JP4996256B2 - ステアリングラックの金型装置および製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車のステアリングラックを鍛造する金型に関するものであり、また特に、ばりを生ぜず、自動車のステアリングラックを鍛造する金型に関するものである。
自動車のステアリングラックの歯付き部分は、機械加工、もしくは鍛造処理によって製造されることは公知である。概して、機械加工処理は、むくの円柱棒をブローチ加工することで、歯付き部分の横断面がD型になるようにする工程を備え、従って、このようなラックは一般にD−ラックと呼ばれている。機械加工による歯を有するステアリングラックは、一定ピッチの歯を有する場合のみ、経済的に大量生産することができる。しかしながら、鍛造された歯を有するラックは、一定ピッチ、もしくは可変ピッチの歯の場合でも同様に大量生産することができる。
鍛造に関連して使用される時の「ばり」という用語は、鍛造された構成部分の本体から突出する余分な材料を意味し、一般的に、これは次のトリミング、または機械加工操作によって取り除く必要がある。ばりは開放型の金型による鍛造の一般的な特徴であり、この場合、金型の空所を確実に充填するために、余分な材料を金型内に設置する。「ばりのない鍛造」という用語は、実際上、金型空所から飛び出す余分な材料がない鍛造処理を意味する。ばりのない鍛造の利点には、無駄な材料をなくすること、ばりを除去するための次の操作をなくすること、および鍛造される構成部分の精度に関して著しく制御することができることを含んでいる。ばりのない鍛造は、一般に閉鍛造金型を使用することにより達成される。
米国特許4,571,982(Bishop)および5,862,701(Bishop等)は、むくの円柱棒からステアリングラックの歯付き部分をネットシェイプに、ばりを形成せず温間鍛造する金型装置を開示している。「ネットシェイプ」とは、鍛造されたラックの歯が、鍛造後の他のいかなる機械加工をも必要としないことを意味する。この形式の金型装置による加工は、歯付き部分の横断面がY型であるラックの鍛造に限定され、このようなラックは一般にY−ラックと呼ばれている。この形式の金型装置は、米国特許4,571,982の図7,8および9から明らかなように、鍛造処理の最後にだけ、閉鍛造空所を形成し、バリを形成しない鍛造は、鍛造操作が完了する前に、鍛造空所を閉じることよりも、工具素子の独特の運動、および歯の区域のY型横断面によるものであることに注意することが重要である。Y−ラックの不都合な点は、組み立てるためにステアリングギアの修正が必要であることであり、そのため、市場が歴史的にD−ラックを好んでいる。
むくの棒からD−ラックを鍛造するための種々の形式の金型装置が提案されている。しかしながら、これら金型の大部分はばりを生成してしまう。日本特許58218339(大同特殊鋼株式会社)の図3〜図5は、2個の金型半部のみを備えた基本的な開放型金型装置を表している。余分な材料は単にばりとして、金型空所から逃げる。この金型装置には空所の圧力を制御するための手段が設けられておらず、そのことにより、特に熱間鍛造を行う時よりも温間鍛造温度で鍛造操作を行う時に、歯部への充填が不十分になり易い。日本特許58218339の図5は、鍛造後のばりをトリミングする処理を示している。
英国特許2108026(Cam Gears社)は、むくの棒からD−ラックを鍛造する金型装置を開示している。これは、ばりの形成を制御し、歯部への素材の充填を助けるためのばり溜りが付加された、2個の金型半部を有する典型的な金型装置である。しかしながら、この金型装置でも材料が早期にこれらのばり溜りに逃れてしまい、これにより、発生する静水圧を制限してしまい、金型空所に欠肉を生じさせてしまう。このような金型装置によって生成されるばりは、単純な開放型金型によって生成されるばりよりは形状がより制御されるが、それでも一般に鍛造後に、ばりは取り除く必要がある。類似する原理を使用している一層高性能な金型装置が、米国特許5,992,205(Bishop)に開示されており、これは、十分な静水圧を維持し、十分な歯部への充填を達成することを助けるため、ばり溜りの形成について示している。
