JP4851749B2 - 銅材用塑性加工油 - Google Patents

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Description

本発明は、銅又は銅合金よりなる銅材の塑性加工に用いる銅材用塑性加工油関する。
銅管や銅板等の銅製品は、銅や銅合金よりなる銅材に圧延等の塑性加工を施して製造される。例えば銅管は、一般に、円柱型のビレットを押出加工により管状にし、それを例えば冷間圧延のコールドピルガー圧延で薄肉・小径化した後、最終仕上げとして抽伸して製造される。図1に示すごとく、例えばコールドピルガー圧延においては、ロール21及びマンドレル22を備える圧延機(コールドピルガミル)2が用いられる。管状の銅材1は、この圧延機2のロール21が回転及び往復運動することによって、薄肉化及び小径化される。
一般に、コールドピルガー圧延等のように塑性加工を行う際には、ロールと銅材との潤滑性や、ロール及び銅材の冷却等のために、水等に分散させたエマルション状態の塑性加工油が供給される。そして、コスト削減のため、通常エマルション状態の塑性加工油は、後述のダーティータンクとクリーンタンクとを備えた循環システムを用いて循環させ、繰り返し使用される。
近年、銅管等の銅製品に要求される品質がますます厳しくなり、さらなる品質の向上が望まれている。そのため、塑性加工油にも優れた性質が求められている。
従来より、塑性加工油としては、一般に下記の特許文献1〜7及び非特許文献1〜2に記載の潤滑油等が用いられてきた。このような潤滑油は、圧延等の塑性加工に用いる際には、潤滑性を付与するために各種油性剤を添加して用いられていた。
しかしながら、油性剤を添加した潤滑油を、エマルションにして圧延等の塑性加工に用いると、銅材の表面に焼き付き欠陥が発生し、抽伸後の最終製品の品質に悪影響を及ぼす場合があった。特に近年においては、これまでの製品品質基準では問題にならなかった程度の極微小の欠陥までも許容されなくなりつつあるため、塑性加工時の潤滑不良による焼き付き程度も、より微細なものに抑えなければならなくなってきた。
圧延時の潤滑不良は、塑性加工油自体の境界潤滑性不良や、圧延機のロールバイト内への導入量が少ない場合に発生することが多い。塑性加工油がエマルションの場合、ロールバイト近傍における離水展着により油のみがロールバイト内に導入されるが、このときエマルションの乳化性が弱いと比較的離水展着は容易に起こるが、乳化性が強くなると離水展着が起こり難くなる。その結果ロールバイト内への導入油量が不足し、潤滑不良を引き起こすおそれがある。
エマルションの乳化性は、乳化剤の種類や温度の他、エマルションの連続使用によって生じる副生成物の量によって影響を受ける。上記のような潤滑不良を防止するためには、長期間連続して使用した場合であっても、乳化性が安定な塑性加工油が必要とされている。
また、長期間連続的に塑性加工を実施すると、圧延機等のロールが摩耗することにより銅管等の銅製品に肌荒れが発生する。このため、定期的にロールを交換しているのが現状である。このロール交換頻度を減らすこと、即ちロールの摩耗を抑制することも、生産能率の向上やコスト低減の観点から強く望まれている。
また、一般に、塑性加工に使用された後の塑性加工油は、一旦ダーティータンクに貯蔵される。このダーティータンク内に貯蔵された塑性加工油には、圧延等の塑性加工で発生した摩耗粉等が含まれている。したがって、ダーティータンク内の塑性加工油を連続的に再利用する際には、まずダーティータンク内の塑性加工油から摩耗粉等を取り除き、これをクリーンタンクに移し、このクリーンタンク内の塑性加工油が塑性加工に利用される。そして、クリーンタンク内の塑性加工油は、塑性加工に利用された後、再びダーティタンクに集められる。このようにダーティータンク及びクリーンタンクを用いた循環システムを用いて、塑性加工油を連続的に再利用することが行われている。
上記のような循環システムにおいて、ダーティータンク内の摩耗粉は、一部の塑性加工油と共に浮上分離により廃棄されている。このとき、廃棄される浮上分離油により多くの摩耗粉を含ませて塑性加工油の廃棄量を最小にすることが、コスト低減の他、環境改善にもつながるため望まれている。しかしながら、塑性加工油を長期間連続して使用すると、外部からの不純物の混入や油の劣化等により副生成物が発生し、その結果、塑性加工油のエマルションの乳化性が不安定となるため、廃棄すべき浮上分離量が必然的に多くなってしまうのが現状である。
以上のように、銅製品に要求される品質がますます高くなり、塑性加工油としても、製造時における環境汚染対策やコスト低減に対応でき、潤滑性、エマルション安定性、ロールの摩耗抑制性、及び金属防錆性等の様々な性能に優れたものが望まれている。このような数多くの性能を満足することは、これまで用いられてきた市販の塑性加工油では達成することができなかった。
特開2000−186291号公報 特開2000−169874号公報 特開平11−335686号公報 特開平11−181458号公報 特開平11−209781号公報 特開平11−193390号公報 特開2002−254129号公報 五十嵐稔,今泉榮,金森宏明,柴田潤一,「銅と銅合金」,2002年,第41巻,第1号,p.63〜66 泊康則,志度誠一,今住則之,小野寺健次,飯野光明,三反崎裕雄,「昭和63年度塑性加工春季講演会論文集」,1988年,p.293−296
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたものであって、環境に対して安全で、エマルションにしたときの乳化性が長期間安定であり、かつ潤滑性、冷却性、及び防錆性に優れた塑性加工油提供しようとするものである。
発明は、銅又は銅合金よりなる銅材を塑性加工するための銅材用塑性加工油であって、
