JP4965351B2 - マスキング剤 - Google Patents
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Description
しかし、飲食品の製造時における加熱殺菌や保存料添加などの食品加工工程中や、該飲食品の保存期間中に、苦味や渋味、あるいはエグ味などのその風味バランスを崩す風味、すなわち雑味が生成してしまうことがある。
このような場合、それらの雑味を取り除く加工、例えば蒸留や溶出などをすればよいが、そのような操作は、微量成分を取り除くことであるから極めて煩雑で、また、飲食品の基本風味まで減少させてしまうおそれがある。
このような場合は、その特定の風味を有する食品成分を配合しない、或は取り除く加工をすればいいが、他の風味まで削ることになってしまい、飲食品の風味バランスをさらに崩してしまうことになってしまう。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、以下の(a)(b)(c)(d)(e)の全てを満たす乳清ミネラルを有効成分として含有するマスキング剤を提供するものである。
(a)乳清ミネラルの固形分中の灰分含量が30〜75質量%
(b)乳清ミネラルの固形分中のカルシウム含量が1質量%未満
(c)乳清ミネラルの灰分中のカルシウム含量が5質量%未満
(d)乳清ミネラルの固形分中の乳酸含量が2〜25質量%
(e)乳清ミネラルの固形分0.1質量%水溶液のpHが6.5〜7.0
また、本発明は、該マスキング剤を飲食品や医薬品に添加することを特徴とする、飲食品や医薬品の雑味や強すぎる風味のマスキング方法を提供するものである。
また、本発明のマスキング方法によれば、飲食品や医薬品に含まれる雑味や強すぎる風味を、その基本風味を変えることなくマスキングすることができる。
通常、乳清ミネラルとは、乳又は乳清から可能な限り蛋白質や乳糖を除去したものであり、高濃度に乳中の灰分を含有するという特徴を有する。
そのため、その灰分組成は、原料となる乳やホエー中の組成に近い比率で含有する。
(a)乳清ミネラルの固形分中の灰分含量が30〜75質量%
(b)乳清ミネラルの固形分中のカルシウム含量が1質量%未満
(c)乳清ミネラルの灰分中のカルシウム含量が5質量%未満
(d)乳清ミネラルの固形分中の乳酸含量が2〜25質量%
(e)乳清ミネラルの固形分0.1質量%水溶液のpHが6.5〜7.0
また、本発明は、該マスキング剤を飲食品や医薬品に添加することを特徴とする、飲食品や医薬品の雑味や強すぎる風味のマスキング方法を提供するものである。
上記乳としては、牛乳をはじめ、人乳、山羊乳、馬乳、さらにそれらを使用した脱脂乳、加工乳、及び、クリームなどが挙げられ、そのいずれでも使用することが可能である。また上記ホエーとしては、上記乳を使用してチーズを製造する際に副産物として得られるホエー、さらには、カゼイン製造の際に副産物として得られるホエー、乳を限外濾過することによって得られるホエーなど、いずれでも使用することができる。
さらに、チーズを製造する際に副産物として得られるホエー、及び、カゼイン製造の際に副産物として得られるホエーは、その製造方法により酸性ホエーと甘性ホエーがあるが、そのどちらでも使用することができる。
なお、流動状やペースト状である場合、その固形分は好ましくは20〜80質量%、更に好ましくは40〜70質量%であり、粉末状である場合、その固形分は好ましくは40〜100質量%、更に好ましくは70〜100質量%である。
本発明のマスキング剤は、上記乳清ミネラルをそのまま単独で使用してもよく、また各種の添加剤と混合して、常法により粉体、顆粒状、錠剤、液剤などの形状に製剤化して用いてもよい。これらの製剤中の上記乳清ミネラルの含有量は、乳清ミネラル由来の固形分として好ましくは5〜100質量%、より好ましくは10〜100質量%、さらに好ましくは20〜100質量%、最も好ましくは50〜100質量%である。
