JP4986731B2 - 塩味強化剤 - Google Patents
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飲食品に塩味を付与するには、通常、食塩、すなわち塩化ナトリウムを使用するが、その主要構成成分であるナトリウムの過剰摂取が、高血圧をはじめとする多くの健康疾患の危険因子であることから、塩化ナトリウムの摂取量抑制が推奨され、そのため塩化ナトリウム含量を減じた様々な減塩飲食品が開発され、市販されている。しかし、ただ塩化ナトリウム添加量を減じただけでは、当然基本味の1つである塩味が減ってしまいうす味となり、美味しさが損なわれてしまう。
その方法を大きく分類すると、塩化ナトリウム代替品を使用する方法と塩味強化剤を使用する方法とに分けることができる。
しかし、塩化カリウムをはじめとする塩化ナトリウム代替品は塩味が塩化ナトリウムに比べて弱いこと、及び塩味に加えて渋味や苦味を有するものであるため、塩化ナトリウムの置換量を増やすと、得られる飲食品の塩味が弱いものとなってしまうことに加え、味質も変わってしまう問題があった。
そこで、上記塩化ナトリウム代替品についても、単一成分である塩化カリウムや有機酸のアルカリ金属塩に代えて、塩味自体はさらに弱くなるが、例えば、にがりや乳清ミネラルなどのアルカリ金属塩を含有する天然の食品成分を使用する提案が多くなされるようになってきている。
例えば、乳清ミネラルをそのまま塩化ナトリウム代替品として使用する方法(例えば特許文献1参照)、乳清ミネラルと塩化カリウムを併用した塩化ナトリウム代替品(例えば特許文献2、3参照)、乳清ミネラルと塩化カリウムと酸類を併用した塩化ナトリウム代替品(例えば特許文献4参照)、乳清ミネラルとアルカリ金属塩を併用した塩化ナトリウム代替品(例えば特許文献5参照)、ホエー蛋白質を含む乳清ミネラルを使用した塩化ナトリウム代替品(例えば特許文献6参照)、乳漿をナノ濾過膜を通して得られた乳清ミネラルを使用した塩化ナトリウム代替品(例えば特許文献7参照)などが提案されている。
特に、元々渋味や苦味を有する塩化カリウムやアルカリ金属塩と併用した特許文献2、3、4、5の塩化ナトリウム代替品は、その苦味や渋味が増強されてしまっているという問題もあった。
このように、塩化ナトリウム代替品を使用する方法では、飲食品の味質と塩味を維持したまま、塩化ナトリウム含量を減じることは不可能であった。
この方法によれば、大きな味質の変化を伴わずに飲食品の塩化ナトリウム含量を低下させることが可能であるため、カプサイシン(例えば特許文献8参照)、トレハロース(例えば特許文献9参照)、蛋白質の加水分解物(例えば特許文献10参照)、特定の界面活性剤(例えば特許文献11参照)など多くの物質が提案されている。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、以下の(a)(b)(c)(d)(e)の全てを満たす乳清ミネラルを有効成分として含有する塩味強化剤を提供するものである。
(a)乳清ミネラルの固形分中の灰分含量が30〜75質量%
(b)乳清ミネラルの固形分中のカルシウム含量が1質量%未満
(c)乳清ミネラルの灰分中のカルシウム含量が5質量%未満
(d)乳清ミネラルの固形分中の乳酸含量が2〜25質量%
(e)乳清ミネラルの固形分0.1質量%水溶液のpHが6.5〜7.0
また、本発明は、該塩味強化剤と塩化ナトリウムからなる食塩組成物を提供するものである。
また、本発明は、該食塩組成物を使用した飲食品を提供するものである。
さらに、本発明は、該塩味強化剤を飲食品に添加することを特徴とする飲食品の食塩味強化方法を提供するものである。
