JP4969948B2 - 照明調整具用シート及びそのシートを用いた照明調整具 - Google Patents

照明調整具用シート及びそのシートを用いた照明調整具 Download PDF

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Description

本発明は、照明調整具用シート及びそのシートを用いた照明調整具に関し、更に詳しくは、照明枠用シート及びそのシートを用いた照明枠として使用することができ、又は、不要な箇所は光を遮蔽し必要箇所のみ光を当てることのできる照明調整枠体などの照明調整具として使用することができ、高度な難燃性を有し、かつ、照明光による輻射熱に対する耐熱性にも優れた照明調整具用シート及びそのシートの打抜き成形体からなる照明調整具に関する。
写真撮影現場、スタジオ、舞台などでスポットライトなどの照明を使う場合、従来、照明具に照明枠を装着して、無用な光の拡散を防止し、所望の方向に照明光を効率よく照射するということが行われている。係る照明枠としては、一般に厚紙を打抜き成形したものが使われている。また、写真撮影、スタジオ、舞台などで使用される照明装置は、できるだけ目立たないほうがよいため、照明枠は、通常黒色に着色されている。
しかるに、厚紙製の照明枠は、その素材である厚紙が可燃体である上に、黒色に着色されているため、スポットライトなどの照明から照射される照明光の輻射熱を吸収しやすく、発煙したり、着炎したりして火災の原因となる危険性が高い。
そこで、厚紙製の照明枠の着炎の危険を防止するために、過去、本発明者は難燃剤を含有せしめる方法を検討したが、照明調整具用シートに難燃剤を含有せしめることで難燃性を付与することは困難であった(例えば特許文献1の「発明が解決しようとする課題」の欄において、その検討が失敗に終わった旨が報告されている。後述するスルファミン酸グアニジン系難燃剤を含浸せしめた比較例7も参照のこと。)。そもそも難燃剤は、火災時におけるような高温加熱時に、着炎を防止し、或いは着炎した時に燃焼を抑制若しくは鎮火する目的で含有させるが、通常の使用時に輻射熱を受ける等の過酷な環境にさらされることは想定されていない。照明枠としての通常の使用を行なえば、厚紙製の照明枠は当然射幅熱を受けるが、このとき、含有せしめられた難燃剤が、照明からの輻射熱を受けて分解し、発煙を生じるとともに、セルロース繊維の炭化促進作用を発現し、その結果として紙質が劣化してしまった。したがって、単に難燃剤を含有せしめる方法では、照明枠として必要な強度を維持できなくなった。そこで、係る難点を解決するために、本発明者は難燃剤による発煙及び紙質劣化を起こすことがないよう、あえて難燃剤を使用せずに、照明調整具として使用できるシートの提案を特許文献1において行った。
特開2000−276923号公報
特許文献1では、セルロースの炭化促進作用を有する難燃剤を含有せしめずに、含水無機化合物と炭酸塩とを特定配合比率で比較的高含有せしめることによって、難燃性と、照明による輻射熱に対する耐熱性の両立を図るという技術が開示されている。しかし、係る分野での性能向上要求は、更に強いものがあり、より高度の難燃性すなわち消防法施行規則第4条の3第3項の規定の防炎合格基準に適合する難燃性が求められている。係る難燃性を確保するために含水無機化合物と炭酸塩との配合量を更に高めるとシート中のセルロース繊維が過少となり、シート強度が大きく低下し、取扱い作業性の悪化が避けられず、更に、打抜き成形性も著しく悪化し、実用には供し得ない。
そこで本発明の目的は、照明調整具用シート及び照明調整具において、消防法施行規則第4条の3第3項の規定の防炎合格基準に適合する高度な難燃性を得るため、難燃剤を含有させるが、この難燃剤によって発煙及び紙質劣化を生じさせず、照明による輻射熱に対して優れた耐熱性を付与すると共に、良好な取扱い作業性及び打抜き成形性を具備させることである。
