JP3654308B2 - 不燃性成形体 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は不燃性成形体に関し、更に詳しくは、高度の不燃性を有し、かつ意匠性に優れた不燃性形成体、もしくは高度の不燃性と優れた意匠性を有し、かつ曲面下地に対して良好な施工性を有する不燃性形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ケイカル板等の不燃材の表面に切削加工を施して溝を設けるなどして立体的形状を形成せしめて意匠性を高めたり、柔軟性を有し屈曲自在な不燃性裏打材上にケイカル板等の不燃性基材を接着し、該不燃性基材の表面に溝を所定間隔で、かつ溝底が該裏打材に至るように施すことにより曲面下地への施工性を向上せしめるなどの方法が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかるに、ケイカル板等の不燃性基材に切削処理で溝加工を施す場合、木材等を切削するのに比べ数倍も切削刃の摩耗が激しいとともに、切削加工時あるいは施工時等にケイカル板が割れやすいなどの難点があった。
そこで、本発明者は斯かる用途に、多量の含水無機化合物もしくは多量の含水無機化合物と炭酸塩を含有し、他にセルロ−ス繊維と熱硬化性樹脂を含有する不燃性基材を適用すべく検討したところ、該不燃性基材の適用で切削刃の摩耗がほぼ木材を切削する場面並みに減少し、切削加工時あるいは施工時の不燃性基材の割れもきわめて発生しにくくなり、切削工程あるいは施工時の材料歩留が向上するなど有利性を発揮することがわかった。
【0004】
また、斯かる不燃性基材を適用した場合、必ずしも切削によらずとも、所定の金型による熱圧プレス成形によっても溝等の形状を付与することができ、さらに付与し得る形状も金型の調整次第で多様に変化させることができ、加えて切削処理では実用上困難であった凸形状の付与も可能であり、より意匠性に富む加工が可能である。
【0005】
しかし、斯かる不燃性基材に前記したような凹部あるいは凸部を形成せしめた場合、不燃性能が悪化することが判明した。すなわち昭和45年建設省告示1828号の基材試験(以下において、この意味で単に基材試験と言うことがある。)において、炉内温度上昇が大きくなることが判明した。また、一般に上記した凹形状あるいは凸形状を付与した素材に化粧紙貼合、突板貼合、もしくは表面塗装等の後加工を施したり、あるいは斯かる後加工を施した後に、前記した切削加工を施すなどして、さらに意匠性を高めることも多く、斯かる加工により不燃性能は劣化することが多い。従って、最終加工製品の不燃性能を所定レベルに保つために、素材単体に対しては、さらに高度な不燃性能が要求される。
【0006】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、高度の不燃性を有し、かつ意匠性に優れた不燃成形体、もしくは、高度の不燃性と優れた意匠性を有し、かつ曲面下地に対する良好な施工性を有する不燃性成形体を提案することを目的としたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る不燃性成形体は、含水無機化合物が固形分で80〜95重量%で、その他にセルロ−ス繊維が固形分で2〜3.7重量%、及び熱硬化性樹脂が固形分で1〜3.1重量%を含有し、表面には凹凸部を有しないで、かつ難燃剤を含有せずに不燃性機能を発揮する不燃性基材であって、該不燃性基材の少なくとも片面に深さ0.5mm以上、最大開口幅1mm以上、最小長さ5mm以上の複数の凹部を形成した場合、該凹部を有する面において前記した不燃性基材表面に占める該凹部の最大投影面積が5%以上で、かつ少なくとも該凹部の表層部及びその近傍に上記不燃性基材中の含有率が固形分で0.2〜8重量%の難燃剤を含有せしめたことを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明に係る不燃性成形体は、含水無機化合物と炭酸塩の合計が固形分で80〜95重量%で、その他にセルロ−ス繊維が固形分で2〜3.7重量%、及び熱硬化性樹脂が固形分で1〜3.1重量%を含有し、かつ含水無機化合物/炭酸塩が固形分重量比で60/40より含水無機化合物過多側であり、表面には凹凸部を有しないで、かつ難燃剤を含有せずに不燃性機能を発揮する不燃性基材であって、該不燃性基材の少なくとも片面に深さ0.5mm以上、最大開口幅1mm以上、最小長さ5mm以上の複数の凹部を形成した場合、該凹部を有する面において前記した不燃性基材表面に占める該凹部の最大投影面積が5%以上で、かつ少なくとも該凹部の表層部及びその近傍に上記不燃性基材中の含有率が固形分で0.2〜8重量%の難燃剤を含有せしめたことを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明に係る不燃性成形体は、含水無機化合物が固形分で80〜95重量%で、その他にセルロ−ス繊維が固形分で2〜3.7重量%、及び熱硬化性樹脂が固形分で1〜3.1重量%を含有し、表面には凹凸部を有しないで、かつ難燃剤を含有せずに不燃性機能を発揮する不燃性基材であって、該不燃性基材の少なくとも片面に、高さ0.5mm以上の複数の凸部を形成した場合、該凸部を有する面において前記した不燃性基材表面に占める該凸部の最大投影面積が5%以上で、かつ少なくとも該凸部の表層部及びその近傍に上記不燃性基材中の含有率が固形分で0.2〜8重量%の難燃剤を含有せしめたことを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