JP4992901B2 - 連結装置 - Google Patents

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Description

本発明は、結装置に関する。詳しくは、互いに動力伝達可能に噛合した状態で設けられる歯車列を用いた連結装置に関する。
従来、車両用シートにおいて、シートバックの背凭れ角度を調整可能に作動するリクライニング装置を配備した構成が知られている。ここで、特開2005−83535号公報には、上述したリクライニング装置の具体的な構成が開示されている。この開示のリクライニング装置では、外歯車が内歯車に噛合状態で設けられており、外歯車を内歯車の内周歯面に沿って相対的に公転運動させる動きによってシートバックの背凭れ角度を変動させるようになっている。
そして、この開示では、上述した内歯車や外歯車の歯形がサイクロイド曲線やトロコイド曲線から成る形状に形成されている。これにより、両歯車の噛合い線が円弧状に設定されるため、噛合い線が直線状となる公知のインボリュート曲線より成る歯型の歯車列に対して、噛合い率を高くして噛合い強度を高めることができる。
しかし、上記特許文献に開示の従来技術では、歯車列の噛合い線を円弧状にすることはできるが、その噛合い率は限られた狭い範囲内でしか調整することができなかった。
本発明は、上記した問題を解決するものとして創案されたものであって、本発明が解決しようとする課題は、歯車列の噛合い率を向上させることにある。
上記課題を解決するために、本発明の連結装置は次の手段をとる。
1の発明は、互いに動力伝達可能に噛合した状態で設けられる歯車列を用いた連結装置である。連結装置は、車両用シートのシートバックとシートクッションとを連結するリクライニング装置として構成されている。リクライニング装置は、シートバック或いはシートクッションの一方に連結される内歯車を備えた内歯部材と、内歯部材の内歯車に噛合した状態で組み付けられる外歯車を備え、シートバック或いはシートクッションの他方と連結される外歯部材と、を有する。外歯車は、内歯車よりも小径で、かつ、互いに異なる歯数に形成されている。外歯車が内歯車との噛合状態で内歯車の内周歯面上を相対的に周回運動する動きによって、シートバックの背凭れ角度が変動するようになっている。外歯車と内歯車との歯車列による噛合い線が、アルキメデスの螺旋を描く噛合い線となっている。この噛合い線はは、その噛合い領域を定める二本の曲線のうち、半径方向内側に位置する曲線上から、これら二本の曲線間の間隔が広くなる側の円周方向に延びて半径方向外側に位置する曲線と交わる螺旋として形成されている。
ここで、「螺旋」には、湾曲した曲線によって描かれる螺旋のほか、直線が小刻みに折れ曲がって描かれる螺旋も含まれる。
この第1の発明によれば、リクライニング装置を構成する歯車列の噛合い線が、周間距離が一定のアルキメデスの螺旋によって描かれていることにより、周方向の一定領域内に占める噛合い線の長さが長くとられる
第2の発明は、上述した第の発明において、内歯車は、内歯部材に対して半抜き加工により円筒状に突出して形成されている。そして、外歯車も、外歯部材に対して半抜き加工により円筒状に突出して形成されている。内歯部材には、その内歯車の中心部に、円筒状の筒部が突出して形成されている。外歯部材には、その外歯車の中心部に、内歯部材に形成された筒部を内部に挿通させて包囲する円形状の貫通孔が形成されている。筒部と貫通孔とは、互いの中心部が偏心した位置関係となっている。更に、内歯部材の筒部とこの筒部を包囲する外歯部材の貫通孔との間の隙間内には、この隙間形状の一部を埋める形状を持つ一対の偏心部材が配設されている。一対の偏心部材は、常時は附勢によって互いが上述した隙間形状の狭くなる部分に挟み込み状に食込んで、外歯車を内歯車の内周歯面に押し付けた状態として保持されている。どちらか一方側の偏心部材が筒部の筒内に挿通された軸ピンの回動操作によって円周方向に押動操作されることにより、この一方側の偏心部材が食込み状態から外されると共に、外歯部材の貫通孔の内周面を押圧して外歯車を周回運動させるようになっている。
