく、更に好ましくは3mm2/sである。一方、100℃における動粘度の上限値は10mm2/sであることが好ましく、更に好ましくは8mm2/sである。潤滑油基油の100℃における動粘度を2mm2/s以上とすることによって、十分な油膜形成が可能であり、潤滑性により優れ、また、高温条件下での基油の蒸発損失がより小さい、すなわち油消費量が少ない潤滑油組成物を得ることが可能となる。一方、100℃における動粘度を10mm2/s以下とすることによって流体抵抗が小さくなるため、潤滑個所での摩擦抵抗がより小さい、すなわち省燃費性能に優れた潤滑油組成物を得ることが可能となる。
【0011】
本発明の二輪車用4サイクルエンジン油組成物における(A)成分は有機モリブデン化合物であり、(B)成分はジチオリン酸亜鉛であり、(C)成分はコハク酸イミド系無灰分散剤であり、そして(D)成分は、リン酸エステル類、亜リン酸エステル類及び/又はそれらの塩(以下、総称して(亜)リン酸エステル系化合物ともいう)である。
【0012】
以下に、(A)成分、(B)成分、(C)成分、そして(D)成分について順に詳述する。
(A)成分としては、例えば、ジチオカルバミン酸モリブデンおよびジチオリン酸モリブデンを挙げることができる。ジチオカルバミン酸モリブデンとしては、具体的には下記の一般式(1)で表される化合物を例示することができる。また、ジチオリン酸モリブデンとしては、具体的には下記の一般式(2)で表される化合物を例示することができる。
【0013】
【化1】
【0014】
一般式(1)において、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ個別に、炭素数1〜24の炭化水素基を示し、a及びbは、a=0〜4、b=0〜4であり、かつa+b=4である整数を示す。
【0015】
【化2】
【0016】
一般式(2)において、R5、R6、R7及びR8は、それぞれ個別に、炭素数1〜24の炭化水素基を示し、c及びdは、c=0〜4、d=0〜4であり、かつc+d=4である整数を示す。
【0017】
一般式(1)のR1、R2、R3及びR4、及び一般式(2)のR5、R6、R7及びR8で表される炭素数1〜24の炭化水素基の好ましい例としては、炭素数1〜24の直鎖状又は分枝状のアルキル基、炭素数5〜13のシクロアルキル基又は直鎖状若しくは分枝状アルキルシクロアルキル基、炭素数3〜24の直鎖状又は分枝状のアルケニル基、炭素数6〜18のアリール基又は直鎖状若しくは分枝状アルキルアリール基、炭素数7〜19のアリールアルキル基等を挙げることができる。上記アルキル基やアルケニル基は、第1級でも、第2級でも、第3級であってもよい。
【0018】
上記R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8で表されるアルキル基の例としては、具体的には、それぞれ個別に、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基及びテトラコシル基等のアルキル基(これらのアルキル基は直鎖状でも分枝状でも良い)を挙げることができる。
【0019】
上記R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8で表されるシクロアルキル基、およびアルキルシクロアルキル基の例としては、具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基;メチルシクロペンチル基、ジメチルシクロペンチル基、エチルシクロペンチル基、プロピルシクロペンチル基、エチルメチルシクロペンチル基、トリメチルシクロペンチル基、ジエチルシクロペンチル基、エチルジメチルシクロペンチル基、プロピルメチルシクロペンチル基、プロピルエチルシクロペンチル基、ジプロピルシクロペンチル基、プロピルエチルメチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基、プロピルシクロヘキシル基、エチルメチルシクロヘキシル基、トリメチルシクロヘキシル基、ジエチルシクロヘキシル基、エチルジメチルシクロヘキシル基、プロピルメチルシクロヘキシル基、プロピルエチルシクロヘキシル基、ジプロピルシクロヘキシル基、プロピルエチルメチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘプチル基、ジメチルシクロヘプチル基、エチルシクロヘプチル基、プロピルシクロヘプチル基、エチルメチルシクロヘプチル基、トリメチルシクロヘプチル基、ジエチルシクロヘプチル基、エチルジメチルシクロヘプチル基、プロピルメチルシクロヘプチル基、プロピルエチルシクロヘプチル基、ジプロピルシクロヘプチル基、プロピルエチルメチルシクロヘプチル基等のアルキルシクロアルキル基(これらのアルキル基は直鎖状でも分枝状でも良く、またアルキル基のシクロアルキル基への結合位置も任意である)を挙げることができる。
