JP2006206924A - 金属ベルト式無段変速機用潤滑油組成物 - Google Patents

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健一 小宮
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彰 矢口
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Abstract

【課題】ベルト−プーリー間の高い金属間摩擦係数を出現できると共に、それら部位の耐摩耗性も改善できる新規な金属ベルト式無段変速機用潤滑油組成物を提供する。
【解決手段】潤滑油基油に、窒素含有量が1.3質量%以上であるホウ素含有無灰分散剤を組成物全量潤滑油基油に、(A)窒素含有量が1.3質量%以上であり、ホウ素含有量が0.2質量%以上であるホウ素含有無灰分散剤を潤滑油組成物全量基準で0.05〜10.0質量%含有してなることを特徴とする金属ベルト式無段変速機用潤滑油組成物。
【選択図】図1

Description

本発明は金属ベルト式無段変速機用潤滑油組成物に関し、詳しくは、特に金属ベルト式無段変速機におけるベルトとプーリー間の摩擦特性及び耐摩耗性に優れる、金属ベルト式無段変速機用潤滑油組成物に関する。
金属ベルト式無段変速機は、金属でできたベルトとプーリー間の摩擦によりトルクを伝達し、またプーリーの半径比を変えることにより変速を行うという機構を有する変速機であり、変速によるエネルギー損失が小さいという点から、近年、自動車用変速機として脚光を浴びるようになってきた。
この金属ベルト式無段変速機に用いられる潤滑油としては、金属ベルトと金属プーリー間の摩擦特性や潤滑特性に優れることが極めて重視されるほか、トルクを取り出すギヤやそれらを支えるベアリング用の潤滑油としての性能や、変速比を決定するための油圧制御用媒体としての性能、即ち油圧作動油としての性能も要求される。
また、この無段変速機が前後進切り替え湿式クラッチやトルクコンバーターのロックアップシステムを備えている場合には、上記の性能に加えて、湿式クラッチの摩擦特性を制御する性能も要求される。
このように、金属ベルト式無段変速機用潤滑油には様々な性能が要求されるため、一般には自動変速機油(ATF)が使用されている。しかしながら、ATFを金属ベルト式無段変速機用潤滑油として用いた場合には、油圧作動油としての性能や湿式クラッチの摩擦特性を制御する機能には優れるものの、ベルトとプーリーの金属間摩擦係数が十分でない。また、金属ベルト式無段変速機ではベルトとプーリーの接触に高い油圧が適用されるため、これら金属部位の耐摩耗性が十分でなかった。
従って、ATFを使用した従来の金属ベルト式無段変速機は伝達トルク容量に限界があり、小型自動車にしか搭載できないという欠点があった。
本発明はこのような実情に鑑みなされたものであり、その目的は、金属ベルト式無段変速機に用いた場合に、ベルト−プーリー間の高い金属間摩擦係数を出現できると共に、それら部位の耐摩耗性も改善できる新規な金属ベルト式無段変速機用潤滑油組成物を提供することにある。本発明に係る金属ベルト式無段変速機用潤滑油組成物を使用することにより、ベルト−プーリー間で高いトルクを伝達することができるようになり、大型自動車への搭載も可能となる。
本発明の金属ベルト式無段変速機用潤滑油組成物は、潤滑油基油に、窒素含有量が1.3質量%以上であり、ホウ素含有量が0.2質量%以上であるホウ素含有無灰分散剤(以下これを(A)成分と呼ぶ)を潤滑油組成物全量基準で0.05〜10.0質量%含有してなるものである。
本発明に係る金属ベルト式無段変速機用潤滑油組成物の好ましいものの一つは、上に規定した量の(A)成分に加えて、塩基性金属系清浄剤(以下これを(B)成分と呼ぶ)を含有するものである。
本発明に係る金属ベルト式無段変速機用潤滑油組成物の好ましいものの他の一つは、上に規定した量の(A)成分に加えて、リン系化合物(以下これを(C)成分と呼ぶ)を含有するものである。
本発明に係る金属ベルト式無段変速機用潤滑油組成物の好ましいものの別の一つは、上に規定した量の(A)成分及び(B)成分に加えて、(C)成分を含有するものである。
本発明に係る金属ベルト式無段変速機用潤滑油組成物の好ましいものの他の一つは、上に規定した量の(A)成分を含有すると共に、ジチオリン酸亜鉛(以下これを(D)成分と呼ぶ)を実質的に含有しないものである。
本発明に係る金属ベルト式無段変速機用潤滑油組成物の好ましいものの別の一つは、上に規定した量の(A)成分及び(B)成分を含有すると共に、(D)成分を実質的に含有しないものである。
本発明に係る金属ベルト式無段変速機用潤滑油組成物の好ましいもののさらに別の一つは、上に規定した量の(A)成分及び(C)成分を含有すると共に、(D)成分を実質的に含有しないものである。
本発明に係る金属ベルト式無段変速機用潤滑油組成物の好ましいもののさらに別の一つは、上に規定した量の(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有すると共に、(D)成分を実質的に含有しないものである。
本発明に係る金属ベルト式無段変速機用潤滑油組成物を使用することにより、ベルト−プーリー間で高いトルクを伝達することができるようになり、大型自動車への搭載も可能となる。
以下、本発明の内容をさらに詳細に説明する。
本発明の金属ベルト式無段変速機用潤滑油組成物における潤滑油基油としては、通常の潤滑油の基油として用いられる任意の鉱油及び/又は合成油が使用できる。
使用可能な鉱油の具体例としては、例えば、原油を常圧蒸留及び減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理等の精製処理等を適宜組み合わせて精製したパラフィン系、ナフテン系等の各油やノルマルパラフィン等が例示できる。
