JP4923789B2 - 金属板の冷間圧延方法 - Google Patents

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Description

本発明は、金属板の冷間圧延方法に関するものであり、従来のエマルションタイプのクーラントを使用した場合と同等以上の優れた潤滑性を確保しながら、クーラントによる金属板や圧延ロールの冷却性・洗浄性、クーラント中の固形物粉の分離性などの点でも優れた効果が得られる冷間圧延方法を提供するものである。
冷間圧延では、圧延ロールと金属板の潤滑および冷却の2つの機能が重要である。潤滑は、ワークロールと金属板との間(ロールバイト)の摩擦係数を下げて、圧延荷重を低減するものであり、冷却は、ロールバイトでの摩擦発熱や加工発熱によって圧延ロールや金属板の温度が過度に上昇しないようにするために必要である。
このような潤滑機能と冷却機能を発揮させるために、鋼板などの金属板の冷間圧延では、鉱物油、天然油脂、合成エステルなどの不水溶性油剤(圧延油)を界面活性剤で水に分散・希釈化したエマルションがクーラントとして用いられている。このエマルションは、圧延油が1〜5mass%程度の濃度で且つ平均粒径5〜15μm程度の油滴として含まれるO/W型(水中油滴型)のものであり、潤滑性能と冷却性能とを兼ね備えたクーラントとして使用することができる。
このようなエマルションタイプのクーラント(以下、主に“エマルション圧延油”という)は、クーラントタンクから圧延部(金属板や圧延ロール)に供給されるが、圧延油の使用量の低減及び廃液量の低減のために、循環使用されるのが通常であり、これを循環給油方式(リサーキュレーション方式)と呼ぶ。
エマルション圧延油は、金属板や圧延ロールにスプレー供給されると、金属板表面やロールバイト入口において水が排除されながら油膜が形成され(このような現象をプレートアウトと呼ぶ。)、このようにして形成された油膜がロールバイトにおける潤滑性を向上させる。すなわち、ロールバイトに導入される油膜が厚いほど潤滑性は向上し、硬質の金属板であっても高圧下の圧延が可能となる。
このようなエマルション圧延油を用いる場合の潤滑性能を向上させる技術として、例えば、特許文献1には、圧延油を所定温度以上にして供給することで、プレートアウト性能を向上させる方法が示されている。
一方、冷間圧延の高速化に伴って、ヒートスクラッチのような欠陥を防止するためには、冷却性能の向上が必要であり、特許文献2には、クーラント量や冷却水の温度を制御して、金属板やロール温度を低下させる方法が開示されている。また、特許文献3には、圧延速度に応じてクーラント流量を制御することで冷却効果を高める方法が示されている。
さらに、ハイブリッド潤滑システムに関しては、特許文献4に、ロールクーラント液の温度を潤滑用に用いるハイブリッド液の温度よりも低くすることで、ロール冷却の効果を増大させる方法が示されている。
特開2000−218305公報 特開昭56−111505公報 特開2002−66622公報 特開平9−122733公報
近年の環境問題に対する認識の高まりに伴い、潤滑剤のロングライフ化や廃液量の削減に対するニーズが高まりつつあり、そのような観点からは、クーラントを循環使用するリサーキュレーション方式が重要な役割を果たしていくものと考えられる。
しかし、クーラントを循環使用する方式については、いずれもエマルション圧延油を使用していることから、以下に述べるような種々の問題が生じている。
第1の問題は、エマルション圧延油を使用した場合、フィルターロス、スカムアウト、ヒュームロスなどが潤滑剤の消費量を増大させる点である。
フィルターロスは、冷間圧延によって発生する摩耗粉などの固形物粉がエマルションに取り込まれ、これをフィルターによって分離除去した場合に、エマルション中の油滴もフィルターに捕捉されてしまうために生じる。スカムアウトは、摩耗粉などの固形物粉がエマルションの油滴中に抱き込まれ、圧延油の劣化物との混合物であるスカムが発生することにより生じる油分のロスである。また、ヒュームロスは、特に流動点の高い天然油脂を使用する場合には、クーラント全体の温度を50〜60℃程度まで加熱して循環使用しており、これによって生じるフュームに油分が含まれているために生じるロスである。
これらは、エマルション圧延油を使用する場合には、本質的な解決が困難な課題であり、基油の種類や粘度の選定、界面活性剤の種類や添加量の最適化などの対策がとられているものの、根本的な解決には至っていない。
第2の問題は、エマルション圧延油はクーラント中に含有する鉄分や温度、pHなどの要因によって乳化安定性が変化しやすいため、循環使用する際の圧延潤滑性を一定に維持するためには、エマルション圧延油の管理に多大な労力を要する点である。例えば、エマルション圧延油の濃度、温度、ケン化価、酸価、pHなどを、循環使用中にサンプリングしたクーラントを用いて定期的に分析し、その結果に応じて、エマルション圧延油の状態を一定に保つように管理する必要がある。また、鉄粉除去装置などのフィルター設備や、クーラントの状態を管理するための各種計測器も必要となり、それらの維持・管理にも多大な労力を要する。
第3の問題としては、エマルション圧延油は、冷却のために圧延ロールや金属板にスプレーされるのが通常であるが、エマルション中の油分がロール表面などに油膜を形成していくため、冷却効果が阻害されるという問題がある。
これに対して冷却効果を向上させるためには、特許文献2や特許文献4に示されるようにエマルション圧延油の温度を低下させるのが有効であるが、圧延油の劣化成分が摩耗粉などの固形物粉と混合体を形成してスカムを生成すると配管中での詰まりを生じたりするため、エマルション圧延油は一定以上の温度に維持する必要があり、エマルション圧延油の温度を低下させて冷却性能を向上させるのにも一定の限界がある。
