JP4965348B2 - 塩味強化剤 - Google Patents
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Description
飲食品に塩味を付与するには、通常、食塩、すなわち塩化ナトリウムを使用するが、その主要構成成分であるナトリウムの過剰摂取が、高血圧をはじめとする多くの健康疾患の危険因子であることから、塩化ナトリウムの摂取量抑制が推奨され、そのため塩化ナトリウム含量を減じた様々な減塩飲食品が開発され、市販されている。しかし、ただ塩化ナトリウム添加量を減じただけでは、当然基本味の1つである塩味が減ってしまいうす味となり、美味しさが損なわれてしまう。
そのため、飲食品の塩味を維持したまま、塩化ナトリウム含量を減じる方法の検討が多数行なわれてきた。
その方法を大きく分類すると、塩化ナトリウム代替品を使用する方法と、塩味強化剤を使用する方法に分けることができる。
しかし、塩化カリウムをはじめとする塩化ナトリウム代替品は塩味が塩化ナトリウムに比べて弱いこと、及び塩味に加えて渋味や苦味を有するものであるため、塩化ナトリウムの置換量を増やすと、得られる飲食品の塩味が弱いものとなってしまうことに加え、味質も変わってしまう問題があった。
そこで、上記塩化ナトリウム代替品についても、単一成分である塩化カリウムや有機酸のアルカリ金属塩に代えて、塩味自体はさらに弱くなるが、例えば、にがりや乳清ミネラルなどのアルカリ金属塩を含有する天然の食品成分を使用する提案が多くなされるようになってきている。
特に乳清ミネラルはその穏やかな塩味と低ナトリウム含量であるという特徴を有するため、その利用方法について各種の検討が行なわれている。
また、乳清ミネラルもまた、若干の苦味を有するため、塩化ナトリウムの置換量を増やすと、得られる飲食品の塩味がさらに弱いものとなってしまうことに加え、味質も変わってしまう問題があった。
特に、元々渋味や苦味を有する塩化カリウムやアルカリ金属塩と併用した特許文献2、3、4、5の塩化ナトリウム代替品は、その苦味や渋味が増強されてしまっているという問題もあった。
また、特許文献6や特許文献7の塩化ナトリウム代替品は、乳清ミネラルのもつ苦味を低減することを試みたものであるが、その効果は十分なものではなく、塩化ナトリウム置換量を増やすと、苦味が感じられるという問題があった。
このように、塩化ナトリウム代替品を使用する方法では、飲食品の味質と塩味を維持したまま塩化ナトリウム含量を減じることは不可能であった。
この方法によれば、大きな味質の変化を伴わずに飲食品の塩化ナトリウム含量を低下させることが可能であるため、カプサイシン(例えば特許文献8参照)、トレハロース(例えば特許文献9参照)、蛋白質の加水分解物(例えば特許文献10参照)、特定の界面活性剤(例えば特許文献11参照)など多くの物質が提案されている。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、以下の(a)(b)(c)工程を経て得られた乳清ミネラルを有効成分として含有する塩味強化剤を提供するものである。
(a)乳又はホエーを、膜分離及び/又はイオン交換により脱ミネラル液を分離し、高ミネラル液(I)を得る工程
(b)高ミネラル液(I)から、カルシウム−リン酸複合体を分離・除去し、高ミネラル液(II)を得る工程
(c)高ミネラル液(II)を、固形分が20質量%以上となるまで濃縮及び/又は乾燥し、乳清ミネラルを得る工程
また、本発明は、該塩味強化剤と塩化ナトリウムからなる食塩組成物を提供するものである。
また、本発明は、該食塩組成物を使用した飲食品を提供するものである。
さらに、本発明は、該塩味強化剤を飲食品に添加することを特徴とする飲食品の食塩味強化方法を提供するものである。
また、本発明の食塩組成物は、塩化ナトリウムと同等の味質であり、且つ、塩味が強化されている。
また、本発明の飲食品は、塩味や美味しさを兼ね備えた減塩飲食品として好ましく使用できる。