本発明に係る照明調整具用シートは、水に難溶な難燃剤、含水無機化合物及び/又は炭酸塩、並びに、セルロース繊維を含有する原料スラリーを湿式抄紙して得たシートであって、前記難燃剤、前記含水無機化合物及び/又は前記炭酸塩、並びに、前記セルロース繊維がシート中の厚さ方向全体に分布し、前記シート中の前記含水無機化合物及び/又は前記炭酸塩の含有率が固形分で35〜75質量%であり、前記シート中の前記セルロース繊維の含有率が固形分で20〜60質量%であり、前記シート中の前記難燃剤の含有率が固形分で2〜15質量%であり、前記難燃剤がリン酸メラミン系難燃剤及び硫酸メラミン系難燃剤の中から選ばれた少なくとも1種であり、JIS Z 8730:1995「色の表示方法−物体色の色差」のL表色系によるシート表面の明度指数Lが65以下であり、消防法施行規則第4条の3第4項に規定された45°メッケルバーナー法に準じて、2分加熱試験にて、炭化面積40cm 以下、残炎時間5秒以下及び残じん時間20秒以下を満足する難燃性を有し、かつ、写真撮影用の500Wのスポットライトを5cmの至近から60秒間照射したときのシートからの発煙がわずかに生じるか或いはほとんど生じず、かつ、照射後のシートの劣化がほとんど認められないことを満足する耐熱性を有することを特徴とする。リン酸メラミン系難燃剤及び/又は硫酸メラミン系難燃剤は、原料スラリーに含有させて湿式抄紙しても、ほとんど溶解せず、シートの内部に均一に分散する。また、前記したスルファミン酸グアニジン系難燃剤の分解温度が約230℃と低いのに対し、リン酸メラミン系難燃剤の分解温度は約390℃、硫酸メラミン系難燃剤の分解温度は約350℃であり、これらの難燃剤は分解温度が高いため、照明による輻射熱に対しての耐熱性も優れている。
本発明に係る照明調整具用シートでは、前記シートの厚さが0.3〜3mmであることが好ましい。十分な打抜き成形性及び機械的強度を確保しやすくなる。
本発明に係る照明調整具用シートでは、前記含水無機化合物と前記炭酸塩との固形分質量比が100/0〜50/50であることが好ましい。より十分な難燃性及び耐熱性を確保しやすくなる。
本発明に係る照明調整具用シートでは、前記含水無機化合物が、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、二水和石こう及びアルミン酸カルシウムの中から選ばれた少なくとも1種類であることが好ましい。これらの含水無機化合物は、高温加熱時に分解して吸熱作用によって難燃化効果を発揮するからである。
本発明に係る照明調整具用シートでは、前記炭酸塩が炭酸カルシウムであることが好ましい。炭酸カルシウムは、高温加熱時に分解して吸熱作用によって難燃化効果を発揮し、また発煙量低減効果を発揮するからである。
本発明に係る照明調整具は、本発明に係る前記照明調整具用シートの打抜き成形体からなることを特徴とする。
本発明に係る照明調整具用シート及び本発明の照明調整具は、消防法施行規則第4条の3第3項の規定の防炎合格基準に適合する高度な難燃性を得るために、難燃剤が含有されるが、この難燃剤によって発煙及び紙質劣化が生じず、照明による輻射熱に対して優れた耐熱性を有すると共に、良好な取扱い作業性及び打抜き成形性を具備している。また、本発明者が先に提案した特許文献1に係る照明調整具用シートを用いた照明枠を長時間使用した際に、照明による輻射熱によって照明枠が着炎することはなかったものの、時として赤熱状態を呈することがあった。これに対して本発明に係る照明調整具用シート及び本発明に係る照明調整具は消防法施行規則第4条の3第3項の規定の防炎合格基準に合格、すなわち、残じん時間(赤熱状態)20秒以下を満たすため、照明枠として長時間使用した際にも、赤熱状態を呈することを回避できる。
本実施形態に係る照明調整具用シートは、水に難溶な難燃剤、含水無機化合物及び/又は炭酸塩、並びに、セルロース繊維を含有する原料スラリーを湿式抄紙して得たシートであって、前記難燃剤、前記含水無機化合物及び/又は前記炭酸塩、並びに、前記セルロース繊維がシート中の厚さ方向全体に分布し、前記シート中の前記含水無機化合物及び/又は前記炭酸塩の含有率が固形分で35〜75質量%であり、前記シート中の前記セルロース繊維の含有率が固形分で20〜60質量%であり、前記シート中の前記難燃剤の含有率が固形分で2〜15質量%であり、かつ、JIS Z 8730:1995「色の表示方法−物体色の色差」のL表色系によるシート表面の明度指数Lが65以下である。また、本発明に係る照明調整具は、本実施形態に係る照明調整具用シートの打抜き成形体である。
