JP2008194721A - 金属板の冷間圧延方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高強度鋼板の冷間圧延において必要とされる良好な潤滑性を確保しつつ、軟質な鋼板に対しては、圧延油の持ち出し量を抑制しながら、安定した冷間タンデム圧延機の操業を可能とする金属板の冷間圧延方法を提供する。
【解決手段】冷間タンデム圧延機の各圧延スタンドに、循環使用される第1のエマルション圧延油を供給し、さらに、少なくとも一つの圧延スタンドの入側に、前記第1のエマルション圧延油よりも低濃度の第2のエマルション圧延油を、前記第1のエマルション圧延油とは別系統により供給する。
【選択図】図1

Description

本発明は、循環給油方式の冷間タンデム圧延機を用いて金属板を圧延する際の冷間圧延方法に関する。
鋼板を冷間圧延する際には、圧延中の鋼板とロールとの間に生ずる摩擦を低減させるための潤滑剤として、また、圧延時に生ずる摩擦発熱および加工発熱により高温となったロールならびに鋼板の冷却を行うための冷却剤として潤滑油が用いられる。ここで、通常の冷間圧延においては、前記潤滑油としてエマルション圧延油(以下、単に「エマルション」とも呼ぶ)が用いられる。なお、エマルションとは、圧延油の粒子が水に安定して懸濁した状態の混合液体をいう。エマルションは濃度及び平均粒径で特徴づけられる。エマルションの濃度とは、エマルション全質量中の油分質量の比率である。平均粒径とは、エマルション中の圧延油の粒子の平均径である。また、エマルションを作成するためには界面活性剤を添加する。その添加量は圧延油量に対する質量濃度(対油濃度)で所定量添加し、攪拌器及びポンプによるせん断を加えることによりエマルションの平均粒径を調整する。
冷間圧延時における前記エマルション圧延油の供給方式としては、エマルション圧延油を循環使用しない直接給油方式(ダイレクト方式)、エマルション圧延油を循環させながら潤滑と冷却を行う循環給油方式(リサーキュレーション方式)、およびその折衷であるハイブリッド方式が知られている。
図2は、従来技術に係る5スタンドを有する冷間タンデム圧延機における循環給油方式によるエマルション圧延油の供給方法を示した図である。図2に示す冷間タンデム圧延機は、鋼板1を、入側から第1〜第5の5スタンドの圧延機(鋼板の入側から2a〜2e)により連続的に圧下を行うものである。エマルション圧延油のクリーンタンク20には循環使用されるエマルション圧延油10が蓄えられており、循環系統の配管13を通じて各スタンドに供給される。
循環給油方式とは、圧延油を濃度1〜5質量%に希釈し、界面活性剤を用いて水に油が分散したO/Wエマルションにしたエマルション圧延油を循環使用する方式をいう。循環給油方式では、各スタンドのロールバイト入側において潤滑のためのスプレーノズルを備えると共に、圧延ロールに冷却用のスプレーノズルを備えるのが通常であり、潤滑用スプレーと冷却用スプレーとを同一のエマルション圧延油によって行うものである。
このとき循環使用されるエマルション圧延油10としては、種々のエマルション濃度、平均粒径のものを使用し得るが、代表例としてはエマルション濃度1.5質量%、平均粒径8μm程度のものを使用することができる。このエマルション圧延油には、2質量%のノニオン系界面活性剤が含有されており、配管13に配置されるポンプやスプレーノズルにおけるせん断によって、安定なO/Wエマルションのまま循環使用される。
循環使用するエマルション圧延油を供給するためのスプレーノズルの配置位置は、対象材の種類、圧延速度等によって異なるが、図2に示す例では、すべてのスタンド入側に、潤滑用として供給されるエマルション圧延油10のスプレーノズル3a〜3eが、それぞれロールバイトに向けてエマルション圧延油10が供給されるように配置されている。また、同一のエマルション圧延油10が、第2,第3,第4スタンド出側に配置されるスプレーノズル4b〜4d、及び、第4,第5スタンド入側に配置されるスプレーノズル5d,5eからそれぞれの圧延ロールを冷却するために供給される。