さらに、本発明の飲食品の塩味強化方法によれば、飲食品の塩味を、その味質を変えることなく、極少量の添加で、強化することができ、よって、簡単に塩味や美味しさを兼ね備えた減塩飲食品を得ることができる。
本発明で使用する乳清ミネラルは以下の工程を経て得られるものである。
(a)乳又はホエーを、膜分離及び/又はイオン交換により脱ミネラル液を分離し、高ミネラル液(I)を得る工程
(b)高ミネラル液(I)から、カルシウム−リン酸複合体を分離・除去し、高ミネラル液(II)を得る工程
(c)高ミネラル液(II)を、固形分が20質量%以上となるまで濃縮及び/又は乾燥し、乳清ミネラルを得る工程
上記乳としては、牛乳をはじめ、人乳、山羊乳、馬乳、さらにそれらを使用した脱脂乳、加工乳、及び、クリームなどが挙げられ、そのいずれでも使用することが可能である。また上記ホエーとしては、上記乳を使用してチーズを製造する際に副産物として得られるホエー、さらには、カゼイン製造の際に副産物として得られるホエー、乳を限外濾過することによって得られるホエーなど、いずれでも使用することができる。
さらに、チーズを製造する際に副産物として得られるホエー、及び、カゼイン製造の際に副産物として得られるホエーは、その製造方法により酸性ホエーと甘性ホエーがあるが、そのどちらでも使用することができる。
ここで使用する膜分離の方法としては、精密濾過膜分離、限外濾過膜分離、ナノ濾過膜分離、逆浸透膜分離、透析膜分離と各種の方法があり、また、ここで使用するイオン交換の方法としては、陽イオン交換膜法や陰イオン交換膜法を用いる電気透析膜分離や、イオン交換樹脂による方法があり、これらの膜分離方法やイオン交換の1種又は2種以上を適宜組合せて使用することができる。
上記(b)工程としては、加熱処理をおこなうか、又はイオン交換をおこなう。
ここで、該加熱処理における加熱方法としては特に限定されず、直接加熱、間接加熱のどちらの方法でも可能である。
また、該加熱処理における加熱温度としては、好ましくは50〜99℃、更に好ましくは70〜90℃であり、その温度での保持時間は、好ましくは2〜60分、更に好ましくは15〜25分である。
分離方法としては、濾過、遠心分離等、一般的な方法をとることができる。
上記イオン交換の方法としては、陽イオン交換膜法や陰イオン交換膜法を用いる電気透析膜分離や、イオン交換樹脂による方法があり、これらの膜分離方法やイオン交換の1種又は2種以上を適宜組合せて使用することができる。
上記濃縮方法としては特に限定されないが、水分のみを効率よく除去可能なことからエバポレ−ターを用いた減圧濃縮法が好ましい。
上記乾燥方法としては特に限定されず、スプレードライ法や凍結乾燥法など一般的な乾燥方法を適宜選択することができる。
その場合、濃縮工程では、固形分が好ましくは20〜60質量%になるまで濃縮したのち、続けて、固形分が好ましくは60〜100質量%となるまで乾燥することが好ましい。
なお、流動状やペースト状である場合、その固形分は好ましくは20〜80質量%、更に好ましくは40〜70質量%であり、粉末状である場合、その固形分は好ましくは40〜100質量%、更に好ましくは70〜100質量%である。
本発明の塩味強化剤は、上記乳清ミネラルをそのまま単独で使用してもよく、また、各種の添加剤と混合して、常法により粉体、顆粒状、錠剤、液剤などの形状に製剤化して用いてもよい。これらの製剤中の上記乳清ミネラルの含有量は、乳清ミネラル由来の固形分として好ましくは5〜100質量%、より好ましくは10〜100質量%、更に好ましくは20〜100質量%、最も好ましくは50〜100質量%である。
液剤の形状に製剤化する場合は、液体に溶解または分散させることにより得られる。そのような液体としては、水、エタノール、プロピレングリコール等が挙げられる。本発明の塩味強化剤中における上記液体の含有量は、好ましくは90質量%以下、更に好ましくは、50質量%以下である。
