JP4905056B2 - 金属板の冷間圧延方法及び冷間タンデム圧延機 - Google Patents

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Description

本発明は、循環給油方式の冷間タンデム圧延機を用いて鋼板を圧延する際の金属板の冷間圧延方法、特に冷間圧延前の0.2%耐力が220MPa以上の高強度鋼板の高圧下圧延が可能な金属板の冷間圧延方法及び冷間タンデム圧延機に関する。
鋼板を冷間圧延する際には、圧延中の鋼板とロールとの間に生ずる摩擦を低減させるための潤滑剤として、また、圧延時に生ずる摩擦発熱および加工発熱により高温となったロールならびに鋼板の冷却を行うための冷却剤として潤滑油が用いられる。ここで、通常の冷間圧延においては、前記潤滑油としてエマルション圧延油が用いられる。なお、エマルションとは、圧延油の粒子が水に安定して懸濁した状態の混合液体をいう。エマルションは濃度及び平均粒径で特徴づけられる。エマルション濃度とは、エマルション全体積中の油分体積の比率である。平均粒径とは、エマルション中の圧延油の粒子の平均径である。また、エマルションを作成するためには界面活性剤を添加する。その添加量は圧延油量に対する質量濃度(対油濃度)で所定量添加し、攪拌器及びポンプによるせん断を加えることによりエマルションの平均粒径を調整する。
冷間圧延時における前記エマルション圧延油の供給方式としては、エマルション圧延油を循環使用しない直接給油方式(ダイレクト方式)、エマルション圧延油を循環させながら潤滑と冷却を行う循環給油方式(リサーキュレーション方式)、およびその折衷であるハイブリッド方式が知られている。
図5は、従来技術に係る5スタンドを有する冷間タンデム圧延機における循環給油方式によるエマルション圧延油の供給方法を示した図である。図5に示す冷間タンデム圧延機は、鋼板1を、入側から第1〜第5の5スタンドの圧延機(鋼板の入側から2a〜2e)により連続的に圧下を行うものである。エマルション圧延油のクリーンタンク20には循環使用されるエマルション圧延油10が蓄えられており、循環系統の配管8を通じて各スタンドに供給される。
循環給油方式とは、圧延油を濃度1〜5質量%に希釈し、界面活性剤を用いて水に油が分散したO/Wエマルションにしたエマルション圧延油を循環使用する方式をいう。循環給油方式では、各スタンドのロールバイト入側において潤滑のためのスプレーノズルを備えると共に、圧延ロールに冷却用のスプレーノズルを備えるのが通常であり、潤滑用スプレーと冷却用スプレーとを同一のエマルション圧延油によって行うものである。
このとき循環使用されるエマルション圧延油10としては、種々のエマルション濃度、平均粒径のものを使用し得るが、代表例としてはエマルション濃度1.5%、平均粒径8μm程度のものを使用することができる。このエマルション圧延油には、2質量%のノニオン系界面活性剤が含有されており、配管8に配置されるポンプやスプレーノズルにおけるせん断によって、安定なO/Wエマルションのまま循環使用される。
循環使用するエマルション圧延油を供給するためのスプレーノズルの配置位置は、対象材の種類、圧延速度等によって異なるが、図5に示す例では、すべてのスタンド入側に、潤滑用として供給されるエマルション圧延油10のスプレーノズル3a〜3eが、それぞれロールバイトに向けてエマルション圧延油10が供給されるように配置されている。また、同一のエマルション圧延油10が、第2,第3,第4スタンド出側に配置されるスプレーノズル4b〜4d、及び、第4,第5スタンド入側に配置されるスプレーノズル5d,5eからそれぞれの圧延ロールを冷却するために供給される。
ここで、冷間タンデム圧延機においては、後段スタンドほど圧延速度が速く板温度が上昇するのに対応して、後段スタンドほど供給されるエマルション圧延油の流量を増加させるのが通常である。なお、図5に示す例では、潤滑のために供給されるエマルション圧延油用のスプレーノズル3a〜3eからは、鋼板の表裏面でスプレー流量1000〜2500L/minのエマルション圧延油が供給され、また、ロール冷却のために供給されるエマルション圧延油用のスプレーノズル4b〜4d,5d,5eからは、スプレー流量2000〜4000L/minのエマルション圧延油が供給されており、冷間タンデム圧延機全体で循環使用されるエマルション圧延油の循環量としては、おおよそ25000L/minとなっている。
前記各スタンドに供給されるエマルション圧延油10のうち、鋼板によって系外に持ち出されたり、蒸発によって失われるエマルション圧延油を除いて、大部分のエマルション圧延油はオイルパン6によって回収される。この回収されたエマルション圧延油には圧延時の摩耗粉等が混入しているため、一旦ダーティタンク21に蓄えられ、浮上油などが除去された後に、クリーンタンク20に送られる。ここで、前記ダーティタンク21とクリーンタンク20の間には、鉄粉等の混入物を除去するためのフィルター装置22としてホフマンフィルター、電磁フィルター等のフィルターが複数組み合わされたものが設置され、循環使用されるエマルション圧延油中の異物が除去される。
一方、近年において、自動車車体の軽量化や衝突安全性の向上のために高強度鋼板が積極的に採用されるようになってきている。しかし、高強度鋼板は、普通鋼に比べて変形抵抗が大きいため、冷間圧延における圧延荷重の増大により、鋼板の形状に乱れが生じ、絞りによる板破断等の問題が生じる場合がある。