明に係る不燃性成形体は、含水無機化合物と炭酸塩の合計が固形分で80〜95重量%で、この他にセルロ−ス繊維が固形分で2〜3.7重量%、及び熱硬化性樹脂が固形分で1〜3.1重量%を含有し、かつ含水無機化合物/炭酸塩が固形分重量比で60/40より含水無機化合物過多側であり、表面には凹凸部を有しないで、かつ難燃剤を含有せずに不燃性機能を発揮する不燃性基材であって、該不燃性基材の少なくとも片面に高さ0.5mm以上の複数の凸部を形成した場合、該凸部を有する面において前記した不燃性基材表面に占める該凸部の最大投影面積が5%以上で、かつ少なくとも該凸部の表層部及びその近傍に上記不燃性基材中の含有率が固形分で0.2〜8重量%の難燃剤を含有せしめたことを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明に係る不燃性成形体は、柔軟性を有し屈曲自在な不燃性裏打材上に含水無機化合物が固形分で80〜95重量%で、その他にセルロ−ス繊維が固形分で2〜3.7重量%、及び熱硬化性樹脂が固形分で1〜3.1重量%を含有し、表面に凹凸部を有しないで、かつ難燃剤を含有せずに不燃性機能を発揮する不燃性基材が接着され、該不燃性基材の表面に最大開口幅1mm以上で互いに平行な複数の凹部を形成し、該凹部の底を前記した不燃性裏打材に至らしめた場合、該凹部を有する面において前記した不燃性基材表面に占める該凹部の最大投影面積が5%以上で、かつ少なくとも該凹部の表層部及びその近傍に上記不燃性基材中の含有率が固形分で0.2〜8重量%の難燃剤を含有せしめたことを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明に係る不燃性成形体は、柔軟性を有し屈曲自在な不燃性裏打材上に含水無機化合物と炭酸塩の合計が固形分で80〜95重量%で、その他にセルロ−ス繊維が固形分で2〜3.7重量%、及び熱硬化性樹脂が固形分で1〜3.1重量%を含有し、かつ含水無機化合物/炭酸塩が固形分重量比で60/40より含水無機化合物過多側であり、表面に凹凸部を有しないで、かつ難燃剤を含有せずに不燃性機能を発揮する不燃性基材が接着され、該不燃性基材の表面に最大開口幅1mm以上で互いに平行な複数の凹部を成形し、該凹部の底を前記した不燃性裏打材に至らしめた場合、該凹部を有する面において前記した不燃性基材表面に占める該凹部の最大投影面積が5%以上で、かつ少なくとも該凹部の表層部及びその近傍に上記不燃性基材中の含有率が固形分で0.2〜8重量%の難燃剤を含有せしめたことを特徴とするものである。
【0013】
上記した含水無機化合物としては水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、2水和石こう及びアルミン酸化カルシウム等を挙げることができる。これらの化合物は何れも分子内に結晶水を持ち化学的に類似した構造を有する。また、含水無機化合物は、その種類によって分解温度及び吸熱量に幾分差があるが、高温加熱時に分解して吸熱作用により不燃化効果を示すという点では全く共通している。従って基本的に前記した含水無機化合物のいずれを用いてもよいが入手価格等の経済性をも考慮すると水酸化アルミニウムが最適である。
【0014】
本発明で使用する炭酸塩としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸ストロンチウム、炭酸ベリリウム、炭酸亜鉛等の中から少なくとも1種類を選択して使用する。これらの炭酸塩はその種類により分解温度等に幾分差があるが高温加熱時に分解して吸熱作用により難燃効果を示すという点では全く共通している。従って、基本的に前記した炭酸塩のいずれを用いてもよいが、価格の面から炭酸カルシウムが最適である。なお炭酸塩配合によるもう1つの重要な効果として本発明者が特開平5−112659号公報等で指摘したところの発煙量低減効果を挙げることができる。
【0015】
本発明に係る不燃性基材中の含水無機化合物あるいは含水無機化合物と炭酸塩の合計の含有率範囲は固形分で80〜95重量%である。その含有率が80重量%未満では十分な不燃性が得られない。反対に95重量%を超えた場合は含水無機化合物あるいは含水無機化合物と炭酸塩の合計量の過多により十分な機械的強度が得られず不適である。また、含水無機化合物/炭酸塩の含有重量比率は固形分で60/40よりも含水無機化合物過多側としなければならない。60/40よりも含水無機化合物過少側とした場合、不燃性が低下することがあり不適である。
【0016】
上記したセルロ−ス繊維としては、針葉樹系あるいは広葉樹系の化学パルプ、機械パルプ、セミケミカルパルプ等の木材パルプあるいは木綿パルプ、麻パルプ、各種古紙などの中から選ばれる1種類あるいは2種類以上を併用して使用すればよい。木材パルプは供給量及び品質が安定しており価格も比較的安価であることから最も使いやすいセルロ−ス繊維原料である。木綿パルプ及び麻パルプは供給量が不安定であり価格も高価であるが、本発明におけるような含水無機化合物あるいは含水無機化合物と炭酸塩を多量に含有する不燃性基材においては、必要に応じて該木綿パルプあるいは麻パルプを使用することにより該不燃性基材の機械的強度の低下を最小限にとどめることができる。
【0017】
本発明の不燃性シ−トまたは不燃性成形体中のセルロ−ス繊維の含有率範囲は固形分で2〜3.7重量%が好ましい。その含有率が2重量%未満ではセルロ−ス繊維の過少により十分な抄紙性あるいは機械的強度が得られないことがあり、また3.7重量%を超えた場合は有機物質の過多により十分な不燃性を得ることができない場合がある。
