JP2613117B2 - 防錆兼金属加工油組成物 - Google Patents

防錆兼金属加工油組成物

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は新規な防錆兼金属加工油組成物に関するもの
である。さらに詳しくいえば、本発明は、鋼板のプレス
時の表面損傷や割れを低減しうるとともに、鋼板の重な
り部分のオイルステインの発生を抑制しうる潤滑性(プ
レス性)を備えた防錆油組成物に関するものである。
[従来の技術] 従来、鋼板(表面処理鋼板を含む)をプレス加工する
際、鋼板に一時防錆性と軽度の潤滑性を付与するため
に、防錆油の他に、プレス加工油を塗布して加工が行わ
れている。しかしながら、このようなプレス加工油の塗
布は生産性の低下や作業環境の悪化などをもたらすとい
う問題を有している。
そこで、この問題を解決するために、防錆油に潤滑性
(プレス性)が付与された防錆油とプレス加工油として
の機能を兼備する金属加工油を鋼板に塗布し、プレス加
工を施すことが試みられている。
ところが、防錆油に潤滑性(プレス性)を付与するに
は、通常該防錆油に極圧剤を配合することが行われる
が、このような極圧剤を配合した防錆油においては、鋼
板と鋼板との重なり部分にオイルステインが発生した
り、防錆油中の防錆剤と極圧剤が拮抗作用を生じ、極圧
剤の効果が十分に現れず、満足しうるプレス性能が発揮
されないなどの欠点がある。
[発明が解決しようとする課題] 本発明は、このような事情のもとで、防錆性とともに
良好な潤滑性(プレス性)を有し、鋼板のプレス時の表
面損傷(カジリ、フレーキング)や割れを低減すること
ができ、かつ鋼板の重なり部分のオイルステインの発生
を抑制しうる、プレス加工油の塗布工程を必要としない
防錆兼金属加工油組成物を提供することを目的としてな
されたものである。
[課題を解決するための手段] 本発明者は前記の好ましい性質を有する防錆兼金属加
工油組成物を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、基油
に、塩基価向上剤と極圧性向上剤とを組み合わせて配合
することにより、その目的を達成しうることを見い出
し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、(A)基油に対し、(B)高塩
基価のアルカリ土類金属スルホネート、フィネート、及
びサリチレートの中から選ばれた少なくとも1種の塩基
価向上剤と、(C)ベンゾチアゾール化合物及びチアジ
アゾール化合物の中から選ばれた少なくとも1種の極圧
性向上剤とを配合させたことを特徴とする塩基価2mgKOH
/g以上の防錆兼金属加工油組成物を提供するものであ
る。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明組成物において、(A)成分として用いられる
基油としては、従来防錆油に慣用されている基油の中か
ら任意のものを選択して用いることができるが、温度40
℃における粘度が1〜500cStの範囲にあるものが好まし
く、例えば灯油、軽油留分、60スピンドル油、70N、100
N、150N、300N、500N、BSの各鉱油や、アルキルベンゼ
ン、ポリブテン、α−オレフィンオリゴマー、フタル酸
エステルなどのジエステル、ポリオールエステルなどの
合成油を用いることができる。これらの中で、特に鉱
油、ポリブテン及びアルキルベンゼンを1種又は2種以
上を組み合わせて、40℃における粘度が1.5〜100cStに
して用いるのが好適である。
本発明組成物においては、(B)成分として、高塩基
価のアルカリ土類金属スルホネート、フィネート及びサ
リチレートの中から選ばれた少なくとも1種の塩基価向
上剤が用いられる。この塩基価向上剤としては、塩基価
(JIS K−2501、5.2.2)で通常20mgKOH/g以上、好ま
しくは30mgKOH/g以上の高塩基価のものが使用される。
このような塩基価向上剤の具体例としては、塩基価30〜
500mgKOH/gのCaスルホネート、Baスルホネート、Mgスル
ホネートなどの高塩基性アルカリ土類金属スルホネー
ト、塩基価30〜500mgKOH/gのCaサリチレート、Znサリチ
レート、Baサリチレートなどの高塩基性アルカリ土類金
属サリチレート、塩基価30〜500mgKOH/gのCaフィネー
ト、Baフィネートなどの高塩基性アルカリ土類金属フィ
ネートが挙げられる。
これらの塩基価向上剤は1種用いてもよいし、2種以
上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中で(イ)