むくのD−ラックを鍛造するための金型装置は、日本特許58013431(自動車機器株式会社)、および日本特許03138042(ISセイキKK等)に開示されている。これらの金型は、しばしば棒材の称呼の直径である仕上がったラックのシャンクより大きい直径を持つ歯付き部分を鍛造する。このようなラックはY−ラックと同じ組み立てに関する課題を有する。さらに、これらの両方の金型は2個の金型半部を備え、これらは実際には完全に閉じることはあまりなく、金型半部の間にばりを形成することなく、歯部に素材を充填することはあまりない。
日本特許58218339(大同特殊鋼株式会社)の図8〜図12は、中空管からステアリングラックを鍛造するための閉金型装置を示している。この金型は、鍛造を開始する前に閉じ、従って、鍛造処理はばりのないものとなる。この金型の構成のポンチ56は、ラックの歯を鍛造する形状を有している。中空管状の素材の周りに、金型半部58、および50が閉じた後に、ポンチ56は内方に動き、鍛造操作を行う。金型半部58、および50が閉じることによって、素材に変形が生じることはない。この金型の構成に関する課題はポンチ56上の歯の端部が開いており、歯の端部の間に支持体が存在しないために早期に金型の故障が起こりうることである。さらに、鍛造された歯の両端は、各端部で傾斜ではなく、歯に対して垂直であり、ラックの組み立てに干渉する可能性があることがある。
本発明の目的は、従来技術の問題点の少なくとも若干を改善して、ばりを形成することなく、ステアリングラックを鍛造する金型装置、および方法を提供することにある。
第一の態様において、本発明は、ステアリングラックの歯状部分を製造するためのばりを形成しない鍛造操作を実施するための金型装置から成り、前記金型装置は第1、および第2の金型部材と、少なくとも1個のポンチ部材とを備え、これ等各部材は前記歯状部分の一部にほぼ対応する形状の形成面を有し、さらに、前記第1の金型部材の前記形成面の少なくとも一部が前記ラックの歯にほぼ対応する形状であり、前記第1および第2の金型部材は閉位置に向け、互いに近寄るように動くことが可能であり、それによって前記金型装置内に置かれた素材に、前記歯状部分を一部鍛造すると共に、前記形成面によって確定されたほぼ閉空所を形成し、前記ポンチ部材を前記閉空所内に移動するように構成し、前記第1および第2の金型部材が前記閉位置に達した後における、前記少なくとも1個のポンチ部材の移動により前記素材が前記閉空所を充填するとき前記鍛造操作が完了することを特徴とする金型装置である。
好ましくは、一実施例において、前記ポンチ部材は、前記金型部材のうち一方における金型部材の孔を通って、前記閉空所内に移動できるように構成する。好ましくは、前記孔が前記第2の金型部材にあり、前記ポンチ部材は前記第2の金型部材に対して移動可能である。好ましくは、前記ポンチ部材は、前記第1の金型部材の中央に、前記第1の金型部材の反対側に配置されており、前記第1の金型部材に向け、移動可能である。好ましくは、前記金型部材は、前記閉位置において互いに当接している。
好ましくは、他の実施例において、少なくとも1個のポンチ部材は、前記第1、および第2の金型部材の間に、前記空所の両側に配置された前記第1および第2のポンチ部材を備えている。
好ましくは、前記ポンチ部材は、前記金型装置が閉じる運動によって作動する機構によって移動可能である。好ましくは、前記機構は、前記空所に前記ポンチ部材を押圧するように構成した少なくとも1個の楔部材を備えている。
好ましくは、少なくとも一方の前記金型部材は、前記金型部材が閉じることによって加圧される液圧シリンダによって支持されている。
好ましくは、前記歯付き部分の横断面は、D型の形状である。好ましくは、前記素材はむくの棒である。好ましくは、前記素材は円筒状である。あるいは、前記素材は中空棒であり、前記金型装置はさらに前記鍛造操作の前に、前記中空棒に挿入するよう構成したマンドレルを備えている。