上記カルシウムイオン封鎖剤としては、第一リン酸ナトリウム、第一リン酸カリウム、第二リン酸ナトリウム、第二リン酸カリウム、第三リン酸ナトリウム、第三リン酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸カリウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウムなどが挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を使用することができる。
上記カルシウムイオン封鎖剤の含有量は、物質の種類や塩味強化剤の使用対象となる食品の種類によっても適正量が異なるが、好ましくは乳清ミネラルの固形分100質量部あたり、0.1〜500質量部、更に好ましくは1〜100質量部である。
本発明の食塩組成物は、塩化ナトリウム及び上記塩味強化剤からなるものであり、従来の塩化ナトリウムのみからなる食塩と、同等の味質を維持したまま塩味が強化された調味料である。
本発明の食塩組成物における、塩化ナトリウムと塩味強化剤の比率は、塩化ナトリウム100質量部に対し、塩味強化剤に含まれる乳清ミネラルの固形分として、好ましくは0.001〜10質量部、より好ましくは0.01〜5質量部、さらに好ましくは0.05〜3質量部である。0.001質量部未満では、塩味強化効果が認められ難く、10質量部を超えると、塩味強化効果も弱まると共に味質に悪影響を及ぼすおそれがある。
該塩化ナトリウム代替物としては、塩化カリウム、有機酸のアルカリ金属塩などがあげられ、なかでも本発明の食塩組成物では、同等の味質と塩味を維持したまま、塩化ナトリウムをより多く置換することが可能である点で、塩化カリウムを使用することが好ましい。
本発明の飲食品は、本発明の食塩組成物を含有する飲食品である。
本発明の飲食品における、本発明の食塩組成物の含有量は、特に限定されず、使用する飲食品や、求める塩味の強さに応じて適宜決定される。
なお、食塩を含有しない飲食品であっても、飲食時に食塩が含まれる食品であれば使用することができる。
換言すれば、本発明の食塩組成物を、従来の飲食品に含まれる食塩を置換使用する場合、その添加量を減少させたとしても、従来の飲食品と同等の塩味と、同等の味質を有する飲食品とすることができ、減塩飲食品として極めて好ましく使用することができる。
本発明の飲食品が減塩飲食品である場合、本発明の食塩組成物の含有量は、上記理由から、ナトリウム含量が通常の飲食品の含量に比べて、10〜90質量%、好ましくは20〜80質量%減じた量となるような含有量であることが好ましい。
本発明の飲食品の塩味強化方法は、飲食品に対し、上記本発明の塩味強化剤を添加するものであり、飲食品の味質を維持したまま塩味を強化するものである。
本発明の塩味強化剤の飲食品への添加量は、塩味強化剤に含まれる乳清ミネラルの固形分として、飲食品100質量部に対して、0.000001〜5質量部、好ましくは0.00001〜3質量部、より好ましくは0.00005〜1質量部である
その場合、本発明の塩味強化剤の飲食品への添加量は、塩味強化剤に含まれる乳清ミネラルの固形分として、飲食品に含まれる塩化ナトリウム100質量部に対して、好ましくは0.001〜10質量部、より好ましくは0.01〜5質量部、さらに好ましくは0.05〜3質量部である。0.001質量部未満、又は、10質量部を超えると、塩味強化効果が認められ難く、また10質量部を超えると、飲食品の味質に悪影響を与えるおそれがある。
なお、塩化ナトリウムを含有する飲食品に対する塩味強化剤の添加方法としては、飲食品の製造時に原料として添加する方法であっても、また塩化ナトリウムを含有する飲食品に添加・混合使用する方法でもどちらでも可能である。
すなわち、本発明の塩味強化剤を添加する基となる飲食品は減塩飲食品であることが好ましい。なお、この場合、得られた飲食品もまた減塩飲食品である。
また、飲食品に添加する場合は、塩化ナトリウム含有量が少ないためにうす味で美味しさに乏しい減塩飲食品に対して使用することで、塩化ナトリウム含量が少ないにもかかわらず、通常の塩化ナトリウム含量の飲食品と同等の強さの塩味と味質を有する飲食品とすることができる。
