JP5329070B2 - 金属材料加工用の潤滑油 - Google Patents
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(1)潤滑油基油に、添加剤として(a)硫黄系極圧剤と、(b)防錆剤と、(c)高塩基性Caスルホネート化合物とを配合してなり、
前記各添加剤の相対比率(a):(b):(c)が、重量基準で40:1.5〜6.5:5に保たれながら、添加剤の全量が、潤滑油全量基準で8〜12重量%であり、
40℃における動粘度が50〜70mm2 /sであり、
プレス加工後に、潤滑油が付着したままアルゴンガスと炭酸ガスの混合ガスをシールドガスとしてMAG溶接される金属材料の加工に供される、金属材料加工用の潤滑油。
(2)前記潤滑油のうち、(a)硫黄系極圧剤に由来する硫黄分と、(b)防錆剤に由来する防錆分と、(c)高塩基性Caスルホネート化合物に由来するカルシウム分との相対比率が、重量基準で6.8:1.5〜6.5:0.75に保たれている(1)に記載の潤滑油。
(3)金属材料と工具との間に、(1)または(2)に記載の潤滑油を供給してプレス加工する工程と、
該プレス加工工程により得られた金属材料を、前記潤滑油が付着した状態でアーク溶接する溶接加工工程とを有し、
前記アーク溶接が、シールドガスとしてアルゴンガスと炭酸ガスの混合ガスを使用するMAG溶接である、金属材料の加工方法。
本発明に係る潤滑油では、鉱油、合成油、及び油脂の中から選ばれる少なくとも1種を潤滑油基油として用いることができる。鉱油としては、例えば石油精製業の潤滑油製造プロセスで常法を用いて精製される鉱油を使用することができる。具体的には、例えば原油を常圧蒸留および減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理などの処理を1つ以上行って精製したものが挙げられる。合成油としては、例えばポリα−オレフィン、α−オレフィンコポリマー、ポリブテン、アルキルベンゼン、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレングリコールエーテル、シリコーンオイルなどを挙げることができる。また、油脂としては、例えば牛脂、豚脂、大豆油、菜種油、米ぬか油、ヤシ油、パーム油、パーム核油、並びにこれらの水素化物などを挙げることができる。本発明に係る潤滑油においては、上記基油のうちの1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
硫黄系極圧剤としては、硫黄原子を有し、極圧効果を発揮しうるものを使用することができる。硫黄系極圧剤の具体例としては、例えば、硫化油脂、硫化脂肪酸、硫化エステル、硫化オレフィン、ポリサルファイド類、チオカーバメート類、硫化鉱油などを挙げることができる。ここで、硫化油脂は硫黄と油脂(ラード油,鯨油,植物油,魚油等)を反応させて得られるものである。その具体例としては、硫化ラード、硫化なたね油、硫化ひまし油、硫化大豆油などを挙げることができる。硫化脂肪酸の例としては、硫化オレイン酸などを、硫化エステルの例としては、硫化オレイン酸メチルや硫化米ぬか脂肪酸オクチルなどを挙げることができる。
防錆剤の種類は特に限定されるものでなく、その具体例としては、Ca,Ba,Naの各スルホネート及びスルホン酸化合物、酸化ワックスのエステル化合物及びそれらのCa,Ba,Naの各塩のような酸化ワックス化合物、ソルビタンモノオレートのような多価アルコールエステル、ラノリン及びラノリンの金属石鹸などを挙げることができる。なかでも、Ca系防錆剤やBa系防錆剤が好ましい。本発明においては、上記防錆剤は一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、このような防錆剤は、油に溶け易くするため、鉱物油や合成油、エステルなどと混合されているのが一般的である。本発明において上記(b)成分は、1種用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
カルシウム系添加剤の好ましいものとして、カルシウムスルフォネート、カルシウムサリシレート、カルシウムフェネートが挙げられる。特に動粘度、価格の点より、カルシウムスルフォネートが好ましい。より好ましくは、塩基性カルシウムスルフォネートである。更に好ましくは、塩基価が300mgKOH/g以上の高塩基性カルシウムスルフォネートである。本発明において上記(c)成分は、1種用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
まず、以下に示す各種の添加剤を用いて、表1に示す組成を有する潤滑油1〜6を調製した。なお、表1中の数字は重量%である。
(a)成分
a1:ポリサルファイド(硫黄含有量:30重量%)
a2:硫化油脂(硫黄含有量:15重量%)
a3:ZnDTP(硫黄含有量:16重量%)
(b)成分
b1:Baスルホネート化合物
b2:酸化ワックス化合物
b3:Caスルホネート化合物
b4:ラノリン脂肪酸化合物
b5:スルホン酸化合物
(c)成分
c1:高塩基性Caスルホネート化合物(カルシウム含有量:15重量%)
(その他の成分)
d1:塩素化パラフィン(塩素含有量:50重量%)
表1に示す潤滑油1〜6について、以下の装置・方法を用いて潤滑性評価を行った。
(評価試験装置)
プレス機:FUKUI 500トン順送プレス(生産速度:45spm)
