JP2009013189A - 水溶性調質圧延液組成物 - Google Patents

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Naoki Nagase
直樹 長瀬
Seiichi Shito
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Abstract

【課題】耐ガムアップ性、防錆性のいずれの性能にも優れた水溶性調質圧延液組成物を提供すること。さらに、前記の性能を有すると共に、希釈水として硬度が高い工業用水を使用してもスカムを発生せず、良好な性能を発揮できる水溶性調質圧延液組成物を提供すること。
【解決手段】水に、組成物基準で、(A)下記の一般式(1)
(X)m−Ar−(COOH)n ・・・(1)
〔式中、Xは、NO2-,RO‐,又はR‐(但し、Rは、炭素数1〜10の炭化水素基)、Arは2〜4の結合手を有する芳香族炭化水素基、m及びnは1又は2の整数を示し、mが2の場合、Xは同一でも異なっていてもよい。〕で表される芳香族カルボン酸を0.5〜20質量%、(B)炭素数8〜24の脂肪族カルボン酸を0.5〜40質量%、及び(C)アルカリ金属の水酸化物及びアルカノールアミンから選ばれる少なくとも1種の塩基性化合物を配合してなる水溶性調質圧延液組成物であって、前記(B)の脂肪族カルボン酸と(A)の芳香族カルボン酸との配合比、B/A(モル比)が1.0〜10であることを特徴とする水溶性調質圧延液組成物である。
【選択図】なし

Description

本発明は調質圧延液組成物に関し、より詳しくは耐ガムアップ性、防錆性などに優れた水溶性調質圧延液組成物に関する。
調質圧延は冷間圧延後、微少の圧下率で圧延するもので、冷延鋼板の形状を制御し、機械特性を付与し(降伏点伸びの消去)、光沢を調整することなどを目的に行われている。この調質圧延された冷延鋼板は、それぞれの用途に応じて加工されるまでにかなりの期間があるために、通常防錆油で処理される。しかしながら、調質圧延工程で用いられた水溶性調質圧延剤中の成分と防錆油中の成分とが化学反応を起こし、いわゆる「ガムアップ」と呼ばれる粘着物が生成する。その粘着物は鉄粉やカーボン等の異物を抱き込んで搬送ロールに堆積し、それが鋼板に転写されて表面品位を著しく損なわせ、また、その後のプレス加工等において、「滑り」を生じさせるなどの問題を引き起こすことがある。そのため、ガムアップの発生を防止できる、耐ガムアップ性調質圧延剤であることが要求される。
また、調質圧延後、冷延鋼板は調質圧延液のみが付着した状態で、長期にわたり保管されることがあるため、それ自身が防錆性に優れることが必要である。さらに調質圧延液には、脱脂性が良好であること、良好な圧延性(具体的には、例えば、濡れ性が良好で、適正な摩擦係数を有する)を有することなども要求される。
さらに、水溶性調質圧延液には、通常その調質圧延液を水で10〜50倍程度に希釈して使用するが、その希釈水の水質が問題となることもある。すなわち希釈水として工業用水など、硬度が高い水を用いて水溶性調質圧延剤を調合すると、調質圧延剤中の配合物の溶解又は分散状態が変化し、カルシウムやナトリウムが脂肪酸と石けんを生成し、スカムが発生することがある。このようなスカムの発生は、外観が好ましくはないばかりでなく、調質圧延剤としての安定した性能を維持する上でも問題となる恐れがある。
従来この種の水溶性調質圧延剤としては、通常、二塩基酸や芳香族カルボン酸のアルカノールアミンの塩を主体とするものが用いられており、具体的には例えば、(a)二塩基酸等と第1級アルカノールアミン及び無機アルカリとの塩を主体とする水溶性調質圧延油剤(特許文献1参照)、(b)スピクリスポール酸及びp‐ニトロ安息香酸などとアルカノールアミンとの塩を含有する水溶性調質圧延油剤(特許文献2参照)、(c)脂肪族二塩基酸と飽和脂肪酸、及びモノエンカルボン酸などとアルカノールアミンを主体として含有する水溶性調質圧延油剤(特許文献3参照)、(d)ベンゾチアゾリルチオアルキレンカルボン酸及び脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸などのアルカノールアミンの塩を主体として含有する水溶性調質圧延油剤(特許文献4参照)、などが挙げられる。