さらに、本発明の飲食品の塩味強化方法において、塩化ナトリウムの一部を塩化カリウム等の食塩代替物に置換することで、さらに塩化ナトリウム含量も減じることも可能である。
〔製造例1〕
(a)工程:牛乳を使用してチーズを製造する際に副産物として得られる甘性ホエーを出発原料とし、ナノ濾過膜分離後、さらに、逆浸透濾過膜分離により脱ミネラル液を分離し、固形分含量が2.5質量%である高ミネラル液(I)を得た。
(b)工程:(a)工程で得られた高ミネラル液(II)を、間接加熱、及び、直接蒸気加熱の組合せにより、80℃で20分間加熱処理し、生成したカルシウム−リン酸複合体を、遠心分離機により分離・除去し、高ミネラル液(II)を得た。
(c)工程:(b)工程で得られた高ミネラル液(II)を、エバポレーターを用いて固形分が60質量%以上となるまで濃縮し、さらにこの濃縮液をスプレードライ法により乾燥し、固形分が97質量%の乳清ミネラル(以下、乳清ミネラルAという)を得た。
〔製造例2〕
上記製造例1における、(b)工程を行なわず、高ミネラル液(I)を直接(c)工程に供した以外は同様にして固形分が97質量%の乳清ミネラル(以下、乳清ミネラルBという)を得た。
〔製造例3〕
上記製造例1の(c)工程における、エバポレーターによる濃縮を固形分が40質量%となるまで濃縮したのみに変更した以外は同様にして固形分が40質量%の流動状の乳清ミネラル(以下、乳清ミネラルCという)を得た。
上記乳清ミネラルAを、塩化ナトリウム100質量部に対し、それぞれ、0.002質量部、0.01質量部、0.1質量部、1質量部、10質量部、20質量部添加、混合して食塩組成物を製造し、下記の塩味強度・味質評価を行なった。
9人のパネラーに対し、上記実験例1で得られた食塩組成物と、対照として用意した塩化ナトリウム100質量%からなる食塩を舐めさせ、その塩味強度、味質について、下記パネラー評価基準により4段階評価させ、その合計点数について下記<評価基準>で5段階評価を行ない、その結果を表1に記載した。
対照に比べあきらかに強化された塩味を感じる・・ 2点
対照に比べ若干強化された塩味を感じる・・・・・ 1点
対照とほぼ同じ程度の塩味を感じる・・・・・・・ 0点
対照より弱い塩味を感じる・・・・・・・・・・ −1点
塩化ナトリウム以外の風味を全く感じない・・・・・・・・2点
塩化ナトリウム以外の風味を感じるが、塩味として違和感ない・・・・1点
塩化ナトリウム以外の風味を感じ、且つ塩味として違和感がある・・・0点
耐えがたい異味を感じる・・・・・・・・・−1点
◎ :9人のパネラーの合計点が 15〜18点
○ :9人のパネラーの合計点が 9〜14点
△ :9人のパネラーの合計点が 5〜 8点
× :9人のパネラーの合計点が 0〜 4点
××:9人のパネラーの合計点が 0点未満
すなわち、上記製造例1で得られた乳清ミネラルAは、塩化ナトリウム代替品としては異味が感じられる点で不適であるが、塩味強化剤として極めて好適に使用できることがわかる。
〔実施例1〕
上記製造例1で得られた乳清ミネラルAをそのまま本発明の塩味強化剤Aとした。続けて、塩化ナトリウム100質量部に対し該塩味強化剤Aを2質量部添加して十分混合し、本発明の食塩組成物Aとした。さらに、本発明の食塩組成物Aを使用して、下記の配合で定法により、塩化ナトリウム含量が0.91質量%であり、塩化ナトリウム100質量部に対し、製造例1で得られた乳清ミネラルAを固形分として1.5質量部含有するポタージュスープ1を製造した。一方、上記乳清ミネラルAを全く使用しない、塩化ナトリウム100質量%からなる食塩を使用した以外は、実施例1と同様の配合・製法で製造された塩化ナトリウム含量が0.93質量%のポタージュスープ2を対照として用意した。ここで、この2種のポタージュスープを比較試食したところ、本発明の飲食品であるポタージュスープ1は、塩味強化剤を使用しないポタージュスープ2より明らかに塩味が強いが、異味は全く感じられず、味質を変えないまま塩味を強化されたものであった。
スイートコーン(塩化ナトリウム含量0.5質量%)30質量部、牛乳5質量部、脱脂粉乳(塩化ナトリウム含量1.5質量%)5質量部、無塩バター1質量部、食塩組成物A0.7質量部、薄力粉1質量部、糊化澱粉1質量部、ホワイトペッパー0.1質量部、水56.2質量部
