JP2009209247A - 金属の塑性加工用水性潤滑剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】塗布するだけで優れた潤滑特性を有する皮膜を形成でき、設備費用とランニング費用が低廉で、廃棄物が発生せず、金型にかすが残ることがない金属の塑性加工用水性潤滑剤。
【解決手段】必須成分として、リン酸金属塩30〜50重量%、不飽和脂肪酸金属塩10〜30重量%、2−チオベンゾチアゾール化合物5〜40重量%及び界面活性剤1〜10重量%を含有し、飽和脂肪酸金属塩を実質的に含有しない金属の塑性加工用水性潤滑剤。
【選択図】なし
【解決手段】必須成分として、リン酸金属塩30〜50重量%、不飽和脂肪酸金属塩10〜30重量%、2−チオベンゾチアゾール化合物5〜40重量%及び界面活性剤1〜10重量%を含有し、飽和脂肪酸金属塩を実質的に含有しない金属の塑性加工用水性潤滑剤。
【選択図】なし
Description
本発明は、金属の塑性加工用水性潤滑剤に関し、さらに詳しくは鍛造、伸線、伸管、引き抜き、押出し、曲げ加工、プレス、巻線加工、ヘッダー加工等の金属塑性加工用として好適で、補助潤滑剤を必要とせず、この潤滑剤を塗布するだけで塑性加工が可能で、かつ加工後に洗浄しなくても金属に影響を与えず、更に廃棄物処理の必要がない水性潤滑剤に関する。
通常、鍛造、伸線、プレス、引き抜き、押出し、曲げ加工等の金属の塑性加工を行う際に潤滑剤が使用されるが、これらの潤滑剤は、油性、溶剤系、水性、化成被膜系のものに大別される。油性の潤滑剤は、鉱物油、植物油等の基油に黒鉛、二硫化モリブデン、ワックス類を添加し、必要に応じて各種添加剤を配合したものである。溶剤系の潤滑剤は、二硫化モリブデン、塩化ゴム、四フッ化エチレン、ポリエチレン等を溶剤の中に溶解又は分散したものである。水性潤滑剤としては、黒鉛、二硫化モリブデン、油、イオウ、塩素系化合物を乳化剤と配合し、エマルジョン又はサスペンジョンとして使用される。また、化成被膜剤は、リン酸被膜又はシュウ酸被膜に補助潤滑剤として金属石鹸を併用して使用されるものである。
従来、冷間鍛造の潤滑処理には化成処理がもっとも一般的である。化成処理では、予めショトブラストした加工材料を、脱脂、湯洗、酸洗、湯洗の前処理を行った後、これにリン酸亜鉛皮膜又はシュウ酸亜鉛皮膜を形成させ、湯洗、中和し、さらに金属セッケン皮膜を形成させたのち乾燥する。この化成処理は、リン酸槽、水洗槽、中和槽、金属セッケン槽、脱脂槽など全部で6槽とその他に加熱用ボイラーなど諸設備が必要であり、また処理工程が長いことから設備費用とランニング費用が嵩むうえ、多量の濃厚廃液と無機性汚泥が発生し、その処理にも多大なコストを要する。
これを解決するものとして、本発明者は、必須成分としてリン酸金属塩、2−チオベンゾチアゾール化合物、金属セッケン及び界面活性剤を含有してなる塑性加工用水性潤滑剤を開発した(特許文献1)。この水性潤滑剤は、金属材料に塗布し乾燥するだけで、極圧性、すべり性及び展性が優れた滑性皮膜を形成でき、設備費用とランニング費用も低廉である。従来の化成処理とは異なり、新鮮な水性潤滑剤を継ぎ足すだけで再使用でき、廃棄物を発生することもない。しかしながら、この水性潤滑剤は、経時変化により結晶が生成して、金型にかすが残るため金型の耐久性に問題があった。
また、金属セッケンとして炭素数8〜22の飽和脂肪酸アルカリ金属塩と炭素数8〜22の不飽和脂肪酸アルカリ金属塩とを含有する塑性加工用潤滑剤が提案されている(特許文献2)。この潤滑剤は、リン酸塩処理が施された後に使用されるが、上記と同様に金型にかすが残るため金型の耐久性に問題があった。また、潤滑油にベンゾチアゾール化合物を配合した潤滑油組成物は、特許文献3や特許文献4などにより従来公知であるが、これらは鉱油や合成油等を基油とする油性潤滑剤であるので、これらを塑性加工用潤滑剤として用いると、塗膜形成面がベトついて作業性が低下し、また従来の化成処理に較べて潤滑性能が低いなどの問題があった。
