JP2011056577A - 圧延油の供給方法およびタンデム式冷間圧延機 - Google Patents

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Abstract

【課題】リサキュレーション方式のタンデム式冷間圧延機において、高圧下圧延と鋼板表面の付着油量の低減化を同時に実現する圧延油エマルションの供給方法を提案する。
【解決手段】タンデム式冷間圧延機の各圧延スタンドの圧延ロールおよびストリップに対して、圧延油エマルションを循環供給する際し、最終圧延スタンドを除く圧延スタンドに対しては、通常濃度の圧延油エマルションを供給する一方、最終圧延スタンドに対しては、循環中の圧延油エマルションから、粒径の大きい油滴を選択的に分離し、通常濃度よりも低い濃度の圧延油エマルションを供給する。
【選択図】図2

Description

本発明は、冷間圧延を行う際の圧延油エマルションの供給方法およびその供給方法を利用するタンデム式冷間圧延機に関するものである。
近年、地球環境問題の高まりや、ユーザーニーズの多様化を受け、冷間圧延製品の高強度化、薄物化(ゲージダウン)が進行する傾向にある。また、タンデム式冷間圧延機でも、軟鋼だけでなく、ハイテン(高張力鋼板)、高炭素鋼、薄物硬質ブリキ材、あるいはステンレス鋼など、いわゆる難圧延材を圧延する機会が飛躍的に増えてきている。以下、被圧延材をストリップと称する。
一方、鋼板の表面性状に対する要求は年々厳しくなってきており、鋼板表面の汚れ、鋼板表面への油分・鉄分等の過度な付着は後工程の脱脂工程への負担が大きく、また、環境調和の観点からも改善が求められている。さらに、鋼板の形状や平坦度に対する要求も高まっている。
上記した理由から、タンデム式冷間圧延機での圧延は、第1圧延スタンドから最終圧延スタンド前段までは高圧下率での圧延として、ゲージダウンを図り、最終圧延スタンドでは、低圧下率として鋼板形状を矯正し、かつ表面粗さを調整するという方法が主流となっている。
上述のような圧延の際には、圧延中のロールとストリップの摩擦を減少させるために、潤滑を行う必要があり、また同時に、圧延時の加工発熱や摩擦発熱を除去するために、ロールとストリップの冷却を行う必要がある。
ところで、近年、圧延油の供給に際しては、リサキュレーション方式を採用する圧延機が増えてきている。ここに、リサキュレーション方式とは、潤滑と冷却の両方を兼ねて、圧延油エマルションを、所定の濃度(エマルション中の圧延油濃度:1〜3質量%程度)で、ロールとストリップの上下面にそれぞれ供給し、これを循環して使用する方法である。
図1に、一般的なリサキュレーション方式を用いたタンデム式冷間圧延機の構造を示す。図中、1はノズル、2はメインタンク、3は回収用オイルパン、4は補給タンク、5は第1圧延スタンド、6,7,8は中間圧延スタンド、9は最終圧延スタンドである。
図1に示したように、リサキュレーション方式では、ノズル1から所定濃度の圧延油エマルションを、タンデム式冷間圧延機の各圧延スタンド5,6,7,8および9の圧延ロールとストリップに供給して、潤滑と冷却を行う。また、使用後の圧延油を、回収用オイルパン3にてメインタンク2に回収し、メインタンク2にて撹拌しつつ、各ノズル1に供給し、各ノズル1から、再び圧延油エマルションを各圧延スタンド5,6,7,8および9の圧延ロールとストリップに供給するという方式である。
また、ストリップによる圧延油の持ち出しによるエマルション中の圧延油濃度の低下や、ヒュームアウトなどによる圧延油濃度の低下が生じた場合には、補給タンク4から圧延油を補給する。なお、新規に圧延油を補充する際には、補給タンク4に補充する。
このように、リサキュレーション方式は、圧延油エマルションを循環して供給するので、圧延油原単位に優れている。
