JP4910771B2 - 金属板の冷間圧延方法 - Google Patents

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Description

本発明は、循環給油方式の冷間タンデム圧延機を用いて鋼板を圧延する際の金属板の冷間圧延方法、特に冷間圧延前の0.2%耐力が220MPa以上の高強度鋼板の高圧下圧
延が可能な金属板の冷間圧延方法に関する。
鋼板を冷間圧延する際には、圧延中の鋼板とロールとの間に生ずる摩擦を低減させるための潤滑剤として、また、圧延時に生ずる摩擦発熱および加工発熱により高温となったロールならびに鋼板の冷却を行うための冷却剤として潤滑油が用いられる。ここで、通常の冷間圧延においては、前記潤滑油としてエマルション圧延油(以下、単に「エマルション」とも呼ぶ)が用いられる。なお、エマルションとは、圧延油の粒子が水に安定して懸濁した状態の混合液体をいう。エマルションは濃度及び平均粒径で特徴づけられる。エマルションの濃度とは、エマルション全質量中の油分質量の比率である。平均粒径とは、エマルション中の圧延油の粒子の平均径である。また、エマルションを作成するためには界面活性剤を添加する。その添加量は圧延油量に対する質量濃度(対油濃度)で所定量添加し、攪拌器及びポンプによるせん断を加えることによりエマルションの平均粒径を調整する。
冷間圧延時における前記エマルション圧延油の供給方式としては、エマルション圧延油を循環使用しない直接給油方式(ダイレクト方式)、エマルション圧延油を循環させながら潤滑と冷却を行う循環給油方式(リサーキュレーション方式)、およびその折衷であるハイブリッド方式が知られている。
ここで、循環給油方式とは、圧延油を濃度1〜5質量%程度に希釈し、界面活性剤を用いて水に油が分散したO/Wエマルションにしたエマルション圧延油を循環使用する方式をいう。循環給油方式では、各スタンドのロールバイト入側において潤滑のための圧延油を供給するための供給手段を備えると共に、圧延ロールに冷却用の圧延油を供給するための供給手段を備えるのが通常であり、前記潤滑用と冷却用とを同一のエマルション圧延油によって行うものである。
図6は、従来技術に係る5スタンドを有する冷間タンデム圧延機における循環給油方式によるエマルション圧延油の供給方法を示した図である。図6に示す冷間タンデム圧延機は、鋼板1を、入側から第1〜第5の5スタンドの圧延機(鋼板の入側からNo.1〜No.5)により連続的に圧下を行うものである。
図6において、各スタンドの入側にはそれぞれ潤滑用クーラントヘッダー3が配置され、出側にはそれぞれ冷却用クーラントヘッダー4が配置されている。そして、循環使用されるエマルション圧延油30がそれぞれのクーラントヘッダー3,4に設けられたスプレーノズルから供給される構成となっている。この循環使用されるエマルション圧延油30は、循環式圧延油供給タンク5内に貯蔵され、循環系統の圧延油供給ライン7の途中に設けられたポンプ6により圧延油供給ライン7を通じて各スタンドに配置された前記クーラントヘッダー3,4に供給される。
このとき循環使用されるエマルション圧延油30としては、種々のエマルション濃度、平均粒径のものを使用し得るが、代表例としてはエマルション濃度1.5質量%、平均粒径8μm程度のものを使用することができる。このエマルション圧延油には、2質量%のノニオン系界面活性剤が含有されており、圧延油供給ライン7に配置されるポンプ6やスプレーノズルにおけるせん断によって、安定なO/Wエマルションのまま循環使用される。
前記各スタンドに供給されるエマルション圧延油30のうち、鋼板によって系外に持ち出されたり、蒸発によって失われるエマルション圧延油を除いて、大部分のエマルション圧延油は回収オイルパン9によって回収される。この回収されたエマルション圧延油は、戻り配管10により循環式圧延油供給タンク5に送られる。ここで、循環式圧延油供給タンク5内においては、攪拌機11の攪拌羽の回転数を調整することにより所望の平均粒径を有するエマルション圧延油とされる。
一方、近年において、自動車用鋼板の分野においては、自動車車体の軽量化や衝突安全性の向上のために高強度鋼板が積極的に採用されるようになってきている。しかし、高強度鋼板は、普通鋼に比べて変形抵抗が大きいため、冷間圧延における圧延荷重の増大により、鋼板の形状に乱れが生じ、絞りによる板破断等の問題が生じる場合がある。
また、冷間圧延における圧延荷重を軽減するためには、冷間圧延前の鋼板の板厚を薄くして冷間タンデム圧延機でのトータル圧下率を下げる必要があるが、この場合には上工程である熱間圧延工程での圧延負荷が増大すると共に、熱延鋼板のコイル長が長くなることにより酸洗工程での生産性が低下するという問題が生じる。さらに、冷間タンデム圧延機でのトータル圧下率を低く抑えると、製品のランクフォード値が低下してプレス成形における成形性が低下するという問題が生じる。
さらに、高強度鋼板の圧延では、前述した鋼板の形状が乱れることによる板破断の懸念や、高圧延負荷によるモーターのトルク制約から、軟質鋼板の場合よりも圧延速度が低く抑えられる。低速圧延状態では、ロールバイトへの圧延油の引き込み量が低下して潤滑性に劣ることが知られており、高強度鋼板の圧延では、低速圧延域での潤滑性の向上が課題となっている。