しかしながら、これらの油剤はいずれも耐ガムアップ性が不十分であり、また防錆性についても必ずしも充分とはいえなかった。そのため、いずれの性能についても充分な性能を具備した調質圧延鋼板を得られないのが実情である。そこで、調質圧延業界においては、これらの耐ガムアップ性、防錆性のいずれの性能についても優れた性能を有する油剤の開発が望まれている。
また、上記のとおり、油剤の希釈水として硬度が高い工業用水を用いてもスカムを発生しない油剤の出現が要望されている。
特開昭61−101600号公報 特開平5−59389号公報 特開平7−188690号公報 特開2000−87073号公報
本発明は、このような状況下において、耐ガムアップ性、防錆性のいずれの性能にも優れた水溶性調質圧延液組成物を提供することを第一の目的とする。さらに本発明は、耐ガムアップ性、防錆性のいずれの性能にも優れると共に、希釈水として硬度が高い工業用水を使用してもスカムを発生せず、良好な性能を発揮できる水溶性調質圧延液組成物を提供することを第二の目的とするものである。
本発明者らは、特定の芳香族カルボン酸、特定の脂肪族カルボン酸及び塩基性化合物を配合してなる水溶性調質圧延液で、各カルボン酸の配合比率を特定の範囲に調整することによって、その目的を達成できることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
1.水に、組成物基準で、(A)下記の一般式(1)
(X)m−Ar−(COOH)n ・・・(1)
〔式中、Xは、NO2-,RO‐,又はR‐(但し、Rは、炭素数1〜10の炭化水素基)、Arは2〜4の結合手を有する芳香族炭化水素基、m及びnは1又は2の整数を示し、mが2の場合、Xは同一でも異なっていてもよい。〕
で表される芳香族カルボン酸を0.5〜20質量%、(B)炭素数8〜24の脂肪族カルボン酸を0.5〜40質量%、及び(C)アルカリ金属の水酸化物及びアルカノールアミンから選ばれる少なくとも1種の塩基性化合物を配合してなる水溶性調質圧延液組成物であって、前記(B)の脂肪族カルボン酸と(A)の芳香族カルボン酸との配合比、B/A(モル比)が1.0〜10であることを特徴とする水溶性調質圧延液組成物、
2.(B)の脂肪族カルボン酸の70モル%以上が脂肪族モノカルボン酸である前記1に記載の水溶性調質圧延液組成物、
3.(B)の脂肪族モノカルボン酸の80モル%以上が、分岐鎖を有する脂肪族モノカルボン酸である前記2に記載の水溶性調質圧延液組成物、
4.(C)の塩基性化合物の配合量が、(A)及び(B)成分の中和当量以上である前記1〜3のいずれかに記載の水溶性調質圧延液組成物、
5.(A)の芳香族カルボン酸が、ニトロ安息香酸、アルコキシ(アルキル基の炭素数1〜4)安息香酸、及びアルキル(アルキル基の炭素数1〜4)安息香酸から選ばれる少なくとも1種である前記1〜4のいずれかに記載の水溶性調質圧延液組成物、
6.前記1〜5のいずれかに記載の水溶性調質圧延液組成物を希釈水で10〜50倍に希釈した水溶性調質圧延液組成物、
を提供するものである。
本発明の第一の発明における水溶性調質圧延液組成物は、耐ガムアップ性、防錆性のいずれの性能にも優れている。また、本発明の第二の発明の水溶性調質圧延液組成物は、耐ガムアップ性、防錆性のいずれの性能にも優れると共に、希釈水として硬度が高い水を用いた場合でも、スカムの発生を抑制できる。
本発明における第一の発明は、以下の条件を満たすものである。すなわち、水に、組成物基準で、(A)下記の一般式(1)
(X)m−Ar−(COOH)n ・・・(1)
〔式中、Xは、NO2-,RO‐,又はR‐(但し、Rは、炭素数1〜10の炭化水素基)、Arは、2〜4の結合手を有する芳香族炭化水素基、m及びnは1又は2の整数を示し、mが2の場合、Xは同一でも異なっていてもよい。〕
