JP3612407B2 - 緩衝器用油圧作動油組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、緩衝器用油圧作動油組成物に関する。さらに詳しくは、良好な耐摩耗性と低摩擦係数を有し、特に銅及び鉄等の金属材料の腐食・溶解防止性に優れた緩衝器用油圧作動油組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車における車体のサスペンション(懸架装置)に振動を吸収するためには、一般に油圧型のショックアブソーバー(緩衝器)が使用されている。緩衝器の構造は、オイルの流動抵抗を利用した筒形構造が基本となっており、通常は、油圧のピストンに小さな孔を開けたものが使用される。この筒形構造を有する緩衝器では、ピストンの上下に応じて油が孔を通過するが、その時の抵抗はピストンのスピードに比例する。そのため、シリンダーとピストンロッドとの摺動部分には、互いの摩耗を防ぐために案内を兼ねたガイドブッシュが入れられており、更にオイル漏れを防ぐため全体がシールされている。また、緩衝器としては、上記した筒形構造のもの以外に、二重管型やガス入り型など各種のものが知られている。
【0003】
このような構造をした緩衝器の場合、前記した如く、ピストンロッドとガイドブッシュの間、ピストンロッドとシールの間、ピストンとシリンダーの間などに多数の複合した摩擦が発生する。その上、自動車の場合、厳しい走行条件下において自動車への振動を緩和して乗り心地や操縦安定性を確保することが必要であり、そのため、緩衝器に使用される油圧作動油に対し、耐摩耗性が良好で耐久性があるとともに、摩擦特性が良好であることが求められている。
【0004】
自動車では、この他、同様の緩衝器がエンジンの支持装置、バンパーの衝撃吸収装置、ドアチェッカー等にも使用されている。また、航空機でも、離着陸時の衝撃吸収のための油圧型の緩衝器が配置されている。これらの緩衝器に使用される油圧作動油についても、前記と同様の性能が求められている。
【0005】
従来、良好な耐摩耗性、耐久性及び摩擦特性を有する緩衝器用油圧作動油としては、潤滑油基油中にジチオりん酸亜鉛(Zn−DTP)を長鎖脂肪酸などの油性剤や清浄分散剤と共に添加した緩衝器用油圧作動油組成物(特開昭55−165996号公報)、潤滑油基油にホウ素含有清浄分散剤とりん酸エステルを含有させた緩衝器用流体組成物(特公平2−44879号公報)、潤滑油基油にりん酸エステル等とアルカノールアミンを含有させた緩衝器用油圧作動油組成物(特開平5−255683号公報)、潤滑油基油にリン酸エステル等と脂肪族ポリアミンを配合した緩衝器用油圧作動油組成物(特開平7−224293号公報)、及び潤滑油基油にリン酸エステル等と脂肪族ポリアミン、脂肪族モノアミンを配合した緩衝器用油圧作動油組成物(特開平7−258673号公報)などが提案されている。また、緩衝器用油圧作動油とは異なるが、潤滑油基油に亜リン酸エステル、脂肪族アミン、チアジアゾール及びベンゾトリアゾールを配合したアクティブサスペンション用流体組成物(特開平8−165483)も提案されている。
【0006】
ところが、緩衝器特に自動車用緩衝器の場合、その内部に装着されたガイドブッシュには、一般的に銅合金にテフロンコーティングを施したものが使用されており、また裏金にも銅メッキが施されるものが多いため、緩衝器用油圧作動油としては、銅に対する安定性の高いものが腐食、溶解等の面から望まれている。また一方、それと共に緩衝器の外筒、内筒、シリンダー、ピストン、ピストンロッド等の主要構成部品の材料である鉄に対しても、腐食、溶解等の問題を生じないことが求められている。
【0007】
