JP2020180179A - 温間または熱間鍛造用潤滑剤 - Google Patents

温間または熱間鍛造用潤滑剤 Download PDF

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Hisanori Goto
久範 後藤
宇田 賢一郎
Kenichiro Uda
賢一郎 宇田
貢司 細田
Koji Hosoda
貢司 細田
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Abstract

【課題】作業環境面において優れている非黒鉛系であって、かつ、設備不良や設備メンテナンス工数の増加といった問題の生じない、新規な温間または熱間鍛造用潤滑剤を提供すること。【解決手段】(a)低分子カルボン酸のアルカリ金属塩、低分子カルボン酸のアルカリ土類金属塩、および、低分子カルボン酸のアンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の潤滑成分と、(b−1)ベンゾトリアゾールと、(c)水と、を含有し、前記(b−1)ベンゾトリアゾールの含有量を、温間または熱間鍛造用潤滑剤に含まれる全成分の合計質量を100質量部とした場合に、0.1質量部以上8質量部以下とする。【選択図】なし

Description

本発明は、温間または熱間鍛造用潤滑剤に関する。
従来から、金属の組成加工において、ワーク(被成型材)である金属材料と、金型または工具との摩耗を低減し、金属材料の塑性変形をより一層円滑に行うとともに、金属材料や金型などの冷却や保護、または金型などからの金属材料の離型を容易にする目的で温間または熱間鍛造用潤滑剤が使用されている。
この温間または熱間鍛造用潤滑剤にあっては、かつては黒鉛系が主流であったが、黒鉛系の潤滑剤は、塗布する際に黒鉛粉末が飛散したり、機械に付着したりして作業環境を悪化させるおそれがあり、また、使用回数を重ねるにしたがって、黒鉛粉末が潤滑剤を塗布するパイプやノズルに詰まり、作業に支障をきたすと共に、これらを清掃するために余分な作業を必要とすることもあった。このような作業環境上の問題を解決するため、非黒鉛系の潤滑剤として、ガラス系潤滑剤およびカルボン酸系潤滑剤が開発されている。ガラス系潤滑剤としては、たとえば、リン酸、リン酸塩、ケイ酸および硼酸のアルカリ金属塩からなるガラス系潤滑剤(下記、特許文献1)が知られている。また、カルボン酸系潤滑剤としては、アジピン酸塩と有機増粘剤(下記、特許文献2)、フタル酸アルカリ金属塩と有機増粘剤(下記、特許文献3)、芳香族カルボン酸のアルカリ金属塩(下記、特許文献4)、マレイン酸アルカリ金属塩と有機増粘剤(下記、特許文献5)、フマル酸アルカリ金属塩と有機増粘剤(下記、特許文献6)、カルボキシル基を有する芳香族多カルボン酸のアルカリ塩(下記、特許文献7)、リグニンスルホン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩(下記、特許文献8)、およびトリメリット酸とアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物とのポリカルボン酸反応生成物(下記、特許文献9)などが知られている。
非黒鉛系の温間または熱間鍛造用潤滑剤は、作業環境面においては黒鉛系に比べて優れているものの、潤滑性においては黒鉛系に比べて劣る場合もあり、黒鉛系と同等の潤滑性を得るためには、金型表面に形成する潤滑剤皮膜を厚くすることが必要であった。たとえば特許文献10には、非黒鉛系の温間または熱間鍛造用潤滑剤の付着性を向上することで、潤滑剤皮膜を厚くする技術が開示されている。
しかしながら、非黒鉛系の温間または熱間鍛造用潤滑剤の付着性を向上させると、潤滑性は担保できるものの、本来であれば潤滑剤が不要な金型以外の場所に飛散する潤滑剤の量も当然に多くなり、当該不要な場所に飛散した潤滑剤が強固に堆積してしまうことがあった。不要な場所への潤滑剤の堆積は、設備不良の原因となるばかりでなく、当該設備不良の防止のためのメンテナンス工数の増加にも繋がる可能性がある。
特開昭59−64698号公報 特開昭55−139498号公報 特開昭58−84898号公報 特開昭60−1293号公報 特開昭61−103996号公報 特公昭62−12960号公報 特開昭62−50396号公報 特開昭62−81493号公報 特公平4−60519号公報 特開2018−24727号公報