上記実施例1のポタージュスープの配合で、食塩組成物Aの添加量を0.7質量部から0.5質量部とした以外は実施例1と同様の配合・製法で、塩化ナトリウム含量が0.72質量%であり、塩化ナトリウム100質量部に対し、製造例1で得られた乳清ミネラルAを固形分として1.4質量部含有する、塩化ナトリウム含量を通常の21質量%カットした減塩飲食品であるポタージュスープ3を製造した。そして実施例1と同様、ポタージュスープ2と比較試食したところ、本発明の減塩飲食品であるポタージュスープ3は、通常の塩化ナトリウム含量であるポタージュスープ2とほぼ同等の強さの塩味であり、且つ、同等の味質であった。
上記実施例2の食塩組成物Aを、塩化ナトリウム50質量部、塩化カリウム50質量部、塩味強化剤A2質量部からなる食塩組成物Bとした以外は、実施例2と同様の配合・製法で、塩化ナトリウム含量が0.47質量%であり、塩化ナトリウム100質量部に対し、製造例1で得られた乳清ミネラルAを固形分として2.1質量部含有する、本発明の減塩飲食品であるポタージュスープ4を製造した。そして実施例1と同様、ポタージュスープ2と比較試食したところ、本発明の減塩飲食品であるポタージュスープ4は、通常の塩化ナトリウム含量であるポタージュスープ2とほぼ同等の強さの塩味であり、且つ、ほぼ同等の味質であった。
上記製造例1で得られた乳清ミネラルA50質量部と、第1リン酸ナトリウム2水和物50質量部混合し、本発明の塩味強化剤Bとした。続けて、塩化ナトリウム100質量部に対し該塩味強化剤Bを4質量部添加して十分混合し、本発明の食塩組成物Cとした。さらに、本発明の食塩組成物Cを使用した以外は、実施例2と同様の配合・製法で、塩化ナトリウム含量が0.72質量%であり、塩化ナトリウム100質量部に対し、製造例1で得られた乳清ミネラルAを固形分として1.4質量部含有する、本発明の減塩飲食品であるポタージュスープ5を製造した。そして実施例1と同様、ポタージュスープ2と比較試食したところ、本発明の減塩飲食品であるポタージュスープ5は、通常の塩化ナトリウム含量であるポタージュスープ2と同等の強さの塩味であり、且つほぼ同等の味質であった。
塩化ナトリウム100質量部に対し上記製造例2で得られた乳清ミネラルBを2質量部添加して十分混合し、比較例の食塩組成物Dを得た。更に該食塩組成物Dを使用した以外は実施例2と同様の配合・製法で塩化ナトリウム含量が0.72質量%の減塩飲食品であるポタージュスープ6(比較品)を得た。そしてこの比較品を、実施例1と同様ポタージュスープ2と比較試食したところ、比較品であるポタージュスープ6は、通常の塩化ナトリウム含量であるポタージュスープ2より明らかに塩味が薄く、また、やや苦味を感じるなど味質も劣るものであった。
上記製造例3で得られた乳清ミネラルCを、固形分10質量%になるように水に溶解した後、UHT処理(殺菌温度140℃、保持時間6秒)し、更に孔径φ0.2μmの濾過膜を通過させ、透明かつ常温保管可能な、乳清ミネラル由来の固形分含量が10質量%である、液剤の形態とし、これを塩味強化剤Cとした。
なお、製造例3で得られた乳清ミネラルCは目視で若干の濁りが見られ、分光光度計により波長660nmにて吸光度を測定したところ、Abs. 0.0020であったのに対し、本発明の調味剤Cは目視で透明であり、分光光度計により波長660nmにて吸光度を測定したところ、Abs. 0.0000であった。また、細菌検査を行ったところ、一般生菌数が陰性であり、常温保管可能なものであった。
続けて、塩化ナトリウム80質量部、塩味強化剤C8質量部、L-グルタミン酸ナトリウム10質量部、コーンスターチ2質量部を混合し、湿式造粒し、塩化ナトリウム100質量部に対し、乳清ミネラルを固形分含量として1質量部含有する本発明の食塩組成物Eを得た。この食塩組成物と、黒ゴマを20:80の質量比で混合し、本発明の飲食品である、ふりかけ1を得た。一方、上記塩味強化剤Cの代わりに水8質量部を使用した以外は、同様の配合・製法で製造されたふりかけ2を対照として用意した。ここで、この2種のふりかけを比較試食したところ、本発明の飲食品であるふりかけ1は、塩味強化剤を使用しないふりかけ2より明らかに塩味が強いが、異味は全く感じられず、味質を変えないまま、塩味を強化させたものであった。