【0020】
上記R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8で表されるアルケニル基の例としては、具体的には、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ブタジエニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オレイル基等のオクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基、テトラコセニル基等のアルケニル基(これらのアルケニル基は直鎖状でも分枝状でも良く、また二重結合の位置も任意である)を挙げることができる。
【0021】
上記R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8で表されるアリール基、及びアルキルアリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基等のアリール基;トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、エチルメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、ブチルフェニル基、プロピルメチルフェニル基、ジエチルフェニル基、エチルジメチルフェニル基、テトラメチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、ドデシルフェニル基等のアルキルアリール基(これらのアルキル基は直鎖状でも分枝状でも良く、またアルキル基のアリール基への結合位置も任意である)を挙げることができる。
【0022】
上記R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8で表されるアリールアルキル基の例としては、ベンジル基、メチルベンジル基、ジメチルベンジル基、フェネチル基、メチルフェネチル基、ジメチルフェネチル基等のアリールアルキル基(これらのアルキル基は直鎖状でも分枝状でも良く、またアリール基のアルキル基への結合位置も任意である)を挙げることができる。
【0023】
上記R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8は、直鎖状又は分枝状の炭素数1〜18のアルキル基である場合、若しくは炭素数6〜18のアリール基又は直鎖状若しくは分枝状アルキルアリール基である場合が特に好ましい。
【0024】
本発明の(A)成分として特に好ましいジチオカルバミン酸モリブデンとしては、具体的には、一般式(1)において、R1、R2、R3及びR4が、それぞれ個別に、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、及びトリデシル基(これらのアルキル基は直鎖状でも分枝状でも良い)であり、かつa=4、b=0であるジアルキルジチオカルバミン酸モリブデン;一般式(1)において、R1、R2、R3及びR4が、それぞれ個別に、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、及びトリデシル基(これらのアルキル基は直鎖状でも分枝状でも良い)であり、かつa=0、b=4であるジアルキルジチオカルバミン酸硫化モリブデン;一般式(1)において、R1、R2、R3及びR4が、それぞれ個別に、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、及びトリデシル基(これらのアルキル基は直鎖状でも分枝状でも良い)であり、かつa=1〜3、b=1〜3、a+b=4であるジアルキルジチオカルバミン酸オキシ硫化モリブデン;並びにジアルキルジチオカルバミン酸モリブデン、ジアルキルジチオカルバミン酸硫化モリブデン及びジアルキルジチオカルバミン酸オキシ硫化モリブデンの中から選ばれる2種以上の化合物の任意混合比での混合物等が例示できる。またさらにこれらの化合物は、1分子中に異なる炭素数や異なる構造のアルキルを有する化合物であっても良い。
【0025】