液剤の形状に製剤化する場合は、液体に溶解または分散させることにより得られる。そのような液体としては、水、エタノール、プロピレングリコール等が挙げられる。本発明のマスキング剤中における上記液体の含有量は、好ましくは90質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。
本発明の飲食品は、本発明のマスキング剤を含有する飲食品である。
本発明の飲食品における、本発明のマスキング剤の含有量は、特に限定されず、使用する飲食品や、求めるマスキング効果の強さに応じて適宜決定されるが、飲食品100質量部に対し、マスキング剤に含まれる乳清ミネラルの固形分として、好ましくは0.0001〜0.5質量部、より好ましくは0.0005〜0.2質量部、さらに好ましくは0.001〜0.1質量部である。0.0001質量部未満、又は、0.5質量部を超えると、マスキング効果が認められ難く、また0.5質量部を超えると、乳清ミネラルの苦味が感じられるおそれがある。
本発明の医薬品は、本発明のマスキング剤を含有する医薬品である。
本発明の医薬品における、本発明のマスキング剤の含有量は、特に限定されず、使用する医薬品や、求めるマスキング効果の強さに応じて適宜決定されるが、医薬品100質量部に対し、マスキング剤に含まれる乳清ミネラルの固形分として、好ましくは0.0001〜0.5質量部、より好ましくは0.0005〜0.2質量部、さらに好ましくは0.001〜0.1質量部である。0.0001質量部未満、又は、0.5質量部を超えると、マスキング効果が認められ難く、また0.5質量部を超えると、乳清ミネラルの苦味が感じられるおそれがある。
本発明の飲食品のマスキング方法は、上記本発明のマスキング剤を飲食品に添加するものであり、飲食品の基本風味を維持したまま、飲食品の雑味や強すぎる風味をマスキングするものである。
本発明のマスキング剤を飲食品に添加する方法は、特に限定されず、対象となる飲食品の加工時、調理時、飲食時等に、飲食品またはその素材に混合、散布、噴霧、溶解等任意の手段により行なわれる。
本発明のマスキング剤を医薬品に添加する方法は、特に限定されず、対象となる医薬品の加工時、調剤時、服用時等に、医薬品またはその素材に混合、散布、噴霧、溶解等任意の手段により行なわれる。
本発明のマスキング剤の、医薬品への添加量は、上述のとおり、医薬品100質量部に対し、マスキング剤に含まれる乳清ミネラルの固形分として、好ましくは0.0001〜0.5質量部、より好ましくは0.0005〜0.2質量部、さらに好ましくは0.001〜0.1質量部である。0.0001質量部未満、又は、0.5質量部を超えると、マスキング効果が認められ難く、また0.5質量部を超えると、乳清ミネラルの苦味が感じられるおそれがある。
〔製造例1〕
チーズを製造する際に副産物として得られる甘性ホエーをナノ濾過膜分離後、さらに、逆浸透濾過膜分離により固形分が20質量%となるまで濃縮した後、さらに80℃20分の加熱処理をして生じた沈殿を遠心分離して除去し、これをさらにエバポレーターで濃縮し、スプレードライ法により、固形分97質量%の乳清ミネラル1を得た。
上記乳清ミネラル1の加熱処理工程において、処理時間を半分にした以外は同様にして乳清ミネラル2を得た。
上記乳清ミネラル1の出発原料として、乳酸発酵時間を20%短縮した甘性ホエーを使用した以外は同様にして乳清ミネラル3を得た。
さらに、上記乳清ミネラルを得る過程で、pH、及び乳酸含量を出発原料に使用するチーズの発酵時間で調整し、固形分中の灰分含量をナノ濾過膜分離時の膜処理条件を調整することで調整し、カルシウム含量を加熱処理の処理時間で調整し、下記の表1の組成である製造例4〜7の乳清ミネラル4〜7を得た。
チーズを製造する際に副産物として得られる甘性ホエーをナノ濾過膜分離後、さらに、逆浸透濾過膜分離により固形分が20質量%となるまで濃縮した。その後、さらに80℃20分の加熱処理をして生じた沈殿を遠心分離して除去し、これをさらにエバポレ-ターで濃縮し、固形分が40質量%の流動状の乳清ミネラル8を得た。