このような問題に対して、例えば、特公昭59−24888号公報(特許文献1)には、ヒートスクラッチを防止するために、高濃度のエマルション圧延油を別系統から供給して潤滑性を向上させる方法が開示されている。
また、特開2006−263772号公報(特許文献2)には、循環使用されるエマルション圧延油の他に、第2の圧延油供給系統から付着効率の高い大粒径のエマルション圧延油を2流体ノズルにより噴射させることにより、薄物材の高速圧延時に発生していた潤滑不足を解消する方法が開示されている。
特公昭59−24888号公報 特開2006−263772号公報
しかし、上記特許文献1に開示されているような、濃度10質量%以上の高濃度のエマルション圧延油を直接噴射する方法を循環給油方式に適用すると、鋼板に付着しなかった高濃度のエマルション圧延油が循環系の比較的低濃度のエマルション圧延油に混入するため、経時的に循環系のエマルション圧延油の濃度が上昇することとなる。
確かに、高濃度のエマルション圧延油を常時供給するのではなく、特定の高強度鋼板を圧延する場合にのみ供給することとすれば、従来においては循環系のエマルション圧延油の濃度上昇は、実用上はあまり問題とならないレベルに抑制され得る。しかしながら、高強度鋼板の需要の増加に伴い、冷間タンデム圧延機における高強度鋼板の圧延量の比率が増加してきている現状においては、高濃度のエマルション圧延油の供給量が増加して、循環系のエマルション圧延油の濃度上昇が操業に与える影響が無視できないレベルになってきている。このような圧延油を用いて軟質な鋼板を冷間圧延すると、循環系のエマルション圧延油の濃度が高いことから、潤滑過多によるスリップが生じて、操業トラブルの発生頻度が増加する。また、軟質な鋼板への圧延油の付着量が必要量よりも多くなりすぎて、鋼板による圧延油の持ち出し量が増加する結果、原単位が悪化してしまうという問題がある。
一方、循環系のエマルション圧延油の濃度上昇を抑えるために、高濃度の圧延油ヘッダーの噴射圧を低くして、供給する圧延油量(単位面積当たりの鋼板表面に供給される圧延油量)を少なくする方法もある。しかし、噴射圧を低くすることによって、エマルション圧延油の鋼板への衝突圧力や鋼板幅方向への流量分布にバラツキが生じるため、エマルション圧延油中の油分が鋼板表面に付着して油膜を形成する現象であるプレートアウトのバラツキも必然的に大きくなり、圧延潤滑特性に悪影響を及ぼす可能性がある。
また、上記特許文献2に開示されている方法では、エマルションタンクにて圧延油と水を混合して大粒径のエマルション圧延油を作成している。一般に、特許文献2が対象とするような薄物材の圧延では、エマルションの安定性よりも潤滑性向上を重視した圧延油設計となっている。そのため、タンク内での混合でも大粒径のエマルションを作成しやすい。しかしながら、高強度鋼板を冷間圧延するタンデム圧延機においては、良好な乳化安定性を維持するような圧延油設計がなされているため、エマルションタンクで大粒径のエマルションを作成しようとしても、その良好な乳化安定性により大粒径化が阻害され、圧延潤滑特性に悪影響を及ぼすという問題があった。
そこで本発明は、高強度鋼板をタンデム圧延機により冷間圧延する場合においても必要とされる良好な潤滑性を確保しつつ、循環系のエマルション圧延油の濃度上昇を抑制して、広い強度範囲の鋼板に対しても圧延負荷を増加させることなく安定した圧延を可能とすると共に、全体として圧延油原単位の悪化を防止することが可能な金属板の冷間圧延方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は以下のような特徴を有する。
[1]冷間圧延前の0.2%耐力が220MPa以上の金属板を循環給油方式の冷間タンデム圧延機により圧延する金属板の冷間圧延方法であって、
冷間タンデム圧延機の各圧延スタンドに設けた第1の圧延油供給手段により、循環使用される第1のエマルション圧延油を供給し、
さらに、少なくとも一つの圧延スタンドの入側に設けた第2の圧延油供給手段により、別々に供給された圧延油原液と希釈水とを所定の濃度となるように混合して第2のエマルション圧延油とし、該所定濃度に調整した第2のエマルション圧延油を直ちに金属板へ供給することを特徴とする金属板の冷間圧延方法。
[2]上記[1]において、第2の圧延油供給手段では、金属板の圧延条件に基づいて第2のエマルション圧延油の濃度調整を行い、該濃度調整された第2のエマルション圧延油を供給することを特徴とする金属板の冷間圧延方法。
[3]上記[1]または[2]において、第2の圧延油供給手段が2流体ノズルを備え、金属板の圧延条件に基づいて第2のエマルション圧延油の濃度及び粒径の調整を行い、該濃度及び粒径の調整された第2のエマルション圧延油を供給することを特徴とする金属板の冷間圧延方法。
[4]上記[1]乃至[3]のいずれかにおいて、供給される第2のエマルション圧延油の平均粒径が、第1のエマルション圧延油の平均粒径より大きいことを特徴とする金属板の冷間圧延方法。
[5]上記[1]乃至[4]のいずれかにおいて、第2の圧延油供給手段を、少なくとも第1スタンドまたは第2スタンドのいずれかの入側に設けることを特徴とする金属板の冷間圧延方法。
[6]上記[1]乃至[5]のいずれかにおいて、第2のエマルション圧延油を、圧延スタンド間の金属板表面であって、金属板に付着したエマルション圧延油が下流側圧延スタンドのロールバイトに到達するまでの時間が0.1秒以上となる位置に供給することを特徴とする金属板の冷間圧延方法。