【0018】
上記した熱硬化性樹脂としては、フェノ−ル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、尿素メラミン樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂など(繊維状のものも含む)の中から少なくとも1種類を選択して使用する。これらの熱硬化性樹脂はその種類により硬化温度に幾分差があるが、加熱処理に伴う流動硬化作用により不燃性素材に各種成形賦形効果もしくは諸強度の発現効果または含水無機化合物あるいは炭酸塩の脱落防止効果、表面強度の向上効果等を与えるという点では全く共通している。従って、基本的には前記した熱硬化性樹脂のいずれを用いてもよいが好ましくは使用する熱硬化性樹脂の硬化温度が併用する含水無機化合物あるいは炭酸塩の分解温度よりも低くなるようにすべきである。更に入手価格等の経済性をも考慮するとフェノ−ル樹脂、メラミン樹脂、尿素メラミン樹脂が最適である。
【0019】
本発明の不燃性シ−トまたは不燃性成形体中の熱硬化性樹脂の含有率範囲は固形分で1〜3.1重量%が好ましい。その含有率が1重量%未満では十分な機械的強度が得られないことがあり、また3.1重量%を超えた場合は有機物質の過多により十分な不燃性を得ることができない場合がある。
【0020】
本発明で使用する難燃剤としては、有機リン化合物、含リン含窒素有機化合物、スルファミン酸塩、無機リン酸塩、含ハロゲン化合物及びアンチモン系化合物等の中から少なくとも1種類を選択して使用すればよい。また、本発明に係る不燃性基材中の必須有機物質であるセルロ−ス繊維及び熱硬化性樹脂に対して、より効果的な難燃化作用を発揮せしめるという観点から、炭化促進作用を有する難燃剤を使用するのが一層効果的である。
【0021】
本発明に係る不燃性基材中の難燃剤の含有率はごく少量にすべきであり、含有率範囲は固形分で0.2〜8重量%である。本発明に係る不燃性基材は含水無機化合物あるいは含水無機化合物と炭酸塩を80〜95重量%含有するため、不燃性基材単体では難燃剤を全く含有せずとも優れた不燃性を有する。本発明において、あえて難燃剤を含有せしめるのは後述するように、該不燃性基材に所定の凹部もしくは凸部を形成せしめた時に発生する不燃性能の低下を回避するための手段としてである。難燃剤含有率が8重量%を超えた場合、高温加熱時に難燃剤の分解に伴う発煙や有害ガスの発生等を伴うことがあり防火上好ましくない。また、難燃剤含有率が0.2重量%未満の場合、難燃剤の過少により、十分な不燃性能低下回避効果が得られない。
【0022】
本発明に係る不燃性基材は、上記配合のもとに含水無機化合物/セルロ−ス繊維/熱硬化性樹脂/難燃剤あるいは含水無機化合物/炭酸塩/セルロ−ス繊維/熱硬化性樹脂/難燃剤という構成であればよく、その製造法としては、湿式抄造法、乾式成形法など任意の方法が適用可能であり、特定の製造法に限定するものではないが、以下において本発明の当該分野である湿式抄造法を適用した場合を例にとって製造方法にも言及しながらさらに詳述する。
【0023】
本発明に係る不燃性基材は、含水無機化合物または炭酸塩等の歩留を向上するための各種歩留向上剤あるいは必要に応じてガラス繊維、ロックウ−ル繊維、炭素繊維などの無機繊維、合成繊維、または着色のための合成染料等を含有していてもよい。また、用途によっては機械的強度もしくは後加工適性の改善を図るべく乾燥または湿潤紙力増強剤、サイズ剤、耐水化剤、撥水剤等を含有せしめるべきことは言うまでもない。
【0024】
本発明に係る不燃性基材に熱硬化性樹脂を含有せしめる方法としては、熱硬化性樹脂の液状物、繊維状物あるいは粒状物等を原料スラリ−中に内添したり、紙層形成後に塗布または含浸するなどすればよい。
含水無機化合物または炭酸塩を含有せしめる方法としては、含水無機化合物または炭酸塩を含有する塗料を基材に塗布あるいは含浸するなどの方法も考えられるが、所定の含有量を確保し、あるいは厚さ方向での品質の均一化を図るためには原料スラリ−中に含水無機化合物または炭酸塩を粉体状あるいはスラリ−状にて内添する方法が最も好ましい。
【0025】
難燃剤を凹凸部の表層部およびその近傍に含有せしめるには、難燃剤の液状物あるいは粒状物等を原料スラリ−中に内添せしめるか、抄造工程中もしくは抄造後または成形後に塗布または含浸するなどすればよい。この場合、含水無機化合物、炭酸塩、セルロ−ス繊維、熱硬化性樹脂及び難燃剤の添加方法及び添加順序等は任意であり、必要に応じて叩解処理等を施してもよい。
【0026】
こうして得た原料スラリ−を用いて、本発明に係る不燃性基材を製造するには、通常の抄造法によればよい。すなわち、通常の長網、円網あるいは傾斜網等の抄造網上に前記スラリ−を供給し、濾過、脱水した後、圧搾、乾燥すればよい。また、必要により各種コンビネ−ション網や、多層円網及び各種ラミネ−タ−などにより紙層を2層以上重ね合わせてもよい。
【0027】
こうして得た不燃性基材を用いて本発明の不燃性成形体を製造するには、不燃性基材に熱圧プレス成形、高周波加熱成形などの従来慣用の熱成形を単独であるいは2種以上組み合わせて適用し不燃性基材中の熱硬化性樹脂を硬化せしめた後、切削加工等により所定の凹部を形成せしめるか、不燃性基材を所定の金型等を用いて熱圧成形することにより、不燃性基材中の熱硬化性樹脂の硬化と所定の凹部あるいは凸部の形成を同時に行うか、あるいは熱成形後の不燃性基材をガラスクロス、各種無機繊維製不織布、アラミド繊維シ−トなどの柔軟性を有し屈曲自在な不燃性裏打材上に、エポキシ系、フェノ−ル系、メラミン系、尿素−メラミン系、酢酸ビニル系、エチレン酢酸ビニル系、ウレタン系、クロロプレン系等の従来慣用の接着剤を用いて接着せしめた後、切削加工等により所定の凹部を形成せしめるなどすればよい。