したがって、本発明の目的は、塗布するだけで優れた潤滑特性を有する皮膜を形成でき、設備費用とランニング費用が低廉であり、廃棄物が発生せず、しかも金型にかすが残ることがない金属の塑性加工用水性潤滑剤を提供することにある。
本発明者らは、皮膜形成成分としてリン酸金属塩を含有する水性潤滑剤に特定の極圧剤などを配合してなる塑性加工用水性潤滑剤において、金属セッケンとして不飽和脂肪酸金属塩を用いることにより、上記課題を解決できることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成した。
すなわち、本発明は、必須成分として、リン酸金属塩30〜50重量%(固形分。以下同じ)、不飽和脂肪酸金属塩10〜30重量%、2−チオベンゾチアゾール化合物5〜40重量%及び界面活性剤1〜10重量%を含有し、飽和脂肪酸金属塩を実質的に含有しないことを特徴とする金属の塑性加工用水性潤滑剤である。
本発明の金属の塑性加工用水性潤滑剤(以下、水性潤滑剤という)において、不飽和脂肪酸金属塩は、好ましくは不飽和脂肪酸のアルカリ塩であり、より好ましくは、オレイン酸、リノール酸及びリノレン酸から選ばれる少なくとも一種のナトリウム塩である。
本発明の水性潤滑剤において、2−チオベンゾチアゾール化合物は、一般式(1)で表される2−メルカプトベンゾチアゾール、そのアミン塩及び金属塩から選ばれる少なくとも一種であるか、あるいは一般式(2)で表される2−チオベンゾチアゾール化合物の少なくとも一種であることがよい。
(式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基を表し、mは0〜3の数を表す)
(式中、R2は炭素数1〜4のアルキル基を表し、mは0〜3の数を表し、Xは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルキルメルカプト基、シクロアルキルメルカプト基、2−チオベンゾチオゾイル基、炭素数1〜4のアルキル基を有する二級アミノ基、シクロアルキル置換二級アミノ基、炭素数1〜4のアルキル基を有する三級アミノ基、シクロアルキル置換三級アミノ基、N,N−ジアルキルチオカルバミル基、N−モルホリン基又はモルホリノチオ基を表す)
本発明の水性潤滑剤は、加工後の金型にかすが残ることがないので、製品の歩留りを著しく向上することができる。また、補助潤滑剤を必要とせず、金属材料に塗布、噴霧又は浸漬したのち乾燥するだけで、きわめて簡単にベタつきのない潤滑性皮膜を形成でき、設備費用とランニング費用がともに低廉である。さらに、新鮮な水性潤滑剤を継ぎ足すだけで再使用でき、廃棄物を発生することもない。そのうえ、本発明の水性潤滑剤を金属材料に施して形成される潤滑性被膜は、極圧性、すべり性及び展性に極めて優れ、従来の化成処理と同等ないしはそれ以上の優れた潤滑特性を有し、金属の塑性加工にきわめて好適である
以下、本発明の水性潤滑剤について詳細に説明する。
本発明の水性潤滑剤には、必須成分としてリン酸金属塩を配合する。このリン酸金属塩としては、通常のリン酸被膜形成に用いられるリン酸金属塩であれば特に制限はないが、好ましくはピロリン酸ナトリウム、トリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム及びピロリン酸亜鉛から選ばれる少なくとも一種が挙げられ、より好ましくはピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム及びピロリン酸亜鉛を含むものがよい。リン酸金属塩の配合量は、全必須成分のうち30〜50重量%(固形分。以下同じ)、好ましくは35〜45重量%である。リン酸金属塩の配合量が30重量%より少ないと潤滑性が低下し、50重量%を超えるとカスが堆積したり、吸湿性が高くなったりするので、潤滑性の低下や発錆の原因にもなる。