また合成油としては、特に制限はないが、ポリ−α−オレフィン(1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー、エチレン−プロピレンオリゴマー等)及びその水素化物、イソブテンオリゴマー及びその水素化物、イソパラフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ジエステル(ジトリデシルグルタレート、ジ2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ2−エチルヘキシルセバケート等)、ポリオールエステル(トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等)、ポリオキシアルキレングリコール、ジアルキルジフェニルエーテル、並びにポリフェニルエーテル等が使用できる。
なお、これら潤滑油基油の動粘度は、特に限定されず任意であるが、通常、100℃における動粘度が1〜10mm/sの範囲にあることが好ましく、2〜8mm/sの範囲にあることがより好ましい。
本発明の金属ベルト式無段変速機用潤滑油組成物における(A)成分は、窒素含有量が1.3質量%以上のホウ素含有無灰分散剤である。
(A)成分は、その窒素含有量の下限値が1.3質量%、好ましくは1.4質量%であることが重要である。(A)成分として窒素含有量が1.3質量%未満のホウ素含有無灰分散剤を用いた場合は、金属ベルト式無段変速機のベルト−プーリー間の金属間摩擦係数を向上させる効果に乏しいため好ましくない。一方、(A)成分の窒素含有量の上限値は任意であるが、潤滑油組成物の耐摩耗性や酸化安定性に悪影響を及ぼさない点から、窒素含有量は通常10質量%以下であるのが好ましい。
また、本発明の(A)成分は、ホウ素を含有していることが重要である。(A)成分としてホウ素を含有しない無灰分散剤を用いた場合は、金属ベルト式無段変速機のベルト−プーリー間の金属間摩擦係数を向上させる効果に乏しいうえ、潤滑油組成物としての耐摩耗性や酸化安定性に劣るため好ましくない。なお、(A)成分のホウ素含有量は、金属ベルト式無段変速機のベルト−プーリー間の摩擦係数向上効果、耐摩耗性及び酸化安定性に優れる点から、その含有量の下限値は、0.2質量%であることが必要であり、0.4質量%であることが好ましい。一方、ホウ素含有量の上限値は、4.0質量%であることが好ましく、2.5質量%であることがより好ましい。
(A)成分の具体例としては、例えば、炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有する含窒素化合物又はその誘導体を、ホウ素化合物で変性した変性物が挙げられる。これら変性物の中から任意に選ばれる1種類あるいは2種類以上が、(A)成分として使用できる。
上記のアルキル基又はアルケニル基は、直鎖状でも分枝状でも良いが、好ましいものとしては、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン等のオレフィンのオリゴマーやエチレンとプロピレンのコオリゴマーから誘導される分枝状アルキル基や分枝状アルケニル基等が挙げられる。
このアルキル基又はアルケニル基の炭素数は任意であるが、好ましくは40〜400、より好ましくは60〜350である。アルキル基又はアルケニル基の炭素数が40未満の場合は化合物の潤滑油基油に対する溶解性が低下する恐れがあり、一方、炭素数が400を越える場合は、潤滑油組成物の低温流動性が悪化する恐れがあるため、それぞれ好ましくない。
上記した含窒素化合物又はその誘導体の具体例としては、例えば、
(A−1)炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するコハク酸イミド、あるいはその誘導体、
(A−2)炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するベンジルアミン、あるいはその誘導体、
(A−3)炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するポリアミン、あるいはその誘導体
が挙げられる。
前記(A−1)群のコハク酸イミドとしては、より具体的には、例えば、下記の一般式(1)又は(2)で示される化合物等が挙げられる。
Figure 2006206924
(一般式(1)中、Rは炭素数40〜400、好ましくは60〜350のアルキル基又はアルケニル基を示し、aは1〜5、好ましくは2〜4の整数を示す。)
Figure 2006206924
(一般式(2)中、R及びRは、それぞれ個別に炭素数40〜400、好ましくは60〜350のアルキル基又はアルケニル基を示し、bは0〜4、好ましくは1〜3の整数を示す。)
なお、コハク酸イミドとしては、イミド化に際してポリアミンの一端に無水コハク酸が付加した一般式(1)のようないわゆるモノタイプのコハク酸イミドと、ポリアミンの両端に無水コハク酸が付加した一般式(2)のようないわゆるビスタイプのコハク酸イミドがあるが、本発明の(A)成分には、モノタイプ及びビスタイプのコハク酸イミドをホウ素化合物で変性した変性物がいずれも使用可能であって、モノタイプの変性物とビスタイプの変性物を混合使用しても差し支えない。
前記(A−2)群のベンジルアミンとしては、より具体的には、例えば、一般式(3)で表せる化合物等が挙げられる。
Figure 2006206924
(一般式(3)中、Rは炭素数40〜400、好ましくは60〜350のアルキル基又はアルケニル基を示し、cは1〜5、好ましくは2〜4の整数を示している。)
このベンジルアミンは任意の方法で製造することができる。例えば、プロピレンオリゴマー、ポリブテン、エチレン−α−オレフィン共重合体等のポリオレフィンをフェノールと反応させてアルキルフェノールとした後、これにホルムアルデヒドとジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン等のポリアミンをマンニッヒ反応により反応させることにより一般式(4)で表されるベンジルアミンを得ることができる。