好ましくは、前記金型装置は少なくとも1個の軸線方向に移動可能である端部ポンチを更に備えている。好ましくは、前記端部ポンチは、前記素材の端部をアップセット、すなわち、すえ込みするように構成される。
第2の態様において、本発明は、本発明の第1の態様による金型装置によって素材に鍛造操作を施す、ステアリングラックの製造方法から成る。好ましくは、前記ステアリングラックの歯は、前記鍛造操作によってネットシェイプに鍛造される。好ましくは、前記ステアリングラックの歯付き部分の横断面は、D型の形状である。
好ましくは、前記素材は、第1の円筒部と、前記第1の円筒部よりも直径が小さい第2の円筒部とを有し、前記第2の円筒部は前記ステアリングラックの歯付き部分を形成するために鍛造され、前記ステアリングラックのシャンクは前記第1の円筒部を備えている。好ましくは、前記素材はさらに、前記第1の円筒部とほぼ等しい直径を有する第3の円筒部を備え、前記第2の円筒部は前記第1および第3の円筒部の間にある。
好ましくは、前記素材は、前記鍛造操作の前に、温間鍛造温度に加熱される。
図1および図2は、本発明による金型10の第1の実施例を表している。金型10は、第1の金型部材14と、第2の金型部材16と、ポンチ部材18とを備えている。ラック12は、米国特許3,802,248(Ross等)に記載されているような適切な鍛造プレス機と組み合わせて金型10を利用して、ラック12を鍛造する。その場合、金型部材、14、および16はプレス機のプラテンに取り付けられている。ラック12は、軸部分25、および歯付き部分26とを備えるD-ラックであり、これは一定ピッチの歯車の歯を有する形式のもの、または可変ピッチの歯車の歯を有する形式のものであってもよい。
図1、および図2は、閉空所13を形成するために、第1の金型部材14と、第2の金型部材16とが当接している状態の、鍛造処理の終わりの金型10を示している。ポンチ部材18は、第2の金型部材16の孔11を通じて、第2の金型部材16に対して移動可能である。孔11によって、ポンチ部材18は空所13に入ることができる。図3aを参照し、第1の金型部材14は、ラック12の歯の形状に対応する形状を持つ歯型形成面28を有する。第2の金型部材16の形成面19は、ほぼ半円形の形状であり、この形成面19はラック12をステアリングギアに組み立てる時、ラックパッドの中に摺動させる歯付き部分26の一部に対応する部分である。ポンチ部材18は、歯付き部分26、および対向する第1の金型部材14の対称軸線周りに、中心に配置されている。ポンチ部材18は、第1の金型部材14に向け、移動可能であり、歯付き部分26の背部に、浅い縦方向のくぼみを鍛造形成する形成面29を有する。
金型10の作動は図3aから図3dに図示されている。これらは図1の平面24に沿う断面図であり、ばりを形成せずにラック12の歯付き部分26を鍛造する工程の種々の段階を示している。図3aは、第2の金型部材16内に素材12aを置き、鍛造処理の開始段階の金型10を示しており、歯形成面28が素材12aに接触するように、第1の金型部材14が第2の金型部材16に向け、動かされた段階を示している。ポンチ部材18は、形成面29が第2の金型部材16の半円形成面19とほぼ同一平面になるように、第2の金型部材16に対し、後退している。
素材12aは、むくの円柱棒の形状である。鍛造されたラック12をステアリングラックに組み立てるにあたって、歯付き部分26を囲む円の直径が、ラック12の軸25の直径より大きくないことが望ましい。これは、棒の歯付き部分26となるように鍛造する部分の直径がラック12の軸25として残る部分の直径より小さくなるように、棒12aに段差をつけることにより達成することができる。
