JP4138311B2 - 自動車用変速機油組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は自動車用変速機油組成物に関し、さらに詳しくは自動変速機及び無段変速機に有利に用いることができる自動車用変速機油組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
炭酸ガス排出量の削減など、環境問題への対応から自動車の省燃費化に対する要求は日増しに強まっており、自動車用変速機においても省燃費化に対応した性能を有していることが求められている。現在、乗用車の大部分は自動変速機搭載車であるが、無段変速機搭載車も年を追う毎に増えていることから、変速機の中でも自動変速機及び無段変速機の性能の向上が強く求められている。
【0003】
自動変速機はトルクコンバータ、湿式クラッチ、歯車軸受機構及びこれらを制御する油圧制御機構から構成されている。歯車軸受機構は、数種類の歯車機構からなり、変速比は噛み合った歯車の歯数により決定され、所望の変速比を得るには、車速や負荷に応じて変速比を決定する歯車が適宜選択される。湿式クラッチは複数設けられており、あるものが締結し、あるものが空転することにより、変速比を決定する歯車の選択がなされている。変速比を変化させる際には、それまで締結していた湿式クラッチを開放し、別の湿式クラッチを係合させるという動作が生じるため、素早い変速を実現させるためには湿式クラッチの動摩擦係数が充分に高い必要がある。また、エンジントルクを伝達するためには、締結している湿式クラッチは開放されるまで滑ってはならず、静摩擦係数も充分に高い必要がある。これらの摩擦係数にはクラッチの材質と共に、使用される潤滑油の性能が強く影響する。
【0004】
自動変速機の設計では、組み合わされるエンジンの出力に応じて、湿式クラッチのサイズ、枚数および押し付け油圧が決定される。湿式クラッチの摩擦係数が低い場合にはクラッチサイズを大きくしたり、枚数を増やしたり、あるいは押し付け油圧を大きくしたりといったことが必要になる。クラッチサイズの増大や枚数の増加は自動変速機の大型化をまねき、押し付け油圧の増大は自動変速機に組み込まれる油圧ポンプに過大な負荷を負わせて変速機の伝達効率を低下させる要因となる。これらはいずれも自動車の燃費を悪化させる要因であるため、近年の自動変速機油には高い摩擦係数を有することが求められるようになってきた。
【0005】
一方、無段変速機はエンジンの燃焼効率の良い領域を選択的に使用できることから、省燃費性に優れた変速機として脚光を浴びており、中でも金属ベルト式無段変速機を搭載する車種が近年増加している。このタイプの変速機は、金属製のベルトと金属製のプーリー間の摩擦によりトルクを伝達し、またプーリーの半径比を変えることにより変速を行うという機構を有する。従って金属ベルト式無段変速機に用いられる潤滑油は、金属ベルトと金属プーリーとの間の摩擦係数を出来るだけ高くできる性能を有していることが極めて重視される。金属−金属間の摩擦係数が低い場合には、エンジントルクを伝達するためにより大きな油圧をプーリーに加えてベルトを挟み込まなければならず、油圧ポンプの大型化やポンピングロスの増大という、省燃費化には不利な対応を変速機側で行わなければならない。
【0006】
こうした理由から、自動車用変速機油、特に自動変速機、金属ベルト式無段変速機に使用される変速機油には湿式クラッチ及び金属−金属間で高い摩擦係数を示すことが従来以上に求められている。
湿式クラッチの高摩擦係数化に関しては、例えば、特開平6−240275号公報では、アミン化合物、過塩基性カルシウムフェネート、コハク酸イミド系無灰分散剤及びB遮蔽型コハク酸イミドを配合した潤滑油組成物が静摩擦係数の向上に有効であることが提案されている。また、特開平8−127789号公報では、ビスタイプのアルケニルコハク酸イミド、モノタイプのアルケニルコハク酸イミド、ポリジメチルシロキサンの低分子量物及び高分子量物を配合した潤滑油組成物が動摩擦係数及び静摩擦係数の向上に有効であることが提案されており、これらの技術を適用した潤滑油組成物も数多く実用化されている。
【0007】
一方、金属−金属間の高摩擦係数化(ベルト/プーリー間の高容量化)に関しては、例えば、特開平9−100487号公報では、硫黄系極圧剤、リン系極圧剤及びアルカリ土類金属系清浄剤を配合した潤滑油組成物が有効であると提案されている。また、特開平9−78079号公報では、硫化エステルを硫黄分として0.1〜0.15重量部、金属系清浄剤を金属量として0.005〜1.0重量部、ジアルキルジチオリン酸亜鉛を亜鉛分として0.1〜0.15重量部、リン酸エステルをリン分として0.03〜0.1重量部、及びイミド化合物を窒素量として0.01〜0.1重量部のうちのいずれか1種以上及びポリ(メタ)クリレート類を1〜10重量部配合した潤滑油組成物がベルト/プーリー間の高容量化に有効であることが提案されている。また、特開2000−109867号公報には、窒素含有量が1.3質量%以上であるホウ素含有無灰分散剤を、0.05〜10質量%含有する潤滑油組成物が金属−金属間の摩擦係数向上に有効であることが提案されている。
【0008】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
以上のように、湿式クラッチの高摩擦係数化、金属−金属間の高摩擦係数化に関しては数多くの提案がなされ、実用化もされているが、これらはすべて潤滑油の添加剤成分に関する発明であり、長期間の使用にともなって添加剤成分が消耗した時に性能が低下するという潜在的な懸念を含んでいる。廃油処理量の削減、整備コストの低減という社会的な要求から、長期間安定して高摩擦係数を維持し得る新たな潤滑油の開発が望まれている。
【0009】
本発明の目的は、湿式クラッチ及び金属−金属間の摩擦係数の向上に優れた効果を発揮する自動車用変速機油組成物を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは潤滑油を構成する成分のうち、大部分を占める基油に関して鋭意研究を重ねた結果、分枝アルキル基を有する特定のアルキルベンゼンを含む基油特定の潤滑油添加剤を含有した組成物が、湿式クラッチ及び金属−金属間のいずれに対しても高摩擦係数化に有効であることを見出した。
本発明は、分枝アルキル基を有するモノアルキルベンゼン及び/又はジアルキルベンゼンを含む基油に、無灰分散剤、アルカリ土類金属系清浄剤、リン系添加剤及び硫黄系極圧剤を配合してなることを特徴とする、湿式クラッチを有する自動変速機または無段変速機、並びに金属ベルトとプーリーからなる変速機構を有する変速機に用いる自動車用変速機油組成物にある。