該銅材用塑性加工油は、その主成分を100重量部とした場合に、該主成分として、天然油脂及び/又は合成エステルからなる油性剤を10.0重量部〜30.0重量部、ポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤を1.0重量部〜10.0重量部、炭素数10〜22の高級脂肪酸を2.0重量部〜10.0重量部、トリエタノールアミンを1.0重量部〜5.0重量部、アルキルフォスフォン酸エステルを1.0重量部〜5.0重量部、及び鉱油を40.0〜85.0重量部含有し、
上記銅材用塑性加工油は、その温度40℃における粘度が20cSt〜100cStであり、上記銅材用塑性加工油を1.0〜15.0重量%の割合で水に分散させ、エマルション状態にして用いることを特徴とする銅材用塑性加工油にある(請求項1)。
発明の銅材用塑性加工油は、上記のごとく、油性剤と、ポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤と、高級脂肪酸と、トリエタノールアミンと、アルキルフォスフォン酸エステルと、鉱油とを特定の割合で含有している。
そのため、上記銅材用塑性加工油は、エマルションにしたときの乳化性が長期間安定で、かつ潤滑性、冷却性、及び防錆性に優れている。また、上記銅材用塑性加工油は、環境ホルモン等の有害物質を含んでいないため、環境に対しても安全である。
以下、上記銅材用塑性加工油の各成分の主要な役割について説明する。
上記銅材用塑性加工油は、上記油性剤及び鉱油を特定量含有しているため、潤滑性に優れ、圧延機等の塑性加工機のロールの摩耗を充分に抑制することができる。
また、上記銅材用塑性加工油は、上記のポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤を特定量含有している。そのため、上記銅材用塑性加工油を例えばエマルションとして用いるときに、エマルションの乳化性が劣化し難くなり、長期間安定して優れた潤滑性及び冷却性等の性質を発揮できる。また、上記ポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤は、後述の脂肪酸とトリエタノールアミンによって生成するトリエタノールアミン石鹸の欠点を補充することができる。即ち、上記ポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤は、脂肪酸やエステルが分解した場合、あるいはバクテリア発生などにより低級酸が発生して乳化力に悪影響を及ぼした場合においても、全体の乳化力の変動を抑制することができる。
また、上記銅材用塑性加工油は、上記の高級脂肪酸とトリエタノールアミンを特定量含有している。高級脂肪酸とエタノールアミンとは、互いに反応し、トリエタノールアミン石鹸となる。そして、このトリエタノールアミン石鹸は、上記のポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤と同様に、上記銅材用塑性加工油の乳化性を安定化させることができる。
一般に、ポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤は、その乳化性を安定させる効果が熱によって劣化し易い。しかし、本発明の銅材用塑性加工油においては、上記のごとく、ポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤に加えて、高級脂肪酸とトリエタノールアミンとを含有しているため、トリエタノールアミン石鹸を生成し、熱による乳化性の低下を補填することができ、乳化の安定性をさらに向上させることができる。
また、上記銅材用塑性加工油は、炭素数の多い高級脂肪酸を含有しているため、低級脂肪酸のように銅材を腐食することがない。なお、本発明において、高級脂肪酸は、炭素数が9以上の脂肪酸である。
また、上記銅材用塑性加工油は、上記のアルキルフォスフォン酸を特定量含有している。そのため、銅材の表面が腐食して変色が発生することを防止でき、防錆性に優れている。また、塑性加工機のロール等の摩耗を防止することができる。
上記銅材用塑性加工油を1.0〜15.0重量%の割合で水に分散させ、エマルション状態にして用いる
上記銅材用塑性加工油を、水に特定量分散させてエマルションの状態にして使用する。
そのため、上記銅材用塑性加工油の特徴を最大限に生かして、優れた乳化の安定性、潤滑性、冷却性、及び防錆性を発揮できる。そして、長期間安定に銅材を塑性加工することができ、表面に焼き付き等のない優れた品質の銅製品を作製することができる。
本発明において、上記銅材用塑性加工油は、天然油脂及び/又は合成エステルからなる油性剤を10.0重量部〜30.0重量部含有する。
上記油性剤の含有量が10.0重量部未満の場合には、上記銅材用塑性加工油の境界潤滑性が低下し、銅材の表面に焼き付きが発生し易くなる。一方、30.0重量部を越えても、上記銅材用塑性加工油の特性は向上しない。そのため、この場合にはムダにコストが増大してしまうという問題がある。
上記油性剤としては、天然油脂と合成エステルとのいずれか一方、又は双方を含有することができる。
天然油脂としては、例えば大豆油、なたね油、パーム油、やし油、豚脂、及び牛脂等がある。
また、上記天然油脂は、パーム油、やし油、牛脂、及び豚脂から選ばれる1種以上であることが好ましい(請求項2)。
この場合には、上記銅材用塑性加工油の潤滑性をより向上させることができる。その結果、圧延機等のロールに摩耗粉が凝着することを防止でき、銅材の表面に傷が発生することを防止できる。また、この場合には、上記銅材用塑性加工油の製造コストを低くすることができる。さらに、この場合には、上記銅材用塑性加工油は、低温環境下においても固化し難くなり操業性に優れたものになる。
また、上記合成エステルは、ネオペンチルグリコールエステル、トリメチロールプロパンエステル、及びペンタエリスリトールエステルから選ばれる1種以上であることが好ましい(請求項3)。