本実施形態に係る照明調整具用シートでは、水に難溶な難燃剤を原料スラリーに含有させて湿式抄紙して得たシートである。水に難溶な難燃剤の使用と湿式抄紙方式の採用との組み合わせによって、難燃剤をシート中の厚さ方向全体に分布させることができる。本発明が対象とする照明調整具用シートに消防法施行規則第4条の3第3項の規定の防炎合格基準に適合する高度な難燃性を付与するためには、照明器具からの輻射熱を使用時に受け続けるという過酷な使用環境を考慮すると、難燃剤を外添する方式は不適であり、シートの厚さ方向においてできるだけ均一な難燃性が要求されることが判明した。そこで、上述の通り、シートに難燃剤を内添する。このとき、水溶性の難燃剤を用いず水に難溶性の難燃剤を使用することで、シート内に難燃剤を均一に分散させることができる。特に照明調整具用シートではシートの機械的強度を確保するために厚いシートが使用されることが多く、この場合において、水に難溶性の難燃剤を内添する意義が大きい。すなわち、水溶性の難燃剤を外添した場合、シートの表層部に難燃剤が偏在し、芯部に十分な難燃剤を含有せしめることを難しくしている。この場合、消防法施行規則第4条の3第4項に規定された45°メッケルバーナー法に準じた2分加熱試験にて、残じん時間が消防法施行規則第4条の3第3項の規定の防炎合格基準に適合できなくなる。これに対して、水に難溶な難燃剤を内添した場合、シートの厚さ方向全体に適量の難燃剤を均一に含有せしめることができる。この場合は、照明器具からの輻射熱を使用時に受け続けるという過酷な使用環境においても発煙及び紙質劣化を生じない。照明による輻射熱に対して優れた耐熱性を有すると共に、消防法施行規則第4条の3第3項の規定の防炎合格基準に適合する高度な難燃性を具備したシートが得られる。
含水無機化合物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、二水和石こう、アルミン酸カルシウム(xCaO・Al・yHO;x=1〜4、y=5〜19)であり、これらを単独で或いは2種以上を組み合わせて使用する。これらの化合物は何れも分子内に結晶水をもち化学的に類似した構造を有する。また、含水無機化合物は、その種類によって分解温度及び吸熱量に幾分差があるが、高温加熱時に分解して吸熱作用によって難燃化効果を示すという点では全く共通している。したがって、基本的に前記した含水無機化合物の何れを用いてもよいが、入手価格などの経済性をも考慮すると水酸化アルミニウムが最適である。
炭酸塩としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸ストロンチウム、炭酸ベリリウム、炭酸亜鉛があり、これらを単独で或いは2種以上を組み合わせて使用する。これらの炭酸塩はその種類によって、分解温度及び吸熱量に幾分差があるが、高温加熱時に分解して吸熱作用による難燃化効果を示すという点では全く共通している。したがって、基本的に前記した炭酸塩の何れを用いてもよいが、入手価格などの経済性をも考慮すると、炭酸カルシウムが最適である。なお、炭酸塩配合によるもうひとつの重要な効果として本発明者が特許文献2で指摘したところの発煙量低減効果を挙げることができる。
特開平5−112659号公報
本実施形態に係る照明調整具用シートのシート中の含水無機化合物及び/又は炭酸塩の含有率範囲を、固形分で35〜75質量%とする。好ましくは40〜70質量%、更に好ましくは45〜65質量%である。その含有率が35質量%未満では、十分な難燃性及び耐熱性が得られない。反対に75質量%を超えた場合は、含水無機化合物及び/又は炭酸塩の過多によって、十分な打抜き成形性、機械的強度などを得ることができず不適である。なお、シート中の含水無機化合物及び/又は炭酸塩の含有率範囲を固形分で40〜70質量%の範囲とすることによって、十分な難燃性、耐熱性、打抜き成形性、機械的強度などを確保しやすくなり、45〜65質量%の範囲とすることによって、更に、十分な難燃性、耐熱性、打抜き成形性、機械的強度などを確保しやすくなる。
また、含水無機化合物/炭酸塩の含有質量比率は、固形分で50/50よりも含水無機化合物過多側とするのが好ましい。含水無機化合物/炭酸塩の含有質量比率は、固形分で50/50よりも含水無機化合物過多側とすることによって、より十分な難燃性及び耐熱性を確保しやすくなる。
上記したセルロース繊維としては、針葉樹系若しくは広葉樹系の化学パルプ、機械パルプ、セミケミカルパルプなどの木材パルプ又は木綿パルプ、麻パルプ、各種古紙パルプなどの中から選ばれる1種類又は2種類以上を併用してもよい。木材パルプは、供給量及び品質が安定しており価格も比較的安価であることから最も使いやすいセルロース繊維原料である。木綿パルプ及び麻パルプは、供給量が不安定であり価格も高価であるが、本発明におけるような吸熱分解性を有する無機化合物を多量に含有するシートにおいては、必要に応じて木綿パルプ又は麻パルプを使用することによって、シートの打抜き成形性、機械的強度などの低下を最小限にとどめることができる。