また、本発明の食塩組成物は、塩化ナトリウムと同等の味質であり、且つ塩味が強化されている。
また、本発明の飲食品は、塩味や美味しさを兼ね備えた減塩飲食品として好ましく使用できる。
さらに、本発明の飲食品の塩味強化方法によれば、飲食品の塩味をその味質を変えることなく極少量の添加で強化することができ、よって簡単に塩味や美味しさを兼ね備えた減塩飲食品を得ることができる。
通常、乳清ミネラルとは、乳又は乳清から可能な限り蛋白質や乳糖を除去したものであり、高濃度に乳中の灰分を含有するという特徴を有する。
そのため、その灰分組成は、原料となる乳やホエー中の組成に近い比率で含有する。
(a)乳清ミネラルの固形分中の灰分含量が30〜75質量%
(b)乳清ミネラルの固形分中のカルシウム含量が1質量%未満
(c)乳清ミネラルの灰分中のカルシウム含量が5質量%未満
(d)乳清ミネラルの固形分中の乳酸含量が2〜25質量%
(e)乳清ミネラルの固形分0.1質量%水溶液のpHが6.5〜7.0
また、本発明の塩味強化剤で使用する乳清ミネラルは、固形分中のカルシウム含量は1質量%未満、さらに好ましくは0.5質量%未満である。2質量%以上になると、塩味強化効果が著しく弱くなることに加え、得られる飲食品に濁りが生じやすくなる。なお、下限は特に制限はない。
上記乳としては、牛乳をはじめ、人乳、山羊乳、馬乳、さらにそれらを使用した脱脂乳、加工乳、及び、クリームなどが挙げられ、そのいずれでも使用することが可能である。また上記ホエーとしては、上記乳を使用してチーズを製造する際に副産物として得られるホエー、さらには、カゼイン製造の際に副産物として得られるホエー、乳を限外濾過することによって得られるホエーなど、いずれでも使用することができる。
さらに、チーズを製造する際に副産物として得られるホエー、及び、カゼイン製造の際に副産物として得られるホエーは、その製造方法により酸性ホエーと甘性ホエーがあるが、そのどちらでも使用することができる。
上記乳清ミネラルは固形分が20質量%以上であれば流動状、ペースト状、粉末状等どのような形態であってもよいが、飲食品への混合性が良好であること、また、保存時の吸湿性が防止されることから粉末状であることが好ましい。
なお、流動状やペースト状である場合、その固形分は好ましくは20〜80質量%、更に好ましくは40〜70質量%であり、粉末状である場合、その固形分は好ましくは40〜100質量%、更に好ましくは70〜100質量%である。
本発明の塩味強化剤は、上記乳清ミネラルをそのまま単独で使用してもよく、また各種の添加剤と混合して、常法により粉体、顆粒状、錠剤、液剤などの形状に製剤化して用いてもよい。これらの製剤中の上記乳清ミネラルの含有量は、乳清ミネラル由来の固形分として好ましくは5〜100質量%、より好ましくは10〜100質量%、さらに好ましくは20〜100質量%、最も好ましくは50〜100質量%である。
液剤の形状に製剤化する場合は、液体に溶解または分散させることにより得られる。そのような液体としては、水、エタノール、プロピレングリコール等が挙げられる。本発明の塩味強化剤中における上記液体の含有量は、好ましくは90質量%以下、更に好ましくは、50質量%以下である。
上記カルシウムイオン封鎖剤としては、第一リン酸ナトリウム、第一リン酸カリウム、第二リン酸ナトリウム、第二リン酸カリウム、第三リン酸ナトリウム、第三リン酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸カリウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウムなどが挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を使用することができる。