ただし、接着剤の選択に際しては、被着体の特性を考慮して選択すべきこと、及び接着剤の使用量は不燃性能を低下させないようできるだけ少量にすべきことは言うまでもない。
【0028】
また、必要に応じて、熱成形後あるいは切削加工前もしくは切削加工後などにおいて、化粧紙、突板、レザ−、合成樹脂膜の貼合、各種塗料の吹付け、塗布、印刷などしてもよい。場合によっては、不燃性基材と不燃性裏打材あるいは化粧紙の接着もしくは貼合と所定の凹部あるいは凸部の形成を金型等による一体熱圧成形等により同時に行うことも可能である。
また、前記した通り、熱成形後あるいは所定の凹部もしくは凸部を形成せしめた後に、難燃剤を成形体に塗布もしくは含浸せしめてもよい。このとき、該成形体が凹部を有する場合、少なくとも該凹部の表層部及びその近傍に難燃剤が含有され、該成形体が凸部を有する場合、少なくとも該成形体の全表層部及びその近傍に難燃剤が含有され、かつ、いずれの場合も該成形体中の難燃剤含有率を0.2〜8重量%としなければならない。
【0029】
本発明に係る不燃性成形体の有する凹部は、深さが0.5mm以上、最大開口幅が1mm以上、最小長さが5mm以上でなければならない。深さが0.5mm未満あるいは最大開口幅が1mm未満もしくは、最小長さが5mm未満の場合、後述する基材試験時の凹部への高温雰囲気の侵入あるいは流通を生じにくくあえて難燃剤を含有しなくとも十分な不燃性能を確保できる。また、優れた意匠性を確保するためにも深さが0.5mm以上、最大開口幅が1mm以上、最小長さ5mm以上とする必要がある。
【0030】
本発明に係る不燃性成形体の有する凸部は、高さが0.5mm以上でなければならない。高さが0.5mm未満では意匠性が不十分となる。また、凸部について、該凸部の幅及び長さを限定しなかったのは、凸部を有する場合、試料を所要枚数重ねて基材試験体を構成する際に凸部によって生ずる各試料間の間隙の大きさが凸部の高さによりほぼ決定され、凸部の幅が1mm未満あるいは長さが5mm未満であっても高さが0.5mm以上であれば基材試験時にこの間隙に高温雰囲気が侵入し流通するため、難燃剤を含有せしめて不燃性能低下を回避する必要があるためである
【0031】
本発明に係る不燃性成形体の有する凹部または凸部は、該凹部または凸部を有する面において、当該表面に占める該凹部もしくは凸部の最大投影面積が5%以上となるものでなければならない。最大投影面積が5%未満では意匠性が不十分となるとともに、基材試験体を構成する際に該凹部もしくは凸部によって生ずる各試料間の間隙が小さくなり、基材試験時の該間隙への高温雰囲気の侵入あるいは流通による不燃性能の悪化はわずかとなり、あえて難燃剤を含有しなくとも十分な不燃性能を確保できる。
【0032】
【作用】
本発明の不燃性成形体における不燃性能向上効果の発現機構の詳細については未だ不明であるが、多量の含水無機化合物あるいは多量の含水無機化合物と炭酸塩を含有し、かつ少量の有機系物質を含有する不燃性基材の表面に所定の凹部もしくは凸部を有する成形体が、高温雰囲気に置かれた際、不燃性基材中に存在する少量の難燃剤により、該難燃剤と含水無機化合物あるいは含水無機化合物と炭酸塩との相互作用により難燃剤の分解に伴う発煙等を露呈させることなく燃焼が鎮静化され、総合的に優れた不燃性を発揮させることができるものと考えられる。
【0033】
以下に、後で実施例として示すところの基材試験での試験結果に基づく発明内容を示す。
基材試験は約40mm角の試料を約50mmの高さになるように重ねて試験体とし、この試験体を所定の高温炉の中に所定時間投入し燃焼せしめる試験である。
まず、多量の含水無機化合物と炭酸塩を含有する不燃性基材(後述の比較例2)と、該不燃性基材に図2に示す凹部を形成せしめた成形体(後述の比較例3)について基材試験を実施(凹部もしくは凸部を有する試料を重ねる時は1段ごとに向きが交互となるようにした。以下において同様。)したところ、凹部の存在により炉内温度上昇がかなり大きくなり不燃性能が悪化した。
【0034】
それぞれの基材試験終了後の試験体の中央層に位置する試料の高温雰囲気接触面から試料内部に向かっての燃焼進行状態の観察図を図9及び図10に示した。図9は凹部のない場合を、図10は凹部のある場合を示す。図9及び図10からわかるように、凹部がない場合は中央部に余り変化していない部分がかなり残存しているのに対して凹部がある場合はあまり変化していない部分は残存せず、中央部も薄黒く炭化しており、凹部がない場合に比べ全体にかなり燃焼が進行していることがわかる。
【0035】
さらに、多数次の試行と試験前後での重量変化及び燃焼状態の観察により、これは凹部もしくは凸部を有する試料を重ねて基材試験体を構成した時に形成される各試料間の間隙に燃焼炉内の高温雰囲気が侵入し流通することにより試験体内部にまで熱が伝わりやすくなり凹部もしくは凸部がなければ燃焼せずに残る部分をも燃焼せしめるに至るためと考えられる。また、凹部もしくは凸部がある場合、基材試験中に赤熱する面積が増大し、該赤熱部分からのふく射熱が増加することも炉内温度上昇が大きくなる要因の1つと考えられる。そこで、この凹部もしくは凸部による不燃性能の低下を回避すべく鋭意検討した結果、不燃性基材に少量の難燃剤を含有せしめることにより、凹部もしくは凸部を有していても基材試験における性能低下を回避できることをつきとめた。