棒12aは、ステアリングラックの軸25になる大きい直径の部分と、鍛造され歯付き部分26となる小さい直径の部分との、2個の部分のみを有するように段付きにすることができる。代案として、棒12aは、鍛造され歯付き部分26となる小さい直径の部分と、小さい直径の部分をはさむほぼ等しい直径の、歯付き部分26より大きい直径の部分との、3個の部分を有するようにすることもできる。この大きい直径の部分の一方はラックの軸25を形成し、他方は反対側のタイロッド端を形成する。
図3bにおいて、第1の金型部材14は、素材12aから歯付き部分26を一部鍛造しながら第2の金型部材16に向け、動き終わっている。この工程中、半円形成面19は、ほぼ充填されている。図3cにおいては、第1の金型部材14はさらに第2の金型部材16に向け、第1の金型部材14が第2の金型部材16に当接する閉位置に到達するまで動き、部分的に歯付き部分26の鍛造を進める。これによって形成面28、19および29によって確定された閉空所13を形成する。閉空所13のまだ充填されていない部分30によって示されているように、この状態では歯付き部分26の歯はまだ完全には形成されていない。図3bおよび図3cに示される工程の間、ポンチ部材18は、第2の金型部材16に対して静止しているままである。しかしながら、図示しない他の実施例においては、金型部材14、および16が相互に近づく際、ポンチ部材18は第2の金型部材16に対して移動する。
図3dは鍛造処理の最終工程を示しており、ポンチ部材18は上方に、閉空所13の中に動き、素材12a内に高い圧力を発生し、素材が歯形成面28を満たす。閉空所13はすでに閉じられているので、この工程中、ばりが形成されることはない。歯付き部分26の歯は、ネットシェイプに鍛造されるので、仕上げ加工は必要でない。ポンチ部材18の移動は、プレス機のラムに連結されたリンク装置によって行われるが、他の作動手段を利用することもできる。この工程中、金型部材14および16は、互いに静止した状態に留まる。
金型10および本願明細書において記載されている他の実施例は、ステアリングラックの熱間鍛造、温間鍛造、および冷間鍛造に使用することができる。しかしながら、温間鍛造は、鋼素材を500℃から900℃程度の温度まで、加熱して使用するのが好適である。
図4、および図5は、本発明による金型50の第2の実施例を表している。金型50は、第1の金型部材54と、第2の金型部材56と、2個のポンチ部材58とを備えている。第1実施例と同様に、金型50は、歯付き部分66を有するラック52を鍛造するのに適切な鍛造プレス機に関連して使用される。
金型50は単一のポンチ部材18の代わりに、2個のポンチ部材58を有している以外は金型10に類似している。鍛造処理の制御性を強化することができるので、1個のポンチ部材のみよりも、鍛造負荷を作用させる2個のポンチ部材58を有するのが有利である。ポンチ部材58はそれぞれ金型50の両側に、金型部材56と58との間に配置されている。ポンチ部材58は、金型の中心に向け、第2の金型部材56に対して同時に移動することができる。ポンチ部材58と第2の金型部材56との間には最小の間隙がある。
図6aを参照し、第1の金型部材54は、ラック52の歯の形状に対応する形状の歯形成面78を有する。第2の金型部材56の形成面69は、形状がほぼ半円形で、ラック52をステアリングギアに組み立てる時、ラックパッドの中に摺動させる歯付き部分66の表面に対応している。各ポンチ部材58は歯付き部分66の両側に浅い長手方向くぼみ72を鍛造する形成面79を有する。これは図7に一層、明らかに示されている。歯付き部分とラックパッドとの間の接触面積を最大化するので、歯付き部分の両側にくぼみ72を有することは、単一のくぼみをラック12の歯の反対側に有することよりも有利である。
金型50の作動は図6a〜図6dに図示されている。これらは図4の平面64に沿う断面図であり、ばりを形成することなくラック52の歯付き部分66を鍛造する工程の種々の段階を示している。図6a〜図6dは、金型10の作動を示す図3a〜図3dに類似している。図6aは、第2の金型部材56内に素材12aを置き、鍛造処理の開始の際の金型部材50を示しており、歯形成面78が素材12aに接触するように、第1の金型部材54が第2の金型部材16に向け、動かされた段階を示している。ポンチ部材58は、形成面79が第2の金型部材56の半円形成面69とほぼ同一平面になるように、第2の金型部材56に対し、後退している。