塩化ナトリウム40質量部、上記実施例1で使用した塩味強化剤A1質量部、L−グルタミン酸ナトリウム20質量部、グラニュー糖20質量部、コーンスターチ15質量部、抹茶3質量部、昆布粉1質量部を混合し、押出し造粒し、塩化ナトリウム100質量部に対し乳清ミネラルを固形分として2.4質量部含有する本発明の食塩組成物Fを得た。この食塩組成物F100質量部に対し、あられ40質量部、海苔3質量部を加えて混合し、本発明の飲食品であるお茶漬けの素1を製造した。一方、上記塩味強化剤Aを全く使用しない以外は、同様の配合・製法で製造されたお茶漬けの素2を対照として用意した。ここで、この2種のお茶漬けの素を使用し、それぞれお茶漬けを作製し、比較試食したところ、本発明の飲食品であるお茶漬けの素1を使用したお茶漬けは、塩味強化剤Aを使用しないお茶漬けの素2を使用したお茶漬けより明らかに塩味が強いが、異味は全く感じられず、味質を変えないまま、塩味を強化させたものであった。
ジャガイモをスライスし、菜種油でフライしたフライ品100質量部と、上記実施例3で得られた食塩組成物B1質量部を、袋に入れて振揺混合することで食塩組成物Bをフライ品に付着させ、本発明の減塩飲食品であるポテトチップス1を製造した。
一方、食塩組成物Bに代えて、塩化ナトリウム100質量%からなる食塩を使用した以外は同様の配合・製法で製造されたポテトチップス2を対照として用意した。この2種のポテトチップスを比較試食したところ、ポテトチップス2は塩味が弱く物足りない風味であったのに対し、本発明の飲食品であるポテトチップス1は、ポテトチップス2に比べて明らかに塩味が強いが、異味は全く感じられず、味質を変えないまま、塩味を強化されたものであった。
中華の素(本格中華の素/株式会社エヌ・エスフーズ)5質量部と上記実施例1で使用した食塩組成物A0.3質量部に、お湯94.7質量部を加え、本発明の減塩飲食品であるラーメンのスープ1を作製した。一方、食塩組成物A0.3質量部を、塩化ナトリウム100質量%からなる食塩0.5質量部に変更した以外は同様の配合・製法で製造されたラーメンのスープ2を対照として用意した。この2種のラーメンのスープを比較試食したところ、本発明の減塩飲食品であるラーメンのスープ1は、通常の塩化ナトリウム含量である、ラーメンのスープ2とほぼ同等の強さの塩味であり、且つほぼ同等の味質であった。
白米100質量部に対し、実施例1で使用した食塩組成物Aを0.5質量部加え、さらに水を適量加え、炊飯し、本発明の減塩飲食品である塩飯1を得た。一方、食塩組成物A0.5質量部を、塩化ナトリウム100質量%からなる食塩0.9質量部に変更した以外は同様の配合・製法で製造された塩飯2を対照として用意した。ここで、この2種の塩飯を使用し、それぞれおにぎりを作製し、比較試食したところ、本発明の飲食品である塩飯1を使用したおにぎりは、通常の塩化ナトリウム含量である、塩飯2を使用したおにぎりとほぼ同等の強さの塩味であり、且つほぼ同等の味質であった。
〔実施例10〕
減塩飲食品である減塩醤油(減塩しょうゆ/キッコーマン(株)、塩化ナトリウム含量8.11質量%)100質量部に対し、上記実施例1で使用した塩味強化剤Aを0.2質量部(食塩100質量部に対し乳清ミネラル固形分として2.5質量部)添加し、十分に混合し、本発明の減塩飲食品である減塩醤油1を製造した。ここで、通常の塩化ナトリウム含量(塩化ナトリウム含量15質量%)の醤油を用意し、比較試食したところ、本発明の減塩飲食品である減塩醤油1は、通常の塩化ナトリウム含量の醤油とほぼ同等の塩味と味質を備えるものであった。