この場合には、上記銅材用塑性加工油の潤滑性をより向上させることができる。その結果、圧延機等のロールに摩耗粉が凝着することを防止でき、銅材の表面に傷が発生することを防止できる。
なお、これらの合成エステルを構成する脂肪酸は直鎖のものであっても、分枝を有するものであってもよい。また、合成エステルはフルエステルあるいは部分エステルのどちらでもよい。
また、上記のネオペンチルグリコールエステルとしては、具体的には、例えばネオペンチルグリコールカプリン酸モノエステル、ネオペンチルグリコールカプリン酸ジエステル、ネオペンチルグリコールリノレン酸モノエステル、ネオペンチルグリコールリノレン酸ジエステル、ネオペンチルグリコールステアリン酸モノエステル、ネオペンチルグリコールステアリン酸ジエステル、ネオペンチルグリコールオレイン酸モノエステル、ネオペンチルグリコールオレイン酸ジエステル、ネオペンチルグリコールイソステアリン酸モノエステル、ネオペンチルグリコールイソステアリン酸ジエステル、ネオペンチルグリコールやし油脂肪酸モノエステル、ネオペンチルグリコールやし油脂肪酸ジエステル、ネオペンチルグリコール牛脂脂肪酸モノエステル、ネオペンチルグリコール牛脂脂肪酸ジエステル、ネオペンチルグリコールパーム油脂肪酸モノエステル、ネオペンチルグリコールパーム油脂肪酸ジエステル、ネオペンチルグリコール2モル・ダイマ酸1モル・オレイン酸2モルの複合エステル等がある。
これらのうちで、特に好ましくは、オレイン酸、イソステアリン酸、やし油脂肪酸、牛脂脂肪酸のエステルがよい。
また、トリメチロールプロパンエステルとしては、例えばトリメチロールプロパンカプリン酸モノエステル、トリメチロールプロパンカプリン酸ジエステル、トリメチロールプロパンカプリン酸トリエステル、トリメチロールプロパンリノレン酸モノエステル、トリメチロールプロパンリノレン酸ジエステル、トリメチロールプロパンリノレン酸トリエステル、トリメチロールプロパンステアリン酸モノエステル、トリメチロールプロパンステアリン酸ジエステル、トリメチロールプロパンステアリン酸トリエステル、トリメチロールプロパンオレイン酸モノエステル、トリメチロールプロパンオレイン酸ジエステル、トリメチロールプロパンオレイン酸トリエステル、トリメチロールプロパンイソステアリン酸モノエステル、トリメチロールプロパンイソステアリン酸ジエステル、トリメチロールプロパンイソステアリン酸トリエステル、トリメチロールプロパンやし油脂肪酸モノエステル、トリメチロールプロパンやし油脂肪酸ジエステル、トリメチロールプロパンやし油脂肪酸トリエステル、トリメチロールプロパン牛脂脂肪酸モノエステル、トリメチロールプロパン牛脂脂肪酸ジエステル、トリメチロールプロパン牛脂脂肪酸トリエステル、トリメチロールプロパンパーム油脂肪酸モノエステル、トリメチロールプロパンパーム油脂肪酸ジエステル、トリメチロールプロパンパーム油脂肪酸トリエステル、トリメチロールプロパン2モル・ダイマ酸1モル・オレイン酸4モルの複合エステル等がある。これらのうちで、特に好ましくは、オレイン酸、イソステアリン酸、やし油脂肪酸、牛脂脂肪酸のエステルがよい。
また、ペンタエリスリトールとしては、例えばペンタエリスリトールカプリン酸モノエステル、ペンタエリスリトールカプリン酸ジエステル、ペンタエリスリトールカプリン酸トリエステル、ペンタエリスリトールカプリン酸テトラエステル、ペンタエリスリトールリノレン酸モノエステル、ペンタエリスリトールリノレン酸ジエステル、ペンタエリスリトールリノレン酸トリエステル、ペンタエリスリトールリノレン酸テトラエステル、ペンタエリスリトールステアリン酸モノエステル、ペンタエリスリトールステアリン酸ジエステル、ペンタエリスリトールステアリン酸トリエステル、ペンタエリスリトールステアリン酸テトラエステル、ペンタエリスリトールオレイン酸モノエステル、ペンタエリスリトールオレイン酸ジエステル、ペンタエリスリトールオレイン酸トリエステル、ペンタエリスリトールオレイン酸テトラエステル、ペンタエリスリトールイソステアリン酸モノエステル、ペンタエリスリトールイソステアリン酸ジエステル、ペンタエリスリトールイソステアリン酸トリエステル、ペンタエリスリトールイソステアリン酸テトラエステル、ペンタエリスリトールやし油脂肪酸モノエステル、ペンタエリスリトールやし油脂肪酸ジエステル、ペンタエリスリトールやし油脂肪酸トリエステル、ペンタエリスリトールやし油脂肪酸テトラエステル、ペンタエリスリトール牛脂脂肪酸モノエステル、ペンタエリスリトール牛脂脂肪酸ジエステル、ペンタエリスリトール牛脂脂肪酸トリエステル、ペンタエリスリトール牛脂脂肪酸テトラエステル、ペンタエリスリトールパーム油脂肪酸モノエステル、ペンタエリスリトールパーム油脂肪酸ジエステル、ペンタエリスリトールパーム油脂肪酸トリエステル、ペンタエリスリトールパーム油脂肪酸テトラエステル、トリメチロールプロパン2モル・ダイマ酸1モル・オレイン酸6モルの複合エステル等がある。これらのうちで、特に好ましくは、オレイン酸、イソステアリン酸、やし油脂肪酸、牛脂脂肪酸のエステルがよい。
また、上記合成エステルは、該合成エステルを構成する脂肪酸の炭素数が12〜18であることが好ましい。
炭素数が12未満の場合には、上記銅材用塑性加工油の潤滑性が低下するおそれがある。一方、炭素数が18を越える場合には、冬季等の低温環境下において、固化し易くなり、取り扱いが困難になるおそれがある。
また、上記銅材用塑性加工油は、上記ポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤を1.0重量部〜10.0重量部含有する。