また、冷間圧延における圧延荷重を軽減するためには、冷間圧延前の鋼板の板厚を薄くして冷間タンデム圧延機でのトータル圧下率を下げる必要があるが、この場合には上工程である熱間圧延工程での圧延負荷が増大すると共に、熱延鋼板のコイル長が長くなることにより酸洗工程での生産性が低下するという問題が生じる。さらに、冷間タンデム圧延機でのトータル圧下率を低く抑えると、製品のランクフォード値が低下してプレス成形における成形性が低下するという問題が生じる。
さらに、高強度鋼板の圧延では、前述した鋼板の形状が乱れることによる板破断の懸念や、高圧延負荷によるモーターのトルク制約から、軟質鋼板の場合よりも圧延速度が低く抑えられる。低速圧延状態では、ロールバイトへの圧延油の引き込み量が低下して潤滑性に劣ることが知られており、高強度鋼板の圧延では、低速圧延域での潤滑性の向上が課題となっている。
このような問題に対しては、例えば特開2005−95928号公報(特許文献1)において、第1スタンドのワークロールの表面粗度を通常よりも低下させること、及び、第1スタンド入側においてテフロンパウダー(登録商標)を噴霧又は塗布することによって、摩擦係数を低下させて圧延荷重を減少させる対策が開示されている。
特開2005−95928号公報
しかし、上記特許文献1に開示されている圧延ロールの表面粗度として、特に第1スタンドの圧延ロールの表面粗度を低下させる方法は、鋼板の蛇行を誘発する危険性が高くなり、板形状の乱れにより板破断等の操業トラブルを生じる場合がある。
また、第1スタンド入側においてテフロンパウダーを噴霧又は塗布するためには、テフロンパウダーが周囲に飛散しないようにするためのチャンバーを設置したり、乾燥装置を設置する必要があり、設備コストの増大を招くという問題がある。さらに、前記チャンバーのシール部の劣化によるテフロンパウダーの飛散や、乾燥装置により乾燥したテフロンパウダーが落下して周囲に移着する可能性がある。この場合、高強度鋼板以外の普通鋼を圧延する場合のように、潤滑性能を高める必要がないためテフロンパウダーを噴霧又は塗布する必要はないものに関しても、周囲に飛散したテフロンパウダーが搬送ロール等に付着して、それが普通鋼の表面に部分的に付着することで鋼板の蛇行や形状の乱れを生じさせる場合がある。
また、圧延途中に鋼板から剥離したテフロンパウダーが循環しているエマルション圧延油中に混入してエマルションの安定性を阻害する場合がある。さらに、テフロンパウダーにより循環系統のフィルターが目詰まりを起こして、圧延油中から金属粉を除去するというフィルター機能が十分発揮できず、鋼板に表面疵を発生させるという問題がある。さらに、テフロンパウダーの使用量が増大すると、ランニングコストの増大を招くという問題がある。
そこで本発明は、設備コスト及びランニングコストを増大させること無く、低速圧延状態であっても高強度鋼板の冷間タンデム圧延における圧延スタンドの潤滑性を安定的に向上させて圧延負荷を軽減させることで、高強度鋼板の高圧下圧延を可能とする冷間タンデム圧延方法及び冷間タンデム圧延機を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は以下のような特徴を有する。
[1]冷間圧延前の0.2%耐力が220MPa以上の金属板を循環給油方式の冷間タンデム圧延機により圧延する金属板の冷間圧延方法であって、少なくとも一つの圧延スタンドの入側に、循環使用される第1のエマルション圧延油と比較して、平均粒径が1.5倍以上であり、且つ、エマルション濃度が2倍以上である第2のエマルション圧延油を、前記第1のエマルション圧延油とは別系統により供給することを特徴とする金属板の冷間圧延方法。
[2]上記[1]において、第2のエマルション圧延油に含有される界面活性剤を、第1のエマルション圧延油に含有される界面活性剤に対して同一種類且つ低い対油濃度とすると共に、冷間タンデム圧延機から回収したエマルション圧延油に界面活性剤を追加添加することにより前記第1のエマルション圧延油に含有される界面活性剤の対油濃度を調整することを特徴とする金属板の冷間圧延方法。
[3]上記[1]又は[2]において、第2のエマルション圧延油を、圧延スタンド間の金属板表面であって、金属板に付着したエマルション圧延油が下流側圧延スタンドのロールバイトに到達するまでの時間が0.1秒以上となる位置に供給することを特徴とする金属板の冷間圧延方法。
[4]冷間圧延前の0.2%耐力が220MPa以上の金属板を循環給油方式の冷間タンデム圧延機により圧延する金属板の冷間圧延方法であって、少なくとも一つの圧延スタンドの入側に、循環使用される第1のエマルション圧延油に含有される圧延油のニート油を、前記第1のエマルション圧延油とは別系統により供給することを特徴とする金属板の冷間圧延方法。
[5]上記[1]乃至[3]のいずれかに記載の第2のエマルション圧延油または上記[4]に記載のニート油を、2流体ノズルにより噴射することを特徴とする上記[1]乃至[4]のいずれかに記載の金属板の冷間圧延方法。
[6]上記[1]乃至[3]のいずれかに記載の第2のエマルション圧延油または上記[4]に記載のニート油の供給位置と、その下流側圧延スタンドのロールバイト入側との間の金属板表面には、第1のエマルション圧延油を供給しないことを特徴とする上記[1]乃至[5]のいずれかに記載の金属板の冷間圧延方法。
[7]循環給油方式の冷間タンデム圧延機において、少なくとも一つの圧延スタンドの入側に、循環使用される第1のエマルション圧延油とは別系統の第2のエマルション圧延油を供給するための供給手段を備えると共に、前記第1のエマルション圧延油の循環系統の途中に、界面活性剤を追加添加する手段を備え、前記第2のエマルション圧延油の供給手段を、金属板に付着した圧延油が下流側圧延スタンドのロールバイトに到達するまでの時間が0.1秒以上となる位置に配置したことを特徴とする冷間タンデム圧延機。