本実施形態に係るシート中のセルロース繊維の含有率範囲は、固形分で20〜60質量%、好ましくは25〜55質量%、更に好ましくは30〜50質量%である。その含有率が20質量%未満では、セルロース繊維の過少によって、十分な打抜き成形性、機械的強度などを得ることができず、反対に、60質量%を超えた場合は、有機物質の過多によって、十分な難燃性及び耐熱性を得ることができない。なお、シート中のセルロース繊維の含有率を固形分で25〜55質量%の範囲とすることによって、十分な難燃性、耐熱性、打抜き成形性、機械的強度などを確保しやすくなり、30〜50質量%の範囲とすることで、更に、十分な難燃性、耐熱性、打抜き成形性、機械的強度などを確保しやすくなる。
水に難溶な難燃剤としては、20℃・100gの純水に対する溶解度が、5g以下、好ましくは1g以下であり、また、その形態としては固体状若しくはエマルジョン状であることが好ましい。例えば、リン酸アンモニウム系難燃剤若しくはリン酸アミド系難燃剤も使用可能であるが、リン酸メラミン系難燃剤及び硫酸メラミン系難燃剤の中から選ばれた少なくとも1種類が好適である。リン酸メラミン系難燃剤及び/又は硫酸メラミン系難燃剤は、原料スラリーに含有させて湿式抄紙しても、ほとんど溶解せず、シートの内部に均一に分散する。また、前記したスルファミン酸グアニジン系難燃剤の分解温度が約230℃と低く、リン酸アンモニウム系難燃剤及びリン酸アミド系難燃剤の分解温度も300℃未満であるのに対し、リン酸メラミン系難燃剤の分解温度は約390℃、硫酸メラミン系難燃剤の分解温度は約350℃であり、これらの難燃剤は分解温度が高いため、照明による輻射熱に対しての耐熱性も優れている。ここで、水に難溶な難燃剤は粉体状の難燃剤であることが好ましく、粉体の平均粒径は、0.1〜50μmとすることが好ましく、より好ましくは0.5〜30μmである。0.1μm未満では取り扱いがしにくくなり、また、50μmを超えると、分散性が低下し、十分な難燃性が得られない場合、或いは、機械的強度が低下する場合がある。粉末状の難燃剤を使用することで、シートの内部において、より均一に分散させることができるので内添する難燃剤の使用量を少なくすることができ、照明による輻射熱に対する十分な耐熱性を確保しやすくなる。本実施形態に係るシート中の水に難溶な難燃剤の含有率範囲は、固形分で2〜15質量%、好ましくは2〜12質量%、更に好ましくは3〜10質量%である。その含有率が2質量%未満では、十分な難燃性を得ることができず、反対に、15質量%を超えた場合は、耐熱性、打抜き成形性、機械的強度などに支障を来たしやすくなる。なお、シート中の水に難溶な難燃剤の含有率を固形分で2〜12質量%の範囲とすることによって、十分な難燃性、耐熱性、打抜き成形性、機械的強度などを確保しやすくなり、3〜10質量%の範囲とすることで、更に、十分な難燃性、耐熱性、打抜き成形性、機械的強度などを確保しやすくなる。なお、難燃剤の平均粒径の測定方法は、レーザー回折法である。
本実施形態にかかる照明調整具用シートの難燃性は、消防法施行規則第4条の3第4項に規定された45°メッケルバーナー法に準じて、2分加熱試験にて、炭化面積40cm以下、残炎時間5秒以下及び残じん時間20秒以下を満足することが好ましい。
また、本実施形態にかかる照明調整具用シートでは、照明器具の輻射熱に対して耐久性を有している。本実施形態にかかる照明調整具用シートの耐熱性は、写真撮影用の500Wのスポットライトを5cmの至近から60秒間照射したときのシートからの発煙がわずかに生じるか或いはほとんど生じず、かつ、照射後のシートの劣化がほとんど認められないことが好ましい。
本実施形態に係る照明調整具用シートのJIS Z 8730:1995「色の表示方法−物体色の色差」のL表色系によるシート表面の明度指数Lは、65以下であり、好ましくは60以下、更に好ましくは55以下である。Lが65を超えた場合、照明光の反射拡散を生じやすくなり、好ましくない。また、係るシートから成る照明調整具及び照明装置は、目視されやすく目立つことになり、好ましくない。一方、シート表面の明度指数Lを60以下とすることによって、更に、照明光の反射拡散を防止しやすくなる。また、目視されにくく目立ちにくいという特性も確保しやすくなり、シート表面の明度指数Lを55以下とすることによって、更に、照明光の反射拡散を防止しやすくなる。また、更に、目視されにくく目立ちにくいという特性も確保しやすくなる。