本発明は、このような状況下においてなされたものであり、作業環境面において優れている非黒鉛系であって、かつ、設備不良や設備メンテナンス工数の増加といった問題の生じない、新規な温間または熱間鍛造用潤滑剤を提供することを主たる課題とする。
上記課題を解決するための本発明は、温間または熱間鍛造用潤滑剤であって、(a)低分子カルボン酸のアルカリ金属塩、低分子カルボン酸のアルカリ土類金属塩、および、低分子カルボン酸のアンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の潤滑成分と、(b−1)ベンゾトリアゾールと、(c)水と、を含有し、前記(b−1)ベンゾトリアゾールの含有量が、温間または熱間鍛造用潤滑剤に含まれる全成分の合計質量を100質量部とした場合に、0.1質量部以上8質量部以下であることを特徴とする。
また、上記課題を解決するための別の本発明は、温間または熱間鍛造用潤滑剤であって、(a)低分子カルボン酸のアルカリ金属塩、低分子カルボン酸のアルカリ土類金属塩、および、低分子カルボン酸のアンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の潤滑成分と、(b−2)メルカプトベンゾチアゾールと、(c)水と、を含有し、前記(b−2)メルカプトベンゾチアゾールの含有量が、温間または熱間鍛造用潤滑剤に含まれる全成分の合計質量を100質量部とした場合に、1質量部以上2質量部以下であることを特徴とする。
上記本発明にあっては、さらに、(d)付着性向上剤を含有してもよい。
また、上記本発明にあっては、前記(a)潤滑成分が、イソフタル酸のアルカリ金属塩、アジピン酸のアルカリ金属塩、無水フタル酸のアルカリ金属塩、テレフタル酸のアルカリ金属塩、無水トリメリット酸のアルカリ金属塩、ピロメリット酸のアルカリ金属塩、ヘキサヒドロ無水フタル酸のアルカリ金属塩、および1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸のアルカリ金属塩、からなる群より選ばれる少なくとも一種であってもよい。
また、上記本発明にあっては、前記(d)付着性向上剤が、イソブチレン無水マレイン酸のアルカリ金属塩およびイミド化イソブチレン無水マレイン酸のアルカリ金属塩の何れか一方または双方であってもよい。
本発明の温間または熱間鍛造用潤滑剤によれば、非黒鉛系の潤滑成分を用いていることから、黒鉛系に比べて作業環境面において優れている。また、非黒鉛系の潤滑成分に加えて、所定量のベンゾトリアゾールまたはメルカプトベンゾチアゾールを含有していることから、本来不要な部分に潤滑剤が堆積することを抑制でき、堆積した場合であっても、当該堆積した潤滑剤を容易に洗浄除去することが可能であり、設備不良や設備メンテナンス工数の増加といった問題が発生することを防止できる。
以下、本発明の実施形態にかかる温間または熱間鍛造用潤滑剤(以下、単に「潤滑剤」ともいう。)について詳細に説明する。
本発明の実施形態にかかる温間または熱間鍛造用潤滑剤は、(a)低分子カルボン酸のアルカリ金属塩、低分子カルボン酸のアルカリ土類金属塩、および、低分子カルボン酸のアンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の潤滑成分と、(b−1)ベンゾトリアゾールと、(c)水と、を含有し、前記(b−1)ベンゾトリアゾールの含有量が、温間または熱間鍛造用潤滑剤に含まれる全成分の合計質量を100質量部とした場合に、0.1質量部以上8質量部以下である。
(a)潤滑成分
本実施形態にかかる潤滑剤にあっては、(a)潤滑成分として、低分子カルボン酸のアルカリ金属塩、低分子カルボン酸のアルカリ土類金属塩、および、低分子カルボン酸のアンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも一種が用いられる。このような低分子カルボン酸塩には、融点の高い皮膜を形成し、ワークと金型との接触を妨げる働きがある。ワークと金型との接触が妨げられれば、離型性が向上する。