で表される芳香族カルボン酸を0.5〜20質量%、(B)炭素数8〜24の脂肪族カルボン酸を0.5〜40質量%、及び(C)アルカリ金属の水酸化物及びアルカノールアミンから選ばれる少なくとも1種の塩基性化合物を配合してなる水溶性調質圧延液組成物であって、前記(B)の脂肪族カルボン酸と(A)の芳香族カルボン酸との配合比、B/A(モル比)が1.0〜10であることを特徴とする水溶性調質圧延液組成物である。
前記(A)成分の一般式(1)において、Rで示される炭素数1〜10の炭化水素基としては、直鎖若しくは分岐鎖を有するアルキル基、アルケニル基、アリール基が好ましい。好ましい具体例としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基,各種(n‐,sec‐,tert‐,及びiso‐)ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基及びこれらのアルキル基(メチル基を除く)に対応するアルケニル基、及びフェニル基、アルキルフェニル基、フェニルアルキル基などを挙げることができる。中でも炭素数1〜8、さらには炭素数1〜6、特に炭素数1〜4のアルキル基、及びフェニル基が好ましい。
Arの2〜4の結合手を有する芳香族炭化水素基としては、いずれも芳香環に1又は2の結合手を有する安息香酸残基、フタル酸残基、イソフタル酸残基、テレフタル酸残基などの芳香族のモノカルボン酸残基やジカルボン酸残基が好ましく、入手が容易である点で、安息香酸残基やフタル酸残基が特に好ましい。
前記一般式(1)で表される芳香族カルボン酸の好適な例としては、例えば安息香酸又はフタル酸の、(ジ)ニトロ化物(ニトロ化物又はジニトロ化物の意味である。)、(ジ)アルコキシ(アルキル基の炭素数1〜4)化物、(ジ)アルキル(アルキル基の炭素数1〜4)化物、(ジ)フェノキシ化物、アルキル(アルキル基の炭素数1〜4)ニトロ化物、アルコキシ(アルキル基の炭素数1〜4)ニトロ化物、フェノキシニトロ化物、アルコキシ(アルキル基の炭素数1〜4)アルキル(アルキル基の炭素数1〜4)化物が好ましく、具体的には、例えばp‐ニトロ安息香酸、p‐メトキシ安息香酸、p‐エトキシ安息香酸、p‐n-プロポキシ安息香酸、p‐iso-プロポキシ安息香酸、p‐n-ブトキシ安息香酸、p‐sec-ブトキシ安息香酸、p‐tert-ブトキシ安息香酸、p‐iso-ブトキシ安息香酸、p‐メチル安息香酸、p‐エチル安息香酸、p‐n-プロピル安息香酸、p‐iso-プロピル安息香酸、p‐n-ブチル安息香酸、p‐sec-ブチル安息香酸、p‐tert-ブチル安息香酸、p‐iso-ブチル安息香酸、4−メチル−3−ニトロ安息香酸、3−ニトロフタル酸、フェノキシ安息香酸などが挙げられる。これらの中でも、ニトロ安息香酸、アルコキシ(アルキル基の炭素数1〜4)安息香酸、アルキル(アルキル基の炭素数1〜4)安息香酸、アルキル(アルキル基の炭素数1〜4)ニトロ安息香酸、フェノキシ安息香酸が好ましく、特に、ニトロ安息香酸、アルコキシ(アルキル基の炭素数1〜4)安息香酸、アルキル(アルキル基の炭素数1〜4)安息香酸が好ましい。
本発明においては、これら芳香族カルボン酸を1種単独で、又は2種以上を混合して用いる。その配合量は組成物全量基準で0.5〜20質量%であり、好ましくは1〜15質量%である。芳香族カルボン酸の配合量が0.5〜20質量%であれば、それが(C)成分の塩基性化合物と塩を形成し、組成物の防錆性を高める効果があり、耐ガムアップ性も良好に保つことができる。
本発明の水溶性調質圧延液組成物においては、(B)成分として炭素数8〜24、好ましくは炭素数12〜20の脂肪族カルボン酸を用いる。この炭素数8〜24の脂肪族カルボン酸としては、直鎖若しくは分岐鎖を有する飽和又は不飽和の脂肪族モノカルボン酸及び脂肪族ジカルボン酸が含まれる。
前記炭素数8〜24の脂肪族カルボン酸の具体例としては、例えば、各種オクタン酸、各種ノナン酸、各種デカン酸、各種ウンデカン酸、各種ドデカン酸、各種テトラデカン酸、各種ヘキサデカン酸、各種オクタデカン酸、各種エイコサン酸、各種ドコサン酸などの脂肪族モノカルボン酸、オクタン二酸(スベリン酸)、ノナン二酸(アゼライン酸)、デカン二酸(セバシン酸)、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。