ポリエチレングリコール型非イオン性界面活性剤の含有量が1.0重量部未満の場合には、高級脂肪酸とエタノールアミンとが反応して生じるトリエタノールアミン石鹸による乳化力を充分に補うことができず、上記銅材用塑性加工油の乳化の安定性が低下するおそれがある。一方、10.0重量部を超える場合には、乳化が安定になりすぎて、圧延機等のロールバイト部でエマルションの油水分離が起こりにくくなり、その結果ロールバイト内への導入油量が少なくなり潤滑性が悪化するおそれがある。また、この場合には、例えば上述のようなクリーンタンク及びダーティータンクを備えた循環システムで上記銅材用塑性加工油を繰り返し用いる場合に、ダーティタンク内での浮上分濃度が少なくなり、摩耗粉や汚染物質を充分に除去できなくなるおそれがある。その結果、上記銅材用塑性加工油に摩耗粉や汚染物質が蓄積し、銅材の表面を汚染してしまうおそれがある。
また、上記ポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤は、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、及び脂肪酸エチレンオキサイド付加物から選ばれる1種以上であることが好ましい(請求項4)。
この場合には、上記ポリエチレングリコール型非イオン性界面活性剤による上記銅材用塑性加工油の乳化力の安定化効果を顕著に得ることができる。
高級アルコールエチレンオキサイド付加物としては、例えばラウリルアルコールエチレンオキサイド4モル付加物、ラウリルアルコールエチレンオキサイド11付加物、ラウリルアルコールエチレンオキサイド18付加物、セチルアルコールエチレンオキサイド4モル付加物、セチルルエチレンオキサイド11付加物、セチルエチレンオキサイド18付加物、オレイルアルコールエチレンオキサイド4モル付加物、オレイルエチレンオキサイド11付加物、オレイルエチレンオキサイド18付加物、椰子油還元アルコールエチレンオキサイド4モル付加物、椰子油還元エチレンオキサイド11付加物、椰子油還元エチレンオキサイド18付加物、牛脂還元アルコールエチレンオキサイド4モル付加物、牛脂還元エチレンオキサイド11付加物、牛脂還元エチレンオキサイド18付加物、C12〜C18チーグラーアルコールエチレンオキサイド4モル付加物、C12〜C18チーグラーアルコールエチレンオキサイド11モル付加物、C12〜C18チーグラーアルコールエチレンオキサイド18モル付加物、C12〜C18オキソアルコールエチレンオキサイド4モル付加物、C12〜C18オキソアルコールエチレンオキサイド11モル付加物、C12〜C18オキソアルコールエチレンオキサイド18モル付加物等がある。これらのうち、特に好ましくは、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、オキソアルコールのエチレンオキサイド付加物がよい。
また、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物としては、例えばノニルフェノールエチレンオキサイド2モル付加物、ノニルフェノールエチレンオキサイド11モル付加物、ノニルフェノールエチレンオキサイド20モル付加物、ドデシルフェノールエチレンオキサイド2モル付加物、ドデシルフェノールエチレンオキサイド11モル付加物、ドデシルフェノールエチレンオキサイド20モル付加物、オクチルフェノールエチレンオキサイド2モル付加物、オクチルフェノールエチレンオキサイド11モル付加物、及びオクチルフェノールエチレンオキサイド20モル付加物等がある。
また、脂肪酸エチレンオキサイド付加物としては、例えばポリエチレングリコールラウリン酸モノエステル(エチレンオキサイド2モル〜20モル付加物)、ポリエチレングリコールラウリン酸ジエステル(エチレンオキサイド2モル〜20モル付加物)、ポリエチレングリコールステアリン酸モノエステル(エチレンオキサイド2モル〜20モル付加物)、ポリエチレングリコールステアリン酸ジエステル(エチレンオキサイド2モル〜20モル付加物)、ポリエチレングリコールオレイン酸モノエステル(エチレンオキサイド2モル〜20モル付加物)、ポリエチレングリコールオレイン酸ジエステル(エチレンオキサイド2モル〜20モル付加物)等がある。
また、上記銅材用塑性加工油は、トリエタノールアミンを1.0重量部〜5.0重量部含有する。
トリエタノールアミンの含有量が1.0重量部未満の場合には、上記銅材用塑性加工油の乳化の安定性が低下するおそれがある。特に、上記銅材用塑性加工油を、例えば熱間圧延等のように熱を加えて行う塑性加工に用いると、上記銅材用塑性加工油に含まれるポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤が熱により劣化し、また、トリエタノールアミンの量が不充分であるためトリエタノールアミン石鹸が充分に生成しないため、上記銅材用塑性加工油の乳化性が劣化し易くなる。一方、5.0重量部を越える場合には、上記銅材用塑性加工油の乳化性が必要以上に高くなり、例えばエマルション状態にして使用するときにエマルションの粒径が小さくなりすぎて、スカムアウト性に悪影響を及ぼすおそれがある。
また、上記銅材用塑性加工油は、高級脂肪酸を2.0重量部〜10.0重量部含有する。
高級脂肪酸の含有量が2.0重量部未満の場合には、上記銅材用塑性加工油の乳化性が不安定となるおそれがある。特に、この場合には、上記銅材用塑性加工油に熱が加えられたり、低級酸が蓄積したときに極端に乳化性が不安定になるおそれがある。一方、高級脂肪酸の含有量が10.0重量部を越えても、上記銅材用塑性加工油の特性は向上しない。そのため、この場合にはムダにコストが増大してしまうおそれがある。
高級脂肪酸としては、例えばカプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、デミスリチン酸、ペンタデカン酸、パルチミン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ベヘン酸などの直鎖飽和酸やパルミトレイン酸、オレイン酸、リノル酸、リノレン酸、リシノール酸等の不飽和脂肪酸がある。