しかしながら、従来から提案された緩衝器用油圧作動油、例えば、Zn−DTPと長鎖脂肪酸などの油性剤を添加した油圧作動油では、使用する長鎖脂肪酸などの油性剤は、緩衝器の軸受け材料を腐食させ、摩耗を促進するという欠点を有している。さらに、リン酸エステル等の極性の高い添加剤を用いた緩衝器用油圧作動油では、銅と反応してガイドブッシュが損なわれたり、水分の存在下で鉄と反応して油圧作動油自体の性能が損なわれるといった問題が生じたりして、銅や鉄に対する腐食や溶解等に対する性能が必ずしも十分でないという欠点を有している。
【0008】
このため、緩衝器用油圧作動油に対しては、良好な耐摩耗性と摩擦特性(低摩擦係数)を有し、さらに銅及び鉄等の金属材料の腐食・溶解防止性に優れた緩衝器用油圧作動油の開発が強く望まれている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような開発状況に鑑み、本発明の目的は、良好な耐摩耗性と摩擦特性(低摩擦係数)を有し、さらに銅及び鉄等の金属材料の腐食・溶解防止性に優れる緩衝器用油圧作動油組成物を提供することにある。
【0010】
本発明者らは、前記した従来技術の問題点を解消するために鋭意研究を重ねた結果、潤滑油基油にベンゾトリアゾール又はその誘導体とチアジアゾール誘導体とをそれぞれ特定量配合し、かつベンゾトリアゾール又はその誘導体とチアジアゾール誘導体の配合比を特定範囲内にすることにより、緩衝器用油圧作動油として要求される良好な耐摩耗性と摩擦特性(低摩擦係数)を有し、さらに銅及び鉄等の金属材料の腐食・溶解防止性に優れる緩衝器用油圧作動油組成物が得られることを見いだした。
本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、潤滑油基油に、組成物全重量基準で、
(A)ベンゾトリアゾール又はその誘導体0.01〜2.0重量%及び
(B)チアジアゾール誘導体0.001〜2.0重量%
をそれぞれ配合し、かつ該(A)成分と(B)成分との配合比率[(A)/(B)]が2.5〜10(重量比)の範囲であることを特徴とする緩衝器用油圧作動油組成物が提供される。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明は、良好な耐摩耗性と摩擦特性(低摩擦係数)を有し、さらに銅及び鉄等の金属材料の腐食・溶解防止性に優れる緩衝器用油圧作動油組成物に係わるものであるが、その好ましい態様としては、次のものが包含される。
【0013】
▲1▼潤滑油基油に組成物全重量基準で、(A)ベンゾトリアゾール又はその誘導体0.01〜2.0重量%及び(B)チアジアゾール誘導体0.001〜2.0重量%をそれぞれ配合し、かつ該(A)成分と(B)成分との配合比率[(A)/(B)]が2.5〜5(重量比)の範囲であることを特徴とする緩衝器用油圧作動油組成物。
▲2▼潤滑油基油に組成物全重量基準で、(A)ベンゾトリアゾール又はその誘導体0.01〜2.0重量%、(B)チアジアゾール誘導体0.001〜2.0重量%及び(C)リン酸エステル、亜リン酸エステル及びりん酸エステルアミン塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を0.1〜5.0重量%をそれぞれ配合し、かつ該(A)成分と(B)成分との配合比率[(A)/(B)]が2.5〜10(重量比)の範囲であることを特徴とする緩衝器用油圧作動油組成物。
▲3▼(A)成分と(B)成分の配合比率[(A)/(B)]が2.5〜5(重量比)の範囲であることを特徴とする前記▲2▼記載の緩衝器用油圧作動油組成物。
▲4▼(A)成分の配合量が0.05〜0.3重量%である前記▲1▼〜▲3▼記載の緩衝器用油圧作動油組成物。
▲5▼(B)成分の配合量が0.01〜0.05重量%である前記▲1▼〜▲3▼記載の緩衝器用油圧作動油組成物。
▲6▼(C)成分の配合量が0.2〜3.0重量%である前記▲2▼、▲3▼記載の緩衝器用油圧作動油組成物。
