JP4963147B2 - 燃料電池用電極触媒体およびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料電池用電極触媒およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガスの電気化学的反応を利用して、化学エネルギを直接電気エネルギに変換する燃料電池は、カルノー効率の制約を受けないため発電効率が高く、排出されるガスがクリーンで環境に対する影響が極めて少ないことから、近年、発電用、低公害の自動車用電源等、種々の用途が期待されている。燃料電池は、その電解質により分類することができ、例えば、リン酸型燃料電池、溶融炭酸塩型燃料電池、固体酸化物型燃料電池、固体高分子型燃料電池等が知られている。
【0003】
一般に、燃料電池は、電解質の両側にそれぞれ燃料極、空気極となる一対の電極を設けた電極−電解質構造体を発電単位とし、燃料極に水素や炭化水素等の燃料ガスを、空気極に酸素や空気をそれぞれ供給して、ガスと電解質と電極との3相界面において電気化学的な反応を進行させることにより電気を取り出すものである。
【0004】
燃料極および空気極の各電極において上記反応を進行させるために使用される触媒としては、カーボン等の導電性担体に白金を担持させたものが主流となっている。しかし、白金は高価であるため、より安価な金属を合金化して触媒活性を高める試みが種々なされている。例えば、特開平4−371230号公報には、白金−コバルト2元合金触媒が示されており、また、特開平6−176766号公報には、白金−ニッケル−コバルト3元合金触媒が示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、本発明者が追試したところ、上記合金触媒の触媒活性は満足いくものではなかった。本発明者がさらに研究を重ねた結果、合金化する際、コバルトやニッケル等の卑金属は、そのすべてが白金に固溶するのではなく、一部は金属酸化物等となって合金中に残存していることがわかった。そして、金属酸化物の多くは、合金粒子の表面を覆うように存在しているため、反応場となる合金の部分を減少させ、合金の触媒としての利用率を低下させると考えられる。また、このような合金を、例えば固体高分子型燃料電池の空気極の触媒として使用した場合、反応場は強い酸性雰囲気となるため、金属酸化物を構成する卑金属が金属イオンとして溶出する。溶出した金属イオンは、電解質中の水素イオンとイオン交換し、電解質のイオン伝導度を低下させ、電池性能を劣化させる。さらに、金属酸化物の存在により、電解質表面に触媒層を均一に形成することが困難となる。
【0006】
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、比較的安価で、触媒活性が高く、かつ電池性能を低下させることのない電極触媒体を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の燃料電池用電極触媒体は、白金とそれより卑な金属とを含む触媒粒子と、該触媒粒子を担持する導電性担体とを含み、固体高分子型燃料電池に用いられる燃料電池用電極触媒体であって、前記触媒粒子は、粒子表面において、前記白金と合金化せずに金属酸化物を構成する前記卑な金属の原子数が白金の原子数の5%未満であり、前記触媒粒子における前記卑な金属の含有割合は、前記白金と前記卑な金属の原子数の合計を100%とした場合の5%以上50%以下であることを特徴とする。すなわち、本発明の燃料電池用電極触媒体は、白金とそれより卑な金属との合金からなる触媒粒子を導電性担体に担持させたものである。触媒粒子は、主に電極反応を進行させる触媒機能を果たし、特に白金を含むものは酸素還元活性が高いため、空気極の触媒として好適である。触媒粒子を、白金とそれより卑な金属との合金で構成することにより、より安価で触媒活性の高い電極触媒体となる。
【0008】
