JP5948272B2 - 油性潤滑油及び潤滑油の塗布方法 - Google Patents

油性潤滑油及び潤滑油の塗布方法 Download PDF

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Description

本発明は、炭素鋼、合金鋼などの鉄鋼材料及びアルミニウム、マグネシウムまたはこれら各々の元素を含む合金等の非鉄材料への静電塗布、あるいは前記鉄鋼材料及び前記非鉄材料の鍛造に用いる油性潤滑油と、この油性潤滑油を静電塗布する潤滑油の塗布方法に関する。
周知のごとく、鍛造は、製品化する金属材料を圧縮し、変形させる手法である。変形に必要な圧縮力を低減するために被鍛材(以降、ワークと称す)を、必要に応じて加熱し、軟化させた後に、高圧で圧縮し成形することが知られている。ワークの材質によって加熱する温度帯が異なり、冷間鍛造、温間鍛造、熱間鍛造に分類される。
冷間鍛造は、ワークの再結晶温度以下(通常、室温)の温度で実施される。一般的に寸法精度が高く、結晶組織の状態もよく、表面もきれいに仕上がる。そのため、熱処理等の後加工処理なしで、製品化することが可能であり、かつ材料ロスが少ないという利点がある。冷間鍛造は、加熱によりワークを軟化していないため、ワークを変形するための変形抵抗が高い。そのため、成形形状や大きさには限界があり、冷間鍛造は比較的低圧縮力ですむ小型製品に適している。
熱間鍛造は、再結晶温度以上の温度で実施される。ワークが軟化されることにより、変形抵抗が小さく、大型製品にも適応されている。しかし、寸法精度のばらつきや、製品の割れが生じやすい。
温間鍛造は、冷間鍛造と熱間鍛造の中間の温度帯で実施され、冷間鍛造と熱間鍛造の利点を活かし、ワークの変形抵抗を減少させつつ、寸法精度と強度を確保する鍛造法である。
これらの鍛造の圧縮工程で、潤滑油がない状態ではワークと金型との間でカジリや凝着を起こすため、金型に潤滑油等が塗布されている。この潤滑油には、雲母や黒鉛等の無機粉体を含む鍛造油が使用されている。これら鍛造油は潤滑性に優れているが、灯油希釈の油性であるために引火性があり、また黒鉛等の無機粉体を含むため、作業環境を悪化させる問題がある。
この問題点を解決するために、無機粉体を含有しない水溶性の潤滑剤が提案されている。例えば、アジピン酸、アルカリ金属塩、添加剤、並びに水を含み、これらを反応させることによってつくられる鍛造用潤滑剤組成物(特許文献1)、フタル酸アルカリ金属塩の組成物と増粘剤の組成物とを含有する水溶性組成物からなる熱間鍛造用潤滑剤(特許文献2)等が提案されている。これら水溶性潤滑剤は、引火性がなく、火災の危険はない。また、黒鉛等の無機粉体を含まないため、作業環境悪化が低減される。
しかしながら、水溶性潤滑剤は、ライデンフロスト現象により、約180〜200℃で突沸するので、200℃以上の金型に油膜成分を付着させるのが困難である。そのため、金型の温度を160〜180℃に設定して、金型に水溶性潤滑剤を塗布することが行われている。また、水溶性潤滑剤は、潜熱が高く、また多量に塗布されるため、水溶性潤滑剤が金型に塗布されると、金型が冷却される。約450℃に昇温されたワークは、冷却された金型によって冷やされ、また金型に残った水の気化によって、さらに冷却される。これらの冷却によりワークの変形抵抗が高くなるため、圧縮工程の際、高い圧縮力が必要となる。さらに、複数段階の圧縮工程でワークを加工する場合には、水溶性潤滑剤を塗布しワークを圧縮した後、ワーク材料を再度昇温し、再度ワークを圧縮する必要があり、工程数の増加により、作業が煩雑になっていた。
一方、特許文献4,5は、プレス加工、冷間鍛造加工等に用いられる塑性加工用潤滑油組成物に関するものである。特許文献4,5の塑性加工用潤滑油組成物には、潤滑性を高めるため、炭素数6以上のカルボン酸の二価又は三価の金属塩が用いられている。
また、特許文献6は、アルミニウム合金板材用潤滑組成物に関するもので、防錆のため、カルボン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等が用いられている。
