JP2009275137A - 熱間圧延油組成物、および、フェライト系ステンレス鋼の熱間圧延方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 従来の技術では、高耐食性鋼種、あるいは低温圧延を要する材料に対して、スケール欠陥を十分に低減できない。
【解決手段】 鉱油、油脂、合成エステルのうち1種または2種以上からなる基油と、ポリサルファイド、硫化油脂のうち1種または2種以上からなる添加剤とを含有し、さらに粒子径0.2〜10μmの固体硫黄粒子を0.1〜30mass%含有する熱間圧延油組成物である。
【選択図】 なし
【解決手段】 鉱油、油脂、合成エステルのうち1種または2種以上からなる基油と、ポリサルファイド、硫化油脂のうち1種または2種以上からなる添加剤とを含有し、さらに粒子径0.2〜10μmの固体硫黄粒子を0.1〜30mass%含有する熱間圧延油組成物である。
【選択図】 なし
Description
本発明は、熱間圧延油組成物、および、フェライト系ステンレス鋼の熱間圧延方法に関し、特に、フェライト系ステンレス鋼の熱間圧延に有利に適用しうる熱間圧延油組成物、およびこれを使用してフェライト系ステンレス鋼を熱間圧延するフェライト系ステンレス鋼の熱間圧延方法に関する。
フェライト系ステンレス鋼では、熱間圧延時に肌荒れと呼ばれる、酸化スケールに起因する欠陥(以後、スケール欠陥と記す)が発生する場合が多く、特にCrやMoの添加量が多い高耐食性鋼種で顕著に発生する傾向にある。このスケール欠陥が発生すると、その後の酸洗工程でも完全に除去することはできず、冷間圧延後も微小な表面疵として残存し、冷延鋼板の表面品質を劣化させる。ステンレス鋼板では、美麗な表面品質が要求されるため、このようなスケール欠陥が発生した場合、これを除去するため、酸洗工程の追加、あるいは表面研削工程の追加などが必要となり、歩留まりや生産効率の著しい低下を招いていた。
このような問題に対し、例えば特許文献1に、酸化鉄粉と高分子化合物を組み合わせる方法が提案されている。しかしながら、この提案では粉末を分散させた液を用いるため、工場での使用時に安定供給が難しく、有効にスケール欠陥を低減することは困難である。
一方、特許文献2に、硫黄含有量の多いポリサルファイドを含有する液状の熱延油が提案されており、ステンレス鋼のスケール欠陥低減に有効であることが確認されている。これは、硫黄成分が高温で鋼材表面と反応し、硫化鉄となり、潤滑剤の役目を果たすためと推定されている。
特公平6-62980号公報
特開2004-238491号公報
一方、特許文献2に、硫黄含有量の多いポリサルファイドを含有する液状の熱延油が提案されており、ステンレス鋼のスケール欠陥低減に有効であることが確認されている。これは、硫黄成分が高温で鋼材表面と反応し、硫化鉄となり、潤滑剤の役目を果たすためと推定されている。
しかしながら、近年、フェライト系ステンレス鋼に対する、耐食性、材料特性に対する要求はますます厳しいものとなっており、より耐食性の高い、あるいは、より材料特性の優れたフェライト系ステンレス熱延鋼板が製造されるようになってきている。耐食性の高い鋼種は、熱間圧延時に酸化スケールが成長し難くて、スケール欠陥の発生がより顕著であり、また、伸び、r値など材料特性の向上のため、熱間仕上げ圧延の温度を低温化すると、特許文献2の熱間圧延油を適用してもスケール欠陥が発生する。
すなわち、従来の技術では、高耐食性鋼種、あるいは低温圧延を要する材料に対して、スケール欠陥を十分に低減できないという課題があった。
本発明は、前記課題を解決し、高耐食性鋼種を低温で熱間圧延した場合も、スケール欠陥を十分低減できる熱間圧延油組成物を、これを使用するフェライト系ステンレス鋼の熱間圧延方法とともに提供するものであり、その要旨構成は以下のとおりである。
(請求項1)
鉱油、油脂、合成エステルのうち1種または2種以上からなる基油と、ポリサルファイド、硫化油脂のうち1種または2種以上からなる添加剤とを含有し、さらに粒子径0.2〜10μmの固体硫黄粒子を0.1〜30mass%含有することを特徴とする熱間圧延油組成物。
(請求項2)
請求項1に記載された熱間圧延油組成物を使用するフェライト系ステンレス鋼の熱間圧延方法であって、前記熱間圧延油組成物を、濃度0.5〜20vol%のエマルションとして使用することを特徴とするフェライト系ステンレス鋼の熱間圧延方法。
(請求項1)
鉱油、油脂、合成エステルのうち1種または2種以上からなる基油と、ポリサルファイド、硫化油脂のうち1種または2種以上からなる添加剤とを含有し、さらに粒子径0.2〜10μmの固体硫黄粒子を0.1〜30mass%含有することを特徴とする熱間圧延油組成物。
(請求項2)
請求項1に記載された熱間圧延油組成物を使用するフェライト系ステンレス鋼の熱間圧延方法であって、前記熱間圧延油組成物を、濃度0.5〜20vol%のエマルションとして使用することを特徴とするフェライト系ステンレス鋼の熱間圧延方法。