また、上記高級脂肪酸は、ラウリル酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、カプリン酸、リノレン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、椰子油脂肪酸、牛脂脂肪酸、及びパーム油脂肪酸から選ばれる1種以上であることが好ましい(請求項5)。
この場合には、上記銅材用塑性加工油を低コストで作製することができると共に、その潤滑性をさらに向上させることができる。特に好ましくは、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸がよい。この場合には、さらに作業性及び長期安定性を向上させることができる。
また、上記銅材用塑性加工油は、アルキルフォスフォン酸エステル1.0重量部〜5.0重量部含有する。
アルキルフォスフォン酸エステルが1.0重量部未満の場合には、上記銅材用塑性加工油を用いて銅材を塑性加工するときに、銅材の表面が腐食して銅材が変色してしまうおそれがある。また、圧延機等の塑性加工機のロールに摩耗が発生するおそれがある。一方、アルキルフォスフォン酸エステルの含有量が5.0重量部を越えても、上記銅材用塑性加工油の特性は向上しない。そのため、この場合にはムダにコストが増大してしまう。
また、上記アルキルフォスフォン酸エステルは、下記の一般式(1)で表されることが好ましい(請求項6)。
Figure 0004851749
(但し、R1は、炭素数12〜28のアルキル基である。)
この場合には、上記銅材用塑性加工油を用いたときの銅材の変色を一層防止することができると共に、かつ圧延機等のロールの摩耗を充分に抑制することができる。
また、上記一般式(1)において、R1のアルキル基の炭素数が12未満の場合には、圧延機等のロールの摩耗を充分に抑制することができず、ムダにコストが増大してしまうおそれがある。一方、炭素数が28を超える場合には、冬季等の低温環境において、アルキルフォスフォン酸エステルが析出し、加工油としての安定した性能が得られないおそれがある。
また、上記銅材用塑性加工油は、鉱油を40.0〜85.0重量部含有する。
鉱油の含有量が40.0重量部未満の場合には、天然油脂、合成エステル及び高級脂肪酸等の鉱油以外の成分が増加するため、上記銅材用塑性加工油の製造コストが高くなるおそれがある。一方、85.0重量部を越える場合には、鉱油以外の成分が少なくなり、上記銅材用塑性加工油の潤滑性が低下するおそれがある。
このような鉱油としては、例えば精製鉱油を用いることができ、具体的には、パラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油、及びノンアロマ鉱油などを用いることができる。
また、上記の鉱油は、40℃における粘度が100cSt以下であることが好ましい。
40℃における粘度が100cStを越える場合には、上記銅材用塑性加工油の粘度が高くなり、取り扱いが困難になるおそれがある。上記銅材用塑性加工油の粘度は、上記鉱油の粘度や量で調整することができる。
また、上記銅材用塑性加工油は、主成分として油性剤、ポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤、高級脂肪酸、トリエタノールアミン、アルキルフォスフォン酸エステル、及び鉱油を含有する。これら以外にも、上記銅材用塑性加工油は、副成分として、例えば防錆剤、乳化調整剤、防腐剤等を含有することができる。
また、上記銅材用塑性加工油は、その温度40℃における粘度が20cSt〜100cStであることが好ましい
上記銅材用塑性加工油の40℃における粘度が20cSt未満の場合には、ロールバイト内への導入油量が少なくなり、塑性加工機のロールと銅材との金属同士が直接接触する確率が高くなる。その結果、ロールの摩耗が起こりやすく、また銅材の表面に傷が発生し易くなる。さらに、ロールバイト内での油性剤等の添加剤量が少なくなり、境界潤滑性が劣化し、焼き付きが発生しやすくなる。一方、100cStを超える場合には、上記銅材用塑性加工油の取り扱いが困難になり、また圧延等の塑性加工時にスリップが発生しやすくなる。
また、上記銅材用塑性加工油は、硫黄を0.5〜2.0重量%含有することが好ましい(請求項)。
この場合には、上記銅材用塑性加工油の耐酸化性を向上させることができる。
即ち、一般に塑性加工油は、その主成分が鉱油や油性剤等の炭化水素系であり、これを長期間連続的に使用すると、圧延等における加工熱等により酸化され、蟻酸や酢酸等の低級脂肪酸を発生する場合がある。これら低級脂肪酸が塑性加工油のエマルション中に蓄積してくると、エマルションが不安定になり、その結果、潤滑不良や浮上分離油の増加等という不具合を生じるおそれがある。また、低級脂肪酸が銅材を腐食してしまうおそれがある。上記のごとく、上記銅材用塑性加工油の硫黄含有量を特定することで、上記銅材用塑性加工油の酸化を防止し、低級脂肪酸の発生を防止できるのである。
硫黄(S)の含有量が0.5重量%未満の場合には、上記銅材用塑性加工油の耐酸化性が不充分になり、上記銅材用塑性加工油の使用中に油性剤等が酸化し、蟻酸や酢酸等の低級脂肪酸が発生し、銅材が腐食してしまうおそれがある。一方、2.0重量%を超える場合には、銅材の表面を変色させてしまうおそれがある。より好ましい硫黄の含有量は、0.8〜1.5重量%である。
上記銅材用塑性加工油に硫黄(S)分を含有させる方法としては、上記銅材用塑性加工油に硫黄化合物として、チオウレア、チアゾール、スルファンアミド、チウラム、ジチオカルバミン酸塩、キサントゲン酸塩、ベンツイミダゾール、メルカプタン、及びスルフォドから選ばれる1種以上を加える方法や、鉱油の一部をSを含む鉱油に置換する方法等がある。
