JP4998491B2 - SiC単結晶の接着方法及びSiC単結晶の溶液成長法 - Google Patents

SiC単結晶の接着方法及びSiC単結晶の溶液成長法 Download PDF

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Description

本発明は、SiCの溶液成長法に用いるSiC種結晶を黒鉛軸に接着する接着方法及びSiC単結晶の溶液成長法に関係する。
炭化珪素(SiC)単結晶は、熱的、化学的に非常に安定であり、優れた耐熱性、高い熱伝導性、高い絶縁電界、大きな飽和電子速度を兼ね備えることから、高温環境下で動作するデバイス材料として、また、高温高圧下でも耐える耐環境素子材料として、さらに高周波素子材料として研究が進められている。また、炭化珪素は、バンドギャップが大きいため、短波長発光素子材料として注目されている。
従来、炭化珪素(SiC)の単結晶の成長方法としては、昇華法および溶液成長法が知られている。
昇華法はSiCを高温で昇華させ、気相から種結晶上にSiC単結晶を成長させる方法である。種結晶はホルダーに機械的把持または糖溶液による接着により固定する(例えば特許文献1を参照)。ここで糖溶液による接着は、糖の高分子成分を炭化して接着剤として機能させるものである。昇華法においては、成長温度は昇華温度より必ず低温であり、また気相との接触による種結晶とホルダーへの熱衝撃は小さいので、単に高分子成分を炭化しただけの接着層による接着強度で十分これに対抗でき、成長過程で種結晶がホルダーから脱落することなく、SiC単結晶を成長させることができる。
しかしながら昇華法は、得られるSiC単結晶にマイクロパイプと呼ばれる直径数10μm〜100μmの貫通孔が発生する可能性がある。
これに対して、溶液成長法は、欠陥の発生が極めて少ない高品質のSiC単結晶が得られる点で優れた方法である。溶液成長法とは、炭素を含む材料(一般には黒鉛)からなる坩堝を用い、この坩堝内で珪素を溶融することにより、坩堝内の珪素融液中に炭素を溶解させた溶液を形成し、黒鉛軸の先端に固定した種結晶を溶液表面に接触させて種結晶の下面(溶液接触面)にSiC単結晶を成長させる方法である。
溶液成長法の弱点は、高温の溶液に接触する種結晶の固定が困難であることである。固定の方法としては、黒鉛軸に溝などを設けて種結晶を嵌め込む機械的な固定が最も確実であるが、嵌め込み箇所の黒鉛軸表面でSiC結晶が成長することが避けられず、結果として多結晶化が生じてしまい、良質のSiC単結晶を成長させることができない。
他の固定方法として、種結晶を黒鉛軸先端(種結晶積載部)に接着することができるが、高温に保持された溶液に種結晶が直接接触すると、種結晶と黒鉛軸との接着界面が大きな熱衝撃を受ける。その場合、接着層が従来の糖溶液を用いた高分子成分の炭化層であると、接着強度が不十分なため接着界面で剥離が生じ、種結晶が落下し易いという問題があった。ちなみに、溶液を高温に保持する理由は、SiC単結晶の成長を促進するために、できるだけ溶液を高温に保持して溶液の炭素含有量を高めることが望ましいからである。というのは、Si−C二元系平衡状態図から分かるように、例えば加圧下で2830℃の高温下でも液相中の炭素は19%しか含まれないからである。
種結晶のための接着剤および接着方法について、他にも種々の技術が提案されている。例えば、特許文献2は、溶液成長法SiC単結晶成長に用いるSiC種結晶と黒鉛軸先端との間の接着剤を開示しており、この接着剤は熱硬化性樹脂と溶媒と炭素成分とからなり、接着剤の炭化率を高めることにより、接着強度の向上を図っている。
特許文献3、これは昇華法に関するものであるが、種結晶台座に種結晶を固定させる接着剤であって、熱硬化性樹脂に黒鉛微粒子を混入したものを開示する。ここでは種結晶台座に対して種結晶を面ではなく辺または点で接着しており、全体としての接着強度は面接着に劣ると予想される。また種結晶から種結晶台座への熱移動も面接着の場合より小さいと予想される。