ここで、冷間タンデム圧延機においては、後段スタンドほど圧延速度が速く板温度が上昇するのに対応して、後段スタンドほど供給されるエマルション圧延油の流量を増加させるのが通常である。なお、図2に示す例では、潤滑のために供給されるエマルション圧延油用のスプレーノズル3a〜3eからは、鋼板の表裏面でスプレー流量1000〜2500L/minのエマルション圧延油が供給され、また、ロール冷却のために供給されるエマルション圧延油用のスプレーノズル4b〜4d,5d,5eからは、スプレー流量2000〜4000L/minのエマルション圧延油が供給されており、冷間タンデム圧延機全体で循環使用されるエマルション圧延油の循環量としては、おおよそ25000L/minとなっている。
前記各スタンドに供給されるエマルション圧延油10のうち、鋼板によって系外に持ち出されたり、蒸発によって失われるエマルション圧延油を除いて、大部分のエマルション圧延油はオイルパン11によって回収される。この回収されたエマルション圧延油には圧延時の摩耗粉等が混入しているため、回収配管12により一旦ダーティタンク21に蓄えられ、浮上油などが除去された後に、クリーンタンク20に送られる。ここで、前記ダーティタンク21とクリーンタンク20の間には、鉄粉等の混入物を除去するためのフィルター装置22としてホフマンフィルター、電磁フィルター等のフィルターが複数組み合わされたものが設置され、循環使用されるエマルション圧延油中の異物が除去される。
一方、近年において、自動車車体の軽量化や衝突安全性の向上のために高強度鋼板が積極的に採用されるようになってきている。しかし、高強度鋼板は、普通鋼に比べて変形抵抗が大きいため、冷間圧延における圧延荷重の増大により、鋼板の形状に乱れが生じ、絞りによる板破断等の問題が生じる場合がある。
また、冷間圧延における圧延荷重を軽減するためには、冷間圧延前の鋼板の板厚を薄くして冷間タンデム圧延機でのトータル圧下率を下げる必要があるが、この場合には上工程である熱間圧延工程での圧延負荷が増大すると共に、熱延鋼板のコイル長が長くなることにより酸洗工程での生産性が低下するという問題が生じる。さらに、冷間タンデム圧延機でのトータル圧下率を低く抑えると、製品のランクフォード値が低下してプレス成形における成形性が低下するという問題が生じる。
さらに、高強度鋼板の圧延では、前述した鋼板の形状が乱れることによる板破断の懸念や、高圧延負荷によるモーターのトルク制約から、軟質鋼板の場合よりも圧延速度が低く抑えられる。低速圧延状態では、ロールバイトへの圧延油の引き込み量が低下して潤滑性に劣ることが知られており、高強度鋼板の圧延では、低速圧延域での潤滑性の向上が課題となっている。
このような問題に対して、例えば、特公昭59−24888号公報(特許文献1)には、ヒートスクラッチを防止するために、高濃度のエマルション圧延油を供給して潤滑性を向上させる方法が開示されている。
特公昭59−24888号公報
しかし、上記特許文献1に開示されているような、濃度10質量%以上の高濃度のエマルション圧延油を直接噴射する方法を循環給油方式に適用すると、鋼板に付着しなかった高濃度のエマルション圧延油が循環系の比較的低濃度のエマルション圧延油に混入するため、経時的に循環系のエマルション圧延油の濃度が上昇することとなる。
確かに、高濃度のエマルション圧延油を常時供給するのではなく、特定の高強度鋼板を圧延する場合にのみ供給することとすれば、従来においては循環系のエマルション圧延油の濃度上昇は、実用上はあまり問題とならないレベルに抑制され得る。しかしながら、高強度鋼板の需要の増加に伴い、冷間タンデム圧延機における高強度鋼板の圧延量の比率が増加してきている現状においては、高濃度のエマルション圧延油の供給量が増加して、循環系のエマルション圧延油の濃度上昇が操業に与える影響が無視できないレベルになってきている。このような圧延油を用いて軟質な鋼板を冷間圧延すると、循環系のエマルション圧延油の濃度が高いことから、潤滑過多によるスリップが生じて、操業トラブルの発生頻度が増加する。また、軟質な鋼板への圧延油の付着量が必要量よりも多くなりすぎて、鋼板による圧延油の持ち出し量が増加する結果、原単位が悪化してしまうという問題がある。