しかし、上記した方式では、全圧延スタンド5,6,7,8および9で同じ濃度の圧延油エマルションを供給することになる。従って、各圧延スタンドにおいて、その潤滑能を圧延油の濃度により独立して制御することはできない。
ここで、鋼板表面の付着油量は少ないほうが、上述の鋼板の持ち出しによる圧延油濃度の低下が少ないため望ましい。また、タンデム式冷間圧延機による圧延の場合、鋼板表面の付着油量は最終圧延スタンドに供給するエマルションの圧延油濃度に大きく左右される。従って、最終圧延スタンドに供給する圧延油濃度を低くすることができれば、鋼板表面の付着油量は大幅に低減する。
しかしながら、リサキュレーション方式の場合、圧延機全体に循環しているエマルションの圧延油濃度を低くすることは、少なくとも第1圧延スタンドから最終圧延スタンド前段までの圧延時の摩擦係数を増加させることになるので、圧延動力が増加し、また、ロールとストリップが焼付きやすくなるという問題が生じる。また、前述したような高圧下圧延によるゲージダウンが困難となるおそれがある。さらに、最終スタンドのみ、専用の循環タンクを保有し、第1から最終スタンド前段までとは異なる低濃度エマルションを供給することは、大きな設備投資が必要となる。
これに対し、例えば、特許文献1には、いわゆるハイブリッド方式が提案されている。この方式は、図1に示した循環給油方式の圧延油エマルション供給系統に加えて、さらに別の供給系統より高濃度かつ小流量の圧延油エマルションを鋼帯に供給するものである。
また、特許文献2には、回収した圧延油エマルションを高濃度の圧延油エマルションと低濃度の圧延油エマルションに分離し、潤滑性に優れた高濃度の圧延油エマルションと、冷却能に優れた低濃度の圧延油エマルションをそれぞれ個別のヘッダから同一スタンドのロールバイト部およびロール胴部に供給する仕組みになる圧延機が開示されている。
特開2000−94025号公報 特開2004−209531号公報 特開2000−288303号公報
しかしながら、特許文献1に開示の技術は、圧延油エマルションの供給量が制限されることが課題である。すなわち、循環給油方式の圧延油エマルション供給系統とは別系統から供給された高濃度圧延油エマルションが循環系統の低濃度圧延油エマルションと合流するため、被圧延材を大量に冷間圧延する際には、高濃度圧延油エマルションを大量に供給することが必要となり、循環系統のエマルションの圧延油濃度が大幅に上昇する。このような場合、引き続いて軟鋼などの低潤滑能を必要とする対象材を圧延すると、過潤滑によるスリップが発生して圧延が困難となるので、循環系統のエマルションの圧延油濃度を低減する必要があるが、このためには大量の水の補給が必要となる。従って、実際の製造工程では、後続の圧延に配慮して、循環系統のエマルションの圧延油濃度上昇が許容範囲となるように、高濃度圧延油エマルションの濃度や流量を制限する必要が生じるため、本来の機能を十分に活用できない場合がある。
また、特許文献2に開示の技術では、高濃度圧延油エマルションの濃度を安定して制御することが困難なことが問題となる。すなわち、分離装置にて高濃度圧延油エマルションと低濃度圧延油エマルションとに分離させるわけであるが、分離後のエマルション中の圧延油濃度は、回収した分離前の圧延油エマルションの状態(圧延油濃度、粒径や鉄分濃度の影響が大きいが、これらは、不可避的に変化するものである)や、濾過膜の状態(目詰まりの状態など)に大きく左右される。
従って、分離後のエマルション中の圧延油濃度が大きく変化し、所望濃度の圧延油エマルションを得ること、つまり潤滑能を必要に応じて制御することが困難であった。
また、タンクでエマルション中の圧延油濃度を測定し、測定結果に応じて圧延油や水を加え、所望の濃度に調整することも可能ではあるが、所望濃度に至るまでの応答性が低いという問題や、設備が巨大化するなど、弊害が大きい。