【0011】
本発明の自動車用変速機油組成物の好ましい形態としては、次のものが包含される。
(1)炭素数9〜18を有する分枝アルキル基を有するモノアルキルベンゼン及び/又はジアルキルベンゼンである。
(2)基油が、更に鉱油及び合成油からなる群より選択される少なくとも1種を含有する。
(3)無灰分散剤が、炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するコハク酸イミドあるいはその誘導体である。
(4)さらに摩擦調整剤を含有する。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の自動車用変速機油組成物(以下、本発明の組成物)において用いられる基油には、分枝アルキル基を有するアルキルベンゼンが含まれている。分枝アルキル基としては、例えば、炭素数3〜40のものを挙げることができ、より高い摩擦係数を得るためには分枝アルキル基としては、好ましくは、炭素数6〜30のもの、更に好ましくは炭素数9〜18のものである。
炭素数3〜40の分枝アルキル基としては、具体的には例えば、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、トリアコンチル基、ヘントリアコンチル基、ドトリアコンチル基、トリトリアコンチル基、テトラトリアコンチル基、ペンタトリアコンチル基、ヘキサトリアコンチル基、ヘプタトリアコンチル基、オクタトリアコンチル基、ノナトリアコンチル基、及びテトラコンチル基(これらの基には、すべての異性体が含まれる)などが挙げられる。
【0013】
ベンゼン環の置換分枝アルキル基の数は、1〜4個であることが好ましく、更に好ましくは、1又は2個である。分枝アルキル基の合計炭素数は、3〜40個であることが好ましく、更に好ましくは6〜30であり、更に好ましくは9〜18である。
【0014】
分枝アルキルベンゼンの製造法は、公知の方法を利用することができ、例えば、原料の芳香族化合物をアルキル化触媒の存在下、アルキル化することで製造することができる。原料となる芳香族化合物としては、具体的には例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、ジエチルベンゼン、およびこれらの混合物などが用いられる。またアルキル化剤としては、具体的には例えば、プロピレン、ブテン、イソブチレンなどの低級モノオレフィン;これら低級モノオレフィン(好ましくはプロピレン)の重合によって得られる炭素数6〜40の分枝状のオレフィン;ワックス、重質油、石油留分、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの熱分解によって得られる炭素数3〜40の分枝状のオレフィン;およびこれらの混合物などが使用できる。アルキル化の際に使用するアルキル化触媒の例としては、塩化アルミニウム、塩化亜鉛などのフリーデルクラフツ型触媒;硫酸、リン酸、ケイタングステン酸、フッ化水素酸、活性白土などの酸性触媒;などを挙げることができる。本発明においては、分枝アルキル基の導入には、特に入手が容易である点から、プロピレン、ブテン、イソブチレンなどのオレフィンのオリゴマーから誘導されるものを利用することが好ましい。
【0015】
基油中には炭素数の異なる分枝アルキル基を有するアルキルベンゼンが2種以上含まれていても良く、また、アルキル基の置換数が異なるアルキルベンゼンが2種以上含まれていても良い。また、基油中には直鎖アルキル基を有するアルキルベンゼンが含まれていてもよいが、含まれていてもこの量は基油中に30質量%以下であり、好ましくは20質量%以下である。最も好ましくは、基油中のアルキルベンゼンは、分枝アルキル基を有するアルキルベンゼンのみ(100%)から構成されていることが好ましい。
【0016】
基油中に含まれる分枝アルキル基を有するアルキルベンゼンの量は、10質量%以上であることが好ましく、更に好ましくは、15質量%であり、更に好ましくは、20質量%である。分枝アルキル基を有するアルキルベンゼンの上限は、好ましくは95質量%であり、更に好ましくは、90質量%、更に好ましくは、85質量%である。なお、組成物中の基油の割合は、通常70〜99質量%であり、好ましくは、80〜95質量%である。
【0017】
本発明の組成物には、基油として鉱油及び/または合成油を併用することが好ましい。分枝アルキル基を有するアルキルベンゼンは摩擦係数向上効果に優れるものの、一般に粘度指数が低く、使用温度による粘度の変化が大きいため、鉱油及び/または合成油と併用することにより、粘度と温度の関係を改善しながら摩擦係数を向上させることが可能である。
【0018】
併用可能な鉱油としては、通常の潤滑油の基油として用いられる任意の鉱油系潤滑油基油を挙げることができる。鉱油系潤滑油基油としては、例えば、原油を常圧蒸留および減圧蒸留して得られた潤滑油留分を通常の精製処理により精製したパラフィン系、ナフテン系などの油を挙げることができる。通常の精製処理としては、例えば、(ア)水素化分解、水素化仕上げなどの水素化精製、(イ)フルフラール溶剤抽出などの溶剤精製、(ウ)溶剤脱ろうや接触脱ろうなどの脱ろう、(エ)酸性白土や活性白土などによる白土精製、(オ)硫酸洗浄、苛性ソーダ洗浄などの薬品(酸またはアルカリ)精製などが挙げられ、これらの処理を単独であるいは二つ以上組み合わせた処理を利用することができる。これらの処理により得られた基油は単独で使用しても、あるいは2種以上任意の割合で組み合わせて使用してもよい。
【0019】
本発明では下記の製法により得られた鉱油を用いることがさらに好ましい。
▲1▼パラフィン基系原油および/または混合基系原油の常圧蒸留による留出油;▲2▼パラフィン基系原油および/または混合基系原油の常圧蒸留残渣油の減圧蒸留留出油(WVGO);
▲3▼▲1▼および/または▲2▼のマイルドハイドロクラッキング(MHC)処理油;
▲4▼▲1▼〜▲3▼の中から選ばれる2種以上の油の混合油;
▲5▼▲1▼、▲2▼、▲3▼または▲4▼の脱れき油(DAO);
▲6▼▲5▼のマイルドハイドロクラッキング(MHC)処理油;
▲7▼▲1▼〜▲6▼の中から選ばれる2種以上の油の混合油;及び
▲8▼この原料油から得られた潤滑油留分を通常の精製方法によって精製して得られた潤滑油留分からなる基油。
【0020】
