JP3665745B2 - 温間或いは熱間水溶性塑性加工用潤滑剤 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、温間或いは熱間水溶性塑性加工用潤滑剤に関し、更に詳しくは、潤滑性及び離型性に優れ、金属堆積を抑制でき、且つ作業環境及び作業効率を悪化させない温間或いは熱間水溶性塑性加工用潤滑剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から金属の塑性加工において、金属材料と工具或いは金型間の摩擦を低減し、金属の塑性変形をいっそう円滑に行うとともに、工具或いは金型の冷却、保護並びに工具や金型からの金属材料の離型を容易にする目的で潤滑剤が使用されている。
このような潤滑剤として、黒鉛粉末を油或いは水に分散したタイプの黒鉛系潤滑剤が、潤滑性及び離型性に優れるという利点から、広く利用されている。ところが、黒鉛粉末を含有する潤滑剤は、塗布する際に黒鉛粉末が飛散したり、機械に付着したりするため作業環境を悪化させるという問題点がある。また、使用回数を重ねるにしたがって黒鉛粉末が潤滑剤を塗布するパイプやノズルに詰まり、作業に支障をきたすだけでなく、これらを清掃するために余分な作業を必要とし、作業効率を大きく悪化させてしまうという問題点もある。そこで、黒鉛系潤滑剤の問題点を解決するために、黒鉛粉末を含有しない無黒鉛型の潤滑剤が求められている。
この要求に応えるものとして、ガラス系潤滑剤及びカルボン酸系潤滑剤が知られている。ガラス系潤滑剤としては、例えば、リン酸、リン酸塩、ケイ酸及び硼酸のアルカリ金属塩からなるガラス系潤滑剤(特開昭59−64698号公報)が知られている。しかしながら、上記のガラス系潤滑剤は加工数の増加にともなって金型の凹部或いはコーナー部に堆積し、製品に欠肉を生じさせ易いという問題点がある。カルボン酸系潤滑剤としては、アジピン酸塩と有機増粘剤(特開昭55−139498号公報)、フタル酸アルカリ金属塩と有機増粘剤(特開昭58−84898号公報)、芳香族カルボン酸のアルカリ金属塩(特開昭60−1293号公報)、マレイン酸アルカリ金属塩と有機増粘剤(特開昭61−103996号公報)、フマル酸アルカリ金属塩と有機増粘剤(特公昭62−12960号公報)、カルボキシ基を有する芳香族多カルボン酸のアルカリ塩(特開昭62−50396号公報)、リグニンスルホン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩(特開昭62−81493号公報)、トリメリット酸とアルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物とのポリカルボン酸反応生成物(特公平4−60519号公報)等が知られている。
ところが、カルボン酸塩と有機増粘剤からなる潤滑剤は、作業環境や作業効率の悪化および金型への堆積は解消されるが、黒鉛系潤滑剤と比較して潤滑性及び離型性がやや劣っている。また、増粘剤を併用しているため潤滑剤の濃度が高くなって冷却性が劣り、金型温度の上昇(すなわち連続加工における定常状態での金型温度が高くなること)により金型寿命を低下させてしまう。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記問題点を解決するものであり、潤滑性及び離型性に優れ、金属堆積を抑制でき、且つ作業環境及び作業効率を悪化させない温間或いは熱間水溶性塑性加工用潤滑剤を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
これまでの白色系潤滑剤はカルボン酸塩等を主剤に用いており、高分子化合物はバインダーとしての役割しか求められていなかった。これは高分子化合物を主剤に用いた場合、型汚れによるノックアウトピンの稼動不良や金型コーナー部へのスラッジ堆積による製品形状不良が問題となるためである。この現象を解決又は抑制するためには、高分子化合物の分子量を低下させて水溶液に流動性を持たせてスラッジを除去しやすくしたり、皮膜形成を阻害する化合物を添加して皮膜強度を低下させて金型への堆積を抑制したりする方法が考えられるが、何れの場合も一次性能である潤滑性を低下させてしまうことになる。
本発明者は、高分子化合物の持つ潤滑性の高さ及び皮膜強度の強さに着目し、種々の高分子化合物について鋭意検討した結果、アニオン系高分子化合物が良好な潤滑と離型性能を併せ持つことを確認し、これに特定のノニオン系高分子化合物を併用することによって、潤滑性を低下させることなく、且つ型汚れが少ない温間或いは熱間水溶性塑性加工用潤滑剤が得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0005】