一般式(2)で表される特に好ましいジチオリン酸モリブデンとしては、具体的には、R5、R6、R7及びR8が、それぞれ個別に、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、及びトリデシル基(これらのアルキル基は直鎖状でも分枝状でも良い)であり、かつc=4、d=0であるジアルキルジチオリン酸モリブデン;一般式(2)において、R5、R6、R7及びR8が、それぞれ個別に、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、及びトリデシル基(これらのアルキル基は直鎖状でも分枝状でも良い)であり、かつc=0、d=4であるジアルキルジチオリン酸硫化モリブデン;一般式(2)において、R5、R6、R7及びR8が、それぞれ個別に、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、及びトリデシル基(これらのアルキル基は直鎖状でも分枝状でも良い)であり、かつc=1〜3、d=1〜3、c+d=4であるジアルキルジチオリン酸オキシ硫化モリブデン;並びにジアルキルジチオリン酸モリブデン、ジアルキルジチオリン酸硫化モリブデン及びジアルキルジチオリン酸オキシ硫化モリブデンの中から選ばれる2種以上の化合物の任意混合比での混合物等が例示できる。またさらにこれらの化合物は、1分子中に異なる炭素数や異なる構造のアルキルを有する化合物であっても良い。
【0026】
本発明の二輪車用4サイクルエンジン油組成物におけるジチオカルバミン酸モリブデン及びジチオリン酸モリブデンから選択される少なくとも1種の有機モリブデン化合物(A)の含有量の下限値は、組成物全量基準で、モリブデン元素換算量で30質量ppm、好ましくは100質量ppmであり、一方、その含有量の上限値は、組成物全量基準で、モリブデン元素換算量で1000質量ppm、好ましくは900質量ppmである。有機モリブデン化合物(A)の含有量が、組成物全量基準で、モリブデン元素換算量で30質量ppm未満である場合は、際立った省燃費効果が得られず、一方、有機モリブデン化合物(A)の含有量が、組成物全量基準で、モリブデン元素換算量で1000質量ppmを超える場合は、含有量に見合うだけの省燃費効果の向上がみられないため、それぞれ好ましくない。
【0027】
(B)成分のジチオリン酸亜鉛としては、具体的には下記の一般式(3)で表される化合物が例示できる。
【0028】
【化3】
【0029】
一般式(3)において、R9、R10、R11及びR12は、それぞれ個別に、炭素数1〜24の炭化水素基を示す。
【0030】
上記R9、R10、R11及びR12で表される炭素数1〜24の炭化水素基は、前述した一般式(1)のR1、R2、R3及びR4で表される炭素数1〜24の炭化水素基の例と同義であり、またその好ましい例も同じである。
一般式(3)で表される特に好ましい化合物としては、具体的には、ジメチルジチオリン酸亜鉛、ジエチルジチオリン酸亜鉛、ジプロピルジチオリン酸亜鉛、ジブチルジチオリン酸亜鉛、ジペンチルジチオリン酸亜鉛、ジヘキシルジチオリン酸亜鉛、ジヘプチルジチオリン酸亜鉛、ジオクチルジチオリン酸亜鉛、ジノニルジチオリン酸亜鉛、ジデシルジチオリン酸亜鉛、ジウンデシルジチオリン酸亜鉛、ジドデシルジチオリン酸亜鉛、ジトリデシルジチオリン酸亜鉛、ジテトラデシルジチオリン酸亜鉛、ジペンタデシルジチオリン酸亜鉛、ジヘキサデシルジチオリン酸亜鉛、ジヘプタデシルジチオリン酸亜鉛、ジオクタデシルジチオリン酸亜鉛等のジアルキルジチオリン酸亜鉛(これらのアルキル基は直鎖状でも分枝状でも良い);ジフェニルジチオリン酸亜鉛;ジトリルジチオリン酸亜鉛、ジキシリルジチオリン酸亜鉛、ジエチルフェニルジチオリン酸亜鉛、ジプロピルフェニルジチオリン酸亜鉛、ジブチルフェニルジチオリン酸亜鉛、ジペンチルフェニルジチオリン酸亜鉛、ジヘキシルフェニルジチオリン酸亜鉛、ジヘプチルフェニルジチオリン酸亜鉛、ジオクチルフェニルジチオリン酸亜鉛、ジノニルフェニルジチオリン酸亜鉛、ジデシルフェニルジチオリン酸亜鉛、ジウンデシルフェニルジチオリン酸亜鉛、ジドデシルフェニルジチオリン酸亜鉛等のジアルキルフェニルジチオリン酸亜鉛(これらのアルキル基は直鎖状でも分枝状でも良く、またアルキル基のフェニル基への結合位置も任意である)及びこれらの中から選ればれる2種以上の化合物の任意混合比での混合物等が例示できる。またさらにこれらのジアルキルジチオリン酸亜鉛やジアルキルフェニルジチオリン酸亜鉛は、1分子中に異なる炭素数や異なる構造のアルキルを有する化合物であっても良い。
【0031】