さらに、特許文献4、これも昇華法に関するものであるが、種結晶の種結晶支持部への接着、固定方法として、種結晶支持部に第一の炭化珪素基板を接着した上に、続いて第二の炭化珪素基板を接着し、この第二の炭化珪素基板を種結晶としている。これにより、種結晶の裏面(結晶成長面の反対の面)からの昇華を防ぎ、成長結晶中へのマクロ欠陥を抑制できるという方法を公開している。ここでの接着剤は、耐熱性微粒子と熱硬化性樹脂と有機溶剤を含んでおり、耐熱粒子として、硫化カドミニウム、セレン化カドミニウム、硫化亜鉛、窒化アルミニウム、窒化ホウ素等にも利用できるとされている。
特開平11−171691号公報 特開2005−263540号公報 特開2006−151756号公報 特開2006−143511号公報
溶液成長法では、結晶成長に用いる1600℃を超える高温の溶液中に種結晶を接触させなければならない。比較的小径の種結晶(φ15mm以下)の場合、種結晶を黒鉛軸に接着する面積が小さいため接着不良箇所が発生することはあまりない。それに対して、これを超える大きさの種結晶を全面接着した場合、全面が接着されるわけではなく接着不良箇所が存在するようになる。その理由として、接着剤の塗布量が多くなるため接着量のバラツキ(接着ムラ)が大きくなることが考えられる。また接着剤中の樹脂成分が、溶液成長法の高い運転温度のせいで、蒸発して空孔となることにより接着剤全体の密着が低下していることが接着不良を顕著にしていることも考えられる。
また、種結晶を溶液に接触させる直前には、気相と液相との間に1700℃以上の温度域で50〜150℃の温度差があるため、種結晶が溶液に接触すると、黒鉛軸先端と接着されている種結晶との間に温度差、熱膨張差が生じ、接着層の剥離が促進されると考えられる。
溶液成長法における結晶成長では、種結晶から黒鉛軸方向への放熱作用により成長が進む。種結晶と黒鉛軸先端との間の接着層において、接着不良箇所や接着剥離箇所のような、接着が不完全な部分(空気の層が入る部分)がある場合、軸方向への放熱性が悪くなり部分的に成長速度が落ちる。その結果、単結晶成長時に結晶成長面内で平坦な結晶成長が出来ない問題を引き起こす。また、いうまでもなく、接着不良箇所や接着剥離箇所のような、接着が不完全な部分は、種結晶の脱落の原因となり得る。従って、接着層において均一且つ安定な接着を実現することが、課題となっている。
本発明は前記課題を解決する手段として、SiC粒子および熱硬化性樹脂を含む接着剤を用いて接着層において均一且つ安定な接着を可能とする接着方法を提案する。すなわち、本発明により、下記(1)〜(7)が提供される。
(1)SiCの溶液にSiC種結晶を接触させてSiC単結晶を成長させるために用いるSiC種結晶を黒鉛軸先端に接着する方法であって、熱硬化性樹脂およびSiC粒子を含む接着剤を用いてSiC種結晶を黒鉛軸先端に接着することを特徴とするSiC種結晶の接着方法。
(2)黒鉛軸先端とSiC種結晶の間に前記接着剤を介在させ炭化させてSiC種結晶を黒鉛軸先端に対して接着することを特徴とする、(1)に記載の接着方法。
(3)前記炭化させた接着剤において、SiC粒子を除いた部分の炭化率が50%以上であることを特徴とする、(2)に記載の接着方法。
(4)種結晶の結晶成長面が直径15mm以上であることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれか1つに記載の接着方法。
(5)SiC粒子の粒径が2〜8μmであることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれか1つに記載の接着方法。
(6)前記接着剤中のSiC粒子の質量比率が、接着剤全量を基準として9質量%〜33質量%であることを特徴とする、(1)〜(5)のいずれか1つに記載の接着方法。
(7)(1)〜(6)のいずれか1つに記載の接着方法を用いて黒鉛軸先端に接着したSiC種結晶をSiCの溶液に接触させてSiC単結晶を成長させることを特徴とする、SiC単結晶の溶液成長法。
本発明により、以下の効果が生じる。
・ 接着剤にSiC粒子が一定の割合で含まれることで熱硬化性樹脂の相対量が少なくなり、熱硬化性樹脂が炭化されることによる接着量のバラツキ及び空孔の発生率が、熱硬化性樹脂のみを用いた接着の場合と比べて、減少する。これにより、SiC単結晶から黒鉛軸への放熱が均質になり、平坦な単結晶成長が実現される。