低分子カルボン酸としては、たとえば、カプロン酸、カプリル酸およびラウリン酸等の脂肪族モノカルボン酸;コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ヘット酸、ドデカ二酸、シトラエン酸、メサコン酸、グルタコン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、フマル酸、トリカルバリル酸、アコニット酸、カンホロン酸、テトラクロロ無水マレイン酸、および1,10−デカメチレンジカルボン酸等の脂肪族ポリカルボン酸;安息香酸およびサリチル酸等の芳香族モノカルボン酸;無水フタル酸、イソフタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゼンペンタカルボン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、無水ピロメリット酸およびテレフタル酸等の芳香族ポリカルボン酸、などが挙げられる。
また、このような低分子カルボン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩としては、上記した低分子カルボン酸のリチウム塩、ナトリウム塩およびカリウム塩等のアルカリ金属塩;上記した低分子カルボン酸のカルシウム塩、バリウム塩およびストロンチウム塩等のアルカリ土類金属塩が挙げられる。
なお、本発明において、低分子カルボン酸のアルカリ金属塩、低分子カルボン酸のアルカリ土類金属塩、および、低分子カルボン酸のアンモニウム塩とは、低分子カルボン酸を含む酸性水溶液と、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはアンモニアを含む塩基性水溶液とが完全に中和して生成した塩でなくてもよく、低分子カルボン酸中のカルボキシル基の少なくとも一部が、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩またはアンモニウム塩を形成していればよい。
上記の低分子カルボン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、および、アンモニウム塩のうち、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、アジピン酸、テトラヒドロ無水フタル酸およびサリチル酸等のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、およびアンモニウム塩が好ましく、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、アジピン酸、およびテトラヒドロ無水フタル酸のナトリウム塩およびカリウム塩がより好ましい。
上記した(a)潤滑成分は一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態にかかる潤滑剤に含まれる全成分の合計質量を100質量部とした場合に、(a)潤滑成分の含有量は、12〜35重量部であることが好ましく、15〜25重量部であることがより好ましい。(a)潤滑成分の含有量が上記範囲内にあるとき、潤滑剤は十分な潤滑性を発揮することができる。(a)潤滑成分の含有量が12重量部未満であると、潤滑効果が十分に発揮されないことがある。一方、(a)潤滑成分の含有量が35重量部を超えると、潤滑成分が析出しやすくなり、配管を詰まらせるなど送液のトラブルを引き起こしやすくなることがある。
(b−1)ベンゾトリアゾール
本実施形態にかかる潤滑剤にあっては、上記(a)潤滑成分のみならず、(b−1)ベンゾトリアゾールが含まれていることに特徴を有している。本願発明者らは、上記(a)潤滑成分を含む潤滑剤において、(b−1)ベンゾトリアゾールを所定量含有せしめることにより、潤滑剤が堆積し難くなことを見出すとともに、堆積した潤滑剤の洗浄効率が向上すること、つまり一旦堆積した潤滑剤を容易に洗浄除去できることを見出し、本発明を完成させた。
当該(b−1)ベンゾトリアゾールの含有量は、本実施形態にかかる潤滑剤に含まれる全成分の合計質量を100質量部とした場合に、0.1質量部以上8質量部以下であり、0.5質量部以上3質量部以下がより好ましい。(b−1)ベンゾトリアゾールの含有量が0.1質量部未満であると、その効果、つまり潤滑剤を堆積し難くするとともに、堆積した潤滑剤の洗浄効率を向上するという効果が充分に発揮できない。一方、(b−1)ベンゾトリアゾールの含有量が8質量部を超えると、当該(b−1)ベンゾトリアゾール自体が堆積してしまうおそれがある。
(b−2)メルカプトベンゾチアゾール