前記(B)の脂肪族カルボン酸については、その70モル%以上が脂肪族モノカルボン酸であることが好ましい。脂肪族カルボン酸の70モル%以上が脂肪族モノカルボン酸であれば、水溶性調質圧延液組成物の耐ガムアップ性を良好に保つと共に、防錆性を高める効果がある。脂肪族カルボン酸中の脂肪族モノカルボン酸の割合は、80モル%以上、更には90モル%以上であることがより好ましい。
本発明においては、これら脂肪族カルボン酸は1種を単独で、又は2種以上を混合して用いる。その配合量は組成物全量基準で1〜30質量%であり、好ましくは5〜15質量%である。(B)成分の脂肪族カルボン酸の配合量がこのような範囲内であれば、良子な防錆性と耐ガムアップ性を得ることができる。
本発明の水溶性調質圧延液組成物においては、前記(B)の脂肪族カルボン酸と前記(A)の芳香族カルボン酸との配合比、B/A(モル比)が1.0〜10であることを要し、好ましくは1.0〜8、特に好ましくは2.0〜5.0である。B/A(モル比)が1.0未満では、ガムアップ性が不充分であり、一方、B/A(モル比)が10を越えると、防錆性が低下する場合がある。
本発明においては、(C)成分としてアルカリ金属の水酸化物、及びアルカノールアミンから選ばれる少なくとも1種の塩基性化合物を用いる。
前記アルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムを例示することができる。
また、アルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノN−プロパノールアミン、ジ(N−プロパノール)アミン、トリ(N−プロパノール)アミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、メチルイソプロパノールアミンなどが挙げられる。これらのアルカノールアミンの中でも、総炭素数2〜4の一級又は二級のアルカノールアミンが好ましく、特に、総炭素数2〜4の一級又は二級のモノアルカノールアミンが好ましい。
本発明においては、(C)成分である塩基性化合物の配合量は、前記(A)及び(B)成分の中和当量以上であることが好ましい。(C)成分のアルカリ金属の水酸化物及びアルカノールアミンから選ばれる少なくとも1種の塩基性化合物の配合量が、前記(A)及び(B)成分の中和当量以上であれば、(A)及び(B)の各カルボン酸が(C)成分と良好な塩を形成し、優れた防錆性を発現する。(C)成分の配合量の上限については、特に制限はないが、調質圧延液のpHを適性に保つ観点から通常(A)及び(B)成分の2当量、好ましくは1.5当量以下である。したがって、(C)成分である塩基性化合物の配合量は前記(A)及び(B)成分の1.0〜1.5当量がより好ましく、1.0〜1.2当量がさらに好ましい。
本発明の(C)成分には、上記アルカリ金属水酸化物、アルカノールアミンからなる群から選ばれる1種もしくは2種以上の塩基性化合物が任意に使用可能であるが、アルカリ金属水酸化物の1種以上とアルカノールアミンの1種以上とを混合して配合することがより好ましい。その場合の混合割合は任意であるが、耐ガムアップ性の観点か、アルカノールアミンがアルカリ金属水酸化物より過剰当量であることが好ましく、例えば、アルカノールアミンがアルカリ金属水酸化物1当量に付き1〜8当量、さらに1.5〜5当量であることがより好ましい。
本発明の水溶性調質圧延液組成物は、水に、上記(A)、(B)及び(C)の各成分を配合してなる水溶性調質圧延液組成物である。したがって、(A)、(B)及び(C)の各成分をそれぞれ配合してもよく、あらかじめ(A)、(B)成分の一方又は両方を(C)成分と反応させて得られた反応物(塩)を配合してもよい。
また、本発明に用いる水については、特に制限はなく、例えば脱イオン水、純水、水道水、工業用水などが使用できる。これらの中でも性能の点で、脱イオン水や純水が好ましい。
本発明の水溶性調質圧延液組成物は、上記の組成を有するものであるが、さらに必要に応じて公知の添加剤を配合することができる。