本発明によれば、高強度鋼板をタンデム圧延機により冷間圧延する場合においても必要とされる良好な潤滑性を確保しつつ、循環系のエマルション圧延油の濃度上昇を抑制して、広い強度範囲の鋼板に対しても圧延負荷を増加させることなく安定した圧延を可能とすると共に、全体として圧延油原単位の悪化を防止することが可能な金属板の冷間圧延方法が提供される。
以下、本発明を実施するための最良の形態の一例を説明する。
本発明が適用される金属板としては、主として冷間圧延前の0.2%耐力が220MPa以上のものを対象とする。冷間圧延前の0.2%耐力が220MPa以上の金属板であれば金属の種類は特に限定されない。但し、本発明は、冷間圧延、焼鈍、調質圧延を経た後の引張強度が390MPa以上となるような高強度鋼板に対してより好適に用いることができる。本発明によれば、このような高強度の金属板を冷間圧延する場合においても、圧延負荷が軽減でき、高圧下圧延が可能となる。なお、前記金属板としては、例えば、鋼板、ステンレス板、アルミニウム板、銅板等に適用できる。
以下、金属板として鋼板を例に実施の形態を説明するが、他の金属板についても同様に適用できる。
図1は、本発明に係る複数スタンドを有する循環給油方式の冷間タンデム圧延機における概略構成の一例を示した図である。なお、図1は、鋼板の入側から第1〜第5の5スタンドの圧延機(鋼板の入側からNo.1〜No.5)を有する冷間タンデム圧延機の場合を示している。また、この冷間タンデム圧延機において、隣り合うスタンド間には図示しないテンションロールおよびデフロールが設置されている。
図1において、各スタンドには、圧延油供給手段2(第1の圧延油供給手段)として、それぞれの入側に潤滑用クーラントヘッダー3が配置され、それぞれの出側に冷却用クーラントヘッダー4が配置されている。そして、循環使用されるエマルション圧延油30(第1のエマルション圧延油)がそれぞれのクーラントヘッダー3,4に設けられたスプレーノズルから供給される構成となっている。この循環使用されるエマルション圧延油30は、循環式圧延油供給タンク5内に貯蔵され、循環系統の圧延油供給ライン7の途中に設けられたポンプ6により圧送され圧延油供給ライン7を通じて各スタンドに配置された前記クーラントヘッダー3,4に供給される。なお、前記エマルション圧延油30の各クーラントヘッダー3,4への供給は、圧延開始時から行うことが好ましい。
前記循環式圧延油供給タンク5内には温水(希釈水)および圧延油原液が収容され、そこで混合される。この収容され、混合された温水および圧延油原液は、攪拌機11の攪拌羽の回転数を調整することにより所望の平均粒径を有するエマルション圧延油30とされる。
ここで、前記エマルション圧延油30を構成する圧延油としては、通常の冷間圧延に用いられるものとして、天然油脂、脂肪酸エステル、炭化水素系合成潤滑油のいずれかを基油としたものを用いることができる。例えば、前記天然油脂としては、鉱物油、パーム油等の植物油や牛脂等の動物油を用いることができる。また、前記脂肪酸エステルとしては、一価アルコールと二価脂肪酸とのエステルであるジエステルや、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールと一価脂肪酸との組合せによるポリオールエステル等を用いることができる。また、前記炭化水素系合成潤滑油としては、種々の粘度を得ることができるポリ−α−オレフィン等を用いることができる。さらに、これらの圧延油には、油性向上剤、極圧添加剤、酸化防止剤などの通常の冷間圧延油に用いられる添加剤を加えても良い。
また、圧延油に添加される界面活性剤としては、イオン系、非イオン系のいずれを用いても良く、通常の循環式クーラントシステムに使用されるものを用いればよい。
ここで、前記循環使用されるエマルション圧延油30としては、圧延油を、好ましくは濃度1〜5質量%程度、より好ましくは濃度1.2〜2.0質量%程度に希釈し、界面活性剤を用いて水に油が分散したO/Wエマルションにしたものが用いられる。なお、その平均粒径としては好ましくは15μm以下、より好ましくは7〜10μm程度とする。また、極圧添加剤を添加する場合に、圧延油量に対する極圧添加剤の質量濃度(対油濃度)としては0.5〜5質量%の範囲で使用することが好ましい。極圧添加剤の添加量が多いほど耐焼付き性は向上するが、圧延油価格が高くなる傾向が生じてくるため、圧延油価格と耐焼付き性のバランスからは、極圧添加剤の質量濃度(対油濃度)を1.0〜3.0質量%とするのがより実用的であり、好ましい。
循環式圧延油供給タンク5内からポンプ6により圧延油供給ライン7内を圧送されたエマルション圧延油30は、各スタンドに配置された潤滑用クーラントヘッダー3からロールバイトに向けて供給され、さらに、冷却用クーラントヘッダー4からワークロールに向けて供給される。この供給されたエマルション圧延油30のうち、鋼板によって系外に持ち出されたり、蒸発によって失われたものを除いて、回収オイルパン9で回収され、戻り配管10により循環式圧延油供給タンク5内に戻される。
なお、前記循環式圧延油供給タンク5、ポンプ6、圧延油供給ライン7、潤滑用クーラントヘッダー3、冷却用クーラントヘッダー4、回収オイルパン9、戻り配管10により、供給されたエマルション圧延油30を回収し循環させるための循環系統が構成される。