[8]上記[7]において、第2のエマルション圧延油を供給するための供給手段に2流体ノズルを用いることを特徴とする冷間タンデム圧延機。
[9]循環給油方式の冷間タンデム圧延機において、少なくとも一つの圧延スタンドの入側に、循環使用される第1のエマルション圧延油とは別系統の第2のエマルション圧延油を供給するための供給手段を備えると共に、前記第1のエマルション圧延油の循環系統の途中に、界面活性剤を追加添加する手段を備え、前記第2のエマルション圧延油を供給するための供給手段に2流体ノズルを用いることを特徴とする冷間タンデム圧延機。
[10]循環給油方式の冷間タンデム圧延機において、
少なくとも一つの圧延スタンドの入側に、循環使用される第1のエマルション圧延油に含有される圧延油のニート油を、前記第1のエマルション圧延油とは別系統により供給するための供給手段を備え、該供給手段に2流体ノズルを用いることを特徴とする冷間タンデム圧延機。
本発明によれば、圧延速度が高い場合だけでなく、低速圧延状態であっても、高強度鋼板の冷間タンデム圧延における潤滑性を向上させて圧延負荷を軽減させることで、高強度鋼板の高圧下圧延を可能とする冷間タンデム圧延方法及び冷間タンデム圧延機が提供される。
以下、本発明を実施するための最良の形態の一例を説明する。
図1は、本発明に係る複数スタンドを有する循環給油方式の冷間タンデム圧延機の概略構成の一例を示した図である。なお、図1は、鋼板の入側から第1〜第5の5スタンドの圧延機(鋼板の入側から2a〜2e)を有する冷間タンデム圧延機の場合を示している。
図1に示す冷間タンデム圧延機は、上述の図5で示した従来技術に係る冷間タンデム圧延機において潤滑のためにスタンド入側に供給されるエマルション圧延油10(第1のエマルション圧延油)のスプレーノズル3a〜3eの代わりに、スタンド入側の鋼板表面にエマルション圧延油13(第2のエマルション圧延油)を供給するためのノズルであるスプレーノズル9a〜9eが配置された構成となっている。そして、前記スプレーノズル9a〜9eには、循環使用されるエマルション圧延油10の供給系統とは別系統のエマルション圧延油13が供給される。
前記エマルション圧延油13は、貯蔵タンク11内に貯蔵され、この貯蔵タンク11内に設けられた攪拌器であるアジテータ12の攪拌回転数を調整することでエマルション圧延油13の平均粒径の調整が行われる。なお、前記アジテータ12の攪拌回転数を上げていくことによりエマルション圧延油13の平均粒径は小さくなっていく。
前記貯蔵タンク11内に貯蔵されるエマルション圧延油13は、ポンプ15により抜き出され配管14を通して前記スプレーノズル9a〜9eから鋼板1表面に供給される。
ここで、前記貯蔵タンク11、アジテータ12、配管14、ポンプ15、スプレーノズル9a〜9eにより前記エマルション圧延油13の供給手段が構成される。
また、図1に示すように、クリーンタンク20内に貯蔵される前記エマルション圧延油10は、ポンプ23により抜き出され、配管8を通して、第2,第3,第4スタンド出側に配置されるスプレーノズル4b,4c,4d、及び、第4,第5スタンド入側に配置されるスプレーノズル5d,5eからそれぞれの圧延ロールを冷却するために圧延機内に供給される。
前記スプレーノズル9a〜9eから供給されたエマルション圧延油13及び前記スプレーノズル4b,4c,4d,5d,5eから供給されたエマルション圧延油10は、鋼板によって系外に持ち出されたり、蒸発によって失われたものを除いて、オイルパン6により回収される。この回収されたエマルション圧延油は、回収配管7により一旦ダーティタンク21に蓄えられ、浮上油などが除去された後に、ポンプ24によりクリーンタンク20に送られる。ここで、前記ダーティタンク21とクリーンタンク20の間には、鉄粉等の混入物を除去するためのフィルター装置22が設置され、循環使用されるエマルション圧延油中の異物が除去される。ここで、前記フィルター装置22としては、例えば、ホフマンフィルター、電磁フィルター等のフィルターが複数組み合わされたものを用いることができる。
なお、前記クリーンタンク20、ポンプ23、配管8、スプレーノズル4b,4c,4d,5d,5e、オイルパン6、回収配管7、ダーティタンク21、ポンプ24、フィルター装置22により供給されたエマルション圧延油10,13を回収し循環させるための循環系統が構成される。
また、本発明に係る冷間タンデム圧延機においては、供給されたエマルション圧延油を回収し循環させるための循環系統の途中に、界面活性剤を追加添加する手段25を備えることが好ましい。これにより、前記循環使用されるエマルション圧延油に含有される界面活性剤の対油濃度を調整することが可能となるからである。
循環使用されるエマルション圧延油に含まれる界面活性剤の濃度が経時的に減少すると、循環使用されるエマルション圧延油の安定性を低下させることになる。そのため、前記界面活性剤を追加添加する手段25を循環系統の途中、例えば、エマルション圧延油の循環系統の途中に設けられたフィルター装置22とクリーンタンク20との間の配管に接続して、循環使用されるエマルション圧延油中で不足する界面活性剤を追添加するようにする。ここで、前記界面活性剤を追加添加する手段25としては、例えば、界面活性剤の貯蔵タンク、追加する界面活性剤の流量を調整する調整弁等により構成することができ、循環使用されるエマルション圧延油中の界面活性剤の濃度やエマルションの粒径分布の変化等に応じて、界面活性剤の追加量を決定することができる。
