JP2008201856A - アルミニウム板またはアルミニウム合金板の圧延方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】熱間圧延油を使用して熱間圧延するアルミニウム板またはアルミニウム合金板の圧延方法であって、熱間圧延油は、熱間圧延油組成物および乳化剤を含有し、熱間圧延油組成物中のアルコール濃度をA(質量%)とし、熱間圧延油組成物中のエステル濃度をE(質量%)とし、熱間圧延油の油分濃度をC(質量%)としたときに、−0.5C+8≦A≦−C+22、かつ、−1.5C+18≦E≦−0.5C+26を満足する熱間圧延油を用いることを特徴とする。
【選択図】図1
Description
特許文献1に記載の熱間圧延油組成物(熱間圧延油)においては、近年、大量生産化とアルミニウムまたはアルミニウム圧延品の高品質指向から、圧延潤滑性を向上させる油性向上剤である脂肪酸を所定量添加している。しかし、脂肪酸の添加により圧延潤滑性や板表面品質性は向上するものの、多量に添加すると、腐食性を高める場合があり、また、圧延の進行に伴い高粘度物質の金属石鹸が生成しやすくなり、この金属石鹸により圧延機周辺を汚染させる場合があるという問題があった。
≪アルミニウム板またはアルミニウム合金板の圧延方法≫
本発明に係るアルミニウム板またはアルミニウム合金板(以下、適宜「アルミニウム板」ともいう)の圧延方法は、熱間圧延油組成物を含有する熱間圧延油を使用して熱間圧延するアルミニウム板またはアルミニウム合金板の圧延方法であって、熱間圧延油組成物中のアルコール濃度をA(質量%)と、熱間圧延油組成物中のエステル濃度をE(質量%)と、熱間圧延油の油分濃度をC(質量%)とを、所定の関係に規定した熱間圧延油を使用して熱間圧延するものである。
熱間圧延油は、アルミニウム板の圧延方法に使用するものであり、熱間圧延油は、後記する熱間圧延油組成物および乳化剤を水に分散させた水分散型圧延油(熱間圧延油組成物および乳化剤を含有する水溶液)である。
以下に説明するとおり、熱間圧延油組成物中のアルコール濃度は、熱間圧延油の油分濃度に対して、所定の関係に規定する。
熱間圧延油組成物中のアルコール濃度の調節は、熱間圧延油組成物を構成するアルコール、例えば、以下に説明する(d)成分(炭素数8〜26の高級アルコール)の添加量を調節することにより行う。アルコールは、圧延潤滑性および板表面品質性を向上させるものであるが、多量に添加すると熱間圧延油組成物の粘度を低下させやすい。
したがって、熱間圧延油組成物中の油分との関係において、所定の範囲に制御する。
以下に説明するとおり、熱間圧延油組成物中のエステル濃度は、熱間圧延油の油分濃度に対して、所定の関係に規定する。
熱間圧延油組成物中のエステル濃度の調節は、熱間圧延油組成物を構成するエステル、例えば、以下に説明する(c)成分(天然油脂および1価高級脂肪酸または多塩基酸とアルコールから得られる合成エステルから選ばれる少なくとも1種)中の合成エステルの添加量を調節することにより行う。前記したとおり、エステルは、圧延潤滑性および板表面品質性を向上させるものであるが、ロールコーティング性や板表面品質性への悪影響を及ぼしやすい。
したがって、熱間圧延油組成物中の油分との関係において、所定の範囲に制御する。
熱間圧延油の油分濃度は、熱間圧延油組成物の希釈割合で制御する。なお、ここでいう油分濃度は、熱間圧延油中の水以外の全ての成分の濃度、すなわち、熱間圧延油を作成するための全成分の濃度である。
熱間圧延油組成物中のアルコール濃度をA(質量%)とし、熱間圧延油の油分濃度をC(質量%)としたときに、これらの関係を「−0.5C+8≦A≦−C+22」に規定する。
さらに、熱間圧延油組成物中のエステル濃度をE(質量%)とし、熱間圧延油の油分濃度をC(質量%)としたときに、これらの関係を「−1.5C+18≦E≦−0.5C+26」に規定する。
ただし、図1(a)、(b)においては、油分濃度を1〜9質量%とした場合について示している(以下、図1(a)、(b)については、同様である)。
アルコールおよびエステルとも、潤滑性を向上させる油剤であるが、板表面に及ぼす作用が異なることから、これら2種類を併用する必要があり、また、これらを入れすぎると、過潤滑となる。
<熱間圧延油組成物>
熱間圧延油組成物は、(a)動粘度80mm2/s(40℃)以下の鉱物油、(b)炭素数10〜22の脂肪酸、(c)天然油脂および、1価高級脂肪酸または多塩基酸とアルコールから得られる合成エステルから選ばれる少なくとも1種、(d)炭素数8〜26の高級アルコールを含有するものであることが好ましい。
以下、熱間圧延油組成物の各成分について説明する。
(a)成分である鉱物油としては、例えば、スピンドル油、マシン油、タービン油、シリンダー油、ニュートラル油等が挙げられ、パラフィン系鉱物油、ナフテン系鉱物油のいずれを使用してもよいが、耐熱性および圧延潤滑性の点から、パラフィン系鉱物油を使用することが好ましい。(a)成分の動粘度は、80mm2/s(40℃)以下であることが必要であり、動粘度が80mm2/s(40℃)以下であればアルミニウム板の表面品質性(板表面品質性)は優れており、熱間圧延したアルミニウム板への残油も少なく良好である。なお、動粘度が80mm2/s(40℃)を超えると板表面品質性が低下するので好ましくない。