本発明の水性潤滑剤には、必須成分としてリン酸金属塩を配合する。このリン酸金属塩としては、通常のリン酸被膜形成に用いられるリン酸金属塩であれば特に制限はないが、好ましくはピロリン酸ナトリウム、トリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム及びピロリン酸亜鉛から選ばれる少なくとも一種が挙げられ、より好ましくはピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム及びピロリン酸亜鉛を含むものがよい。リン酸金属塩の配合量は、全必須成分のうち30〜50重量%(固形分。以下同じ)、好ましくは35〜45重量%である。リン酸金属塩の配合量が30重量%より少ないと潤滑性が低下し、50重量%を超えるとカスが堆積したり、吸湿性が高くなったりするので、潤滑性の低下や発錆の原因にもなる。
次に、本発明の水性潤滑剤には、必須成分として2−チオベンゾチアゾール化合物を配合する。2−チオベンゾチアゾール化合物は、本発明の水性潤滑剤において極圧剤(極圧膜形成剤)として機能し、高効率の塑性加工を可能とする。本発明は、皮膜形成能を有する水性潤滑剤に、極圧剤として2−チオベンゾチアゾール化合物を配合することによって、従来の化成処理を凌駕する皮膜形成性を実現した。
本発明の水性潤滑剤に極圧剤として配合する2−チオベンゾチアゾール化合物は、一般式(1)で表される2−メルカプトベンゾチアゾール、そのアミン塩及び金属塩から選ばれる少なくとも一種である。
(式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基を表し、mは0〜3の数を表す)
R1のアルキル基は、直鎖状でも分枝状でもよく、好ましくはメチル基又はエチル基であり、mは好ましくは0又は1の数である。具体的には、2−メルカプトベンゾチアゾール、メチル置換2−メルカプトベンゾチアゾール、エチル置換2−メルカプトベンゾチアゾールなどが挙げられる。
一般式(1)で表される置換又は非置換の2−メルカプトベンゾチアゾールのアミン塩としては、例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリソプロパノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−エチルイソプロパノールアミン、N−(β−アミノエチル)エタノールアミン、シクロヘキシルアミン、モルホリン等のアミン塩が挙げられる。また、一般式(1)で表される置換又は非置換の2−メルカプトベンゾチアゾールの金属塩としては、例えば亜鉛、ナトリウム、鉛、モリブデン、銅、鉄、ニッケル等の金属塩が挙げられる。
また、極圧剤として一般式(2)で表される2−チオベンゾチアゾール化合物の少なくとも一種を配合することができる。
(式中、R2は炭素数1〜4のアルキル基を表し、mは0〜3の数を表し、Xは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルキルメルカプト基、シクロアルキルメルカプト基、2−チオベンゾチオゾイル基、炭素数1〜4のアルキル基を有する二級アミノ基、シクロアルキル置換二級アミノ基、炭素数1〜4のアルキル基を有する三級アミノ基、シクロアルキル置換三級アミノ基、N,N−ジアルキルチオカルバミル基、N−モルホリン基又はモルホリノチオ基を表す)
R2のアルキル基は、直鎖状でも分枝状でもよく、好ましくはメチル基又はエチル基であり、mは好ましくは0又は1の数である。
また、Xの炭素数1〜20のアルキル基(メルカプトアルキル基に含まれるアルキル基も同じ)は、直鎖状でも分枝状でもよく、好ましくは鎖状又は分枝状ヘキシル基、直鎖状又は分枝状ヘプチル基、直鎖状又は分枝状オクチル基、直鎖状又は分枝状ノニル基、直鎖状又は分枝状デシル基、直鎖状又は分枝状ウンデシル基、直鎖状又は分枝状ドデシル基、直鎖状又は分枝状トリデシル基等の炭素数6〜13のアルキル基である。シクロアルキル基としてはシクロヘキシル基が好ましい。