上記カルシウムイオン封鎖剤の含有量は、物質の種類や塩味強化剤の使用対象となる食品の種類によっても適正量が異なるが、好ましくは乳清ミネラルの固形分100質量部あたり0.1〜500質量部、更に好ましくは1〜100質量部である。
本発明の食塩組成物は、塩化ナトリウム、及び上記塩味強化剤からなるものであり、従来の塩化ナトリウムのみからなる食塩と同等の味質を維持したまま塩味が強化された調味料である。
本発明の飲食品は、本発明の食塩組成物を含有する飲食品である。
本発明の飲食品における、本発明の食塩組成物の含有量は、特に限定されず、使用する飲食品や求める塩味の強さに応じて適宜決定される。
なお、食塩を含有しない飲食品であっても、飲食時に食塩が含まれる食品であれば使用することができる。
換言すれば、本発明の食塩組成物を、従来の飲食品に含まれる食塩を置換使用する場合、その添加量を減少させたとしても、従来の飲食品と同等の塩味と同等の味質を有する飲食品とすることができ、減塩飲食品として極めて好ましく使用することができる。
そのため、従来の単に塩化ナトリウム含量を減じただけの減塩飲食品や、塩化ナトリウムの一部又は全部を塩化ナトリウム代替品で置換した減塩飲食品に比べ、極めて味質が良好である減塩飲食品とすることができ、また従来の塩味増強物質を使用して塩化ナトリウム含量を減じた減塩飲食品に比べ、塩化ナトリウム含量をさらに減じた減塩飲食品とすることができる。
本発明の飲食品の塩味強化方法は、飲食品に対し、上記本発明の塩味強化剤を添加するものであり、飲食品の味質を維持したまま塩味を強化するものである。
本発明の塩味強化剤の飲食品への添加量は、塩味強化剤に含まれる乳清ミネラルの固形分として、飲食品100質量部に対して、0.000001〜5質量部、好ましくは0.00001〜3質量部、更に好ましくは0.00005〜1質量部である
その場合、本発明の塩味強化剤の飲食品への添加量は、塩味強化剤に含まれる乳清ミネラルの固形分として、飲食品に含まれる塩化ナトリウム100質量部に対して、好ましくは0.001〜10質量部、より好ましくは0.01〜5質量部、さらに好ましくは0.05〜3質量部である。0.001質量部未満、又は、10質量部を超えると、塩味強化効果が認められ難く、また10質量部を超えると、飲食品の味質に悪影響を与えるおそれがある。
なお、本発明の飲食品の塩味強化方法において、本発明の塩味強化剤は、飲食品の味質を変えることなく極少量の添加で塩味を強化することのできることから、従来の飲食品に含まれる塩化ナトリウム含有量を減少させたとしても、従来の飲食品と同等の強さの塩味と、同等の味質を有する飲食品とすることができる。
すなわち、本発明の塩味強化剤を添加する基となる飲食品は減塩飲食品であることが好ましい。なお、この場合得られた飲食品もまた減塩飲食品である。
また、飲食品に添加する場合は、塩化ナトリウム含有量が少ないためにうす味で美味しさに乏しい減塩飲食品に対して使用することで、塩化ナトリウム含量が少ないにもかかわらず、通常の塩化ナトリウム含量の飲食品と同等の強さの塩味と味質を有する飲食品とすることができる。
さらに、本発明の飲食品の塩味強化方法において、塩化ナトリウムの一部を塩化カリウム等の食塩代替物に置換することで、さらに塩化ナトリウム含量も減じることも可能である。
〔製造例1〕
チーズを製造する際に副産物として得られる甘性ホエーをナノ濾過膜分離後、さらに逆浸透濾過膜分離により固形分が20質量%となるまで濃縮した。その後、さらに80℃20分の加熱処理をして生じた沈殿を遠心分離して除去した。得られた沈殿をさらにエバポレーターで濃縮した後、スプレードライ法により乾燥し、固形分97質量%の乳清ミネラル1を得た。