また、本発明は、図1に示すように、第1の圧延スタンド(No.1)の入側に、供給するエマルション圧延油の濃度調整が可能な圧延油供給手段12(第2の圧延油供給手段)が設けられ、所定の濃度に調整されたエマルション圧延油31(第2のエマルション圧延油)を供給するものである。なお、図1においては、前記圧延油供給手段12を第1の圧延スタンド(No.1)の入側にのみ設けた場合を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、第1〜第5のいずれか1箇所または2箇所以上の圧延スタンドの入側に設けることで本発明の目的を達成することができる。なお、本発明の目的をより効率よく達成するためには、圧延油供給手段12を、少なくとも第1スタンドまたは第2スタンドのいずれかの入側に設けることが好ましい。
以下、前記圧延油供給手段12について詳細に説明する。
前記圧延油供給手段12は、図1に示すように、エマルション圧延油31を鋼板表面に供給するための潤滑ノズルヘッダー20と、この潤滑ノズルヘッダー20に供給する所定濃度のエマルション圧延油を生成するミキサー19と、このミキサー19に所定量の圧延油原液を供給するための原液供給手段18と、前記ミキサー19に所定量の温水(希釈水)を供給するための希釈水供給手段17と、ミキサー19に供給する圧延油原液と温水の流量を制御する流量調整用コントローラ16とにより構成することができる。
ここで、前記潤滑ノズルヘッダー20には、エマルション圧延油31を鋼板表面に噴射するためのスプレーノズルが備えられている。図1に示す例では、潤滑ノズルヘッダー20は、鋼板1に対して、その上方(20a)および下方(20b)の両方に位置するように配置されており、供給されてきた所定濃度のエマルション圧延油31を鋼板1の表裏面に向けて複数のスプレーノズルから噴射可能に構成されている。
また、前記ミキサー19では、供給される圧延油原液と温水とを撹拌、混合し、前記潤滑ノズルヘッダー20に供給するための所定濃度のエマルション圧延油を生成させる。なお、前記ミキサー19は、潤滑ノズルヘッダー20の直前に設ける。一般に、例えば循環式圧延油供給タンク5は地下に設置され、10〜20m以上もある圧延油供給ライン7を通じて各スタンドにエマルション圧延油30を供給するのが通常であるが、本発明では、前記ミキサー19を潤滑ノズルヘッダー20の直前(例えば3m以内)に設け、前記ミキサー19にて所定濃度に調整したエマルション圧延油31を直ちに潤滑ノズルヘッダー20に供給し、スプレーノズルから鋼板表面へ向けて噴射する。鋼板表面に噴射するエマルション圧延油31の濃度変更の応答性をより高めるためである。このような理由から、ミキサー19は、鋼板1の上方に配置された潤滑ノズルヘッダー20a及び下方に配置された潤滑ノズルヘッダー20b毎に別々に設け、これらのできるだけ近くに設ける(20aに対して19a、20bに対して19b)ことが好ましい。なお、図1においては作図の都合上、前記ミキサー19と潤滑ノズルヘッダー20を離して記載しているが、実際にはこれらは隣接して配される。
さらに、前記原液供給手段18は、圧延油原液を貯蔵するための原液貯蔵タンク13と、この原液貯蔵タンク13とミキサー19とをつなぐ原液供給ライン15と、この原液供給ライン15の途中に設けられ、原液供給ライン15内を、原液を圧送させるための圧延油原液用ギアポンプ14と、前記原液供給ライン15の途中に設けられミキサー19に供給する原液の流量を制御する流量制御弁21とにより構成することができる。ここで、前記原液供給ライン15は、ミキサー19a及び19b毎に設けることが好ましい。それぞれに供給する圧延油原液の流量制御を応答性良く且つ正確に行うためである。
図1に示す例では、原液貯蔵タンク13とミキサー19とをつなぐ原液供給ライン15は、その途中でミキサー19aに圧延油原液を供給するための原液供給ライン15aと、ミキサー19bに圧延油原液を供給するための原液供給ライン15bとに分岐される。原液供給ライン15aの途中には、圧延油原液用ギアポンプ14aと流量制御弁21aとが設けられており、ミキサー19aに供給される圧延油原液の流量が調整される。同様に、原液供給ライン15bの途中には、圧延油原液用ギアポンプ14bと流量制御弁21bとが設けられており、ミキサー19bに供給される圧延油原液の流量が調整される。
また、前記希釈水供給手段17は、温水を貯蔵するための温水貯蔵タンク22と、この温水貯蔵タンク22とミキサー19とをつなぐ温水供給ライン23と、この温水供給ライン23の途中に設けられ、温水供給ライン23内を、温水を圧送させるための温水用ギアポンプ24と、前記温水供給ライン23の途中に設けられミキサー19に供給する温水の流量を制御する流量制御弁25とにより構成することができる。ここで、前記温水供給ライン23は、ミキサー19a及び19b毎に設けることが好ましい。それぞれに供給する温水の流量制御を応答性良く且つ正確に行うためである。
図1に示す例では、温水貯蔵タンク22とミキサー19とをつなぐ温水供給ライン23は、その途中でミキサー19aに温水を供給するための温水供給ライン23aと、ミキサー19bに温水を供給するための温水供給ライン23bとに分岐される。温水供給ライン23aの途中には、温水用ギアポンプ24aと流量制御弁25aとが設けられており、ミキサー19aに供給される温水の流量が調整される。同様に、温水供給ライン23bの途中には、温水用ギアポンプ24bと流量制御弁25bとが設けられており、ミキサー19bに供給される温水の流量が調整される。