特に鉱油系潤滑油基油としては、上記▲1▼〜▲8▼から選ばれる原料油そのままのもの;またはこの原料油から得られた潤滑油留分を水素化分解し、得られた生成物そのままのもの;もしくは該生成物から潤滑油留分を得た後、次に溶剤脱ろうや接触脱ろうなどの脱ろう処理を行い、その後、溶剤精製処理したもの;あるいは溶剤精製処理した後、再び上記脱ろう処理して得られたもの(基油成分)が、鉱油系潤滑油基油中に好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上含む鉱油を使用することが好ましい。
【0021】
合成油としては、例えば、ポリ−α−オレフィン(例えば、1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー、エチレン−プロピレンオリゴマー等)又はその水素化物、イソブテンオリゴマー又はその水素化物、イソパラフィン、ジエステル(例えば、ジトリデシルグルタレート、ジ2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ2−エチルヘキシルセバケート等)、ポリオールエステル(例えば、トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等)、ポリオキシアルキレングリコール、ジアルキルジフェニルエーテル、及びポリフェニルエーテル等を挙げることができる。
【0022】
上記鉱油及び/または合成油は、その目的が粘度と温度の関係改善にあることから、粘度指数95以上であることが好ましく、粘度指数100以上であることがより好ましく、粘度指数110以上であることがさらに好ましい。
【0023】
上記鉱油及び/または合成油を使用する場合、その含有量は、潤滑油基油中に最大85質量%まであることが好ましく、更に好ましくは、80質量%までである。
【0024】
本発明の組成物には、上記アルキルベンゼンと共に、無灰分散剤、アルカリ土類金属系清浄剤、リン系添加剤、及び硫黄系極圧剤が含まれる。これらの添加剤の添加によりさらに摩擦係数を向上させることができる。
【0025】
配合可能な無灰分散剤としては、例えば炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有する窒素化合物又はその誘導体、あるいはアルケニルコハク酸イミドの変性品等が挙げられる。これらの中から任意に選ばれる1種類あるいは2種類以上を配合することができる。
上記アルキル基又はアルケニル基としては、直鎖状でも分枝状でもよいが、好ましいものとしては、具体的には、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン等のオレフィンのオリゴマーやエチレンとプロピレンのコオリゴマーから誘導される分枝状アルキル基や分枝状アルケニル基等が挙げられる。またこれらの基の炭素数は、好ましくは60〜350である。アルキル基又はアルケニル基の炭素数が40未満の場合は化合物の潤滑油基油に対する溶解性が低下し、一方、アルキル基又はアルケニル基の炭素数が400を越える場合は、組成物の低温流動性が悪化するため、それぞれ好ましくない。
【0026】
無灰分散剤の具体的としては、例えば、下記の窒素化合物を挙げることができる。これらは、単独であるいは二種以上を組み合わせて使用することができる。(B−1)炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するコハク酸イミド、あるいはその誘導体
(B−2)炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するベンジルアミン、あるいはその誘導体
(B−3)炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するポリアミン、あるいはその誘導体
【0027】
(B−1)コハク酸イミドとしては、より具体的には、下記一般式(1)又は(2)で示される化合物等が例示できる。
【0028】
【化1】
Figure 0004138311
【0029】
一般式(1)において、R1は炭素数40〜400、好ましくは60〜350のアルキル基又はアルケニル基を示し、aは1〜5、好ましくは2〜4の整数を示す。
【0030】
【化2】
Figure 0004138311
【0031】
一般式(2)において、R2及びR3は、それぞれ個別に、炭素数40〜400、好ましくは60〜350のアルキル基又はアルケニル基を示し、bは0〜4、好ましくは1〜3の整数を示す。
上記コハク酸イミドには、イミド化により、ポリアミンの一端に無水コハク酸が付加した形態の一般式(1)で示される所謂モノタイプのコハク酸イミドと、ポリアミンの両端に無水コハク酸が付加した形態の一般式(2)で示されるいわゆるビスタイプのコハク酸イミドが含まれるが、本発明の組成物においては、そのいずれでも、またこれらの混合物でも使用可能である。
【0032】
(B−2)ベンジルアミンとしては、より具体的には、下記一般式(3)で表せる化合物等が例示できる。
【0033】
【化3】
Figure 0004138311
【0034】
一般式(3)において、R4は、炭素数40〜400、好ましくは60〜350のアルキル基又はアルケニル基を示し、cは1〜5、好ましくは2〜4の整数を示す。
上記ベンジルアミンは、例えば、ポリオレフィン(例えば、プロピレンオリゴマー、ポリブテン、エチレン−α−オレフィン共重合体等)をフェノールと反応させてアルキルフェノールとした後、これにホルムアルデヒドとポリアミン(例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン等)をマンニッヒ反応により反応させることにより得ることができる。
【0035】
(B−3)ポリアミンとしては、より具体的には、下記一般式(4)で表せる化合等が例示できる。
【0036】
5−NH−(CH2CH2NH)d−H (4)
一般式(4)において、R5は、炭素数40〜400、好ましくは60〜350のアルキル基又はアルケニル基を示し、dは1〜5、好ましくは2〜4の整数を示す。
上記ポリアミンは、例えば、ポリオレフィン(例えば、プロピレンオリゴマー、ポリブテン、エチレン−α−オレフィン共重合体等)を塩素化した後、これにアンモニアやポリアミン(例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン等)を反応させることにより得ることができる。
【0037】