特開昭55−139498号公報 特開昭58−84898号公報 特許第4764927号明細書 特開2001−348588号公報 特開2010−174252号公報 特開2007−211100号公報
本発明は上記事情を鑑みてなされたものであり、作業環境に配慮しつつ、圧縮工程終了時まで、ワーク及び金型の温度を高く保つことを目的としており、特に、200℃以上の金型に対して少量の潤滑油を塗布した場合でも、適切な油膜が金型上に付着し、金型の温度低下を防止できる油性潤滑油と、この油性潤滑油を静電塗布する潤滑油の塗布方法を提供することを目的とする。
本発明に係る油性潤滑油は、70℃〜170℃の範囲の引火点を有し、石油系飽和炭化水素溶剤と、1質量%を超えるアジピン酸塩と、6質量%未満の沈降防止剤と、分散剤とを含み、黒鉛の含有量が5質量%未満(0質量%を含む)であることを特徴とする。
本発明に係る潤滑油の塗布方法は、油性潤滑油及び水を含む組成物を静電塗布することを特徴とする。
本発明によれば、200℃以上の金型でも優れた潤滑性を示す油性潤滑油と、この油性潤滑油を静電塗布する潤滑油の塗布方法を提供することができる。
第1の実施形態の据え込み式摩擦力評価方法に用いるプレス機の圧縮前の状態を示す概略図である。 第1の実施形態の据え込み式摩擦力評価方法に用いるプレス機の圧縮完了後の状態を示す概略図である。 第1の実施形態における摩擦係数を算出するための円柱試験片の摩擦せん断係数校正図である。
(第1の実施形態)
第1の実施形態によれば、70℃〜170℃の範囲の引火点を有し、石油系飽和炭化水素溶剤と、1質量%を超えるアジピン酸塩と、6質量%未満の沈降防止剤と、分散剤とを含む油性潤滑油が提供される。まず、高温付着性及び少量塗布化と、ワーク及び金型の冷却低減性について説明する。
(高温付着性及び少量塗布化)
水自体のライデンフロスト温度は、約160℃である。水溶性潤滑剤の主成分は水分であり、油脂等を配合した水溶性潤滑剤であっても、ライデンフロスト温度は、180〜200℃程度である。そのため、200℃以上の高温の金型へ水溶性潤滑剤を付着させることが困難である。その対策として、予め金型の温度を150〜180℃に設定している。部分的に金型の温度が高い場合には、このライデンフロスト現象により水溶性潤滑剤が金型に付着しないため、水溶性潤滑剤を多く塗布し、金型を冷却している。そのため、水溶性潤滑剤の塗布量は大幅に増大してしまう。
これに対し、実施形態に係る油性潤滑油は、石油系飽和炭化水素溶剤を含むため、ライデンフロスト温度を300℃以上にすることができる。そのため、突沸する温度を高くすることができる。従って、金型の設定温度を200℃〜300℃に高めても、金型に油性潤滑油を付着させることができるため、200℃以上の金型で潤滑性を有する油性潤滑油を実現することができる。また、200℃以上の高温の金型に対する付着性が高いので、水溶性潤滑剤と比較して金型への塗布量を減らすことが可能となる。
(ワーク及び金型の冷却の低減)
水は気化熱が高く、水が気化する際の吸熱エネルギーは大きい。水の気化熱は、539cal/gである。これに対し、石油系飽和炭化水素の気化熱は、80〜85cal/gである。よって、石油系飽和炭化水素を含む油性潤滑油の単位重量当たりの冷却性は、水を主成分とする潤滑剤と比較して、約1/6である。そのため、金型に油性潤滑油を塗布した際のワーク及び金型の冷却を低減できる。また、上述の通り、実施形態の油性潤滑油は、高温付着性が高く、少量塗布が可能となるので、さらにワーク及び金型の冷却を低減することが可能となる。
金型の冷却を抑えることにより、複数段階の圧縮工程でワークを加工する場合には、ワーク材料を再度昇温する必要がなくなる。そのため、サイクルタイムを大幅に短縮することが可能となる。また、金型の冷却を抑えることにより、ワークを柔らかく、変形抵抗を小さく抑えることが可能となる。そのため、圧縮工程時の圧力を低減することができる。これにより、高圧力のプレス機が必要であった工程でも、比較的低圧縮力のプレス機に変更することができ、ダウンサイジング化が可能となる。
また、アジピン酸塩を油性潤滑油に含むことにより、200℃以上での金型でも安定的な潤滑性を維持し、所望の潤滑性を保つことができる。金型に形成されるアジピン酸塩の皮膜は、比較的柔らかいものであることが期待できる。そのため、金型に吸着した皮膜が、ワークの表面拡大に伴って、拡がる性質(皮膜追従性)を高くすることができる。その結果、膜切れによる焼付きを防止することが可能となる。
