JP4802352B2 - 燃料電池用電極触媒およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術】
本発明は、燃料電池用電極触媒に関し、さらに詳しくは、燃料電池の燃料極、或いは空気極に用いられる電極触媒およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池は、一般に、燃料極に燃料ガス(水素など)を供給すると共に、空気極には酸化剤ガス(空気など)を供給し、燃料極で発生した水素イオンが電解質を介して空気極へ移動し、空気極で水(H2O)となるという電気化学的反応を利用して電気エネルギーを取り出すメカニズムにより構成されている。そして、この種の燃料電池には、使用される電解質の種類によって、固体高分子型燃料電池、リン酸型、溶解炭酸塩型、固体酸化物型など各種のものが知られている。
【0003】
ところで、このような燃料電池において、燃料極および空気極に用いられる電極触媒としては、白金黒やカーボン担体に活性金属として白金(Pt)を担体した白金触媒が主に用いられているが、稀少であるが故に高コストとなってしまうという問題がある。そこで、安価な卑金属との合金化による高活性化が試みられており、この場合卑金属は、水酸化物などの形で白金担持触媒担体に担持させ、熱処理により白金と合金化する手法が通常採られる。
【0004】
また、白金などの貴金属触媒の高活性化を図る手法として、例えば、特開平5−129023号公報に示されるように、ポルフィリンなどの貴金属含有大環状化合物(N4−キレート)をカーボン担体に担持し、後に酸性雰囲気下で電位掃引による活性化で触媒を調製する手法も提案されている。活性金属には、Pt,Pd,Ru,Os,Irなどを、そして大環状化合物にはフタロシアニン等に代表されるN4−キレート化合物を用いている。
【0005】
そして、これまでの大環状化合物を用いて得られる触媒と異なるのは、この公報のものでは中心金属の原子価がゼロの状態のものを含んでいること、また従来の白金のみを担持した触媒と比較して、この公報により得られる貴金属含有大環状化合物担持した触媒では耐久性能についても優れているとしていることである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の方法で調製した合金触媒は、純白金触媒と比較して比活性(白金表面積あたりの活性)は高い反面、合金化を目的として熱処理を施しているため金属が凝集してしまい、表面積を乗じた活性では両者は同程度となっていた。従って、担持金属を合金化させつつ、いかにしてこれを高分散させるかが課題となっていた。
【0007】
また、特開平5−129023号公報のようにポルフィリンといった大環状化合物(N4−キレート)を用いて触媒を調製する手法では、その調製の際、金属とキレート剤との間の結合力が強固で安定なために化学的変化が起こり難く、仮に活性化のための熱処理を施しても大環状化合物は分解されずに残っており、触媒反応を担っていいる金属はごく一部である可能性が高い。
【0008】
また、従来技術の中には、FeやCoなどの卑金属のみを錯化して調製した触媒についての提案もなされている(特開平10−249208号公報)が、Ptを主成分とした電極触媒と比較した場合、これらの触媒活性はかなり低いものであり、実用化は極めて困難である。更にこれらの大環状化合物は非常に高価な化合物であり、触媒活性の向上が多少見込めてもシステム全体のコストパフォーマンスは非常に低くなり、現実的な解決策とは言えない。
【0009】
本発明の解決しようとする課題は、燃料電池の電極触媒として合金触媒の高分散化を図ることにより高い触媒活性が発揮維持されると同時に、製造コストパフォーマンスにも優れた触媒調製法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この課題を解決するための本発明の燃料電池電極触媒は、請求項1記載のように、触媒担体に担持される合金触媒の合金化度が50%以上であって、かつその合金触媒の合金粒径が3nm以下であり、前記合金触媒が、Pt,Pd,Ru,Os,Ir,Rh,Auから選ばれた1種または2種以上の貴金属と、Fe,Ni,Cr,Mn,Coから選ばれた1種または2種以上の卑金属を含み、前記卑金属の少なくとも1種が、錯化合物を形成する触媒成分金属との結合力の強さを示すキレート安定度数が5〜40の範囲にあるキレート剤との錯化合物を熱処理して得られたものであることを要旨とするものである。