また、本発明に係る冷間タンデム圧延機においては、前記エマルション圧延油13の供給手段を、鋼板表面に付着した圧延油が下流側圧延スタンドのロールバイトに到達するまでの時間が0.1秒以上となる位置に配置することが好ましい。ここでは、鋼板表面にエマルション圧延油13を供給するための供給手段を構成するスプレーノズル9a〜9eを、それぞれのノズルから鋼板表面に供給され、付着したエマルション圧延油13が、それぞれ下流側圧延スタンドのロールバイトに到達するまでの時間が0.1秒以上となる位置に配置する。なお、通常の冷間タンデム圧延機では、圧延の最高速度は1300mpm程度であるので、この場合でも前記スプレーノズル9a〜9eからそれぞれの後段側のロールバイトまでの距離を2.2m以上とすればよい。
ここで、本発明においては、上述のスプレーノズル9a〜9eとして2流体ノズル(「気水ノズル」ともいう。以下同じ。)を用いることが好ましい。ここで、前記2流体ノズルとは、ノズル内部で空気と液体とを混合させることにより、液体を微粒子化して噴射するノズルである。
なお、前記2流体ノズルを用いることが好ましい理由は以下による。つまり、液圧のみで液体を噴射する従来の1流体ノズルでは、スプレーの噴射面積が狭いため、エマルションの液滴同士の干渉が大きくなり、鋼板表面へのエマルション圧延油13の付着効率が低下する。なお、同じ1流体ノズルでも、例えば、フルコーンノズルのようにスプレーの噴射面積が広いノズルも存在するが、噴射面積内の流量分布が不均一となる点から前記スプレーノズルには適さない。これに対し、上述の2流体ノズルは、スプレーの噴射面積を主に空気の噴射形状によりコントロールできるため、噴射面積や流量分布の変化を小さくすることができる。その結果、エマルション圧延油の流量が変化しても、エマルション圧延油中の油分が鋼板表面に付着して油膜を形成(以下、この現象を「プレートアウト」と呼ぶ)する際の油膜形成能力の均一性に影響を与えない。また、少ない噴射流量域でも噴射面積が変化しにくいため、流量密度(単位面積当たりに噴射されるエマルション圧延油の量)を低く保つことが可能となる。
また、前記プレートアウトとは、エマルション圧延油が鋼板表面にスプレーされた時に、水分を排除しながら油分が優先的に鋼板表面に付着する現象であるが、エマルション圧延油が鋼板表面に衝突する際、油滴の周囲に水が多く存在する状況では、一旦、鋼板表面に油膜を形成しても、再乳化等によりプレートアウトが阻害されてしまう。しかし、スプレーノズル9a〜9eに2流体ノズルを用いることで、エマルション圧延油を均一に噴射できる面積が拡大されるため、油滴の周囲に水が相対的に少ない状態となり、プレートアウトの阻害が抑制される。
以上の本発明に係る冷間タンデム圧延機の実施形態においては、全スタンドの入側に、エマルション圧延油13を供給するためのスプレーノズル9a〜9eを配置した場合について説明したが、圧延負荷を軽減する必要のあるスタンドだけに限定してエマルション圧延油13を供給するためのスプレーノズルを配置してもよい。
また、図5の従来技術に係る循環給油方式の冷間タンデム圧延機におけるスプレーノズル3a〜3eが図1においては記載されていないが、従来技術に係る循環給油方式の冷間タンデム圧延機に上述のスプレーノズル9a〜9eを追加する形態でもよい。
さらに、図1においては5スタンドの圧延機を有する冷間タンデム圧延機について示したが、前記5スタンドの場合に限られず本発明を適用することができる。
上記図1のような構成の冷間タンデム圧延機において、本発明に係る冷間タンデム圧延方法の一実施形態は、冷間圧延前の0.2%耐力が220MPa以上の鋼板を循環給油方式の冷間タンデム圧延機により圧延する金属板の冷間圧延方法であって、少なくとも一つの圧延スタンドの入側(ここでは第1〜第5の全てのスタンドの入側)に、循環使用されるエマルション圧延油10(第1のエマルション圧延油)と比較して、平均粒径が1.5倍以上であり、且つ、エマルション濃度が2倍以上であるエマルション圧延油13(第2のエマルション圧延油)を、前記循環使用されるエマルション圧延油10とは別系統により供給することを特徴とするものである。
前記循環使用されるエマルション圧延油10は、圧延中に生ずる摩耗粉や圧延機の作動油等が混入して、経時的にエマルションの安定性が低下する。そのため、循環系統にはフィルター装置22が備えられると共に、エマルション圧延油中に含有される界面活性剤の種類や添加量が適宜調整され、外乱に対しても安定なエマルションが形成されるようなエマルション圧延油が選択される。
ここで、前記エマルション圧延油を構成する圧延油としては、通常の冷間圧延に用いられるものとして、天然油脂、脂肪酸エステル、炭化水素系合成潤滑油のいずれかを基油としたものを用いることができる。例えば、前記天然油脂としては、鉱物油、パーム油等の植物油や牛脂等の動物油を用いることができる。また、前記脂肪酸エステルとしては、一価アルコールと二価脂肪酸とのエステルであるジエステルや、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールと一価脂肪酸との組合せによるポリオールエステル等を用いることができる。また、前記炭化水素系合成潤滑油としては、種々の粘度を得ることができるポリ−α−オレフィン等を用いることができる。さらに、これらの圧延油には、油性向上剤、極圧添加剤、酸化防止剤などの通常の冷間圧延油に用いられる添加剤を加えても良い。