本実施形態に係る照明調整具用シートの厚さは、好ましくは0.3〜3mm、より好ましくは0.5〜2.5mm、さらに好ましくは1.0〜2.5mm、最も好ましくは、1.5〜2.2mmの範囲である。その厚さが0.3mm未満では、照明調整具として十分な機械的強度を得ることができない。また、厚さが3mmを超えた場合は、打抜き成形を施しにくくなり好ましくない。一方、シートの厚さを0.5〜2.5mmの範囲とすることによって、十分な打抜き成形性及び機械的強度を確保しやすくなる。さらに、シートの厚さを1.0〜2.5mm、さらには1.5〜2.2mmの範囲とすることによって、照明調整具用シートとして、使用しやすくなる。
本実施形態に係る照明調整具用シートの製造方法としては、湿式抄紙法を用いる。次に、製造方法にも言及しながら、更に詳述する。
すなわち、本実施形態に係る照明調整具用シートを製造するには、水に難溶な難燃剤、含水無機化合物及び/又は炭酸塩、並びに、セルロース繊維の所定量を含有する原料スラリーを調成し、通常の抄紙法によって抄造すればよい。含水無機化合物及び/又は炭酸塩を含有せしめる方法としては、含水無機化合物及び/又は炭酸塩を含有する塗料を基材に塗布若しくは含浸せしめるなどの方法も考えられるが、所定の含有量を確保し、かつ、厚さ方向での品質の均一化を図るためには、原料スラリー中に含水無機化合物及び/又は炭酸塩を粉体状若しくはスラリー状にて内添する方法が最も好ましい。また、水に難溶な難燃剤、含水無機化合物、炭酸塩及びセルロース繊維の添加順序は、任意であり、必要に応じてセルロース繊維に叩解処理などを施してもよい。
抄造については、長網、円網、傾斜網などの抄紙網上に前記原料スラリーを供給し、濾過、脱水した後、圧搾、乾燥すればよい。また、必要に応じて、各種コンビネーション網、多漕円網、各種ラミネーターなどを用いてシート層を2層以上重ね合わせてもよい。
本実施形態に係る照明調整具用シートは、その表面の明度指数Lを65以下とするために、着色しなければならない。着色するときは、カーボン、グラファイトなどの黒色系の顔料又は黒色系の染料などを原料スラリー中に内添するか又は紙層を形成せしめてから含浸するか若しくは塗布すればよい。
また、原料スラリー中には、含水無機化合物及び/又は炭酸塩並びに水に難溶な難燃剤の歩留を向上せしめるための各種歩留向上剤を含有せしめてもよい。さらに、本実施形態に係る照明調整具用シートには、必要に応じて、ガラス繊維、ロックウール繊維、セラミック繊維などの各種無機繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維などの各種合成繊維又は乾燥若しくは湿潤紙力増強剤、サイズ剤、耐水化剤、はっ水剤などの各種助剤を適宜組み合わせて含有せしめてもよい。そして、本実施形態に係る照明調整具用シートに従来慣用の打抜き成形を施すことによって簡単に照明調整具を製造することができる。
次に、本発明を以下の実施例に基づいて更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。本実施例中の各項目の測定は、次の方法によった。
(1)シートの坪量:JIS P 8124:1998「紙及び板紙−坪量測定方法」に準じた。
(2)シートの厚さ:JIS P 8118:1998「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」に準じた。
(3)シートの密度:JIS P 8118:1998に準じた。
(4)シートの引張強さ:JIS P 8113:1998「紙及び板紙−引張特性の試験方法」に準じた。繊維配向性がある場合、繊維配向方向とこれに直角をなす方向について測定し、両者の平均を求めた。
(5)シートの明度指数L:JIS Z 8730:1995「色の表示方法−物体色の色差」による。D65光源、10度視野を適用した。
(6)シートの難燃性1:UL94規格の垂直燃焼試験に準じて試験片に10秒間接炎した際の燃焼状態によって、次のとおり評価した。
◎:着炎しない。
○:着炎するがクランプ炎上に至らずに自己消火する。
×:着炎し、自己消火せずクランプ炎上に至り、実用に耐えない。
(7)シートの難燃性2:図1のように写真撮影用の500Wのスポットライト2を点灯せしめ、該スポットライト2から約5cmの距離のところに6cm角の試験片であるシート1を垂直に設置し、該スポットライト2の光線3を該試験片であるシート1に照射する。30秒間照射したところで、図2のように約20mm長に調整したライター4の火炎を試験片であるシート1に5秒間接炎する。なお、この間もスポットライト2の光線3の照射は、継続する。このときの試験片であるシート1の燃焼状態によって、次のとおり評価した。