無灰分散剤の1例として挙げた上記窒素化合物の窒素含有量は任意であるが、耐摩耗性、酸化安定性及び摩擦特性等の点から、通常その窒素含有量が0.01〜10質量%であり、好ましくは0.1〜10質量%のものを用いることが好ましい。
【0038】
無灰分散剤の1例として挙げた窒素化合物の誘導体としては、具体的には例えば、前述の窒素化合物に炭素数2〜30のモノカルボン酸(脂肪酸等)やシュウ酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の炭素数2〜30のポリカルボン酸を作用させて、残存するアミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を中和したり、アミド化した、いわゆる酸変性化合物;前述の窒素化合物にホウ酸を作用させて、残存するアミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を中和したり、アミド化した、いわゆるホウ素変性化合物;前述の窒素化合物に硫黄化合物を作用させた硫黄変性化合物;及び前述の窒素化合物に酸変性、ホウ素変性、硫黄変性から選ばれた2種以上の変性を組み合わせた変性化合物;等が挙げられる。
【0039】
本発明の組成物において無灰分散剤を配合する場合、その配合量は特に限定されないが、通常組成物全量基準で、0.5〜10.0質量%であるのが好ましく、1〜8.0質量%であるのがより好ましい。無灰分散剤の含有量が0.5質量%未満の場合は、摩擦係数の向上効果が不十分であり、10.0質量%を越える場合は、組成物の低温流動性が大幅に悪化するため、それぞれ好ましくない。
【0040】
本発明においては、アルカリ土類金属系清浄剤を配合することにより、摩擦係数が向上するとともに、繰り返し圧縮に対する強度低下を抑えることができる。配合可能なアルカリ土類金属系清浄剤は、その全塩基価が20〜450mgKOH/g、好ましくは50〜400mgKOH/gの塩基性金属系清浄剤であることが好ましい。全塩基価とは、JIS K2501「石油製品及び潤滑油−中和価試験法」の7.に準拠して測定される過塩素酸法による全塩基価を意味する。アルカリ土類金属系清浄剤の全塩基価が20mgKOH/g未満の場合は、湿式クラッチの繰り返し圧縮に対する強度低下を抑制する効果が不十分であり、一方、全塩基価が450mgKOH/gを越える場合は構造的に不安定であり、組成物の貯蔵安定性が悪化するため、それぞれ好ましくない。
【0041】
全塩基価が20〜400mgKOH/gのアルカリ土類金属系清浄剤の具体例としては、例えば(B−4)アルカリ土類金属スルホネート、(B−5)アルカリ土類金属フェネート及び(B−6)アルカリ土類金属サリシレートを挙げることができる。このられの中から選ばれる1種類又は2種類以上の金属系清浄剤を用いることができる。
【0042】
(B−4)アルカリ土類金属スルホネートとしては、より具体的には、例えば分子量100〜1500、好ましくは200〜700のアルキル芳香族化合物をスルホン化することによって得られるアルキル芳香族スルホン酸のアルカリ土類金属塩を挙げることができる。特にマグネシウム塩及び/又はカルシウム塩が好ましい。アルキル芳香族スルホン酸としては、具体的にはいわゆる石油スルホン酸や合成スルホン酸等が挙げられる。
【0043】
石油スルホン酸としては、一般に鉱油の潤滑油留分のアルキル芳香族化合物をスルホン化したものやホワイトオイル製造時に副生する、いわゆるマホガニー酸等が用いられる。また合成スルフォン酸としては、例えば洗剤の原料となるアルキルベンゼン製造プラントから副生したり、ポリオレフィンをベンゼンにアルキル化することにより得られる、直鎖状や分枝状のアルキル基を有するアルキルベンゼンを原料とし、これをスルホン化したもの、あるいはジノニルナフタレンをスルホン化したもの等が用いられる。またこれらアルキル芳香族化合物のスルホン化剤としては例えば、発煙硫酸や硫酸が用いられる。
【0044】
(B−5)アルカリ土類金属フェネートとしては、より具体的には、炭素数4〜30、好ましくは6〜18の直鎖状又は分枝状のアルキル基を少なくとも1個有するアルキルフェノール、このアルキルフェノールと硫黄を反応させて得られるアルキルフェノールサルファイド又はこのアルキルフェノールとホルムアルデヒドを反応させて得られるアルキルフェノールのマンニッヒ反応生成物のアルカリ土類金属塩を挙げることができる。特にマグネシウム塩及び/又はカルシウム塩等が好ましい。
【0045】
(B−6)アルカリ土類金属サリシレートとしては、より具体的には、炭素数4〜30、好ましくは6〜18の直鎖状又は分枝状のアルキル基を少なくとも1個有するアルキルサリチル酸のアルカリ土類金属塩を挙げることができる。特にマグネシウム塩及び/又はカルシウム塩等が好ましい。
【0046】
上記アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ土類金属フェネート及びアルカリ土類金属サリシレートには、その全塩基価が20〜450mgKOH/gの範囲にある限りにおいて、アルキル芳香族スルホン酸、アルキルフェノール、アルキルフェノールサルファイド、アルキルフェノールのマンニッヒ反応生成物、及びアルキルサリチル酸等を直接マグネシウム及び/又はカルシウムのアルカリ土類金属の酸化物や水酸化物等のアルカリ土類金属塩基と反応させたり、又は一度ナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属塩としてからアルカリ土類金属塩と置換させること等により得られる中性塩(正塩)だけでなく、さらにこれら中性塩(正塩)と過剰のアルカリ土類金属塩やアルカリ土類金属塩基(アルカリ土類金属の水酸化物や酸化物)を水の存在下で加熱することにより得られる塩基性塩や、炭酸ガスの存在下で中性塩(正塩)をアルカリ土類金属の塩基と反応させることにより得られる過塩基性塩(超塩基性塩)も含まれる。なお、これらの反応は、通常溶媒(ヘキサン等の脂肪族炭化水素溶剤、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤、軽質潤滑油基油等)中で行われる。また、金属系清浄剤は通常軽質潤滑油基油等で希釈された状態で市販されており、また、入手可能であるが、一般的に、その金属含有量が1.0〜20質量%、好ましくは2.0〜16質量%のものを用いるのが望ましい。
【0047】