また、特許文献3に示されるように、圧延速度に応じて冷却水の流量を制御することで冷却効果を高めることも可能ではあるが、水量を増加させるために循環ポンプの能力アップのための設備費用を要するとともに、循環させるための電力費用も要することから、必ずしも経済的な方法とはいえない。
さらに、特許文献1に示されるように潤滑性の向上のためにクーラントを加熱すると、冷却性能が低下することから、潤滑性と冷却性の両立を図ることは容易ではない。
第4の問題は、エマルション圧延油を使用する場合に解決困難な問題として、冷間圧延に際して、金属板表面からの剥離によって圧延ロールに付着した金属異物が、ワークロールとバックアップロールとの間に噛み込まれたり、ロールバイトに飛び込んだりして、ワークロール表面に疵が形成されやすい点が挙げられる。このようにしてワークロール表面に疵が形成されると、それが金属板の表面に転写され、表面欠陥として歩留りを大幅に低下させる原因ともなる。
以上のようにエマルション圧延油を使用した循環給油方式には、従来技術では解決できない種々の問題点がある。
一方、調質圧延のように、軟質化した鋼板を軽圧下で圧延する場合には、優れた潤滑性は必要なく、逆に安定した伸長率を得るためには摩擦係数は高いことが要求される。このため湿式の調質圧延では、水溶性の物質を水に溶解させたソリューションタイプのクーラント(調質圧延液)が使用されている。
このようなソリューションタイプのクーラントは、潤滑成分自身が水への溶解性を示すため、エマルション圧延油のような大きな油滴を形成しない。したがって、冷間圧延において発生する摩耗粉などの固形物粉とはすぐに分離し、クーラント中から固形物粉を除去することが極めて容易となって、フィルター設備の簡易化も可能である。また、固形物粉を油分中に抱き込むこともないため、スカムの生成によるロスが極めて少なく、さらに、常温で使用することが可能であるためヒュームロスも少ない。また、洗浄性にも優れているため、圧延後に金属板上に残留する潤滑成分が極めて少なく、鋼板による持ち出しロスも低減できる。
しかしながら、調質圧延に用いられているような従来のソリューションタイプのクーラントは、エマルション圧延油に較べて潤滑性が著しく劣ることから、通常のタンデム圧延などの冷間圧延に使用することは困難であると考えられてきた。このため従来では、タンデム式圧延機やレバース式圧延機などの圧下率を大きくとる冷間圧延では、潤滑性に優れたエマルション圧延油が使用され、調質圧延のように伸長率が5%以下の軽圧下域では、摩擦係数が高いソリューションタイプのクーラントが使用されており、圧延条件に応じて両者は明確に使い分けられている。
なお、特許文献5には、調質圧延であっても圧下率20%程度の高圧下を行うためのソリューションタイプの調質圧延液が開示されているが、この調質圧延液は焼鈍後の軟質化された鋼板の1パス圧延には適用できても、タンデム圧延やレバース圧延のような多パス圧延において加工硬化が生じるような厳しい圧延条件においては十分な潤滑性を得ることができない。
特開昭61−7395号公報
したがって本発明の目的は、以上のような従来技術の課題を解決し、金属板の圧延において従来のエマルションタイプのクーラントを使用した場合と同等以上の優れた潤滑性が得られるとともに、クーラントによる金属板や圧延ロールの冷却性・洗浄性、クーラント中の固形物粉の分離性などの点でも優れた効果が得られる金属板の冷間圧延方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するためにソリューションタイプのクーラントとして用いられる水溶液の特性、さらには、この特性と圧延される金属板の温度との関係などについて検討を行い、その結果、水溶性潤滑剤を溶解させることにより曇点を有する水溶液をクーラントとして用いた場合、この水溶液は曇点未満の温度域と曇点以上の温度域とでクーラントとしての特性が変化し、このようなクーラントの性質を利用しつつ、圧延される金属板の温度を管理することにより、エマルションタイプのクーラントと同等以上の圧延潤滑性と、ソリューションタイプのクーラントに特有の優れた冷却性、固形物粉分離性、洗浄性などを同時に満足させつつ、金属板の冷間圧延方法を行うことができることを見出した。
本発明はこのような知見に基づきなされたもので、以下を要旨とするものである。
[1]クーラントを供給しつつ金属板の冷間圧延を行なう方法において、
水溶性潤滑剤を主体とする潤滑剤を水で希釈し且つ前記水溶性潤滑剤を溶解することにより曇点を有する溶液をクーラントとして用いるとともに、少なくとも一部の圧延スタンド又は圧延パスにおいて、金属板が前記クーラントの曇点以上の温度でロールバイトに進入して圧延されるようにしたことを特徴とする金属板の冷間圧延方法。
[2]上記[1]の冷間圧延方法において、曇点未満の温度のクーラントを金属板及び/又は圧延ロールに供給することを特徴とする金属板の冷間圧延方法。
[3]上記[1]又は[2]の冷間圧延方法において、クーラントを循環使用するとともに、金属板及び/又は圧延ロールに供給後、回収されたクーラントに対して、その曇点未満の液温で液中固形物の除去処理を施すことを特徴とする金属板の冷間圧延方法。
[4]上記[1]〜[3]のいずれかの冷間圧延方法において、クーラントの曇点が30〜80℃であることを特徴とする金属板の冷間圧延方法。
[5]上記[1]〜[4]のいずれかの冷間圧延方法において、水溶性潤滑剤の少なくとも一部が平均分子量500〜5000のポリアルキレングリコールであることを特徴とする金属板の冷間圧延方法。