グレープフルーツをジューサーにて絞りグレープフルーツジュースを得た。上記製造例1で得た乳清ミネラル1をそのまま本発明のマスキング剤Aとして、この絞りグレープフルーツジュース100質量部に対し0.005質量部添加し、十分に混合し、本発明の飲食品であるグレープフルーツジュース1を得た。得られた本発明のグレープフルーツジュース1は、無添加のグレープフルーツジュースに比べその基本風味バランスを変えることなく、苦味だけが低減されており、極めて飲みやすいものであった。
上記製造例2で得た乳清ミネラル2をそのまま本発明のマスキング剤Bとして、上記絞りグレープフルーツジュース100質量部に対し0.005質量部添加し、十分に混合し、本発明の飲食品であるグレープフルーツジュース2を得た。得られた本発明のグレープフルーツジュース2は、無添加のグレープフルーツジュースに比べその基本風味バランスを変えることなく、苦味だけが低減されており、極めて飲みやすいものであった。
上記製造例3で得た乳清ミネラル3をそのまま本発明のマスキング剤Cとして、上記絞りグレープフルーツジュース100質量部に対し0.005質量部添加し、十分に混合し、本発明の飲食品であるグレープフルーツジュース3を得た。得られた本発明のグレープフルーツジュース3は、無添加のグレープフルーツジュースに比べその基本風味バランスを変えることなく、苦味だけが低減されており、極めて飲みやすいものであった。
上記製造例4で得た乳清ミネラル4をそのまま比較例のマスキング剤Dとして、上記絞りグレープフルーツジュース100質量部に対し0.005質量部添加し、十分に混合し、比較例の飲食品であるグレープフルーツジュース4を得た。得られた本発明のグレープフルーツジュース4は、無添加のグレープフルーツジュースとほぼ同等の苦味を有するものであり、上記マスキング剤A〜Cで見られた効果はまったく得られなかった。また、若干のにごりが見られた。
上記製造例5で得た乳清ミネラル5をそのまま比較例のマスキング剤Eとして、上記絞りグレープフルーツジュース100質量部に対し0.005質量部添加し、十分に混合し、比較例の飲食品であるグレープフルーツジュース5を得た。得られた本発明のグレープフルーツジュース5は、無添加のグレープフルーツジュースとほぼ同等の苦味を有するものであり、上記マスキング剤A〜Cで見られた効果はまったく得られなかった。
上記製造例6で得た乳清ミネラル6をそのまま比較例のマスキング剤Fとして、上記絞りグレープフルーツジュース100質量部に対し0.005質量部添加し、十分に混合し、比較例の飲食品であるグレープフルーツジュース6を得た。得られた本発明のグレープフルーツジュース6は、無添加のグレープフルーツジュースとほぼ同等の苦味を有するものであり、上記マスキング剤A〜Cで見られた効果はまったく得られなかった。
上記製造例7で得た乳清ミネラル7をそのまま比較例のマスキング剤Gとして、上記絞りグレープフルーツジュース100質量部に対し0.005質量部添加し、十分に混合し、比較例の飲食品であるグレープフルーツジュース7を得た。得られた本発明のグレープフルーツジュース7は、無添加のグレープフルーツジュースとほぼ同等の苦味を有するものであり、上記マスキング剤A〜Cで見られた効果はまったく得られなかった。
健胃散(マルピー/大日本住友製薬)100質量部あたり、上記マスキング剤Aを0.02質量部添加、十分に混合し、本発明の医薬品である健胃散を得た。得られた本発明の健胃散は、無添加の健胃散に比べその基本風味バランスを変えることなく、苦味だけが低減されており、極めて服用しやすいものであった。
無糖レギュラーコーヒー(モカブレンド)のブラックコーヒー100質量部あたり、上記マスキング剤Aを0.005質量部添加、十分に混合し、本発明の飲食品であるブラックコーヒーを得た。得られた本発明のブラックコーヒーは、無添加のブラックコーヒーに比べその基本風味バランスを変えることなく、苦味だけが低減されており、極めて飲みやすいものであった。
ラガービール100質量部あたり、上記マスキング剤Aを0.005質量部添加、十分に混合し、本発明の飲食品であるビールを得た。得られた本発明のビールは、無添加のビールに比べその基本風味バランスを変えることなく、苦味だけが低減されており、極めて飲みやすいものであった。