上記乳清ミネラル1の加熱処理工程において、処理時間を半分にした以外は同様にして乳清ミネラル2を得た。
上記乳清ミネラル1の出発原料として、乳酸発酵時間を20%短縮した甘性ホエーを使用した以外は同様にして乳清ミネラル3を得た。
さらに、上記乳清ミネラルを得る過程で、pH、及び、乳酸含量を、出発原料に使用するチーズの発酵時間で調整し、固形分中の灰分含量をナノ濾過膜分離時の膜処理条件を調整することで調整し、カルシウム含量を加熱処理の処理時間で調整し、下記の表1の組成である製造例4〜7の乳清ミネラル4〜7を得た。
チーズを製造する際に副産物として得られる甘性ホエーをナノ濾過膜分離後、さらに、逆浸透濾過膜分離により固形分が20質量%となるまで濃縮した。その後、さらに80℃20分の加熱処理をして生じた沈殿を遠心分離して除去し、これをさらにエバポレ-ターで濃縮し、固形分が40質量%の流動状の乳清ミネラル8を得た。
上記乳清ミネラル1〜7を、塩化ナトリウム100質量部に対し、それぞれ、0.002質量部、0.01質量部、0.1質量部、1質量部、10質量部、20質量部添加、混合して食塩組成物を製造し、下記の塩味強度・味質評価を行なった。
9人のパネラーに対し、上記実験例1で得られた食塩組成物と、対照として用意した塩化ナトリウム100質量%からなる食塩を舐めさせ、その塩味強度、味質について、下記パネラー評価基準により4段階評価させ、その合計点数について下記<評価基準>で5段階評価を行ない、その結果をそれぞれ表2、表3に記載した。
対照に比べあきらかに強化された塩味を感じる・・ 2点
対照に比べ若干強化された塩味を感じる・・・・・ 1点
対照とほぼ同じ程度の塩味を感じる・・・・・・・ 0点
対照より弱い塩味を感じる・・・・・・・・・・ −1点
塩化ナトリウム以外の風味を全く感じない・・・・・・・・2点
塩化ナトリウム以外の風味を感じるが、塩味として違和感ない・・・・1点
塩化ナトリウム以外の風味を感じ、且つ塩味として違和感がある・・・0点
耐えがたい異味を感じる・・・・・・・・・−1点
◎ :9人のパネラーの合計点が 15〜18点
○ :9人のパネラーの合計点が 9〜14点
△ :9人のパネラーの合計点が 5〜 8点
× :9人のパネラーの合計点が 0〜 4点
××:9人のパネラーの合計点が 0点未満
それに対して、(b)(c)条件のカルシウム含量が範囲外である乳清ミネラル4、(d)条件の乳酸含量が範囲外である乳清ミネラル5や、(e)のpH条件が範囲外である乳清ミネラル6や、(a)条件の灰分含量が範囲外である乳清ミネラル7は、塩味強化効果は見られず、特にpH条件が範囲外である乳清ミネラル6や、灰分含量が範囲外である乳清ミネラル7は、苦味が感じられやすいため、好ましくないものであった。
〔実施例1〕
上記製造例1で得られた乳清ミネラル1をそのまま本発明の塩味強化剤Aとした。続けて、塩化ナトリウム100質量部に対し該塩味強化剤Aを2質量部添加して十分混合し、本発明の食塩組成物Aとした。さらに、該本発明の食塩組成物Aを使用して、下記の配合で定法により、塩化ナトリウム含量が0.91質量%であり、塩化ナトリウム100質量部に対し、製造例1で得られた乳清ミネラル1を固形分として1.5質量部含有するポタージュスープ1を製造した。一方、上記乳清ミネラル1を全く使用しない、塩化ナトリウム100質量%からなる食塩を使用した以外は、実施例1と同様の配合・製法で製造された塩化ナトリウム含量が0.93質量%のポタージュスープ2を対照として用意した。ここで、この2種のポタージュスープを比較試食したところ、本発明の飲食品であるポタージュスープ1は、塩味強化剤を使用しないポタージュスープ2より明らかに塩味が強いが、異味は全く感じられず、味質を変えないまま、塩味を強化されたものであった。