・ 熱硬化性樹脂とSiC粒子を含む接着剤を炭化して得られる炭素系接着層とSiC種結晶が高温になると、両者の熱膨張係数の差により接着層に剥がれ方向への応力がかかるが、接着剤がSiC粒子を含むことにより接着層の熱膨張係数はSiC種結晶の熱膨張係数に近づき、接着された種結晶と黒鉛軸先端を剥がれにくくすることができる。SiC粒子は1600℃以上の高温においても安定なため接着状態に悪影響を与えない。
・ これらの効果の結果、SiC種結晶と黒鉛軸先端との接着層において均一且つ安定な接着が実現され、SiC種結晶の脱落を生じることなく均一で平坦なSiC結晶成長がもたらされる。
溶液成長法による成長模式図。 SiC粒子を含まない接着剤で種結晶を黒鉛軸に接着したときの種結晶と黒鉛軸の接着状態を示す顕微鏡写真。 SiC粒子を含む接着剤で種結晶を黒鉛軸に接着したときの種結晶と黒鉛軸の接着状態を示す顕微鏡写真。 SiC粒子を含まない接着剤で種結晶を黒鉛軸に接着した後、溶液成長を行ったSiC種結晶の成長結果を示す顕微鏡写真。 25質量%のSiC粒子を含む接着剤で種結晶を黒鉛軸に接着した後、溶液成長を行ったSiC種結晶の成長結果を示す顕微鏡写真。 SiC粒子を様々の比率で含む接着剤を用いたときの種結晶と黒鉛軸の接着状態を示す顕微鏡写真。
本発明は、SiCの溶液にSiC種結晶を接触させてSiC単結晶を成長させるために用いるSiC種結晶を黒鉛軸先端に接着する方法であって、熱硬化性樹脂およびSiC粒子を含む接着剤を用いてSiC種結晶を黒鉛軸先端に接着することを特徴とするSiC種結晶の接着方法である。
SiC単結晶の溶液成長法とは、溶融した珪素中に炭素を溶解させたSiC溶液にSiC種結晶を接触させることでSiC単結晶を成長する方法である。SiC溶液に接触させるSiC種結晶は、黒鉛軸の先端に接着されて、黒鉛軸により引き上げられることにより、SiC溶液からSiC種結晶上にSiC単結晶が成長する。
SiC種結晶を黒鉛軸に接着する接着剤として、本発明の接着剤は熱硬化性樹脂およびSiC粒子を含むことを特徴とする。
接着剤にSiC粒子が一定の割合で含まれることで、接着剤中の熱硬化性樹脂の相対量が少なくなり、熱硬化性樹脂を炭化させることによる接着量のバラツキ及び空孔の発生率が、熱硬化性樹脂のみを用いた接着の場合と比べて、減少する。また、熱硬化性樹脂とSiC粒子を含む接着剤を炭化して得られる炭素系接着層とSiC種結晶が高温になると、両者の熱膨張係数の差によりSiC種結晶と黒鉛軸先端との間の接着層に剥がれ方向への応力がかかるが、接着剤がSiC粒子を含むことにより接着剤の熱膨張係数がSiC種結晶の熱膨張係数に近づき、種結晶を剥がれにくくすることができる。
接着剤中のSiC粒子の質量比率は、接着剤全量を基準として33質量%以下であることが好ましい。SiC粒子の質量比率が33質量%を超えると、接着ムラ、接着不良箇所を生じる恐れがあるためである。SiC粒子の質量比率の下限に特に制限はないが、1質量%以上が好ましく、9質量%以上であることがより好ましい。SiC粒子の質量比率が9質量%以上で特に接着ムラ、接着不良箇所のない良好な接着が得られる。
接着層の厚さは特に制約はないが、薄すぎると接着が十分でないことが考えられ、逆に厚すぎると接着ムラを生じることがある。したがって、接着後に、10〜20μm程度の厚みとなる接着層が好ましい。SiC粒子の粒径は、適宜調整されるが、上記の程度の厚みの接着層に対して2〜8μm であることが好ましい。2〜8μmのSiC粒子を添加することにより、SiC粒子がスペーサーの役割を果たして接着層厚がより均一化される。
本発明の接着剤は、熱硬化性樹脂を含む。熱硬化性樹脂は、炭化したときに炭素になる割合、すなわち、炭化率が高いものが多いので好ましい接着剤成分である。また、熱硬化性樹脂は、一般的に常温においても粘着性を有するものが多く、種結晶を黒鉛軸先端に接着する作業が容易であり、あるいは適当な硬化温度(一般的に〜200℃程度)に加温することにより硬化して、接着力を発揮することも接着剤成分として有利である。接着剤の温度を上昇させると、熱硬化性樹脂をはじめとする有機物は炭化する、すなわち熱分解を経て炭素分に富む物質に変化する。炭化率が高いと、高温下でも安定して高い接着強度を維持できる。なお、本発明での炭化率とは、有機物を不活性雰囲気下1000℃まで加熱した際に残る炭素質量の加熱前の有機物の質量に対する割合(質量%)を意味する。