この第の発明によれば、一対の偏心部材が附勢によって筒部と貫通孔との間の狭くなる隙間形状に挟み込み状に食込むことにより、外歯車が内歯車の内周歯面に押し付けられて、両歯車が互いにバックラッシのない状態で回動が止められた状態に保持される。そして、この状態から、どちらか一方側の偏心部材が軸ピンの回動操作によって円周方向に押動操作されることにより、この一方側の偏心部材の食込み状態が解除されると共に、この偏心部材によって外歯部材の貫通孔の内周面が押圧されて外歯車が周回する方向に押動操作される。
本発明は上述した手段をとることにより、次の効果を得ることができる。
1の発明によれば、歯車列の噛合いによる噛合い線がアルキメデスの螺旋を描く噛合い線となるように歯形を形成したことにより、リクライニング装置を構成する歯車列の噛合い率を向上させることができる。これらの歯形は、アルキメデスの螺旋を用いて数値制御によって高精度に仕上げることができる。
第2の発明によれば、一対の偏心部材によって外歯車を内歯車の内周歯面に押し付けてバックラッシのない状態でその位置状態を保持したり外歯車を押動して公転運動させたりする構成としたことにより、シートバックの背凭れ角度を保持したり調整したりする操作をより一層良好に行うことができる。
実施例1のリクライニング装置の分解斜視図である。 車両用シートの概略構成を表した斜視図である。 リクライニング装置の車両用シートへの組み付け構造を表した分解斜視図である。 図3のIV-IV線断面図である。 図4のV-V線断面図である。 図5の状態から偏心部材の食込み状態が解除された状態を表した構成図である。 リクライニング装置の各歯車のピッチ円及び接触点軌跡線を表した構成図である。 リクライニング装置の内歯車の歯形を求める手順を示した構成図である。 リクライニング装置の内歯車及び外歯車の歯形を拡大して表した構成図である。 リクライニング装置の内歯車及び外歯車の歯形全体を表した構成図である。
符号の説明
1 車両用シート
2 シートバック
2f バックフレーム
2a ダボ孔
2b Dダボ孔
2c 挿通孔
3 シートクッション
3f クッションフレーム
3a ダボ孔
3b Dダボ孔
3c 挿通孔
4 リクライニング装置
10 内歯部材
11 内歯車
11a 内歯
11r 中心
11p ピッチ円
11h 有効歯先円
11m 歯先円
11n 歯底円
12 筒部
12a 挿通孔
13a ダボ
13b Dダボ
20 外歯部材
21 外歯車
21a 外歯
21r 中心
21p ピッチ円
21h 有効歯先円
21m 歯先円
21n 歯底円
22 貫通孔
23a ダボ
23b Dダボ
30A,30B 偏心部材
31A,31B 突起部
32A,32B 当接面
40 バネ部材
41A,41B 掛部
50 押動部材
51 嵌合部
52 羽部
52A,52B 押面部
60 軸ピン
70 外周リング
71 内歯側保持面
72 外歯側保持面
Tr 接触点軌跡線
P,O 点
B1〜B3 点
A1〜A3 点
P1〜P3 点
Ve1〜Ve3 法線
Ge 噛合い領域
R1〜R4 R形状部
a,b 交点
以下に、本発明を実施するための最良の形態の実施例について、図面を用いて説明する。
始めに、実施例1の歯車及びこの歯車を用いた連結装置の構成について図1〜図10を用いて説明する。ここで、図2には、本発明の連結装置に相当するリクライニング装置4,4を備えた車両用シート1の構成が斜視図によって概略的に示されている。
この車両用シート1は、背凭れとなるシートバック2と着座部となるシートクッション3とを有し、これらがその左右両サイドに設けられた一対のリクライニング装置4,4によって互いに連結された構成となっている。これにより、シートバック2は、各リクライニング装置4,4の協働した作動に伴って、シートクッション3に対する背凭れ角度が調整操作されるようになっている。これらリクライニング装置4,4は、互いに同期的に作動操作されるようになっており、後述するようにシートバック2の背凭れ角度の調整を行えるようにする状態と、背凭れ角度を保持することのできる状態と、に切換えられるようになっている。