スイートコーン(塩化ナトリウム含量0.5質量%)30質量部、牛乳5質量部、脱脂粉乳(塩化ナトリウム含量1.5質量%)5質量部、無塩バター1質量部、食塩組成物A0.7質量部、薄力粉1質量部、糊化澱粉1質量部、ホワイトペッパー0.1質量部、水56.2質量部
上記実施例1のポタージュスープの配合で、食塩組成物Aの添加量を0.7質量部から0.5質量部とした以外は実施例1と同様の配合・製法で、塩化ナトリウム含量が0.72質量%であり、塩化ナトリウム100質量部に対し、製造例1で得られた乳清ミネラルを固形分として1.4質量部含有する、塩化ナトリウム含量を通常の21質量%カットした減塩飲食品であるポタージュスープ3を製造した。そして実施例1と同様、ポタージュスープ2と比較試食したところ、本発明の減塩飲食品であるポタージュスープ3は、通常の塩化ナトリウム含量であるポタージュスープ2とほぼ同等の強さの塩味であり、且つ、同等の味質であった。
上記実施例2の食塩組成物Aを、塩化ナトリウム50質量部、塩化カリウム50質量部、塩味強化剤A2質量部からなる食塩組成物Bとした以外は、実施例2と同様の配合・製法で、塩化ナトリウム含量が0.47質量%であり、塩化ナトリウム100質量部に対し、製造例1で得られた乳清ミネラル1を固形分として2.1質量部含有する、本発明の減塩飲食品であるポタージュスープ4を製造した。そして実施例1と同様、ポタージュスープ2と比較試食したところ、本発明の減塩飲食品であるポタージュスープ4は、通常の塩化ナトリウム含量であるポタージュスープ2とほぼ同等の強さの塩味であり、且つ、ほぼ同等の味質であった。
上記製造例1で得られた乳清ミネラル1を50質量部と、第1リン酸ナトリウム2水和物50質量部とを混合し本発明の塩味強化剤Bとした。続けて、塩化ナトリウム100質量部に対し該塩味強化剤Bを4質量部添加して十分混合し、本発明の食塩組成物Cとした。さらに、該本発明の食塩組成物Cを使用した以外は、実施例2と同様の配合・製法で、塩化ナトリウム含量が0.72質量%であり、塩化ナトリウム100質量部に対し、製造例1で得られた乳清ミネラル1を固形分として1.4質量部含有する、本発明の減塩飲食品であるポタージュスープ5を製造した。そして実施例1と同様、ポタージュスープ2と比較試食したところ、本発明の減塩飲食品であるポタージュスープ4は、通常の塩化ナトリウム含量であるポタージュスープ2と同等の強さの塩味であり、且つ、ほぼ同等の味質であった。
上記製造例4で得られた乳清ミネラル4を、塩化ナトリウム100質量部に対し2質量部添加して十分混合し、食塩組成物Dを得た。該食塩組成物Dを使用した以外は実施例2と同様の配合・製法で、塩化ナトリウム含量が0.72質量%であり、塩化ナトリウム100質量部に対し、製造例4で得られた乳清ミネラル4を固形分として1.4質量部含有する、比較例の減塩飲食品であるポタージュスープ6を得た。そしてポタージュスープ6を実施例1と同様、ポタージュスープ2と比較試食したところ、比較例の減塩飲食品であるポタージュスープ5は、通常の塩化ナトリウム含量であるポタージュスープ2より明らかに塩味が薄く、また、やや苦味を感じるなど味質も劣るものであった。
上記製造例5で得られた乳清ミネラル5を、塩化ナトリウム100質量部に対し2質量部添加して十分混合し、食塩組成物Eを得た。該食塩組成物Eを使用した以外は実施例2と同様の配合・製法で、塩化ナトリウム含量が0.72質量%であり、塩化ナトリウム100質量部に対し、製造例5で得られた乳清ミネラル5を固形分として1.4質量部含有する、比較例の減塩飲食品であるポタージュスープ7を得た。そしてポタージュスープ7を実施例1と同様、ポタージュスープ2と比較試食したところ、比較例の減塩飲食品であるポタージュスープ7は、通常の塩化ナトリウム含量であるポタージュスープ2より明らかに塩味が薄く、また、やや苦味を感じるなど味質も劣るものであった。