熱硬化性樹脂としては、たとえば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂などを用いることができる。熱硬化性樹脂は炭化率が高いものが好ましい。接着剤においてSiC粒子を除いた部分の炭化率が高いと、高温下でも安定して高い接着強度を維持できるからである。特に、接着剤中のSiC粒子を除いた部分の炭化率が50%以上であると、接着層としての炭化率を十分に高められるので、好ましい。この観点からフェノール樹脂が最も望ましい。フェノール樹脂自身は一般に60%以上の炭化率を示す。
本発明で用いる接着剤は、SiC粒子および熱硬化性樹脂以外に、必要に応じて、熱硬化性樹脂を溶解する及び/又は分散させる溶媒を用いることができる。例えば、接着剤に溶媒を加えて常温での粘着性を調整して、作業性を向上させてもよい。溶媒としては、室温若しくはそれに近い温度で揮発させることが可能であり、種結晶,黒鉛軸,熱硬化性樹脂,SiC粒子に悪影響を及ぼさず(例えば、これらに対して不活性)、作業環境を悪化させない(例えば、無毒性又は低毒性,非燃焼性又は低燃焼性)ものが好ましい。それ故、溶媒は、例えば熱硬化性樹脂の種類などに応じて有機又は無機溶媒の中から適宜選択する。上記溶媒は、同種又は異種のものを単独又は組み合わせて用いてよい。例えば、上記溶媒は水及び/又はアルコール(例えば、メチルアルコール,エチルアルコール,n−プロピルアルコール,イソプロピルアルコール等)であってもよい。
接着剤に対する溶媒の混合比率は、混合する他の成分、たとえば、熱硬化性樹脂、SiC粒子、さらには下記に記載する炭素成分の種類や量を考慮して、種結晶の適切な接着・固定強度が得られるように適宜選択すればよい。
熱硬化性樹脂自身の炭化率が低く、そのため接着層に気孔が発生して接着強度の低下を招く場合には、接着剤に炭素成分を添加して炭化率を補うことにより、気孔の発生を抑制して十分な接着強度を確保することが可能である。この目的の炭素成分としては、不定形炭素、黒鉛を含む各種の炭素材料を用いることが可能であるが、粒径100nm以下の固形炭素を用いることが望ましい。粒径が大きすぎると炭素粒子間の間隙が大きくなり接着強度が低下するおそれがあるからである。
添加する場合の炭素成分の添加量はSiC粒子を除く接着剤全量を基準に40質量%以下、特に15〜40質量%であることが望ましい。この量が40質量%を超えると接着層が厚くなり過ぎて接着強度が低下する恐れがある。15質量%以上のとき、接着層の炭化率を十分に高くして接着強度を向上させる効果が高いのでより好ましい。
本発明は、SiC種結晶の結晶成長面のサイズが直径15mm以上の比較的大径のSiC種結晶にも好ましく適用可能である。
本発明の接着剤を用いてSiC種結晶を黒鉛軸先端に接着する方法は、SiC種結晶と黒鉛軸先端の間に接着剤を介在させて加熱し炭化させればよい。
接着剤を炭化させる熱処理のためにSiC種結晶と黒鉛軸先端の間に接着剤を保持する方法は、黒鉛軸先端に接着剤を塗布しその上にSiC種結晶を載せるだけでもよいが、好ましくは黒鉛軸先端をSiC種結晶を接着剤の粘着性で付着させたり、熱硬化させて接着したり、機械的手段で保持したりして仮止めする。例えば、SiC種結晶および/または黒鉛軸先端に接着剤を塗布して、次にそれらの接着剤塗布面どうしを付着させる。あるいは、加熱処理(一般的に〜200℃程度で数時間)して熱硬化させて仮止めする。すなわち、熱硬化性樹脂あるいはそれと溶媒との混合物を含む接着剤がもつ粘着性によって種結晶を黒鉛軸先端に接着することができるが、あるいは接着剤を熱硬化させて接着してもよい。