前記(A−3)群のポリアミンとしては、より具体的には、例えば、一般式(4)で表せる化合物等が挙げられる。
Figure 2006206924
(一般式(4)中、Rは炭素数40〜400、好ましくは60〜350のアルキル基又はアルケニル基を示し、dは1〜5、好ましくは2〜4の整数を示している。)
このポリアミンも任意の方法で製造することができ、例えば、プロピレンオリゴマー、ポリブテン、エチレン−α−オレフィン共重合体等のポリオレフィンを塩素化した後、これにアンモニヤやエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン等のポリアミンを反応させることにより一般式(4)で表されるポリアミンを得ることができる。
(A)成分の前駆体として使用される含窒素化合物の誘導体には、前述したような含窒素化合物に炭素数2〜30のモノカルボン酸(脂肪酸等)やシュウ酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の炭素数2〜30のポリカルボン酸を作用させて、残存するアミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を中和したり、アミド化した、いわゆるカルボン酸変性化合物や、前述したような含窒素化合物に硫黄化合物を作用させた硫黄変性化合物が含まれる。
本発明の(A)成分は、上述の含窒素化合物又はそれらの誘導体の1種又は2種以上をホウ素化合物で変性したものである。
ホウ素化合物による変性の方法は何ら限定されるものでなく、任意の方法を採用することができる。一例を挙げれば、上述の含窒素化合物又はそれらの誘導体に、ホウ酸、ホウ酸塩又はホウ酸エステル等のホウ素化合物を作用させて、含窒素化合物又はそれらの誘導体中に残存するアミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を中和するか、アミド化する方法がある。
なお、ここでいうホウ酸には、オルトホウ酸、メタホウ酸及びテトラホウ酸等が包含される。またホウ酸塩には、ホウ酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩又はアンモニウム塩等が包含され、より具体的には、例えば、メタホウ酸リチウム、四ホウ酸リチウム、五ホウ酸リチウム、過ホウ酸リチウム等のホウ酸リチウム;メタホウ酸ナトリウム、二ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、五ホウ酸ナトリウム、六ホウ酸ナトリウム、八ホウ酸ナトリウム等のホウ酸ナトリウム;メタホウ酸カリウム、四ホウ酸カリウム、五ホウ酸カリウム、六ホウ酸カリウム、八ホウ酸カリウム等のホウ酸カリウム;メタホウ酸カルシウム、二ホウ酸カルシウム、四ホウ酸三カルシウム、四ホウ酸五カルシウム、六ホウ酸カルシウム等のホウ酸カルシウム;メタホウ酸マグネシウム、二ホウ酸マグネシウム、四ホウ酸三マグネシウム、四ホウ酸五マグネシウム、六ホウ酸マグネシウム等のホウ酸マグネシウム;及びメタホウ酸アンモニウム、四ホウ酸アンモニウム、五ホウ酸アンモニウム、八ホウ酸アンモニウム等のホウ酸アンモニウム等が含まれる。また、ホウ酸エステルとしては、ホウ酸と好ましくは炭素数1〜6のアルキルアルコールとのエステルが挙げられ、より具体的には、例えば、ホウ酸モノメチル、ホウ酸ジメチル、ホウ酸トリメチル、ホウ酸モノエチル、ホウ酸ジエチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸モノプロピル、ホウ酸ジプロピル、ホウ酸トリプロピル、ホウ酸モノブチル、ホウ酸ジブチル、ホウ酸トリブチル等が挙げられる。
上に説明した含窒素化合物又はその誘導体に、ホウ酸化合物を作用させて得られる変性物は、いずれも本発明の(A)成分として使用可能であるが、特に金属ベルト式無段変速機のベルト−プーリー間の摩擦係数向上効果に優れる点から、上述した(A−1)群のコハク酸イミド又はその誘導体を含窒素化合物とし、これをホウ素化合物により変性したもの1種又は2種以上を、(A)成分に用いることが好ましい。
本発明の金属ベルト式無段変速機用潤滑油組成物において、(A)成分の含有量の下限値は、潤滑油組成物全量基準で、0.05質量%、好ましくは0.1質量%であり、一方、その含有量の上限値は、潤滑油組成物全量基準で、10.0質量%、好ましくは7.0質量%である。(A)成分の含有量が潤滑油組成物全量基準で0.05質量%未満の場合は、(A)成分配合によるベルト−プーリー間の摩擦係数の向上効果に乏しく、一方、(A)成分の含有量が10.0質量%を超える場合は、潤滑油組成物の低温流動性が大幅に悪化するため、それぞれ好ましくない。
本発明の金属ベルト式無段変速機用潤滑油組成物には、(A)成分に加えてさらに(B)成分である塩基性金属系清浄剤を含有させることが好ましい。(B)成分を併用することにより、金属ベルト式無段変速機におけるベルト−プーリー間の摩擦特性を一段と向上(摩擦係数のすべり速度依存性を低減)させことができ、その耐摩耗性を向上させることが可能となる。
(B)成分の全塩基価は任意であるが、通常、その下限値は好ましくは20mgKOH/g、より好ましくは100mgKOH/g、さらに好ましくは150mgKOH/gである。一方、その上限値は、好ましくは500mgKOH/g、より好ましくは450mg/KOHである。全塩基価が20mgKOH/g未満の場合は潤滑油組成物の酸化安定性が悪化する恐れがあり、一方、全塩基価が500mgKOH/gを超える場合は、潤滑油組成物の貯蔵安定性に悪影響を及ぼす恐れがあるため、それぞれ好ましくない。