▲7▼潤滑油基油に前記(A)成分、(B)成分及び(C)成分をそれぞれ特定量配合し、かつ(A)成分と(B)成分の配合比率[(A)/(B)]が2.5〜10(重量比)の範囲であり、更に、摩擦調整剤、耐摩耗剤、酸化防止剤、無灰清浄分散剤、金属清浄剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、防錆剤、消泡剤その他緩衝器用油圧作動油組成物に必要な添加剤成分の群から選択される少なくとも一種の添加剤成分を配合させてなる緩衝器用油圧作動油組成物。
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
(1)潤滑油基油
本発明の緩衝器用油圧作動油組成物の基油としては、特に限定されるものではなく、従来公知の各種鉱油や合成油等が使用できる。鉱油としては、原油の常圧又は減圧蒸留により誘導される潤滑油原料をフェノール、フルフラール、N−メチルピロリドンの如き芳香族抽出溶剤で処理して得られる溶剤精製ラフィネート、潤滑油原料を水素化処理用触媒の存在下において水素化処理条件下で水素と接触させて得られる水素化処理油、ワックスを異性化用触媒の存在下において異性下条件下で水素と接触させて得られる異性化油、あるいは溶剤精製工程と水素化処理工程及び異性化工程等を組み合わせて得られる潤滑油留分などを挙げることができる。いずれの製造法によっても、脱蝋工程、水素化仕上げ工程、白土処理工程等の工程は常法により、任意に採用することができる。鉱油の具体例としては、例えば、軽質ニュートラル油、中質ニュートラル油、重質ニュートラル油、ブライトストックなどが挙げられる。合成油としては、例えば、ポリ−α−オレフィン(α−オレフィンオリゴマー)、ポリブテン、アルキルベンゼン、ポリオールエステル、二塩基酸エステル、シリコーン油などが挙げられる。これらの基油は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を混合して使用することができ、鉱油と合成油を混合使用してもよい。
基油は、100℃における動粘度が通常1.0〜20mm2/sの範囲内のものが使用され、特に1.5〜15mm2/sの範囲のものが好ましい。
【0015】
(2)ベンゾトリアゾール又はベンゾトリアゾール誘導体(A)
本発明の緩衝器用油圧作動油組成物において、(A)成分として用いられるベンゾトリアゾール又はベンゾトリアゾール誘導体は、次の一般式[I]及び[II]で表される。一般式[I]はベンゾトリアゾール又はアルキル化ベンゾトリアゾール類であり、一般式[II]はベンゾトリアゾール誘導体である。ベンゾトリアゾール誘導体の具体例として、例えばチバガイギー社製のREOMET39、REOMET42、REOMET SBT75、ラインへミー社製のRC4901等が挙げられる。これらの好ましい具体例としては、ベンゾトリアゾール、アルキル化ベンゾトリアゾール及びチバガイギー社製のREOMET39を挙げることができる。
【0016】
(A)成分の配合量は、組成物全重量基準で、0.01〜2.0重量%、好ましくは0.05〜0.3重量%である。配合量が多すぎると、摩擦係数や摩擦力の上昇、摩耗の増加という問題が起こる。また少なすぎるとリン酸エステルや亜リン酸エステル等のリン系化合物と銅との反応を防止できず、銅腐食や銅の溶解が起こる。
【0017】
一般式[I]
【化1】
(但し、R1は、水素原子又は炭素数1〜18の炭化水素基であり、炭化水素基として、好ましくは1〜4の飽和又は不飽和のアルキル基である。)
【0018】
一般式[II]
【化2】
(但し、R1及びR2は、水素原子又は炭素数1〜18の炭化水素基であり、炭化水素基として、好ましくは1〜18の飽和又は不飽和のアルキル基である。)
【0019】
(3)チアジアゾール誘導体(B)
本発明の緩衝器用油圧作動油組成物において、(B)成分として用いられるチアジアゾール誘導体は、次の一般式[III]で表される。チアジアゾール誘導体の具体例として、例えば1,3,4−チアジアゾールポリスルフィド、2,5−ビス(n−ドデシルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(オクチルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(N,N−ジエチルジチオカルバミル)−1,3,4−チアジアゾール等が挙げられる。これらの好ましい具体例としては、1,3,4−チアジアゾールポリスルフィド類を挙げることができる。