硫黄を含む鉱油としては、パラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油のいずれでも良く、その置換量(硫黄含有量)は、3.0〜8.0重量%が好適であり、鉱油を添加した後の上記銅材用塑性加工油の硫黄含有量が0.5〜2.0重量部になるように調整すればよい。
また、硫黄化合物のチオウレアとしては、例えばN,N’−ジフェニルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、及びN,N’−ジエチルチオ尿素等から選ばれる1種以上を用いることができる。
また、チアゾールとしては、例えば2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルファド、2−(2’,4’−ジニトロフェニルチオ)ベンゾチアゾール、2−(N,N−ジエチルオカルバモイルチオ)ベンゾチアゾール、及び2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール等から選ばれる1種以上を用いることができる。
また、スルファンアミドとしては、例えばN−シクロフエキシル−2−ベンゾチアゾリルスルファンアミド、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルファンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルファンアミド、及びN,N’−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルファンアミド等から選ばれる1種以上を用いることができる。
また、チウラムとしては、例えばテトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、及びジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等から選ばれる1種以上を用いることができる。
また、ジチオカルバミン酸塩としては、例えばジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、N−エチル−フェニルジチオカルバミン酸亜鉛、N−ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジメチルジチオカルバミン酸第2鉄、及びジエチルジチオカルバミン酸テルル等から選ばれる1種以上を用いることができる。
また、キサントゲン酸塩としては、例えばブチルキサントゲン酸亜鉛、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛等を用いることができる。
また、ベンツイミダゾールとしては、例えば2−メルカプトベンツイミダゾール、2−メルカプトメチルベンツイミダゾール、2−メルカプトベンツイミダゾールの亜鉛塩、及び2−メルカプトメチルベンツイミダゾールの亜鉛塩等から選ばれる1種以上を用いることができる。
また、メルカプタンとしては、各種のアルキルメルカプタンを、スルフィドとしては、ジベンジルスルフィドや、各種のアルキルポリスルフィドをそれぞれ好適に用いることができる。
また、上記銅材用塑性加工油は、圧延、鋳造、押出加工、引抜加工等の塑性加工に用いることができる。また、上記銅材用塑性加工油を圧延に用いる際には、熱間圧延及び冷間圧延のいずれにも用いることができる。好ましくはコールドピルガー圧延等の冷間圧延に用いるのがよい。この場合には、上記銅材用塑性加工油が有する上記の各種特性を最大限に発揮できる。
また上記銅材用塑性加工油を1.0〜15.0重量%の割合で水に分散させ、エマルション状態にして用いる。
エマルション中の銅材用塑性加工油の濃度が1.0重量%未満の場合には、潤滑性が不足し、銅材や最終的な銅製品の表面に焼き付きが発生し易くなる。一方、15.0重量%を越える場合には、上記銅材用塑性加工油の冷却性が低下するおそれがある。また、この場合には、上記のごとくダーティタンク及びクリーンタンクを備えた循環システムにて上記銅材用塑性加工油を循環させてその再利用を図る際に、ダーティータンク内での浮上分離油が増加し易く、コストが高くなるおそれがある。
また、上記銅材用塑性加工油を分散させる水としては、例えば、脱イオン水、RO水、上水、及び工水等を用いることができる。
(実施例1)
次に、本発明の実施例につき、説明する。
本例においては、組成の異なる複数の銅材用塑性加工油を準備し、その特性を評価する。
本例の銅材用塑性加工油は、銅又は銅合金よりなる銅材を塑性加工するための銅材用塑性加工油である。該銅材用塑性加工油は、その主成分を100重量部とした場合に、該主成分として、天然油脂及び/又は合成エステルからなる油性剤を10.0重量部〜30.0重量部、ポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤を1.0重量部〜10.0重量部、高級脂肪酸を2.0重量部〜10.0重量部、トリエタノールアミンを1.0重量部〜5.0重量部、アルキルフォスフォン酸エステルを1.0重量部〜5.0重量部、及び鉱油を40.0〜85.0重量部含有する。
本例では、下記の表1及び表2に示すごとく、油性剤、高級脂肪酸、ポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤、トリエタノールアミン、アルキルフォスフォン酸エステル、及び鉱油の量や種類が異なる複数の銅材用塑性加工油(試料E1〜試料E26)を作製した。これらの銅材用塑性加工油は、油性剤として、天然油脂又は合成エステルを含有する。ここで、天然油脂としては、パーム油、又は牛脂のいずれかを用いた。また、合成エステルとしては、ネオペンチルグリコールオレイン酸ジエステル、トリメチロールプロパンオレイン酸トリエステル、又はペンタエリスリトールオレイン酸トリエステルのいずれかを用いた。