上記した理由により、特に、タンデム式冷間圧延機では、各圧延スタンドに対し、所望濃度の圧延油エマルションを安定して供給する技術が求められていた。
本発明は、上記の現状に鑑み開発されたもので、高圧下圧延と鋼板表面の付着油量の低減化を同時に実現するために、第1圧延スタンドから最終圧延スタンド前段の圧延スタンドまでと、最終圧延スタンドへの圧延油エマルションを個別に制御し、第1圧延スタンドから最終圧延スタンド前段の圧延スタンドまでは通常の圧延油濃度とする一方、最終圧延スタンドについては圧延油濃度を下げて安定的に供給することからなる圧延油エマルションの供給方法を提案することを目的とする。
また、本発明は、上記した供給方法を利用するタンデム式冷間圧延機を提供することを目的とする。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.タンデム式冷間圧延機の各圧延スタンドの圧延ロールおよびストリップに対して、圧延油エマルションを循環供給する際し、最終圧延スタンドを除く圧延スタンドに対しては、通常濃度の圧延油エマルションを供給する一方、最終圧延スタンドに対しては、循環中の圧延油エマルションから、粒径の大きい油滴を選択的に分離し、通常濃度よりも低い濃度の圧延油エマルションを供給することを特徴とする圧延油の供給方法。
2.前記低濃度の圧延油エマルションは、通常濃度の圧延油エマルションより、粒径の小さい圧延油エマルションであることを特徴とする前記1に記載の圧延油の供給方法。
3.リサキュレーション方式の圧延油エマルション供給装置を備えるタンデム式冷間圧延機であって、
圧延ロールおよび/またはストリップに圧延油エマルションを供給するノズルと、
最終圧延スタンド以外のノズルへの圧延油エマルションの供給を司ると共に、全ての圧延スタンドから回収した圧延油エマルションを一旦貯蔵して濃度を再調整し、再度、該最終圧延スタンド以外のノズルに圧延油エマルションを供給するメインタンクと、
該メインタンク中の圧延油エマルションの一部を受給し、粒径の大きい油滴を選択的に分離し、粒径の小さい低濃度の圧延油エマルションとして、最終圧延スタンドのノズルに圧延油エマルションを供給する油水分離装置と、
該分離した粒径の大きい油滴を、該メインタンクおよび/または該メインタンクへの補給タンクに送液する分離油の送給手段と、
を備えていることを特徴とするタンデム式冷間圧延機。
4.前記油水分離装置が、繊維フィルタを備えていることを特徴とする前記3に記載のタンデム式冷間圧延機。
本発明によれば、タンデム式冷間圧延機による冷間圧延を行う際、最終圧延スタンドのみ圧延ロールおよびストリップに低濃度圧延油エマルションを供給することができるため、高圧下圧延を行うのと同時に脱脂工程への負荷を低減化する鋼板表面の汚れの低減等が効率よく実現できる。
また、本発明に従い、循環中の圧延油エマルションから粒径の大きい油滴を選択的に分離して粒径の小さい圧延油エマルションとした場合、その圧延油エマルションの平均粒径も下げることができ、その結果、同一濃度であっても鋼板表面への圧延油の付着油量をさらに低減することができる。
従来のリサキュレーション方式のタンデム式冷間圧延機の構成図である。 本発明に従うリサキュレーション方式のタンデム式冷間圧延機の構成図である。 冷間圧延後の鋼板の付着油量と鋼板の汚れを粘着テープに移し取って測定した白色度を従来例と発明例で比較して示したグラフである。
以下、本発明について、最終圧延スタンドに低濃度の圧延油エマルションを供給する方法をその実施に用いて好適な装置と共に説明する。
最終圧延スタンドに低濃度の圧延油を供給する方法としては、以下に説明するとおり、同一の循環系統で圧延油の一部を最終スタンド用に再調整する仕組みとする。