本発明の熱間圧延油組成物によれば、通常のウォーターインジェクション方式で安定して圧延油を供給することができる。また、優れたスケール欠陥抑制効果があるので、高耐食性フェライト系ステンレス鋼の熱間圧延、あるいは仕上げ圧延を低温で行うなど過酷な熱延状態に有利に適用できる。
本発明の熱間圧延油組成物(略して本発明の圧延油)において、基油としては、鉱油、油脂、合成エステルのうち1種、または、2〜3種混合を適宜使用すればよく、本発明圧延油中に10〜40mass%程度含有することが望ましい。鉱油としては、例えば、スピンドル油、マシン油、モータ油など、40℃での動粘度が10〜900mm2/sec程度のものを使用することができる。油脂としては、例えば、牛脂、パーム油、ヤシ油、なたね油などを使用することができる。合成エステルは、脂肪酸とアルコールから合成されるエステルであるが、脂肪酸としては、C12〜C36の一塩基酸または二塩基酸が、また、アルコールとしては、C1〜C18の一価または多価アルコールが、それぞれ挙げられる。具体的には、オレイン酸ブチルエステル、イソステアリン酸ブチルカルビトールエステル、ベヘニン酸ラウリルエステル、トリメチロールプロパンラウリン酸エステルなどが挙げられる。
添加剤としては、例えば、ポリサルファイド、硫化油脂のうち1種または2種以上の混合から適宜選択すればよく、本発明の圧延油中に40〜70mass%程度含有することが望ましい。ポリサルファイドとしては、硫黄分を20mass%以上含む、ジドデジルポリサルファイド、ジオクチルポリサルファイド、ジターシャリーブチルポリサルファイドなどのジアルキルポリサルファイドが挙げられる。硫化油脂としては、硫化エステル、硫化オレフィンなどが挙げられる。本発明の圧延油に用いられるポリサルファイドや硫化油脂は、鉱油、油脂、合成エステルにそれぞれ可溶であり、基油に含有させて液状で使用する。
本発明の圧延油では、前記基油および添加剤を含有することに加えて、さらに、粒子径0.2〜10μmの固体硫黄粒子を0.1〜30mass%含有することが特徴である。固体硫黄粒子を含有させることにより、耐焼き付き性が改善され、スケール欠陥の低減に大きな効果を発揮する。これは、高温のロールバイトで鋼材表面のFeとSが反応しFeSとなり、これが、ロールと鋼材の金属接触を抑制するためであり、鋼材表面にスケールが成長し難い高耐食性ステンレス鋼で顕著な効果を発揮する。本発明において、固体硫黄粒子の粒子径を0.2〜10μmに限定した理由を以下に述べる。粒子径0.2μm未満では、ロールバイトの油膜厚みの確保が難しくて、焼き付き防止に有効でないためである。粒子径10μm超では、圧延中に固溶、分散しないため、ウォーターインジェクション方式で供給する際、凝集によるノズル詰まり、沈殿などの問題があるためである。すなわち、本発明では、粒子径0.2〜10μmと従来に比べ粒子径の小さい粉末状の固体硫黄粒子を用いることにより、本発明の圧延油に安定して分散し、ウォーターインジェクション方式で安定して供給できる点、および、粒子径の小さい反応性の高い状態で使用する点のため、Feとの反応が促進され、焼き付き防止に極めて有効となる。本発明の圧延油中の固体硫黄粒子含有量を0.1〜30mass%に限定したのは、0.1mass%未満では固体硫黄粒子による焼き付き防止効果が小さすぎ、一方、30mass%を超えて含有すると、粒子径が小さくても凝集し易くなり、ノズル詰まりなどを発生しやすくてウォーターインジェクション方式で安定して供給することができないためである。
なお、本発明では、必須に用いる添加剤(ポリサルファイドおよび/または硫化油脂)のほか、界面活性剤など公知の添加剤を必要に応じて添加することも可能である。
本発明の圧延油は、スケール欠陥低減効果がより顕著に現れるという観点から、フェライト系ステンレス鋼の熱間圧延において適用されることが好ましい。その適用形態は、通常熱間圧延に使用されているウォーターインジェクション方式でワークロールに供給することが望ましい。その場合、本発明の圧延油は、水中に分散させてエマルションとして使用される。給油濃度(エマルション中の本発明の圧延油濃度)は適宜選択すればよいが、好ましくは0.5〜20vol%である。すなわち、0.5vol%未満の濃度では、スケール欠陥低減のための圧延油の効果がほとんど発揮されないためであり、また、20vol%を超える濃度では、圧延油の原単位が著しく低下し、工業的に不利なためである。なお、この濃度ではスケール欠陥低減という観点では何ら問題はない。
本発明の圧延油は、スケール欠陥低減効果がより顕著に現れるという観点から、フェライト系ステンレス鋼の熱間圧延において適用されることが好ましい。その適用形態は、通常熱間圧延に使用されているウォーターインジェクション方式でワークロールに供給することが望ましい。その場合、本発明の圧延油は、水中に分散させてエマルションとして使用される。給油濃度(エマルション中の本発明の圧延油濃度)は適宜選択すればよいが、好ましくは0.5〜20vol%である。すなわち、0.5vol%未満の濃度では、スケール欠陥低減のための圧延油の効果がほとんど発揮されないためであり、また、20vol%を超える濃度では、圧延油の原単位が著しく低下し、工業的に不利なためである。なお、この濃度ではスケール欠陥低減という観点では何ら問題はない。
