JP4962055B2 - 冷間圧延方法および冷間圧延装置 - Google Patents
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なお、冷間圧延におけるエマルション圧延油の供給方式には、直接式圧延油供給方式(ダイレクト方式という)と循環式圧延油供給方式(リサーキュレーション方式)とがある。
そのため、従来の循環方式では、特に仕上板厚が0.2mm以下の薄物材の高速圧延時には潤滑不足となり、チャタリングと呼ばれる圧延機の振動や、ヒートスクラッチと呼ばれる表面庇が発生するため、圧延速度を上げられないという問題があった。
この点については、ノズルから鋼板までのスプレー距離を縮めることで鋼板に到達する圧延油量を増加させることはできるが、圧延時にストリップ破断が生じた場合には、スプレーヘッダーが被災する危険性がある。
(1) 圧延油原液をミスト化する時の供給条件、特に圧縮気体の圧力が高まると、圧縮気体によるせん断効果によって圧延油原液が小径化するため、霧化しやすい状態となり、周囲に飛散してしまう。しかしながら、霧化した圧延油原液が周囲に飛散しないように、ミストノズルの外周に周囲の大気と遮断するための気体噴流(副流)を噴射するようにすれば、この副流が気体壁となるため、圧延油原液の飛散が効果的に抑制され、ミストノズルから供給された圧延油原液を効率よくストリップやロールバイトに供給させることができる。
(2) 高速圧延域では、圧延速度の上昇とともにスプレー時間が短くなり、鋼板の単位面積当たりの供給圧延油量が減少するため、プレートアウト特性の高いニート潤滑を用いることが効果的である。
(3) 圧延油原液の飛散による供給ロスが解消されるため、圧延速度や鋼種、サイズ、圧延サイクルといった圧延条件に応じてスプレー供給条件を変更しても、圧延油原液の供給ロスなしに、目的とする供給油量に設定された圧延油原液をストリップやロールバイトに均一に付着させることができる。
(4) ニート潤滑であるため、従来のエマルション潤滑のようにプレートアウト量を確保するための油膜形成時間、すなわちエマルションが供給されてから送板速度に応じてロールバイトに到達するまでの時間の設定が不要となる。従って、圧延機内でのスプレー位置の制約を受けることなく、潤滑性を向上させることができる。
(5) 圧延油原液が圧延機ミル周りに飛散しないため、作業環境の改善が図れるだけでなく、飛散圧延油による火災発生の危険性を低減することができる。
本発明は上記の知見に立脚するものである。
1.冷間圧延において圧延油原液を圧延スタンド入側に供給するに際し、2流体ノズルヘッダーを用いるものとし、この2流体ノズルヘッダーの主ノズルから、圧延油原液をストリップまたはロールバイト入側にミスト状で噴射すると同時に、該主ノズルの外周に設けられた副ノズルから、該ミスト状の圧延油原液を周囲の大気と遮断するための圧縮気体を噴射することを特徴とする冷間圧延方法。
図1は、本発明に係る圧延油供給装置の好適例の構成概要図であり、全5スタンドの循環式圧延油供給タンデムミルの各スタンド間に圧延油原液ミストの供給を適用した場合である。この例で、圧延油原液ミストの供給を各スタンド間としたのは、従来設備の能力不足を安価な改造で改善する目的ならびに高強度鋼板等の難圧延材対策としてスポット的に使用する目的で、本発明を従来の冷間圧延方法に適用する場合を想定したからである。
なお、本発明において、圧延油原液ミストの供給を適用する圧延機スタンドは、単スタンドの場合にはそのスタンドに、また複数スタンドの場合は、全部のスタンドまたは任意のスタンドのいずれでもよい。
循環式圧延油供給タンク5内には、温水および圧延油原液が収容され、混合される。収容された混合物は、撹拌機12の撹拌羽の回転数を調整することにより所望の平均粒径を有するエマルション圧延油とされる。エマルション圧延油は、エマルション供給用ポンプ6によりポンプ圧送され、ライン7を経由してNo.1〜5の各スタンドに供給され、各スタンド入側の潤滑用スプレーヘッダー4aおよび各スタンド出側の冷却用スプレーヘッダー4bからそれぞれロールバイトおよびワークロールに向けてスプレー供給される。供給されたエマルション圧延油のうち、ストリップ3から落下した分は、回収オイルパン10で回収され、戻り配管11を経由してタンク5内に戻される。このエマルション圧延油のスプレー供給は、圧延開始時から行われる。
流量制御弁9で所定流量に調整された圧延油原液は、ミストノズルヘッダー20に送られる。ミストノズルヘッダー20で使用される気体は、コンプレッサー19を介して気体供給ライン18により圧送され、ミストノズルヘッダー20に供給される。ミストノズルヘッダー20は、ストリップ3の上方および下方の両方に位置するように分岐して配置されており、供給されてきた所定流量の圧延油原液をストリップ3の表面に向けて単独または複数のノズルから噴射可能となっている。ここで、圧縮気体としては、N2ガス、H2ガス、エアー、Arガス、Heガス等の単体または混合気体が有利に適合する。