【0036】
次に具体例を基に説明する。
多量の含水無機化合物と炭酸塩および難燃剤を本発明で特定する含有率範囲内で含有する不燃性基材(後述の比較例1)と該不燃性基材に図2に示す凹部を形成せしめた本発明にかかる成形体(後述の実施例1)について、基材試験を実施したところ、炉内温度上昇はほぼ同程度であり、凹部の存在による炉内温度の増大は認められず不燃性能は悪化しなかった。
それぞれの基材試験終了後の試験体の中央層に位置する試料の高温雰囲気接触面から試料内部に向かっての燃焼進行状態の観察図を図11および図8に示した。図11は凹部のない場合を、図8は凹部のある場合を示す。
【0037】
図8及び図11並びに前述の図9及び図10から次のように判断される。すなわち、凹部がない場合の難燃剤の有無による基材試験への影響を図9と図11で比較すると、難燃剤含有により、難燃剤の分解による炭化促進作用によると思われるかなり黒っぽくなった部分が認められるものの、図9と図11とは概略同様な形態を呈しており、実際、炉内温度上昇も図9(比較例2)の場合と図11(比較例1)の場合とでほとんど差がない。このことは凹部がない場合、難燃剤が含有されなくとも十分な不燃性があるためあえて難燃剤を含有せしめても該難燃剤がさほど機能していないためと考えられる。
【0038】
これに対して、凹部がある場合の難燃剤の有無による基材試験への影響を図8と図10で比較すると、難燃剤なしの場合、凹部からの高温雰囲気の侵入のためか中央部にまで燃焼が進行しあまり変化していない部分は残存せず中央部まで薄黒く炭化しているが、難燃剤含有の場合、中央部で難燃剤の分解による炭化促進作用によると思われるかなり黒っぽくなった部分が広がっているのが認められ、図8と図10とは形態に大きな違いが認められる。
【0039】
実際、炉内温度が図10(比較例3)の場合に比べ図8(実施例1)の場合かなり低く押えられることから、図8の場合、凹部からの高温雰囲気の侵入により成形体中に含有される難燃剤が効果的に機能し、その炭化促進作用等により成形体中の有機物質の燃焼を実質的に抑制し、結果的に優れた不燃性能が得られたものと考えられる。
なお、不燃性基材中の含水無機化合物あるいは含水無機化合物と炭酸塩の含有率を95重量%を超えて、さらに高含有率にすれば凹部もしくは凸部を形成させても基材試験での炉内温度の上昇をある程度は押え得るが、前述した赤熱部分からのふく射熱にかかわる要因を解消することは難しい。また、この場合、不燃性基材中の無機質の過多により該不燃性基材の製造が難しくなり、諸強度を著しく低下し、切削機による加工も困難となり実用には供し得ない。
【0040】
一般に、難燃剤は高温加熱時に分解し、多量の発煙を伴うので高度の不燃性能を求める場合、難燃剤を配合するのは好ましくない。まして、本発明に係る不燃性基材の如く含水無機化合物あるいは含水無機化合物と炭酸塩を80〜95重量%と多量に含有する場合、難燃剤を全く含有しなくとも十分に優れた不燃性能を確保できるため、あえてこのような不燃性基材に難燃剤を含有せしめても有利性はなく難燃剤配合に伴いコストが上昇すること及び発煙量が増大する危険を内在することにより商品イメ−ジが低下しかねないことを併せ考えれば、むしろ不利となる。
【0041】
しかるに、本発明の不燃性基材に所定の凹部もしくは凸部を有する不燃性成形体においては、今までかかる高度な不燃性を有する不燃性基材に配合しても何ら有利性がなくむしろ不利となると考えられていた難燃剤を少量配合することにより、この少量の難燃剤がきわめて効果的に作用し、難燃剤と不燃性基材の主成分である含水無機化合物あるいは含水無機化合物と炭酸塩との物理的、化学的相互作用により、あくまで主たる不燃性能は含水無機化合物あるいは含水無機化合物と炭酸塩に依存しつつも、凹部もしくは凸部の存在に起因する不燃性能悪化という不利条件を回避し、かつ難燃剤配合で当然予想される発煙量の増加等を全く生じないというきわめて好都合な結果を得ることができる。
【0042】
難燃剤を含有する系においては、本来難しいと思われる発煙回避がきわめて良好に達成されることから、難燃剤の作用による不燃性基材中の可燃成分の燃焼が効果的に押えられると共に、不燃性基材中の含水無機化合物あるいは含水無機化合物と炭酸塩の熱分解によって生成した水蒸気あるいは水蒸気と二酸化炭素の作用により難燃剤の熱分解に起因する発煙などがきわめて効果的に防止され、優れた不燃性能を獲得できるものと考えられる。
【0043】
【実施例】
次に本発明を以下の実施例に基いてさらに具体的に説明する。
本実施例中の各項目の測定は次の方法によった。
▲1▼不燃性:昭和45年建設省告示第1828号の基材試験による。
実施例1
市販の針葉樹系未晒硫酸塩パルプとガラス繊維(繊維径3μmである。以下、同じ)を離解機にて離解して得たセルロ−ス繊維とガラス繊維の混合分散液の所定量を取り、これに水酸化アルミニウム粉体(平均粒子径5.7μmである。以下、同じ)、炭酸カルシウム粉体(平均粒子径1.5μmである。以下、同じ)及び粉末状フェノ−ル樹脂(平均粒子径30μmである。以下、同じ)を添加し、撹拌機にて十分に分散混合後、角型テスト抄紙機にて抄紙し、圧搾、乾燥して得たシ−トに市販の液状スルファミン酸グアニジン系難燃剤を含浸せしめ、乾燥し、さらに熱プレスにて加熱処理(温度175℃、圧力20kg/cm2 、時間20分)して厚さ約4mmの不燃性基材を得た。
次に該不燃性基材の片面を切削機にて切削処理し、図2に示すような凹部(20mm間隔で互いに平行する深さ2mm、最大開口幅4mmのV溝)を有する成形体Aを得た。成形体Aについて不燃性を測定し、その結果を各成分の含有率とともに表1に示した。