[6]上記[1]〜[5]のいずれかの冷間圧延方法において、水溶性潤滑剤を1〜15質量%含有する水溶液をクーラントとして用いることを特徴とする金属板の冷間圧延方法。
[7]上記[1]〜[6]のいずれかの冷間圧延方法において、金属板がロールバイトに進入する際の板温に応じて、金属板及び/又は圧延ロールに供給するクーラントの温度及び/又は流量を調整することを特徴とする金属板の冷間圧延方法。
[8]上記[1]〜[7]のいずれかの冷間圧延方法において、一部の圧延スタンド又は圧延パスにおいて、金属板がクーラントの曇点未満の温度でロールバイトに進入して圧延される場合には、曇点以上の温度のクーラントがロールバイトに供給されるようにしたことを特徴とする金属板の冷間圧延方法。
本発明によれば、クーラントはその曇点未満の液温では潤滑剤成分が水に溶解した状態に維持されるため、循環使用する際の固形物粉分離性や耐劣化性、圧延ロールや金属板の洗浄性などが極めて良好であり、このためクーラント中の潤滑剤の原単位を従来のエマルションタイプのクーラントに較べて大きく改善することができるとともに、圧延ロールの表面疵やこれに起因した金属板の表面欠陥の発生も効果的に低減させることができる。また、クーラント温度を低くできることから、圧延ロールや金属板の冷却効果を適切に得ることができ、高速圧延で生じやすいヒートスクラッチの発生も抑えることができる。一方、金属板がクーラントの曇点以上の温度で進入して圧延されているロールバイトに供給されたクーラントは、金属板への潤滑剤成分の付着性が大幅に向上するので、エマルションタイプのクーラントと同等以上の潤滑性を維持しつつ、金属板の冷間圧延を行うことができる。
本発明では、クーラントを供給しつつ金属板の冷間圧延を行うに際し、水溶性潤滑剤を主体とする潤滑剤を水で希釈し且つ前記水溶性潤滑剤を溶解することにより曇点を有する溶液をクーラントとして用いるとともに、少なくとも一部の圧延スタンド又は圧延パスにおいて、金属板が前記クーラントの曇点以上の温度でロールバイトに進入して圧延されるようにする。
ここで、曇点を有する溶液とは、温度を上昇させると、ある温度で溶解成分の溶解度が急激に低下して白濁する性質を有する溶液のことであり、曇点とはそのように白濁化する液温を指す。本発明では、曇点を有する水溶液(クーラント)の温度を変化させた場合に目視によって白濁を確認した温度を、その水溶液の曇点とする。図6の写真は、曇点が40℃の水溶液について、曇点よりも低い温度での外観と曇点よりも高い温度での外観の違いを例示したものである。
本発明において、曇点を有する水溶液を冷間圧延のクーラントに使用するのは、その水溶液は、曇点未満の温度域(液温)と曇点以上の温度域(液温)とでクーラントとしての特性が変化し、以下のような作用効果が得られるからである。
クーラントは、その曇点未満の温度域においては潤滑剤成分が水に溶解しているため、循環使用中に摩耗粉などの固形物粉とはすぐに分離でき、クーラント中から摩耗粉を除去することが極めて容易となって、フィルターロスの低減を図ることができる。また、摩耗粉を油分中に抱き込むこともないため、スカムの生成によるロスが極めて少なくなる。したがって、スカムを流動させるために昇温する必要もなく常温で使用することによってフュームロスを低減させることができる。さらに、洗浄性に優れることから、金属板上に残留する潤滑剤成分が極めて少なく、金属板による持ち出しロスも低減できる。さらに、エマルション圧延油のような乳化安定性の管理を要することがない点でクーラントの管理が簡素化される。
また、冷却のために圧延ロールにスプレーした場合にも、洗浄性に優れるため、潤滑剤成分がロール表面に付着していても、それを洗い流しながら冷却を行えるので、エマルション圧延油に比べて冷却性能の向上を図ることができる。さらに、優れた洗浄性によって、圧延ロールに付着した金属異物も表面から容易に洗い流すことができ、ロール表面に表面疵を発生させにくい。
一方、クーラントは曇点以上の温度域においては、潤滑剤成分の水への溶解度が低下することで白濁した外観を有するようになるが、金属板が前記クーラントの曇点以上の温度でロールバイトに進入して圧延され、このような温度の金属板表面(ロールバイト)にクーラントが供給された場合にも、クーラント中の潤滑剤成分と水とが分離しやすい状態となって、クーラントの潤滑剤成分の金属板表面への付着性が非常に高まり、エマルション圧延油と同等以上のロールバイトにおける潤滑性を確保することができる。
曇点を有するクーラントの金属板表面への付着性能は、クーラントをその曇点以上に加熱して金属板表面に供給するよりも、クーラントの曇点以上の温度の金属板表面にクーラントを供給する方がかなり優れていることが判った。
以上の理由から本発明では、曇点を有する溶液をクーラントとして用いるとともに、金属板が前記クーラントの曇点以上の温度でロールバイトに進入して圧延されるようにする。
本発明において、金属板がクーラントの曇点以上の温度でロールバイトに進入して圧延されるようにするには、金属板を積極的に加熱してもよいし、圧延による発熱で金属板の温度がクーラントの曇点以上となるようにしてもよい。
金属板がクーラントの曇点以上の温度でロールバイトに進入して圧延されるのは、必ずしも全圧延スタンド(例えば、タンデム式冷間圧延機の全圧延スタンド)や、全圧延パス(例えば、レバース式冷間圧延機による圧延の全圧延パス)である必要はなく、潤滑性が必要とされる少なくとも一部の圧延スタンド又は圧延パスであればよい。圧延の際に必要とされる潤滑性は、圧延スタンドの前・後段位置の違い、圧延パスの段階の違い、被圧延材の種類や寸法、ロール径、ロール粗さ、圧延速度等によって異なり、圧延スタンドや圧延パスのなかには、潤滑性をあまり必要としない場合もあるからである。