図2に、本発明に従うリサキュレーション方式のタンデム式冷間圧延機の構成を示す。図中、11aは最終圧延スタンド以外のノズル、11bは最終圧延スタンドのノズル、12はメインタンク、13は回収用オイルパン、14は補給タンク、15は第1圧延スタンド、16,17,18は中間圧延スタンド、19は最終圧延スタンドであり、20が油水分離装置、21が分離油の送給手段である。
本発明では、最終圧延スタンド以外のノズル11a、最終圧延スタンドのノズル11b、メインタンク12、回収用オイルパン13、補給タンク14、第1圧延スタンド15、中間圧延スタンド16,17,18、および最終圧延スタンド19は、図1に示したような従来公知の設備、装置を使用することができる。
なお、図2に示した各圧延スタンドは、それぞれ一対の圧延ロールおよびバックアップロールからなる4段圧延機の場合について示しているが、2段、さらには6段以上の多段圧延機を用いることもできる。また、中間圧延スタンドの数も、必要に応じて増減可能である。
本発明のタンデム式冷間圧延機は、上記した油水分離装置20および分離油の送給手段21を備えているところに特徴がある。
この油水分離装置20は、圧延ロールおよびストリップに循環供給されている圧延油エマルションから粒径の大きい油滴を捕集して分離する機能を有しており、この分離後の小粒径化され低濃度化した圧延油エマルションを、ノズル11bを用いて最終圧延スタンド19に供給するのである。
分離油の送給手段21は、油水分離装置20で分離した粒径の大きい油滴(分離油)を、メインタンク12および/または補給タンク14に送給する。この2つの送液ルートを持つことにより、本発明では、粒径の大きい油滴をそのままメインタンク12に戻し、メインタンク12の圧延油濃度を一定に保つことができ、また、循環する圧延油エマルションの濃度が過多となりスリップが発生した際など、メインタンク12の濃度を低減したい場合には、補給タンク14に一旦貯留して、圧延油濃度を調整することもできる。
圧延油の種類が同じ場合は、先に述べたように、鋼板表面への油分の付着量はエマルション中の圧延油の濃度に関係がある。また、圧延油エマルションの粒径および流量によっても、鋼板表面への油分の付着量は変わってくるが、圧延ロールおよびストリップの冷却能力を考えると、最終圧延スタンドの圧延油エマルションの流量を低減することは好ましくない。一方、圧延油エマルションの粒径は、ある程度小さい方が油分の付着量が少なくなることが分かっている。
従って、本発明では、圧延油エマルションの濃度を、その粒径を考慮して制御することにした。
また、本発明における圧延油エマルションの粒径測定の方法は、従来公知の測定方法がいずれも適用可能であるが、例えば、市販のコールターカウンタ(液体中に分散された粒子の径を測定する機器)を用いて測定することができる。
ここに、一般的な、メインタンク中の圧延油エマルション濃度(通常濃度)は、1〜3質量%程度であり、圧延油の粒径は、2〜30μm程度である。
本発明において、最終圧延スタンドに供給する圧延油エマルション濃度は、上記した圧延油の通常濃度に対して、50〜80%程度とするのが好ましい。
というのは、通常の圧延油濃度に対して50%に満たないと、最終圧延スタンドが潤滑不足になるおそれがあり、一方、80%を超えると、圧延油の付着量低減化の効果が低下するからである。
本発明では、圧延油エマルションの油滴の粒径を調整する。すなわち、圧延油の平均粒径を、上記した一般的な圧延油エマルションの粒径に対して、その30〜80%程度となるまで小粒径化するとよい。
というのは、一般的な圧延油の粒径に対して30%未満にするのは、油水分離装置での分離効率が低下し、一方、80%を超えると、圧延油の付着量低減化の効果が低下するからである。
具体的には、通常の油滴の粒径:2〜30μm程度に対して、使用する油滴の粒径を、2〜10μm程度とするのである。
本発明における油水分離装置20の分離手段としては、繊維フィルタを用いることができる。例えば、特許文献3に記載の繊維フィルタは好適に用いることができる。