炭素数1〜4のアルキル基を有する二級アミノ基又はシクロアルキル置換二級アミノ基は下記一般式(3)、炭素数1〜4のアルキル基を有する三級アミノ基又はシクロアルキル置換三級アミノ基は下記一般式(4)、N,N−ジアルキルチオカルバミル基は下記一般式(5)でそれぞれ表される。
(式中、R3、R4、R5は炭素数1〜4のアルキル基又はシクロアルキル基を表し、R6、R7は炭素数1〜4のアルキル基を表す)
R3、R4及びR5は、アルキル基のとき直鎖状でも分枝状でもよく、好ましくはメチル基、エチル基であり、シクロアルキル基のとき好ましくはシクロヘキシル基である。R6及びR7のアルキル基は、直鎖状でも分枝状でもよく、好ましくはメチル基又はエチル基である。
本発明の水性潤滑剤において、2−チオベンゾチアゾール化合物の配合量は、全必須成分のうち5〜40重量%(固形分。以下同じ)、好ましくは10〜35重量%である。2−チオベンゾチアゾール化合物の配合量が5重量%より少ないと極圧性が低下して金属面に焼き付きが生じる。本発明の塑性加工用水性潤滑剤において、極圧剤は2−チオベンゾチアゾール化合物が最適であり、これに代えて他の硫黄系極圧剤を配合すると金属面に焼き付きが生じる。
なお、本発明の目的を損なわない範囲で、必須成分である2−チオベンゾチアゾール化合物に加えて、従来公知の極圧剤を配合することができる。イオウ系極圧剤としては、例えばジフェニルジスルフィド、ジベンジルジスルフィド、ジアリルジスルフィド、有機多硫化物、ポリフェニレンスルフィド等のジスルフィド類や、例えばトリクレジルホスフェート、モノアミールホスフェート、ポリアルキレンエーテルホスフェート等のホスフェート類などが挙げられる。その他、例えばトリブチルホスファイト、ジラウリルホスファイト等のホスファイト類などのリン酸エステル類や、例えばキサントキン酸ジスルフィド、キサントゲンテトラスルフィド、キサントゲン酸ポリアルキレングリコールエステル等のチオカーボネート類や、例えばナフテン酸鉛、オレイン酸鉛、ジチオフォスフェート亜鉛(Zn−DTP)等の有機金属化合物や、硫化油脂類などが挙げられる。
本発明の水性潤滑剤には、必須成分として不飽和脂肪酸金属塩を配合するが、飽和脂肪酸金属塩(通常の金属セッケン)は実質的に配合してはならない。飽和脂肪酸金属塩を配合すると、加工後の金型にカスが生成し、これが製品に傷をつけるからである。ところが、飽和脂肪酸金属塩に代えて不飽和脂肪酸金属塩のみを配合すると、カスを生じることがなく、製品の歩留りが著しく向上する。なお、飽和脂肪酸金属塩を実質的に配合しないとは、飽和脂肪酸金属塩を積極的に配合しないことを意味し、本発明の水性潤滑剤に必須成分として配合する不飽和脂肪酸金属塩が不可避的に少量の飽和脂肪酸金属塩を含むものである場合は、これを使用することを排除するものではない。
不飽和脂肪酸金属塩としては、炭素数8〜22の不飽和脂肪酸の金属塩、例えばナトリウム塩、カリ塩、リチウム塩等のアルカリ塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩等のアルカリ土類塩、アルミニウム塩、亜鉛塩などが挙げられる。これらのうち、アルカリ金属塩が好ましく、特に、オレイン酸、リノール酸及びリノレン酸等の炭素数18の不飽和脂肪酸のナトリウム塩が費用対効果の観点からより好ましい。これらの不飽和脂肪酸金属塩は単独でもよいし、二種以上を併用してもよい。不飽和脂肪酸金属塩の配合量は、全必須成分のうち10〜30重量%(固形分。以下同じ)、好ましくは5〜15重量%である。不飽和脂肪酸金属塩の配合量が5重量%より少ないと潤滑性能が不足し、20重量%を超えると吸湿性が高くなって、潤滑性の低下や発錆の原因にもなる。