【0011】
上記構成を有する電極触媒によれば、合金触媒の合金化度が50%以上であって、かつその合金触媒の合金粒径を3nm以下とし、合金触媒を構成する金属元素の一方の金属には、従来一般に知られている触媒性能の優れた、Pt,Pd,Ru,Os,Ir,Rh,Auから選ばれた1種または2種以上の貴金属を適用し、また他方の金属には上述したコストパフォーマンスの面からFe,Co,Ni.Cr,Mnから選ばれた1種または2種以上の卑金属を適用し、卑金属の少なくとも1種が、錯化合物を形成する触媒成分金属との結合力の強さを示すキレート安定度数が5〜40の範囲にあるキレート剤との錯化合物を熱処理して得られたものであるとすることにより、電極触媒担体上での合金触媒の高分散化が図れる。キレート安定度定数が5以下であると、キレート剤と金属との結合力が弱いために熱処理時に早く分解してしまい、合金触媒の分散化が低下し、またキレート安定度定数が40以上になると、結合力が強過ぎて熱処理時に分解しにくくなるためにキレート剤が残り、あるいは別の化合物が生成されて触媒性能が低下する。そして、適用される燃料電池のセル電圧を同じにした時にはより高い電流密度が得られ、また、逆に電流密度を同じにしたとすれば、高いセル電圧が得られる。したがって結果として高い電気エネルギー(出力)が取り出せることとなる。
【0014】
そしてこの場合に、請求項2に記載のように、卑金属の少なくとも1種が、ポリアミノカルボン酸構造を有するキレート剤との錯化合物を熱処理して得られたものであることが望ましい。ポリアミノカルボン酸構造を有するキレート剤はアミノ基数が1または2のキレート化合物であるから、卑金属との結合力が適度の強さとなって熱処理により得られる合金触媒の合金化度や合金粒径が期待した数値のものとなる。
【0015】
また、本発明に係る電極触媒の製造方法は、請求項3記載のように、請求項1又は2に記載の燃料電池用電極触媒の製造方法であって、触媒成分金属の少なくとも1種をキレート剤によって錯体化する錯化工程と、錯化工程で得られた触媒成分金属の錯体を触媒担体上に担持する担持工程と、この錯体を含む複数の触媒成分金属が担体上に担持された触媒前駆体を熱処理することによって合金化する工程とを含むことを要旨とするものである。
【0016】
そしてこの場合に「キレート剤」としては、錯化合物を形成する担持金属との結合力の強さを示すキレート安定度定数が5〜40の範囲のものを、さらに詳しくは、ポリアミノカルボン酸構造を有するキレート化合物を選択するのがよい。キレート剤を用いることで金属同士は隔離されているため、熱処理時の凝集から保護された状態になっている。合金粒子が形成されるためには少なくとも雰囲気が500℃以上である必要性がありキレート錯体の分解温度がこれ以上であることによって、錯体が分解した際に金属の凝集よりはむしろ合金粒子が高分散に形成され易い状況になっており、高活性化に寄与している。一方、キレート剤を用いない場合、熱処理が始まるに伴って金属の凝集が始まってしまう。そのため、合金粒子が効率的に形成されず、高活性化につながっていないと考えられる。
【0017】
これにより、電極触媒担体上での合金触媒の高分散化が図れるものであるが、キレート安定度定数が5以下であると、キレート剤と金属との結合力が弱いために熱処理時に早く分解してしまい、合金触媒の分散化が低下し、またキレート安定度定数が40以上になると、結合力が強過ぎて熱処理時に分解しにくくなるためにキレート剤が残り、あるいは別の化合物が生成されて触媒性能が低下する。
【0018】
また、熱処理の条件としては、触媒の熱処理の際に、還元(水素)範囲気下、200〜300℃(好ましくは200℃)で2〜3時間保持し、引き続いて雰囲気を不活性ガス(窒素)に切り換えてから500〜1100℃で2〜3時間保持して担持金属の合金化を進行させるようにするとよい。
【0019】
【発明実施の形態】