本実施形態にかかる潤滑剤にあっては、上記(b−1)ベンゾトリアゾールに替えて、(b−2)メルカプトベンゾチアゾールが含有されていてもよい。本願発明者らは、(b−2)メルカプトベンゾチアゾールを所定量含有せしめることによっても、上記(b−1)ベンゾトリアゾールを含有せしめた場合と同様の効果を奏することを見出し、本発明を完成させた。
当該(b−2)メルカプトベンゾチアゾールの含有量は、本実施形態にかかる潤滑剤に含まれる全成分の合計質量を100質量部とした場合に、1質量部以上2質量部以下である。(b−1)ベンゾトリアゾールの場合と同様、(b−2)メルカプトベンゾチアゾールの含有量が1質量部未満であると、その効果が充分に発揮できない。一方、(b−2)メルカプトベンゾチアゾールの含有量が2質量部を超えると、当該(b−2)メルカプトベンゾチアゾール自体が堆積してしまうおそれがある。
なお、本実施形態にかかる潤滑剤にあっては、上記(b−1)ベンゾトリアゾールと(b−2)メルカプトベンゾチアゾールとを併用することも可能である。この場合においては、(b−1)ベンゾトリアゾールと(b−2)メルカプトベンゾチアゾールの合計の含有量を8質量部以下とし、かつ、(b−2)メルカプトベンゾチアゾールの含有量を2質量部以下とすることが好ましい。
(c)水
本実施形態にかかる潤滑剤にあっては、上記(a)潤滑成分と、(b−1)ベンゾトリアゾールまたは/および(b−2)メルカプトベンゾチアゾールの溶媒として(c)水が用いられている。
(c)水については特に限定されることはなく、工業用水、水道水、蒸留水、イオン交換水、および純水等を用いることができる。当該(c)水の含有量についても特に限定されれることはなく、上記(a)潤滑成分、および(b−1)ベンゾトリアゾールまたは/および(b−2)メルカプトベンゾチアゾールのそれぞれを必要量含有せしめた後の残部が当該(c)水の含有量となる。
(d)付着性向上剤
本実施形態にかかる潤滑剤にあっては、上記(a)〜(c)の各成分に加え、付着性向上剤が含有されていてもよい。付着性向上剤を含有せしめることにより、潤滑剤の金型への付着性を向上することができる。なお、本実施形態にかかる潤滑剤にあっては、当該付着性向上剤を用いて金型への付着性を向上しつつ、上記(b−1)ベンゾトリアゾールまたは(b−2)メルカプトベンゾチアゾールの作用効果により、本来不必要な部分への堆積を抑制しつつ、堆積した場合であってもその洗浄効率を向上することが可能となっている。
このような(d)付着性向上剤としては、概ね600℃程度で残渣がほとんど無くなってしまうものが好ましく、具体的には、ポリアクリル酸、アクリル酸マレイン酸の共重合体、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアルキレングリコール(PAG)、イソブチレン無水マレイン酸共重合体、イミド化イソブチレン無水マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール(PVA)およびポリビニルピロリドン(PVP)、並びに、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシエチルセルロース、カルボキシプロピルセルロース、カルボキシヘキシルセルロースおよび酢酸セルロース等のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩およびアンモニウム塩等が挙げられる。これらの中でも、イソブチレン無水マレイン酸共重合体のアルカリ金属塩およびイミド化イソブチレン無水マレイン酸共重合体のアルカリ金属塩が好ましい。
(d)付着性向上剤の含有量は特に限定されないが、たとえば、本実施形態にかかる潤滑剤に含まれる全成分の合計質量を100質量部とした場合に、1質量部以上25質量部以下であることが好ましく、5質量部以上20質量部以下であることが特に好ましい。
その他の成分
本実施形態にかかる潤滑剤にあっては、上記した(a)〜(d)の各成分に加えて、潤滑性、離型性、消泡性、耐腐敗性、および錆止め性を向上させる目的で、たとえば、固体潤滑剤、極圧剤、消泡剤、防腐剤、および金属防錆剤を添加することができる。添加量は、本発明の効果を損なわない限りにおいて特に制限されないが、本実施形態にかかる潤滑剤に含まれる全成分の合計質量を100質量部とした場合に、概ね0.1〜10重量部である。
本実施形態にかかる潤滑剤の粘度については特に限定されることはなく、潤滑剤の使用態様などに応じて適宜設計可能である。たとえば、25℃における粘度は5000Pa・s以下であることが好ましく、500mPa・s以下であることがより好ましい。5000Pa・sを超えると、送液およびスプレー塗布が困難になる場合があり、使用時においては粘度が低い方が、ハンドリングが良く好まれる。