図6bにおいて、第1の金型部材54は、素材12aから歯付き部分66を一部鍛造しながら第2の金型部材56に向け、動き終わっている。この工程中、半円形成面69は、ほぼ充填される。図6cにおいては、第1の金型部材54はさらに第2の金型部材56に向け、第1の金型部材54とポンチ部材58との間の間隙が閉じ、閉位置に到達するまで動き、歯付き部分66を更に一部鍛造する。これによって形成面78、69、および79によって確定される閉空所63を形成する。閉空所63のまだ充填されていない部分70によって示されているように、歯付き部分66の歯はまだ完全には形成されていない。図6b、および図6cに示される工程の間、ポンチ部材58は、第2の金型部材56に対して静止したままである。しかしながら、図示しない他の実施例においては、金型部材54および56が相互に近づく際に、ポンチ部材58は第2の金型部材56に対して移動する。
図6dは鍛造処理の最終工程を示しており、ポンチ部材58は金型部材54と56との間に形成された孔を通じて、閉空所63の中に、同時に半径方向に動き、素材12a内に高い圧力を発生し、素材は歯形成面78を充填する。空所63はすでに閉じているので、この工程中、ばりが形成されることはない。この工程の間、金型部材54と56とは、互いに静止したままである。歯付き部分66の歯は、ネットシェイプに鍛造されるので、仕上げ加工は必要でない。図7は金型50によって鍛造されたラック52を示している。
図8,図9および図10は、図4に示す金型50を組み込んだ完全な金型装置81の線図的な構成を示すものである。金型50は、第1の金型部材54と、第2の金型部材56と、2個のポンチ部材58とを備えている。第1の金型部材54は、キャリア82に取り付けられており、このキャリア82は第1のボルスタ84内で鉛直に移動できる軸83に取り付けられている。キャリア82は、図示されていない手段によって、回転しないようにキー止めされている。液圧ピストン85は、軸83に取り付けられており、第1のボルスタ84内に形成されたシリンダ86内で、移動することができる。第2の金型部材56は、第2のボルスタ87に取り付けられている。ポンチ部材58は、第2のボルスタ87に対して、それぞれ水平に移動できるブロック88に取り付けられている。ブロック88は楔部材89に当接しており、これ等の楔部材は第2のボルスタ87に対して、垂直に移動でき、ばね90によって上方に押圧されている。
図8は、中に素材12aが装填された状態の、開状態に金型装置81を示している。シリンダ86には、ポート92を通じて、液圧流体91が充填されている。楔部材89は、ばね90によって上方に突出し、それによって素材12aを装填する十分な間隙を生ずるよう、ポンチ部材58を後退させる。
図9は、図6cに示される金型50の位置に相当する鍛造操作中の位置にある金型装置81を示している。第1のボルスタ84が下方に移動するにつれて、第1の金型部材54とポンチ部材58との間の間隙は閉空所を形成するように閉じる。この位置では、ポンチ部材58が金型部材54、および56の間にクランプされないようにするために、第1の金型部材54は図示しない止め具によって支持されている。金型部材54とポンチ部材58との間には、ポンチ部材58が自由に動くことができるようにするため、小さな間隙が設けられている。第1の金型部材54が閉位置に到達した後、この金型部材は残りの鍛造操作を行うため、この位置に留まり、ボルスタ84が更に下方向に動くことでピストン85をシリンダ86に対して動かし、これによりポート92を通じて、液圧流体91を強制的に排出する。ポート92は、調圧弁、スプール弁、畜圧器またはその他の装置に連結され、ポート92を通る流れの関数として、シリンダ86内の液圧を制御する。このような手段によって、第1の金型部材54上の鍛造負荷に反応して、金型部材54をその閉位置に保持するのに充分な圧力を液圧流体91内に発生させることができる。