本発明の温間或いは熱間水溶性塑性加工用潤滑剤は、平均分子量50000〜1000000のアニオン系高分子化合物と、平均分子量500〜1000000のノニオン系高分子化合物とを含有する水溶性塑性加工用潤滑剤であって、上記アニオン系高分子化合物が、スルホン酸基及びそのイオン基の少なくとも1つを有する重合体であり、上記ノニオン系高分子化合物が、エチレングリコール/プロピレングリコール共重合体、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルの1種又は2種以上であり、上記水溶性塑性加工用潤滑剤を100重量%とした場合に、上記アニオン系高分子化合物の含有量が0.5〜50重量%であり、且つ上記ノニオン系高分子化合物の含有量が0.2〜30重量%であることを特徴とする。
また、他の本発明の温間或いは熱間水溶性塑性加工用潤滑剤は、平均分子量50000〜1000000のアニオン系高分子化合物と、平均分子量500〜1000000のノニオン系高分子化合物とを含有し、黒鉛を含有しない水溶性塑性加工用潤滑剤であって、上記アニオン系高分子化合物が、α−オレフィン並びに二重結合を有するカルボン酸、そのアルカリ金属塩及びアンモニウム塩のうちの少なくとも一種と、マレイン酸イミド、そのアルカリ金属塩及びアンモニウム塩のうちの少なくとも一種との共重合体、又はα−オレフィンと無水マレイン酸との共重合体のイミド化物であり、上記ノニオン系高分子化合物が、エチレングリコール/プロピレングリコール共重合体、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルの1種又は2種以上であり、上記水溶性塑性加工用潤滑剤を100重量%とした場合に、上記アニオン系高分子化合物の含有量が0.5〜50重量%、上記ノニオン系高分子化合物の含有量が0.2〜30重量%であり、且つ上記アニオン系高分子化合物及び上記ノニオン系高分子化合物の全体に対する上記ノニオン系高分子化合物の含有割合が1〜40重量%であることを特徴とする。
【0006】
上記「アニオン系高分子化合物」としては、アニオン性基、即ち、水系において陰イオンを有する高分子化合物であれば良い。このアニオン性基としては、スルホン酸基(−SO3H)若しくはそのイオン基(−SO3 −)、又はカルボン酸基(−CO2H)若しくはそのイオン基(−CO2 −)、フェノール性水酸基若しくはそのオキシイオン基等を挙げることができる。尚、水系において解離する前においては塩となっていても良い。この高分子化合物としては、このような基を有する単量体を単独重合又は共重合して得てもよいし、このようなアニオン基を有さない重合体に後工程によりこのような陰イオン基を導入してもよい。また、異なる上記アニオン基を1つの高分子化合物中に備えていてもよいし、同種の陰イオン基を2以上備えていてもよい。
【0007】
上記アニオン系高分子化合物は、二重結合を有するカルボン酸の重合体、二重結合を有するカルボン酸のアルカリ金属塩及び/又はアンモニウム塩(各々、イオンの状態でもよい。)の各重合体、二重結合を有するスルホン酸の重合体、並びに、二重結合を有するスルホン酸のアルカリ金属塩及び/又はアンモニウム塩(各々、イオンの状態でもよい。)の各重合体のうちの少なくとも1つとすることができる。
【0008】
上記「二重結合を有するカルボン酸」としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸及びウンデシレン酸等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
また、上記「アルカリ金属塩」としては、ナトリウム塩、カリウム塩及びルビジウム塩等が挙げられる。なかでも、ナトリウム塩が好ましい。
【0009】
また、上記アニオン系高分子化合物は、二重結合を有するカルボン酸、そのアルカリ金属塩及びアンモニウム塩(各々、イオンの状態でもよい。)のうちの少なくとも一種と、無水マレイン酸、マレイン酸イミド、マレイン酸誘導体、これらの各アルカリ金属塩及び各アンモニウム塩(各々、イオンの状態でもよい。)のうちの少なくとも一種と、の共重合体とすることができる。即ち、二重結合を有するカルボン酸、そのアルカリ金属塩及びアンモニウム塩は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。また、無水マレイン酸、マレイン酸イミド、マレイン酸誘導体、これらの各アルカリ金属塩及び各アンモニウム塩においても、同様である。
【0010】
上記二重結合を有するカルボン酸及び上記アルカリ金属塩においては、上記の説明のものをそのまま適用できる。
上記「無水マレイン酸誘導体」としては、2−メチルマレイン酸、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル及びマレイン酸モノフェニルエステル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0011】