【0020】
(B)成分の配合量は、組成物全重量基準で、0.001〜2.0重量%、好ましくは0.01〜0.05重量%である。配合量が多すぎると、摩擦係数や摩擦力の上昇、摩耗の増加さらには腐食という問題が起こる。また少なすぎるとリン酸エステルや亜リン酸エステル等のリン系化合物と銅との反応を防止できず、銅腐食や銅の溶解が起こる。
【0021】
一般式[III]
【化3】
(但し、X及びY基は、(S)n−R3又は水素原子であり、それぞれ同一又は異なるものでもよい。nは0〜7の整数である。R3は、炭素数1〜18の炭化水素基であり、炭化水素基として、好ましくは炭素数1〜18の飽和又は不飽和のアルキル基である。)
また、本発明の必須条件である(A)成分のベンゾトリアゾール又はその誘導体(BT)と(B)成分のチアジアゾール誘導体(TD)の配合比率[(A)/(B)、BT/TD]が2.5〜10(重量比)の範囲内であることも重要である。配合比率の好ましい範囲は2.5〜5である。配合比率が多すぎたり、少なすぎたりすると、摩擦係数や摩擦力の上昇、摩耗の増加、更には腐食という問題が起こる。
【0022】
(4)リン酸エステル、亜りん酸エステル及びりん酸エステルアミン塩(C)
本発明は、さらに以下の(C)成分を配合することにより、緩衝器用油圧作動油組成物として良好なものとなる。(C)成分はりん酸エステル、亜りん酸エステル及びりん酸エステルアミン塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である。
りん酸エステル及び亜りん酸エステルとしては、例えば、下記の一般式で示されるものが挙げられる。
【0023】
O=P(OR4)(OR5)(OR6)
O=P(OH)(OR4)(OR5)
O=P(OH)2(OR4)
P(OR4)(OR5)(OR6)
P(OH)(OR4)(OR5)
P(OH)2(OR4)
(但し、R4、R5及びR6は、炭素数4以上、好ましくは4〜20の飽和又は不飽和のアルキル基、アリール基又はアルキル置換アリール基であり、それぞれ同一又は異なるものであってもよい。)
りん酸エステル及び亜りん酸エステルの具体例としては、ジブチルアシッドホスフェート、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、ジオレイルアシッドホスフェート、ジブチルハイドロゲンホスファイト、ジラルリルハイドロゲンホスファイト、ジステアリルハイドロゲンホスファイト、ジオレイルハイドロゲンホスファイト、ジフェニルハイドロゲンホスファイトなどを挙げることができる。
【0024】
本発明で使用するりん酸エステルアミン塩は、りん酸エステル又は亜りん酸エステルとアミン化合物との反応生成物である。アミン化合物としては、例えば、炭素数10〜20の飽和又は不飽和のアルキル基からなる1級又は2級アミンを挙げることができる。具体例としては、ジ2エチルヘキシルアシッドホスフェイトのオレイルアミン塩〔(C8H17O)2P(OH)Oと(C18H35)NH2の反応生成物〕、n−ブチルアシッドホスフェートのオレイルアミン塩、オレイルアシッドホスフェートの2エチルヘキシルアミン塩等を挙げることができる。
【0025】
これらのりん酸エステル系化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。りん酸エステル系化合物の配合割合は、組成物全量基準で、通常0.1〜5.0重量%、好ましくは0.2〜3.0重量%、より好ましくは0.3〜2.0重量%である。
【0026】