図1に例示する構成において、鋼板表面に噴射されたエマルション圧延油31の内、鋼板表面にプレートアウトしないエマルション圧延油は、循環系統を構成する圧延油回収循環手段としての回収オイルパン9に集められ、循環使用されるエマルション圧延油30と共に回収され、戻り配管10を経由して循環式圧延油供給タンク5内に戻される。回収されたエマルション圧延油30及び31は、循環式圧延油供給タンク5内の攪拌器11により攪拌された後、ポンプ6および潤滑用及び冷却用のクーラントヘッダー3、4のスプレーノズル部での強いせん断を繰り返し受け、循環使用されるエマルション圧延油30と同じ粒径まで細分化される。
なお、本発明は、図1に例示した原液供給手段18及び希釈水供給手段17の構成に限定されるものではない。原液供給ライン15に設ける圧延油原液用ギアポンプ14及び流量制御弁21、並びに、温水供給ライン23に設ける温水用ギアポンプ24及び流量制御弁25をそれぞれ1つずつ配置して、ミキサー19a及び19bの直前で、それぞれの供給ラインの配分比が同一となるように分岐して、ミキサー19a及び19bに圧延油原液及び温水を供給するようにしてもよい。
なお、上記原液貯蔵タンク13と温水貯蔵タンク22に関しては、循環使用されるエマルション圧延油30におけるクーラントの補給に用いられる原液貯蔵タンク及び温水貯蔵タンクと共用として、同一のタンクを用いてもよい。共用とすることで、新たなタンクを設置する必要がなくなり、設備費の低減が可能となる。
また、前記流量調整用コントローラ16は、所定の濃度のエマルション圧延油31を生成可能とするために、ミキサー19に供給される圧延油原液と温水の流量を制御する。ミキサー19に供給される圧延油原液の流量制御は、原液供給ライン15の途中に設けられた流量制御弁21を流量調整用コントローラ16からの信号により制御することにより行う。また、ミキサー19に供給される温水の流量制御は、温水供給ライン23の途中に設けられた流量制御弁25を流量調整用コントローラ16からの信号により制御することにより行う。
ここで、前記流量調整用コントローラ16によるエマルション圧延油31の濃度調整は、鋼板の圧延条件に基づいて行うことが好ましい。前記流量調整用コントローラ16には、例えば生産管理を行うプロコン等から被圧延材の鋼種及びサイズのデータが入力されると共に、予め設定される前記被圧延材に対応したエマルション圧延油31の目標濃度が入力される。前記流量調整用コントローラ16は、圧延速度、圧延ロールの粗度、圧下率、鋼種、鋼板の強度レベル・サイズ等といった圧延条件に応じてエマルション圧延油31の目標濃度を変更して、その濃度となるように、原液供給ライン15の途中に設けられた流量制御弁21及び温水供給ライン23の途中に設けられた流量制御弁25の流量を制御する。すなわち、前記流量調整用コントローラ16では、前記変更した圧延油濃度となる圧延油原液の供給流量及び温水の供給流量を算出し、原液供給ライン15の途中に設けられた流量制御弁21及び温水供給ライン23の途中に設けられた流量制御弁25に信号を送信する。
また、ミキサー19に供給される圧延油原液及び温水の合計の供給流量は、例えば、潤滑ノズルヘッダー20からの吐出流量が目標流量となるように設定すればよい。
ここで、上記エマルション圧延油31の濃度の調整を行うに際して、圧延油が供給過多となりやすい低速圧延部、ロール組替直前、若しくは軟質材については、潤滑ノズルヘッダー20からのエマルション圧延油31の供給を止めて、それ以外の場合に、上記方法により濃度調整を行ったエマルション圧延油31を供給するようにしてもよい。
以上のように、上記圧延油供給手段12では、潤滑ノズルヘッダー20の直前に配置したミキサー19で、目標濃度及び目標流量に応じた必要量だけの圧延油原液と温水(希釈水)とを混合してエマルション圧延油を生成して、潤滑ノズルヘッダー20に供給する構成としている。これにより、目標濃度に調整されたエマルション圧延油31が直ちに鋼板表面に噴射される。このように、潤滑ノズルヘッダー20の直前で濃度調整を行う構成としているため、供給されるエマルション圧延油31の濃度調整の応答性が非常に高い。
また、圧延油供給手段12から鋼板に供給される圧延油の量を抑えたい場合は、供給されるエマルション圧延油31の流量を変化させずに、エマルション圧延油31の濃度調整を行って鋼板の単位面積当たりの供給圧延油量を減少させる。これにより、潤滑ノズルヘッダーに備えるスプレーノズルからの噴射圧を低くすることによって鋼板に供給される圧延油の量を抑える従来方法の場合に生じていた、エマルション圧延油の鋼板への衝突圧力のバラツキや鋼板幅方向への流量分布のバラツキを防止できる。
ここで、例えば供給するエマルション圧延油31の濃度を高め若しくは低めに調整する必要がある場合は、温水の供給流量を変更せずに、原液の流量を制御する流量制御弁21による圧延油原液の供給流量を調整することで即座に対応することが可能となる。また、常に目標とする濃度のエマルション圧延油31を供給できるので、余分な圧延油を使用することなく、圧延油原単位を抑えることができ、ひいては循環使用されるエマルション圧延油30の濃度上昇を最小限に抑えることが可能となる。