かかる繊維フィルタとしては、例えば、単繊維直径0.1〜3.7μmの繊維を主体とした繊維充填率が10〜70%で繊維表面の臨界表面張力が40dyne/cm 以上である繊維状シートと、疎水性の繊維状シートと、単繊維直径5〜40μmの繊維を主体とした繊維充填率が20%以下で繊維表面の臨界表面張力が50dyne/cm 以下である繊維状シートとを順に重ねあわせたもの等が好ましい。
この繊維フィルタによる油滴の分離では、フィルタ孔径より小さい油滴はフィルタを通過し、フィルタ孔径より大きい油滴がフィルタの繊維に捕捉されやすい。繊維に捕捉された油滴は、次第に凝集することによって、さらに粗大な油滴となり繊維から離れ浮上し、油分として容易に回収することができる。
すなわち、繊維フィルタを通過した圧延油エマルションは、粒径の大きい油滴が取り除かれるため、圧延油濃度が低減化すると同時に、その圧延油エマルションの平均粒径も下げることができ、その結果、同一濃度であっても鋼板表面への圧延油の付着油量を効果的に低減することが可能となるのである。
また、本発明に使用する繊維フィルタは、圧延油エマルションの粒径や使用する界面活性剤の種類等に応じて、フィルタ孔径や材質、膜厚等を選定することができる。
なお、圧延ロールやストリップに供給され、回収された圧延油エマルションには、鉄摩耗粉などが混入している。これは、圧延時にロールバイトで圧延ロールやストリップから磨耗粉が発生し、それらが凝集するためであるが、この異物が発生すると、油水分離装置の効率低下や寿命の低下を引き起こすおそれがある。そのため、メインタンク12や油水分離装置20の前等に、異物除去フィルタを設置することが好ましい。
異物除去フィルタとしては、冷間タンデムミル等で使用される、フラットベットフィルタやホフマンフィルタなどを用いることが好ましいが、従来公知の他の異物除去用フィルタ等を用いてもよい。
図2中、分離油用のタンクと新規購入油用のタンクを1つにして補給タンク14として記しているが、別々のタンクとしてもよい。
リサーキュレーション方式の5スタンドのタンデム冷間圧延機を用いて、本発明の効果を確認した。
圧延油としては、エステルを基油とし、油性剤、極圧剤等を添加し、ノニオン系の界面活性剤と混合して、エマルション化したものを用いた。この時、メインタンクの圧延油の濃度が0.9〜1.0質量%、平均粒径が10〜11μmとなるように調整した。
さらに、最終圧延スタンドは、油水分離装置で上記圧延油エマルションを処理し、圧延油の濃度が約0.6質量%、平均粒径が約7μmとなるように調整した。なお、油水分離には、孔径:7μmのポリエチレン製繊維フィルタを用いた。
圧延条件は、板幅:1400mm、冷延入側鋼板厚み:3.5mm、冷延出側鋼板厚み:1.0mm、最終圧延スタンド圧延速度:800mpmとして、低炭素鋼を5コイル圧延した。
これに対し、油水分離装置等のない従来のリサーキュレーション方式の5スタンドのタンデム冷間圧延機を用いて、同様の冷間圧延を行った。
圧延油には、上記発明例の試験と同じ圧延油をエマルション化したものを用いた。この時、メインタンクの圧延油の濃度が0.9〜1.0質量%、平均粒径が10〜11μmとなるように調整した。
圧延条件も上記と同じく、板幅:1400mm、冷延入側鋼板厚み:3.5mm、冷延出側鋼板厚み:1.0mm、最終圧延スタンド圧延速度:800mpmとして、低炭素鋼を5コイル圧延した。
上記試験における各鋼板表面の付着油量は、コイルの定常部から300mm長さのサンプルを切出して、表面および裏面の付着油をアセトンに溶解させたのち、アセトンを揮発させた残りを油分として求めた。
また、鋼板表面の汚れは、コイルの定常部よりサンプルを切出し、テープチェック(鋼板表面に半透明のテープを粘着、剥離させ、テープに移着した汚れを白色光度計で測定)による白色度で評価した。