そのような添加剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール類、ポリアルキレングリコールのモノ又はジアルキルエーテル、ポリアルキレングリコールのエチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)等のアルキレンオキサイド付加物、メチルセルロース類などの水溶性ポリマーがある。このような水溶性ポリマーは、調質圧延の圧延ロールに残る粘着性の不揮発分の発生を抑制する効果(耐ビルドアップ性)があり、通常水溶性調質圧延液組成物を基準にして、およそ0.5〜50質量%配合する。
また、ほう酸、タングステン酸、モリブデン酸、リン酸、炭酸、硫酸、珪酸、硝酸、亜硝酸等の無機酸のナトリウム塩、及びカリウム塩;ベンゾトリアゾール、メチルベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ヒドロカルビルトリアゾール等のトリアゾール類及びその塩;メルカプトベンゾチアゾール等のチアゾール類およびその塩;脂肪酸アルカノールアミド類;イミダゾリン類;オキサゾリン類など水溶性金属腐食防止剤は、水溶性調質圧延液組成物の防錆性を向上させる効果がある。
本発明の調質圧延液組成物では、さらに必要に応じて、殺菌剤や消泡剤、界面活性剤などを配合してもよい。
本発明の水溶性調質圧延液組成物は、以上のような構成を有するが、その組成物のpHが7〜10であることが好ましく、8〜9であることがより好ましい。pHが7〜10であれば、防錆性や濡れ性を良好に保つ効果がある。
また、本発明の水溶性調質圧延液組成物は、摩擦係数が一定値より低いことが好ましく、例えば、曾田式摩擦試験機で摩擦係数が0.3以下であることが好ましく、0.2以下であるものがより好ましい。摩擦係数が0.3以下であれば、調質圧延において、圧延荷重の変動幅が小さく、安定したロール表面の転写を行うことができる効果がある。
上記本発明の水溶性調質圧延液組成物は、いわゆる水溶性調質圧延液の原液であり、原液を用いてもよいが、通常これを希釈水で10〜50倍に希釈して調質圧延に使用される。その場合の希釈水としては、脱イオン水、純水、水道水などが使用できる。
本発明における第二の発明は、以下の構成を有する。すなわち、上記第一の発明において、(B)の脂肪族モノカルボン酸の80モル%以上、好ましくは90モル%以上が、さらに好ましくは95モル%以上が分岐鎖を有する脂肪族モノカルボン酸である水溶性調質圧延液組成物である。
このような組成であることによって、第一の発明が有する性能を具備する上に、希釈水として硬度が高い工業用水を用いた場合であっても、スカムの発生を抑制でき、かつ性能が低下することもない。従って、希釈水は硬水であるか軟水であるかを問わず、水道水、工業用水、イオン交換水、蒸留水などを任意に使用することができる。
次に実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらの例によって何ら制限されるものではない。なお、水溶性調質圧延液組成物の性能は次の方法に従って評価した。
(1)耐ガムアップ性
300mlの容器に各水溶性調質圧延液組成物の試料10gと市販の防錆油(「ダフニーオイルコートZ−3」出光興産株式会社製)70gとを採取し、70℃で16時間、1000rpmで攪拌した。その後、ヘキサン溶剤で容器を洗浄し、洗浄後の付着物をガム量として秤量した。
(2)防錆試験
JIS G 3141に規定する鋼板(60×80×1mm)を脱脂後、各水溶性調質圧延液組成物の試料に浸漬し、乾燥後、その試験片屋内暴露試験及びスタック試験を行った。
屋内暴露試験は10日後に、さび、ステインの有無と程度を観察した。また、スタック試験は、温度50℃×湿度95%RHの条件で10日経過後に、錆、ステインの有無と程度を観察した。
(3)摩擦係数
曾田振り子式摩擦試験機を用いて測定した。
(4)調質圧延実験
4段式小型圧延機を用いて下記の条件で圧延し、圧延時の圧延荷重変動幅を測定した。
・圧延条件
ロール径 135mm
圧延材 SPCC−SB(200m×50mm×0.05mm)
圧延荷重 3.8kN(3.9tf)
圧下率 3%
圧延速度 50m/min.