更に、上記アニオン系高分子化合物は、α−オレフィンと、二重結合を有するカルボン酸、そのアルカリ金属塩及びアンモニウム塩(各々、イオンの状態でもよい。)のうちの少なくとも一種と、の共重合体とすることができる。即ち、二重結合を有するカルボン酸、そのアルカリ金属塩及びアンモニウム塩は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0012】
上記二重結合を有するカルボン酸及び上記アルカリ金属塩においては、上記の説明のものをそのまま適用できる。
上記「α−オレフィン」としては、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−ペンテン、1−ドデセン及び1−テトラデセン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0013】
また、上記アニオン系高分子化合物は、α−オレフィンと、無水マレイン酸、マレイン酸イミド、マレイン酸誘導体、これらの各アルカリ金属塩及び各アンモニウム塩(各々、イオンの状態でもよい。)のうちの少なくとも一種と、の共重合体とすることができる。即ち、無水マレイン酸、マレイン酸イミド、マレイン酸誘導体、これらの各アルカリ金属塩及び各アンモニウム塩は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
上記αオレフィン、上記マレイン酸誘導体及び上記アルカリ金属塩においては、上記の説明をそのまま適用できる。
【0014】
上記アニオン系高分子化合物の具体例としては、ポリスチレンスルホン酸又はそのアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等、好ましくはナトリウム塩)若しくはそのアンモニウム塩、ポリアクリル酸又はそのナトリウム塩若しくはそのアンモニウム塩、ポリメタクリル酸又はそのナトリウム塩若しくはそのアンモニウム塩、アクリル酸とアクリルアミドの共重合体又はそのナトリウム塩若しくはそのアンモニウム塩、スチレンスルホン酸と(メタ)アクリル酸との共重合物又はそのナトリウム塩若しくはそのアンモニウム塩、ポリアルケニルコハク酸又はそのナトリウム塩若しくはそのアンモニウム塩等が挙げられる。
これらのアニオン系高分子化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0015】
上記「ノニオン系高分子化合物」としては、例えば、エチレングリコール/プロピレングリコール共重合体、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。なかでも、ポリエチレングリコールが好ましく用いられる。これらのノニオン系高分子化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0016】
上記アニオン系高分子化合物の平均分子量は500〜1000000であり、好ましくは5000〜500000、より好ましくは10000〜200000である。この平均分子量が500未満の場合、型汚れは少ないが潤滑性に劣るため好ましくない。一方、この平均分子量が1000000を超える場合、潤滑性は良好になるが、スプレー塗布が難しくなり、型汚れが激しいため好ましくない。
並びに、上記ノニオン系高分子化合物の平均分子量は500〜1000000であり、好ましくは1000〜100000、より好ましくは1000〜50000である。この平均分子量が500未満の場合、皮膜強度を低下させ、潤滑性が低下するため好ましくない。一方、この平均分子量が1000000を超える場合、潤滑性が低下したり、潤滑剤の液安定性が低下するため好ましくない。
【0017】
上記アニオン系高分子化合物の含有量は、本潤滑剤の全体に対して0.5〜50重量%(好ましくは5〜40重量%、より好ましくは10〜30重量%)であり、且つ、上記ノニオン系高分子化合物の含有量は、本潤滑剤に対して0.2〜30重量%(好ましくは0.5〜20重量%、より好ましくは1〜10重量%)である。このアニオン系高分子化合物の含有量が0.5重量%未満の場合、潤滑性が不足し製品形状が悪化するため好ましくない。一方、この含有量が50重量%を超える場合、潤滑剤の液安定性が低下し、使用液のスプレー塗布が困難となるため好ましくない。また、このノニオン系高分子化合物の含有量が0.2重量%未満の場合、型汚れによる製品形状の悪化を招くため好ましくない。一方、この含有量が30重量%を超える場合、皮膜強度が低下し、潤滑性が不足して製品形状の悪化を招くため好ましくない。
【0018】
また、アニオン系高分子化合物及びノニオン系高分子化合物の全体に対するノニオン系高分子化合物の含有割合は、1〜50重量%であることが好ましく、より好ましくは2〜40重量%、更に好ましくは2〜30重量%である。この含有割合が1重量%未満の場合は、型汚れによる製品形状の悪化を招く恐れがある。一方、この割合が50重量%を超える場合、潤滑性不足による製品形状の悪化や型寿命の低下を招く恐れがある。