本実施形態にかかる潤滑剤は、100〜400℃の鋼製の金型に塗布等により適用されると、潤滑剤中の水が蒸発し、金型表面に皮膜を形成する。このようにして形成された潤滑剤皮膜は優れた潤滑性および付着性を有しており、ワークと金型との間の摩擦および摩耗を効果的に軽減することができる。また、本実施形態にかかる熱間鍛造用潤滑剤は、(b−1)ベンゾトリアゾールまたは(b−2)メルカプトベンゾチアゾールを含有するため、非堆積性にも優れるため、該潤滑剤を塗布して加工後、金型から加工品を離型することが容易であるとともに洗浄性にも優れるため、本来不要な部分に堆積した潤滑剤皮膜を容易に洗い流すこともできる。
以下、本発明にかかる温間または熱間鍛造用潤滑剤について、実施例および比較例に基づきさらに具体的に説明するが、本発明はこの実施例等により制限されることはない。
本発明の実施例および比較例の潤滑剤に対する評価方法は以下の通りである。
(1)洗浄性の評価
・潤滑剤をアルミカップに入れて105℃の恒温槽に静置して水分を蒸発させ、不揮発分の塊を作成した。
・不揮発分(堆積物)の質量を10gとした。
・作成した不揮発分の塊(10g)を15℃、200mLの水に浸漬させた。
・不揮発分が完全に溶解するまでの時間を洗浄時間として評価した。洗浄時間が短いほど洗浄性に優れている。
(2)非堆積性(堆積率)の評価
・200℃の金属片(材質:SPCC−SB、サイズ:100mm×100mm×1mm)を準備し、当該金属片の表面に水で5倍に希釈した潤滑剤を下記の塗布条件にて1回塗布し、その後、下記エアブロー条件にてエアブローを行った。
<塗布条件>
液圧:0.28MPa
エアー圧:0.30MPa
塗布時間:0.5秒
<エアブロー条件>
エアー圧:0.30MPa
エアブロー時間:5秒
・前記塗布およびエアブロー終了後の金属片に付着した潤滑剤の質量を測定した。この時の潤滑剤の質量を質量Aとする。
・質量測定後の金属片を用い、上記と同様の塗布条件にて塗布とエアブローを10回繰り返した。なお繰り返しのインターバルは60秒とした。
・10回の塗布が終了後の金属片に付着した潤滑剤の質量を測定した。この時の潤滑剤の質量を質量Bとする。
・(質量B)÷(質量A)×100=堆積率(%)として評価を行った。堆積率の値が小さいほど非堆積性に優れている。
(実施例1)
(a)潤滑成分としてイソフタル酸のナトリウム塩15質量部、(b−1)ベンゾトリアゾール0.1質量部、(d)付着性向上剤としてイソブチレン・マレイン酸共重合体のナトリウム塩(MW=90000)、および残部としての(c)水、を合計100質量部となるように配合して、実施例1の潤滑剤を調製した。
(実施例2〜7、比較例1〜2)
実施例1における(b−1)ベンゾトリアゾールの配合量を以下の表1に示す配合量に変更した以外はすべて実施例1と同様にして、実施例2〜7および比較例1〜2の潤滑剤を調製した。
実施例1〜7および比較例1〜2の潤滑剤について、上記洗浄性の評価および非堆積性(堆積率)の評価を行った。その結果を表1に示す。
Figure 2020180179
上記表1中の「洗浄性の評価」は、比較例1の潤滑剤、つまり(b−1)ベンゾトリアゾールを含まない潤滑剤の洗浄時間(8.5時間)を基準とし、洗浄時間が6.5時間未満のものを○、6.5時間以上10.5時間未満のものを△、10.5時間以上のものを×とした。また、上記表1中の「非堆積性の評価」は、比較例1の潤滑剤の堆積率(255%)を基準とし、堆積率が230%未満のものを○、231%以上280%未満のものを△、280%以上のものを×とした。
(実施例8〜9、比較例3〜7)
実施例1における(b−1)ベンゾトリアゾールを(b−2)メルカプトベンゾチアゾールに変更するとともに、その配合量を以下の表2に示す配合量に変更した以外はすべて実施例1と同様にして、実施例8〜9および比較例3〜7の潤滑剤を調製した。
実施例8〜9および比較例3〜7の潤滑剤について、上記洗浄性の評価および非堆積性(堆積率)の評価を行った。その結果を表2に示す。
Figure 2020180179
上記表2中の「洗浄性の評価」および「非堆積性の評価」は、上記表1のそれぞれと同じである。なお、表2には基準となる(比較例1)についても記載してある。
(比較例8〜14)