また、高級脂肪酸としては、オレイン酸、カプリン酸、ステアリン酸、又はイソステアリン酸を、ポリエチレングリコール型非イオン性界面活性剤としては、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物モノエステル、又は脂肪酸エチレンオキサイド付加物ジエステルをそれぞれ用いた。
また、アルキルフォスフォン酸エステルとしては、上記一般式(1)で表される化合物であって、アルキル基R1が炭素数20、12、又は22であるものを用いた。
また、鉱油としては、40℃における粘度が10〜160cStのパラフィン系鉱油を用いた。各試料の銅材用塑性加工油は、鉱油の粘度や量を調整し、40℃における粘度が20cSt、50cSt、又は100cStになるように調整した。
また、下記の表1、表2においては、便宜上、トリエタノールアミンをTEA、パーム油をP、牛脂をB、ネオペンチルグリコールオレイン酸ジエステルをN−Ol−D、トリメチロールプロパンオレイン酸トリエステルをT−Ol−T、ペンタエリスリトールオレイン酸トリエステルをP−Ol−T、オレイン酸をOl、カプリン酸をCa、ステアリン酸をSt、イソステアリン酸をIs、高級アルコールエチレンオキサイド付加物をA、脂肪酸エチレンオキサイド付加物モノエステルをCAM、脂肪酸エチレンオキサイド付加物ジエステルをCADとしてそれぞれ表している。なお、A、CAM、CADの後ろに付記した括弧内の数字は、炭素数を示すものである。また、表1及び表2において、アルキルフォスフォン酸エステルにおける上記一般式(1)のR1の炭素数はCに続く数字で表している。即ち、例えば「C20」はR1の炭素数が20であることを示す。
表1及び表2に、試料E1〜試料E26の銅材用塑性加工油の組成及び動粘度を示す。
また、本例においては、上記の試料E1〜試料E26の優れた特徴を明らかにするために、比較用として10種類の銅材用塑性加工油(試料C1〜試料C10)を準備した。
表3に試料C1〜試料C10の塑性加工油の組成、動粘度を示す。表3における化合物名等の略号は表1及び表2と同様である。
Figure 0004851749
Figure 0004851749
Figure 0004851749
次いで、上記の表1〜表3に示す各試料について、潤滑性、冷却性、乳化安定性、及び防錆性を評価した。その評価方法を下記に示す。なお、各評価にあたっては、各試料(試料E1〜試料E26及び試料C1〜試料C10)の銅材用塑性加工油を水に分散させ、それぞれ表1及び表2に示す濃度のエマルション状態にしたものを用いた。
「潤滑性」
ロール径が76mmの小型2段圧延機を用いて、板圧1.5mm、幅52mm、長さ250mmのりん脱酸銅よりなる銅材を、圧延速度10m/minで板圧0.42mmまで圧延した。このときの圧延加重をロードセルを用いて計測し、またポンチマーク法によって先進率を求めた。その結果をBland&Fordの式にあてはめて、摩擦係数を求めた。摩擦係数が0.2未満の場合を「○」として評価し、0.2以上の場合を「×」として評価した。その結果を表4及び表5に示す。
「冷却性」
各試料100mL中に、ガス炎で任意の温度に加熱した熱電体を投入し、得られた冷却曲線について0.0074秒当たりの温度勾配を調べた。最大の温度勾配が20℃/0.0074sec以上の場合を「○」として評価し、20℃/0.0074sec未満の場合を「×」として評価した。その結果を表4及び表5に示す。
「防錆性」
200mlのトールビーカーに各試料のエマルションを100ml入れ、事前にエメリー紙にて表面を研磨したりん脱酸銅板及びSPCC鋼板を浸漬し、ビーカー上部をアルミ箔で覆う。14日間放置する間に、リン酸脱酸銅板及びSPCC鋼板の変色及び腐食の発生を目視にて観察した。7日間未満で変色や腐食が発生した場合を「×」として評価し、7日〜14日間で変色や腐食が発生した場合を「△」として評価し、14日間を超えても変色や発錆が全く認められなかった場合を「○」として評価した。その結果を表4及び表5に示す。
「乳化性」
各試料のエマルション400mlを500mlビーカーに入れ、30℃に加熱した後、ホモミキサーを用いて、回転数8000rpmで10分間撹拌し、得られたエマルションの平均粒径をレーザー回折・散乱式粒度分布測定装置にて計測した。粒径が1.0μm以下を「過多」、4.0μm以上を「不足」とし、これらの間にある場合を「○」として評価した。その結果を表4及び表5に示す。
Figure 0004851749
Figure 0004851749
表4より知られるごとく、試料E1〜試料E26の銅材用塑性加工油は、潤滑性、冷却性、防錆性、及び乳化性のいずれにも優れていた。また、試料E1〜試料E26は、環境ホルモン等を含んでいないため、環境に対しても安全なものであった。
一方、表5より知られるごとく、試料C1〜試料C10の銅材用塑性加工油は、潤滑性、冷却性、防錆性及び乳化性のいずれかに問題があった。
(実施例2)
本例においては、硫黄(S)含有量の異なる銅材用塑性加工油を作製し、その潤滑性、冷却性、防錆性、乳化性、及び耐酸化性を調べた。
まず、実施例1と同様に、各種油性剤、高級脂肪酸、ポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤、トリエタノールアミン、アルキルフォスフォン酸エステル、及び鉱油を混合して複数の銅材用塑性加工油(試料X1〜試料X6)を作製した。
本例の各試料においては、油性剤として天然油脂のパーム油を、高級脂肪酸としてオレイン酸を、アルキルフォスフォン酸エステルとして一般式(1)で表される化合物であって、アルキル基R1が炭素数20であるものを用いた。
ポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤としては、炭素数が9の脂肪酸エチレンオキサイド付加物モノエステル(CAM)、又は炭素数が9の脂肪酸エチレンオキサイド付加物ジエステル(CAD)を用いた。