以下、各リクライニング装置4,4の具体的な構成について説明する。なお、各リクライニング装置4,4は、互いの基本的構成は同じとなっているため、以下の説明では、これらを代表して、図示向かって右側に示されている一方側のリクライニング装置4の構成についてのみ説明をする。
ここで、図1には、リクライニング装置4の分解斜視図が示されている。このリクライニング装置4は、その中心位置に挿通される軸ピン60が図示しない電動モータの駆動回転に伴って回動操作されることで作動するようになっている。この電動モータは、例えば車両用シート1の側部位置などに配設された図示しないスイッチの切換え操作を行うことにより、ON/OFFや正転・逆転の切換え操作が行われるようになっている。
このリクライニング装置4は、軸ピン60が駆動操作される前の常時は、シートバック2の背凭れ角度を保持した状態となっている。そして、リクライニング装置4は、軸ピン60が駆動操作されることにより、その回転運動に伴ってシートバック2の背凭れ角度の調整操作を行うようになっている。
具体的には、リクライニング装置4は、内歯部材10と、外歯部材20と、一対の偏心部材30A,30Bと、バネ部材40と、押動部材50と、軸ピン60と、外周リング70とが1つに組み付けられて構成されている。これら各部材は、金属部材によって形成されている。
以下、各部材の具体的な構成について、順に詳しく説明する。
先ず、内歯部材10について説明する。
この内歯部材10は、円盤形状に形成されており、その円盤形状の外周縁が軸長方向への半抜き加工によって外歯部材20に向けて円筒状に突出して形成されている。そして、この円筒状の突出部分の内周面には、内歯11aが形成されている。これにより、円筒状に突出した部分が内歯車11として形成されている。
そして、内歯部材10の中心部には、軸ピン60を軸長方向に挿通することのできる挿通孔12aが形成されている。この挿通孔12aは、内歯部材10の板厚方向に貫通して形成されており、その中心が内歯車11の中心11rと同芯となっている。
そして、内歯部材10には、挿通孔12aの周縁部が軸長方向への半抜き加工によって外歯部材20に向けて円筒状に突出した形状の筒部12が形成されている。
ここで、図3には、リクライニング装置4のシートバック2やシートクッション3に対する取付構造が示されている。同図に示されるように、内歯部材10の外側円盤面には、挿通孔12aに対して半径方向の外方に離間した位置に、ダボ13aやDダボ13bが円周方向に並べて形成されている。
これらダボ13aやDダボ13bは、内歯部材10の軸長方向への半抜き加工によって外側円盤面から軸長方向に突出して形成されている。そして、これらダボ13aやDダボ13bは、シートバック2の骨格を成すバックフレーム2fに形成された対応するダボ孔2aやDダボ孔2bにそれぞれ嵌め込まれるようになっている。
また、バックフレーム2fにも、内歯部材10に形成された挿通孔12aと同軸線上に、軸ピン60(図1参照)を挿通することのできる挿通孔2cが形成されている。ここで、Dダボ13bは、円筒形状の一部が断面D字状に切欠かれた形状に形成されており、円筒形状のダボ13aとは形状が区別されるようになっている。これにより、内歯部材10を常に定められた向きにしてバックフレーム2fに嵌合させて一体的に接合できるようになっている。
この内歯部材10とバックフレーム2fとの接合は、内歯部材10の外側円盤面とバックフレーム2fの板面とを面当接させた状態で上記ダボ13aやDダボ13bが嵌め込まれた部位にアーク溶接が施されて行われている。なお、内歯部材10とバックフレーム2fとの接合状態は、図4において詳しく示されている。
次に、図1に戻って、外歯部材20について説明する。