【0019】
本潤滑剤には、通常、水が配合される。この水の配合量は、本潤滑剤全体に対して好ましくは20〜99.3重量%(より好ましくは40〜94.5重量%、更に好ましくは60〜89.0重量%)である。この水の含有量が20重量%未満の場合、潤滑性の粘度が上昇し、作業性の悪化を招く恐れがある。一方、この含有量が99.3重量%を超える場合、潤滑成分の不足による潤滑性の低下を招き、製品形状が悪化する恐れがある。
尚、使用時に水を加えて所定の水系潤滑剤として使用することもでき、また、使用に際して更に水で希釈して使用することもできる。
【0020】
本発明の温間或いは熱間水溶性塑性加工用潤滑剤には、必要に応じて、防菌防黴剤、防腐剤、消泡剤、界面活性剤及び金属の防錆防食剤等を添加することができる。更に、より苛酷な加工条件下で用いる場合には、焼き付き防止等の性能を向上させる目的で、硫化鉱油等の極圧添加剤、ステアリン酸カルシウム等の金属セッケン、ポリエチレンワックスエマルジョン等のエマルジョン、ポリエチレンワックス、ポリアミド、ポリイミド、及びポリエチレンテレフタレート等の有機粉体等を添加することができる。
また、本発明の温間或いは熱間水溶性塑性加工用潤滑剤の製造は、従来の方法により各成分を混合して行うことができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例及び比較例を挙げて、具体的に説明する。
(1)水溶性塑性加工用潤滑剤の調製(実施例1〜9)
ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(平均分子量500000)、ポリアクリル酸ナトリウム(平均分子量50000)、ポリアルケニルコハク酸ナトリウム[α−オレフィン(1−ドデセン及び1−テトラデセンの混合物)と無水マレイン酸との共重合体を、NaOHで加水分解したもの。両者の割合(モル比);1/1モル、分子量12400]、スチレンスルホン酸/アクリル酸共重合体のナトリウム塩(両者の割合(モル比);1/2モル、平均分子量200000)、イソブチレン/無水マレイン酸共重合体のナトリウム塩(両者の割合(モル比);1/1モル、平均分子量90000)、イソブチレン/無水マレイン酸共重合体[両者の割合(モル比);1/1モル、平均分子量(90000)]のイミド化変性タイプ(イミド化率;50%)のナトリウム塩、ポリエチレングリコール(分子量6000)、エチレングリコール/プロピレングリコール共重合体[両者の割合(モル比);2/3モル、平均分子量(2000)]、ステアリン酸カルシウム、防腐剤(イソチアゾリン系化合物)、及び水とを表1に示す割合となるように混合し、実施例1〜9の潤滑剤を調製した。
尚、アニオン系高分子化合物及びノニオン系高分子化合物の全体に対するノニオン系高分子化合物の含有割合は、実施例1、2、4及び5は17重量%、実施例3は14重量%、実施例6は29重量%、実施例7は2重量%、実施例8は6重量%及び実施例9は7重量%である。
【0022】
【表1】
【0023】
(2)水溶性塑性加工用潤滑剤の調製(比較例1〜9)
上記(1)で用いた、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、イソブチレン/無水マレイン酸共重合体のナトリウム塩、防腐剤、及び水と、イソフタル酸ナトリウム(分子量189.1)、ヒドロキシエチルセルロース(分子量90000)、黒鉛(粒径5μm)、ポリエチレンオキサイド(分子量4000000)及びグリセリン(分子量92.1)とを用いて表2に示す割合となるように混合し、比較例1〜9の潤滑剤を調製した。
【0024】
【表2】
【0025】
(3)水溶性塑性加工用潤滑剤の性能評価
上記(1)及び(2)で調整した各潤滑剤を、それぞれ蒸留水で10倍に希釈した潤滑剤を用いて、表3に示す条件にて前方押し出し試験を行った。尚、潤滑剤は表4に示す条件により塗布した。
そして、押し出し加工後のワークの押し出し長さ(図1参照)、及び最大押し出し荷重を測定し、潤滑性及び型汚れの程度を以下のように評価した。その結果をそれぞれ表1(実施例1〜9)、及び表2(比較例1〜9)に併記する。尚、表1及び表2中の加工後のワークの押し出し長さ及び最大押し出し荷重の値は、3回の試験の平均値である。
【0026】
【表3】
【0027】
【表4】
【0028】
(潤滑性の評価基準)
押し出し長さが長く、且つ荷重が低いほど潤滑性が良好であるとし、以下の基準により評価した。
◎:非常に良好、○:良好、△:やや不良、×:不良
(型汚れの程度の評価基準)
型に付着した汚れを目視により評価し、以下の基準により評価した。
◎:非常に良好、○:良好、△:やや不良、×:不良
【0029】
(3)実施例の効果