また、前記界面活性剤としては、イオン系、非イオン系のいずれを用いても良く、通常の循環式クーラントシステムに使用されるものを用いればよい。
一例として、例えば前記循環使用されるエマルション圧延油10としては、圧延油を濃度1〜5質量%に希釈し、界面活性剤を用いて水に油が分散したO/Wエマルションにしたものが用いられる。また、その平均粒径としては5μm〜12μm程度、エマルション濃度としては1.2%〜2.0%程度のものを用いることができる。なお、上述のように前記エマルション圧延油13としては、前記循環使用されるエマルション圧延油10と比較して、平均粒径が1.5倍以上であり、且つ、エマルション濃度が2倍以上のものが用いられる。
前記エマルション圧延油10と比較して平均粒径が大きなエマルション圧延油13は、水と圧延油とを混合する際に攪拌器により付与する機械的エネルギーをエマルション圧延油10の調整時よりも低減させることで調製することができる。また、前記エマルション濃度は、エマルション全体積中の油分体積の比率を調整することで行うことができる。
ここで、各スタンドの入側に、循環使用されるエマルション圧延油10よりも平均粒径が大きく且つエマルション濃度が高濃度のエマルション圧延油13を供給するのは、エマルション圧延油中の油分が鋼板表面に付着して油膜を形成(以下、この現象を「プレートアウト」と呼ぶ)する際の油膜形成能力を向上させ、エマルション圧延油10を用いた場合よりも厚い油膜を形成可能とすることで、ロールバイトへの圧延油の引込み量を増加させ、圧延時の潤滑性能を向上させるためである。
なお、本発明においては、主として冷間圧延前の0.2%耐力が220MPa以上の金属板を対象とする。冷間圧延前の0.2%耐力が220MPa以上の金属板であれば金属の種類を問わないが、主に、冷間圧延、焼鈍、調質圧延により引張強度が390MPa以上となるような高強度鋼板を対象とする。本発明によれば、このような高強度の金属板を冷間圧延する場合においても、圧延負荷が軽減でき、高圧下圧延が可能となる。
また、本発明に係る冷間タンデム圧延方法においては、前記エマルション圧延油13に含有される界面活性剤を、循環使用されるエマルション圧延油10に含有される界面活性剤に対して同一種類且つ低い対油濃度とすると共に、冷間タンデム圧延機から回収したエマルション圧延油に界面活性剤を追加添加することにより循環使用されるエマルション圧延油に含有される界面活性剤の対油濃度を調整することが好ましい。
前記循環使用されるエマルション圧延油10とは別系統により供給されるエマルション圧延油13は、鋼板の表面に供給されると、エマルション圧延油13中の油分が鋼板表面に付着して油膜を形成する。そして、鋼板表面に付着しなかったエマルション圧延油13中の油分はエマルション圧延油13の他の成分と共に循環使用されるエマルション圧延油10に混入して回収される。その際、混入するエマルション圧延油13中に含まれる界面活性剤の種類が、循環使用されるエマルション圧延油10中に含まれる界面活性剤と種類が異なると、循環使用されるエマルション圧延油10のエマルションの安定性を阻害する場合がある。そこで、本実施形態では、別系統により供給されるエマルション圧延油13に含まれる界面活性剤は、循環使用されるエマルション圧延油10の界面活性剤と同一種類とする。
さらに、前記別系統により供給されるエマルション圧延油13に含まれる界面活性剤の対油濃度は、循環使用されるエマルション圧延油10に含まれる界面活性剤の対油濃度よりも低いものとする。前記エマルション圧延油13に含まれる界面活性剤の対油濃度を前記エマルション圧延油10に含まれる界面活性剤の対油濃度よりも低くすることにより、エマルション圧延油13中の平均粒径をエマルション圧延油10中の平均粒径より大径化することが容易になり、エマルション圧延油13のプレートアウト性をより高めることが可能となるからである。
ただし、界面活性剤の対油濃度が低いエマルション圧延油13を別系統により供給しつづけると、循環使用されるエマルション圧延油10に含まれる界面活性剤の濃度が経時的に減少し、循環使用されるエマルション圧延油10のエマルションの安定性を低下させることになる。そのため、本実施形態においては、供給されたエマルション圧延油を回収し循環させるための循環系統の途中に界面活性剤を追加添加するものである。これにより、循環使用されるエマルション圧延油10中の界面活性剤の濃度を経時的に安定させることが可能となり、エマルションの安定性化を図ることが可能となる。
さらに、本発明に係る冷間タンデム圧延方法においては、前記エマルション圧延油13を、圧延スタンド間の鋼板表面であって、鋼板に付着したエマルション圧延油13が下流側圧延スタンドのロールバイトに到達するまでの時間が0.1秒以上となる位置に供給することが好ましい。
前記エマルション圧延油13は、鋼板表面に供給されることで、プレートアウトにより鋼板表面に油膜が形成されることになる。しかし、O/Wエマルションである前記エマルション圧延油13から水が排除され油膜が鋼板表面に形成されるまでには一定以上の時間的余裕が必要である。例えば、冷間圧延前の0.2%耐力が220MPa以上の高強度鋼板に対しては、鋼板表面にエマルション圧延油13が供給され、付着してからロールバイトへ到達するまでの時間を0.1秒以上確保することで、鋼板表面により安定な油膜を形成することができ、潤滑性をより向上させることが可能となる。
なお、図1に示す場合において、スプレーノズル9a〜9eからの前記エマルション圧延油13の供給流量は、図5に示した従来技術に係る冷間タンデム圧延機におけるスプレーノズル3a〜3eから供給されるエマルション圧延油10の流量の10分の1以下で十分であり、実用的には各スタンド共に鋼板の表裏面に合計で100L/min程度供給できるスプレーノズルとすればよい。