本発明の組成物において、アルカリ土類金属系清浄剤を配合する場合、その配合量は特に限定されないが、通常組成物全量基準で好ましくは0.05〜4.0質量%であり、より好ましくは0.1〜3.0質量%である。アルカリ土類金属系清浄剤の配合量が0.05質量%未満の場合は摩擦係数向上効果が不十分であり、一方、4.0質量%を越えると、組成物の酸化安定性が低下するため、それぞれ好ましくない。
【0048】
本発明の組成物に配合可能なリン系添加剤としては、例えば、アルキルジチオリン酸亜鉛、リン酸、亜リン酸、リン酸モノエステル類、リン酸ジエステル類、リン酸トリエステル類、亜リン酸モノエステル類、亜リン酸ジエステル類、亜リン酸トリエステル類、(亜)リン酸エステル類の塩、及びこれらの混合物等が挙げられる。ここに挙げたリン系添加剤のうち、リン酸、亜リン酸を除いたものは、通常炭素数2〜30、好ましくは3〜20の炭化水素基を含有する化合物である。
【0049】
上記炭素数2〜30の炭化水素基の例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基、及びアリールアルキル基を挙げることができる。
アルキル基の例としては、具体的には、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、及びオクタデシル基等のアルキル基(これらアルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい)を挙げることができる。;シクロアルキル基の例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロヘプチル基等の炭素数5〜7のシクロアルキル基を挙げることができる。;アルキルシクロアルキル基の例としては、メチルシクロペンチル基、ジメチルシクロペンチル基、メチルエチルシクロペンチル基、ジエチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、メチルエチルシクロヘキシル基、ジエチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘプチル基、ジメチルシクロヘプチル基、メチルエチルシクロヘプチル基、及びジエチルシクロヘプチル基等の炭素数6〜11のアルキルシクロアルキル基(アルキル基のシクロアルキル基への置換位置も任意である)を挙げることができる。
【0050】
アルケニル基の例としては、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、及びオクタデセニル基等のアルケニル基(これらアルケニル基は直鎖状でも分枝状でもよく、また二重結合の位置も任意である)を挙げることができる。
【0051】
アリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基等のアリール基を挙げることができる。;アルキルアリール基の例としては、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、及びドデシルフェニル基等の炭素数7〜18のアルキルアリール基(アルキル基は直鎖状でも分枝状でもよく、またアリール基への置換位置も任意である);アリールアルキル基の例としては、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基等の炭素数7〜12のアリールアルキル基(これらアルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい)等を挙げることができる。
【0052】
リン系添加剤として好ましい化合物の例としては、具体的には、リン酸;亜リン酸;ジプロピルジチオリン酸亜鉛、ジブチルジチオリン酸亜鉛、ジペンチルジチオリン酸亜鉛、ジヘキシルジチオリン酸亜鉛、ジヘプチルジチオリン酸亜鉛、ジオクチルジチオリン酸亜鉛等のアルキルジチオリン酸亜鉛(アルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい);モノプロピルホスフェート、モノブチルホスフェート、モノペンチルホスフェート、モノヘキシルホスフェート、モノペプチルホスフェート、モノオクチルホスフェート等のリン酸モノアルキルエステル(アルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい);モノフェニルホスフェート、モノクレジルホスフェート等のリン酸モノ(アルキル)アリールエステル;
【0053】
ジプロピルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジペンチルホスフェート、ジヘキシルホスフェート、ジペプチルホスフェート、ジオクチルホスフェート等のリン酸ジアルキルエステル(アルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい);ジフェニルホスフェート、ジクレジルホスフェート等のリン酸ジ(アルキル)アリールエステル;トリプロピルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリペプチルホスフェート、トリオクチルホスフェート等のリン酸トリアルキルエステル(アルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい);トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート等のリン酸トリ(アルキル)アリールエステル;
【0054】
モノプロピルホスファイト、モノブチルホスファイト、モノペンチルホスファイト、モノヘキシルホスファイト、モノペプチルホスファイト、モノオクチルホスファイト等の亜リン酸モノアルキルエステル(アルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい);モノフェニルホスファイト、モノクレジルホスファイト等の亜リン酸モノ(アルキル)アリールエステル;ジプロピルホスファイト、ジブチルホスファイト、ジペンチルホスファイト、ジヘキシルホスファイト、ジペプチルホスファイト、ジオクチルホスファイト等の亜リン酸ジアルキルエステル(アルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい);ジフェニルホスファイト、ジクレジルホスファイト等の亜リン酸ジ(アルキル)アリールエステル;トリプロピルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリペンチルホスファイト、トリヘキシルホスファイト、トリペプチルホスファイト、トリオクチルホスファイト等の亜リン酸トリアルキルエステル(アルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい);トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト等の亜リン酸トリ(アルキル)アリールエステル;及びこれらの混合物等を挙げることができる。