本発明の二輪車用4サイクルエンジン油組成物における(B)ジチオリン酸亜鉛の含有量の下限値は、組成物全量基準で、リン元素換算量で0.05質量%、好ましくは0.06質量%であり、一方、ジチオリン酸亜鉛の含有量の上限値は、組成物全量基準で、リン元素換算量で0.15質量%、好ましくは0.14質量%である。ジチオリン酸亜鉛の含有量が組成物全量基準で、リン元素換算量で0.05質量%未満である場合は、際立った省燃費効果が得られず、一方、ジチオリン酸亜鉛の含有量がエンジン油組成物全量基準で、リン元素換算量で0.15質量%を超える場合は、含有量に見合うだけの省燃費効果の向上がみられないため、それぞれ好ましくない。
【0032】
(C)成分であるコハク酸イミド系無灰分散剤について詳述する。
本発明の(C)成分であるコハク酸イミド系無灰分散剤としては、次の一般式(4)で表されるモノイミド、一般式(5)で表されるビスイミド及びこれらを有機酸やホウ酸で変性したもの等が例示できる。
【0033】
【化4】
式中、R13、R14及びR15は、それぞれ個別にポリブテニル基を示し、nは2〜7の整数を示す。
【0034】
上記R13、R14及びR15で表されるポリブテニル基は、その数平均分子量の下限値が700であることが好ましく、更に好ましくは900であり、一方、ポリブテニル基の数平均分子量の上限値は2500であることが好ましく、更に好ましくは1500である。数平均分子量を700以上とすることによって、清浄性、分散性により優れたエンジン油組成物を得ることが可能となる。一方、数平均分子量を2500以下とすることによって、低温流動性により優れたエンジン油組成物を得ることが可能となる。スラッジ抑制効果に優れる点から、nの下限値は2で、好ましくは3であり、一方、nの上限値は7で、好ましくは6である。ここで、ポリブテニル基は、1-ブテンとイソブテンの混合物又は高純度イソブテンを塩化アルミニウム、フッ化ホウ素等の触媒で重合して得られるポリブテン(ポリイソブテン)から得ることができる。また、このポリブテン(ポリイソブテン)としては、更に適当な処理法により、塩素分及び/又はフッ素分が除去されたものも使用することができる。
【0035】
本発明の二輪車用4サイクルエンジン油組成物における(C)コハク酸イミド系無灰分散剤の含有量は、10質量%以下、好ましくは9質量%以下であり、かつ窒素元素換算量での該コハク酸イミド系無灰分散剤の含有量が、モリブデン元素換算量での有機モリブデン化合物の含有量の1.0倍以上、好ましくは1.1倍以上、更に好ましくは1.2倍以上である。該分散剤の含有量が10質量%を超える場合には、潤滑油の流動性が著しく悪化し、一方、窒素元素換算量での該コハク酸イミド系無灰分散剤の含有量が、モリブデン元素換算量での有機モリブデン化合物の含有量の1.0倍に満たない場合には、クラッチの摩擦係数を高める効果に乏しいため、それぞれ好ましくない。
【0036】
(D)成分である(亜)リン酸エステル系化合物について詳述する。
本発明の(D)成分である(亜)リン酸エステル系化合物としては、例えば、リン酸モノエステル類、リン酸ジエステル類、リン酸トリエステル類、亜リン酸モノエステル類、亜リン酸ジエステル類、亜リン酸トリエステル類、及びこれらの塩を挙げることができる。ここに挙げた成分は、通常炭素数2〜30、好ましくは炭素数3〜20の炭化水素基を含有する化合物である。
【0037】
炭素数2〜30の炭化水素基としては、具体的には、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基及びアリールアルキル基(これらは置換基を有していてもよい)を挙げることができる。
アルキル基としては、例えば、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2―エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基及びオクタデシル基を挙げることができる(これらのアルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい)
【0038】
シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基及びシクロヘプチル基等の炭素数5〜7のシクロアルキル基を挙げることができる。
アルキル置換シクロアルキル基としては、例えば、メチルシクロペンチル基、ジメチルシクロペンチル基、メチルエチルシクロペンチル基、ジエチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、メチルエチルシクロヘキシル基、ジエチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘプチル基、ジメチルシクロヘプチル基、メチルエチルシクロヘプチル基及びジエチルシクロヘプチル基等の炭素数6〜11のアルキル置換シクロアルキル基(アルキル基のシクロアルキル基への置換位置も任意である)を挙げることができる。