なお、ここで言う全塩基価とは、JIS K2501「石油製品及び潤滑油−中和価試験法」の7.に準拠して測定される過塩素酸法による全塩基価を意味している。
(B)成分の好ましい具体例としては、
(B−1)全塩基価が100〜450mgKOH/gの塩基性アルカリ土類金属スルフォネート、
(B−2)全塩基価が20〜450mgKOH/gの塩基性アルカリ土類金属フェネート、
(B−3)全塩基価が100〜450mgKOH/gの塩基性アルカリ土類金属サリシレート、
を挙げることができる。
(B−1)のアルカリ土類金属スルフォネートとしては、例えば、分子量100〜1500、好ましくは200〜700のアルキル芳香族化合物をスルフォン化することによって得られるアルキル芳香族スルフォン酸のアルカリ土類金属塩、特にマグネシウム塩及び/又はカルシウム塩が好ましい。
塩を形成する前のアルキル芳香族スルフォン酸には、いわゆる石油スルフォン酸や合成スルフォン酸等が含まれ、石油スルフォン酸には、一般に鉱油の潤滑油留分のアルキル芳香族化合物をスルフォン化したものやホワイトオイル製造時に副生するいわゆるマホガニー酸等が含まれる。また、合成スルフォン酸には、例えば、洗剤の原料となるアルキルベンゼン製造プラントから副生されるアルキルベンゼン又はベンゼンをポリオレフィンでアルキル化して得られる直鎖状又は分枝状アルキルベンゼンをスルフォン化したアルキルアリールスルフォン酸、あるいはジノニルナフタレンをスルフォン化したジノニルナフタレンスルフォン酸等が含まれる。アルキル芳香族化合物のスルフォン化に用いるスルフォン化剤としては、通常、発煙硫酸や硫酸が用いられる。
(B−2)のフェネートとしては、例えば、炭素数4〜30、好ましくは6〜18の直鎖状又は分枝状のアルキル基を少なくとも1個有するアルキルフェノールのアルカリ土類金属塩、前記アルキルフェノールと元素状硫黄を反応させて得られるアルキルフェノールサルファイドのアルカリ土類金属塩、前記アルキルフェノールとアセトンとを縮合脱水反応させて得られるメチレンビスアルキルフェノールのアルカリ土類金属塩等を挙げることができ、これらのアルカリ土類金属塩のなかでは、特にマグネシウム塩及び/又はカルシウム塩が好ましい。
(B−3)のサリシレートとしては、例えば、炭素数4〜30、好ましくは6〜18の直鎖状又は分枝状のアルキル基を少なくとも1個有するアルキルサリチル酸のアルカリ土類金属塩が挙げられ、なかでも特にマグネシウム塩及び/又はカルシウム塩が好ましい。
(B−1)のスルフォネート、(B−2)のフェネート及び(B−3)のサリシレートは、それぞれ全塩基価が先に規定した範囲内にある限り、その製造ルートを問わない。換言すれば、これらの塩基性塩は、アルキル芳香族スルフォン酸、アルキルフェノール、アルキルフェノールサルファイド、アルキルフェノールから誘導されるマンニッヒ反応生成物、アルキルサリチル酸等を、アルカリ土類金属の酸化物や水酸化物等の塩基と直接反応させてえられる塩基性塩であって差し支えなく、また、アルキル芳香族スルフォン酸等を一旦ナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属塩とし、次いでそのアルカリ金属をアルカリ土類に置換させて中性塩(正塩)を取得し、しかる後、この中性塩を過剰の適当なアルカリ土類金属塩やアルカリ土類金属塩基(アルカリ土類金属の水酸化物や酸化物)と共に、水の存在下で加熱することにより得られる塩基性塩であって差し支えない。さらにまた、上記の中性塩(正塩)や塩基性塩を炭酸ガスの存在下でアルカリ土類金属塩基と反応させることにより得られる過塩基性塩(超塩基性塩)であっても差し支えない。
なお、これらの反応は、通常、溶媒(ヘキサン等の脂肪族炭化水素溶剤、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤、軽質潤滑油基油等)中で行われる。
本発明の(B)成分としては、上記した塩基性金属系清浄剤の1種又は2種以上が使用可能である。本発明の金属ベルト式無段変速機用潤滑油組成物における(B)成分の含有量も任意に選ぶことができる。しかし、通常は(B)成分を潤滑油組成物全量基準の金属元素量として、0.03質量%以上含有していることが好ましく、0.05質量%以上含有していることがより好ましい。そして、その上限値は、潤滑油組成物全量基準の金属元素量として好ましくは0.5質量%、より好ましくは0.2質量%である。(B)成分の含有量が、潤滑油組成物全量基準で金属元素量として0.03質量%に満たない場合は、(B)成分併用による潤滑油組成物の摩擦特性の向上効果に乏しく、一方、含有量が、潤滑油組成物全量基準で金属元素量として0.5質量%を越える場合は、潤滑油組成物の酸化安定性が低下する恐れがあるため、それぞれ好ましくない。
なお、本発明の(B)成分に市販の金属系清浄剤を使用する場合には、市販金属系清浄剤は軽質潤滑油基油等で希釈されているのが通常であるので、その金属含有量が1.0〜20質量%、好ましくは2.0〜16質量%のものを用いるのが望ましい。
本発明の金属ベルト式無段変速機用潤滑油組成物には、さらに、(C)成分であるリン系化合物を含有させることが好ましい。(C)成分を併用することにより、金属ベルト式無段変速機におけるベルト−プーリー間の摩擦係数を増大させることができると共に、その耐摩耗性を向上させることができる。
(C)成分としては、リン酸、亜リン酸、下記の一般式(5)で表されるリン酸エステル(ホスフェート)、下記の一般式(6)で表される亜リン酸エステル(ホスファイト)、並びにこれらリン系化合物の誘導体からなる群から選ばれる1種又は2種以上の化合物が使用可能であって、2種以上を使用する場合は混合割合を問わない。
Figure 2006206924
(一般式(5)中、R、R及びRは、それぞれ個別に、水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示し、かつ、R、R及びRのうち少なくとも1つは炭化水素基であcり、X、X、X及びXは、それぞれ個別に、酸素原子又は硫黄原子を示す。)