以下に、本発明の好適な実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
初めに、本発明の一実施形態としての燃料電池の概略構成を図1に示して説明する。図示の燃料電池10は、固体高分子電解質膜12の一方の面に燃料極14を設けると共に、反対側の面に空気極16を設け、空気極16の外側に正極集電体18を、また燃料14の外側には負極集電体20をそれぞれ配設している。
【0020】
そして、前記燃料極14は、白金(Pt)等の電極触媒を含む電極触媒層15aとガス拡散可能な多孔質材料からなるガス拡散層15bとにより構成され、また、前記空気極16も同様の電極触媒層17aとガス拡散層17bにより構成されており、また前記負極集電体20の燃料極14との対向面には、水素などの燃料ガスが流れる燃料ガス流路22が形成され、前記正極集電体18の空気極16との対向面には、空気や酸素などの酸化剤ガスが流れる酸化剤ガス流路24が形成されている。
【0021】
さらに、これら固体高分子電解質膜12、燃料極14、空気極16、正・負極集電体18,20の周囲はフレーム26で囲まれ、また、正・負極集電体18,20にはそれぞれ、正極端子部材28及び負極端子部材30が接続されている。そして、正極・負極端子部材28,30の外側にはステンレス製のエンドプレート32,32が当てがわれ、全体が堅固に締付けられることにより組み立てられている。尚、前記フレーム26の外周縁などには、シール部材34が介設されている。
【0022】
このように構成された燃料電池10では、良く知られているように、燃料ガス流路22に改質水素ガスなどの燃料ガスを流し、酸化剤ガス流路24に空気あるいは酸素などの酸化剤ガスを流すと、燃料極14側では、燃料ガスが燃料極14のガス拡散層15bを通って電極触媒層15aに達し、そこで水素ガスの解離により水素イオンが発生し、その水素イオンは固体高分子電解質膜12を移動して空気極16に到達する。
【0023】
そして、空気極16側では、前記酸化剤ガス流路24を流れる酸化剤ガスがやはりガス拡散層17bを介して電極触媒層17aに到達しているので、そこで、移動してきた水素イオンと電気化学的に反応し、電気エネルギーが取り出されるものである。
【0024】
【実施例】
次に、前記燃料極および空気極の電極触媒層に用いられる電極触媒を各種試作し、実験に供したので、これらについて説明する。ここでは、本発明品として実施例1〜実施例4を試作し、また、比較品として比較例1〜比較例4を試作している。
【0025】
(実施例1)
白金亜硫酸錯体を含む白金含浸溶液に、予め真空乾燥させておいたカーボン粒子を加えて撹拌し、白金成分を吸着・担持させ、引き続いて過酸化水素水を加える。このようにして得た触媒を触媒前駆体「A」とする。そしてこの触媒前駆体「A」を真空乾燥し、鉄成分の含浸操作に移る。鉄成分の含浸溶液は、白金原子に対して3分の1となるように秤量した硝酸鉄(Fe(3価)(NO3)3・9H20)と、鉄原子に対して1.5倍となるように秤量したエチレンジアミン四酢酸(EDTA、鉄(3価)に対するキレート安定度定数は、25.1、分子構造は次の化1に示す。)とから構成され、アンモニア水溶液を加えpH10に調整してある。このようにして、予め触媒前駆体「A」を蒸留水に分散させた溶液に、所定量の鉄含浸溶液を加えて撹拌する。続いて溶媒を除去して鉄成分をカーボン粒子に吸着・担持させ触媒前駆体「B」を得た。そして最後に触媒前駆体「B」を水素気流中において200℃2時間保持し、引き続きて雰囲気を不活性ガスに切り替えて900℃で2時間保持した。
【0026】
【化1】
【0027】
(実施例2)
実施例2も基本的には、実施例1の場合とほぼ同じ手順で電極触媒を調製する。異なるのは、実施例1と異なるキレート剤を用いている。すなわち、実施例2では、添加するキレート剤としてヒドロキシエチルイミノニ酢酸(HIDA、鉄(3価)に対するキレート安定度定数は11.64、分子構造は化2に示す。)を用いている。
【0028】
【化2】
【0029】
(実施例3)
実施例3では、錯化させる金属を鉄からマンガンに変えたほかは、調製手順などは、実施例1の場合と同じとした。具体的には、この実施例3では、硝酸マンガン(Mn(2価)(NO3)2・6H2O)を用い、また、キレート剤は実施例1と同じくEDTA(化1)を用いることにより白金・マンガン合金触媒としたものである。