本発明では、曇点未満の温度のクーラントを金属板及び/又は圧延ロールに供給することが好ましい。上述したように金属板がクーラントの曇点以上の温度でロールバイトに進入して圧延されれば、クーラントの潤滑剤成分の金属板表面への付着性は十分高くなり、潤滑性は確保できる。その一方で、クーラント自体の温度を曇点未満の低い温度に維持しておけば、金属板の冷却効果も高く、圧延ロールに供給しても高い冷却効果が得られる。また、クーラント循環系全体として曇点未満の温度域にクーラントを維持することで、循環中における優れた固形物粉分離性など、ソリューションタイプのクーラントとしての利点も確保できる。
本発明においてクーラントを循環使用する場合には、通常、金属板及び/又は圧延ロールに供給後、回収されたクーラントに対して、その曇点未満の液温で液中固形物(主として摩耗粉などの固形物粉)の除去処理を施す。クーラントは曇点未満の温度域では潤滑剤成分が水に溶解した状態に維持されているため、固形物粉との分離性がよく、液中固形物の除去処理において潤滑剤成分のロス(系外への排出)を最小限に抑えることができる。この除去処理を行う手段としては、フィルター方式(ホフマンフィルタ、電磁フィルタなど)のものが一般的であるが、それ以外に、遠心分離方式、磁気吸着方式など適宜な方式のものを採用できる。金属板及び/又は圧延ロールに供給後、回収されたクーラントは、曇点以上の液温になっている場合があり、その場合には液中固形物の除去処理前にクーラントをクーラー及び/又は循環系内での自然冷却などによって冷却し、曇点未満の液温にしておく。
本発明で使用するクーラントは、曇点が30〜80℃であることが好ましい。クーラントの曇点が30℃未満では、水溶性潤滑剤が水へ溶解する温度が低くなるため、ソリューションタイプの潤滑剤としての上記メリットを享受するためには、循環系のクーラント全体を低温に維持しなければならず、そのための熱交換機の設備コストやランニングコストが増大する。一方、曇点が80℃を超えると、常温のクーラントが金属板と接触して金属板表面に十分付着するためには、金属板の温度を高い状態にしておく必要があり(例えば90℃以上)、圧延速度が低く、金属板の温度が低い条件では本発明法が適用できず、潤滑性が不足する恐れがある。
本発明においてクーラントとして用いる、水溶性潤滑剤を溶解することにより曇点を有する溶液(水溶液)は、上述したように曇点未満の液温では潤滑剤成分が水に溶解した状態に維持されるため、透明又は半透明な外観を呈するものであり、エマルション圧延油のように5〜15μm程度のエマルション粒子による光の乱反射に起因して乳白色の外観を呈するものとは区別できる。一方、溶液が曇点以上の液温となると透明な外観ではなくなり、一般に白濁したような不透明な外観になる(図6参照)。
クーラントに含有される水溶性潤滑剤は、溶液(水溶液)が曇点を有することができるようなものであればその種類は問わないが、そのなかでも化学合成された潤滑剤(以下、合成潤滑剤という)が特に好ましい。この合成潤滑剤は、従来用いられている圧延油に較べて耐腐敗性に優れ、摩耗粉などの固形物粉と油剤劣化物の混合物であるスカムを形成しにくい点で有利となる。
また、クーラントに配合される潤滑剤は、一部が非水溶性の潤滑剤(例えば、従来用いられている圧延油)であってもよいが、配合される潤滑剤のうち80mass%以上、好ましくは95mass%以上が水溶性潤滑剤(特に好ましくは水溶性の合成潤滑剤)であることが望ましい。水溶性潤滑剤(特に好ましくは水溶性の合成潤滑剤)の割合が95mass%未満では非水溶性潤滑剤が多くなるため、ソリューションタイプのクーラントとしての固形物粉分離性、耐劣化性、洗浄性などが低下するようになり、特に80mass%未満ではそれらの特性の低下が著しい。
クーラント中に水溶性潤滑剤とともに配合する非水溶性の潤滑剤としては、油脂、脂肪酸エステル、鉱物油などのようなエマルションタイプのクーラントに用いられる圧延油の1種以上を用いることができる。このように非水溶性の潤滑剤を少量併用したとしても、ソリューションタイプのクーラントとしての特性を失うことはなく、エマルションタイプのクーラントに較べて潤滑剤の原単位を大幅に向上させることが可能である。
本発明で用いる水溶性の合成潤滑剤としては、特にポリアルキレングリコールが好ましく、とりわけ平均分子量500〜5000のポリアルキレングリコールが好ましい。したがって、水溶性潤滑剤の少なくとも一部、好ましくは全部が分子量500〜5000のポリアルキレングリコールであることが好ましい。
ポリアルキレングリコールは、ポリグリコール、ポリエーテル、ポリアルキレンオキサイドとも呼ばれ、エチレンオキシド(EO)やプロピレンオキシド(PO)などのアルキレンオキシド(AO)を、活性水素を持つ物質に開環重合させて得られる重合物である。これは、主としてブレーキ液や難燃性作動油に使用されている合成潤滑剤であって、重合度やアルキル基などを変化させることによって、各種の粘度グレードを有する水溶性のものから非水溶性のものまで幅広い特徴を有する重合物を得ることができる物質である。
ポリアルキレングリコールは、一般に分子量が大きいほど粘度も増加し、粘度指数も高くなる傾向を示す。冷間圧延に使用するために、ポリアルキレングリコールとしては平均分子量500〜5000のものが好ましい。平均分子量が大きいほど粘度が上昇し金属板への付着性が向上するが、平均分子量が大きすぎると流動点が高くなり、後工程での洗浄に支障が生じる恐れがあるからである。
ポリアルキレングリコールとしては、種々の化学構造を有するものを用いることができるが、オキシプロピレン単位からなるブロック部分の両端にオキシエチレン単位からなるブロック部分が結合された構造を有するものが代表的なものである。市販品としては、例えば、旭電化株式会社製の商品名「アデカプルロニック