Figure 2006206924
(一般式(6)中、R、R10及びR11は、それぞれ個別に、水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示し、かつ、R、R10及びR11のうち少なくとも1つは炭化水素基であり、X、X及びXは、それぞれ個別に、酸素原子又は硫黄原子を示す。)
上記一般式(5)及び(6)において、R、R、R、R、R10及びR11は、それぞれ個別に水素原子であるか、あるいは炭素数1〜30、好ましくは炭素数3〜30、より好ましくは炭素数4〜24の炭化水素基であって、かつ、R、R及びRのうち少なくとも1つと、R、R10及びR11のうち少なくとも1つは炭化水素基である。この炭化水素基の炭素数が30を超える場合は、潤滑油組成物の摩擦特性が悪化する。
、R、R、R、R10及びR11がとり得る炭素数1〜30の炭化水素基の具体例を例示すれば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、トリアコンチル基等のアルキル基(これらアルキル基は直鎖状でも分枝状でも良い);ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基、テトラコセニル基、ペンタコセニル基、ヘキサコセニル基、ヘプタコセニル基、オクタコセニル基、ノナコセニル基、トリアコンテニル基等のアルケニル基(これらアルケニル基は直鎖状でも分枝状でも良く、また二重結合の位置も任意である);シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の炭素数5〜7のシクロアルキル基;メチルシクロペンチル基、ジメチルシクロペンチル基、メチルエチルシクロペンチル基、ジエチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、メチルエチルシクロヘキシル基、ジエチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘプチル基、ジメチルシクロヘプチル基、メチルエチルシクロヘプチル基、ジエチルシクロヘプチル基等の炭素数6〜11のアルキルシクロアルキル基(アルキル基の置換位置は任意である);フェニル基、ナフチル基等のアリール基:トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、ドデシルフェニル基等の炭素数7〜18の各アルキルアリール基(アルキル基は直鎖状でも分枝状でも良く、また二重結合の位置も任意である);ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基等の炭素数7〜12の各アリールアルキル基(アルキル基は直鎖状でも分枝状でも良く、またアリール基の置換位置も任意である)等が挙げられるが、これらの中でもアルキル基、アルケニル基、アリール基及びアルキルアリール基が好ましい。
(C)成分として使用可能なリン系化合物の誘導体には、リン酸、亜リン酸、前記一般式(5)においてR、R及びRのうち1つ又は2つが水素である酸性リン酸エステル(アシッドホスフェート)、若しくは前記一般式(6)においてR、R10及びR11のうち1つ又は2つが水素である水素化亜リン酸エステル(ハイドロジェンホスファイト)等のリン系化合物に、アンモニア、炭素数1〜8のアミン又は炭素数1〜8のアルカノールアミンの如き含窒素化合物を作用させて、残存する酸性水素の一部又は全部を中和した塩等がある。
リン系化合物に作用させる含窒素化合物の具体的としては、例えば、アンモニア;モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノプロピルアミン、モノブチルアミン、モノペンチルアミン、モノヘキシルアミン、モノヘプチルアミン、モノオクチルアミン、ジメチルアミン、メチルエチルアミン、ジエチルアミン、メチルプロピルアミン、エチルプロピルアミン、ジプロピルアミン、メチルブチルアミン、エチルブチルアミン、プロピルブチルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン等のアルキルアミン(アルキル基は直鎖状でも分枝状でも良い);モノメタノールアミン、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、モノブタノールアミン、モノペンタノールアミン、モノヘキサノールアミン、モノヘプタノールアミン、モノオクタノールアミン、モノノナノールアミン、ジメタノールアミン、メタノールエタノールアミン、ジエタノールアミン、メタノールプロパノールアミン、エタノールプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、メタノールブタノールアミン、エタノールブタノールアミン、プロパノールブタノールアミン、ジブタノールアミン、ジペンタノールアミン、ジヘキサノールアミン、ジヘプタノールアミン、ジオクタノールアミン等のアルカノールアミン(アルカノール基は直鎖状でも分枝状でも良い);及びこれらの混合物等が挙げられる。
(C)成分としては、摩擦特性により優れる点から、リン酸、亜リン酸、酸性リン酸エステル(アシッドホスフェート)、水素化亜リン酸エステル(ハイドロジェンホスファイト)並びにリン系化合物のアミン塩又はアルカノールアミン塩が好ましい。
(C)成分に用いて特に好ましい化合物としては、金属ベルト式無段変速機におけるベルト−プーリー間の摩擦係数向上効果に優れる点から、ジブチルハイドロジェンホスファイト、トリブチルホスファイト、ジオクチルハイドロジェンホスファイト、トリオクチルホスファイト、ジ−2−エチルヘキシルハイドロジェンホスファイト、トリ−2−エチルヘキシルホスファイト、ジラウリルハイドロジェンホスファイト、トリラウリルホスファイト、ジオレイルハイドロジェンホスファイト、トリオレイルホスファイト、ジステアリルハイドロジェンホスファイト、トリステアリルホスファイト、ジフェニルハイドロジェンホスファイト、トリフェニルホスファイト、ジクレジルハイドロジェンホスファイト、トリクレジルホスファイト;又はこれらの混合物を例示することができる。