また、本発明の水性潤滑剤には、潤滑成分等の固形分を水に乳化又は分散させるために必須成分として界面活性剤を配合する。界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤や、アルキルベンゼンスルホン酸塩、SDS等のアルキル硫酸塩、アルキル硫酸エステル塩などのアニオン界面活性剤などが挙げられ、好ましくは非イオン界面活性剤である。なお、本発明においては、両性界面活性剤やカチオン界面活性剤やフッ素系界面活性剤を用いることもできる。これらの界面活性剤は単独でもよいし、二種以上を併用してもよい。界面活性剤の配合量は、全必須成分のうち3〜10重量%(固形分。以下同じ)である。界面活性剤の配合量が3重量%より少ないと水性潤滑剤の乳化、分散が不良で、安定性に乏しい水性潤滑剤しか得られず、配合量が10重量%を超えると乾燥皮膜が形成されず、いつまでも表面が濡れた状態で潤滑性が低下する。
本発明の水性潤滑剤は、上記の必須成分すなわち、リン酸金属塩、2−チオメルカプトベンゾチアゾール化合物、不飽和脂肪酸金属塩、界面活性剤をそれぞれ所定割合で配合し、配合物と水を例えばミキサー等の攪拌装置で混合し、水溶液、エマルジョン、サスペンジョン等の水性液状物とすることにより調製することができる。水性潤滑剤における必須成分の固形分濃度は、塑性加工を行う金属材料表面に潤滑性皮膜を形成できる濃度であれば特に制限はないが、通常1〜30重量%、好ましくは5〜20重量%である。
本発明の水性潤滑剤には、必要に応じて必須成分以外に公知の潤滑添加剤、例えばキャリヤー剤、ワックス類、油状物、シリコン類などの一種又は二種以上を配合してもよい。これらの成分を配合することにより、形成される潤滑性皮膜のすべり性などを向上させることができる。
キャリヤー剤としては、固体潤滑剤が主に使用され、フッ化カーボン、チッ化ボロン、メラミンシアヌル酸(メラミンとシアヌル酸の付加物、MCAともいわれている)、黒鉛、二硫化モリブデン、二硫化タングステンなどや、硫酸ナトリウム、硫酸バリウム、硫酸リチウムなどの一種又は二種以上の混合物が挙げられる。キャリヤー剤を添加する場合の配合量は、全必須成分に対し1〜20重量%、好ましくは1〜10重量%である。
また、ワックス類としては、パラフィンワックス、カルナバワックス、モンタンワックス、オゾケライトワックス、シコラックスワックス、ライスワックス、密ロウ、木ロウ、マイクロクリスタリンワックス等の天然ワックスや、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、カスターワックス、オパールワックス等の合成ワックスなどが挙げられる。ワックス類は単独でもよいし、二種以上を併用してもよい。ワックス類を配合する場合の配合量は、全必須成分に対し20重量%以下、好ましくは10重量%以下である。
さらに、油状物としては、水性液中に乳化状態で存在し、本発明の水性潤滑剤を安定化する性質を有する植物油、鉱油、合成油などが挙げられる。植物油としては、例えば大豆油、菜種油、オリーブ油、サラダ油、パーム油、亜麻仁油、向日葵油、落花生油、ゴマ油、ヤシ油、ナッツ油、クルミ油など、鉱物油としては、例えばギヤー油、マシン油、タービン油、スピンドル油、作動油など、合成オイルとしては、例えばポリエーテル、ポリオール、エチレングリコール、エステル油などが挙げられ、これらは単独でもよいし、二種以上を併用してもよい。油状物を配合する場合の配合量は、全必須成分に対し10重量%以下、好ましくは1〜6重量%である。
さらに、シリコン類も、水性液中に乳化状態で存在できるものが好ましく、例えばジメチルシリコン、メチルフェニルシリコン、メチルハイドロジェンシリコン、アミノ変性シリコン、エポキシ変性シリコン、カルボキシル変性シリコン、カルビノール変性シリコン、メタクリル変性シリコン、メルカプト変性シリコン、環状ジメチルシリコン、ポリエーテル変性シリコン、メチルスチリル変性シリコン、アルキル変性シリコン、アルコキシ変性シリコン、フッ素変性シリコン、高級脂肪酸含有シリコンなどが挙げられる。シリコン類を配合する場合の配合量は、全必須成分に対し20重量%以下、好ましくは10重量%である。