そこで本発明は、高強度鋼板の冷間圧延において必要とされる良好な潤滑性を確保しつつ、軟質な鋼板に対しては、圧延油の持ち出し量を抑制しながら、安定した冷間タンデム圧延機の操業を可能とする金属板の冷間圧延方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は以下のような特徴を有する。
[1]冷間タンデム圧延機の各圧延スタンドに、循環使用される第1のエマルション圧延油を供給し、さらに、少なくとも一つの圧延スタンドの入側に、前記第1のエマルション圧延油よりも低濃度の第2のエマルション圧延油を、前記第1のエマルション圧延油とは別系統により供給することを特徴とする金属板の冷間圧延方法。
[2]上記[1]において、第1のエマルション圧延油の濃度が2.0質量%以上であることを特徴とする金属板の冷間圧延方法。
[3]上記[1]または[2]において、第2のエマルション圧延油の濃度が1.5質量%以下であることを特徴とする金属板の冷間圧延方法。
[4]上記[1]乃至[3]のいずれかにおいて、第2のエマルション圧延油の供給を、被圧延材の焼鈍処理後の引張強度が300MPa以下の金属板に対して行うことを特徴とする金属板の冷間圧延方法。
本発明によれば、高強度鋼板の冷間圧延において必要とされる良好な潤滑性を確保しつつ、軟質な鋼板に対しては、圧延油の持ち出し量を抑制しながら、安定した冷間タンデム圧延機の操業を可能とする金属板の冷間圧延方法が提供される。
以下、本発明を実施するための最良の形態の一例を説明する。
図1は、本発明に係る複数スタンドを有する循環給油方式の冷間タンデム圧延機の概略構成の一例を示した図である。なお、図1は、鋼板の入側から第1〜第5の5スタンドの圧延機(鋼板の入側から2a〜2e)を有する冷間タンデム圧延機の場合を示している。
図1に示す冷間タンデム圧延機は、上述の図2で示した従来技術に係る冷間タンデム圧延機において、循環使用されるエマルション圧延油10(第1のエマルション圧延油)を潤滑のためにスタンド入側に供給するスプレーノズル3a〜3e及び圧延ロールを冷却するために供給するスプレーノズル4b〜4d、5d,5eに加えて、スタンド入側の鋼板表面にエマルション圧延油10よりも低濃度のエマルション圧延油18(第2のエマルション圧延油)を供給するためのノズルであるスプレーノズル6a〜6eを配置した構成となっている。
前記エマルション圧延油18は、圧延油原液タンク31から供給される圧延油原液と、温水タンク32から供給される希釈水とを、ミキサー8a〜8eで混合し、そこでエマルションを形成して、スプレーノズル6a〜6eから供給される。このように、前記エマルション圧延油18は、前記潤滑のためにスタンド入側に供給される循環系のエマルション圧延油10とは別系統により供給される。ここで、前記ミキサー8a〜8eとしては、圧延油原液と希釈水との混合比率を調整できるものを用いることが望ましい。なお、前記ミキサー8a〜8eでは、圧延油原液と希釈水とが、循環系のエマルション圧延油10よりも低い濃度となるように混合される。
図1に示すように、クリーンタンク20内に貯蔵される前記エマルション圧延油10は、ポンプ23により抜き出され、配管13を通して、第1から第5スタンド入側に配置されたスプレーノズル3a,3b,3c,3d,3eからそれぞれロールバイトに向けて供給される。さらに、前記エマルション圧延油10は、配管13を通して、第2,第3,第4スタンド出側に配置されるスプレーノズル4b,4c,4d、及び、第4,第5スタンド入側に配置されるスプレーノズル5d,5eからそれぞれの圧延ロールを冷却するために圧延機内に供給される。
前記スプレーノズル3a〜3e、4b,4c,4d,5d,5eから供給される循環系のエマルション圧延油10、及びスプレーノズル6a〜6eから供給される前記循環系のエマルション圧延油10よりも低濃度のエマルション圧延油18は、鋼板によって系外に持ち出されたり、蒸発によって失われたものを除いて、オイルパン11により回収される。この回収されたエマルション圧延油は、回収配管12により一旦ダーティタンク21に蓄えられ、浮上油などが除去された後に、ポンプ24によりクリーンタンク20に送られる。ここで、前記ダーティタンク21とクリーンタンク20の間には、鉄粉等の混入物を除去するためのフィルター装置22が設置され、循環使用されるエマルション圧延油中の異物が除去される。ここで、前記フィルター装置22としては、例えば、ホフマンフィルター、電磁フィルター等のフィルターが複数組み合わされたものを用いることができる。