L31」、「アデカプルロニック L62」などが挙げられる。また、オキシエチレン単位からなるブロック部分の両端に、オキシプロピレン単位からなるブロック部分が結合された構造を有するブロック共重合体で、リバースブロック型共重合体を用いることもできる。市販品としては、例えば、旭電化株式会社製の商品名「アデカプルロニック
25R2」、BASF Japan社製の商品名「プルロニック 25R2」などを挙げることができる。
クーラント中での水溶性潤滑剤の含有濃度には特別な制限はないが、溶液中での割合で1〜15mass%程度とすることが好ましい。潤滑剤の含有濃度が1mass%未満では冷間圧延に必要な潤滑性が十分に得られず、一方、含有濃度が15mass%を超えると潤滑剤の消費量が増加して、経済的に不利になる。
また、水溶性潤滑剤としてポリアルキレングリコール、好ましくは分子量500〜5000のポリアルキレングリコールを使用する場合、クーラントに配合される潤滑剤中でのポリアルキレングリコールの割合は高いほど望ましい。ここで、配合される潤滑剤中でのポリアルキレングリコールの割合が50mass%未満では、潤滑剤としてポリアルキレングリコールを用いることによるクーラントの低温流動性、化学的安定性の向上効果が十分に得られない。したがって、クーラントに配合される潤滑剤中でのポリアルキレングリコールの割合は50mass%以上とすることが好ましく、さらに、他の水溶性潤滑剤を合わせて80mass%以上、好ましくは95mass%以上の潤滑剤を水溶性潤滑剤(好ましくは水溶性の合成潤滑剤)とすることが望ましい。なお、クーラントにはその他の潤滑剤が含まれてよいことはさきに述べたとおりである。
また、以上のように潤滑剤の一部又は全部としてポリアルキレングリコールを用いる場合についても、クーラントに配合される潤滑剤の濃度、クーラントの曇点などは、さきに述べたとおりである。したがって、本発明で使用するクーラントの最も好ましい形態は、水溶性潤滑剤の全量をポリアルキレングリコール、好ましくは分子量500〜5000のポリアルキレングリコールとし、且つその含有濃度を溶液中での割合で1〜15mass%程度とすることである。
なお、クーラントには、潤滑剤(ポリアルキレングリコールなど)の他に、極圧添加剤、防錆剤、消泡剤、各種アミン、防腐剤、界面活性剤などの1種以上を適宜添加してもよい。また、油脂、脂肪酸エステル、鉱物油を界面活性剤と共に少量添加して、潤滑性を補助したものを調製してもよい。潤滑剤以外の添加剤が、クーラント中において平均粒径1μm以下程度の大きさで含まれているだけであれば、全体としてソリューションとしての特性を維持しており、さきに述べたようなエマルション圧延油に比べて有利な特性を発揮するからである。その際、クーラントの曇点は、水溶性潤滑剤以外の成分を除去した水溶液について測定した値を用いるものとする。添加剤の含有によって、曇点が明確に測定できなくなる場合もあるからである。
前記極圧添加剤としては、例えば、塩素化油脂、塩素化脂肪酸エステルなどの塩素化化合物、硫化油脂、アルキルポリサルファイドなどの合成硫黄化合物、リン化合物、有機金属塩化合物などの1種以上を使用することができる。また、水溶性防錆剤としては、脂肪族モノカルポン酸などの脂肪酸類に、塩基性物質としてアルカノールアルミなどを加えたものを用いることもできる。
本発明で用いる冷間圧延機としては、タンデム式冷間圧延機、レバース式冷間圧延機などの通常の冷間圧延を行うものを含む。調質圧延のような焼鈍材の軽圧下圧延を行うものは対象としないものの、調質圧延機を使用して圧下率10%以上の圧延を行うような場合に適用してもよい。
本発明法の圧延の対象となる金属板の代表例は薄鋼板であるが、これに限定されるものではなく、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金などのような種々の金属板、合金板が対象となる。また、鋼板の場合には、普通鋼、高炭素鋼、ステンレス鋼など鋼種は問わない。
また、金属板の厚さにも制限はなく、金属箔などのような薄い金属板も対象とすることができる。
本発明では、金属板がロールバイトに進入する際の板温に応じて、金属板及び/又は圧延ロールに供給するクーラントの温度及び/又は流量を調整することが好ましい。上述したように金属板がクーラントの曇点以上の温度でロールバイトに進入して圧延されれば、クーラントの潤滑剤成分の金属板表面への付着性は十分高くなり、潤滑性は確保できる。しかし、金属板の温度が高くなりすぎるとヒートスクラッチが発生しやすくなるため、金属板の温度をクーラントの曇点以上に維持しながらも、ヒートスクラッチが発生する恐れがある温度よりも低くすることが好ましい。そこで、金属板がロールバイトに進入する際の板温に応じて、金属板及び/又は圧延ロールに供給するクーラントの温度及び/又は流量を調整し、金属板の温度をヒートスクラッチが生じないような温度に制御することが好ましい。ここで、クーラントの温度を低くしても、エマルション圧延油の場合と異なり、スカムの生成や乳化不安定性の問題は発生せず、一方、金属板がロールバイトに進入する温度がクーラントの曇点以上であれば、潤滑性も確保できることになる。
本発明では、一部の圧延スタンド又は圧延パスにおいて、金属板がクーラントの曇点未満の温度でロールバイトに進入して圧延される場合には、曇点以上の温度のクーラントがロールバイトに供給されるようにすることが好ましい。