本発明の水性潤滑剤は、鍛造、伸線、伸管、引き抜き、押出し、曲げ加工、プレス、巻線加工、ヘッダー加工等の塑性加工を行う前の金属材料、例えば鋼、ステンレス、アルミニウム、銅、チタンや各種合金などの板状、棒状、線状等の各種金属材料に一回又は複数回塗布、噴霧又は浸漬等を行った後、乾燥することにより金属材料表面に優れた潤滑性被膜を形成できる。ここで、水性潤滑剤の金属材料への塗布、噴霧などは、室温で行うことでよいが、乾燥時間の短縮には例えば60℃程度に加熱して行ってもよく、また乾燥は温風等の吹き付けなど常法により行うことができる。
次に、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
実施例1
リン酸金属塩としてピロリン酸ナトリウム24.6重量部、トリポリリン酸ナトリウム4.9重量部及びピロリン酸亜鉛重量9.8重量部、2−チオベンゾチアゾール化合物として2−(4―モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール32.8重量部、不飽和脂肪酸金属塩としてオレイン酸ナトリウム23.0重量部、界面活性剤としてポリオキシエチレンラウリエーテル4.9重量部と、キャリヤー剤として硫酸カリウム9.8重量部を配合し、これを水と混ぜてミキサーで混合し、固形分の濃度15重量%の水性潤滑剤Aを調製した。なお、上記配合割合は結晶水や含有水を除いた固形分換算である。
次に、32.6mm×8mm厚さの鋼材(SCM415H)を水性潤滑剤Aに常温で浸漬したのち温風で10分間乾燥して潤滑皮膜を形成した。この潤滑性皮膜はべた付きがなく優れた作業性を示した。
次いで、油圧プレスKF131と32.8mmφの量産用金型を用いた冷間鍛造により一端閉鎖筒状製品を3000個製作した。プレス時の成形荷重は最大148トン、最小139トン、平均143トンとバラツキが少なかった。製品の底厚さは、最大2.39mm、最小2.25mm、平均2.32mmと寸法安定性に優れ、100%良品であった。また、作業時間が短く、ハードリダクションにも耐え、金型にカスがほとんど残らず、潤滑性能が抜群であった。使用後の水性潤滑剤は新しい水性潤滑剤Aを継ぎ足すだけで再使用できた。
リン酸金属塩としてピロリン酸ナトリウム24.6重量部、トリポリリン酸ナトリウム4.9重量部及びピロリン酸亜鉛重量9.8重量部、2−チオベンゾチアゾール化合物として2−(4―モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール32.8重量部、不飽和脂肪酸金属塩としてオレイン酸ナトリウム23.0重量部、界面活性剤としてポリオキシエチレンラウリエーテル4.9重量部と、キャリヤー剤として硫酸カリウム9.8重量部を配合し、これを水と混ぜてミキサーで混合し、固形分の濃度15重量%の水性潤滑剤Aを調製した。なお、上記配合割合は結晶水や含有水を除いた固形分換算である。
次に、32.6mm×8mm厚さの鋼材(SCM415H)を水性潤滑剤Aに常温で浸漬したのち温風で10分間乾燥して潤滑皮膜を形成した。この潤滑性皮膜はべた付きがなく優れた作業性を示した。
次いで、油圧プレスKF131と32.8mmφの量産用金型を用いた冷間鍛造により一端閉鎖筒状製品を3000個製作した。プレス時の成形荷重は最大148トン、最小139トン、平均143トンとバラツキが少なかった。製品の底厚さは、最大2.39mm、最小2.25mm、平均2.32mmと寸法安定性に優れ、100%良品であった。また、作業時間が短く、ハードリダクションにも耐え、金型にカスがほとんど残らず、潤滑性能が抜群であった。使用後の水性潤滑剤は新しい水性潤滑剤Aを継ぎ足すだけで再使用できた。
比較例1
不飽和脂肪酸金属塩のオレイン酸ナトリウムに代えて等量のステアリン酸亜鉛(飽和脂肪酸金属塩)を用いた以外は、実施例1と同様にして固形分濃度15%重量の水性潤滑剤Bを調製した。
次に、実施例1と同じ鋼材を水性潤滑剤Bの常温で浸漬したのち温風で10分間乾燥して潤滑性皮膜を形成し、実施例1と同様に冷間鍛造したところ最大155トン、最小143トン、平均148トンとバラツキが多かった。製品の底厚さは、最大2.52mm、最小2.22mm、平均2.37mmと寸法安定性が劣るものであった。なお、作業性やカス残りは実施例より悪く、特にカス残りが多かった。