センブリ(日本薬局方センブリ/山本漢方製薬(株))を所定の方法で煎じセンブリ液とした。このセンブリ液100質量部あたり、上記マスキング剤Aを0.02質量部添加、十分に混合し、本発明の医薬品であるセンブリ液を得た。得られた本発明のセンブリ液は、無添加のセンブリ液に比べその基本風味バランスを変えることなく、苦味だけが低減されており、極めて服用しやすいものであった。
食酢を水で5倍希釈し食酢飲料とした。上記製造例8で得た乳清ミネラル8を固形分10質量%となるよう水で希釈し、これをUHT殺菌処理(殺菌温度140℃、保持時間6秒)し、さらに、孔径φ0.2μmの濾過膜を通過させたものを本発明のマスキング剤Hとした。
なお、製造例8で得られた乳清ミネラル8は目視で若干の濁りが見られ、分光光度計により波長660nmにて吸光度を測定したところ、Abs. 0.0020であったのに対し、本発明のマスキング剤Hは目視で透明であり、分光光度計により波長660nmにて吸光度を測定したところ、Abs. 0.0000であった。また、細菌検査を行ったところ、一般生菌数が陰性であり、常温保管可能なものであった。
上記食酢飲料100質量部に対し上記マスキング剤Hを0.05質量部添加し、十分に混合し、本発明の飲食品である食酢飲料1を得た。得られた本発明の食酢飲料1は、無添加の食酢飲料に比べその基本風味バランスを変えることなく、酸味だけが低減されており、極めて飲みやすいものであった。
シロップ漬けみかん(固形分55質量%)の缶詰めを開封し、シロップ漬けみかん100質量部あたり、上記マスキング剤Aを0.002質量部添加、十分に混合し、本発明の飲食品であるシロップ漬けみかんを得た。得られた本発明のシロップ漬けみかんは、無添加のシロップ漬け缶詰みかんに比べその基本風味バランスを変えることなく、缶詰独特の加工臭だけが低減されており、極めて食べやすいものであった。
豆乳(おいしい無調製豆乳/紀文(株))100質量部あたり、上記マスキング剤Hを0.2質量部添加、十分に混合し、本発明の飲食品である豆乳を得た。得られた本発明の豆乳は、無添加の豆乳に比べその基本風味バランスを変えることなく、豆臭さだけが低減されており、極めて飲みやすいものであった。
水100mlに、塩化マグネシウム4mg、塩化ナトリウム105mg、塩化カリウム30mgを加え、更に、液糖5.0g、グレープフルーツ香料1mgを加え、十分に混合し、スポーツドリンクを得た。このスポーツドリンク100質量部あたり、上記マスキング剤Hを0.02質量部添加、十分に混合し、本発明の飲食品であるスポーツドリンクを得た。得られた本発明のスポーツドリンクは、無添加のスポーツドリンクに比べその基本風味バランスを変えることなく、収れん味だけが低減されており、極めて飲みやすいものであった。
プレーンヨーグルト100質量部あたり、上記マスキング剤Aを0.02質量部添加、十分に混合し、本発明の飲食品であるプレーンヨーグルトを得た。得られた本発明のプレーンヨーグルトは、無添加のプレーンヨーグルトに比べ、酸味だけが低減されており、極めて食べやすいものであった。
Claims (4)
- 以下の(a)(b)(c)(d)(e)の全ての条件を満たす乳清ミネラルを有効成分として含有するマスキング剤。
(a)乳清ミネラルの固形分中の灰分含量が30〜75質量%
(b)乳清ミネラルの固形分中のカルシウム含量が1質量%未満
(c)乳清ミネラルの灰分中のカルシウム含量が5質量%未満
(d)乳清ミネラルの固形分中の乳酸含量が2〜25質量%
(e)乳清ミネラルの固形分0.1質量%水溶液のpHが6.5〜7.0 - 苦味マスキング剤であることを特徴とする請求項1記載のマスキング剤。
- 請求項1又は2記載のマスキング剤を含有する経口医薬品。
- 請求項1又は2記載のマスキング剤を医薬品に添加することを特徴とする経口医薬品のマスキング方法。
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