【0055】
(亜)リン酸エステル類の塩の例としては、具体的には、リン酸モノエステル、リン酸ジエステル、亜リン酸モノエステル、亜リン酸ジエステル等に、アンモニアや炭素数1〜8の炭化水素基又は水酸基含有炭化水素基のみを分子中に含有するアミン化合物等の窒素化合物を作用させて、残存する酸性水素の一部又は全部を中和した塩等を挙げることができる。
【0056】
上記窒素化合物としては、具体的には、アンモニア;モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノプロピルアミン、モノブチルアミン、モノペンチルアミン、モノヘキシルアミン、モノヘプチルアミン、モノオクチルアミン、ジメチルアミン、メチルエチルアミン、ジエチルアミン、メチルプロピルアミン、エチルプロピルアミン、ジプロピルアミン、メチルブチルアミン、エチルブチルアミン、プロピルブチルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン等のアルキルアミン(アルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい);モノメタノールアミン、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、モノブタノールアミン、モノペンタノールアミン、モノヘキサノールアミン、モノヘプタノールアミン、モノオクタノールアミン、モノノナノールアミン、ジメタノールアミン、メタノールエタノールアミン、ジエタノールアミン、メタノールプロパノールアミン、エタノールプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、メタノールブタノールアミン、エタノールブタノールアミン、プロパノールブタノールアミン、ジブタノールアミン、ジペンタノールアミン、ジヘキサノールアミン、ジヘプタノールアミン、ジオクタノールアミン等のアルカノールアミン(アルカノール基は直鎖状でも分枝状でもよい);及びこれらの混合物等を挙げることができる。
【0057】
上記リン系添加剤は、1種類あるいは2種類以上を任意に配合することができる。本発明の組成物にリン系添加剤を配合する場合、その配合量は特に限定されないが、通常組成物全量基準でリン元素として0.005〜0.2質量%であるのが好ましい。リン元素として0.005質量%未満の場合は、耐摩耗性に対して効果がなく、0.2質量%を超える場合は、酸化安定性が悪化するため、それぞれ好ましくない。
【0058】
本発明の組成物に配合可能な硫黄系極圧剤の例としては、硫化油脂、硫化オレフィン、ジヒドロカルビルポリスルフィド、ジチオカーバメート類、及びチアジアゾール類などが挙げられる。
【0059】
硫化油脂としては、例えば、硫化ラード、硫化なたね油、硫化ひまし油、硫化大豆油、及び硫化米ぬか油などの油;硫化オレイン酸などの二硫化脂肪酸;及び硫化オレイン酸メチルなどの硫化エステルを挙げることができる。
硫化オレフィンとしては、例えば下記一般式(5)で示す化合物を挙げることができる。
11 ― Sx ― R12 (5)
一般式(5)において、R11は炭素数2〜15のアルケニル基、R12は炭素数2〜15のアルキル基またはアルケニル基を示し、xは1〜8の整数を示す。
この化合物は炭素数2〜15のオレフィンまたはその2〜4量体を硫黄、塩化硫黄等の硫化剤と反応させることによって得ることができる。オレフィンとしては、例えば、プロピレン、イソブテン、ジイソブテンなどが好ましく用いられる。
【0060】
ジヒドロカルビルポリスルフィドは、下記一般式(6)で表される化合物である。
13 ― Sy ― R14 (6)
一般式(6)において、R13及びR14は、それぞれ炭素数1〜20のアルキル基(シクロアルキル基も含む)、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアリールアルキル基を示し、それらは互いに同一であっても異なっていてもよく、yは2〜8の整数を示す。
上記R13及びR14の例としては、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基、各種ドデシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、ベンジル基、及びフェネチル基などを挙げることができる。
【0061】
ジヒドロカルビルポリスルフィドの例の好ましいものとしては、具体的には、ジベンジルポリスルフィド、ジ−tert−ノニルポリスルフィド、ジドデシルポリスルフィド、ジ−tert−ブチルポリスルフィド、ジオクチルポリスルフィド、ジフェニルポリスルフィド、及びジシクロヘキシルポリスルフィドなどが挙げられる。
【0062】
ジチオカーバメート類としては、下記一般式(7)又は(8)で示される化合物が好ましい具体例として挙げられる。
【0063】
【化4】
Figure 0004138311
【0064】
一般式(7)及び(8)において、R15 、R16 、R17、R18、R19およびR20はそれぞれ個別に、炭素数1〜30、好ましくは1〜20の炭化水素基を示し、R21は水素原子または炭素数1〜30、好ましくは水素原子または1〜20の炭化水素基を示し、eは0〜4の整数を、そしてfは0〜6の整数を示す。
上記R15〜R21で表される炭素数1〜30の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基、及びアリールアルキル基を挙げることができる。
【0065】
チアジアゾール類としては、例えば、下記一般式(9)1,3,4−チアジアゾール化合物、(10)1,2,4−チアジアゾール化合物及び(11)1,4,5−チアジアゾール化合物が挙げられる。
【0066】
【化5】
Figure 0004138311
【0067】