【0039】
アルケニル基としては、例えば、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基及びオクタデセニル基等のアルケニル基(これらのアルケニル基は直鎖状でも分枝状でもよく、また二重結合の位置も任意である)を挙げることができる。
【0040】
アリール基としては、例えば、フェニル基及びナフチル基等のアリール基を挙げることができる。また、アルキル置換アリール基としては、例えば、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基及びドデシルフェニル基等の炭素数7〜18の各アルキル置換アリール基(アルキル基は直鎖状でも分枝状でもよく、またアリール基への置換位置も任意である)を挙げることができる。
アリールアルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基及びフェニルヘキシル基等の炭素数7〜12のアリールアルキル基(これらのアルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい)を挙げることができる。
【0041】
(D)成分として好ましい化合物としては、具体的には、以下のものを挙げることができる。
モノプロピルホスフェート、モノブチルホスフェート、モノペンチルホスフェート、モノヘキシルホスフェート、モノペプチルホスフェート及びモノオクチルホスフェート等のリン酸モノアルキルエステル(アルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい);モノフェニルホスフェート、モノクレジルホスフェート等のリン酸モノ(アルキル)アリールエステル;
ジプロピルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジペンチルホスフェート、ジヘキシルホスフェート、ジペプチルホスフェート、ジオクチルホスフェート等のリン酸ジアルキルエステル(アルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい);ジフェニルホスフェート、ジクレジルホスフェート等のリン酸ジ(アルキル)アリールエステル;
トリプロピルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリペプチルホスフェート、トリオクチルホスフェート等のリン酸トリアルキルエステル(アルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい);トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート等のリン酸トリ(アルキル)アリールエステル;
【0042】
モノプロピルホスファイト、モノブチルホスファイト、モノペンチルホスファイト、モノヘキシルホスファイト、モノペプチルホスファイト、モノオクチルホスファイト等の亜リン酸モノアルキルエステル(アルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい);モノフェニルホスファイト、モノクレジルホスファイト等の亜リン酸モノ(アルキル)アリールエステル;
ジプロピルホスファイト、ジブチルホスファイト、ジペンチルホスファイト、ジヘキシルホスファイト、ジペプチルホスファイト、ジオクチルホスファイト等の亜リン酸ジアルキルエステル(アルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい);ジフェニルホスファイト、ジクレジルホスファイト等の亜リン酸ジ(アルキル)アリールエステル;
トリプロピルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリペンチルホスファイト、トリヘキシルホスファイト、トリペプチルホスファイト、トリオクチルホスファイト等の亜リン酸トリアルキルエステル(アルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい);トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト等の亜リン酸トリ(アルキル)アリールエステル;及びこれらの混合物。
【0043】