本発明の(C)成分としては、上記したリン系化合物(その誘導体も含む)の1種又は2種以上が使用可能である。本発明の金属ベルト式無段変速機用潤滑油組成物における(C)成分の含有量も任意に選ぶことができる。しかし、その含有量の下限値は潤滑油組成物全量基準のリン元素量として、通常、0.005質量%、好ましくは0.01質量%であり、一方、その上限値は、潤滑油組成物全量基準のリン元素量として0.5質量%、好ましくは0.3質量%である。(C)成分の含有量が潤滑油組成物全量基準でリン元素量として0.005質量%に満たない場合は、(C)成分併用によるベルト−プーリー間の摩擦係数の向上効果及び耐摩耗性向上効果に乏しく、一方、含有量が潤滑油組成物全量基準でリン元素量として0.5質量%を越える場合は、潤滑油組成物の酸化安定性が低下したり、またシール材や樹脂材等の耐久性に悪影響を及ぼす恐れがある。
本発明によれば、潤滑油基油に(A)成分を特定量含有させるだけで、また、(B)成分及び(C)成分のいずれか一方又は両方の成分を、特定量の(A)成分と共に潤滑油基油に含有させるだけで、金属ベルト式無段断変速機におけるベルト−プーリー間の摩擦係数を増大させ、耐摩耗性を向上させる効果に優れた潤滑油組成物を得ることができるが、その性能を更に向上させる目的で、必要に応じて、さらに極圧添加剤、無灰分散剤、摩擦調整剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、酸化防止剤、腐食防止剤、ゴム膨潤剤、消泡剤、着色剤等に代表される各種添加剤を単独で、又は数種類組み合わせて含有させても良い。 しかし、本発明の金属ベルト式無段変速機用潤滑油組成物は、(D)成分であるジチオリン酸亜鉛を実質的に含有していないことが望ましい。
なお、「(D)成分を実質的に含有しない」とは、(D)成分を全く含有しないか、含有しても、(D)成分の含有量が潤滑油組成物全量基準の亜鉛元素量として0.03質量%以下であることを意味する。本発明においては、(D)成分を全く含有しないことがより好ましい。ちなみに、(D)成分を潤滑油組成物全量基準の亜鉛元素量として0.03質量%を超えて含有する場合には、ベルト−プーリー間の摩擦係数の耐久性が悪化し、油劣化時に当該摩擦係数が低下してしまう恐れがある。
(D)成分の具体例としては、下記の一般式(7)で表されるジチオリン酸亜鉛等が挙げられる。
Figure 2006206924
(一般式(7)中、R12、R13、R14及びR15は、それぞれ個別に、炭素数1〜18のアルキル基、アリール基又は炭素数7〜18のアルキルアリール基を示す。)
一般式(7)のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等が知られているが、炭素数3〜8のアルキル基が一般的である。これらアルキル基には直鎖状も分枝状も含まれ、また、第1級(プライマリー)アルキル基も第2級(セカンダリー)アルキル基も含まれる。念のため付言すると、一般式(7)のジチオリン酸亜鉛を合成するに際して、R12、R13、R14及びR15を導入するためにα−オレフィンの混合物を原料とした場合には、一般式(7)のジアルキルジチオリン酸亜鉛は、アルキル基の構造が異なるジアルキルジチオリン酸亜鉛の混合物の形で取得される。
一般式(7)のアリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられ、同じくアルキルアリール基の具体例としては、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、ドデシルフェニル基等(これらのアルキル基は直鎖状も分枝状も含まれ、また全ての置換異性体も含まれる)が挙げられる。
本発明の潤滑油組成物に含有させることができる極圧添加剤としては、例えば、ジチオリン酸亜鉛類、ジスルフィド類、硫化オレフィン類、硫化油脂類等の硫黄系化合物等がある。これら化合物の任意の1種又は2種以上を任意の量で潤滑油組成物中に含有させることができるが、通常、その含有量は、潤滑油組成物全量基準で0.01〜5.0質量%の範囲とすることが望ましい。
本発明の潤滑油組成物に無灰分散剤を含有させることもできる。この無灰分散剤としては、先に説明した(A)成分以外の無灰分散剤が挙げられる。具体的には、ホウ素を含有しないコハク酸イミド系無灰分散剤や窒素含有量が1.3質量%未満であるホウ素含有コハク酸イミド系無灰分散剤等が挙げられる。ここでいうコハク酸イミド系無灰分散剤には、ホウ素化合物で変性する以前の上記(A−1)群に属する化合物が含まれる。これらの無灰分散剤を配合することにより、本発明の潤滑油組成物はその清浄性や摩擦特性がさらに向上する。
(A)成分以外の無灰分散剤は1種又は2種以上が使用でき、その配合量も任意に選ぶことができるが、本発明における当該無灰分散剤の含有量は、潤滑油組成物全量基準で通常0.05〜10質量%、好ましくは1.0〜7.0質量%の範囲にある。
本発明の金属ベルト式無段変速機用潤滑油組成物には、潤滑油用の摩擦調整剤として通常用いられる任意の化合物も配合することができる。使用可能な摩擦調整剤を例示すれば、アミン化合物、脂肪酸アミド、脂肪酸金属塩等が挙げられる。アミン化合物としては、炭素数6〜30の直鎖状又は分枝状、好ましくは直鎖状の脂肪族モノアミン、直鎖状若しくは分枝状、好ましくは直鎖状の脂肪族ポリアミン、これら脂肪族アミンのアルキレンオキシド付加物等が例示できる。脂肪酸アミドとしては、炭素数7〜31の直鎖状又は分枝状、好ましくは直鎖状の脂肪酸と、脂肪族モノアミン又は脂肪族ポリアミンとのアミド等が例示できる。また、脂肪酸金属塩としては、炭素数7〜31の直鎖状又は分枝状、好ましくは直鎖状の脂肪酸のアルカリ土類金属塩(マグネシウム塩、カルシウム塩等)や亜鉛塩等が挙げられる。