第1のボルスタ84が下方に移動するにつれて、ボルスタ84は楔部材89の上面に接触し、従って、楔部材を第2のボルスタ87に対して、下方に押す。楔部材89が下方に押されるにつれて、楔部材89はブロック88、およびポンチ部材58を閉空所内に押す。
図10は、図6dに示す金型50の位置に相当する鍛造操作が完了した状態に、金型装置81を示す。図9と図10とに示す位置の間に、第1のボルスタ84が下方に移動を続け、歯付き部分66を形成する鍛造操作を完了するため、楔部材89によってポンチ部材58を閉空所内に動かしている間、金型部材54は静止したままである。
図11は、本発明による金型100の第3の実施例を表している。第1、および第2の実施例において製造されるラックとは異なり、ラック112は全長のラックではなく、車両のステアリングギアに取り付ける前に、軸部分に結合する必要がある。ラックの歯付き部分を軸部分に結合する一方法は日本国特許06207623(関口産業KK)に記載されている。
金型100は、軸線ポンチ部材108と、マンドレル部材110とを有する点で、前述の実施例とは異なる。軸線ポンチ部材108は、鍛造処理における特別な制御と、ラック112の最終長さを制御する手段とを提供する。
第1、および第2の実施例においてポンチ部材18、58を使用したのと同様の方法で、半径方向のポンチ部材(1個のみを示す)に組み合わせて、軸線ポンチ108を使用するが、中空ラックにおいて必要となるマンドレル部材110を加えていることのみが相違している。マンドレル部材110は、鍛造負荷が加えられる前に、すなわち金型部材102,104のいかなる相対運動おも生ずる前に、ラック112の孔113に挿入される。マンドレル部材110は、鍛造処理の完了後に、除去され、中空ラック112を残す。中空ラックは、軽量であり材料の消費が抑えられるので、車両のステアリングギアに望ましい。
図12は、本発明による金型150の第4の実施例を表している。金型150は、金型50のそれぞれに対応する、第1の金型部材152と、第2の金型部材154と、ポンチ部材159とを備えている。金型150は、さらに第1軸線端部ポンチ156、および第2軸線端部ポンチ158を有するという点で本発明の第2の実施例である金型50とは異なっている。金型150は、完全なステアリングラックにするため軸部材に取り付ける必要がある短いラックであるラック112に類似するラック160を鍛造する。軸線端部ポンチ156、および158は、ラック160の縦軸線の方向に移動することができる。軸線端部ポンチ156、および158は金型部材152、および154と同時に動き、もしくは金型部材152、および154が閉位置に移動した後に、移動を開始する。軸線端部ポンチ156、および158は、鍛造される素材12aの端部をアップセット、すなわち、すえ込みするために、金型内に軸線方向に移動し、これにより鍛造されるラック160の端部の直径を増大する。
上述の実施例に示された鍛造されたラックは、金型の空所が完全に充填されたことを示唆する実線として、歯やポンチ部材の相手面のようなそれ等の特徴を示していることを理解すべきである。実際には、大量生産においては、これ程の充填は達成可能でもなく、望ましいものでもない。すなわち、商業的に鍛造されるラックは、丸みがついた外観によって明らかな、或る程度の充填されない部分を示しているのが望ましい。
また、簡明の理由のために、種々の支持体、ジャーナル、ベアリングおよび制御装置が図面から省略されていることを理解すべきである。
本明細書において、本発明を4つの実施例に示して、記述したが、発明の範囲から逸脱することなく、これらの実施例から離れ、およびこれ等の実施例の組み合わせを行うことができると認められる。また、本発明は、主に鋼から製造されるステアリングラックを鍛造するのに使用することを意図しているが、代わりに、他の鍛造可能な材料で本発明を使用することも可能である。