不飽和脂肪酸金属塩のオレイン酸ナトリウムに代えて等量のステアリン酸亜鉛(飽和脂肪酸金属塩)を用いた以外は、実施例1と同様にして固形分濃度15%重量の水性潤滑剤Bを調製した。
次に、実施例1と同じ鋼材を水性潤滑剤Bの常温で浸漬したのち温風で10分間乾燥して潤滑性皮膜を形成し、実施例1と同様に冷間鍛造したところ最大155トン、最小143トン、平均148トンとバラツキが多かった。製品の底厚さは、最大2.52mm、最小2.22mm、平均2.37mmと寸法安定性が劣るものであった。なお、作業性やカス残りは実施例より悪く、特にカス残りが多かった。
比較例2
水性潤滑剤Aの代わりに市販のリン酸苛性皮膜と補助潤滑剤としてステアリン酸亜鉛(金属セッケン)を用い、定法により実施例1と同じ鋼材に化成皮膜を形成した。次いで実施例1と同様にして冷間鍛造を行なったところ、プレス時の成形荷重は最大152トン、最小140トン、平均146トンとバラツキが多かった。製品の底厚さは、最大2.47mm、最小2.25mm、平均2.36mmと寸法安定性が劣るものであった。使用後の水水性潤滑剤は変質して再使用が困難であった。
水性潤滑剤Aの代わりに市販のリン酸苛性皮膜と補助潤滑剤としてステアリン酸亜鉛(金属セッケン)を用い、定法により実施例1と同じ鋼材に化成皮膜を形成した。次いで実施例1と同様にして冷間鍛造を行なったところ、プレス時の成形荷重は最大152トン、最小140トン、平均146トンとバラツキが多かった。製品の底厚さは、最大2.47mm、最小2.25mm、平均2.36mmと寸法安定性が劣るものであった。使用後の水水性潤滑剤は変質して再使用が困難であった。
Claims (5)
- 必須成分として、リン酸金属塩30〜50重量%(固形分。以下同じ)、不飽和脂肪酸金属塩10〜30重量%、2−チオベンゾチアゾール化合物5〜40重量%及び界面活性剤1〜10重量%を含有し、飽和脂肪酸金属塩を実質的に含有しないことを特徴とする金属の塑性加工用水性潤滑剤。
- 不飽和脂肪酸金属塩が、不飽和脂肪酸のアルカリ塩である請求項1記載の金属の塑性加工用水性潤滑剤。
- 不飽和脂肪酸属金属が、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸から選ばれる少なくとも一種のナトリウム塩である請求項1記載の金属の塑性加工用水性潤滑剤。
- 2−チオベンゾチアゾール化合物が、一般式(1)で表される2−メルカプトベンゾチアゾール、そのアミン塩及び金属塩から選ばれる少なくとも一種である請求項1〜3のいずれかに記載の金属の塑性加工用水性潤滑剤。
Xは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルキルメルカプト基、シクロアルキルメルカプト基、2−チオベンゾチオゾイル基、炭素数1〜4のアルキル基を有する二級アミノ基、シクロアルキル置換二級アミノ基、炭素数1〜4のアルキル基を有する三級アミノ基、シクロアルキル置換三級アミノ基、N,N−ジアルキルチオカルバミル基、N−モルホリン基又はモルホリノチオ基を表す)
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JP2020180179A (ja) * | 2019-04-23 | 2020-11-05 | ユシロ化学工業株式会社 | 温間または熱間鍛造用潤滑剤 |
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-
2008
- 2008-03-04 JP JP2008052896A patent/JP2009209247A/ja active Pending
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