ここで、本発明においては、前記スプレーノズル9a〜9eに2流体ノズルを用いて、前記エマルション圧延油13を供給することが好ましい。上述したように、2流体ノズルは、スプレーの噴射面積を主に空気の噴射形状によりコントロールできるため、噴射面積や流量分布の変化を小さくすることができ、エマルション圧延油の流量が変化しても、プレートアウトの均一性に影響を与えない。また、少ない噴射流量域でも噴射面積が変化しにくいため、流量密度を低く保つことが可能となるため、再乳化等によるプレートアウトの阻害が抑制される。
なお、前記2流体ノズルを用いた場合、空気量を調節することによりエマルション圧延油の液滴に対するせん断圧力を変化させることができ、ノズルから噴射されるエマルション圧延油の平均粒径を変化させることができる。したがって、圧延油組成及び噴射条件によっては、2流体ノズルの空気量を調節することにより、別系統により供給されるエマルション圧延油13の平均粒径の制御を行うようにしても良い。
また、本発明に係る冷間タンデム圧延方法においては、前記エマルション圧延油13の代わりに、循環使用されるエマルション圧延油10に含有される圧延油のニート油を、前記エマルション圧延油10とは別系統により供給するようにしてもよい。ここでは、上述のエマルション圧延油13を供給して鋼板表面に油膜を形成する方法とは異なり、ニート油がエマルションとされることなく、そのまま鋼板の表面に供給される。ただし、鋼板の表面に付着しなかったニート油の一部が、循環使用されるエマルション圧延油10の循環系統に混入した場合に、前記エマルション圧延油10のエマルションの安定性を阻害しないように、前記ニート油としてはエマルション圧延油10に使用されているものと同一種類の圧延油を用いることが好ましい。
また、上記と同様の理由によりニート油中には循環使用されるエマルション圧延油10と同一種類で、同一の対油濃度の界面活性剤を含有させることが好ましい。
なお、ニート油の供給においては少量の圧延油を均一に供給することが好ましいため、多数のノズルによりミスト状のニート油を噴霧する方式で鋼板上に供給するようにすることが好ましい。ミスト状に噴霧する手段としては、液圧のみで噴霧するミストノズルを用いてもよいが、ミスト液滴径のバラツキ防止及び流量の制御性の観点から、上述の2流体ノズルを用いて噴霧を行うことが好ましい。
ここで、上記方法を実現するためには、図1に示す冷間タンデム圧延機において、貯蔵タンク11内にニート油を貯蔵して、スプレーノズル9a〜9eからはその貯蔵されたニート油が鋼板表面に供給される構成とすればよい。ただし、この場合にはアジテータ12は必要なく、前記スプレーノズル9a〜9eも鋼板の表面に必要な油膜を形成するために必要な分の油のみを供給するために、ミスト状に噴霧する方式が好ましく、その流量も10L/min以下程度のノズルを用いれば十分である。
また、本発明に係る冷間タンデム圧延方法においては、より高い潤滑性能を得るためには、循環使用されるエマルション圧延油10とは別系統により供給される前記エマルション圧延油13、または、循環使用されるエマルション圧延油10とは別系統により供給される前記ニート油の供給位置と、その下流側圧延スタンドのロールバイト入側との間の鋼板表面には、循環使用されるエマルション圧延油10を供給しないことが好ましい。
前記エマルション圧延油13または前記ニート油を供給することにより鋼板表面にはプレートアウトにより油膜が形成される。一方、従来技術に係る循環給油方式の冷間タンデム圧延機においては、図5に示すようにロールバイトに向けてエマルション圧延油10を供給するスプレーノズル3a〜3eが配置されており、潤滑のためにエマルション圧延油10が常時供給されている。
ここで、前記プレートアウトにより油膜が形成された後に、循環使用されるエマルション圧延油10を鋼板表面に供給すると、前記形成された油膜が洗い流されて、潤滑性が低下する場合がある。そのため、本発明においてはロールバイトに向けて従来使用していたエマルション圧延油10の供給を行わないこととすることが好ましい。これにより、循環使用されるエマルション圧延油10とは別系統により供給される前記エマルション圧延油13または前記ニート油により形成される鋼板表面の油膜量を低下させることなく、ロールバイト内に十分な油膜を形成させることが可能となる。なお、図5に示す従来技術に係る循環給油方式の冷間タンデム圧延機に上述のエマルション圧延油13またはニート油を供給するスプレーノズル9a〜9eを追加する構成の場合、前記スプレーノズル9a〜9eからエマルション圧延油13またはニート油を供給する必要のあるスタンドにおいては、前記スプレーノズル3a〜3eからエマルション圧延油10の供給を止めればよい。
また、前記エマルション圧延油13または前記ニート油を供給する位置から、次スタンドのロールバイト入側までの位置の間には、ロールバイトに向けて循環系のエマルション圧延油10を供給するスプレーノズルだけでなく、スタンド間に鋼板の冷却用スプレーが設置されエマルション圧延油10が供給される場合もある。このようなエマルション圧延油10も鋼板に対して供給しないことで、ロールバイト内に十分な油膜を形成させることができるため、供給しないようにすることが好ましい。
ただし、前記エマルション圧延油13または前記ニート油を供給する位置から次スタンドのロールバイト入側までの位置の間にエマルション圧延油10を供給しないと、鋼板の冷却が不足する場合もあるので、そのような場合にはエマルション圧延油10を供給するようにしてもよい。