上述した(亜)リン酸エステル類の塩としては、具体的には、リン酸モノエステル、リン酸ジエステル、リン酸トリエステル、亜リン酸モノエステル、亜リン酸ジエステル、あるいは亜リン酸トリエステルに、アンモニアや炭素数1〜20の炭化水素基又は水酸基含有炭化水素基のみを分子中に含有するアミン化合物等の含窒素化合物を作用させて、残存する酸性水素の一部又は全部を中和した塩等が例示できる。
【0044】
この含窒素化合物としては、具体的には、以下のものを挙げることができる。アンモニア;モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノプロピルアミン、モノブチルアミン、モノペンチルアミン、モノヘキシルアミン、モノヘプチルアミン、モノオクチルアミン、ジメチルアミン、メチルエチルアミン、ジエチルアミン、メチルプロピルアミン、エチルプロピルアミン、ジプロピルアミン、メチルブチルアミン、エチルブチルアミン、プロピルブチルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン及びジオクチルアミン等のアルキルアミン(アルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい);モノメタノールアミン、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、モノブタノールアミン、モノペンタノールアミン、モノヘキサノールアミン、モノヘプタノールアミン、モノオクタノールアミン、モノノナノールアミン、ジメタノールアミン、メタノールエタノールアミン、ジエタノールアミン、メタノールプロパノールアミン、エタノールプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、メタノールブタノールアミン、エタノールブタノールアミン、プロパノールブタノールアミン、ジブタノールアミン、ジペンタノールアミン、ジヘキサノールアミン、ジヘプタノールアミン及びジオクタノールアミン等のアルカノールアミン(アルカノール基は直鎖状でも分枝状でもよい);及びこれらの混合物。
【0045】
これらの(D)成分は、1種類あるいは2種類以上を任意に配合することができる。本発明においては、(D)成分は、リン酸モノエステル類、リン酸ジエステル類、亜リン酸モノエステル類、亜リン酸ジエステル類及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましく、更に好ましくは、(亜)リン酸モノエステル類の塩、(亜)リン酸ジエステル類及びそれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも一種である。また、これらを構成する炭化水素基の炭素数は、好ましくは、4〜20、更に好ましくは、6〜18である。
【0046】
本発明の二輪車用4サイクルエンジン油組成物における(D)成分の含有量は組成物全量基準でリン元素換算量として0.005〜0.2質量%であり、好ましくは、0.008〜0.15質量%であり、更に好ましくは、0.01〜0.1質量%である。リン元素として0.005質量%未満の場合は、クラッチの摩擦係数向上に対して効果がなく、0.2質量%を超える場合は、酸化安定性が悪化するため、それぞれ好ましくない。
【0047】
本発明の二輪車用4サイクルエンジン油組成物は、省燃費性能(低フリクション性能)及びクラッチ滑り防止性能に優れたものであるが、その性能をさらに高める目的で、公知の潤滑油添加剤を本発明の組成物に添加することができる。このような添加剤としては、例えば、本発明の(A)成分以外の摩擦調整剤、本発明の(B)成分以外の極圧添加剤及び摩耗防止剤、本発明の(C)成分以外の無灰分散剤、あるいは金属系清浄剤、酸化防止剤、錆止め剤、腐食防止剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、ゴム膨潤剤、消泡剤及び着色剤等を挙げることができる。これらは、単独でまたは数種類を組み合わせて使用することができる。
【0048】
本発明の(A)成分以外の摩擦調整剤としては、例えば、脂肪族アルコール、脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステル、脂肪族アミン、脂肪族アミン塩、脂肪族アミド等が使用できる。
【0049】
本発明の(B)成分以外の極圧添加剤及び摩耗防止剤としては、例えば、硫黄系化合物が使用できる。硫黄系化合物としては、例えば、ジスルフィド類、硫化オレフィン類及び硫化油脂類を挙げることができる。
【0050】
本発明の(C)成分以外の無灰分散剤としては、例えば、ベンジルアミン、アルキルポリアミン、又はこれらのホウ素化合物や硫黄化合物による変性品、アルケニルコハク酸エステル等が使用できる。