この外歯部材20は、円盤形状に形成されており、その円盤形状の外周縁を残した中央側の部位が、軸長方向への半抜き加工によって内歯部材10に向けて円筒状に突出して形成されている。そして、この円筒状の突出部分の外周面には、外歯21aが形成されている。これにより、円筒状に突出した部分が外歯車21として形成されている。
そして、外歯部材20の中心部には、板厚方向に貫通した貫通孔22が形成されている。この貫通孔22の内径寸法は、内歯部材10に形成された筒部12の外径寸法よりも大きく形成されている。この貫通孔22は、外歯部材20が内歯部材10と互いの円盤面同士を重ね合わせるように組み付けられた状態では、その内部に筒部12の外周縁を取り囲んだ状態に配置される。この貫通孔22は、その中心が外歯車21の中心21rと同芯となっており、上述した筒部12とは互いに偏芯した配置関係となっている。
この外歯部材20の外側円盤面の外周縁には、軸長方向に突出したダボ23aやDダボ23bが円周方向に並べて形成されている。これらダボ23aやDダボ23bは、内歯部材10のところで説明したダボ13aやDダボ13aと同じように機能するものである。すなわち、これらダボ23aやDダボ23bは、図3に示されるように、シートクッション3の骨格を成すクッションフレーム3fに形成された対応するダボ孔3aやDダボ孔3bにそれぞれ嵌め込まれる嵌合部として構成されている。
そして、クッションフレーム3fにも、内歯部材10に形成された挿通孔12aと同軸線上に、軸ピン60(図1参照)を挿通することのできる挿通孔3cが形成されている。これにより、外歯部材20が、クッションフレーム3fに対して常に定められた向きで嵌合した状態で一体的に接合されている。この外歯部材20とクッションフレーム3fとの接合状態は、図4において詳しく示されている。
ここで、図5には、リクライニング装置4の内部構造が示されている。同図に示されるように、外歯車21は、内歯車11よりも小径で、かつ、少ない歯数で形成されている。具体的には、外歯車21の外歯21aの歯数は33個であり、内歯車11の内歯11aの歯数は34個となっている。
したがって、外歯部材20は、外歯車21を内歯車11に噛合させた状態でその内周側の歯面に沿って相対的に公転運動させるように周回させることにより、上述した歯数差によって、公転する毎に内歯部材10に対する回動方向の位置関係がずれていくようになっている。
具体的には、これらの回動方向の位置関係は、外歯車21の回動方向と同じ方向にずれていくようになっている。すなわち、図5において、例えば、外歯車21を内歯車11の内周面に沿って反時計回り方向に回動させながら内周面に沿って時計回り方向に相対移動(相対的に公転)させていくと、外歯部材20が内歯部材10に対して反時計回り方向に相対的に回動運動する。なお、実際には、外歯部材20がクッションフレーム3fに取り付けられて、内歯部材10がバックフレーム2fに取り付けられているため、内歯部材10が外歯部材20に対して相対的に時計回り方向に回動する格好となっている。
なお、これら内歯車11や外歯車21の歯形形状については、後に詳しく説明をする。
次に、図1に戻って、偏心部材30A,30Bについて説明する。すなわち、偏心部材30A,30Bは、互いが円弧状に湾曲した駒状部材として形成されており、互いに左右対称の形状に形成されている。これら偏心部材30A,30Bは、外歯部材20に形成された貫通孔22の内周面と内歯部材10に形成された筒部12の外周面との間に形成される隙間内に配設される。したがって、この各偏心部材30A,30Bの配設によって、上記の隙間の一部が埋められるようになっている。これら偏心部材30A,30Bは、図5に示されるように、筒部12の外周面を取り囲むようにしてその左右両側の位置に対向して配置されている。
ここで、図1に示されるように各偏心部材30A,30Bは、その紙面内上側の部位から下側の部位にかけて、半径方向の肉厚が次第に薄くなる先細形状に形成されている。そして、各偏心部材30A,30Bの上端近傍の部位には、同図の内歯部材10に向かう側とは反対側の軸長方向に突出した突起部31A,31Bが形成されている。これら突起部31A,31Bの紙面内下側の面は、図5に示されるように、後述する押動部材50の押面部52A,52Bに当接して押圧される当接面32A,32Bとなっている。これら当接面32A,32Bは、押動部材50の回動方向に対して半径方向の内方を向くように傾斜して形成されている。