なお、上記試験中、いずれの試験でも、鋼板の形状悪化や循環している圧延油の循環が不安定となることはなかった。
図3に、得られた結果をグラフで示す。図3(a)は、冷間圧延後の鋼板表面の油付着量を、また、図3(b)は、冷間圧延後のテープチェックによる白色度の評価結果を発明例と従来例でそれぞれ比較して示したものである。
同図(a)および(b)に示したように、本発明に従う冷間圧延を施した鋼板は、鋼板表面の油付着量が少なく、また、テープチェックによる白色度も高いことがわかる。
ここに、油付着量が少ないということは、本発明が後工程である脱脂工程の負荷を低減できるだけでなく圧延油の原単位低減にも有効であることを意味する。
また、テープチェックによる白色度が高いということは、テープに移着した圧延油、磨耗粉などが少なく、鋼板汚れが改善されていることを意味する。
以上の結果から、本発明によれば、最終圧延スタンド前段までは、高圧下圧延の圧延油エマルション濃度を保ちつつ、最終圧延スタンドのロールとストリップに供給する圧延油エマルションのみ低濃度・小粒径とすることによって、高圧下圧延の冷間圧延と脱脂工程の負荷の低減化や鋼板汚れの改善を同時に達成できることが分かる。
本発明によれば、タンデム式冷間圧延機による冷間圧延を行う際に、リサキュレーション方式を用いて、効果的に圧延油エマルションを圧延機に供給することができる。そのため、高圧下圧延の冷間圧延と同時に脱脂工程の負荷の低減も図ることができ、もって、鋼板製造における省力化や低コスト化、環境負荷低減化等に貢献する。
1 ノズル
2 メインタンク
3 回収用オイルパン
4 補給タンク
5 第1圧延スタンド
6,7,8 中間圧延スタンド
9 最終圧延スタンド
11a 最終圧延スタンド以外のノズル
11b 最終圧延スタンドのノズル
12 メインタンク
13 回収用オイルパン
14 補給タンク
15 第1圧延スタンド
16,17,18 中間圧延スタンド
19 最終圧延スタンド
20 油水分離装置
21 分離油の送給手段

Claims (4)

  1. タンデム式冷間圧延機の各圧延スタンドの圧延ロールおよびストリップに対して、圧延油エマルションを循環供給する際し、最終圧延スタンドを除く圧延スタンドに対しては、通常濃度の圧延油エマルションを供給する一方、最終圧延スタンドに対しては、循環中の圧延油エマルションから、粒径の大きい油滴を選択的に分離し、通常濃度よりも低い濃度の圧延油エマルションを供給することを特徴とする圧延油の供給方法。
  2. 前記低濃度の圧延油エマルションは、通常濃度の圧延油エマルションより、粒径の小さい圧延油エマルションであることを特徴とする請求項1に記載の圧延油の供給方法。
  3. リサキュレーション方式の圧延油エマルション供給装置を備えるタンデム式冷間圧延機であって、
    圧延ロールおよび/またはストリップに圧延油エマルションを供給するノズルと、
    最終圧延スタンド以外のノズルへの圧延油エマルションの供給を司ると共に、全ての圧延スタンドから回収した圧延油エマルションを一旦貯蔵して濃度を再調整し、再度、該最終圧延スタンド以外のノズルに圧延油エマルションを供給するメインタンクと、
    該メインタンク中の圧延油エマルションの一部を受給し、粒径の大きい油滴を選択的に分離し、粒径の小さい低濃度の圧延油エマルションとして、最終圧延スタンドのノズルに圧延油エマルションを供給する油水分離装置と、
    該分離した粒径の大きい油滴を、該メインタンクおよび/または該メインタンクへの補給タンクに送液する分離油の送給手段と、
    を備えていることを特徴とするタンデム式冷間圧延機。
  4. 前記油水分離装置が、繊維フィルタを備えていることを特徴とする請求項3に記載のタンデム式冷間圧延機。
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