【0030】
(実施例4)
実施例4では、錯化させる金属を鉄からマンガンに変えると共に、キレート剤もEDTAからHIDA(化2)に変えている。したがって、この実施例4は、実施例2との比較では、錯化させる金属を鉄からマンガンに変えたことのみが異なる。マンガンソースは、実施例3と同じく、硝酸マンガン(Mn(2価)(NO3)2・6H2O)を用いた。キレート剤HIDAのマンガン(2価)に対するキレート安定度定数は、6.4である。
【0031】
(比較例1)
実施例1で調製した触媒前駆体「A」に、実施例1の場合と同じ条件で熱処理を施すことにより、調製したものである。これは、白金担持電極触媒であり、実施例1〜4のような合金触媒ではない。
【0032】
(比較例2)
実施例1で調製した触媒前駆体「A」(比較例1で調製したもの)を真空乾燥し、次に白金原子に対して3分の1となるように秤量した硝酸鉄(Fe(3価)(NO3)3・9H2O)水溶液に真空乾燥した触媒前駆体「A」を加えるが、この時キレート剤は用いない。そして、続いてアンモニア水溶液を加えてpH10に調整し、さらに撹拌を続け、溶媒を除去して鉄成分をカーボン粒子に吸着・担持させた。そして、熱処理は実施例1と同じ条件で行ったものである。
【0033】
(比較例3)
比較例2と比べて添加する卑金属原子を鉄からマンガン(Mn(2価)(NO3)2・6H2O−実施例3,4と同じ。)に変えた以外は、比較例2の場合と全く同じ手法および条件の下に調製したものである。キレート剤は勿論用いられていない。
【0034】
(比較例4)
白金フタロシアンニン錯体を硫酸水溶液に溶解し、予め真空乾燥しておいたカーボン粒子をこの溶液に加えて常温下で撹拌させ白金成分をカーボン粒子に吸着させた。次に、ろ液が中性になるまでろ過し、得られた白金触媒前駆体に実施例1と同様の手順で熱処理を施した。
【0035】
次に、上述の各種の電極触媒を用いた燃料電池について電池特性の評価試験を行ったので、これについて説明する。この電池特性の評価試験では、供給ガスをO2/H2として、物質移動律速やIR損失の影響が殆ど無い低電流密度領域で触媒性能を測定した。その結果を図2に示す。この図2では、横軸に電流密度(A/cm2)を採り、縦軸にセル電圧(V)を採っている。本発明品については、実施例1(EDTA添加Pt−Fe合金触媒)、および実施例2(HIDA添加Pt−Fe合金触媒)の結果を示し、比較品については、比較例1(白金担持触媒)、比較例2(キレート剤なしの従来法によるPt−Fe合金触媒)、および比較例4(白金フタロシアニン触媒)の結果を示す。
【0036】
この図2の結果でわかるように、本発明品である実施例1、および実施例2のPt−Fe合金触媒は、比較品である比較例1、比較例2および比較例3のいずれの触媒よりも良好な結果が得られている。すなわち、同じ電流密度(A/cm2)であれば、セル電圧(V)は、高い値が得られ、逆に同じセル電圧(V)であれば、電流密度(A/cm2)は、高い値が得られている。
【0037】
ちなみに、出力電圧0.8Vの時の電流密度(A/cm2)の値をみると、比較例1(白金担持触媒)で、121(mA/cm2)、比較例2(キレート剤なしの従来法によるPt−Fe合金触媒)で163(mA/cm2)、比較例4(白金フタロシアニン触媒)で144(mA/cm2)であったものが、本発明品の実施例1(EDTA添加Pt−Fe合金触媒)で413(mA/cm2)、実施例2(HIDE添加Pt−Fe合金触媒)で256(mA/cm2)という高い値が得られている。
【0038】
また、本発明品の実施例1と実施例2とを比較した時に実施例1の方が実施例2よりも良い結果が得られているが、これは、キレート剤の違いによるもので、キレート剤としてEDTAとHIDAとを比較した時に、EDTAのキレート安定度定数が25.1であるのに対して、HIDAのキレート安定度定数が11.64であることの違いに依るものと考えられる。
【0039】