また、上記触媒粒子は、その粒子表面において、金属酸化物を構成する卑な金属の原子数が白金の原子数の5%未満となるものである。つまり、粒子表面において、卑な金属の酸化物である金属酸化物が少ないことを意味する。上述したように、触媒粒子の一成分である卑な金属は、白金と合金化しているが、そのすべてが白金に固溶しているのではなく、一部は触媒粒子の表面に金属酸化物として残存してしまう。金属酸化物が残存していると、その分反応に寄与する合金の利用率が低下する。したがって、粒子表面の金属酸化物を少なくすることで、合金の反応場(反応サイト)となる表面積を増加させ、合金の利用率を向上させることができる。また、強い酸性雰囲気で使用された場合であっても、金属酸化物からの金属の溶出が抑制されるため、電池性能の劣化は抑制される。さらに、高分子膜を電解質として用いた場合であっても、電解質表面に触媒層を均一に形成することができる。すなわち、通常、電解質となる高分子膜表面に電極の触媒層を形成する場合、高分子と触媒体とを分散させた液を高分子膜に塗布、乾燥する。その際、触媒粒子表面に金属酸化物が多く存在すると、その金属酸化物が分散液中の水分子を吸着するため、高分子の分散性が低下し、偏析し易くなる。したがって、触媒粒子表面の金属酸化物を少なくすることで、触媒層において触媒体と高分子とを互いに偏らせることなく均一に混合することができ、電解質表面に触媒層を均一に形成することができる。
【0009】
上記本発明の燃料電池用電極触媒体は、その製造方法が特に限定されるものではない。以下に示す本発明の製造方法によれば、より簡便に製造することができる。すなわち、本発明の燃料電池用電極触媒体の製造方法は、白金とそれより卑な金属とを導電性担体に担持させる担持工程と、前記導電性担体に担持された白金と卑な金属とを熱処理により合金化して触媒粒子とする合金化工程と、前記触媒粒子の粒子表面の金属酸化物を除去する金属酸化物除去工程とを含んで構成される。
【0010】
本製造方法によれば、白金とそれより卑な金属とを合金化した触媒粒子を導電性担体に担持させた状態で、触媒粒子の粒子表面における金属酸化物を除去することができ、上記本発明の燃料電池用電極触媒体を簡便に製造することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の燃料電池用電極触媒体およびその製造方法について、詳細に説明する。なお、説明する実施形態は一実施形態にすぎず、本発明の燃料電池用電極触媒体およびその製造方法が、下記の実施形態に限定されるものではない。下記実施形態を始めとして、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
【0012】
〈燃料電池用電極触媒体〉
本発明の燃料電池用電極触媒体は、白金とそれより卑な金属とを含む触媒粒子を導電性担体に担持させたものである。触媒粒子は、主に、白金とそれより卑な金属とを合金化した粒子からなる。触媒粒子の一成分である卑な金属は、白金より卑な金属であればその種類が特に限定されるものではない。例えば、Fe、Mn、Co、Ni、Cr、Mo、V等が挙げられる。これらの金属の1種あるいは2種以上を用いればよい。特に、資源量が豊富で安価であり、触媒活性を向上させる効果が高いという理由から、卑な金属としてFe、Mnを用いることが望ましい。
【0013】
触媒粒子における卑な金属の含有割合は、白金と卑な金属の原子数の合計を100%とした場合の5%以上50%以下である。卑な金属の割合が5%未満であると、合金化による活性向上の効果が少ないからであり、反対に50%を超えると、白金に固溶しない卑な金属の量が増大するからである。特に、合金化による活性の向上を考慮した場合には、10%以上であることが望ましい。
【0014】
本発明の電極触媒体は、主に触媒粒子と導電性担体とからなり、触媒体全体における触媒粒子の一成分である白金の含有割合は、特に限定されるものではない。白金の含有割合は、電極触媒体全重量を100wt%とした場合の10wt%以上60wt%以下とすることが望ましい。触媒体全体における白金の含有割合が10wt%未満であると、触媒としての機能を充分に果たすことができず電極反応が進行しにくくなるからであり、60wt%を超えると、白金が凝集してしまい触媒として機能する表面積が減少するからである。また、触媒層は触媒体に含まれる白金量を基準に形成される。したがって、特に酸素の拡散を考慮し形成される触媒層の厚さを適当なものとする観点から、白金の含有割合を20wt%以上とすることが望ましい。また、触媒層を均一に形成するという観点から、40wt%以下とすることが望ましい。