次に、図1に戻って、バネ部材40について説明する。すなわち、バネ部材40は、開リング状に湾曲して形成されており、その両端に形成された掛部41A,41Bが各偏心部材30A,30Bの上端部分に掛着されるようになっている。
このバネ部材40は、図5を参照して分かるように各偏心部材30A,30Bの上端部分を互いに引き離す方向に附勢している。これにより、各偏心部材30A,30Bは、筒部12の外周面と貫通孔22の内周面との間の隙間形状に案内されて、それらの下端部分が互いに引き寄せられる方向に附勢されている。そして、各偏心部材30A,30Bは、この附勢によって、その先細状の下端部分が筒部12の外周面と貫通孔22の内周面との間の狭くなる隙間に挟込み状に食込んだ状態に保持されている。
これにより、外歯部材20は、その貫通孔22の内周面から両偏心部材30A,30Bの食い込みによる押圧力を受け、外歯車21が内歯車11の内周面(内歯面)に押し付けられた状態としてその公転運動が押し止められた状態に保持される。
詳しくは、偏心部材30A,30Bは、上記の隙間形状に食い込むことにより、筒部12における図示上方側(両肩側)の外周面と貫通孔22の内周面との間に食い込み力を作用させる。これにより、外歯車21が筒部12(内歯車11)に対して図示上方側に押し上げられた状態として、外歯21aが内歯11aに対してガタツキ(バックラッシ)のない状態に噛合した状態として保持される。
次に、図1に戻って、押動部材50について説明する。すなわち、押動部材50には、軸ピン60を挿通可能な円筒形状の嵌合部51と、嵌合部51の軸長方向の一端において半径方向の外側に向けて羽状に広がる羽部52と、が一体的に形成されている。
前者の嵌合部51は、その筒形状の内周面にセレーション状の溝面が形成されており、軸ピン60をその筒内に挿通させて回動方向に一体的に嵌合させられるようになっている。そして、嵌合部51は、内歯部材10に形成された筒部12の挿通孔12a内に差し込まれることにより、これと緩嵌合した状態として組み付けられる。これにより、押動部材50が筒部12によって回動可能に軸支された状態として組み付けられている。
後者の羽部52は、その羽形状の図示両肩側の端面部が、前述した各偏心部材30A,30Bの突起部31A,31Bを押動するための押面部52A,52Bとして形成されている。これら押面部52A,52Bは、図5に示されるように、各突起部31A,31Bの当接面32A,32Bとそれぞれ面当接するように、押動部材50の回動方向に対して半径方向の外方を向くように傾斜して形成されている。
そして、図5に示されるように上記した羽部52は、各偏心部材30A,30Bに形成された突起部31A,31Bの間の位置に挟まれる格好で配置されている。したがって、この図示された状態から、例えば軸ピン60が紙面内時計回り方向に回動操作されると、押動部材50もこれと一体的となって時計回り方向に回動操作される。
これにより、図6に示されるように、羽部52の紙面左肩側の押面部52Aが、同左側に配設された偏心部材30Aの突起部31Aを押動し、偏心部材30Aを附勢された食込み方向とは反対方向に押動する。詳しくは、押面部52Aは、偏心部材30Aを互いの傾斜した当接面構造によって、半径方向の外方に押圧しながら図示時計回り方向に押動する。これにより、左側の偏心部材30Aの食込み状態が解除される。
そして、偏心部材30Aが図示時計回り方向に回動変位することにより、右側の偏心部材30Bは、バネ部材40の附勢力を受けて図示時計回り方向に回動操作される。これにより、外歯車21に形成された貫通孔22の内周面が、両偏心部材30A,30Bの偏心した時計回り方向への回動に押動されて、半径方向の外方に押されながら図示時計回り方向に順に押圧されていく。そしてこれにより、外歯部材20が、外歯車21を内歯車11に噛合させた状態で、それ自体は図示反時計回り方向に自転回動しながら内歯車11の内周面に沿って時計回り方向に公転回動していく。