この配合割合の範囲内において、本発明で使用する(A)成分のベンゾトリアゾール又はベンゾトリアゾール誘導体(BT)0.01〜2.0重量%、(B)成分のチアジアゾール誘導体(TD)0.001〜2.0重量%とを組み合わせて使用した場合に、かつ(A)成分(BT)と(B)成分(TD)の配合比率[(A)/(B)、BT/TD]が2.5〜10(重量比)の特定範囲内であると、良好な耐摩耗性と摩擦特性を有し、優れた銅及び鉄等の金属材料の腐食・溶解防止性を発揮することができる。
【0027】
(5)その他の添加剤
本発明の緩衝器用油圧作動油組成物には、本発明の目的を損なわない限り、必要に応じてその他の添加剤、例えば、摩擦調整剤、耐摩耗剤、酸化防止剤、無灰清浄分散剤、金属清浄剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、防錆剤、消泡剤などを適宜添加することができる。
【0028】
摩擦調整剤としては、脂肪酸(オレイン酸、ステアリン酸など)、高級アルコール(オレイルアルコールなど)、脂肪酸エステル、油脂類、多価アルコールエステル、ソルビタンエステル、脂肪族アミン等を挙げることができ、これらは、通常、0.05〜3.0重量%の割合で使用される。
【0029】
耐摩耗剤としては、ジチオりん酸金属塩(Zn、Pb、Sb、Moなど)、ジチオカルバミン酸金属塩(Zn、Moなど)ナフテン酸金属塩(Pbなど)、脂肪酸金属塩(Pbなど)、硫化油脂、硫黄化合物、ホウ素化合物、等を挙げることができ、これらは、通常、0.05〜3.0重量%の割合で使用される。
【0030】
酸化防止剤としては、アルキル化ジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキル化フェニル−α−ナフチルアミン等のアミン系酸化防止剤、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、4,4’−メチレンビス−(2,6−ジターシャリブチルフェノール)等のフェノール系酸化防止剤、ホスファイト等のりん系酸化防止剤、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネイト等の硫黄系酸化防止剤等を挙げることができ、これらは、通常、0.05〜2.0重量%の割合で使用される。
【0031】
無灰清浄分散剤としては、こはく酸イミド系、こはく酸アミド系、ベンジルアミン系、こはく酸エステル系等があり、ホウ素含有無灰清浄分散剤も使用できる。これらは、通常、0.5〜7.0重量%の割合で使用される。
【0032】
金属清浄剤としては、Ca−スルホネート、Mg−スルホネート、Ba−スルホネート、Ca−フェネート、Mg−フェネート、Ba−フェネート、Ca−サリシレート、Mg−サリシレート、Ba−サリシレート等があり、これらは、通常、0.1〜5.0重量%の割合で使用される。
【0033】
粘度指数向上剤としては、ポリメタクリレート系、ポリイソブチレン系、エチレン−プロピレン共重合体系、ポリアルキルスチレン系、スチレン−ブタジエン水添共重合体系、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体系等が挙げられ、通常、0.5〜35重量%の割合で使用される。
【0034】
防錆剤としては、カルボン酸、カルボン酸塩、スルホン酸塩、アミン、アルケニルこはく酸又はその部分エステル等が挙げられ、適宜添加することができる。
【0035】
消泡剤としては、ジメチルポリシロキサン、ポリアクリレート等が挙げられ、適宜添加することができる。
【0036】
【実施例】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明についてさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例における銅溶解性、鉄溶解性、摩擦係数、摩耗防止性の各種物性の測定法は、下記の通りである。
【0037】