実施形態に係る油性潤滑油は、引火点が70℃以上170℃以下であるため、室温では引火せず、火災等の危険を少なくすることができる。また、金型への塗布量を少なくすることができるので、オイルミストの影響を少なくすることができ、排液も生じない。そのため、作業環境が改善され、排水処理装置等の設備も不要になる。
さらに、油性潤滑油に配合する添加剤を調整することで、ライデンフロスト温度をさらに高くすることができる。それによって、油性潤滑油のライデンフロスト温度を400℃以上にすることが可能となる。また、油分は表面張力が低く、塗布膜を薄く広げることが可能である。よって、実施形態の油性潤滑油は、少量塗布でも高温付着性に優れている。
また、実施形態の油性潤滑油の電気抵抗値を5〜400MΩの範囲に調整することによって、油性潤滑油を金型に静電塗布することが可能になるため、静電効果によってさらに付着性を高めることができる。その結果、金型への塗布量を水溶性潤滑剤と比較して、大幅に減らすことができる。これにより、金型の冷却を抑えることが可能となり、また、石油系飽和炭化水素溶剤は、水に比べて潜熱が低いので、さらに金型の冷却を抑えることができる。
以下、第1の実施形態の油性潤滑油について、詳しく説明する。
第1の実施形態の油性潤滑油は、炭素鋼、合金鋼などの鉄鋼材料及びアルミニウム、マグネシウムまたはこれらの各元素を含む合金等の非鉄材料を鍛造(例えば、熱間鍛造、温間鍛造)する際に用いることができる。
油性潤滑油について
引火点は、油性潤滑油を使う作業所の気温以上である必要がある。43℃の引火点を有する灯油を用いた油性潤滑油でもまだ火災の危険は残る。そのため、この灯油の引火点よりもさらに引火点の高い70℃以上であることが好ましい。また、油性潤滑油は、乾燥性が高いものが望ましい。乾燥性が低く、金型に残ってしまうと、油性潤滑油が垂れ流れ、塗布膜の厚さにムラが生じ、焼付きや寸法精度ばらつきの原因となってしまう。速乾性のペンキのように揮発速度の速い油性潤滑油、つまり、適度な揮発性を有する170℃以下の引火点が好ましい。よって、油性潤滑油の引火点は70℃〜170℃の範囲であることが好ましい。
油性潤滑油の塗布方法として、刷毛塗り、ローラー塗り、スプレー装置による塗布等を挙げることができる。刷毛塗り、ローラー塗りは、厚く塗るためには有効であるが、厚さムラになりやすい。よって、スプレー装置で塗布するのが好ましい。スプレー装置にて塗布する場合、油性潤滑油の40℃における動粘度を2〜40mm/sの範囲にすることが望ましい。これは以下の理由によるものである。40℃における動粘度が2mm/s未満では、噴霧用ポンプを摩耗してしまう恐れがある。また、40℃における粘度が40mm/sを超える場合には、適正に噴霧できなくなってしまう恐れがある。よって、40℃における動粘度は、2〜40mm/sの範囲にするのが好ましい。
本発明の油性潤滑油は、前述の通り、鍛造の中でも熱間鍛造及び温間鍛造に用いることができる。加熱された金型で皮膜形成する材料を使用するので、本発明の油性潤滑油は、金型の金属素地との密着性が高く、かつ充分な潤滑性が得られる。
冷間鍛造の場合、一般に金型温度が常温であるため、皮膜は形成されにくい。そのため、本発明の油性潤滑油は、冷間鍛造に適さない。
冷間鍛造では、ワークや金型の金属素地に、潤滑成分の皮膜を形成するのが困難である。そのため、一般に、ボンデ処理をワークに施している。ボンデ処理とは、ワークの金属素地の上にリン酸塩皮膜を形成させ、さらにそのリン酸塩皮膜の上に金属石鹸皮膜を形成させる処理である。このボンデ処理は、洗浄等も含めて約9工程必要であり、作業が煩雑である。またボンデ処理は、排液が多く、環境負荷が大きい。本発明では、金型にスプレーする1工程のみである。また本発明は、排液がなく、環境負荷が少ない。
また、他の金属加工油との性能上の違いを、以下簡単に説明する。
油性潤滑油を用いる金属加工としては、旋盤、ドリル等を用いる切削加工や、鍛造や圧延加工等の塑性加工などが挙げられる。