被加工材料1:引張強さ440N/mm2の高張力鋼板、板厚:1.0mm
被加工材料2:引張強さ590N/mm2の高張力鋼板、板厚:1.8mm
被加工材料3:引張強さ780N/mm2の高張力鋼板、板厚:1.2mm
被加工材料4:引張強さ980N/mm2の高張力鋼板、板厚:1.0mm
潤滑油の供給方法:樹脂ロールにて被加工材料表面に均一に供給
パンチ材質:SKD11
ダイス材質:SKD11
加工内容:打抜き加工、曲げ加工、穴あけ加工、バーリング加工、タップ加工、を同時工程または単独工程にて行い、合計16工程にて加工物を完成する。
潤滑油1〜6を、被加工材料1〜3の表面に対してそれぞれ樹脂ロールにて均一に供給した後に、自動車用リクライニングシートに用いられる金属製部品をプレス加工にて製作した。そして、加工物の製品精度の測定及び加工後のパンチ及びダイ表面の状態と、各被加工材料の加工面の状態とを目視にて観察して評価を行った。その結果を以下の表2に示す。
次に、表1に示す潤滑油1〜6を鋼板に付着させたままの状態で、MAG溶接を実施して、表面の防錆性の評価試験を実施した。
溶接方法:MAG溶接
シールドガス:アルゴン80%+炭酸ガス20%の混合ガス
ワイヤー径:1.0mm及び1.2mm
電流:145A、電圧:16V、速度:60cm/min
トーチ角度:60度、溶接長:40mm、溶接幅:10mm
被加工材料5:SPCC鋼板 1.2×60×80mm
被加工材料6:引張強さ590N/mm2の高張力鋼板 1.8×60×80mm
溶接後の鋼板を恒温高湿の試験箱(温度50℃、湿度95%)に960時間収容して発錆状態を観察した。錆発生面積10%未満を○(合格)、錆発生面積10%以上を×(不合格)とした。その結果を表3に示す。
次に、防錆性試験で使用したものと同じ被加工材料5,6を用いて、潤滑油1〜6の脱脂性の評価試験を実施した。
(試験方法)
洗浄液:市販の鉄鋼用表面処理剤(鉄鋼表面の洗浄と同時にリン酸鉄皮膜を形成する表面処理剤)
洗浄液濃度:4%(水道水にて希釈)、洗浄液液温:60℃
次に、潤滑油に対する添加剤の添加量を一定としながら、潤滑油の動粘度を種々変化させた場合(潤滑油7〜9)について評価した。このとき、参考として塩素系の潤滑油10も同時に対比評価した。具体的には、表5に示す組成の潤滑油7〜10を供給した場合の焼付き荷重(潤滑性)を四球試験により測定した。また、潤滑油7〜10を被加工材料7に付着させ、所定時間後の潤滑油付着量と、その後アーク溶接したときの煤の発生状態を目視にて観察した。その結果を表5に示す。なお、潤滑油7〜9の各添加剤(a)〜(c)の相対比率は、潤滑油2に合わせた。組成を示す数値は重量%であり、動粘度は40℃における動粘度である。また、各試験における条件は次の通りである。
JIS K2519に規定する四球試験に基づき焼付き荷重を測定した。
測定素材:上球、下球共にSUJ2
溶接方法:MAG溶接
シールドガス:アルゴン80%+炭酸ガス20%の混合ガス
ワイヤー径:1.2mm
電流:145A、電圧:16V、速度:60cm/min
トーチ角度:60度、溶接長:40mm、溶接幅:10mm
被加工材料7:SPHC 酸洗鋼板 1.6×60×80mm
試験回数(n数):各潤滑油毎に3個
環境:気温約27℃ 湿度約56% 油温約25℃
評価方法:有機溶剤にて被加工材料7を脱脂し、潤滑油を入れたビーカーに、長さ方向で70mmの位置まで浸漬する。ビーカーから取り出した後、吊るした状態で1時間放置する。
そこで、動粘度を一定としながら、添加剤の配合量を種々変化させた場合について評価した。具体的には、表6に示す組成の潤滑油11〜16使用して、上記動粘度選定試験と同様の条件により所定時間後の潤滑油付着量と、その後アーク溶接したときの煤の発生状態を目視にて観察した。その結果も表6に示す。なお当該添加剤量選定試験においても、上記動粘度選定試験と同様に潤滑油12〜16の各添加剤(a)〜(c)の相対比率は、潤滑油2に合わせた。なお、組成を示す数値は重量%であり、動粘度は40℃における動粘度である。また、添加剤量選定試験を行ったときの環境は次の通りであった。
環境:気温約31℃ 湿度約58% 油温約27℃
Claims (3)
- 潤滑油基油に、添加剤として(a)硫黄系極圧剤と、(b)防錆剤と、(c)高塩基性Caスルホネート化合物とを配合してなり、
前記各添加剤の相対比率(a):(b):(c)が、重量基準で40:1.5〜6.5:5に保たれながら、添加剤の全量が、潤滑油全量基準で8〜12重量%であり、
40℃における動粘度が50〜70mm2 /sであり、
プレス加工後に、潤滑油が付着したままアルゴンガスと炭酸ガスの混合ガスをシールドガスとしてMAG溶接される金属材料の加工に供される、金属材料加工用の潤滑油。 - 前記潤滑油のうち、(a)硫黄系極圧剤に由来する硫黄分と、(b)防錆剤に由来する防錆分と、(c)高塩基性Caスルホネート化合物に由来するカルシウム分との相対比率が、重量基準で6.8:1.5〜6.5:0.75に保たれている請求項1に記載の潤滑油。
- 金属材料と工具との間に、請求項1または請求項2に記載の潤滑油を供給してプレス加工する工程と、
該プレス加工工程により得られた金属材料を、前記潤滑油が付着した状態でアーク溶接する溶接加工工程とを有し、
前記アーク溶接が、シールドガスとしてアルゴンガスと炭酸ガスの混合ガスを使用するMAG溶接である、金属材料の加工方法。
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