(1)銅溶解性
500mlのビーカーに試料油200mlを入れ、銅板(25×50mm)2枚を浸漬し、100℃の恒温槽内に静置した。200時間後、試料油中への銅溶解量をJIS K0116のICP法により測定した。銅溶解性の評価基準として、試料油中の銅分20ppm以下が望ましいとされる。
【0038】
(2)鉄溶解性
500mlのビーカーに試料油200mlを入れ、JIS K2514の潤滑油酸化安定度試験方法の触媒として用いる鋼板(26×121.1mm)6枚を浸漬し、室温で50日間静置した後、試料油中への鉄溶解量をJIS K0116のICP法により測定した。鉄溶解性の評価基準として、試料油中の鉄分20ppm以下が望ましいとされる。
【0039】
(3)摩擦係数
バウデン試験機により、ニトリルゴム(A217)板とクロムメッキピンを用いて、試料油の摩擦係数を測定した。その試験条件は、室温、荷重3kgf、すべり速度3.3mm/s、すべり距離20mmであり、評価基準として試料油の摩擦係数0.10以下が望ましいとされる。
【0040】
(4)摩耗防止性
ASTM D4172に準拠したシェル式四球試験方法により、試料油の摩耗防止性を評価した。その試験条件は、温度120℃、試験時間30分、回転数1800rpm、荷重60kgfである。試料油の摩耗防止性の評価基準として、摩耗痕径0.70mm以下が望ましいとされる。
【0041】
(実施例)
潤滑油基油として、100℃における動粘度が2.6mm2/sの高度精製鉱油を用い、表1、表2に示す各成分を添加して各試験油を調製した。
使用した各成分は以下のとおりである。
【0042】
(1)(A)成分、BT:ベンゾトリアゾール誘導体
(2)(B)成分、TD−1:2,5−ビス(オクチルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール
TD−2:2,5−ビス(ノニルジチオ)−1,3,4−チアジアゾールTD−3:2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールの誘導体、前記一般式[III]において、基Xは(S)1〜6−R3であり、R3は炭素数1〜24のアルキル又はアラルキル基である。基Yは水素原子である。
(3)リン酸エステル:オレイルアシッドホスフェート
(4)亜リン酸エステル:ジオレイルハイドロジェンホスファイト
(5)その他添加剤:アルケニルこはく酸イミド 0.25重量%、フェノール系酸化防止剤 0.3重量%、ポリメタクリケート系粘度指数向上剤 1.5重量%、ソルビタンエステル 0.5重量%、シリコーン系消泡剤 5ppm
表1、表2中の各添加剤成分の配合割合は、組成物全量基準の重量%であり、残余は基油である。ここで得られた緩衝器用油圧作動油組成物の銅溶解性、鉄溶解性、摩擦係数及び摩耗防止性を測定し、評価した。結果を表1、表2に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
(実施例1〜8)
実施例1では、緩衝器用油圧作動油組成物として、ベンゾトリアゾール誘導体(BT)の配合量が0.15重量%、チアジアゾール誘導体(TD)の配合量が0.06重量%、BT/TDの配合比率が2.5、リン酸エステルの配合量が0.1重量%、亜リン酸エステルの配合量が1.1重量%及びその他の添加剤の配合量が2.55重量%である。同様に実施例2〜8も表1に示す割合で、緩衝器用油圧作動油組成物を調製した。実施例1〜8は、いずれも(A)成分、(B)成分を特定量配合し、(A)成分と(B)成分の比が2.5〜10の特定範囲内である。その結果、銅溶解性、鉄溶解性は、実施例1〜8とも良好で、試験油中に銅分、鉄分とも検出されないか、又は検出されても5ppmと微量で、20ppm以下だった。摩擦係数も実施例1〜8は良好で、その値はいずれも0.09〜0.10であり、0.10以下であった。摩耗防止性も摩耗痕がいずれも0.58〜0.60mmで、0.70mm以下であった。いずれの実施例においても、緩衝器用油圧作動油として高品質のものが得られることが明らかになった。