(a)成分は基油であり、熱間圧延油組成物中の(a)成分の含有量は、特に制限されるものではないが、10〜95質量%が好ましく、30〜65質量%がより好ましい。
(b)成分である炭素数10〜22の脂肪酸は、圧延潤滑性を向上させる目的で添加するものである。脂肪酸は、ロールコーティング性や板表面品質性への悪影響が少なく、境界潤滑性の非常に優れた油性向上剤である。
(b)成分としては、例えば、カプリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸、エルカ酸、ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸、牛脂脂肪酸等を1種以上用いることができるが、取扱い上、常温(25℃)液体の脂肪酸(例えば、カプリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、エルカ酸、ヤシ油脂肪酸等)を使用することが好ましい。
なお、脂肪酸の含有量が14質量%を超えると金属腐食性が高くなる。また、圧延の進行に伴い生成する金属石鹸は、圧延機周辺を汚染すると共に、製品汚れの原因となる。
(c)成分である天然油脂および/または合成エステルは、前記した(b)成分に次ぐ優れた油性向上剤であり、圧延潤滑性を向上させる目的で添加する。
熱間圧延油組成物中の天然油脂の含有量は、熱間圧延油の融点の点から2〜30質量%が好ましい。
アルコールとしては、例えば、炭素数1〜22の脂肪族1価アルコールや、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリン等の多価アルコールが挙げられる。
なお、脂肪酸やアルコールは、飽和のもの不飽和のものいずれも使用することができるが、板表面品質性の点から、飽和のものがより好ましい。
熱間圧延油組成物中の合成エステルの含有量は、熱間圧延油の価格の点から、2〜30質量%が好ましい。
熱間圧延油組成物中の(c)成分の含有量は、圧延潤滑性、融点、板表面品質性および価格等のバランスの点から、2〜50質量%が好ましく、10〜40質量%がより好ましい。
(d)成分である炭素数8〜26の高級アルコールは、圧延潤滑性および板表面品質性を向上させる目的で添加する。
(d)成分を、熱間圧延油のような、冷間圧延油よりも高温・高潤滑の油に使用した場合でも、前記した(b)成分と同等の境界潤滑性を示し、熱的にも分解・揮発がなく比較的安定であるので、板表面品質性を向上させることができる。
このような(d)成分の具体例としては、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、エライジルアルコール、リノレイルアルコール、椰子油還元アルコール、パーム油還元アルコール、牛脂還元アルコール、炭素数11〜18のオキソアルコール、炭素数12〜18のチーグラーアルコール、炭素数12〜26のゲルベアルコール、オクタデカン1,2−ジオール、ラウリルアルコールエチレンオキサイド付加物(2モル以下)等が挙げられる。なお、圧延潤滑性および板表面品質性の点から、直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基を有する1価アルコールが好ましく、1価飽和アルコールがより好ましい。
また、(d)成分を添加すると、前記した(c)成分を多量配合しても板表面品質性の低下を抑制することができる。なお、熱間圧延油組成物中の(c)成分と(d)成分との質量比は、圧延潤滑性および板表面品質性の点から、(d)成分/(c)成分=1/1〜1/10が好ましく、1/1〜1/5がより好ましい。
以上が、熱間圧延油組成物の(a)〜(d)成分についての説明である。
なお、熱間圧延油組成物には、前記した(a)〜(d)成分の他に、必要に応じて、板表面品質性を向上させる目的でリン系極圧剤(以下(e)成分という)を添加してもよい。
熱間圧延油組成物中の(e)成分の含有量は、0.5〜10質量%が好ましく、3〜10質量%がより好ましい。(e)成分は、1種でもよいが、2種以上を混合して使用することもできる。
次に、本実施形態で使用する乳化剤について説明する。乳化剤は、前記した熱間圧延油組成物((a)〜(d)成分または(a)〜(e)成分)を水に分散させるため、すなわち、エマルションとするために添加する。
熱間圧延油を作製するための全成分中の乳化剤の含有量は、0.1〜5質量%が好ましい。
共重合可能な単量体の具体例としては、アルキル基が炭素数1〜22の直鎖または分岐鎖のアルキル基である、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