上記のように接着剤を種結晶と黒鉛軸先端の間に介在させた後に、さらに、熱硬化性樹脂の炭化温度以上の保持温度で熱処理する。接着剤が炭素成分を含む場合、さらに炭化率の高い接着層が形成される。熱処理の温度は、炭化が行なわれるのに十分な温度であることが必要であり、従来から樹脂の炭化に用いられている温度でよく、一般に有機物は300℃〜400℃程度で炭化しはじめ、フェノール樹脂は400℃程度で炭化しはじめる。炭化のための熱処理温度の上限も、従来と同様に1000℃程度である。また、炭化熱処理の保持温度への昇温は、90℃/h以下の昇温速度で行なうことが望ましい。昇温が速過ぎると、樹脂成分から発生するガスが接着層から爆発的に抜けるため、ガスの抜けた痕が気孔となり接着強度が低下する。炭化処理温度に到達後、炭化が十分に行われるように数時間その温度に保持される。炭化のための雰囲気は、熱硬化性樹脂が炭化されればよいが、通常はアルゴン中などの不活性雰囲気でよい。
本発明は、上記の接着方法を用いて得られる黒鉛軸先端に接着されたSiC種結晶を用いて、SiC単結晶を成長する方法をも提供する。
本発明に従い黒鉛軸先端に接着したSiC種結晶を用いてSiC単結晶を成長する方法自体は従来公知のSiC単結晶溶液成長法と同じであることができる。
SiC単結晶の溶液成長法とは、溶融した珪素中に炭素を溶解させたSiC溶液にSiC種結晶を接触させることでSiC単結晶を成長する方法である。より具体的には、炭素を含む材料(一般には黒鉛)からなる坩堝を用い、この坩堝内で珪素を溶融することにより、坩堝内の珪素融液中に炭素を溶解させてSiC溶液を形成し、黒鉛軸の先端に固定したSiC種結晶をSiC溶液表面に接触させて種結晶の下面にSiC単結晶を成長させる方法が代表的である。本発明において、種結晶を溶液表面に接触させることは、種結晶の一部が溶液に浸漬することも含む。
図1に示すSiC溶液成長装置の概略模式図を用いてSiC溶液成長法を例示的に説明する。図1において、黒鉛坩堝1が断熱材2で覆われ、その周囲を高周波加熱コイル3が取り巻いている。黒鉛坩堝1内にはコイル3により加熱された珪素融液が保持されている。珪素融液4には、黒鉛坩堝1から供給される炭素分が溶解されてSiC溶液4が形成される。上方から断熱材2、黒鉛坩堝1の頂部を貫通して延びている黒鉛軸6の下端に接着固定したSiC種結晶5がSiC溶液4の表層に接触され、SiC溶液4に接触させたためにSiC種結晶5の周辺に生じた温度勾配により、SiC種結晶5周辺のSiC溶液内ではSiC結晶原料が過飽和な状態となり、SiC種結晶5のSiC溶液4に接触させた面に、SiCの結晶成長が進行する。
例1
まず、SiC粒子を含まない接着剤(比較例1)と、本発明のSiC粒子を含む接着剤(実施例1)をそれぞれ用いてSiC種結晶を黒鉛軸先端に接着固定し、接着状況の観察を行った。その後で、図1に示すSiC溶液成長装置により、それぞれについてSiC結晶成長を行い、結果として得られた結晶成長の様子も観察した。以下により具体的に説明する。
比較例1および実施例1に採用した接着剤のうち、SiC粒子を除いた部分の組成は、フェノール樹脂(CO・CHO)50質量%、溶媒としてのフェノール(CO)15質量%と水(H2O)1質量%、および固形炭素34質量%からなる。実施例1では、粒径2〜8μmのSiC粒子が、接着剤全量を基準として25質量%となるように加えた。これらの接着剤のそれぞれを用いて、φ25mmSiC種結晶を黒鉛軸先端に接着し、その後200℃1時間で接着硬化させた。
こうして接着された、種結晶の黒鉛軸先端への接着状態を観察するために、種結晶および黒鉛軸先端部を含めて接着層を薄く切り出し、光学顕微鏡(ニコン社製 SMZ−1000)を用いて接着状態の観察を行った。観察した接着状態の写真を図2(比較例1)および図3(実施例1)に示す。比較例1のSiC粒子を含まない接着剤による接着では、面内右側のA部分は接着剤が密着しているため明るく見える一方で、接着剤が密着していないB部分は暗く見えている。すなわち、面内に接着ムラがあると言える。一方、実施例1のSiC粒子を含む接着剤による接着(図3)では、比較例1(図2)のように接着剤が密着せずに暗く見える箇所はなく、均一に接着していることがわかった。