【0051】
金属系清浄剤としては、潤滑油に一般的に使用されているものであれば、いずれも使用可能であり、例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のスルホネート、フェネート、サリシレート、ナフテネート等が本発明の組成物に、単独あるいは二種類以上組み合わせて使用できる。ここでアルカリ金属としてはナトリウムやカリウム、アルカリ土類金属としてはカルシウム、マグネシウム等が例示される。また、具体的な金属系清浄剤としてはカルシウム又はマグネシウムのスルホネート、フェネート、サリシレートが好ましく用いられる。なお、これらの金属系清浄剤の全塩基価及び添加量は要求される潤滑油の性能に応じて任意に選択することができる。
【0052】
酸化防止剤としては、フェノール系化合物やアミン系化合物等、潤滑油に一般的に使用されているものであれば、いずれも使用可能であり、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール等のアルキルフェノール類、メチレン−4,4−ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール)等のビスフェノール類、フェニル−α−ナフチルアミン等のナフチルアミン類、ジアルキルジフェニルアミン類、フェノチアジン類等が使用できる。
【0053】
錆止め剤としては、例えば、アルケニルコハク酸、アルケニルコハク酸エステル、多価アルコールエステル、石油スルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート等が使用できる。
【0054】
腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、チアジアゾール系、イミダゾール系の化合物等が使用できる。
【0055】
粘度指数向上剤としては、非分散型粘度指数向上剤や分散型粘度指数向上剤が使用可能であり、具体的には、非分散型又は分散型のポリメタクリレートやオレフィンコポリマー、あるいはポリイソブテン、ポリスチレン、エチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ジエン共重合体及びその水素化物等が使用できる。
【0056】
流動点降下剤としては、例えば、使用する潤滑油基油に適合するポリメタクリレート系のポリマー、アルキル化芳香族化合物、フマレート−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が使用できる。
【0057】
消泡剤としては、例えば、ジメチルシリコーンやフルオロシリコーン等のシリコーン化合物類が使用できる。
【0058】
これらの添加剤の添加量は任意であるが、通常組成物全量基準で、消泡剤の含有量は0.0005〜0.01質量%、粘度指数向上剤の含有量は0.05〜20質量%、腐食防止剤の含有量は0.005〜0.2質量%、その他の添加剤の含有量は、それぞれ0.05〜10質量%程度である。
【0059】
なお、本発明の二輪車用4サイクルエンジン油組成物は、省燃費性及びクラッチ滑り防止性に優れるだけでなく、上記添加剤の適切な配合により、JASO二輪車用4サイクルエンジン油規格(JASO T 903−98)に適合するのに十分な性能を持たせることも可能である。
【0060】
【実施例】
以下に、本発明の内容を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0061】
[実施例1〜6]及び[比較例1〜7]
表1に示す組成に従い、本発明の二輪車用4サイクルエンジン油組成物(実施例1〜6)を調製した。これらの組成物について、以下に示すSRV摩擦試験及びクラッチ摩擦特性試験を行い、省燃費性能及びクラッチ滑り防止性能の評価を行った。その評価結果を表2に示す。また、 比較のため、表3に示す組成に従い、組成物(比較例1〜7)を調製し、これらの組成物についても同様な評価を行った。その評価結果を表3に示す。
【0062】
[SRV摩擦試験]
SRV摩擦試験機はエンジン油組成物の省燃費性能評価等に一般的に使用され、摩擦係数が低いものほど省燃費性能に優れていることがわかっている。本発明においては、荷重400N、振動数50Hz、振幅1.5mm、油温80℃という条件にて試験を実施し、その時の摩擦係数を測定した。
【0063】
[クラッチ摩擦特性試験]