また、圧延油原液の飛散が解消されることで圧延機ミル周りに付着する圧延油原液が低減し、作業環境が改善されるだけでなく、火災発生の危険性を軽減することができる。
さらに、副噴流を備えたミストノズルにより、所定流量の圧延油原液を広範囲かつ目標角度で噴射することが可能になるため、ストリップ3表面でのプレートアウトは均一となり、安定した潤滑性を得ることができる。
またさらに、ニート潤滑であるため、従来のエマルション潤滑のようにプレートアウト量を確保するための油膜形成時間、すなわちエマルションが供給されてから送板速度に応じてロールバイトに到達するまでの時間が、不要となる。従って、圧延機内でのスプレー位置の制約を受けることなく、潤滑性を向上させることができる。
なお、図示していないが、スタンド間にはテンションロールやデフロールが設置されており、これよりも上流側で圧延油原液ミストをスプレーしてもテンションロールやデフロールにより絞られるため、十分なプレートアウト量を得ることができない。これを回避するために、この例では、スタンド間のテンションロールおよびデフロールの下流側にミストノズルヘッダー20を設置したのである。
また、上記圧延油原液タンク13は、通常、従来の冷間圧延方法でクーラントの補給に用いられる圧延油原液タンクと同一であるので、本発明では新たなタンクを設置する必要はない。
なお、上記の例では、5スタンドのスタンド間に適用する場合について主に説明したが、圧延油原液ミストの供給は、圧延機の単スタンドのみに適用しても良いし、複数スタンドのうちの全部または任意の複数のスタンドに適用しても良い。また、ミル形式についても、リバースミルまたはクラスターミル等などの形式の圧延機および調質圧延機でも適用可能である。さらに、ストリップとしては、金属製であれば特に制限はなく、鋼帯、ステンレス帯、アルミニウム帯および銅帯等などのストリップいずれにも適合する。
本実施例では、ミストノズルヘッダー20からの圧延油原液供給は、供給条件調整用コントローラー16により圧延条件に応じた供給油量制御が可能な状態とし、各コイルについて、ミストノズルヘッダー20から供給される圧延油原液量を制御した。
なお、比較例では、本実施例と同じ圧延サイクルを組み、ミストノズルヘッダー20からの副噴流25はOFFとした上で、実施例1と同等の圧延荷重、摩擦係数となるようにミストノズルヘッダー20からの供給油量を制御する以外は、実施例1と同様にして冷間圧延を行った。
図3に示したように、本発明を適用した場合には、所定の圧延条件に達するまでの圧延油原液の使用量が比較例よりも少なくて済み、圧延油原単位の向上を図ることができた。なお、比較例で圧延油原液の使用量が多くなったのは、周囲に飛散してしまう圧延油原液ミストのロス分が含まれているためである。
図4から明らかなように、比較例に比べると、実施例1の油分付着量は少なく、ミル周りに圧延油が飛散していないことが確認された。
かくして、本発明によれば、圧延油原単位と潤滑性とを両立させた上で、作業環境にも優れた冷間圧延を実施できることが分かる。
2 バックアップロール
3 ストリップ
4a 潤滑用クーラントヘッダー
4b 冷却用クーラントヘッダー
5 循環式圧延油供給タンク
6 エマルション供給用ポンプ
7 圧延油供給ライン
8 流量制御弁
9 流量制御弁
10 回収オイルパン
11 戻り配管
12 アジテ一夕
13 圧延油原液タンク
14 圧延油原液用ギアポンプ
15 圧延油原液供給ライン
16 供給条件調整用コントローラー
17 速度計
18 気体供給ライン
19 コンプレッサー
20 ミストノズルヘッダー
21 主ノズル
22 副ノズル
23 仕切り管
24 圧延油原液ミスト
25 副噴流
Claims (3)
- 冷間圧延において圧延油原液を圧延スタンド入側に供給するに際し、2流体ノズルヘッダーを用いるものとし、この2流体ノズルヘッダーの主ノズルから、圧延油原液をストリップまたはロールバイト入側にミスト状で噴射すると同時に、該主ノズルの外周に設けられた副ノズルから、該ミスト状の圧延油原液を周囲の大気と遮断するための圧縮気体を噴射することを特徴とする冷間圧延方法。
- 圧延スタンドの入側に、圧延油を供給する圧延油供給装置をそなえる冷間圧延装置にお
いて、該圧延油供給装置が、2流体ノズルヘッダーをそなえ、この2流体ノズルヘッダーは、圧延油原液をミスト状で噴射する主ノズルと、主ノズルの外周に設けられ、主ノズルから噴射されたミスト状の圧延油原液を周囲の大気と遮断するための圧縮気体を噴射する副ノズルとを備えていることを特徴とする冷間圧延装置。 - 前記主ノズルが、ストリップ幅方向に噴射角度を有するノズルからなることを特徴とす
る請求項2記載の冷間圧延装置。
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