上記製造例6で得られた乳清ミネラル6を、塩化ナトリウム100質量部に対し2質量部添加して十分混合し、食塩組成物Fを得た。該食塩組成物Fを使用した以外は実施例2と同様の配合・製法で、塩化ナトリウム含量が0.72質量%であり、塩化ナトリウム100質量部に対し、製造例6で得られた乳清ミネラル6を固形分として1.4質量部含有する、比較例の減塩飲食品であるポタージュスープ8を得た。そしてポタージュスープ8を実施例1と同様、ポタージュスープ2と比較試食したところ、比較例の減塩飲食品であるポタージュスープ8は、通常の塩化ナトリウム含量であるポタージュスープ2より明らかに塩味が薄く、また、やや苦味を感じるなど味質も劣るものであった。
上記製造例7で得られた乳清ミネラル7を、塩化ナトリウム100質量部に対し2質量部添加して十分混合し、食塩組成物Gを得た。該食塩組成物Gを使用した以外は実施例2と同様の配合・製法で、塩化ナトリウム含量が0.72質量%であり、塩化ナトリウム100質量部に対し、製造例7で得られた乳清ミネラル7を固形分として1.4質量部含有する、比較例の減塩飲食品であるポタージュスープ9を得た。そしてポタージュスープ9を実施例1と同様、ポタージュスープ2と比較試食したところ、比較例の減塩飲食品であるポタージュスープ9は、通常の塩化ナトリウム含量であるポタージュスープ2より明らかに塩味が薄く、また、やや苦味を感じるなど味質も劣るものであった。
上記製造例8で得られた乳清ミネラル8を、固形分10質量%になるように水に溶解した後、UHT処理(殺菌温度140℃、保持時間6秒)し、更に孔径φ0.2μmの濾過膜を通過させ、透明かつ常温保管可能な、乳清ミネラル由来の固形分含量が10質量%である、液剤の形態とし、これを塩味強化剤Cとした。
なお、製造例8で得られた乳清ミネラル8は目視で若干の濁りが見られ、分光光度計により波長660nmにて吸光度を測定したところ、Abs. 0.0020であったのに対し、本発明の塩味強化剤Cは目視で透明であり、分光光度計により波長660nmにて吸光度を測定したところ、Abs. 0.0000であった。また、細菌検査を行ったところ、一般生菌数が陰性であり、常温保管可能なものであった。
続けて、塩化ナトリウム80質量部、塩味強化剤C8質量部、L-グルタミン酸ナトリウム10質量部、コーンスターチ2質量部を混合し、湿式造粒し、塩化ナトリウム100質量部に対し、乳清ミネラルを固形分含量として1質量部含有する本発明の食塩組成物Hを得た。この食塩組成物と、黒ゴマを20:80の質量比で混合し、本発明の飲食品である、ふりかけ1を得た。一方、塩味強化剤Cの代わりに水8質量部を使用した以外は、同様の配合・製法で製造されたふりかけ2を対照として用意した。ここで、この2種のふりかけを比較試食したところ、本発明の飲食品であるふりかけ1は、塩味強化剤を使用しないふりかけ2より明らかに塩味が強いが、異味は全く感じられず、味質を変えないまま、塩味を強化させたものであった。