摩擦調整剤には上記した各化合物の中から任意に選ばれた1種又は2種以上が使用でき、その配合量も任意に選ぶことができるが、本発明の組成物における当該摩擦調整剤の含有量は、潤滑油組成物全量基準で通常0.01〜5.0質量%、好ましくは0.03〜3.0質量%の範囲にある。
本発明の潤滑油組成物に添加可能な粘度指数向上剤としては、各種メタクリル酸エステルから選ばれる1種又は2種以上のモノマーの共重合体若しくはその水添物等のいわゆる非分散型粘度指数向上剤、又はさらに窒素化合物を含む各種メタクリル酸エステルを共重合させたいわゆる分散型粘度指数向上剤等が例示できる。他の粘度指数向上剤の具体例としては、非分散型又は分散型エチレン−α−オレフィン共重合体(α−オレフィンとしてはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン等が例示できる)及びその水素化物、ポリイソブチレン及びその水添物、スチレン−ジエン水素化共重合体、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体及びポリアルキルスチレン等がある。
これら粘度指数向上剤の分子量は、せん断安定性を考慮して選定することが必要である。具体的には、粘度指数向上剤の数平均分子量は、例えば、分散型及び非分散型ポリメタクリレートの場合では、5,000〜150,000、好ましくは5,000〜35,000のものが、ポリイソブチレン又はその水素化物の場合は800〜5,000、好ましくは1,000〜4,000のものが、エチレン−α−オレフィン共重合体又はその水素化物の場合は800〜150,000、好ましくは3,000〜12,000のものが好ましい。これら粘度指数向上剤の中でもエチレン−α−オレフィン共重合体又はその水素化物を用いた場合には、特にせん断安定性に優れた潤滑油組成物を得ることができる。
本発明では上記した粘度指数向上剤の任意の1種又は2種以上が使用でき、その配合量も任意に選ぶことができる。しかし、一般的には、本発明の潤滑油組成物における粘度指数向上剤の含有量は、潤滑油組成物全量基準で0.1〜40.0質量%の範囲にあることが望ましい。
本発明で使用可能な酸化防止剤としては、フェノール系化合物やアミン系化合物等があり、具体的には、2−6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール等のアルキルフェノール類、メチレン−4、4−ビスフェノール(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール)等のビスフェノール類、フェニル−α−ナフチルアミン等のナフチルアミン類、ジアルキルジフェニルアミン類、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)脂肪酸(プロピオン酸等)と1価又は多価アルコール、例えばメタノール、オクタデカノール、1,6−ヘキサジオール、ネオペンチルグリコール、チオジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ペンタエリスリトール等とのエステル等が挙げられる。
本発明では上記した酸化防止剤の任意の1種又は2種以上が使用可能であって、その配合量も任意に選ぶことができるが、本発明の組成物における酸化防止剤の含有量は、潤滑油組成物全量基準で通常0.01〜5.0質量%の範囲にある。
本発明ではまた、腐食防止剤も使用することができる。その腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、チアジアゾール系、イミダゾール系化合物等が挙げられる。本発明ではこれら腐食防止剤の任意の1種又は2種以上が使用可能であって、配合量も任意に選ぶことができる。一般的には、本発明の組成物における腐食防止剤の含有量は、潤滑油組成物全量基準で0.01〜3.0質量%の範囲にあることが望ましい。
本発明で使用可能な消泡剤としては、例えば、ジメチルシリコーン、フルオロシリコーン等のシリコーン類が挙げられる。本発明ではこれらの消泡剤の任意の1種又は2種以上が使用でき、その配合量も任意に選ぶことができる。一般的には、本発明の組成物における消泡剤の含有量は、潤滑油組成物全量基準で0.001〜0.05質量%の範囲にあるのが望ましい。必要に応じて、着色剤も任意の量で本発明の組成物に配合することができる。一般的には、本発明の組成物における着色剤の含有量は、潤滑油組成物全量基準で0.001〜1.0質量%の範囲にあることが望ましい。
以下、本発明の内容を実施例及び比較例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらによりなんら限定されるものではない。
[試験1]
表1に示す組成により、本発明に係るベルト式無段変速機用潤滑油組成物(実施例1〜3)及び比較のための潤滑油組成物(比較例1、2)を調整した。
これらの組成物について、金属ベルト式無段変速機のベルト−プーリー間の金属間摩擦特性を評価するため、ASTMD2714−94に規定する“Standard Test Method for Calibration and Operation of Falex Block-on-Ring Friction and Wear Testing Machine”に準拠して以下に示す条件でLFW−1摩擦試験を行い、各すべり速度において計測された摩擦力から摩擦係数を求めた。その結果を図1に示す。
(試験条件)
リング :Falex S-10 Test Ring (SAE 4620 Steel)