【0044】
実施例2
実施例1で得た熱プレス後の不燃性基材の片面を切削機にて切削処理し、図3に示すような凹部(10mm間隔で互いに平行する深さ2mm、最大開口幅4mmのV溝)を有する成形体Bを得た。成形体Bについて不燃性を測定し、その結果を各成分の含有率とともに表1に示した。
【0045】
実施例3
実施例1で得た熱プレス前の不燃性基材を用いて金型による成形(金型温度175℃、圧力20kg/cm2 、時間20分)を行い、図4に示すような凸部(20mm間隔で互いに平行する高さ1mm、最大幅2mmのリブ形状)を有する成形体Cを得た。成形体Cについて不燃性を測定し、その結果を各成分の含有率とともに表1に示した。
【0046】
実施例4
実施例1で得た熱プレス後の不燃性基材の片面にウレタン系接着剤を用いて厚さ0.2mmの天然木突板を接着し、次に該突板面を切削機にて切削処理し、図5に示す凹部(10mm間隔で互いに平行する深さ2mm、最大開口幅4mmのV溝)を有する成形体Dを得た。成形体Dについて不燃性を測定し、その結果を各成分の含有率とともに表1に示した。
【0046】
実施例5
市販の針葉樹系未晒硫酸塩パルプを離解機にて離解して得たセルロ−ス繊維分散液の所定量を取り、これに水酸化アルミニウム粉体及び粉末状フェノ−ル樹脂を添加し、撹拌機にて十分に分散混合後、角型テスト抄紙機にて抄紙し、圧搾、乾燥して得たシ−トを熱プレスにて加熱処理(温度175℃、圧力20kg/cm2 、時間20分)して厚さ約4mmの不燃性基材を得た。
次に該不燃性基材の片面を切削機にて切削処理し、図3と同様の形状の凹部(10mm間隔で互いに平行する深さ2mm、最大開口幅4mmのV溝)を形成せしめた後、市販の液状スルファミン酸グアニジン系難燃剤を含浸せしめ、乾燥し、成形体Eを得た。成形体Eについて不燃性を測定し、その結果を各成分の含有率とともに表1に示した。
【0047】
実施例6
実施例5において水酸化アルミニウム粉体に代えて水酸化マグネシウム粉体(平均粒子径10μmである。以下、同じ)を用いた以外は実施例5と同様にして熱プレス前の不燃性基材を得た。該不燃性基材を用いて金型による成形(金型温度175℃、圧力20kg/cm2 、時間20分)を行い、図1に示すような凹部(深さ2mm、最大開口幅4mm、長さ20mmのV溝が互いに平行に10mm間隔で千鳥配列をとる。)を形成せしめた後、市販の液状スルファミン酸グアニジン系難燃剤を含浸せしめ、乾燥し、成形体Fを得た。成形体Fについて不燃性を測定し、その結果を各成分の含有率とともに表1に示した。
【0048】
実施例7
厚さ0.5mmの柔軟で屈曲自在なガラスクロスに、実施例1で得た熱プレス後の不燃性基材をウレタン系接着剤で接着し、次に該不燃性基材表面を切削機にて切削処理し、図6に示す凹部(20mm間隔で互いに平行する最大開口幅5mmのV溝で、深さは4mmでガラスクロスに至る。)を有する成形体Gを得た。成形体Gについて不燃性を測定し、その結果を各成分の含有率とともに表1に示した。成形体Gは曲率半径100mmの曲面下地に良好に施工することができた。
【0049】
比較例1
実施例1で得た熱プレス後のまだ切削処理を施していない不燃性基材について不燃性を測定し、その結果を各成分の含有率とともに表1に示した。
【0050】
比較例2
比較例1において液状スルファミン酸グアニジン系難燃剤を含浸せしめない以外は比較例1と同様にして得た熱プレス後の不燃性基材について不燃性を測定し、その結果を各成分の含有率とともに表1に示した。
【0051】
比較例3
実施例1において液状スルファミン酸グアニジン系難燃剤を含浸せしめない以外は実施例1と同様にして凹部を有する成形体Hを得た。成形体Hについて不燃性を測定し、その結果を各成分の含有率とともに表1に示した。
【0052】
比較例4
実施例2において液状スルファミン酸グアニジン系難燃剤を含浸せしめない以外は実施例2と同様にして凹部を有する成形体Iを得た。成形体Iについて不燃性を測定し、その結果を各成分の含有率とともに表1に示した。
【0053】
比較例5
実施例3において液状スルファミン酸グアニジン系難燃剤を含浸せしめない以外は実施例3と同様にして凸部を有する成形体Jを得た。成形体Jについて不燃性を測定し、その結果を各成分の含有率とともに表1に示した。
【0054】
比較例6
実施例4において液状スルファミン酸グアニジン系難燃剤を含浸せしめない以外は実施例4と同様にして凹部を有する成形体Kを得た。成形体Kについて不燃性を測定し、その結果を各成分の含有率とともに表1に示した。
【0055】
比較例7
実施例5において各成分の配合量を変化させた以外は実施例5と同様にして熱プレス後の不燃性基材(厚さ約4mm)を得た。この不燃性基材について不燃性を測定し、その結果を各成分の含有率とともに表1に示した。
ただし、この不燃性基材はきわめて強度が弱く、実用には供し得ない。また切削機による切削処理したところ切削部より破断してしまった。
【0056】
実施例8
実施例1で得た熱プレス前の不燃性基材に、メラミン樹脂含浸紙(120g/m2 )を積層し金型による一体成形(金型温度175℃、圧力20kg/cm2 、時間20分)を行い、図7に示すような湾曲面の内側に凹部(10mm間隔で互いに平行する深さ1.5mm、最大開口幅5mmのV溝)を有し、全体として湾曲形状を有する良好な成形体Lを得た。図7に示すような成形体をさらに長手方向に2分割して凹部を有する内側が表面に現れるように室内のコ−ナ−部の化粧材として用いることができた。
【0057】
比較例8