本明細書において使用されている「備え」の語は、「含み」、もしくは「有する」の包括的な意味において使用したものであり、「・・・のみから成る」のように、そのもののみを有し、その他のものを排除する意味で使用したものではない。
本発明による金型の第1実施例を示す斜視図である。 平面22に沿う一部を断面とする図1に示す金型の斜視図である。 ステアリングラックを鍛造する工程を示し、平面24に沿う断面とした図1の金型の図面である。 図3 a の次の工程を示す断面図である。 図3 b の次の工程を示す断面図である。 図3 c の次の工程を示す断面図である。 本発明による金型の第2実施例の斜視図である。 平面62に沿って部分的に切断された図4に示される金型の斜視図である。 ステアリングラックを鍛造する工程を示す、平面64に沿う断面とした図4の金型の図面である。 図6a の次の工程を示す断面図である。 図6b の次の工程を示す断面図である。 図6c の次の工程を示す断面図である。 図4に示す金型を使用して、鍛造されたステアリングラックの斜視図である。 図4に示す金型を組み込んだ完成した金型装置の線図的構成の斜視図である。 図4に示す金型を組み込んだ完成した金型装置の線図的構成の斜視図である。 図4に示す金型を組み込んだ完成した金型装置の線図的構成の斜視図である。 本発明による金型の第3実施例の断面斜視図である。 本発明による金型の第4実施例の部分断面斜視図である。

Claims (7)

  1. ステアリングラックの歯付き部分を製造するための金型装置であって、第1および第2の金型部材と、少なくとも1個のポンチ部材とを備え、前記第1および第2の金型部材、ならびにポンチ部材は、それぞれ前記ステアリングラックにおける対応する部分に対応する形状の形成面を有し、更に、前記第1の金型部材の前記形成面における少なくとも一部は前記ステアリングラックの歯に対応する形状を有し、ばりを形成しない鍛造操作を実施するための、該金型装置において、前記第1および第2の金型部材は閉位置に向け、互いに近寄るように動くことが可能であり、これにより前記金型装置内に置かれた素材に前記歯付き部分を一部鍛造すると共に、前記形成面によって確定された閉空所を形成し、前記ポンチ部材を前記閉空所内に移動するように構成し、前記第1および第2の金型部材が前記閉位置に達した後における、前記少なくとも1個のポンチ部材の移動により前記素材が前記閉空所を充填するとき前記鍛造操作が完了することを特徴とする金型装置。
  2. 前記金型部材のうち前記第2の金型部材における孔を通って、前記閉空所内に移動できるように前記ポンチ部材を構成し、前記ポンチ部材が前記第2の金型部材に対して移動可能でありかつ前記第1の金型部材に向かって移動可能とし、また前記ポンチ部材が、前記第1の金型部材の中央に、前記第1の金型部材の反対側に配置されており、両方の前記金型部材は前記閉位置において、互いに当接する構成とした請求項1に記載の金型装置。
  3. 前記少なくとも1個のポンチ部材は、2個のポンチ部材であるものとし、前記第1、および第2の金型部材の間、前記空所の両側に配置された第1、および第2のポンチ部材を備えている請求項1に記載の金型装置。
  4. 前記ポンチ部材は前記金型装置が閉じる動作によって作動する機構によって移動可能である請求項1に記載の金型装置。
  5. 前記機構は、前記ポンチ部材を前記空所内に押圧するように構成された少なくとも1個の楔部材を備えている請求項に記載の金型装置。
  6. 前記金型装置が閉じることによって加圧される油圧シリンダによって、前記金型部材の少なくとも1個が支持されている請求項1に記載の金型装置。
  7. 請求項1からのいずれか1項に記載の金型装置によって、素材に鍛造操作を施すことを特徴とするステアリングラックの製造方法。
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