ブロック :Falex H-60 Test Block (SAE 01 Steel)
油温 :100℃
試験片接触部最大ヘルツ圧:0.287GPa
すべり速度:0〜25cm/s
図1の結果から明らかなとおり、本発明に係る(A)成分を含有する実施例1〜3の潤滑油組成物は、(A)成分以外の無灰分散剤を含有する比較例の組成物と比べて、金属間摩擦係数が高いことがわかる。
[試験2]
本発明の金属ベルト式無段変速機用潤滑油組成物において、(B)塩基性金属系清浄剤の併用による金属間摩擦特性への影響を評価するため、表2に示す組成を有する実施例4〜6及び比較例3の潤滑油組成物を調製した。
表2に示した組成物並びに表1に示した実施例1及び比較例1の組成物について、金属ベルト式無段変速機のベルト−プーリー間の金属間摩擦特性を評価するため、試験1と同一の条件でLFW−1摩擦試験を行い、各すべり速度において計測された摩擦力から摩擦係数を求めた。その結果を図2に示す。
図2の結果から明らかなとおり、本発明の金属ベルト式無段変速機用潤滑油組成物において、(B)塩基性金属系清浄剤を併用することにより、金属間摩擦特性を大きく改善(摩擦係数のすべり速度依存性を低減)できることがわかる。
[試験3]
本発明の金属ベルト式無段変速機用潤滑油組成物において、(C)リン系化合物の併用による金属間摩擦特性及び摩耗防止性への影響を評価するため、表3に示す組成を有する実施例7〜9及び比較例4の潤滑油組成物を調整した。
表3に示した組成物、表1に示した実施例1及び比較例1の組成物並びに表2に示した実施例4の組成物について、金属ベルト式無段変速機のベルト−プーリー間の金属間摩擦特性を評価するため、試験1と同一の条件(但しすべり速度のみ0〜100cm/sに変化させた)でLFW−1摩擦試験を行い、各すべり速度において計測された摩擦力から摩擦係数を求めた。その結果を図3に示す。
また、実施例7、実施例1、比較例1及び比較例4の組成物について、その摩耗防止性を評価するため、ASTMD2882−90に規定する“Indicatingthe Wear Characteristics of Petroleum and Non-petroleum Hydraulic Fluids in a Constant Volume Vane Pump”に準拠して、試験温度80℃、試験圧力6.9MPaの条件でベーンポンプ試験を実施し、試験後のベーン及びリングの合計摩耗量を求めた。その結果を表4に示す。
図3及び表4の結果から明らかなとおり、本発明の金属ベルト式無段変速機用潤滑油組成物において、(C)リン系化合物を併用することにより、金属間摩擦係数をさらに向上させると共に、その耐摩耗性を改善できることがわかる。
[試験4]
本発明の金属ベルト式無段変速機用潤滑油組成物において、(D)ジチオリン酸亜鉛の併用による金属間摩擦特性への影響を調べるため、表5に示す組成を有する実施例10〜12の潤滑油組成物を調整した。
表5に示した組成物の劣化時のベルト−プーリー間の金属間摩擦特性を評価するため、新油及びその劣化油につき、試験1と同一の条件(但し、試験片接触部の最大ヘルツ圧を0.574GPaに、またすべり速度を0〜100cm/sに変化させた)でLFW−1摩擦試験を行い、各すべり速度において計測された摩擦力から摩擦係数を求めた。
なお、劣化油は、新油をJIS K2514−1993に規定する「潤滑油−酸化安定度試験方法」の「4.内燃機関用潤滑油酸化安定度試験方法」に準拠し、試験温度150℃、試験時間144時間の条件で劣化させることにより作成した。
新油での結果を図4に、また劣化油での結果を図5にそれぞれ示す。
図4及び図5の結果から明らかなとおり、本発明の金属ベルト式無段変速機用潤滑油組成物において、(D)ジチオリン酸亜鉛が亜鉛元素量で0.03質量%を超えて含有されると、金属間摩擦係数の耐久性が大きく悪化することがわかる。
Figure 2006206924
Figure 2006206924
Figure 2006206924
Figure 2006206924
Figure 2006206924
実施例1〜3及び比較例1〜2の各潤滑油組成物について、すべり速度と摩擦係数の関係を示すグラフである。 実施例1,4〜6及び比較例1,3の各潤滑油組成物について、すべり速度と摩擦係数の関係を示すグラフである。 実施例1,3,7〜9及び比較例1,4の各潤滑油組成物について、すべり速度と摩擦係数の関係を示すグラフである。 実施例10〜12の各潤滑油組成物について、新油時のすべり速度と摩擦係数の関係を対比したグラフである。 実施例10〜12の各潤滑油組成物について、油劣化時のすべり速度と摩擦係数の関係を対比したグラフである。

Claims (5)

  1. 潤滑油基油に、(A)窒素含有量が1.3質量%以上であり、ホウ素含有量が0.2質量%以上であるホウ素含有無灰分散剤を潤滑油組成物全量基準で0.05〜10.0質量%含有してなることを特徴とする金属ベルト式無段変速機用潤滑油組成物。
  2. ホウ素含有無灰分散剤がホウ素含有コハク酸イミド系無灰分散剤であることを特徴とする請求項1に記載の金属ベルト式無段変速機用潤滑油組成物。
  3. (B)塩基性金属系清浄剤をさらに含有してなることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属ベルト式無段変速機用潤滑油組成物。
  4. (C)リン系化合物をさらに含有してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のベルト式無段変速機用潤滑油組成物。
  5. (D)ジチオリン酸亜鉛を実質的に含有しないことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のベルト式無段変速機用潤滑油組成物。
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