塩基価が40〜400mgKOH/gのBaスルホネート、Caスルホネ
ート、(ロ)塩基価が40〜400mgKOH/gのCaサリチレー
ト、Znサリチレート、(ハ)塩基価が40〜400mgKOH/gの
Caフィネート好ましく、特に前記(イ)のスルホネート
と(ロ)のサリチレート若しくは(ハ)のフィネート、
あるいは(ロ)のサリチレートと(ハ)のフィネートと
の混合物とを、重量比1:1ないし5:1の割合で混合したも
のが好適である。
本発明組成物においては、前記(B)成分の塩基価向
上剤は、該組成物の塩基価が2mgKOH/g以上、好ましくは
2〜50mgKOH/g、より好ましくは2〜10mgKOH/gの範囲に
なるような割合で配合することが必要である。この塩基
価が2mgKOH/g未満ではオイルステイン発生の抑制効果が
十分に発揮されない。また、塩基価があまり高すぎる
と、例えば50mgKOH/gを超えると極圧性向上剤の添加効
果が十分に発揮されない傾向が生じ、好ましくない。該
塩基価向上剤の具体的な配合量については、通常組成物
全量に基づき1〜20重量%の範囲で選ばれる。
本発明組成物においては、(C)成分として、(ア)
ベンゾチアゾール化合物及び(イ)チアジアゾール化合
物の中から選ばれた少なくとも1種の極圧性向上剤が用
いられる。
前記(ア)ベンゾチアゾール化合物としては、例えば
一般式 [式中のR3は水素原子、炭素数1〜30の炭化水素基又は −S−R4、 −S−S−R5(R4ないしR7は水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素
基)である] で表される化合物が好ましく用いられる。
このようなベンゾチアゾール化合物の具体例として
は、ベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾー
ル、2−(ヘキシルジチオ)ベンゾチアゾール、2−
(オクチルジチオ)ベンゾチアゾール、2−(デシルジ
チオ)ベンゾチアゾール、2−(ドデシルジチオ)ベン
ゾチアゾール、2−(N,N−ジエチルジチオカルバミ
ル)ベンゾチアゾールなどを好ましく挙げることができ
る。
前記(イ)チアジアゾール化合物としては、例えば一
般式 [式中のR8及びR9は、それぞれ水素原子、炭素数1〜30
の炭化水素基又は −S−R10、 −S−S−R11(R10ないしR13は水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素
基)である] で表される1,3,4−チアジアゾール化合物や1,2,4−チア
ジアゾール化合物が好ましく用いられる。
このようなチアジアゾール化合物の具体例としては、
2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビ
ス(ヘキシルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−
ビス(オクチルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、2,5
−ビス(N,N−ジエチルジチオカルバミル)−1,3,4−チ
アジアゾール、3,5−ジメルカプト−1,2,4−チアジアゾ
ール、3,5−ビス(ヘキシルジチオ)−1,2,4−チアジア
ゾール、3,5−ビス(オクチルジチオ)−1,2,4−チアジ
アゾール、3,5−ビス(N,N−ジエチルジチオカルバミ
ル)−1,2,4−チアジアゾールなどを好ましく挙げるこ
とができる。
前記(C)成分の極圧性向上剤は1種用いてもよい
し、2種以上を組み合わせて用いてもよく、その配合量
は、通常組成物全量に基づき0.5〜20重量%の範囲で選
ばれる。この配合量が0.5重量%未満では極圧性が不十
分であるし、20重量%を超えるとオイルステインが発生
するおそれがあり、好ましくない。
本発明組成物においては、所望に応じ、本発明の目的
を損なわない範囲で各種添加剤、例えば酸化ワックス、
パラフィンワックス、マイクロワックスなどのワックス
系防錆剤、高級脂肪酸のカルシウム塩、バリウム塩、ナ
トリウム塩などの金属セッケン、オレイン酸、ステアリ
ン酸、ラウリン酸、アルケニルコハク酸などの脂肪酸、
ソルビタンモノオレート、ペンタエリスリットモノオレ
ートなどの多価アルコールのカルボン酸部分エステル、
Baスルホネート、Caスルホネート、Znスルホネートなど
の塩基価20mgKOH/g未満、好ましくは10mgKOH/g以下の中
性又は弱塩基性スルホネート、あるいはアミド類、イミ
ド類などを添加することができる。