表1及び表2によれば、ノニオン系高分子化合物を含有していない比較例1では、潤滑性は「◎」であったが、型汚れの程度が「×」であった。アニオン系高分子化合物が0.5重量%未満の比較例2は、型汚れの程度は「◎」であったが、潤滑性が「×」であった。ノニオン系高分子化合物が0.2重量%未満の比較例3は潤滑性が「◎」であったが、型汚れの程度が「△」であった。また、アニオン系高分子化合物が60重量%である比較例4は、潤滑剤が高粘度で液安定性に劣り、且つ稀釈液の粘度が高く、スプレーによる霧化が十分でなかったため、潤滑性試験が実施できなかった。ノニオン系高分子化合物に高分子量のポリオキシエチレン共重合体(分子量4000000)を含有させた比較例5では、型汚れの程度が「○」であったが、潤滑性が「×」であった。ノニオン系高分子化合物の代わりに低分子量のグリセリン(分子量92.1)を含有させた比較例6では、潤滑性は「○」であったが、型汚れの程度が「△」であった。アニオン系高分子化合物の代わりに低分子量のイソフタル酸ナトリウム(分子量189.1)を含有し、ノニオン系高分子化合物を含有していない比較例7では、型汚れの程度は「○」であったが、潤滑性が「△」であった。また、アニオン系高分子化合物を含有していない比較例8では、型汚れの程度は「○」であったが、潤滑性が「×」であった。更に、アニオン系高分子化合物の代わりに黒鉛を含有させた比較例9では、潤滑性は「◎」であったが、型汚れの程度が「×」であった。
【0030】
これに対して、実施例1〜9のアニオン系高分子化合物及びノニオン系高分子化合物を含有する水溶性塑性加工用潤滑剤を用いた場合では、潤滑性が「◎」又は「○」で、且つ型汚れの程度が「◎」又は「○」であり、黒鉛を用いた比較例9と同等以上の潤滑性を示し、且つ型汚れが抑制できる性能バランスに優れた水溶性塑性加工用潤滑剤であることがわかった。更に、実施例3及び5の潤滑剤は、潤滑性及び型汚れの程度が共に「◎」であり特に優れていた。
【0031】
尚、本発明においては、上記の具体的な実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば、潤滑性及び離型性に優れ、金属堆積を抑制でき、且つ作業環境及び作業効率を悪化させない温間或いは熱間水溶性塑性加工用潤滑剤を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】前方押し出し試験で得られるワークの「押し出し長さ」を示す模式図である。
Claims (3)
- 平均分子量50000〜1000000のアニオン系高分子化合物と、平均分子量500〜1000000のノニオン系高分子化合物とを含有する水溶性塑性加工用潤滑剤であって、
上記アニオン系高分子化合物が、スルホン酸基及びそのイオン基の少なくとも1つを有する重合体であり、
上記ノニオン系高分子化合物が、エチレングリコール/プロピレングリコール共重合体、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルの1種又は2種以上であり、
上記水溶性塑性加工用潤滑剤を100重量%とした場合に、上記アニオン系高分子化合物の含有量が0.5〜50重量%であり、且つ上記ノニオン系高分子化合物の含有量が0.2〜30重量%であることを特徴とする温間或いは熱間水溶性塑性加工用潤滑剤。 - 平均分子量50000〜1000000のアニオン系高分子化合物と、平均分子量500〜1000000のノニオン系高分子化合物とを含有し、黒鉛を含有しない水溶性塑性加工用潤滑剤であって、
上記アニオン系高分子化合物が、α−オレフィン並びに二重結合を有するカルボン酸、そのアルカリ金属塩及びアンモニウム塩のうちの少なくとも一種と、マレイン酸イミド、そのアルカリ金属塩及びアンモニウム塩のうちの少なくとも一種との共重合体、又はα−オレフィンと無水マレイン酸との共重合体のイミド化物であり、
上記ノニオン系高分子化合物が、エチレングリコール/プロピレングリコール共重合体、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルの1種又は2種以上であり、
上記水溶性塑性加工用潤滑剤を100重量%とした場合に、上記アニオン系高分子化合物の含有量が0.5〜50重量%、上記ノニオン系高分子化合物の含有量が0.2〜30重量%であり、且つ上記アニオン系高分子化合物及び上記ノニオン系高分子化合物の全体に対する上記ノニオン系高分子化合物の含有割合が1〜40重量%であることを特徴とする温間或いは熱間水溶性塑性加工用潤滑剤。 - 上記アニオン系高分子化合物は、二重結合を有するスルホン酸の重合体、並びに、二重結合を有するスルホン酸のアルカリ金属塩及び/又はアンモニウム塩の各重合体のうちの少なくとも1つである請求項1記載の温間或いは熱間水溶性塑性加工用潤滑剤。
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