また、鉱油としては、40℃における粘度が10〜160cStのパラフィン系鉱油を用いた。各試料の銅材用塑性加工油は、40℃における粘度が50cStになるように調整した。
また、各試料X1〜X6には、硫黄化合物として、メルカプタンを添加し、各銅材用塑性加工油(試料X1〜X6)の最終的な硫黄含有量が0.2〜2.5重量%になるように調整した。
各試料の組成及び粘度を表6に示す。下記の表6より知られるごとく、試料X1〜X3は、硫黄を所定量含有することを除き、実施例1の上記試料E1と同様のものである。また、試料X4〜X6は、硫黄を所定量含有することを除き、実施例1の上記試料E16と同様のものである。
Figure 0004851749
次いで、表6に示す各試料について、実施例1と同様の方法により、潤滑性、冷却性、乳化安定性、及び防錆性を評価した。また、下記の方法により耐酸化性を評価した。なお、評価に当たっては、各試料(試料X1〜X6)の銅材用塑性加工油を水に分散させ、濃度10%のエマルション状態にしたものを用いた。
「耐酸化性」
100mlのビーカーに、各試料のエマルション100ml及び触媒としての電解鉄粉1gを入れる。オーブンにて90℃に加熱し、336時間保持する。その後、各試料のエマルション中の有機酸をイオンクロマトグラフにて定量する。蟻酸濃度が100ppm以上の場合を「×」として評価し、100ppm未満の場合を「○」として評価した。その結果を表7に示す。
Figure 0004851749
表7より知られるごとく、試料X1〜試料X6は、銅材を塑性加工して銅製品を製造するにあたり、充分に優れた潤滑性、冷却性、防錆性及び乳化性を示した。また、試料X2、X3、X5及びX6は、これらの特性に加えてさらに耐酸化性にも優れていた。
一方、試料X1及び試料X4のように、硫黄含有量が2.0重量%と低い場合には、耐酸化性が低く、低級脂肪酸が発生し易いことがわかる。この場合には、生成した低級脂肪酸が銅材を腐食してしまうおそれがある。
また、試料X3及び試料X6のように、硫黄含有量が2.5重量%と高い場合には、ほぼ同組成の試料である上記試料E1や試料E16に比べて若干の変色発生し、防錆性がやや低下していた。しかしこの防錆性の低下は、銅製品の製造においては問題のないレベルであった。
なお、表中には明確に示していないが、硫黄の含有量が0.5〜2.0重量%のときに、本例の銅材用塑性加工油は、優れた潤滑性、冷却性、防錆性及び乳化性に加えて、優れた耐酸化性を発揮できることを確認している。
冷間圧延(コールドピルガー圧延)に用いるコールドピルガミルの圧延機構を示す説明図。
符号の説明
1 銅材
2 圧延機
21 ロール
22 マンドレル

Claims (7)

  1. 銅又は銅合金よりなる銅材を塑性加工するための銅材用塑性加工油であって、
    該銅材用塑性加工油は、その主成分を100重量部とした場合に、該主成分として、天然油脂及び/又は合成エステルからなる油性剤を10.0重量部〜30.0重量部、ポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤を1.0重量部〜10.0重量部、炭素数10〜22の高級脂肪酸を2.0重量部〜10.0重量部、トリエタノールアミンを1.0重量部〜5.0重量部、アルキルフォスフォン酸エステルを1.0重量部〜5.0重量部、及び鉱油を40.0〜85.0重量部含有し、
    上記銅材用塑性加工油は、その温度40℃における粘度が20cSt〜100cStであり、上記銅材用塑性加工油を1.0〜15.0重量%の割合で水に分散させ、エマルション状態にして用いることを特徴とする銅材用塑性加工油。
  2. 請求項1において、上記天然油脂は、パーム油、やし油、牛脂、及び豚脂から選ばれる1種以上であることを特徴とする銅材用塑性加工油。
  3. 請求項1又は2において、上記合成エステルは、ネオペンチルグリコールエステル、トリメチロールプロパンエステル、及びペンタエリスリトールエステルから選ばれる1種以上であることを特徴とする銅材用塑性加工油。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項において、上記ポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤は、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、及び脂肪酸エチレンオキサイド付加物から選ばれる1種以上であることを特徴とする銅材用塑性加工油。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項において、上記高級脂肪酸は、ラウリル酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、カプリン酸、リノレン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、椰子油脂肪酸、牛脂脂肪酸、及びパーム油脂肪酸から選ばれる1種以上であることを特徴とする銅材用塑性加工油。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項において、上記アルキルフォスフォン酸エステルは、下記の一般式(1)で表されることを特徴とする銅材用塑性加工油。
    Figure 0004851749
    (但し、R1は、炭素数12〜28のアルキル基である。)
  7. 請求項1〜6のいずれか一項において、上記銅材用塑性加工油は、硫黄を0.5〜2.0重量%含有することを特徴とする銅材用塑性加工油。
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