【0015】
本発明の電極触媒体における触媒粒子は、粒子表面において、白金と合金化せずに金属酸化物を構成する卑な金属の原子数が白金の原子数の5%未満である。粒子表面において、卑な金属は、白金と合金化して存在している他、一部は金属酸化物を構成して存在する。そのうち、金属酸化物を構成する卑な金属の原子数を白金の原子数の5%未満とする。5%を超えると、粒子表面における金属酸化物の量が多くなるため、上述したように触媒活性が低下し、電池性能が低下するからである。より触媒活性を高め、電池性能の劣化を抑制するためには、粒子表面において金属酸化物を構成する卑な金属の原子数は、白金の原子数の3%未満とすることが望ましい。なお、金属酸化物は、用いる卑な金属によって種々のものとなる。例えば、卑な金属としてFeを用いた場合には、FeO、Fe23等が、Mnを用いた場合には、MnO2、Mn23等が挙げられる。
【0016】
本明細書では、X線源としてMgKα線を用いたX線光電子分光装置(XPS)により触媒粒子の組成を測定し、その測定結果から得られた組成を粒子表面の組成として採用している。つまり、粒子表面とは、XPSの測定範囲である粒子表面から数nm程度の厚さの部分となる。例えば、卑な金属にFeを用いた場合には、粒子表面の組成を以下のように求めることができる。まず、XPS測定から得られるプロファイルにおけるFe2pシグナルのピーク面積より粒子表面のFeの存在量を算出する。同様に、Pt4fシグナルのピーク面積より粒子表面におけるPtの存在量を算出する。そして、原子の酸化状態によって、異なる結合エネルギー位置にシグナルが現れることを利用して、全体のFeのピークを酸化状態ごとに分離し、酸化物を構成するFeの原子数を求める。なお、原子によって、光電子の脱出し易さが異なるため、濃度が既知である試料のピーク面積値から感度係数を求めておき、ピーク面積値に粒子表面の濃度を反映させるとよい。
【0017】
本発明の電極触媒体における触媒粒子は、その粒子径が特に限定されるものではない。反応に寄与する表面積を大きくし、触媒活性を高めるという観点から、触媒粒子の平均粒子径を5nm以下とすることが望ましい。なお、触媒粒子の平均粒径の簡単な測定法として、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)を利用する方法がある。すなわち、触媒粒子をTEMで観察して、識別できる触媒粒子の粒子径を測定し、それらの粒子径の平均値をその粒子の平均粒径として採用すればよい。
【0018】
上記触媒粒子を導電性担体に担持させて本発明の電極触媒体とする。導電性担体は、特に限定されるものではなく、例えば、導電性が良好で安価であるという理由から、カーボンブラック、黒鉛、炭素繊維等の炭素材料を用いればよい。また、導電性担体は、単位重量当たりの表面積が大きいという理由から粉末状であることが望ましい。この場合、導電性担体の粒子の粒子径は、0.03μm以上0.1μm以下とすることが望ましい。さらに、導電性担体の粒子は、一次粒子が連結したストラクチャー構造を形成していることが望ましい。
【0019】
〈燃料電池用電極触媒体の製造法〉
上記本発明の燃料電池用電極触媒体は、その製造方法を特に限定するものではないが、本発明の製造方法によって簡便に製造することができる。すなわち、本発明の燃料電池用電極触媒体の製造方法は、担持工程と、合金化工程と、金属酸化物除去工程とを含んで構成される。以下、各工程について説明する。
【0020】
(1)担持工程