◎:着炎しない。
○:着炎するが全焼に至らずに自己消火する。
×:着炎し、自己消火せず全焼に至り、実用に耐えない。
(8)シートの難燃性3:消防法施行規則第4条の3第4項に規定された45°メッケルバーナー法に準じて、2分加熱試験にて、炭化面積、残炎時間及び残じん時間を測定し、次に示す「合/否」で評価した。
・炭化面積
◎:20cm以下。
○:20cmを超え40cm以下。
×:40cmを超える。
・残炎時間
◎:0秒(残炎なし)。
○:5秒以下。
×:5秒を超える。
・残じん時間
◎:0秒(残じんなし)。
○:20秒以下。
×:20秒を超える。
・合/否
合:炭化面積、残炎時間及び残じん時間の何れも消防法施行規則第4条の3第3項の基準(炭化面積40cm以下、残炎時間5秒以下、残じん時間20秒以下)に適合する。
否:炭化面積、残炎時間及び残じん時間の何れか一つでも消防法施行規則第4条の3第3項の基準(炭化面積40cm以下、残炎時間5秒以下、残じん時間20秒以下)に適合しないものがある。
(9)シートの耐熱性:図1に示すように写真撮影用の500Wのスポットライト2を点灯せしめ、該スポットライト2から約5cmの距離のところに6cm角の試験片を垂直に設置し、該スポットライト2の光線3を該試験片であるシート1に60秒間照射し、この間の試験片であるシート1からの発煙量及び試験終了後の試験片であるシート1の劣化状態を目視観察し、次のとおり評価した。
◎:ほとんど発煙せず、劣化はほとんど認められない。
○:わずかに発煙は認められるが、劣化はほとんど認められない。
△:かなり発煙があり、劣化も認められ、実用に耐えない。
×:多量の発煙があり、劣化もかなり認められ、実用に耐えない。
××:さらに多量の発煙があり、劣化も著しく認められ、実用に耐えない。
(10)シートの打抜き成形性:図3の形状の打抜き成形試験を行い、次のとおり評価した。
◎:紙粉の発生がほとんどない。
○:紙粉の発生は少量である。
×:紙粉の発生がかなり多く、実用に耐えない。
××:紙粉の発生が著しく多く、実用に耐えない。
(実施例1)
新聞古紙とクラフト古紙とを離解機にて混合離解して得た固形分質量比が新聞古紙:クラフト古紙=50:50のセルロース繊維分散液に、水酸化アルミニウム粉体(平均粒径5.7μmである。以下同じ。)、炭酸カルシウム粉体(平均粒径1.5μmである。以下同じ。)、リン酸メラミン系難燃剤(平均粒径2〜5μm、分解温度約390℃、20℃・100gの水に対する溶解量0.01〜0.05gである。以下同じ。)、液状カーボン及びアクリルアマイド系紙力増強剤を添加し、十分に分散混合後、角型テスト抄紙機にて抄紙し、圧搾、乾燥してシートAを得た。シートAについて、各成分の含有率を表1に示すとともに、坪量、厚さ、密度、引張強さ、明度指数L、難燃性1、難燃性2、難燃性3、耐熱性及び打抜き成形性をそれぞれ測定し、その結果を表1に併せて示した。
(実施例2)
実施例1において、炭酸カルシウム粉体を配合しない以外は、実施例1と同様にして、シートBを得た。シートBについて、各成分の含有率を表1に示すとともに、坪量、厚さ、密度、引張強さ、明度指数L、難燃性1、難燃性2、難燃性3、耐熱性及び打抜き成形性をそれぞれ測定し、その結果を表1に併せて示した。
(実施例3)
実施例1において、水酸化アルミニウム粉体に代えて、水酸化マグネシウム粉体(平均粒径10μmである。以下同じ。)を用いた以外は、実施例1と同様にして、シートCを得た。シートCについて、各成分の含有率を表1に示すとともに、坪量、厚さ、密度、引張強さ、明度指数L、難燃性1、難燃性2、難燃性3、耐熱性及び打抜き成形性をそれぞれ測定し、その結果を表1に併せて示した。
(実施例4)
実施例1において、水酸化アルミニウム粉体を配合しない以外は、実施例1と同様にして、シートDを得た。シートDについて、各成分の含有率を表1に示すとともに、坪量、厚さ、密度、引張強さ、明度指数L、難燃性1、難燃性2、難燃性3、耐熱性及び打抜き成形性をそれぞれ測定し、その結果を表1に併せて示した。
(実施例5)
新聞古紙とクラフト古紙とをパルパーにて混合離解して得た固形分質量比が新聞古紙:クラフト古紙=50:50のセルロース繊維分散液に、水酸化アルミニウム粉体、炭酸カルシウム粉体、リン酸メラミン系難燃剤、液状カーボン及びアクリルアマイド系紙力増強剤を添加し、十分に分散混合後、長網抄紙網上に供給し紙層形成せしめ、ワインドアップロールにて所定厚さになるまで巻き付けた後、切断し、圧搾、乾燥、キャレンダー掛け処理しシートEを得た。シートEについて、各成分の含有率を表1に示すとともに、坪量、厚さ、密度、引張強さ、明度指数L、難燃性1、難燃性2、難燃性3、耐熱性及び打抜き成形性をそれぞれ測定し、その結果を表1に併せて示した。