なお、前記クリーンタンク20、ポンプ23、配管13、スプレーノズル3a〜3e、4b,4c,4d,5d,5e、オイルパン11、回収配管12、ダーティタンク21、ポンプ24、フィルター装置22により、供給されたエマルション圧延油10を回収し循環させるための循環系統が構成される。
ここで、前記エマルション圧延油10及び18を構成する圧延油としては、通常の冷間圧延に用いられるものとして、天然油脂、脂肪酸エステル、炭化水素系合成潤滑油のいずれかを基油としたものを用いることができる。例えば、前記天然油脂としては、鉱物油、パーム油等の植物油や牛脂等の動物油を用いることができる。また、前記脂肪酸エステルとしては、一価アルコールと二価脂肪酸とのエステルであるジエステルや、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールと一価脂肪酸との組合せによるポリオールエステル等を用いることができる。また、前記炭化水素系合成潤滑油としては、種々の粘度を得ることができるポリ−α−オレフィン等を用いることができる。さらに、これらの圧延油には、油性向上剤、極圧添加剤、酸化防止剤などの通常の冷間圧延油に用いられる添加剤を加えても良い。
また、圧延油に添加される界面活性剤としては、イオン系、非イオン系のいずれを用いても良く、通常の循環式クーラントシステムに使用されるものを用いればよい。
前記循環使用されるエマルション圧延油10としては、高強度鋼板の冷間圧延における潤滑性を確保するのに十分高い濃度のものを使用する。従来の冷間タンデム圧延機で循環使用されるエマルション圧延油は、濃度を1.5〜2.0質量%程度に希釈し、界面活性剤を用いて水に油が分散したO/Wエマルションにしたものが用いられるが、本実施形態においては、望ましくは濃度2.0質量%以上、さらに望ましくは2.5〜3.5質量%程度に希釈し、界面活性剤を用いて水に油が分散したO/Wエマルションにしたエマルション圧延油を使用する。これによって、従来の冷間タンデム圧延機に比べて良好な潤滑性を得ることが可能となり、高強度鋼板として、例えば、引張強度590MPa以上の鋼板に対しても、圧延負荷を低減して、高い圧下率をとることが可能となる。なお、圧延油の濃度が3.5質量%を超えると圧延油の原単位が悪化するため、被圧延材の変形抵抗に応じて、その潤滑性を確保するために必要最小限の濃度に設定することが望ましい。
ここで、循環使用されるエマルション圧延油10には、別系統から供給される低濃度のエマルション圧延油18が混入するため、循環使用されるエマルション圧延油10の濃度は経時的に低下してくる。そこで、循環使用されるエマルション圧延油10の濃度管理を行うために、濃度計を供給配管13の途中に設置して、エマルション圧延油10の濃度をオンラインで計測し、その濃度に応じて、クリーンタンク20またはダーティタンク21に圧延油を補給して濃度の調整を行うことが望ましい。
また、スプレーノズル6a〜6eから供給されるエマルション圧延油18は、被圧延材の圧延条件に応じて、その濃度や供給流量を決定することが望ましい。特に、被圧延材が軟質なIF鋼(極低炭素鋼)等で変形抵抗の小さいものの場合には、エマルション圧延油18はエマルション圧延油10に比較してより濃度を低くするか、供給流量を多くする。また、被圧延材が高強度鋼板であっても、冷間圧延後、焼鈍処理を行った後の引張強度が390MPa以下で、トータル圧下率が60%以下の場合には、エマルション圧延油18は前記同様にエマルション圧延油10に比較してより濃度を低くするか、供給流量を多くしてもよい。ここで、エマルション圧延油18の供給流量を多くする理由は、エマルション圧延油18には、鋼板表面に付着する圧延油を洗い流す効果があり、その効果を高めるためである。