本発明では、金属板がクーラントの曇点以上の温度でロールバイトに進入して圧延されれば、クーラントの潤滑剤成分の金属板表面への付着性は十分高くなり、潤滑性は確保できるが、仮に金属板を積極的に加熱するための加熱装置が設置されていない場合、クーラントの曇点によっては、一部の圧延スタンド又は圧延パスにおいて金属板がそのような温度に達しない場合もあり得る。このようなケースは、特に圧延速度が低い条件下で生じやすい。一般には、圧延速度が低い場合には高速圧延時のような高い潤滑性は要求されないが、金属板の変形抵抗が高いような場合には潤滑性が必要になる場合がある。したがって、このような場合には、必要に応じてクーラントを加熱することにより、曇点以上の温度のクーラントがロールバイトに供給されるようにすることが好ましい。これによって、金属板の温度が低い条件下であっても、クーラントの潤滑剤成分の溶解度が低下して金属板表面への付着性がある程度高まり、金属板がクーラントの曇点以上の温度でロールバイトに進入して圧延される場合ほどではないが、ある程度の潤滑性向上が期待できる。
図1は、本発明の実施に供されるタンデム式冷間圧延機を備えた圧延整備の一実施形態を示すもので、金属板1をペイオフリール2から払出し、5基の圧延スタンド4a〜4eを有する冷間圧延機によって連続的に圧延を行い、テンションリール3によって巻取るものである。
各圧延スタンド4a〜4eのロールバイト入側には、クーラントを金属板1に供給するためのスプレーノズル5a〜5eが設置されている。また、各圧延スタンド4a〜4eの出側には、クーラントを圧延ロールに供給して冷却するためのロール冷却ノズル6a〜6eが設置されている。
この圧延設備では、クーラントを循環使用するためのクーラント循環系を有している。この循環系において、スプレーノズル5a〜5e、ロール冷却ノズル6a〜6eから供給されたクーラントは、オイルパン8によって回収される。クーラント中には摩耗粉などの固形物粉が混入しているため、クーラントはダーティタンク10に一旦貯留される。このダーティタンク10内のクーラントはフィルタリング設備9,11に移され、ここでクーラント中の固形物粉が分離除去された後、クリーンタンク12に移され、ここに一旦貯留される。フィルタイリング設備9,11は、ホフマンフィルタ、電磁フィルタなどのようなエマルション圧延油に対して通常使用される形式のフィルタリング手段を備えたものでよいが、固形物粉の分離容易性を考慮してより簡単な設備であってもよい。
クリーンタンク12内に貯留されたクーラントは、供給ポンプによってスプレーノズル5a〜5eやロール冷却ノズル6a〜6eに送られて循環使用される。
この循環系には、クーラント温度を曇点未満に維持するためのクーラントクーラー13が設置されている。また、金属板1にクーラントを供給するスプレーノズル5a〜5eの手前(各スプレーノズル5a〜5eにクーラントを供給するための供給支管の途中)には、必要に応じてクーラントを曇点以上に加熱するための加熱装置7a〜7eが設置される場合がある。なお、クーラントクーラー13を配置する位置は、図1の実施形態に限定されるものではない。すなわち、クーラントクーラー13は、金属板1に対して確実に曇点未満の温度のクーラントを供給するには図1の配置形態が好ましいが、固形物粉の分離除去のためには、クーラントをフィルタリング設備の前(上流側)で曇点未満の温度にしておくことが好ましく、したがって、固形物粉の分離除去の観点からクーラントクーラー13をダーティタンク10の前(上流側)に設置してもよい。また、例えば、図1に示す配置形態のクーラントクーラー13に加えて、ダーティタンク10の前(上流側)またはダーティタンク10内に別のクーラントクーラーを設けてもよい。
また、金属板1の温度を測定するための温度計14が最終圧延スタンド4eの出側に設置されている。各圧延スタンド4a〜4eのロールバイト入側における金属板1の温度(ロールバイトに進入する際の金属板温度)については、板温度計算装置15において圧延条件から計算で求めることができるが、温度計14によって実測した金属板温度を、その計算結果の誤差を補正するために利用することができる。但し、温度計14の設置は必須ではなく、各圧延スタンド4a〜4eのロールバイト入側の金属板温度がある程度の精度で計算できれば、必ずしも必要ではない。
以上のような圧延設備において、例えば、ポリアルキレングリコールを3質量%含有し、曇点が50℃である水溶液をクーラントとして用いる場合を想定して、本発明の実施状況を説明する。
クーラントはクーラントクーラー13によって50℃未満の温度に調整される。金属板の温度については、圧延速度の影響だけでなく、被圧延材の変形抵抗、圧下率、潤滑状態などによって各圧延スタンドで異なるため、板温度計算装置15によって各圧延スタンド4a〜4eにおけるロールバイト入側の金属板1の温度(ロールバイトに進入する際の温度)を計算で求める。
板温度計算装置15によって求められる各圧延スタンド4a〜4eにおけるロールバイト入側の金属板1の温度が50℃以上の場合には、クーラントクーラー13によって50℃未満に調整されたクーラントを、スプレーノズル5a〜5eからロールバイト入側の金属板表面に供給する。また、必要に応じてロール冷却ノズル6a〜6eから圧延ロールにクーラントが供給される。この場合、クーラントの潤滑剤成分の金属板表面への付着性は良好であり、潤滑性は十分に確保される。
これに対して、板温度計算装置15によって求められる各圧延スタンド4a〜4eでのロールバイト入側の金属板1の温度のうち、一部の圧延スタンド4での温度が50℃未満である場合には、必要に応じて、その圧延スタンド4のスプレーノズル5に供給されるクーラントをクーラント加熱装置7によって加熱し、スプレーノズル5から曇点以上(50℃以上)の温度のクーラントを金属板表面に供給する。この場合にもクーラントの潤滑剤成分の金属板表面への付着性がある程度高まり、さきに述べたように金属板がクーラントの曇点以上の温度でロールバイトに進入して圧延される場合ほどではないが、ある程度の潤滑性向上が期待できる。