続いて、これらの黒鉛軸先端に接着し、200℃1時間で接着硬化させたSiC種結晶の接着層をさらに2時間、1000℃で炭化させた後、この種結晶を用いて2時間の溶液成長を行った。溶液成長は図1のSiC溶液成長装置で行った。黒鉛坩堝1内はコイル3により加熱し、珪素融液を1700℃以上に保持した。珪素融液には、黒鉛坩堝1から供給される炭素分が溶解し、SiC溶液が形成された。上方から断熱材2、黒鉛坩堝1の頂部を貫通して延びている黒鉛軸6の下端に接着固定したSiC種結晶5をSiC溶液4の表層に接触させ、SiC種結晶5の接触させた面から、SiCの結晶成長を進行させた。
こうして溶液成長させた、SiC結晶の成長結果の状態の顕微鏡(ニコン社製 SMZ−1000)写真を、図4(比較例1)および図5(実施例1)に示す。比較例1のSiC粒子を含まない接着剤による接着では、図2で密着していたA部分が最も成長しており、最も成長している部分から成長の遅いB部分へとステップが発生しており、平坦成長ができていない。これは、接触したSiC溶液の温度が1700℃以上であり、接触時の熱衝撃と、種結晶、接着層および黒鉛軸の熱膨張差とにより、種結晶、接着層および黒鉛軸の間に剥離応力がかかり、接着不良が促進されていると考えられる。一方、実施例1のSiC粒子を接着剤全量を基準として25質量%の比率で混合した接着剤を用いて接着したΦ25mmのSiC種結晶を高温溶液(約2020℃)中で成長させたときの顕微鏡写真を図5に示す。ここでは結晶が平坦な面成長を呈していることがわかった。
例2
次に、接着剤全量を基準として、粒径2〜8μmのSiC粒子を33質量%、25質量%、9質量%と変化させたものを用意した。これらの接着剤のそれぞれを用いて、φ25mmSiC種結晶を黒鉛軸先端に接着し、次に200℃1時間で接着硬化させ、さらに1000℃2時間で炭化させた。その後、SiC種結晶と黒鉛軸先端との接着状況を顕微鏡観察するために、それぞれ、種結晶および黒鉛軸先端部を含めて接着層を薄く切り出し、光学顕微鏡(ニコン社製 SMZ−1000)を用いて接着状態の観察を行った。ここで用いたSiC粒子を除く接着剤の組成は、例1で採用したものと同じものである。
図6の顕微鏡写真において、(a)SiC比率33質量%、(b)同25質量%および(c)同9質量%の場合の接着状態を示している。図6より、SiC比率25質量%、9質量%のときは接着ムラが無い状態であり、SiC比率9質量%〜33質量%のとき、とくにSiC比率9質量%〜25質量%のとき本発明の効果が大であることがわかった。
1 黒鉛坩堝
2 断熱材
3 高周波コイル
4 溶液
5 種結晶
6 黒鉛軸

Claims (7)

  1. SiCの溶液にSiC種結晶を接触させてSiC単結晶を成長させるために用いるSiC種結晶を黒鉛軸先端に接着する方法であって、熱硬化性樹脂およびSiC粒子を含む接着剤を用いてSiC種結晶を黒鉛軸先端に接着することを特徴とするSiC種結晶の接着方法。
  2. 黒鉛軸先端とSiC種結晶の間に前記接着剤を介在させ炭化させてSiC種結晶を黒鉛軸先端に対して接着することを特徴とする、請求項1に記載の接着方法。
  3. 前記炭化させた接着剤において、SiC粒子を除いた部分の炭化率が50%以上であることを特徴とする、請求項2に記載の接着方法。
  4. 種結晶の結晶成長面が直径15mm以上であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の接着方法。
  5. SiC粒子の粒径が2〜8μmであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の接着方法。
  6. 前記接着剤中のSiC粒子の質量比率が、接着剤全量を基準として9質量%〜33質量%であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の接着方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の接着方法を用いて黒鉛軸先端に接着したSiC種結晶をSiCの溶液に接触させてSiC単結晶を成長させることを特徴とする、SiC単結晶の溶液成長法。
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