また、必ずしもすべてのスプレーノズル6a〜6eを使用して前記エマルション圧延油18を供給する必要はない。例えば、冷間圧延後、焼鈍処理を行った後の引張強度が440MPa程度の鋼板の場合にはスプレーノズル6d,6eのみからエマルション圧延油18を供給し、冷間圧延後、焼鈍処理を行った後の引張強度が270MPa以下の鋼板に対してはスプレーノズル6a〜6eのすべてのノズルからエマルション圧延油18を供給する等、操業条件に応じて使用するノズルを決定してもよい。
ここで、上述のエマルション圧延油18の濃度や供給流量を決定する際の被圧延材の圧延条件とは、被圧延材の板厚、板幅、変形抵抗やトータル圧下率、各スタンドでの圧下率、ロール径や圧延速度などの条件を指し、圧延負荷の観点からより高い潤滑性を必要とするか否かを示す指標となるものをいう。
前記循環使用されるエマルション圧延油10の濃度は、高強度鋼板の冷間圧延に適した濃度まで高い値に設定されているので、軟質材の冷間圧延に対しては濃度が高すぎて、潤滑過多によるスリップが発生しやすくなる。そのため、特に軟質材を圧延する場合には、低濃度のエマルション圧延油18を被圧延材に供給する必要がある。これによって、鋼板に付着している高濃度の圧延油を洗い流す効果が生じ、ロールバイトに導入される油膜厚さを抑制することが可能となり、軟質材の冷間圧延において生じるスリップを防止することが可能となる。
さらに、低濃度のエマルション圧延油18による鋼板表面に付着した高濃度の圧延油を洗い流す効果によって、鋼板1に付着したまま最終スタンドを通過する油分量を低減させることが可能となる。そのため、系外に持ち出される油分量も低減し、圧延油原単位の悪化も防止できる。
特に、最終スタンドの入側に設置されたスプレーノズル6eから供給されるエマルション圧延油18の流量を高めたり、濃度を低下させたり、さらには濃度ゼロ、すなわち水のみを供給することで、より洗い流し効果を高めることも可能である。鋼板による油分の持ち出し量は、最終スタンド入側で圧延油の付着量に大きく依存するからである。
なお、自動車用鋼板等の冷間タンデム圧延においては、最終スタンドのワークロールにダルロールを使用するのが通常であり、その圧下率も5%以下であるのが通常である。この場合、最終スタンドにおいては、硬質材の圧延であっても高い潤滑性は不要であり、低濃度のエマルション圧延油によって油膜を低減させても潤滑不足による問題は生じない。さらに、最終スタンドにダルロールを使用する場合には、ロール表面の凹凸を鋼板表面に転写させる必要があるが、表面粗さの転写を促進させるためには、摩擦係数を上昇させてロールバイト内の面圧を増加させることが有効である。そのため、むしろ潤滑性を悪化させる方が鋼板表面粗さの付与の点では有利となる。したがって、硬質材の圧延であっても最終スタンド入側のスプレーノズル6eからは、低濃度のエマルション圧延油18を供給してもよい。特に、冷間タンデム圧延機の最終スタンドは、通常の4段圧延機ではなく、6段圧延機が配置される場合が多く、ワークロール径が小さいため、中間ロール駆動を採用することが多い。その場合、最終スタンドでのロールバイト入口の油膜厚が厚くなると、ワークロールに付着した油分が、ワークロールと中間ロールとの間でスリップを生じさせて、中間ロールの駆動力がワークロールに伝達されない場合が生じる。そのような観点からも、最終スタンド入側に低濃度のエマルション圧延油を供給することで、ワークロールに付着する油分量を抑制して、ロール間スリップを防止することができる。
なお、低濃度のエマルション圧延油18を供給することにより、上流側のスタンドで鋼板に付着した油分を洗い流す効果は、エマルション圧延油18を供給してから下流側スタンドに到達するまでの時間が長いほど大きい。これは、エマルションのプレートアウト現象とは逆で、一旦形成された油膜を洗い流す再乳化現象は時間に依存する現象だからである。その際、エマルション圧延油18を供給してから下流側スタンドのロールバイトに到達するまでの時間を0.1秒以上確保すれば、実用上十分な洗い流し効果を得ることができる。なお、通常の冷間タンデム圧延機では、圧延の最高速度は1300mpm程度であるので、この場合でも前記スプレーノズル6a〜6eからそれぞれの後段側のロールバイトまでの距離を2.2m以上とすればよい。