なお、エマルション圧延油31の濃度調整は、全ての種類の鋼板への対応を可能とするため、潤滑ノズルヘッダー20から噴射されるエマルション圧延油31の濃度の下限値は、循環使用されるエマルション圧延油30の濃度とすることが好ましい。また、潤滑ノズルヘッダー20から噴射されるエマルション圧延油31の濃度の上限値は100%(圧延油の原液濃度)とすることが好ましい。さらに、前記原液貯蔵タンク13と温水貯蔵タンク22内での温度は、循環使用されるエマルション圧延油30と同じ温度とすることが好ましい。
また、潤滑ノズルヘッダー20から供給されるエマルション圧延油31の平均粒径は、循環使用されるエマルション圧延油30の平均粒径より大きいことが好ましい。本発明においては、潤滑ノズルヘッダー20の直前で圧延油原液と温水のミキシングが行われるため、エマルション圧延油31が受けるせん断力は最小限に抑えられ、その結果、潤滑ノズルヘッダー20から供給されるエマルション圧延油31の平均粒径は、循環使用されるエマルション圧延油30の平均粒径より大きくすることができる。これにより、鋼板への付着効率の高いエマルションの粒径の大きな圧延油が鋼板表面に噴射される。
また、潤滑ノズルヘッダー20から供給されるエマルション圧延油31の圧延油量は、10000mg/mを超えると潤滑過多となり安定した圧延操業が不可能となるため、10000mg/m以下の範囲で供給することが望ましい。一方、300mg/m未満では、潤滑ノズルヘッダー20からエマルション圧延油31を供給する効果が得られないため、300mg/m以上の範囲で供給するのが望ましい。なお、エマルション圧延油31の供給量は、ロール使用量や圧延材のサイズおよび鋼板の強度レベルに応じて流量を適宜調整してもよい。
また、前記潤滑ノズルヘッダー20の配置位置は、ロールバイトから離れたできるだけ遠い位置、すなわち、上流側のスタンドにできるだけ近い位置とすることが好ましい。鋼板表面に供給されたエマルション圧延油31がO/WエマルションからW/Oエマルション若しくは油単相へ転相するための時間、すなわち転相時間を確保するためである。
前記転相時間確保のためには、潤滑ノズルヘッダー20は噴射されたエマルション圧延油31が鋼板表面に付着してから下流側スタンドのロールバイトまで到達するまでの時間が0.1秒以上となる位置に設置することが好ましい。なお、設置スタンド間で圧延速度が絶えず可変であるような場合は、噴射されたエマルション圧延油31が鋼板表面に付着してから下流側スタンドのロールバイトに到達するまでの時間が0.1秒以上となるように、潤滑ノズルヘッダー20から下流側スタンドのロールバイトまでの位置または潤滑ノズルヘッダー20の取り付け角度を適宜調整できるような構成としてもよい。
なお、圧延油供給手段12により、エマルション圧延油31を供給している際に、圧延油供給手段2の潤滑用クーラントヘッダー3から供給するエマルション圧延油30の流量は、特に調整する必要はない。この理由は、圧延油供給手段12の潤滑ノズルヘッダー20から供給されるエマルション圧延油31によるプレートアウトが鋼板表面への油膜形成に対して支配的であり、潤滑用クーラントヘッダー3から供給されるエマルション圧延油30によるプレートアウトの影響は少ないためである。
潤滑ノズルヘッダー20からのエマルション圧延油31の供給は、鋼板の表裏面に対して行うことが好ましいが、潤滑不良が片面に対してのみ問題となっている場合には、問題となっている方の面にだけに供給を行っても良い。また、圧延油が供給過多となりやすい低速圧延部、ロール組替直前若しくは軟質材についてだけ、潤滑ノズルヘッダー20からのエマルション圧延油31の供給を中止してもよい。
図2は、本発明に係る複数スタンドを有する循環給油方式の冷間タンデム圧延機における概略構成の他の一例を示した図である。なお、上述の図1と同一の構成については同一の番号を付して説明は省略する。
図2においては、図1における圧延油供給手段12を構成する潤滑ノズルヘッダー20の代わりに、スプレーノズルとして2流体ノズル(「気水ノズル」ともいう。以下同じ。)を備えた2流体ノズルヘッダー32を配置した構成となっている。ここで、前記2流体ノズルとは、ノズル内部で気体と液体とを混合させることにより、液体をアトマイズ(微粒子化)して噴射するノズルである。なお、図2においては、鋼板1の上方側に設けた2流体ノズルヘッダーを32a、下方側に設けた2流体ノズルヘッダーを32bとして表示している。
さらに、図2においては、2流体ノズルを用いるため、図1の構成に対して、前記2流体ノズルヘッダー32に気体(空気)を供給するための気体供給手段33が追加された構成となっている。前記気体供給手段33は、例えば、2流体ノズルヘッダー32に気体を供給する気体供給ライン34と、気体の圧送源となる圧送する気体の流量調整が可能なコンプレッサー35とにより構成することができる。前記コンプレッサー35は、流量調整用コントローラ16からの指令によって流量が調整される。なお、前記2流体ノズルヘッダー32a、32b毎に、気体供給ライン34およびコンプレッサー35を設けるようにしてもよい。
前記流量調整用コントローラ16には、例えば生産管理を行うプロコン等から被圧延材の鋼種及びサイズのデータが入力されると共に、予め設定される前記被圧延材に対応した気体供給量が入力される。前記流量調整用コントローラ16は、圧延速度、圧延ロールの粗度、圧下率、鋼種、鋼板の強度レベル・サイズ等といった圧延条件に応じて気体供給量を変更して、その変更した気体供給量に対するエマルション圧延油31の粒径および鋼板表面への噴射面積を求め、その求めた粒径および噴射面積となるように、コンプレッサー35の気体供給量を制御する。このとき、前記流量調整用コントローラ16は、気体供給手段33を構成する。