実施例として、表1に示す条件で熱間圧延実験を行った。本条件は、圧延油の耐焼き付き性、スケール欠陥低減効果を評価する実験方法において、ウォーターインジェクション方式でワークロールに圧延油を供給しながら、高耐食性ステンレス鋼を低温で高圧下することにより、加速的に焼き付きを発生させようとする実験条件である。
圧延油は、表2に示す圧延油組成となるように、所定の成分を配合して製造した。なお、表2において、鉱油にはスピンドル油(40℃での動粘度180mm2/sec)を、油脂にはパーム油を、合成エステルにはオレイン酸ブチルエステルを、ポリサルファイドにはジドデジルポリサルファイド(硫黄含有量25mass%)を、硫化油脂には硫化エステルを、それぞれ用いた。
圧延油の有効性は、ウォーターインジェクション方式での供給の可否の指標となる「粒子凝集」、圧延後の鋼板表面性状(焼き付きの有無)、表面粗さRaで評価した。すなわち、圧延油中で固体硫黄粒子が凝集し、ウォーターインジェクション方式での供給時にフィルター詰まりが発生する場合、実用的に使用が困難と判断した。圧延後の鋼板焼き付きの有無は目視で判断するとともに、表面粗さRaで定量的に評価した。焼き付きが発生すると、表面粗さRaが大きくなる。
実験結果を表2に併せて示す。
表2より、本発明例では、いずれの例でも、粒子凝集は発生せず、焼き付きは起こらず、表面粗さRaが小さく抑えられ、スケール欠陥は発生しなかった。これに対し、従来例(No.1)では、固体硫黄粒子を含有しない圧延油を使用したため、粒子凝集によるフィルター詰まりは発生しなかったものの、焼き付きが起こり、表面粗さRaが大きくなった。また、比較例(No.3)では、圧延油中の固体硫黄粒子の粒子径が小さすぎたため、粒子凝集によるフィルター詰まりは発生しなかったものの、焼き付きが起こり、表面粗さRaが大きくなった。また、比較例(No.5)では、圧延油中の固体硫黄粒子の含有量が少なすぎたため、粒子凝集は発生しなかったものの、焼き付きが起こり、表面粗さRaが大きくなった。また、比較例(No.8)では、圧延油中の固体硫黄粒子の粒子径が大きすぎたため、粒子凝集によるフィルター詰まりが発生し、給油不能となった。また、比較例(No.10)では、圧延油中の固体硫黄粒子の含有量が多すぎたため、粒子凝集によるフィルター詰まりが発生し、給油不能となった。
以上のように、本発明によれば、通常のウォーターインジェクション方式で安定して圧延油を供給することができ、焼き付きを防止してスケール欠陥を低減させうることが分かる。
Claims (2)
- 鉱油、油脂、合成エステルのうち1種または2種以上からなる基油と、ポリサルファイド、硫化油脂のうち1種または2種以上からなる添加剤とを含有し、さらに粒子径0.2〜10μmの固体硫黄粒子を0.1〜30mass%含有することを特徴とする熱間圧延油組成物。
- 請求項1に記載された熱間圧延油組成物を使用するフェライト系ステンレス鋼の熱間圧延方法であって、前記熱間圧延油組成物を、濃度0.5〜20vol%のエマルションとして使用することを特徴とするフェライト系ステンレス鋼の熱間圧延方法。
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JP2008128498A JP2009275137A (ja) | 2008-05-15 | 2008-05-15 | 熱間圧延油組成物、および、フェライト系ステンレス鋼の熱間圧延方法 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2013100397A (ja) * | 2011-11-08 | 2013-05-23 | Idemitsu Kosan Co Ltd | 金属加工油組成物 |
US8742149B2 (en) | 2010-07-12 | 2014-06-03 | Lion Corporation | Metalworking fluid base oil |
WO2016158534A1 (ja) * | 2015-03-30 | 2016-10-06 | 出光興産株式会社 | 切削・研削加工油組成物 |
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2008
- 2008-05-15 JP JP2008128498A patent/JP2009275137A/ja active Pending
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