[実施例] 次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明する
が、本発明はこれらの例によってなんら限定されるもの
ではない。
なお、スタック試験及びバウデン試験は次に示す方法
に従って行った。
(1)スタック試験 SPCC−SD材(60×80×0.8mm)3枚を試料油に浸漬塗
油後、室温(25℃)で24時間油切りし、その後3枚を重
ね合わせて、ろ紙で梱包したのち、これを温度60℃、温
度95%RHの恒温恒湿槽に1か月間保持したのち、オイル
ステインの有無、濃淡を以下の判定基準に従って評価し
た。
○:オイルステインなし △:うすくステインが認められる ×:濃くステインが発生している (2)バウデン試験 バウデン試験機を用い、試験片温度35℃の電気亜鉛メ
ッキ鋼板上を、荷重250g、送り速度1cm/sec、送り幅1cm
で鋼球を往復させ、カジリが発生するまでの回数で評価
した。往復回数の最高は120回とした。
参考例1〜15、比較例1〜4 第1表に示す組成の金属加工油組成物を調製し、スタ
ック試験及びバウデン試験を行った。その結果を第1表
に示す。
実施例1〜4及び参考例16〜17 第2表に示す組成の金属加工油組成物を調製し、スタ
ック試験及びバウデン試験を行った。その結果を第2表
に示す。
[発明の効果] 本発明によると、基油に、塩基性向上剤及び極圧性向
上剤を組み合わせて配合することにより、防錆油とプレ
ス加工油としての機能を兼ね備えた防錆兼金属加工油組
成物が容易に得られる。
本発明の防錆兼金属加工油組成物は、防錆性とともに
良好な潤滑性(プレス性)を有し、鋼のプレス時の表面
損傷(カジリ、フレーキング)や割れを低減することが
でき、かつ鋼板の重なり部分のオイルステインの発生を
抑制することができる。またプレス加工油の塗布工程を
必要としないので、鋼板のプレス加工が簡単で経済的に
有利である。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C10M 137:10) C10N 10:04 30:00 30:12 40:24

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(A)基油に対し、(B)高塩基価のアル
    カリ土類金属スルホネート、フィネート、及びサリチレ
    ートの中から選ばれた少なくとも1種の塩基価向上剤
    と、(C)ベンゾチアゾール化合物及びチアジアゾール
    化合物の中から選ばれた少なくとも1種の極圧性向上剤
    とを配合させたことを特徴とする塩基価2mgKOH/g以上の
    防錆兼金属加工油組成物。
  2. 【請求項2】(B)成分が、塩基価30〜500mgKOH/gのCa
    スルホネート、Baスルホネート、Mgスルホネート、Caサ
    リチレート、Znサリチレート、Baサリチレート、Caフィ
    ネート及びBaフィネートの中から選ばれた少なくとも1
    種である請求項1記載の防錆兼金属加工油組成物。
  3. 【請求項3】(C)成分が、ベンゾチアゾール、2−メ
    ルカプトベンゾチアゾール、2−(ヘキシルジチオ)ベ
    ンゾチアゾール、2−(オクチルジチオ)ベンゾチアゾ
    ール、2−(デシルジチオ)ベンゾチアゾール、2−
    (ドジテルジチオ)ベンゾチアゾール及び2−(N,N−
    ジエチルジチオカルバミル)ベンゾチアゾールよりなる
    群のベンゾチアゾール化合物と、2,5−ジメルカプト−
    1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(ヘキシルジチオ)
    −1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(オクチルジチ
    オ)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(N,N−ジエ
    チルジチオカルバミル)−1,3,4−チアジアゾール、3,5
    −ジメルカプト−1,2,4−チアジアゾール、3,5−ビス
    (ヘキシルジチオ)−1,2,4−チアジアゾール、3,5−ビ
    ス(オクチルジチオ)−1,2,4−チアジアゾール及び3,5
    −ビス(N,N−ジエチルジチオカルバミル)−1,2,4−チ
    アジアゾールよりなる群のチアジアゾール化合物との中
    から選ばれた少なくとも1種である請求項1又は2記載
    の防錆兼金属加工油組成物。
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