ここでは、スプレーノズルとして2流体ノズルを備えた2流体ノズルヘッダー35を配置し、そこから鋼板表面にエマルション圧延油31を噴射することで、鋼板長手方向及び幅方向へのプレートアウトのバラツキがさらに少なくなるという効果を有する。また、噴射されるエマルション圧延油31が空気によりアトマイズされるため、供給されるエマルション圧延油31の粒径分布が安定化および均一化され、エマルション圧延油の粒径の不均一に起因するモトリングを防止することが可能となる。
図3は、スプレーノズルとして通常の1流体ノズルと2流体ノズルを用いた場合の、それぞれの噴射直後のエマルション粒径分布を示した図である。通常の1流体ノズルではエマルション粒径の体積分布がブロードとなっており、若干ながらエマルション粒径の均一性に欠いていることがわかる。それに対して、2流体ノズルを使用することにより、エマルション粒径の分布がシャープとなり、均一性がより向上していることがわかる。さらに、2流体ノズルは、スプレーの噴射面積を主に気体(空気)の噴射形状によりコントロールできるため、噴射面積や流量分布の変化を小さくすることができ、エマルション圧延油の流量が変化しても、プレートアウトの均一性に影響を与えない。また、少ない噴射流量域でも噴射面積が変化しにくいため、流量密度を低く保つことが可能となるため、再乳化等によるプレートアウトの阻害が抑制される。
図1に示す5スタンドの圧延機(鋼板の入側からNo.1〜No.5)を有する冷間タンデム圧延機を用い、母材厚2.0〜6.0mm、冷間圧延後の板厚0.5〜2.5mm、製品(圧延後の鋼板)の引張強度270〜980MPaを対象とした圧延を行った。
圧延油は合成エステル油をベースに植物油脂が添加された基油に対して、油性剤、酸化防止剤がそれぞれ1質量%ずつ添加され、界面活性剤としてノニオン系界面活性剤が対油濃度で3質量%添加されているものを使用した。圧延油供給手段2により供給される、循環使用されるエマルション圧延油30を、圧延油の濃度2.0質量%、平均粒径8μm、温度55℃のエマルション圧延油とした。また、圧延油供給手段12により供給されるエマルション圧延油31の温度は循環使用されるエマルション圧延油30と同一とした。
これに対し、エマルション圧延油31の基準供給条件(基準目標濃度)を、圧延材の製品強度レベルに応じて表1のように設定した。本発明例では、エマルション圧延油31の供給を製品の引張強度が390MPa以上の被圧延材に限定した。これは、変形抵抗の大きい被圧延材ほど高い潤滑性を必要とするからである。ただし、圧延負荷は、被圧延材の変形抵抗だけでなく、製品寸法によっても異なるため、例えば、板厚が薄い広幅材の場合には、エマルション圧延油31の供給を行うようにしてもよい。
本発明例では、エマルション圧延油31の供給は、流量調整用コントローラ16により、製品強度レベルや圧延条件に応じた濃度制御が可能な状態とし、被圧延材の各コイル毎に、エマルション圧延油31の供給濃度を制御した。ここで、圧延条件に応じた濃度制御は、図4に示すように、圧延油供給手段12を設置したスタンドである第1の圧延スタンド(No.1)入側の鋼板速度に応じて、基準目標濃度からの濃度変化量を算出し、その変化量分だけ表1の基準目標濃度を調整することにより行った。
なお、潤滑ノズルヘッダー20から噴射されるエマルション圧延油31の粒径を測定したところ、最も体積%の高い値で25μmであった。
比較例1として、エマルション圧延油31の供給において濃度制御を行わず、一定の濃度および流量(供給流量30L/min)で供給するようにした以外は、本発明例と同様にして冷間圧延を行った。
また、比較例2として、エマルション圧延油31の供給において濃度制御を行わず、一定濃度とし、鋼板に供給されるエマルション圧延油31の圧延油分量が本発明例と同等になるように供給流量の加減を行った以外は、本発明例と同様にして冷間圧延を行った。
Figure 0004910771
以上のような圧延油供給を行って、循環使用されるエマルション圧延油30の濃度について、その経時変化を調査した。その調査結果を図5に示す。
図5に示すように、本発明例においては、冷間タンデム圧延機における圧延油濃度の管理範囲である1.5〜2.0質量%の範囲に循環使用されるエマルション圧延油30の濃度を収めることができているのに対し、比較例1では製品強度レベル780MPa以下の被圧延材に対して本発明例よりもエマルション圧延油31の供給量が多くなっているため、循環使用されるエマルション圧延油30の濃度が増加し管理範囲を越えてしまうことがわかる。これにより、安定な操業を行うことが出来なかった。一方、比較例2においても同様の試験を行ったが、製品強度レベル390〜780MPaの範囲において吐出圧力を低下させエマルション圧延油31の供給流量を抑えたため、鋼板への衝突圧力や鋼板幅方向への流量分布にバラツキが生じた。そのため、プレートアウトのバラツキ起因によるモトリングが発生し、満足する圧延を行うことが出来なった。
なお、図5に示した圧延条件での圧延油原単位は、本発明例では0.22L/Tであったのに対し、比較例1では0.26L/Tであり、本発明例により圧延油原単位が向上していることが分かった。