JASO二輪車用4サイクルエンジン油規格(JASO T 903−98)には二輪用4サイクルエンジン油として適した物理化学性状の他に、クラッチ摩擦特性についての性能分類が規定されている。すなわち、JASO T 904−98に準拠した試験条件に従って動摩擦係数、静摩擦係数及び制動時間を測定し、下記算出方法によって動摩擦特性指数、静摩擦特性指数及び制動時間指数を求める。そしてこれらの指数を下記表1に従ってMA又はMBに性能分類する。MAに分類されるエンジン油組成物はクラッチ摩擦係数が高く、クラッチ滑り防止性能に優れていることを示し、MBに分類されるエンジン油組成物はクラッチ摩擦係数が低く、クラッチ滑り防止性能が劣る、即ち、クラッチ滑りの発生が懸念されることを示す。
【0064】
【表1】
表1
二輪車用JASO4サイクルエンジン油規格における性能分類
【0065】
算出方法(例:動摩擦特性指数)
動摩擦特性指数=1+(μd(s)−μd(B))/(μd(A)−μd(B))
ここで、μd(s):供試油の動摩擦係数
μd(A):JAFRE-A(高摩擦特性標準油)の動摩擦係数
μd(B):JAFRE-B(摩擦調整剤入り低摩擦特性標準油)の動摩擦係数
なお、静摩擦特性指数、制動時間指数も同様の算出方法にて求める。
【0066】
【表2】
表2
【0067】
【表3】
表3
【0068】
1)水素化精製鉱油(動粘度4mm2/s(@100℃)、粘度指数120)
2)ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデン(モリブデン含有量4.1質量%、硫黄含有量4.2質量%、アルキル基:オクチル基)
3)ジアルキルジチオリン酸モリブデン(モリブデン含有量8.5質量%、硫黄含有量13.0質量%、リン含有量5.5質量%、アルキル基:オクチル基)
4)ジアルキルジチオリン酸亜鉛(亜鉛含有量8.2質量%、リン含有量6.3質量%、アルキル基:2−エチルヘキシル基)
5)ジアルキルジチオリン酸亜鉛(亜鉛含有量7.2質量%、リン含有量6.2質量%、アルキル基:1−メチルプロピル基、1,3−ジメチルブチル基の混合物)
6)ポリブテニルコハク酸イミド(ビスタイプ、ポリブテニル基の数平均分子量1000、窒素含有量2.0質量%)
7)ホウ素化ポリブテニルコハク酸イミド(ビスタイプ、ポリブテニル基の数平均分子量1300、窒素含有量1.8質量%、ホウ素含有量0.4質量%)
8)ジオレイルホスファイト(リン含有量5.4質量%)
9)ジオレイルホスファイトのモノラウリルアミン塩(リン含有量4.2質量%)
10)ジ(2−エチルヘキシル)ホスフェート(リン含有量9.6質量%)
11)金属系清浄剤、酸化防止剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、消泡剤、腐食防止剤の混合物
【0069】
表1及び表2の結果から明らかな通り、本発明に従う実施例1〜6のエンジン油組成物は、いずれもSRV試験による摩擦係数が低いことから省燃費性能に優れており、また、クラッチ摩擦特性においてはいずれもJASO性能分類がMAを示していることからクラッチ滑り防止性能にも優れている。
【0070】
それに対して、(A)成分を含まない場合(比較例1)、(A)成分の配合量が請求範囲よりも少ない場合(比較例5)、(B)成分を含まない場合(比較例3)及び(B)成分の配合量が請求範囲よりも少ない場合(比較例6)にはSRV試験における摩擦係数が高く、省燃費性能に劣ることがわかる。また、(C)成分を含まない場合(比較例2)及び(C)成分の配合量が請求範囲よりも少なく、(窒素元素換算量/モリブデン元素換算量)の値が1.0に満たない場合(比較例4)及び(D)成分を含まない場合(比較例7)には、クラッチ摩擦特性におけるJASO性能分類がMBとなることからクラッチ滑り防止性能に劣る(クラッチ滑りの発生が懸念される)ことがわかる。
【0071】
【発明の効果】
本発明の二輪車用4サイクルエンジン油組成物は、省燃費性(低フリクション性)及びクラッチ滑り防止性の両性能において極めて優れた性能を示す。
Claims (1)
- 潤滑油基油に、組成物全量基準で
(A)有機モリブデン化合物をモリブデン元素換算量で30〜1000質量ppm、
(B)ジチオリン酸亜鉛をリン元素換算量で0.05〜0.15質量%、
(C)コハク酸イミド系無灰分散剤を10質量%以下で、かつ窒素元素換算量での該コハク酸イミド系無灰分散剤の含有量が、モリブデン元素換算量での上記有機モリブデン化合物の含有量の1.0倍以上、及び
(D)リン酸エステル類、亜リン酸エステル類及びそれらの塩から選ばれる少なくとも1種をリン元素換算量で0.005〜0.2質量%含有することを特徴とする二輪車用4サイクルエンジン油組成物。
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