塩化ナトリウム40質量部、上記実施例1で使用した塩味強化剤A1質量部、L−グルタミン酸ナトリウム20質量部、グラニュー糖20質量部、コーンスターチ15質量部、抹茶3質量部、昆布粉1質量部を混合し、押出し造粒し、塩化ナトリウム100質量部に対し乳清ミネラルを固形分として2.4質量部含有する本発明の食塩組成物Iを得た。この食塩組成物I 100質量部に対し、あられ40質量部、海苔3質量部を加えて混合し、本発明の飲食品であるお茶漬けの素1を作製した。一方、上記塩味強化剤Aを全く使用しない以外は、同様の配合・製法で製造されたお茶漬けの素2を対照として用意した。ここで、この2種のお茶漬けの素を使用し、それぞれお茶漬けを作製し、比較試食したところ、本発明の飲食品であるお茶漬けの素1を使用したお茶漬けは、塩味強化剤Aを使用しないお茶漬けの素2を使用したお茶漬けより明らかに塩味が強いが、異味は全く感じられず、味質を変えないまま、塩味を強化させたものであった。
ジャガイモをスライスし、菜種油でフライしたフライ品100質量部と、上記実施例3で得られた食塩組成物B1質量部を、袋に入れて振揺混合することで食塩組成物Bをフライ品に付着させ、本発明の減塩飲食品であるポテトチップス1を製造した。
一方、食塩組成物Bに代えて、塩化ナトリウム100質量%からなる食塩を使用した以外は同様の配合・製法で製造されたポテトチップス2を対照として用意した。この2種のポテトチップスを比較試食したところ、ポテトチップス2は塩味が弱く物足りない風味であったのに対し、本発明の飲食品であるポテトチップス1は、ポテトチップス2に比べて明らかに塩味が強いが、異味は全く感じられず、味質を変えないまま、塩味を強化されたものであった。
中華の素(本格中華の素/株式会社エヌ・エスフーズ)5質量部と上記実施例1で使用した食塩組成物A0.3質量部に、お湯94.7質量部を加え、本発明の減塩飲食品であるラーメンのスープ1を作製した。一方、食塩組成物A0.3質量部を、塩化ナトリウム100質量%からなる食塩0.5質量部に変更した以外は同様の配合・製法で製造されたラーメンのスープ2を対照として用意した。この2種のラーメンのスープを比較試食したところ、本発明の減塩飲食品であるラーメンのスープ1は、通常の塩化ナトリウム含量である、ラーメンのスープ2とほぼ同等の強さの塩味であり、且つほぼ同等の味質であった。
白米100質量部に対し、実施例1で使用した食塩組成物Aを0.5質量部加え、さらに水を適量加え、炊飯し、本発明の減塩飲食品である塩飯1を得た。一方、食塩組成物A0.5質量部を、塩化ナトリウム100質量%からなる食塩0.9質量部に変更した以外は同様の配合・製法で製造された塩飯2を対照として用意した。ここで、この2種の塩飯を使用し、それぞれおにぎりを作製し、比較試食したところ、本発明の飲食品である塩飯1を使用したおにぎりは、通常の塩化ナトリウム含量である、塩飯2を使用したおにぎりとほぼ同等の強さの塩味であり、且つほぼ同等の味質であった。
〔実施例10〕
減塩飲食品である減塩醤油(減塩しょうゆ/キッコーマン(株)、塩化ナトリウム含量8.11質量%)100質量部に対し、上記実施例1で使用した塩味強化剤Aを0.2質量部(食塩100質量部に対し乳清ミネラル固形分として2.5質量部)添加し、十分に混合し、本発明の減塩飲食品である減塩醤油1を製造した。ここで、通常の塩化ナトリウム含量(塩化ナトリウム含量15質量%)の醤油を用意し、比較試食したところ、本発明の減塩飲食品である減塩醤油1は、通常の塩化ナトリウム含量の醤油とほぼ同等の塩味と味質を備えるものであった。
塩味強化剤Aに代えて実施例4で使用した塩味強化剤Bを使用した以外は、実施例10と同様の配合・製法で、本発明の減塩飲食品である減塩醤油2を製造した。ここで、通常の塩化ナトリウム含量(塩化ナトリウム含量15質量%)の醤油を用意し、比較試食したところ、本発明の減塩飲食品である減塩醤油2は、実施例10で得られた減塩醤油1よりも更に通常の塩化ナトリウム含量の醤油に近い塩味と味質を備えるものであった。