また、スプレーノズル6a〜6eからエマルション圧延油18を供給する際には、その下流側スタンドのロールバイト直前でのスプレーノズル3a〜3eからのエマルション圧延油10の供給を止めても良いし、供給し続けるようにしても構わない。スプレーノズル3a〜3eからのエマルション圧延油10の供給を続けていても、スプレーノズル6a〜6eから供給されるエマルション圧延油18の濃度を一層低くしておけば、上流側スタンドから搬送される鋼板表面の付着油分を十分に洗い流すことができる。そのため、軟質材の圧延に対して高濃度のエマルション圧延油10を供給し続けていても過潤滑になることを防止することができる。
上述のエマルション圧延油18としては、望ましくは濃度1.5質量%以下、さらに望ましくは濃度0.5〜1.5質量%程度に希釈し、界面活性剤を用いて水に油が分散したO/Wエマルションにしたエマルション圧延油を使用する。このエマルション圧延油18の濃度が1.5質量%を超える濃度のものを使用すると、軟質材の圧延に対しては濃度が高すぎて、潤滑過多によるスリップが発生しやすくなるからである。一方、濃度が0.5質量%未満になると、エマルション圧延油18を供給するスタンドでの潤滑性が不足して圧延負荷が増加すると共に、ヒートスクラッチなどの発生が懸念されるからである。
また、被圧延材の焼鈍処理後の引張強度が300MPa以下の鋼板に対してのみ、上述のエマルション圧延油18を供給するようにしてもよい。この場合、焼鈍処理後の引張強度が300MPaを超えるような硬質材(高強度鋼板)については、上述のエマルション圧延油18の供給を停止する。被圧延材の焼鈍処理後の引張強度が300MPaを超える硬質材に低濃度のエマルション圧延油18を供給すると、供給された下流側のスタンドでの潤滑性が不足して、圧延負荷の増大を招き、板破断等のトラブルにつながりやすいからである。
なお、被圧延材の焼鈍処理後の引張強度が300MPa以下の鋼板であっても、圧下率の高いものには上述のエマルション圧延油18の供給を停止するようにしてもよい。高圧下率の鋼板に対しては高い潤滑性を要求される場合があるからである。
以下、本発明例として、図1に示す冷間タンデム圧延機について圧延を実施した結果を記載する。
前記冷間タンデム圧延機は、5スタンドの4Hiミルであって、各ワークロール径は500〜560mmで、スピンドルを介して電動機により駆動されている。
循環使用されるエマルション圧延油10は、合成エステルをベースに植物油脂が添加された基油に対して、油性剤、酸化防止剤がそれぞれ1質量%ずつ添加され、界面活性剤としてノニオン系界面活性剤が対油濃度で3質量%添加されているものであり、温度50℃においてエマルション濃度2.5質量%、平均粒径8μmのエマルションを形成しているものを使用した。
これに対して、エマルション圧延油10よりも低濃度のエマルション圧延油18としては、同一の圧延油組成を有し、濃度が0.8質量%、平均粒径8μmのものを用いた。なお、エマルション圧延油18を供給してからその下流側スタンドのロールバイトに到達するまでの時間は、各スタンドとも0.1秒以上を確保している。
本発明例では、冷間圧延後、焼鈍処理を行った後の引張強度が270MPaクラスの鋼板と、590MPaクラスの鋼板の2種類を連続して処理する場合について評価を行った。ここでは、前記270MPaクラスの鋼板を圧延する場合にはエマルション圧延油18を供給し、前記590MPaクラスの鋼板を圧延する場合にはエマルション圧延油18が不使用となるよう、被圧延材の引張強度に応じてエマルション圧延油18の供給の有無を変えて本発明を実施した。
また、比較例として、エマルション圧延油18を使用しなかった場合であって、エマルション圧延油10の濃度を1.5質量%の場合と、2.5質量%の場合について、上記本発明例と同様に焼鈍処理を行った後の引張強度が270MPaクラスの鋼板と、590MPaクラスの鋼板の2種類を連続して処理する場合について評価した。
圧延性の評価は、各条件での圧延負荷に関する問題発生の有無、及びスリップ等の問題発生の有無によって行った。十分な潤滑性を有するか否かの評価である圧延負荷については、使用した冷間タンデム圧延機の圧延速度が1000mpm以上を確保できた場合を「○」、圧延負荷が高く、圧延速度を低く抑えざるを得なかった場合を「×」とした。一方、スリップ等の評価については、圧延機での先進率がすべての速度範囲で正の値をとっている場合を「○」、負の値になった場合を「×」とした。実際のスリップ現象が生じなくても、先進率が負となる状態では、スリップ等が生じる可能性が高まるからである。