一般式(9)〜(11)において、R22、R23、R24、R25、R26及びR27は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を表し、g、h、i、j、k、及びlは同一でも異なっていてもよく、それぞれ0〜8の整数を表す。
上記R22〜R27で表される炭素数1〜30の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基、及びアリールアルキル基を挙げることができる。
【0068】
本発明の組成物には、硫黄系極圧剤の中からその内の一種の化合物を単独であるいはそれらの中から2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。本発明では、硫黄系極圧剤の配合量は、硫黄元素濃度が組成物全量基準で0.01〜0.3質量%の範囲にあることが好ましい。硫黄系極圧剤の配合量が、硫黄元素として0.01質量%未満の場合は、摩擦係数の向上効果が不十分であり、0.3質量%を超える場合には、組成物の酸化安定性が悪化するうえ、腐食摩耗による耐摩耗性の低下がおこるため、それぞれ好ましくない。
【0069】
本発明の組成物においては、その性能をさらに向上させる目的で、必要に応じて、上記添加剤の他にさらに摩擦調整剤、粘度指数向上剤、酸化防止剤、消泡剤、着色剤等に代表される各種添加剤を単独で又は数種類組み合わせて配合しても良い。
摩擦調整剤としては、潤滑油用の摩擦調整剤として通常用いられる任意の化合物が使用可能であるが、炭素数6〜30のアルキル基又はアルケニル基、特に炭素数6〜30の直鎖アルキル基又は直鎖アルケニル基を分子中に少なくとも1個有する、アミン化合物、イミド化合物、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸金属塩等が挙げられる。
【0070】
アミン化合物としては、炭素数6〜30の直鎖状若しくは分枝状、好ましくは直鎖状の脂肪族モノアミン、直鎖状若しくは分枝状、好ましくは直鎖状の脂肪族ポリアミン、又はこれら脂肪族アミンのアルキレンオキシド付加物等が例示できる。イミド化合物としては、炭素数6〜30の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基又はアルケニル基を有するコハク酸イミド等が挙げられる。脂肪酸エステルとしては、炭素数7〜31の直鎖状又は分枝状、好ましくは直鎖状の脂肪酸と、脂肪族1価アルコール又は脂肪族多価アルコールとのエステル等が例示できる。脂肪酸アミドとしては、炭素数7〜31の直鎖状又は分枝状、好ましくは直鎖状の脂肪酸と、脂肪族モノアミン又は脂肪族ポリアミンとのアミド等が例示できる。脂肪酸金属塩としては、炭素数7〜31の直鎖状又は分枝状、好ましくは直鎖状の脂肪酸の、アルカリ土類金属塩(マグネシウム塩、カルシウム塩等)や亜鉛塩等が挙げられる。
【0071】
本発明においては、上記摩擦調整剤の中から任意に選ばれた1種類あるいは2種類以上の化合物を任意の量で含有させることができるが、通常その含有量は、組成物全量基準で0.01〜5.0質量%、好ましくは0.03〜3.0質量%である。
【0072】
粘度指数向上剤としては、具体的には、各種メタクリル酸エステルから選ばれる1種又は2種以上のモノマーの重合体又は共重合体若しくはその水添物などのいわゆる非分散型粘度指数向上剤、又はさらに窒素化合物を含む各種メタクリル酸エステルを共重合させたいわゆる分散型粘度指数向上剤等が例示できる。他の粘度指数向上剤の具体例としては、非分散型又は分散型エチレン-α-オレフィン共重合体(α −オレフィンとしてはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン等が例示できる)又はその水素化物、ポリイソブチレン又はその水添物、スチレン−ジエン水素化共重合体、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体及びポリアルキルスチレン等を挙げることができる。
【0073】
これらの粘度指数向上剤の分子量は、せん断安定性を考慮して選定する。具体的には、粘度指数向上剤の数平均分子量は、例えば分散型及び非分散型ポリメタクリレートの場合では、5,000〜150,000、好ましくは5,000〜35,000にあり、ポリイソブチレン又はその水素化物の場合は800〜5,000、好ましくは1,000〜4,000にあり、エチレン-α-オレフィン共重合体又はその水素化物の場合は800〜150,000、好ましくは3,000〜12,000にある。
またこれらの粘度指数向上剤の中でもエチレン-α-オレフィン共重合体又はその水素化物を用いた場合には、特にせん断安定性に優れた潤滑油組成物を得ることができる。
本発明においては、上記粘度指数向上剤の中から任意に選ばれた1種類あるいは2種類以上の化合物を任意の量で配合することができるが、通常その配合量は、組成物全量基準で0.1〜40.0質量%である。
【0074】
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系化合物やアミン系化合物等、潤滑油に一般的に使用されているものであれば使用可能である。
具体的には、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール等のアルキルフェノール類;メチレン−4,4−ビスフェノール(2、6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール)等のビスフェノール類;フェニル−α−ナフチルアミン等のナフチルアミン類;ジアルキルジフェニルアミン類;ジ−2−エチルヘキシルジチオリン酸亜鉛等のジアルキルジチオリン酸亜鉛類;(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)脂肪酸(プロピオン酸等)と1価又は多価アルコール(例えば、メタノール、オクタデカノール、1,6ヘキサジオール、ネオペンチルグリコール、チオジエチレングリコール、トリエチレングリコール、及びペンタエリスリトール等)とのエステル等が挙げられる。
【0075】
上記酸化防止剤の中から任意に選ばれた1種類あるいは2種類以上の化合物を任意の量で配合することができるが、通常その配合量は、組成物全量基準で0.01〜5.0質量%である。
【0076】
消泡剤としては、潤滑油用の消泡剤として通常用いられる任意の化合物が使用可能であり、例えば、ジメチルシリコーン、フルオロシリコーン等のシリコーン類が挙げられる。これらの中から任意に選ばれた1種類あるいは2種類以上の化合物を任意の量で配合することができるが、通常その配合量は、組成物全量基準で0.001〜0.05質量%である。