なお、各偏心部材30A,30Bは、軸ピン60の回動操作が止まることにより、バネ部材40の附勢力によって、再び筒部12の外周面と貫通孔22の内周面との間の狭くなる隙間に入り込んだ食込み状態となり、この状態にて保持される。
次に、図1に戻って、外周リング70について説明する。この外周リング70は、薄い中空円盤状の部材が板厚方向(軸長方向)への半抜き加工によって段差のある円筒形状に形成されている。この外周リング70は、その内周縁側の部位面が、内歯部材10の外側円盤面の外周縁側の部位面に当て交われる内歯側保持面71として形成されている。そして、外周リング70の外周縁側の部位面は、図4に示されるように、外歯部材20の外側円盤面の外周縁側の部位面に当て交われるようにカシメられる外歯側保持面72として形成されている。
この外周リング70は、図4に示されるように前述した内歯部材10が外歯部材20に対して公転運動する際には、常に、外歯側保持面72によって内歯部材10の外側円盤面の少なくとも一部を当て交った状態を維持できるようになっている。これにより、内歯部材10と外歯部材20とが、外周リング70によって、板圧方向に離間移動しないように挟持された状態として保持されている。
次に、前述したリクライニング装置4の内歯車11及び外歯車21の歯形形状について、図7〜図10を用いて説明する。
ここで、図7には、内歯車11及び外歯車21の各ピッチ円11p,21pとそれらの接触点軌跡線Trとが示されている。同図に示されるように、内歯車11及び外歯車21の歯形は、互いの噛合い線、すなわち内歯11aと外歯21aとが互いに当接する点を通る接触点軌跡線Trが螺旋状に描かれるように定められている。具体的には、内歯車11及び外歯車21の歯形形状は、それぞれ次の手順によって求められている。
先ず、内歯車11の歯形の求め方について説明する。ここで、図7の実線で示されている2つの円は、それぞれ、内歯車11と外歯車21のピッチ円11p,21pである。これら各ピッチ円11p,21pの直径は、各歯車の歯数(内歯車11の歯数:34、外歯車21の歯数:33)とモジュール(2.6)との積によってそれぞれ与えられている。具体的には、ピッチ円11pの直径が88.4mm、ピッチ円21pの直径が85.8mmとして与えられている。
そして、これらピッチ円11p,21pは、同図における交点Pにおいて互いに接触しており、それらの中心11r,21r間の距離は、上記の幾何学的関係から1.3mmとして与えられている。
また、上記した内歯車11と外歯車21との噛合い線を表す接触点軌跡線Trは、アルキメデスの螺旋によって任意に与えられている。この接触点軌跡線Trの描かれる領域(噛合い領域Ge)は、後述する内歯車11の有効歯先円11hと外歯車21の有効歯先円21hとの交点a,bの間の領域として定められる。
始めに、図8に示されるように、内歯車11の歯形を求めるために、接触点軌跡線Trの線上の位置に点Oを任意に定め、更に、点Oから順に少しずつ離れた位置に点B1,B2,B3,・・・を任意に定めていく。なお、図8では、説明を分かり易くするために、接触点軌跡線Trを実際よりも長くして示してある。
次に、点Oを通る線分P−Oの法線Ve1を引く。そして、内歯車11の中心11rと、点B1及び点Pとの相対的な位置関係を変えないで、点B1及び点Pを、中心11rの回りに紙面内時計回り方向に回転させる。そして、この回転により、点B1と法線Ve1とが交わった点をA1として定め、この回転による点Pの移動後の位置を点P1と定める。
次に、点A1を通る線分P1−A1の法線Ve2を引く。そして、内歯車11の中心11rと、点B2及び点Pとの相対的な位置関係を変えないで、点B2及び点Pを、中心11rの回りに紙面内時計回りに回転させる。そして、この回転により、点B2と法線Ve2とが交わった点をA2として定め、この回転による点Pの移動後の位置を点P2と定める。