【0046】
(比較例1〜7)
表2に示す潤滑油基油成分と各種添加剤成分を同表に示す割合で配合し、緩衝器用油圧作動油組成物を調製した。
比較例1は(A)成分、(B)成分を両方とも配合しない場合であるが、その結果、摩擦係数と摩耗防止性は良好なものの、試験油中に銅分及び鉄分の検出があり、銅溶解性及び鉄溶解性は非常に悪い。
比較例2、3は(A)成分、(B)成分のいずれかを配合しない場合であるが、その結果、比較例1と同様に摩擦係数と摩耗防止性は良好なものの、試験油中に銅分及び鉄分の検出があり、銅溶解性及び鉄溶解性は非常に悪い。
比較例4は(A)成分、(B)成分を特定量配合しているが、(A)成分と(B)成分の比(BT/TD)が2.5〜10の特定範囲外(125)である場合である。その結果、銅溶解性、鉄溶解性、摩擦係数、摩耗防止性の四性能全てに悪い結果が得られた。
比較例5も比較例4と同様に(A)成分、(B)成分を特定量配合しているが、(A)成分と(B)成分の比(BT/TD)が2.5〜10の特定範囲外(0.1)である場合である。結果も比較例4と同様に、銅溶解性、鉄溶解性、摩擦係数、摩耗防止性の四性能全てに悪い結果が得られた。特に銅溶解性が悪い。
比較例6は、(A)成分と(B)成分の比(BT/TD)が2.5〜10の特定範囲内(2.5)であるが、(A)成分と(B)成分の配合量が微量で、下限値以下である場合である。摩擦係数と摩耗防止性は良好なものの、銅溶解性と鉄溶解性は悪い。
比較例7は、比較例4、5と同様に(A)成分、(B)成分を特定量配合しているが、(A)成分と(B)成分の比(BT/TD)が2.5〜10の特定範囲外(1)である場合である。銅溶解性、摩擦係数及び摩耗防止性は良好なものの、鉄溶解性は悪い。
【0047】
(A)成分、(B)成分を併用し、かつ特定量配合し、さらには(A)成分と(B)成分の比が2.5〜10の特定範囲内であると、高品質の緩衝器用油圧作動油が得られる。即ち、ある限られた添加範囲の(A)成分と(B)成分の組合せは、銅の腐食・溶解を防止するだけでなく、鉄の腐食・溶解の防止にも効果があることが見いだされ、その結果、摩擦係数、摩擦力、摩耗防止性といった主要な性能を損なうことなく、従来の油圧作動油をはるかに凌駕する卓越した油圧作動油が得られるのは、以下の理由からと推測される。
【0048】
(A)成分であるベンゾトリアゾール又はその誘導体が金属面の大部分を保護するものの完全には保護しきれず、その保護しきれない部分に対して、(B)成分であるチアジアゾール誘導体が有効に作用する。この場合、金属面の保護に対しては、これら(A)成分と(B)成分の分子構造が関与するため、ある一定の範囲の割合で添加された場合に最も効果が大きくなる。従って、(A)成分と(B)成分が必要最小限の添加量で金属面の保護を果たすため、他の添加剤に対する悪影響が最小限に抑えられ、結果として、主要な性能全てを満足できるのである。
【0049】
【発明の効果】
本発明の緩衝器用油圧作動油組成物は、潤滑油基油に前述の(A)成分、(B)成分を特定量配合し、かつ(A)成分と(B)成分との配合比率[(A)/(B)]が2.5〜10(重量比)の特定範囲であるものであり、緩衝器用油圧作動油として要求される良好な耐摩耗性と摩擦特性(低摩擦係数)を有し、銅及び鉄等の金属材料の腐食・溶解防止性に優れた性能を有する。
Claims (1)
- 潤滑油基油に、組成物全重量基準で、
(A)ベンゾトリアゾール又はその誘導体0.01〜2.0重量%及び
(B)チアジアゾール誘導体0.001〜2.0重量%
をそれぞれ配合し、かつ該(A)成分と(B)成分との配合比率[(A)/(B)]が2.5〜10(重量比)の範囲であることを特徴とする緩衝器用油圧作動油組成物。
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