塩味強化剤Aに代えて乳清ミネラル4を使用した以外は、実施例10と同様の配合・製法で、比較例の減塩飲食品である減塩醤油3を製造した。ここで、通常の塩化ナトリウム含量(塩化ナトリウム含量15質量%)の醤油を用意し、比較試食したところ、比較例の減塩飲食品である減塩醤油3は、通常の塩化ナトリウム含量の醤油と比べ、明らかに塩味が薄く、また、やや苦味を感じるなど味質も劣るものであった。また、やや濁りが生じていた。
減塩飲食品である減塩浅漬けの素(うす塩仕立て浅漬けの素まろやか塩味/エバラ食品工業株式会社、塩化ナトリウム含量5.7質量%)100質量部に対し、上記実施例1で使用した塩味強化剤Aを0.18質量部(食塩100質量部に対し乳清ミネラル固形分として3質量部)添加し、十分混合し、本発明の減塩飲食品である減塩浅漬けの素1を製造した。ここで、通常の塩化ナトリウム含量(塩化ナトリウム含量8.2質量%)の浅漬けの素(浅漬けの素/エバラ食品工業株式会社、塩化ナトリウム含量8.2質量%)を用意し、この2種の浅漬けの素を使用し、それぞれ野菜を漬けて比較試食したところ、本発明の減塩飲食品である減塩浅漬けの素1で漬けた野菜は、通常の塩化ナトリウム含量の浅漬けの素で漬けた野菜とほぼ同等の強さの塩味であり、且つほぼ同等の味質を備えるものであった。
減塩飲食品である減塩味噌(信州減塩 田舎みそ/宮坂醸造株式会社、塩化ナトリウム含量9.8質量%)100質量部に対し、上記実施例1で使用した塩味強化剤Aを0.4質量部(食塩100質量部に対し乳清ミネラル固形分として4質量部)添加し、十分混合し、本発明の減塩飲食品である減塩味噌1を製造した。ここで通常の塩化ナトリウム含量の味噌(塩化ナトリウム含量12.2質量%)を用意し、この2種の味噌を使用してそれぞれ味噌汁を作製し、比較試食したところ、本発明の減塩飲食品である減塩味噌1を使用した味噌汁は、通常の塩化ナトリウム含量の味噌汁とほぼ同等の強さの塩味であり、且つほぼ同等の味質であった。
減塩飲食品である減塩ウスターソース(ブルドック塩分50質量%カットウスターソース/ブルドックソース株式会社、塩化ナトリウム含量4.2質量%)100質量部に対し、上記実施例5で得られた塩味強化剤Cを0.9質量部(食塩100質量部に対し乳清ミネラル固形分として2質量部)添加し、十分混合し、本発明の減塩飲食品である減塩ウスターソース1を製造した。ここで通常の塩化ナトリウム含量のウスターソース(塩化ナトリウム含量8.4質量%)を用意し、それぞれ比較試食したところ、本発明のウスターソース1は、通常の塩化ナトリウム含量のウスターソースとほぼ同等の強さの塩味であり、且つほぼ同等の味質であった。
Claims (7)
- 以下の(a)(b)(c)(d)(e)の全ての条件を満たす乳清ミネラルを有効成分として含有する塩味強化剤。
(a)乳清ミネラルの固形分中の灰分含量が30〜75質量%
(b)乳清ミネラルの固形分中のカルシウム含量が1質量%未満
(c)乳清ミネラルの灰分中のカルシウム含量が5質量%未満
(d)乳清ミネラルの固形分中の乳酸含量が2〜25質量%
(e)乳清ミネラルの固形分0.1質量%水溶液のpHが6.5〜7.0 - 塩化ナトリウムと請求項1記載の塩味強化剤とからなることを特徴とする食塩組成物。
- 塩化ナトリウムの一部を塩化カリウムで置換したことを特徴とする請求項2記載の食塩組成物。
- 請求項2又は3記載の食塩組成物を含有する飲食品。
- 減塩飲食品であることを特徴とする請求項4記載の飲食品。
- 請求項1記載の塩味強化剤を飲食品に添加することを特徴とする飲食品の塩味強化方法。
- 飲食品が減塩飲食品であることを特徴とする請求項6記載の飲食品の塩味強化方法。
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