図2に示す5スタンドの圧延機(鋼板の入側からNo.1〜No.5)を有する冷間タンデム圧延機を用い、上記実施例1と同様の鋼種・サイズ・圧延油にて圧延を行った。被圧延材の各コイル毎でのエマルション圧延油31の供給濃度の調整は実施例1と同様に制御した。一方、エマルション圧延油31の供給流量については、上述したように、2流体ノズルヘッダー32を用いることにより、付着効率の向上が図られるため、実施例1よりも20%だけ供給流量を減少させた。
また、2流体ノズルヘッダー32に供給される気体流量はエマルション圧延油31がエマルション圧延油30よりも大きな平均粒径となるように調整され、各コイルにわたるエマルション圧延油31の平均粒径を15〜25μmとした。
循環使用されるエマルション圧延油30の濃度について、その経時変化を調査したところ、圧延油濃度の管理範囲である1.5〜2.0質量%の範囲に収まっていることが確認された。また、圧延油原単位は、上記実施例1での0.22L/Tに対し、本実施例2では0.20L/Tであり、スプレーノズルとして2流体ノズルを用いた方が、圧延油原単位がより向上することがわかった。この理由は、従来の1流体ノズルによる噴射時に生じていたエマルション圧延油の液滴同士の干渉が2流体ノズルに供給される気体により軽減され、より付着効率が向上した結果、同じプレートアウト量を得るためのエマルション圧延油の供給流量が従来の1流体ノズルによる噴射時よりも少なく出来たためである。
本発明に係る複数スタンドを有する循環給油方式の冷間タンデム圧延機における概略構成の一例を示した図である。 本発明に係る複数スタンドを有する循環給油方式の冷間タンデム圧延機における概略構成の他の一例を示した図である。 スプレーノズルとして通常の1流体ノズルと2流体ノズルを用いた場合の、それぞれの噴射直後のエマルション粒径分布を示した図である。 実施例1において、圧延条件に応じたエマルション圧延油31の濃度変化量を示す図である。 実施例1において、循環使用されるエマルション圧延油30の濃度経時変化を示す図である。 従来技術に係る5スタンドを有する冷間タンデム圧延機における循環給油方式によるエマルション圧延油の供給方法を示した図である。
符号の説明
1 鋼板
2 圧延油供給手段(第1の圧延油供給手段)
3 潤滑用クーラントヘッダー
4 冷却用クーラントヘッダー
5 循環式圧延油供給タンク
6 ポンプ
7 圧延油供給ライン
9 回収オイルパン
10 戻り配管
11 攪拌機
12 圧延油供給手段(第2の圧延油供給手段)
13 原液貯蔵タンク
14 圧延油原液用ギアポンプ
15 原液供給ライン
16 流量調整用コントローラ
17 希釈水供給手段
18 原液供給手段
19 ミキサー
20 潤滑ノズルヘッダー
21 流量制御弁
22 温水貯蔵タンク
23 温水供給ライン
24 温水用ギアポンプ
25 流量制御弁
30 エマルション圧延油(第1のエマルション圧延油)
31 エマルション圧延油(第2のエマルション圧延油)
32 2流体ノズルヘッダー
33 気体供給手段
34 気体供給ライン
35 コンプレッサー

Claims (6)

  1. 冷間圧延前の0.2%耐力が220MPa以上の金属板を循環給油方式の冷間タンデム圧延機により圧延する金属板の冷間圧延方法であって、
    冷間タンデム圧延機の各圧延スタンドに設けた第1の圧延油供給手段により、循環使用される第1のエマルション圧延油を供給し、
    さらに、少なくとも一つの圧延スタンドの入側に設けた第2の圧延油供給手段により、別々に供給された圧延油原液と希釈水とを所定の濃度となるように混合して第2のエマルション圧延油とし、該所定濃度に調整した第2のエマルション圧延油を直ちに金属板へ供給することを特徴とする金属板の冷間圧延方法。
  2. 第2の圧延油供給手段では、金属板の圧延条件に基づいて第2のエマルション圧延油の濃度調整を行い、該濃度調整された第2のエマルション圧延油を供給することを特徴とする請求項1に記載の金属板の冷間圧延方法。
  3. 第2の圧延油供給手段が2流体ノズルを備え、金属板の圧延条件に基づいて第2のエマルション圧延油の濃度及び粒径の調整を行い、該濃度及び粒径の調整された第2のエマルション圧延油を供給することを特徴とする請求項1または2に記載の金属板の冷間圧延方法。
  4. 供給される第2のエマルション圧延油の平均粒径が、第1のエマルション圧延油の平均粒径より大きいことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の金属板の冷間圧延方法。
  5. 第2の圧延油供給手段を、少なくとも第1スタンドまたは第2スタンドのいずれかの入側に設けることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の金属板の冷間圧延方法。
  6. 第2のエマルション圧延油を、圧延スタンド間の金属板表面であって、金属板に付着したエマルション圧延油が下流側圧延スタンドのロールバイトに到達するまでの時間が0.1秒以上となる位置に供給することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の金属板の冷間圧延方法。
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