(実施例6)
実施例5において、各成分の配合量を変えた以外は、実施例5と同様にして、シートFを得た。シートFについて、各成分の含有率を表1に示すとともに、坪量、厚さ、密度、引張強さ、明度指数L、難燃性1、難燃性2、難燃性3、耐熱性及び打抜き成形性をそれぞれ測定し、その結果を表1に併せて示した。
(比較例1)
実施例1において、水酸化アルミニウム粉体及び炭酸カルシウム粉体並びにリン酸メラミン系難燃剤を配合しない以外は、実施例1と同様にして、シートGを得た。シートGについて、各成分の含有率を表1に示すとともに、坪量、厚さ、密度、引張強さ、明度指数L、難燃性1、難燃性2、難燃性3、耐熱性及び打抜き成形性をそれぞれ測定し、その結果を表1に併せて示した。
(比較例2)
比較例1において、液状カーボンを配合しない以外は、比較例1と同様にして、シートHを得た。シートHについて、各成分の含有率を表1に示すとともに、坪量、厚さ、密度、引張強さ、明度指数L、難燃性1、難燃性2、難燃性3、耐熱性及び打抜き成形性をそれぞれ測定し、その結果を表1に併せて示した。
(比較例3)
実施例1において、リン酸メラミン系難燃剤を配合しない以外は、実施例1と同様にして、シートIを得た。シートIについて、各成分の含有率を表1に示すとともに、坪量、厚さ、密度、引張強さ、明度指数L、難燃性1、難燃性2、難燃性3、耐熱性及び打抜き成形性をそれぞれ測定し、その結果を表1に併せて示した。
(比較例4)
実施例1において、リン酸メラミン系難燃剤の配合量を本発明で特定する範囲を超えて過少とした以外は、実施例1と同様にして、シートJを得た。シートJについて、各成分の含有率を表1に示すとともに、坪量、厚さ、密度、引張強さ、明度指数L、難燃性1、難燃性2、難燃性3、耐熱性及び打抜き成形性をそれぞれ測定し、その結果を表1に併せて示した。
(比較例5)
実施例1において、水酸化アルミニウム粉体及び炭酸カルシウム粉体の合計配合量を本発明で特定する範囲を超えて過少とし、一方、セルロース繊維の配合量を本発明で特定する範囲を超えて過多とした以外は、実施例1と同様にして、シートKを得た。シートKについて、各成分の含有率を表1に示すとともに、坪量、厚さ、密度、引張強さ、明度指数L、難燃性1、難燃性2、難燃性3、耐熱性及び打抜き成形性をそれぞれ測定し、その結果を表1に併せて示した。
(比較例6)
実施例1において、リン酸メラミン系難燃剤を配合せず、かつ、水酸化アルミニウム粉体及び炭酸カルシウム粉体の合計配合量を本発明で特定する範囲を超えて過多とし、一方、セルロース繊維の配合量を本発明で特定する範囲を超えて過少とした以外は、実施例1と同様にして、シートLを得た。シートLについて、各成分の含有率を表1に示すとともに、坪量、厚さ、密度、引張強さ、明度指数L、難燃性1、難燃性2、難燃性3、耐熱性及び打抜き成形性をそれぞれ測定し、その結果を表1に併せて示した。
(比較例7)
新聞古紙とクラフト古紙とを離解機にて混合離解して得た固形分質量比が新聞古紙:クラフト古紙=50:50のセルロース繊維分散液に、液状カーボン及びアクリルアマイド系紙力増強剤を添加し、十分に分散混合後、角型テスト抄紙機にて抄紙し、圧搾、乾燥して得たシートに、スルファミン酸グアニジン系難燃剤(水系液状品、分解温度約230℃である。以下同じ。)を含浸した後、乾燥せしめて、シートMを得た。ここでスルファミン酸グアニジン系難燃剤は外添されたことになる。Mについて、各成分の含有率を表1に示すとともに、坪量、厚さ、密度、引張強さ、明度指数L、難燃性1、難燃性2、難燃性3、耐熱性及び打抜き成形性をそれぞれ測定し、その結果を表1に併せて示した。
(比較例8)
新聞古紙とクラフト古紙とを離解機にて混合離解して得た固形分質量比が新聞古紙:クラフト古紙=50:50のセルロース繊維分散液に、水酸化アルミニウム粉体、炭酸カルシウム粉体、液状カーボン及びアクリルアマイド系紙力増強剤を添加し、十分に分散混合後、角型テスト抄紙機にて抄紙し、圧搾、乾燥して得たシートに、スルファミン酸グアニジン系難燃剤を含浸した後、乾燥せしめて、シートNを得た。ここでスルファミン酸グアニジン系難燃剤は外添されたことになる。シートNについて、各成分の含有率を表1に示すとともに、坪量、厚さ、密度、引張強さ、明度指数L、難燃性1、難燃性2、難燃性3、耐熱性及び打抜き成形性をそれぞれ測定し、その結果を表1に併せて示した。