【0077】
着色剤は任意であり、また任意の量を配合することができるが、通常その配合量は、組成物全量基準で0.001〜1.0質量%である。
【0078】
【実施例】
以下、本発明を実施例および比較例を用いてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例に何ら限定されるものではない。
【0079】
表1に示すように、本発明の自動車用変速機油組成物(実施例1〜5)及び比較のための組成物(比較例1〜4)を調製した。
【0080】
【表1】
Figure 0004138311
【0081】
1)分枝アルキルベンゼン
モノアルキルベンゼンとジアルキルベンゼンの混合物
アルキル基:炭素数12の分枝アルキル基
100℃の動粘度;2.1mm2/s
2)分枝アルキルベンゼン
モノアルキルベンゼンとジアルキルベンゼンの混合物
アルキル基:炭素数15の分枝アルキル基
100℃の動粘度;4.0mm2/s
3)水素化精製鉱油
(100℃の動粘度;4.1mm2/s、粘度指数;122)
4)溶剤精製鉱油
(100℃の動粘度;4.3mm2/s、粘度指数;100)
5)ポリα‐オレフィン(100℃の動粘度;1.8mm2/s)
6)ポリα‐オレフィン(100℃の動粘度;6.0mm2/s)
7)アルケニルコハク酸イミド
8)ホウ酸変成アルケニルコハク酸イミド
9)カルシウムスルホネート(全塩基価;300mgKOH/g)
10)ジフェニルハイドロゲンホスファイト
11)チアジアゾール
12)ポリメタクリレート
13)ポリオキシエチレンイソステアリルアミン
14)テトラエチレンペンタミンとイソステアリン酸の反応生成物
15)フェニル‐α‐ナフチルアミン
16)ビスフェノール
【0082】
(1)金属−金属間摩擦特性の評価
実施例1〜5及び比較例1〜4の組成物について、金属ベルト式無段変速機のベルト−プーリー間の金属間摩擦特性を評価するため、ASTM D2714−94に規定する“Standard Test Method for Calibration and Operation of Falex Block-on-Ring Friction and Wear Testing Machine”に準拠して以下に示す条件でLFW−1摩擦試験を行い、各すべり速度において計測された摩擦力から摩擦係数を求めた。実施例1〜5の測定結果を図1に、比較例1〜4の測定結果を図2に示す。
【0083】
試験条件
リング :Falex S-10 Test Ring (SAE 4620 Steel)
ブロック :Falex H-60 Test Block (SAE 01 Steel)
油温 :105℃
試験片接触部の平均ヘルツ圧:0.473GPa
すべり速度:2〜100cm/s
【0084】
図1及び図2に示す結果から、本発明の組成物(実施例1〜5)は、分枝アルキル基を有するアルキルベンゼンを配合しない組成物(比較例1〜4)に比べて、高い金属間摩擦係数を示していることがわかる。
【0085】
(2)湿式クラッチの摩擦特性の評価
実施例2、4及び比較例1、2の各組成物について湿式クラッチの摩擦試験を実施した。湿式クラッチの摩擦試験はJASO M348−95「自動変速機油摩擦特性試験方法」に準拠してSAE No.2試験機で実施した。本試験は動摩擦試験と静摩擦試験から構成されているが、その動摩擦試験を組成物の摩擦係数評価に用いた。動摩擦試験ではクラッチを3600rpm、慣性質量0.343kg・mで無負荷回転させた後、圧力を付加してクラッチを押し付け、回転を停止させる。クラッチの相対回転数が1800rpm時点での発生トルクから摩擦係数を算出し、これを動摩擦係数として整理した。試験では動摩擦試験を繰り返し実施するが、500サイクルおよび5000サイクルにおける摩擦係数から各組成物の摩擦係数向上効果を評価した。各組成物の摩擦係数測定結果を表2に示す。
【0086】
【表2】
Figure 0004138311
【0087】
表2に示す結果から、本発明の組成物(実施例2及び実施例4)は、分枝アルキルを有するアルキルベンゼンを配合しない組成物(比較例1及び比較例2)に比べて、500サイクル、5000サイクルともに高い摩擦係数を示しており、湿式クラッチにおいて高い摩擦係数を安定して得られることがわかる。
【0088】
【発明の効果】
本発明の自動車用変速機油組成物は、湿式クラッチの摩擦係数、及び金属−金属間摩擦係数の向上に有効に作用するため、変速機の高い伝達効率を達成することができる。本発明の組成物は、特に自動車用の自動変速機及び無段変速機油組成物として好適に用いることができ、また湿式クラッチ及び/または湿式ブレーキを有する建設機械や農機、二輪車用ガソリンエンジンや、金属―金属間の摩擦によって動力を伝達する産業用機械等の潤滑油としても好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1〜5の各組成物の金属−金属間摩擦特性を示す図である。
【図2】比較例1〜4の各組成物の金属−金属間摩擦特性を示す図である。

Claims (5)

  1. 分枝アルキル基を有するモノアルキルベンゼン及び/又はジアルキルベンゼンを含む基油に、無灰分散剤、アルカリ土類金属系清浄剤、リン系添加剤及び硫黄系極圧剤を配合してなることを特徴とする、湿式クラッチを有する自動変速機または無段変速機、並びに金属ベルトとプーリーからなる変速機構を有する変速機に用いる自動車用変速機油組成物。
  2. 炭素数9〜18の分枝アルキル基であることを特徴とする請求項1に記載の自動車用変速機油組成物。
  3. 基油が、更に鉱油及び合成油からなる群より選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の自動車用変速機油組成物。
  4. 無灰分散剤が、炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するコハク酸イミドあるいはその誘導体であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかの項に記載の自動車用変速機油組成物。
  5. さらに摩擦調整剤を含有することを特徴とする請求項1及至4のいずれかの項に記載の自動車用変速機油組成物。
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