実施例8において、実施例1で得た熱プレス前の不燃性基材に代えて粉末状フェノ−ル樹脂を配合しない以外は実施例1と同様にして得た熱プレス前の不燃性基材を用いた以外は実施例8と同様にしてメラミン樹脂含浸紙との一体成形を行ったが、不燃性基材に割れが生じ、良好な成形体を得ることができなかった。
【0058】
【表1】
【0059】
【発明の効果】
上記実施例1〜8、比較例1〜8、表1及び図1〜図11からわかるように、本発明に係る不燃性成形体は、含水無機化合物あるいは含水無機化合物と炭酸塩の合計が80〜95重量%で、その他にセルロ−ス繊維が固形分で2〜3.7重量%、及び熱硬化性樹脂が固形分で1〜3.1重量%を含有し、表面に凹凸部を有しない場合においては、難燃剤を含有せずに不燃性機能を発揮し、該表面に凹凸部を形成した場合に、該凹凸部の不燃性の低下を回避するために、少なくとも該凹凸部の表層部およびその近傍に所定量の難燃剤を含有せしめたものか、柔軟性を有し屈曲自在な不燃性裏打材上に前記した表面に凹凸部を有しないで、かつ難燃剤を含有せずに不燃性機能を発揮する不燃性基材を接着し、所定形状の凹部を形成した場合に、該凹部の不燃性の低下を回避するために、少なくとも該凹部の表層部およびその近傍に所定量の難燃剤を含有せしめたものであるので、高度の不燃性を有し、かつ意匠性に優れる不燃性成形体もしくは高度の不燃性と優れた意匠性を有しかつ曲面地下に対する良好な施工性を有する不燃性成形体が得られる。
【0060】
実施例1と比較例3、実施例2と比較例4、実施例3と比較例5、実施例4と比較例6をそれぞれ比較すればわかるように、本発明で特定した凹部もしくは凸部を有する成形体の場合、本発明で特定した部位に所定量の難燃剤を含有することにより、基材試験の炉内温度上昇を低く押えることができる。その結果、難燃剤なしの場合、凸部を有するとき(比較例5)及び突板接着したとき(比較例6)共に炉内温度上昇が50℃を越え昭和45年建設省告示第1828号に規定される不燃材料に不合格となったのに対して、本発明によればこれらに対応する実施例3及び実施例4共に炉内温度上昇を50℃未満に低減することができ不燃材料合格となった。
【0061】
また、難燃剤含有時に生じやすい発煙も全くない。さらに、成形体が所定の凹部を有しないときは、たとえ難燃剤を含有せしめてもそれによる効果はほとんど発揮されない(比較例1、2参照)ことから、係る難燃剤含有による効果は成形体が本発明で特定した凹部もしくは凸部を有する場合に特有のものであるといえる。
【0062】
また、本発明に係る不燃性基材は切削加工性が良好で耐割裂性の点でもケイカル板に比して優位性を有するとともに、不燃性基材中に熱硬化性樹脂を少量ではあるが含有せしめることとしたので、必ずしも切削によらずとも、熱圧成形などによっても各種形状付与ができ特に切削処理では実用上困難な凸形状の付与も容易に行え、かつ必要に応じて2層以上の不燃性基材を互いに強固に熱圧着せしめたり、湾曲形状、L字形状の各種形状とすることもでき、きわめて意匠性に富み、同時に高度の不燃性を有する不燃成形体を容易に得ることができる。
加えて、表面に各種形状の凹部もしくは凸部を有する本発明の不燃性成形体を内壁の化粧材等に用いることにより吸音特性等の音響性能面にも効果的な作用を期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明により得られたV溝が千鳥配列した形状の凹部を有する成形体の斜視図である。
【図2】本発明により得られたV溝形状の凹部を有する成形体の断面図である。
【図3】本発明により得られたV溝形状の凹部を有する成形体の断面図である。
【図4】本発明により得られたリブ形状の凸部を有する成形体の断面図である。
【図5】本発明により得られたV溝形状の凹部を有する成形体の断面図であり、突板を接着した場合を示す。
【図6】本発明により得られたV溝形状の凹部を有する成形体の断面図であり、ガラスクロス製裏打ち材を接着した場合を示す。
【図7】本発明により得られたV溝形状の凹部を有する成形体の斜視図であり、湾曲形状を有する場合を示す。
【図8】基材試験終了後の試験体の中央層に位置する試料の燃焼状態の観察図であり、表面に凹部を有する成形体で、難燃剤を含有する場合を示す。
【図9】基材試験終了後の試験体の中央層に位置する試料の燃焼状態の観察図であり、表面に凹部を有しない不燃性基材で、難燃剤を含有しない場合を示す。
【図10】基材試験終了後の試験体の中央層に位置する試料の燃焼状態の観察図であり、表面に凹部を有する成形体で、難燃剤を含有しない場合を示す。
【図11】基材試験終了後の試験体の中央層に位置する試料の燃焼状態の観察図であり、表面に凹部を有しない不燃性基材で、難燃剤を含有する場合を示す。
【符号の説明】
1 基材試験終了後の試験体の中央層に位置する試料
2 白く灰化した部分
3 黒く炭化した部分
4 薄黒く炭化した部分
5 黒っぽく変色した部分
6 あまり変化していない部分
7 凹部
8 成形体
9 凸部
10 表面化粧材
11 接着剤
12 裏打ち材
Claims (13)
- 含水無機化合物が固形分で80〜95重量%で、その他にセルロ−ス繊維が固形分で2〜3.7重量%、及び熱硬化性樹脂が固形分で1〜3.1重量%を含有し、表面には凹凸部を有しないで、かつ難燃剤を含有せずに不燃性機能を発揮する不燃性基材であって、該不燃性基材の少なくとも片面に深さ0.5mm以上、最大開口幅1mm以上、最小長さ5mm以上の複数の凹部を形成した場合、該凹部を有する面において前記した不燃性基材表面に占める該凹部の最大投影面積が5%以上で、かつ少なくとも該凹部の表層部及びその近傍に上記不燃性基材中の含有率が固形分で0.2〜8重量%の難燃剤を含有せしめたことを特徴とする不燃性成形体。