以下、本発明例として、図5に示す従来技術に係る循環給油方式の冷間タンデム圧延機の第1〜第4スタンドの入側に、図1に示すエマルション圧延油13またはニート油を供給するスプレーノズル9a〜9dを配置した冷間タンデム圧延機について実施した結果について記載する。なお、スプレーノズル9a〜9dとしては1流体ノズルを用いた。
前記冷間タンデム圧延機は、5スタンドの4Hiミルであって、各ワークロール径は500〜560mmで、スピンドルを介して電動機により駆動されている。
循環使用されるエマルション圧延油10は、合成エステルをベースに植物油脂が添加された基油に対して、油性剤、酸化防止剤がそれぞれ1質量%ずつ添加され、界面活性剤としてノニオン系界面活性剤が対油濃度で3質量%添加されているものであり、温度50℃においてエマルション濃度1.5%、平均粒径8μmのエマルションを形成しているものを使用した。
なお、第5スタンドにエマルション圧延油13またはニート油を供給するスプレーノズル9eを配置しなかったのは、ここでは最終スタンドではダル加工したワークロールによって軽圧下圧延を行って表面粗度の調整を行っているので、最終スタンドでは高圧下を取る必要がないからである。また、本発明例では、スプレーノズル3a〜3eからエマルション圧延油10の供給も行った。
本発明例1,2、比較例1,2として、板厚2.8mm、板幅1650mmの熱延・酸洗コイルであって、冷間圧延前の0.2%耐力が240MPaの高強度鋼板に対する冷間圧延した例を示す。
下表1に、第1〜第4スタンドの入側から供給するエマルション圧延油13の条件を示す。なお、表1中の比較例2は、循環使用されるエマルション圧延油10のみを供給し、エマルション圧延油13を供給しなかった場合を示し、表中括弧内にはエマルション圧延油10の条件を示す。
図2は、上記の熱延・酸洗コイルを板厚0.65mmまで冷間圧延する場合に、最終スタンドの圧延速度が300mpmの条件における各スタンドの摩擦係数を調べた結果を示した図である。図2では、比較例2を基準として各条件における摩擦係数の比として表している。図からは、本発明例1,2において摩擦係数が低減していることがわかる。また、本発明例1,2からエマルション圧延油13の濃度が高いほど潤滑性が良好(摩擦係数低減効果が大きい)であること、比較例1のように高濃度のエマルション圧延油13を供給しても、平均粒径が循環使用されるエマルション圧延油10と同程度では摩擦係数低減効果が小さいことが分かる。
また、図3は、図2に示した場合と同条件での本発明例1,2、比較例1,2の各スタンドの圧延荷重比を調べた結果を示した図である。図3では、比較例2を基準として各条件における圧延荷重の比として表している。図からは、本発明例1,2において、圧延速度の低い第1スタンドであっても5%程度の圧延荷重低減効果が得られており、後段スタンドほどその効果が拡大していることが分かる。
この結果として、各スタンドにおけるワークロールベンダー等の形状制御アクチュエータによる形状制御効果が拡大して、鋼板の形状不良に伴う絞り等の操業トラブルが半減した。また、第1スタンドにおいてはトルクの低減効果が顕著に現れ、比較例2における圧延荷重と圧延トルクと同一の負荷をかけた場合においても、本発明例1,2においては、板厚0.65mmを得るための母材厚を2.8mmから3.1mmに増加させることができ、冷間タンデム圧延機での高圧下圧延が可能となることが確認された。
上記実施例1の場合と同様の構成の冷間タンデム圧延機を用いて第1〜第4スタンドの入側に配置したスプレーノズル9a〜9dから供給するエマルション圧延油13またはニート油の条件を変更して、第4スタンドにおける圧延荷重の低減効果を調べた結果を下表2に示す。なお、循環使用されるエマルション圧延油10の条件は、上記実施例1の場合と同様である。圧延材としては、製品強度が590MPa級の高強度鋼板であり、板幅1450mm、冷延後板厚は1.0mmのものを対象とした。ここで、条件F1のニート油噴霧ではスプレーノズル9a〜9dに2流体ノズルを使用し、その他は1流体ノズルを用いた。
上記表2から、エマルション圧延油13が高濃度で、かつ平均粒径が大きい場合に圧延荷重低減率が大きくなっていることが分かる。また、界面活性剤の対油濃度の低減、スプレーノズル9a〜9dの配置位置からロールバイトまでの距離を長くし、鋼板表面に供給されたエマルション圧延油13が後段側スタンドのロールバイトに到達するまでの時間を長くすること、潤滑用のエマルション圧延油10を供給するスプレーノズル3dを使用しないこと、によって荷重低減効果が大きくなっていることが分かる。
なお、本実施例2は、最終スタンドの圧延速度が300mpmの低速域における結果であるが、圧延速度が大きいほど、ロールバイトへの油膜の引込み効果が顕著になるので、荷重低減効果は拡大して、本発明例A1の条件の場合でも10%以上の荷重低減効果を得ることができることがわかる。
上記実施例2において、第1〜第4スタンドの入側に配置したスプレーノズル9a〜9dを1流体ノズルから2流体ノズルに変更し、プレートアウト性向上に伴うエマルション圧延油量の低減効果を調査した。表2中の条件からA2及びC2を例にとり、表2と同等の圧延荷重低減率を達成するための必要エマルション圧延油量を調べた。ここで、エマルションの濃度及び粒径は表2に記載の条件と同等に調整した。