次に、各電極触媒における白金の合金化度をX線回折(XRD)測定により算出し、また、金属粒子径を(nm)を透過型電子顕微鏡(TEM)により観察して測定したので、これらの数値と出力電流密度(mA/cm2)との関係を次の表1に示して説明する。ここでの「合金化度」は、XRD測定によるメタル白金の出現ピーク位置を基準とし、そのピーク位置からのシフトの度合いから算出される数値で示している。
【0040】
【表1】
【0041】
その結果、この表1に示したように、初めにPt−Fe合金触媒について比較してみると、比較例2(キレート剤なしの従来法によるPt−Fe合金触媒)は、白金の合金化度が、合金白金:メタル白金=48:52であり、鉄・白金系合金触媒の中では、合金化度が最も進んでいないことが明らかとなった。また、TEMによる観察結果で白金粒径は、3.0nmとなっており、比較例1の白金担持触媒或いは、比較例4の白金フタロシアニン触媒との比較では粒径が小さくなっているが、鉄・白金系合金触媒の中では粒径が最も大きいことが示された。
【0042】
これに対して、実施例1(EDTA添加Pt−Fe合金触媒)における白金の合金化度は、合金白金:メタル白金=83:17となっており、またTEMによる白金粒子径の値は、1.6nmであった。また、実施例2(HIDA添加Pt−Fe合金触媒)における白金の合金化度は、合金白金:メタル白金=54:46であり、またTEMによる白金粒径の値は、2.2nmであった。
【0043】
そして、出力電流密度(mA/cm2)については、上述の図2に示したデータとも関連するが、この表1にも示されるように、白金の合金化度や金属粒径との相関性が認められ、白金の合金化度が高く、金属粒径が小さい程、出力電流密度(mA/cm2)は、良好な結果が得られている。そしてこの結果より、白金の合金化度は、50%以上、金属粒径は、3.0nm以下が望ましいと言うことができる。
【0044】
これに対して、実施例3(EDTA添加Pt−Mn合金触媒)における白金の合金化度は、合金白金:メタル白金=88:12となっており、またTEMによる白金粒子径の値は、1.5nmであった。また、実施例4(HIDA添加Pt−Mn合金触媒)における白金の合金化度は、合金白金:メタル白金=63:37であり、またTEMによる白金粒径の値は、2.7nmであった。
【0045】
そして、出力電流密度(mA/cm2)については、この表1にも示されるように、やはり白金の合金化度や金属粒径との相関性が認められ、白金の合金化度が高く、金属粒径が小さい程、出力電流密度(mA/cm2)は、良好な結果が得られている。この比較例でも、白金の合金化度は、50%以上、金属粒径は、3.0nm以下が望ましいと言うことができる。
【0046】
次に、表1に示したPt−Mn合金触媒について比較してみると、比較例3(キレート剤なしの従来法によるPt−Mn合金触媒)は、白金の合金化度が、合金白金:メタル白金=43:57であり、マンガン−白金系合金触媒の中では、合金化度が最も進んでおらず、またTEMによる観察結果で白が金粒径は3.2nmとなっておりマンガン−白金系合金触媒の中では最も大きい。
【0047】
以上の実験結果をまとめると、触媒の性能ではキレート剤、とりわけEDATAの添加が活性を向上させるのに非常に有効な手法であり、この調製手法により合金微粒子を最も高分散に形成させることができることがわかる。しかし同様のアミノポリカルボン酸構造を有するHIDAを添加した際は活性の向上がEDTAほどには認められない。これは鉄原子、或いはマンガン原子とのキレート安定度定数が小さい(これは金属とキレート剤の間の結合力が相対的に弱い、即ち熱的因子などにより容易に分解してしまうことを意味する)ため、熱処理の早い段階での錯体が分解してしまい合金化が進行しなかったことが原因と推定される。
【00048】
従来の合金触媒の調製では、鉄成分、或いはマンガン成分は水酸化物として担持されていることが予想されるが、熱処理の過程で鉄のマンガンの凝集が進行して合金粒子を高分散に形成させることができず、その結果合金触媒の中では最も性能が悪くなったと考えられる。
【0049】