また、(メタ)アクリル酸塩の具体例としては、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸カリウム等のアルカリ金属塩が挙げられる。
なお、(f)成分の質量平均分子量は、(f)成分を加水分解(試料1gにN/2 KOH溶液20mlを添加し、約95℃で2時間加熱する)後、下記条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で分子量を分析し、その結果から元の分子量を換算したものである。
・カラム:G2000SW(東ソー(株)製)×2本
・カラム温度:40℃
・溶離液:0.1N塩化ナトリウム水溶液/アセトニトリル=70/30
・検出器:RI(屈折率計)
・注入量:1質量%溶離液溶液、20μl
・液流速:0.4ml/min
・分子量標準:ポリスチレンスルホン酸ナトリウム
なお、熱間圧延油には、前記した(a)〜(f)成分の他に、必要に応じて、添加剤、例えば、防錆・防食剤、酸化防止剤等を添加することもできる。
熱間圧延油を作製するための全成分中の防錆・防食剤の含有量は、2質量%以下が好ましい。
熱間圧延油を作製するための全成分中の酸化防止剤の含有量は、5質量%以下が好ましい。
熱間圧延油中の熱間圧延油組成物の含有量は、圧延潤滑性や板表面品質性の点から、1〜10質量%が好ましい。
なお、熱間圧延油組成物、乳化剤および水は、どの順序で混合してもよいが、水と乳化剤とを混合した後、熱間圧延油組成物を混合することが好ましい。
図2は、アルミニウム板またはアルミニウム合金板の圧延装置の概略図である。
熱間圧延時に使用された使用済みの熱間圧延油は、配管9aを介して熱間圧延油貯留タンク4に回収され、貯留される。
このように、熱間圧延油は、熱間圧延機3、熱間圧延油貯留タンク4および金属粉調整熱間圧延油貯留タンク5との間を循環している。
表1に示す成分を水で希釈することで濃度4質量%に調整し、熱間圧延油を作製した。この熱間圧延油を使用して、入側板厚;29mm、板幅;1800mmのアルミニウムコイル(JIS5000系材)を、圧延装置として、圧延4段圧延機(ワークロール径;725mm、ワークロールバレル長;2900mm、バックアップロール径;1530mm、バックアップロールバレル長;2900mm)を4機連ねた4スタンドタンデムを使用して熱間圧延した。
熱間圧延条件は、圧延速度;300mpm、圧下率;30乃至60%、材料温度;300℃である。
なお、本実施例においては、油分濃度を4質量%に規定し、アルコールとして、椰子油還元アルコール((d)成分)、エステルとして、トリメチロールプロパンイソステアリン酸トリエステル((c)成分)の濃度を変更することにより、圧延試験を行った。なお、これらの濃度の変更に伴い、(a)成分の濃度を変更することにより、成分の配合比を調節した。すなわち、表1における(a)成分と(c)成分と(d)成分とは、表1に示す濃度を中心として成分の配合比を変化させた。
板表面不良発生数が、0または1本のものを圧延潤滑性および板表面品質性が良好、2本以上のものを不良とした。
これらの結果を表2に示すと共に、この表2の結果をグラフにしたものを図3〜図6に示す。また、表2において、本発明の範囲を満たさないものについては、数値に下線を引いて示す。なお、本実施例においては、アルコール濃度をA(質量%)、エステル濃度をE(質量%)、油分濃度をC(質量%)としたときに、油分濃度Cを4質量%としているため、「6≦A≦18」かつ、「12≦E≦24」を満たすものが、本発明の範囲を満たすものである。
2 ドレンタンク
3 熱間圧延機
4 熱間圧延油貯留タンク
5 金属粉調整熱間圧延油貯留タンク
6 フィルタ
7,8 圧送ポンプ
9a,9b,9c 配管
10 ベルト状の金属帯
20 圧延装置
Claims (3)
- 熱間圧延油を使用して熱間圧延するアルミニウム板またはアルミニウム合金板の圧延方法であって、
前記熱間圧延油は、熱間圧延油組成物および乳化剤を含有し、
前記熱間圧延油組成物中のアルコール濃度をA(質量%)とし、
前記熱間圧延油組成物中のエステル濃度をE(質量%)とし、
前記熱間圧延油の油分濃度をC(質量%)としたときに、
−0.5C+8≦A≦−C+22、かつ、
−1.5C+18≦E≦−0.5C+26
を満足する熱間圧延油を用いることを特徴とするアルミニウム板またはアルミニウム合金板の圧延方法。 - 前記熱間圧延油組成物が
(a)動粘度80mm2/s(40℃)以下の鉱物油と、
(b)炭素数10〜22の脂肪酸と、
(c)天然油脂および、1価高級脂肪酸または多塩基酸とアルコールから得られる合成エステルから選ばれる少なくとも1種と、
(d)炭素数8〜26の高級アルコールと、
を含有することを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム板またはアルミニウム合金板の圧延方法。
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