本工程は、白金とそれより卑な金属とを導電性担体に担持させる工程である。両金属を担持させる方法は、特に限定されるものではなく、通常用いられる方法に従えばよい。例えば、白金亜硫酸錯体を含む水溶液に、粉末状の導電性担体を所定量添加し、さらに過酸化水素水を加えて導電性担体に白金を担持させる。得られる電極触媒体における白金の含有割合を目的の割合とするには、後に添加される卑金属の重量をも考慮して、白金亜硫酸錯体を含む水溶液の濃度および導電性担体の添加量を適宜調整すればよい。そして、上記白金を担持した導電性担体を水に分散させ、その分散液に卑な金属を陽イオンとする塩の水溶液を加え、所定のpH値で攪拌することにより卑な金属を担持させる。なお、触媒粒子における卑な金属の含有割合を目的の割合とするには、卑な金属を陽イオンとする塩の水溶液の濃度等を適宜調整すればよい。このようにして両金属を担持した導電性担体を、濾過、乾燥等して次の工程に供すればよい。
【0021】
(2)合金化工程
本工程は、導電性担体に担持された白金と卑な金属とを熱処理により合金化して触媒粒子とする工程である。熱処理は、特に限定されるものではなく、通常合金化に用いられる方法で行えばよい。例えば、上記担持工程で得られた白金とそれより卑な金属とを担持した導電性担体を、不活性雰囲気下、900℃程度の温度で2時間程度保持すればよい。このような熱処理を施すことにより、導電性担体に担持された白金および卑な金属は合金化し、触媒粒子となる。
【0022】
(3)金属酸化物除去工程
本工程は、触媒粒子の粒子表面の金属酸化物を除去する工程である。金属酸化物を除去する方法は、特に限定されるものではない。存在する金属酸化物自体を取り除くものであってもよいし、金属酸化物において金属と結合している酸素を取り除くものであってもよい。
【0023】
前者の一例として、例えば、触媒粒子を担持した導電性担体を酸処理して金属酸化物の除去を行う方法を採用することができる。酸処理の具体的な方法は、特に限定されるものではなく、例えば、触媒粒子を担持した導電性担体を酸水溶液に分散させて行えばよい。この場合、使用する酸水溶液の種類は、特に限定されるものではない。例えば、硫酸、硝酸、フッ酸、酢酸等から選ばれる酸の水溶液を用いればよい。特に、触媒層を均一に形成することができるという理由から、酸水溶液は硫酸水溶液とすることが望ましい。また、酸処理は、常温で行えばよく、酸水溶液の濃度は、0.1〜2M程度、酸処理の時間は10分間程度とすればよい。なお、酸処理後は、濾過、乾燥、粉砕等を行い、目的とする電極触媒体とすればよい。
【0024】
また、後者の一例として、例えば、触媒粒子を担持した導電性担体を還元処理して金属酸化物の除去を行う方法を採用することができる。還元処理の具体的な方法は、特に限定されるものではなく、例えば、触媒粒子を担持した導電性担体を水素雰囲気で200℃程度に加熱して行えばよい。
【0025】
〈燃料電池用電極触媒体の使用の態様〉
本発明の燃料電池用電極触媒体は、例えば、固体高分子型燃料電池の電極触媒として用いることができる。この場合、例えば、本発明の電極触媒体を、電解質となる高分子を含む液に分散し、その分散液を電解質膜に塗布、乾燥することにより、電解質膜の表面に電極触媒体を含んだ触媒層を形成すればよい。そして、その触媒層の表面にさらにカーボンクロス等を熱圧接して電極−電解質構造体とすればよい。
【0026】
【実施例】
上記実施の形態に基づいて、種々の電極触媒体を製造した。そして、製造した各電極触媒体を使用して固体高分子型燃料電池セルを構成し、電池特性を評価した。以下、電極触媒体の製造、固体高分子型燃料電池セルの作製、および電池特性の評価について説明する。
【0027】
〈電極触媒体の製造〉
卑な金属としてFeを、導電性担体としてカーボンブラックを用い電極触媒体を製造した。まず、ヘキサヒドロキシ白金酸1.5gを50mLの水に分散し、さらに6%亜硫酸水溶液を100mL加えて1時間攪拌した。その後、120℃に加温したオイルバスに反応容器を浸漬して残留亜硫酸を除去し、冷却して白金亜硫酸錯体水溶液(4g−Pt/L)を調製した。次いで、上記白金亜硫酸錯体水溶液の187mLに、カーボン粉末を3g添加し、さらに20%H22水溶液を加え、120℃に加温したオイルバス中で反応させることによりカーボンに白金を担持させた。上記反応溶液を濾過し、濾別された固体を真空乾燥後に粉砕した。さらに、水素気流中、200℃で還元処理し、白金がカーボンに担持された触媒体(以下「Pt/C触媒体」という。)を得た。なお、本Pt/C触媒体を触媒体(A)とする。