結果を図4に示す。図4では1流体ノズル使用時のエマルション圧延油量を基準として、エマルション圧延油量の比として使用量を表している。図からはいずれの条件においても2流体ノズルを使用することで、1流体ノズル使用時よりも少ない流量で同等の圧延荷重低減を達成していることがわかる。つまり、スプレーノズル9a〜9dに2流体ノズルを用いることで、プレートアウト性の向上によるエマルション圧延油量の削減を図ることが可能であり、ひいては循環使用されるエマルション圧延油10への影響を最小限に抑えることができることがわかる。
本発明に係る複数スタンドを有する循環給油方式の冷間タンデム圧延機の概略構成の一例を示した図である。 実施例1において、熱延・酸洗コイルを板厚0.65mmまで冷間圧延する場合に、最終スタンドの圧延速度が300mpmの条件における各スタンドの摩擦係数を調べた結果を示した図である。 図2に示した場合と同条件での各スタンドの圧延荷重比を調べた結果を示した図である。 実施例3において、表2と同じ圧延荷重低減率を達成する際に必要なエマルション圧延油量について、1流体ノズル使用時との流量比を調べた結果を示した図である。 従来技術に係る5スタンドを有する冷間タンデム圧延機における循環給油方式によるエマルション圧延油の供給方法を示した図である。
符号の説明
1 鋼板
2a,2b,2c,2d,2e 圧延機
3a〜3e,4b〜4d,5d,5e,9a〜9e スプレーノズル
6 オイルパン
7 回収配管
8,14 配管
10,13 エマルション圧延油
11 貯蔵タンク
12 アジテータ
15,23,24 ポンプ
20 クリーンタンク
21 ダーティタンク
22 フィルター装置
25 界面活性剤を追加添加する手段

Claims (10)

  1. 冷間圧延前の0.2%耐力が220MPa以上の金属板を循環給油方式の冷間タンデム圧延機により圧延する金属板の冷間圧延方法であって、
    少なくとも一つの圧延スタンドの入側に、循環使用される第1のエマルション圧延油と比較して、平均粒径が1.5倍以上であり、且つ、エマルション濃度が2倍以上である第2のエマルション圧延油を、前記第1のエマルション圧延油とは別系統により供給することを特徴とする金属板の冷間圧延方法。
  2. 第2のエマルション圧延油に含有される界面活性剤を、第1のエマルション圧延油に含有される界面活性剤に対して同一種類且つ低い対油濃度とすると共に、冷間タンデム圧延機から回収したエマルション圧延油に界面活性剤を追加添加することにより前記第1のエマルション圧延油に含有される界面活性剤の対油濃度を調整することを特徴とする請求項1に記載の金属板の冷間圧延方法。
  3. 第2のエマルション圧延油を、圧延スタンド間の金属板表面であって、金属板に付着したエマルション圧延油が下流側圧延スタンドのロールバイトに到達するまでの時間が0.1秒以上となる位置に供給することを特徴とする請求項1又は2に記載の金属板の冷間圧延方法。
  4. 冷間圧延前の0.2%耐力が220MPa以上の金属板を循環給油方式の冷間タンデム圧延機により圧延する金属板の冷間圧延方法であって、
    少なくとも一つの圧延スタンドの入側に、循環使用される第1のエマルション圧延油に含有される圧延油のニート油を、前記第1のエマルション圧延油とは別系統により供給することを特徴とする金属板の冷間圧延方法。
  5. 請求項1乃至3のいずれかに記載の第2のエマルション圧延油または請求項4に記載のニート油を、2流体ノズルにより噴射することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の金属板の冷間圧延方法。
  6. 請求項1乃至3のいずれかに記載の第2のエマルション圧延油または請求項4に記載のニート油の供給位置と、その下流側圧延スタンドのロールバイト入側との間の金属板表面には、第1のエマルション圧延油を供給しないことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の金属板の冷間圧延方法。
  7. 循環給油方式の冷間タンデム圧延機において、
    少なくとも一つの圧延スタンドの入側に、循環使用される第1のエマルション圧延油とは別系統の第2のエマルション圧延油を供給するための供給手段を備えると共に、前記第1のエマルション圧延油の循環系統の途中に、界面活性剤を追加添加する手段を備え、前記第2のエマルション圧延油の供給手段を、金属板に付着した圧延油が下流側圧延スタンドのロールバイトに到達するまでの時間が0.1秒以上となる位置に配置したことを特徴とする冷間タンデム圧延機。
  8. 第2のエマルション圧延油を供給するための供給手段に2流体ノズルを用いることを特徴とする請求項7に記載の冷間タンデム圧延機。
  9. 循環給油方式の冷間タンデム圧延機において、
    少なくとも一つの圧延スタンドの入側に、循環使用される第1のエマルション圧延油とは別系統の第2のエマルション圧延油を供給するための供給手段を備えると共に、前記第1のエマルション圧延油の循環系統の途中に、界面活性剤を追加添加する手段を備え、前記第2のエマルション圧延油を供給するための供給手段に2流体ノズルを用いることを特徴とする冷間タンデム圧延機。
  10. 循環給油方式の冷間タンデム圧延機において、
    少なくとも一つの圧延スタンドの入側に、循環使用される第1のエマルション圧延油に含有される圧延油のニート油を、前記第1のエマルション圧延油とは別系統により供給するための供給手段を備え、該供給手段に2流体ノズルを用いることを特徴とする冷間タンデム圧延機。
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