塩味強化剤Aに代えて実施例4で使用した塩味強化剤Bを使用した以外は、実施例10と同様の配合・製法で、本発明の減塩飲食品である減塩醤油2を製造した。ここで、通常の塩化ナトリウム含量(塩化ナトリウム含量15質量%)の醤油を用意し、比較試食したところ、本発明の減塩飲食品である減塩醤油2は、実施例10で得られた減塩醤油1よりも更に通常の塩化ナトリウム含量の醤油に近い塩味と味質を備えるものであった。
塩味強化剤Aに代えて乳清ミネラルBを使用した以外は、実施例10と同様の配合・製法で、比較例の減塩飲食品である減塩醤油3を製造した。ここで、通常の塩化ナトリウム含量(塩化ナトリウム含量15質量%)の醤油を用意し、比較試食したところ、比較例の減塩飲食品である減塩醤油3は、通常の塩化ナトリウム含量の醤油と比べ、明らかに塩味が薄く、また、やや苦味を感じるなど味質も劣るものであった。また、やや濁りが生じていた。
減塩飲食品である減塩浅漬けの素(うす塩仕立て浅漬けの素まろやか塩味/エバラ食品工業株式会社、塩化ナトリウム含量5.7質量%)100質量部に対し、上記実施例1で使用した塩味強化剤Aを0.18質量部(食塩100質量部に対し乳清ミネラル固形分として3質量部)添加し、十分混合し、本発明の減塩飲食品である減塩浅漬けの素1を製造した。ここで、通常の塩化ナトリウム含量(塩化ナトリウム含量8.2質量%)の浅漬けの素(浅漬けの素/エバラ食品工業株式会社、塩化ナトリウム含量8.2質量%)を用意し、この2種の浅漬けの素を使用し、それぞれ野菜を漬けて比較試食したところ、本発明の減塩飲食品である減塩浅漬けの素1で漬けた野菜は、通常の塩化ナトリウム含量の浅漬けの素で漬けた野菜とほぼ同等の強さの塩味であり、且つほぼ同等の味質を備えるものであった。
減塩飲食品である減塩味噌(信州減塩 田舎みそ/宮坂醸造株式会社、塩化ナトリウム含量9.8質量%)100質量部に対し、上記実施例1で使用した塩味強化剤Aを0.4質量部(食塩100質量部に対し乳清ミネラル固形分として4質量部)添加し、十分混合し、本発明の減塩飲食品である減塩味噌1を製造した。ここで通常の塩化ナトリウム含量の味噌(塩化ナトリウム含量12.2質量%)を用意し、この2種の味噌を使用してそれぞれ味噌汁を作製し、比較試食したところ、本発明の減塩飲食品である減塩味噌1を使用した味噌汁は、通常の塩化ナトリウム含量の味噌汁とほぼ同等の強さの塩味であり、且つほぼ同等の味質であった。
減塩飲食品である減塩ウスターソース(ブルドック塩分50質量%カットウスターソース/ブルドックソース株式会社、塩化ナトリウム含量4.2質量%)100質量部に対し、上記実施例5で得られた塩味強化剤Cを0.9質量部(食塩100質量部に対し乳清ミネラル固形分として2質量部)添加し、十分混合し、本発明の減塩飲食品である減塩ウスターソース1を製造した。ここで通常の塩化ナトリウム含量のウスターソース(塩化ナトリウム含量8.4質量%)を用意し、それぞれ比較試食したところ、本発明のウスターソース1は、通常の塩化ナトリウム含量のウスターソースとほぼ同等の強さの塩味であり、且つほぼ同等の味質であった。
Claims (7)
- 以下の(a)(b)(c)工程を経て得られた乳清ミネラルを有効成分として含有する塩味強化剤。
(a)乳又はホエーを、膜分離及び/又はイオン交換により脱ミネラル液を分離し、高ミネラル液(I)を得る工程
(b)高ミネラル液(I)から、カルシウム−リン酸複合体を分離・除去し、高ミネラル液(II)を得る工程
(c)高ミネラル液(II)を、固形分が20質量%以上となるまで濃縮及び/又は乾燥し、乳清ミネラルを得る工程 - 塩化ナトリウムと請求項1記載の塩味強化剤とからなることを特徴とする食塩組成物。
- 塩化ナトリウムの一部を塩化カリウムで置換したことを特徴とする請求項2記載の食塩組成物。
- 請求項2又は3記載の食塩組成物を含有する飲食品。
- 減塩飲食品であることを特徴とする請求項4記載の飲食品。
- 請求項1記載の塩味強化剤を飲食品に添加することを特徴とする飲食品の塩味強化方法。
- 飲食品が減塩飲食品であることを特徴とする請求項6記載の飲食品の塩味強化方法。
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