実施例1〜5及び比較例1〜3
第1表に示す成分を用いて水溶性調質圧延液組成物を調整した。それら調整
した組成物及び市販の水溶性調質圧延油剤について、各種性能を評価した。その結果を第1表に示した。第1表中、その他の成分とは、水溶性ポリマー(ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル)、ベンゾトリアゾール、及び殺菌剤の混合物である。
Figure 2009013189
第1表によれば、B/A(モル比)が1.0以上の実施例1〜5の水溶性調質圧延液組成物は、「ガム生成無し」又は「ガム生成少量」であり、耐ガムアップ性が優れていることが分る。これに対してB/A(モル比)が0.3である比較例1は、「ガム生成多量」であり、一方、B/A(モル比)が∞、すなわちA成分を配合しなく、しかもB中のモノカルボン酸が70モル%である比較例2では、ガムは生成しないが、防錆試験では錆を発生する。
また、B成分中の〔(分岐鎖を有するモノカルボン酸)/(モノカルボン酸)〕(モル%)が100%である実施例2〜5の水溶性調質圧延液組成物は、工業用水で希釈してもスカムを発生しないが、その値が72%である実施例1の場合はスカムを発生することが分る。
また、第1表によれば、実施例1〜3及び5の摩擦係数はいずれも3以下であるが、比較例1及び4では摩擦係数が高く、3以上である。また、実施例2及び3では、調質圧延における荷重変動幅が2.5kN以下で小さいのに対し、比較例3は3.9kNであって、調質圧延における荷重変動幅が大きいことが分る。
本発明の水溶性調質圧延液組成物は、耐ガムアップ性、防錆性のいずれの性能にも優れる水溶性調質圧延液組成物である。また、本発明の水溶性調質圧延液組成物は、耐ガムアップ性、防錆性のいずれの性能にも優れると共に、希釈水として硬度が高い水を用いた場合でも、スカムの発生を抑制できる水溶性調質圧延液組成物として有用である。

Claims (6)

  1. 水に、組成物基準で、(A)下記の一般式(1)
    (X)m−Ar−(COOH)n ・・・(1)
    〔式中、Xは、NO2−,RO−,又はR−(但し、Rは、炭素数1〜10の炭化水素基)、Arは2〜4の結合手を有する芳香族炭化水素基、m及びnは1又は2の整数を示し、mが2の場合、Xは同一でも異なっていてもよい。〕
    で表される芳香族カルボン酸を0.5〜20質量%、(B)炭素数8〜24の脂肪族カルボン酸を0.5〜40質量%、及び(C)アルカリ金属の水酸化物及びアルカノールアミンから選ばれる少なくとも1種の塩基性化合物を配合してなる水溶性調質圧延液組成物であって、前記(B)の脂肪族カルボン酸と(A)の芳香族カルボン酸との配合比、B/A(モル比)が1.0〜10であることを特徴とする水溶性調質圧延液組成物。
  2. (B)の脂肪族カルボン酸の70モル%以上が脂肪族モノカルボン酸である請求項1に記載の水溶性調質圧延液組成物。
  3. (B)の脂肪族モノカルボン酸の80モル%以上が、分岐鎖を有する脂肪族モノカルボン酸である請求項2に記載の水溶性調質圧延液組成物。
  4. (C)の塩基性化合物の配合量が、(A)及び(B)成分の中和当量以上である請求項1〜3のいずれかに記載の水溶性調質圧延液組成物。
  5. (A)の芳香族カルボン酸が、ニトロ安息香酸、アルコキシ(アルキル基の炭素数1〜4)安息香酸、及びアルキル(アルキル基の炭素数1〜4)安息香酸から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜4のいずれかに記載の水溶性調質圧延液組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の水溶性調質圧延液組成物を希釈水で10〜50倍に希釈した水溶性調質圧延液組成物。
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