また、板温度計算装置15によって求められるロールバイト入側の金属板1の温度がヒートスクラッチ発生温度を超える場合には、クーラントクーラー13によってクーラント温度をさらに低下させるか、ヒートスクラッチが発生すると予測される当該圧延スタンド4のスプレーノズル5からのスプレー流量を増加させ、金属板の冷却を強化する。なお、薄鋼板の冷間圧延においては、ヒートスクラッチ発生温度は通常150〜200℃程度とされているので、操業実績を参考にしながら対象材ごとにヒートスクラッチ発生限界温度を予め設定しておけばよい。また、ヒートスクラッチ発生限界に達しないように、それよりも低い温度を制御開始温度として設定しておき、当該温度に達した場合に、クーラントクーラー13によってクーラント温度を低温化しておくことで、事前にヒートスクラッチ発生限界温度に達しないようにしておくこともできる。
なお、ヒートスクラッチを防止するには、上述したような金属板の冷却のみでなく、ロール冷却ノズル6a〜6eからのクーラント流量を増加させたり、クーラント温度を低温化させることも効果的である。
[実施例1]
金属板の温度とポリアルキレングリコールを含有するクーラントの潤滑性能との関係について調べた結果を、従来のエマルション圧延油をクーラントとして用いた場合と比較して示す。
本発明例では、ポリアルキレングリコールを3質量%含有する水溶液をクーラント(=クーラントA)として用いた。この水溶液はポリアルキレングリコール以外の成分は含有させていない。ポリアルキレングリコールとしては、旭電化株式会社製の商品名「アデカプルロニック
L31」を用いた。このポリアルキレングリコールは、平均分子量1100、濃度3質量%における曇点が40℃であり、25℃における動粘度は196mm/sである。
比較例では、通常の冷間圧延に使用されるエマルション圧延油をクーラント(=クーラントB)として用いた。このエマルション圧延油は、基油が合成エステル60mass%、天然油脂30mass%、高級脂肪酸5mass%から構成され、ノニオン系界面活性剤を2mass%及び極圧添加剤等を3mass%含む原液を濃度3mass%で60℃の水に希釈して、攪拌機によってエマルション粒径が8μmになるように調整したものである。
まず、上記クーラントA,Bを使用した場合の鋼板への付着性について調べるために、プレートアウト試験を行った。プレートアウト試験は、鋼板表面にクーラントをスプレーした後に、鋼板に付着している潤滑剤成分の質量を測定することで鋼板への付着性能を評価する試験である。ここでは、サンプルとなる鋼板を加熱して、種々の温度に調整しながら付着性能を評価した。クーラントのスプレー圧は1.0kgf/cmであり、鋼板表面に0.1秒間だけスプレーした直後にエアパージを行い、鋼板に付着していないクーラントを除去することで、ごく短時間の間に鋼板に付着した潤滑剤成分のみを測定することとした。なお、クーラントAについては、曇点付近を含む広い範囲でクーラント温度を変更した試験を実施した。一方、クーラントBについては、クーラント温度を低下させるとエマルションの乳化状態が不安定になったため、クーラントの温度は60℃で一定にした。
図2に、プレートアウト試験の結果を示す。これによれば、本発明例であるクーラントAについては、板温度がクーラントの曇点(40℃)以上の範囲、特に50℃以上の範囲において、プレートアウト性能が向上していることが判る。また、クーラントAの温度を曇点以下の20℃、曇点以上の50℃、80℃と変えた場合、クーラント温度が高いほどプレートアウト性は向上しているものの、板温度が高くなることによる効果に比べると相対的には影響が小さいことが判る。なお、板温度がクーラントの曇点(40℃)未満の場合には、プレートアウト量が少なくなるが、クーラント温度が曇点(40℃)以上になると相対的にプレートアウト性も向上していることが判る。
一方、比較例であるクーラントBについては、板温度が上昇するとプレートアウト性も向上する傾向はみられるものの、板温度への依存性は小さく、板温度が高い場合には、クーラントAのほうがプレートアウト性は格段に向上していることが判る。
次に、上記クーラントA,Bを用いて冷間圧延を行い、潤滑性を調べた結果を示す。また、他の比較例として、平均分子量3500、濃度3質量%における曇点が82℃であり、50℃における動粘度が240mm/sのポリアルキレングリコールを3質量%含有する水溶液をクーラント(=クーラントC)として用いた。
普通鋼の板厚0.8mmのシートゲージ材を得るために、ワークロール径500mm、圧延速度1200mpmの条件で冷間圧延を行い、計測された圧延荷重から摩擦係数を逆算した。被圧延材は予め所定の温度まで加熱した後に、クーラントをスプレーし、直後に圧延が行われるようにした。なお、クーラントA,Cについては温度を20℃とし、エマルション圧延油であるクーラントBは60℃とした。
図3に、圧延荷重から逆算した摩擦係数を示す。これによれば、クーラントAについては、板温度がクーラントの曇点(40℃)以上の範囲、特に50℃以上の範囲において、摩擦係数が大きく低減していることが判る。これは図2のプレートアウト試験の結果と一致している。一方、比較例であるクーラントBについては、板温度による潤滑性の変化は小さく、板温度が50℃以上ではクーラントAと同等か、若しくは潤滑性が若干劣る結果となっている。さらに、比較例であるクーラントCについては、曇点が85℃と高いため、板温度をそれ以上の温度にしないと潤滑性が良好にはならない。実用的な面からは、このように高い曇点を有するクーラントを使用すると、例えば、圧延速度が比較的小さい場合に板温度がクーラントの曇点に達せず、必要な潤滑性が得られない状況が生じるおそれが高い。