同じように、点A2を通る線分P2−A2の法線Ve3を引く。そして、内歯車11の中心11rと、点B3及び点Pとの相対的な位置関係を変えないで、点B3及び点Pを、中心11rの回りに紙面内時計回りに回転させる。そして、この回転により、点B3と法線Ve3とが交わった点をA3として定め、この回転による点Pの移動後の位置を点P3と定める。
以下、同様にして得られる点O,A1,A2,A3,・・・を滑らかに結ぶと、これが内歯車11の歯形の一部となる。同じように、外歯車21の歯形も、接触点軌跡線Tr上に定めた各点を外歯車21の中心21rの回りに順に移動させていくことにより得ることができる。
このように2つのピッチ円11p,21pと接触点軌跡線Trとの幾何学的関係から歯形を求める手法は、公知の手法であり、刊行物(福永節夫ら著、「図説 機構学」、第1版、理工学社、1972年4月10日、図10.2)等の文献に記載されている。
したがって、上記の手法を用いることにより、図9に示されるように内歯車11と外歯車21の歯形が得られる。
ここで、内歯車11や外歯車21の歯先や歯底には、それらのプレス成形時に必要なR形状部(丸みを付けた形状部)R1〜R4がそれぞれ設定されている。このうち、内歯車11の歯先となるR形状部R1は、内歯車11に設定された歯先円11mから有効歯先円11hにかけて形成されている。そして、外歯車21の歯先となるR形状部R3は、外歯車21に設定された歯先円21mから有効歯先円21hにかけて形成されている。また、内歯車11の歯底となるR形状部R2は、内歯車11に設定された歯底円11nから図示しない有効歯底円にかけて形成されている。そして、外歯車21の歯底となるR形状部R4は、外歯車21に設定された歯底円21nから図示しない有効歯底円にかけて形成されている。
なお、この大型側のリクライニング装置4では、内歯車11の歯底円11nの直径が61.6mmとなるように各部の大きさ寸法が定められている。
上記のように歯形が形成された内歯車11と外歯車21との噛合は、上記した接触点軌跡線Tr上の歯面位置で生じる。本実施例では、アルキメデスの螺旋から成る接触点軌跡線Trを採用しているため、上記した有効歯先円11hと有効歯先円21hとの間の噛合い領域Ge内において、長い線長の噛合い線が得られている。これにより、この大型側のリクライニング装置4における両歯車の噛合い率は2〜3の間に設定されている。ここで、噛合い率は、接触点軌跡線Trの線長を法線ピッチで除して得られる数値である。この噛合い率の数値が高いほど、両歯車の噛合い強度が高くなり、リクライニング装置4の連結強度が高くなる。
なお、図10には、上記の手法によって形成されたリクライニング装置4の内歯車11と外歯車21の全体の歯形形状が示されている。
したがって、両リクライニング装置4,4の協働した作動によって、シートバック2の背凭れ角度の調整操作(回動操作)を左右でバランス良く同期させて行うことができる。
なお、本実施例の使用方法については、前述したリクライニング装置4,4の作動構造によって説明されているため、省略する。
このように、本実施例の歯車及びこの歯車を用いた連結装置によれば、車両用シートのリクライニング装置4として配設された内歯車11と外歯車21との歯車列の噛合いによる噛合い線が螺旋の噛合い線となるように歯形を形成したことにより、歯車列の噛合い率を向上させることができる。したがって、シートバック2の背凭れ角度の調整操作を良好に行うことができる。
更に、歯車列の噛合い線を周間隔が一定のアルキメデスの螺旋としたことにより、内歯車11や外歯車21の歯形を数値制御によって高精度に仕上げることができる。
更に、一対の偏心部材30A,30Bによって外歯車21を内歯車11の内周歯面に押し付けてバックラッシのない状態でその位置状態を保持したり外歯車21を押動して公転運動させたりする構成としたことにより、シートバック2の背凭れ角度を保持したり調整したりする操作をより一層良好に行うことができる。