- 含水無機化合物と炭酸塩の合計が固形分で80〜95重量%で、その他にセルロ−ス繊維が固形分で2〜3.7重量%、及び熱硬化性樹脂が固形分で1〜3.1重量%を含有し、かつ含水無機化合物/炭酸塩が固形分重量比で60/40より含水無機化合物過多側であり、表面には凹凸部を有しないで、かつ難燃剤を含有せずに不燃性機能を発揮する不燃性基材であって、該不燃性基材の少なくとも片面に深さ0.5mm以上、最大開口幅1mm以上、最小長さ5mm以上の複数の凹部を形成した場合、該凹部を有する面において前記した不燃性基材表面に占める該凹部の最大投影面積が5%以上で、かつ少なくとも該凹部の表層部及びその近傍に上記不燃性基材中の含有率が固形分で0.2〜8重量%の難燃剤を含有せしめたことを特徴とする不燃性成形体。
- 含水無機化合物が固形分で80〜95重量%で、その他にセルロ−ス繊維が固形分で2〜3.7重量%、及び熱硬化性樹脂が固形分で1〜3.1重量%を含有し、表面には凹凸部を有しないで、かつ難燃剤を含有せずに不燃性機能を発揮する不燃性基材であって、該不燃性基材の少なくとも片面に、高さ0.5mm以上の複数の凸部を形成した場合、該凸部を有する面において前記した不燃性基材表面に占める該凸部の最大投影面積が5%以上で、かつ少なくとも該凸部の表層部及びその近傍に上記不燃性基材中の含有率が固形分で0.2〜8重量%の難燃剤を含有せしめたことを特徴とする不燃性成形体。
- 含水無機化合物と炭酸塩の合計が固形分で80〜95重量%で、この他にセルロ−ス繊維が固形分で2〜3.7重量%、及び熱硬化性樹脂が固形分で1〜3.1重量%を含有し、かつ含水無機化合物/炭酸塩が固形分重量比で60/40より含水無機化合物過多側であり、表面には凹凸部を有しないで、かつ難燃剤を含有せずに不燃性機能を発揮する不燃性基材であって、該不燃性基材の少なくとも片面に高さ0.5mm以上の複数の凸部を形成した場合、該凸部を有する面において前記した不燃性基材表面に占める該凸部の最大投影面積が5%以上で、かつ少なくとも該凸部の表層部及びその近傍に上記不燃性基材中の含有率が固形分で0.2〜8重量%の難燃剤を含有せしめたことを特徴とする不燃性成形体。
- 請求項1、2、3または4記載の不燃性成形体が曲面を形成することを特徴とする不燃性成形体。
- 柔軟性を有し屈曲自在な不燃性裏打材上に含水無機化合物が固形分で80〜95重量%で、その他にセルロ−ス繊維が固形分で2〜3.7重量%、及び熱硬化性樹脂が固形分で1〜3.1重量%を含有し、表面に凹凸部を有しないで、かつ難燃剤を含有せずに不燃性機能を発揮する不燃性基材が接着され、該不燃性基材の表面に最大開口幅1mm以上で互いに平行な複数の凹部を形成し、該凹部の底を前記した不燃性裏打材に至らしめた場合、該凹部を有する面において前記した不燃性基材表面に占める該凹部の最大投影面積が5%以上で、かつ少なくとも該凹部の表層部及びその近傍に上記不燃性基材中の含有率が固形分で0.2〜8重量%の難燃剤を含有せしめたことを特徴とする不燃性成形体。
- 柔軟性を有し屈曲自在な不燃性裏打材上に含水無機化合物と炭酸塩の合計が固形分で80〜95重量%で、その他にセルロ−ス繊維が固形分で2〜3.7重量%、及び熱硬化性樹脂が固形分で1〜3.1重量%を含有し、かつ含水無機化合物/炭酸塩が固形分重量比で60/40より含水無機化合物過多側であり、表面に凹凸部を有しないで、かつ難燃剤を含有せずに不燃性機能を発揮する不燃性基材が接着され、該不燃性基材の表面に最大開口幅1mm以上で互いに平行な複数の凹部を成形し、該凹部の底を前記した不燃性裏打材に至らしめた場合、該凹部を有する面において前記した不燃性基材表面に占める該凹部の最大投影面積が5%以上で、かつ少なくとも該凹部の表層部及びその近傍に上記不燃性基材中の含有率が固形分で0.2〜8重量%の難燃剤をせしめたことを特徴とする不燃性成形体。
- 含水無機化合物は水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、2水和石こう及びアルミン酸化カルシウムの中から選ばれた少なくとも1種類からなる請求項1、2、3、4、5、6または7記載の不燃性成形体。
- 炭酸塩は炭酸カルシウムである請求項1、2、3、4、5、6、7または8記載の不燃性成形体。
- 熱硬化性樹脂はフェノ−ル樹脂、メラミン樹脂、ニポキシ樹脂、尿素樹脂、尿素メラミン樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂の中から選ばれた少なくとも1種類からなる請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9記載の不燃性成形体。
- 不燃性基材は2層以上のシ−ト層の積層体からなる請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9または10記載の不燃性成形体。
- 不燃性基材は2枚以上の不燃性基材の積層成形体からなる請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または11記載の不燃性成形体。
- 難燃剤は炭化促進作用を有する難燃剤である請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12記載の不燃性成形体。
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