なお、クーラントAは、板温度が50℃以上になるとクーラントBに較べてプレートアウト性が非常に良好になるが、摩擦係数についてはクーラントBとあまり大きな差が生じていない。これは、クーラントAには極圧添加剤などが添加されていないため、ロールバイト内で厚い流体潤滑膜が形成されていても、境界接触部での摩擦係数が高くなっているためであると考えられる。したがって、クーラントAに極圧添加剤を加えれば、さらに潤滑性を向上させることができる。
[実施例2]
図1に示す5スタンドのタンデム式圧延機を用いて、クーラントA及びクーラントBによる冷却効果について比較した結果を示す。
被圧延材は板厚3.2mmの普通鋼板であり、板厚0.8mmまで圧延速度1300mpmにて冷間圧延を行い、圧延機出側での鋼板温度によって冷却性能を比較した。なお、クーラントAについては、その温度を曇点よりも低い30℃とした場合と、曇点よりも高い60℃とした場合について評価した。
図4に板温度の比較結果を示す。本発明例であるクーラントAをクーラント温度30℃で用いた場合には、比較例であるエマルション圧延油によるクーラントBに比べて、板温度が20℃以上低下しており、クーラントBと同等の潤滑性を維持しながら、高い冷却性能を示すことが判る。また、クーラントAを60℃で用いた場合には、それほどの冷却性能は得られないものの、クーラントBと比較すると良好な冷却性が得られている。これは、クーラントBの場合には、エマルション中の油脂成分がロール表面に付着することで冷却性を阻害しているのに対して、クーラントAの優れた洗浄効果によって冷却性も向上しているためと考えられる。
[実施例3]
実施例2と同様のタンデム式圧延機において、硬質材の冷間圧延を実施した結果を示す。
本発明例1では、クーラントAを曇点よりも低い30℃とし、圧延速度が変化してもクーラント流量及び温度を一定にした。比較例では、クーラントBを60℃で使用し、この場合も同一のクーラント流量を供給した。
図5に圧延速度に対する板温度の変化を示す。本発明例1では、比較例に比べて冷却効果が高く、板温度も低下しているものの、圧延速度が高い場合に、ヒートスクラッチ発生温度として想定している160℃を超えるケースもあった。
そこで、本発明例2では、板温度がヒートスクラッチ発生温度よりも20℃低い140℃に達する場合には、クーラントAの温度を20〜25℃の範囲に調整するとともに、クーラントAの流量を15%増加させた。この場合には、圧延速度が高い場合でもヒートスクラッチ発生温度に達することはなかった。なお、これらのケースにおける潤滑性はほぼ同等のレベルであり、いずれも十分な潤滑性を有している。
本発明の実施に供されるタンデム式冷間圧延機の一例を示す説明図 実施例1におけるクーラントのプレートアウト特性を示すグラフ 実施例1における圧延時の摩擦係数を示すグラフ 実施例2におけるクーラントによる冷却効果を示すグラフ 実施例3におけるヒートスクラッチ防止効果を示すグラフ 実施例1において用いた液温が異なるクーラントの外観を示す写真
符号の説明
1 金属板
2 ペイオフリール
3 テンションリール
4a,4b,4c,4d,4e 圧延スタンド
5a,5b,5c,5d,5e スプレーノズル
6a,6b,6c,6d,6e ロール冷却ノズル
7a,7b,7c,7d,7e クーラント加熱装置
8 オイルパン
9,11 フィルタリング設備
10 ダーティタンク
12 クリーンタンク
13 クーラントクーラー
14 温度計
15 板温度計算装置

Claims (8)

  1. クーラントを供給しつつ金属板の冷間圧延を行なう方法において、
    水溶性潤滑剤を主体とする潤滑剤を水で希釈し且つ前記水溶性潤滑剤を溶解することにより曇点を有する溶液をクーラントとして用いるとともに、少なくとも一部の圧延スタンド又は圧延パスにおいて、金属板が前記クーラントの曇点以上の温度でロールバイトに進入して圧延されるようにしたことを特徴とする金属板の冷間圧延方法。
  2. 曇点未満の温度のクーラントを金属板及び/又は圧延ロールに供給することを特徴とする請求項1に記載の金属板の冷間圧延方法。
  3. クーラントを循環使用するとともに、金属板及び/又は圧延ロールに供給後、回収されたクーラントに対して、その曇点未満の液温で液中固形物の除去処理を施すことを特徴とする請求項1又は2に記載の金属板の冷間圧延方法。
  4. クーラントの曇点が30〜80℃であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の金属板の冷間圧延方法。
  5. 水溶性潤滑剤の少なくとも一部が平均分子量500〜5000のポリアルキレングリコールであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の金属板の冷間圧延方法。
  6. 水溶性潤滑剤を1〜15質量%含有する水溶液をクーラントとして用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の金属板の冷間圧延方法。
  7. 金属板がロールバイトに進入する際の板温に応じて、金属板及び/又は圧延ロールに供給するクーラントの温度及び/又は流量を調整することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の金属板の冷間圧延方法。
  8. 一部の圧延スタンド又は圧延パスにおいて、金属板がクーラントの曇点未満の温度でロールバイトに進入して圧延される場合には、曇点以上の温度のクーラントがロールバイトに供給されるようにしたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか記載の金属板の冷間圧延方法。
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