【0028】
上記触媒体(A)の5gを蒸留水に分散し、触媒体分散液を準備した。その触媒体分散液に硝酸鉄水溶液をFeの含有割合が原子比で50%となるように添加し、アンモニア水溶液を添加して分散液のpH値が10となるように調整した。分散液を常温で3時間攪拌して、白金を担持させたカーボンにさらに鉄を担持させた。なお、触媒体における白金の含有割合は、20wt%とした。上記分散液を濾過し、濾別された固体を真空乾燥して、白金および鉄がカーボンに担持された触媒体を得た。
【0029】
上記触媒体を、アルゴン気流中900℃で2時間保持することにより熱処理し、白金と鉄とを合金化して触媒粒子とし、白金と鉄との合金である触媒粒子がカーボンに担持された触媒体(以下「Fe−Pt/C触媒体」という。)を得た。なお、本Fe−Pt/C触媒体を触媒体(B)とする。さらに、触媒体(B)を1M硫酸水溶液の500mLに分散させ、室温で3時間攪拌して酸処理を行った。分散液を濾過し、濾別された固体を真空乾燥後に粉砕して、酸処理したFe−Pt/C触媒体を得た。本Fe−Pt/C触媒体の触媒粒子の粒子径は2.5nmであった。本Fe−Pt/C触媒体は、本発明の電極触媒体となるものであり、触媒体(C)とする。
【0030】
上記製造した触媒体(B)、(C)における触媒粒子をX線源としてMgKα線を用いたX線光電子分光装置(XPS)により測定した。XPSによる測定結果を図1および表1に示す。
【0031】
【表1】
Figure 0004963147
【0032】
図1は、触媒体(B)および触媒体(C)の触媒粒子のXPSプロファイルを示す。図1から、触媒体(B)の触媒粒子では、触媒体(C)の触媒粒子と比較して、結合エネルギーが710〜715eV付近に多くのピークが現れていることがわかる。上記結合エネルギー位置に現れるピークは、主に酸化物を構成するFeのピークであり、触媒体(B)の触媒粒子表面には、酸化物を構成するFe原子が多く存在することがわかる。また、表1に示すように、触媒体(B)の触媒粒子は、その粒子表面において、酸化物を構成するFeの原子数の割合がPtの原子数の約0.43、つまり約43%であった。一方、触媒体(C)の触媒粒子は、その粒子表面において、酸化物を構成するFeの原子数の割合がPtの原子数の約0.02、つまり約2%であった。これより、本発明の電極触媒体である触媒体(C)は、酸処理を行うことにより触媒粒子表面の金属酸化物が除去され、触媒粒子表面において、白金と合金化せずに酸化物を構成する鉄の原子数が白金の原子数の5%未満であることが確認できた。なお、触媒体(B)、(C)における触媒粒子をX線回折法により分析したところ、両者のX線回折スペクトルに違いはみられなかった。つまり、酸処理は、触媒粒子表面の金属酸化物を選択的に除去し、触媒粒子に影響を及ぼさないことが確認された。
【0033】
〈固体高分子型燃料電池セルの作製〉
製造した上記各触媒体(A)〜(C)を空気極の触媒として使用して、固体高分子型燃料電池セルを3種類作製した。電極面積1cm2あたりのPt量が0.3mgとなるように、上記各触媒体をそれぞれナフィオン溶液に混合してペースト状とした。それぞれのペーストを電解質となるナフィオン膜の一方の表面に塗布、乾燥して空気極の触媒層を形成した。燃料極の触媒には、すべて触媒体(A)を使用し、上記同様ペースト状とした触媒体(A)を、ナフィオン膜のもう一方の表面に塗布、乾燥して燃料極の触媒層とした。そして、拡散層となるカーボンクロスを両極それぞれの触媒層の表面にホットプレスにより接合し、電解質−電極構造体を3種類作製した。このように作製した各電解質−電極構造体をカーボン製のセパレータで挟持してセルとした。
【0034】
〈電池特性の評価〉
上記作製した3種類のセルについて電池特性を評価した。燃料極には露点90℃の加湿水素を、空気極には露点70℃の加湿空気を供給し、作動温度80℃にて固体高分子型燃料電池セルを作動させた。水素は、0.2MPa下、50mL/(min・cm2)の速度で供給し、空気は、0.2MPa下、100mL/(min・cm2)の速度で供給した。