上記評価結果を表1に示す。
Figure 2008194721
表1から、本発明例では、エマルション圧延油10の濃度を2.5質量%と通常の冷間圧延の場合に比べて高く設定しているため、冷間圧延後、焼鈍処理を行った後の引張強度が590MPaクラスの高強度鋼板に対しても十分な潤滑性を有していることがわかる。同時に、前記引張強度が270MPaクラスの軟質な鋼板に対しては、エマルション圧延油18として0.8質量%のエマルション圧延油を供給しているので、各スタンド間で鋼板表面に付着している油分を洗い流す効果が生じて、潤滑過多は生じなかった。なお、前記エマルション圧延油18は、本発明例では各スタンドで20L/minの供給量とした。
一方、比較例においては、エマルション圧延油10の濃度が1.5質量%の場合には、軟質な前記引張強度が270MPaクラスの鋼板に適した濃度になっているため、前記引張強度が590MPaクラスの高強度鋼板に対しては潤滑不足により、圧延負荷の問題が生じた。
また、エマルション圧延油10の濃度が2.5質量%の場合には、硬質な前記引張強度が590MPaクラスの高強度鋼板に適した濃度になっているため、前記引張強度が270MPaクラスの軟質な鋼板に対しては潤滑過多によるスリップ等の問題が生じた。
したがって、比較例のように単一の濃度条件では軟質材、硬質材の両者に適するエマルション圧延油とすることができないのに対して、本発明例では、広い強度範囲の鋼板に対して安定した圧延が可能であることが確認できた。
さらに、比較例において濃度2.5質量%のエマルション圧延油10を使用した場合には、圧延油原単位が0.33L/Tであったのに対して、本発明例では0.28L/Tとなって、エマルション圧延油18による軟質材表面の付着油分の洗い流し効果によって、原単位の向上も図ることができることが確認できた。
なお、本発明例では、前記引張強度が590MPaクラスの高強度鋼板と270MPaクラスの軟質な鋼板のみを対象としているが、鋼種、サイズ等も多種多様な被圧延材から構成される実際のラインにおける生産においては、本発明例の方法を被圧延材ごとに適宜設定された条件で行うことで、実際の生産ラインへの適用は容易にできる。
本発明に係る複数スタンドを有する循環給油方式の冷間タンデム圧延機の概略構成の一例を示した図である。 従来技術に係る5スタンドを有する冷間タンデム圧延機における循環給油方式によるエマルション圧延油の供給方法を示した図である。
符号の説明
1 鋼板
2a,2b,2c,2d,2e 圧延機
3a〜3e,4b〜4d,5d,5e、5e,6a〜6e スプレーノズル
8a〜8e ミキサー
10 第1のエマルション圧延油
11 オイルパン
12 回収配管
13、14、16 配管
18 第2のエマルション圧延油
20 クリーンタンク
21 ダーティタンク
22 フィルター装置
23,24 ポンプ
31 圧延油原液タンク
32 温水タンク

Claims (4)

  1. 冷間タンデム圧延機の各圧延スタンドに、循環使用される第1のエマルション圧延油を供給し、さらに、少なくとも一つの圧延スタンドの入側に、前記第1のエマルション圧延油よりも低濃度の第2のエマルション圧延油を、前記第1のエマルション圧延油とは別系統により供給することを特徴とする金属板の冷間圧延方法。
  2. 第1のエマルション圧延油の濃度が2.0質量%以上であることを特徴とする請求項1に記載の金属板の冷間圧延方法。
  3. 第2のエマルション圧延油の濃度が1.5質量%以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の金属板の冷間圧延方法。
  4. 第2のエマルション圧延油の供給を、被圧延材の焼鈍処理後の引張強度が300MPa以下の金属板に対して行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の金属板の冷間圧延方法。
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