実施例1における(b−1)ベンゾトリアゾールをベンジルアルコールに変更するとともに、その配合量を以下の表3に示す配合量に変更した以外はすべて実施例1と同様にして、比較例8〜14の潤滑剤を調製した。
比較例8〜14の潤滑剤について、上記洗浄性の評価および非堆積性(堆積率)の評価を行った。その結果を表3に示す。
Figure 2020180179
上記表3中の「洗浄性の評価」および「非堆積性の評価」は、上記表1のそれぞれと同じである。なお、表3には基準となる(比較例1)についても記載してある。
(実施例10〜18、比較例15〜23)
実施例1における(a)イソフタル酸のナトリウム塩を表4および表5に示す種類に変更した以外はすべて実施例1と同様にして、実施例10〜18および比較例15〜23の潤滑剤を調製した。
実施例10〜18および比較例15〜23の潤滑剤について、上記洗浄性の評価および非堆積性(堆積率)の評価を行った。その結果を表4および表5に示す。
Figure 2020180179
Figure 2020180179
上記表4および表5中の「洗浄性の評価」および「非堆積性の評価」は、上記表1のそれぞれと同じである。なお、表4および表5には基準となる(比較例1)についても記載してある。
(実施例19〜26、比較例24〜31)
実施例1における(d)イソブチレン・マレイン酸共重合体のナトリウム塩(MW=90000)を表6および表7に示す種類に変更した以外はすべて実施例1と同様にして、実施例19〜26、比較例24〜31の潤滑剤を調製した。
実施例19〜26、比較例24〜31の潤滑剤について、上記洗浄性の評価および非堆積性(堆積率)の評価を行った。その結果を表6および表7に示す。
Figure 2020180179
Figure 2020180179
上記表6および表7中の「洗浄性の評価」および「非堆積性の評価」は、上記表1のそれぞれと同じである。なお、表6および表7には基準となる(比較例1)についても記載してある。

Claims (5)

  1. (a)低分子カルボン酸のアルカリ金属塩、低分子カルボン酸のアルカリ土類金属塩、および、低分子カルボン酸のアンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の潤滑成分と、
    (b−1)ベンゾトリアゾールと、
    (c)水と、
    を含有し、
    前記(b−1)ベンゾトリアゾールの含有量が、温間または熱間鍛造用潤滑剤に含まれる全成分の合計質量を100質量部とした場合に、0.1質量部以上8質量部以下であることを特徴とする温間または熱間鍛造用潤滑剤。
  2. (a)低分子カルボン酸のアルカリ金属塩、低分子カルボン酸のアルカリ土類金属塩、および、低分子カルボン酸のアンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の潤滑成分と、
    (b−2)メルカプトベンゾチアゾールと、
    (c)水と、
    を含有し、
    前記(b−2)メルカプトベンゾチアゾールの含有量が、温間または熱間鍛造用潤滑剤に含まれる全成分の合計質量を100質量部とした場合に、1質量部以上2質量部以下であることを特徴とする温間または熱間鍛造用潤滑剤。
  3. さらに、
    (d)付着性向上剤
    を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の温間または熱間鍛造用潤滑剤。
  4. 前記(a)潤滑成分が、イソフタル酸のアルカリ金属塩、アジピン酸のアルカリ金属塩、無水フタル酸のアルカリ金属塩、テレフタル酸のアルカリ金属塩、無水トリメリット酸のアルカリ金属塩、ピロメリット酸のアルカリ金属塩、ヘキサヒドロ無水フタル酸のアルカリ金属塩、および1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸のアルカリ金属塩、からなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の温間または熱間鍛造用潤滑剤。
  5. 前記(d)付着性向上剤が、イソブチレン無水マレイン酸のアルカリ金属塩およびイミド化イソブチレン無水マレイン酸のアルカリ金属塩の何れか一方または双方であることを特徴とする請求項3または4に記載の温間または熱間鍛造用潤滑剤。
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