【0035】
図2に、各触媒体を用いたセルにおける電池電圧と電流密度との関係を示す。縦軸の電池電圧は、内部抵抗等による電圧降下を除いた値を示す。低電流密度域では、触媒活性の影響が大きく現れるため、電圧が0.85Vでの電流密度を比較すると、触媒体(A)を用いたセルでは101mA/cm2、触媒体(B)を用いたセルでは145mA/cm2、触媒体(C)を用いたセルでは268mA/cm2であった。つまり、本発明の触媒体を用いたセルが最も電流密度が大きく、電極反応が大きく促進されていることが確認できた。
【0036】
また、セル作動中に反応に寄与するPt面積、いわゆる実効Pt面積の指標として、サイクリックボルタモグラム測定から得られる水素脱離波を分析したところ、触媒体(A)では50mC/cm2、触媒体(B)では43mC/cm2、触媒体(C)では53mC/cm2となった。これより、本発明の触媒体である触媒体(C)における触媒粒子は、酸処理を施すことにより金属酸化物が除去され、触媒体(B)における触媒粒子と比較して実効Pt面積が増加していることが確認できた。
【0037】
【発明の効果】
本発明の燃料電池用電極触媒体は、白金とそれより卑な金属との合金からなる触媒粒子を導電性担体に担持させたものであり、触媒粒子の表面において、金属酸化物を構成する卑な金属の原子数が白金の原子数の5%未満となるものである。比較的安価な卑金属を用い、かつ触媒粒子表面の金属酸化物を少なくすることで、安価で、触媒活性が高く、かつ電池性能を低下させることのない電極触媒体となる。また、本発明の製造方法によれば、上記本発明の燃料電池用電極触媒体を簡便に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 触媒体(B)、(C)における触媒粒子をX線光電子分光装置(XPS)により測定した結果を示す。
【図2】 各触媒体を用いたセルにおける電池電圧と電流密度との関係を示す。

Claims (9)

  1. 白金とそれより卑な金属とを含む触媒粒子と、該触媒粒子を担持する導電性担体とを含み、固体高分子型燃料電池に用いられる燃料電池用電極触媒体であって、
    前記触媒粒子は、粒子表面において、前記白金と合金化せずに金属酸化物を構成する前記卑な金属の原子数が白金の原子数の5%未満であり、前記触媒粒子における前記卑な金属の含有割合は、前記白金と前記卑な金属の原子数の合計を100%とした場合の5%以上50%以下であることを特徴とする燃料電池用電極触媒体。
  2. 前記卑な金属はFe、Mn、Co、Ni、Cr、Mo、Vから選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の燃料電池用電極触媒体。
  3. 前記白金は、当該電極触媒体全重量を100wt%とした場合の10w%以上60wt%以下の割合で含まれる請求項1または請求項のいずれかに記載の燃料電池用電極触媒体。
  4. 前記触媒粒子の平均粒子径は5nm以下である請求項1ないし請求項のいずれかに記載の燃料電池用電極触媒体。
  5. 前記導電性担体は炭素材料である請求項に記載の燃料電池用電極触体。
  6. 請求項1〜5のいずれか1つに記載の燃料電池用電極触媒体の製造方法であって、
    白金とそれより卑な金属とを導電性担体に担持させる担持工程と、
    前記導電性担体に担持された白金と卑な金属とを熱処理により合金化して触媒粒子とする合金化工程と、
    前記触媒粒子の粒子表面の金属酸化物を除去する金属酸化物除去工程と
    を含む燃料電池用電極触媒体の製造方法。
  7. 前記金属酸化物除去工程において、前記触媒粒子を担持した導電性担体を酸処理して金属酸化物の除去を行う請求項に記載の燃料電池用電極触媒体の製造方法。
  8. 前記酸処理は、前記触媒粒子を担持した導電性担体を酸水溶液に分散させて行う請求項に記載の燃料電池用電極触媒体の製造方法。
  9. 前記酸水溶液は、硫酸水溶液である請求項に記載の燃料電池用電極触媒体の製造方法。
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