Figure 0004969948
比較例1と2は、セルロース繊維が主体であり、厚紙に相当するものであるが、難燃性と耐熱性が実用に耐えなかった。比較例3は、実施例1と比較して難燃剤が全く内添されていないので、耐熱性は良好であったが、難燃性のうち残じんが不良であった。比較例4は、実施例1と比較して内添された難燃剤の含有量が少なすぎたため、難燃性のうち残じんが不良であった。比較例5は、実施例1と比較して含水無機化合物と炭酸塩の合計含有量が少なすぎ、かつセルロース繊維が多すぎたため、難燃性と耐熱性が実用に耐えなかった。比較例6は、難燃剤を全く内添させず、実施例1と比較して含水無機化合物と炭酸塩の合計含有量を過多とし、セルロース繊維を過少としたため、難燃性と耐熱性は良好であったものの、引張強度が小さく、打抜き加工性が不良であった。比較例7と8は、難燃剤を外添した場合であり、いずれも、他の配合にかかわらず難燃性と耐熱性が実用に耐えなかった。比較例7と8について、観察事項を基にさらに詳述する。ここで用いたスルファミン酸グアニジン系難燃剤は、分解温度が約230℃と低く、耐熱性に劣る。また、難燃剤を含浸によって外添している為、シートの芯部に十分な難燃剤を含有せしめることができなかった結果、芯部において残じんが長時間発生することとなった。また、分解温度が低く、耐熱性の劣る難燃剤がシートの表層部に偏在し、かかる表層部での難燃剤の含有率が局所的に高くなった結果、照明による輻射熱に対する耐熱性が低下(難燃剤含浸量がやや多い比較例7では、特に耐熱性が著しく低下した)することとなった。
難燃性2又は耐熱性の測定状況を示す説明図である。 難燃性2の測定における接炎状況を示す説明図である。 打抜き成形機の打抜き形状を示す平面図である。
符号の説明
1 シート
2 スポットライト
3 光線
4 ライター
5 打抜き成形体

Claims (6)

  1. 水に難溶な難燃剤、含水無機化合物及び/又は炭酸塩、並びに、セルロース繊維を含有する原料スラリーを湿式抄紙して得たシートであって、
    前記難燃剤、前記含水無機化合物及び/又は前記炭酸塩、並びに、前記セルロース繊維がシート中の厚さ方向全体に分布し、
    前記シート中の前記含水無機化合物及び/又は前記炭酸塩の含有率が固形分で35〜75質量%であり、
    前記シート中の前記セルロース繊維の含有率が固形分で20〜60質量%であり、
    前記シート中の前記難燃剤の含有率が固形分で2〜15質量%であり、
    前記難燃剤がリン酸メラミン系難燃剤及び硫酸メラミン系難燃剤の中から選ばれた少なくとも1種であり、
    JIS Z 8730:1995「色の表示方法−物体色の色差」のL表色系によるシート表面の明度指数Lが65以下であり、
    消防法施行規則第4条の3第4項に規定された45°メッケルバーナー法に準じて、2分加熱試験にて、炭化面積40cm 以下、残炎時間5秒以下及び残じん時間20秒以下を満足する難燃性を有し、かつ、
    写真撮影用の500Wのスポットライトを5cmの至近から60秒間照射したときのシートからの発煙がわずかに生じるか或いはほとんど生じず、かつ、照射後のシートの劣化がほとんど認められないことを満足する耐熱性を有することを特徴とする照明調整具用シート。
  2. 前記シートの厚さが0.3〜3mmであることを特徴とする請求項1に記載の照明調整具用シート。
  3. 前記含水無機化合物と前記炭酸塩との固形分質量比が100/0〜50/50であることを特徴とする請求項1又は2に記載の照明調整具用シート。
  4. 前記含水無機化合物が、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、二水和石こう及びアルミン酸カルシウムの中から選ばれた少なくとも1種類であることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の照明調整具用シート。
  5. 前記炭酸塩が炭酸カルシウムであることを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載の照明調整具用シート。
  6. 請求項1、2、3、4又は5に記載の照明調整具用シートの打抜き成形体からなることを特徴とする照明調整具。
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