参考として調製したフタロシアニン錯体を用いた触媒では、白金粒子径は通常の方法で調製した白金担持触媒よりも小さいが、触媒性能を比較してみるとフタロシアニン錯体を用いた触媒の方が活性が低い。これは、フタロシアニン錯体が非常に安定なために熱処理を施しても錯体が部分的にしか分解せず、そのため白金原子の凝集が抑制されたと考えられる。また、錯体の分解が不十分なため、全ての白金原子が活性サイトとして機能できず、その結果活性が低くなったものと推定される。EDTA添加触媒では高分散した鉄錯体が熱処理によって完全に分解して白金と合金化しており、触媒表面上での白金の状態は全く異なることが容易に推定できる。
【0050】
本発明は、上記した実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。例えば上記実施例では、錯化させる卑金属として鉄(Fe)、およびマンガン(Mn)の例を示したが、それ以外の各種の卑金属が適用できることは容易に推察できる。貴金属についても白金(Pt)に限定されるものではなく、従来一般に知られている貴金属触媒の合金化に適用できることは言うまでもない。
【0051】
【発明の効果】
本発明に係る燃料電池用電極触媒は、白金、パラジウムなどの貴金属と鉄、マンガンなどの卑金属との合金触媒であって、その合金化度が50%以上、かつその合金触媒の粒径が3nm以下であり、卑金属の少なくとも1種が、錯化合物を形成する触媒成分金属との結合力の強さを示すキレート安定度数が5〜40の範囲にあるキレート剤との錯化合物を熱処理して得られたものとなっていることから、電極触媒担体上での合金触媒の高分散化が図れる。そして、これにより、高い触媒活性が得られ、燃料電池として、高い電気エネルギー(出力)が得られるという効果を奏するものである。
【0052】
また、これを製造するに際しては、担持金属をキレート剤により錯化し、これを貴金属などが予め担持される触媒担体に担持させ、熱処理により、そのキレート剤を飛散させて異種の担持金属どうしを合金化するものであり、その時用いられるキレート剤のキレート安定度定数を5〜40の範囲とすることにより高い触媒活性が安定して得られる電極触媒を製造できるものである。さらに貴金属と卑金属との合金触媒とすることにより、従来の高価な貴金属触媒と較べて安価に製造でき、コストパフォーマンスを図ることができるという利益も有するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態としての燃料電池の概略構成を示した図である。
【図2】各種の調製電極触媒を用いて燃料電池の電池特性の評価試験を行った結果(電流密度−セル電圧の関係)を示した図である。
【符号の説明】
10 燃料電池
12 固体高分子電解質膜
14 燃料極
15a電極触媒層 15bガス拡散層
16 空気極
17a電極触媒層 17bガス拡散層
18 正極集電体
20 負極集電体
22 燃料ガス流路
24 酸化剤ガス流路
Claims (4)
- 触媒担体に担持される合金触媒の合金化度が50%以上であって、かつその合金触媒の合金粒径が3nm以下であり、
前記合金触媒が、Pt,Pd,Ru,Os,Ir,Rh,Auから選ばれた1種または2種以上の貴金属と、Fe,Ni,Cr,Mn,Coから選ばれた1種または2種以上の卑金属を含み、
前記卑金属の少なくとも1種が、錯化合物を形成する触媒成分金属との結合力の強さを示すキレート安定度数が5〜40の範囲にあるキレート剤との錯化合物を熱処理して得られたものであることを特徴とする燃料電池用電極触媒。 - 前記卑金属の少なくとも1種が、ポリアミノカルボン酸構造を有するキレート剤との錯化合物を熱処理して得られたものであることを特徴とする請求項1の燃料電池用電極触媒。
- 請求項1又は2に記載の燃料電池用電極触媒の製造方法であって、
触媒成分金属の少なくとも1種をキレート剤によって錯体化する錯化工程と、錯化工程で得られた触媒成分金属の錯体を触媒担体上に担持する担持工程と、この錯体を含む複数の触媒成分金属が担体上に担持された触媒前駆体を熱処理することによって合金化する工程とを含むことを特徴とする燃料電池用電極触媒の製造方法。 - 前記キレート剤は、錯化合物を形成する触媒成分金属との結合力の強さを示すキレート安定度数が5〜40の範囲にあることを特徴とする請求項3に記載される燃料電池用電極触媒の製造方法。
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