以上、本発明の実施形態を1つの実施例を用いて説明したが、本発明は上記実施例のほか各種の形態で実施できるものである。
例えば、上記実施例では、本発明の連結装置をリクライニング装置として採用した例を示したが、他の連結装置に採用することもできる。すなわち、2つのフレーム部材の間に位置してこれらを互いに相対回動可能な状態に連結する連結装置であれば、その他の構成にも採用することができる。なお、リクライニング装置は、シートバックとシートクッションとを連結するものに限定されず、シートバックやシートクッションをフロアに対して相対回動可能な状態に連結するものであってもよい。
また、外歯車が内歯車よりも歯数が多く形成されていても良い。この場合には、外歯車の相対的な公転に伴って外歯部材は内歯部材に対して上記実施例で示した方向とは逆方向に相対回動することとなる。
また、両歯車の噛合い線がアルキメデスの螺旋で描かれたものを示したが、ベルヌーイの螺旋によって描かれたものであってもよい。また、これら螺旋は、湾曲した曲線によって描かれる螺旋に限定されず、直線が小刻みに折れ曲がって描かれる螺旋であってもよい。
また、歯車は、連結装置以外の用途にも適用することができる。すなわち、互いに動力伝達可能に噛合した状態で設けられる歯車列を構成する歯車であれば、他の用途にも使用することができる。
また、一対の偏心部材を互いに引き寄せる方向に附勢する附勢部材としてバネ部材を示したが、ゴム部材等の他の附勢部材を適用することも可能である。

Claims (2)

  1. 互いに動力伝達可能に噛合した状態で設けられる歯車列を用いた連結装置であって、
    当該連結装置が、車両用シートのシートバックとシートクッションとを連結するリクライニング装置として構成されており、
    該リクライニング装置は、
    前記シートバック或いはシートクッションの一方に連結される内歯車を備えた内歯部材と、
    該内歯部材の内歯車に噛合した状態で組み付けられる外歯車を備え、前記シートバック或いはシートクッションの他方と連結される外歯部材と、を有し、
    前記外歯車は前記内歯車よりも小径で、かつ、互いに異なる歯数に形成されており、該外歯車が前記内歯車との噛合状態で該内歯車の内周歯面上を相対的に周回運動する動きによって前記シートバックの背凭れ角度が変動するようになっており、該外歯車と内歯車との歯車列による噛合い線がアルキメデスの螺旋を描く噛合い線となっており、該噛合い線はその噛合い領域を定める二本の曲線のうち半径方向内側に位置する曲線上から当該二本の曲線間の間隔が広くなる側の円周方向に延びて半径方向外側に位置する曲線と交わる螺旋として形成されていることを特徴とする連結装置
  2. 請求項1に記載の連結装置であって、
    前記内歯車は前記内歯部材に対して半抜き加工により円筒状に突出して形成されており、前記外歯車も前記外歯部材に対して半抜き加工により円筒状に突出して形成されており、
    前記内歯部材にはその内歯車の中心部に円筒状の筒部が突出して形成されており、前記外歯部材にはその外歯車の中心部に前記内歯部材に形成された筒部を内部に挿通させて包囲する円形状の貫通孔が形成されており、該筒部と貫通孔とは互いの中心部が偏心した位置関係となっており、
    更に、前記内歯部材の筒部と該筒部を包囲する外歯部材の貫通孔との間の隙間内には該隙間形状の一部を埋める形状を持つ一対の偏心部材が配設されており、該一対の偏心部材は常時は附勢によって互いが前記隙間形状の狭くなる部分に挟み込み状に食込んで前記外歯車を内歯車の内周歯面に押し付けた状態として保持されており、そのどちらか一方側の偏心部材が前記筒部の筒内に挿通された軸ピンの回動操作によって円周方向に押動操作されることにより該一方側の偏心部材が食込み状態から外されると共に前記外歯部材の貫通孔の内周面を押圧して前記外歯車を周回運動させるようになっていることを特徴とする連結装置。
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