切削加工とは、被加工材を削り取る加工法である。切削加工では、削られてできた新生面や被加工材が摩擦によって高温になる。そのため、新生面と切削工具間の潤滑や焼付き防止、及び冷却するために、水溶性の切削剤が用いられている。
塑性加工とは、被加工材を高圧力で押し、成形する方法である。塑性加工では、被加工材の金属分子同士のズレに起因して新生面ができ、被加工材が圧力によって高温となる。そのため、新生面と工具間の潤滑や焼付き防止、及び冷却するために、塑性加工油が用いられている。例えば、片方あるいは両方のローラーの間を通ることによって被加工材(金属板)が圧縮される圧延加工では、加工中常に圧延油が供給される状態となっている。それによって、被加工材やローラーの温度上昇を抑える。ただし、比較的やわらかい金属材料のみしか、圧延加工をすることができない。
本発明の油性潤滑油は、冷却性を低減し、ワーク及び金型の温度を高く保つことを目的としており、切削剤、塑性加工油、圧延油のように冷却性を求めているわけではない。
また、本発明の油性潤滑油を用いる鍛造は、金型が閉じている間は油性潤滑油を供給することができない。そのため、圧延加工と異なり、油性潤滑油の供給は、大幅に制限される。その結果、新生面では潤滑膜が不足し、焼付きが発生しやすい。したがって、可能な限り新生面へも潤滑膜が移動する性能、すなわち高い皮膜追従性が要求される。また、比較的硬い金属材料にも対応する必要がある。
下記の通り、第1の実施形態の油性潤滑油の配合組成(構成)、及び静電塗布を可能にするための添加剤について、後述する実施例の試験結果等に基づき、より詳細に説明する。
(1)石油系飽和炭化水素溶剤
溶剤は、金型に油性潤滑油を塗布した後、金型面で蒸発する必要がある。これにより、有効成分の乾燥皮膜を形成し、潤滑性を確保する。蒸発性が低く、蒸発残分が出るような溶剤を使用した場合には、垂れ流れにより潤滑性に悪影響が出る。よって、蒸発範囲の狭い溶剤が好ましい。また、作業者の健康障害を考えると、飽和炭化水素含有量が高く、硫黄、窒素分を極端に低く抑えた高い精製度の石油系飽和炭化水素溶剤が好ましい。
石油系飽和炭化水素溶剤としては、炭素数10以上の常温で液体である飽和炭化水素が好ましい。具体的には、デカン、ドデカン、オクタデカン等のアルカンの石油系飽和炭化水素溶剤が挙げられる。なかでも、火災の危険と金型面上での乾燥性の観点から、炭素数12〜16の石油系飽和炭化水素溶剤であることが好ましい。用いる石油系飽和炭化水素溶剤の種類は、1種類或いは2種類以上にするのが好ましい。
油性潤滑油の引火点を低くすると、乾燥性が良く、強固な塗布膜を形成することができるが、引火の危険性が高まる。一方、油性潤滑油の引火点が高ければ、引火の危険性は減る。しかし、乾燥性が低下し、塗布膜は見掛け上厚くなるが、強固な塗布膜を形成することができない。また、過剰に塗布された油性潤滑油が熱により垂れ流れ、ムラのある油膜の原因となる。よって、石油系飽和炭化水素溶剤の引火点は70℃以上170℃以下であることが好ましい。
石油系飽和炭化水素溶剤は、油性潤滑油の中で最も多い成分、すなわち主成分であることが好ましい。具体的には、石油系飽和炭化水素溶剤の濃度は、50〜98質量%の範囲が好ましい。これは次のような理由によるものである。50質量%より少なくなると、金型面上での乾燥性が低下する恐れがある。一方、98質量%より多くなると、金型面上での塗布膜が薄くなるため、油性潤滑油の潤滑性が低下する恐れがある。よって、50〜98質量%が好ましい。さらには、60〜95質量%であることが好ましい。
(2)アジピン酸塩
アジピン酸塩は、加熱された金型に塗布されることにより、融解し皮膜を形成することが可能である。また、アジピン酸塩は、摩擦係数が小さく、耐熱性が高く、かつ皮膜追従性の高い皮膜を形成することが期待される。金型に形成されたアジピン酸塩を主成分とする皮膜は、昇温されたワークと接触することにより、一部が液体化し、他が熱分解残渣となる。そのため、アジピン酸塩の皮膜は、流体潤滑と皮膜潤滑とを合わせた潤滑作用を有する。金型温度を上昇させることにより、アジピン酸塩の皮膜から分解ガスが発生し、さらに潤滑作用が高くなることが期待される。
アジピン酸塩以外の脂肪酸塩でも、充分効果を発揮するものがあり、また、相乗効果が期待できる。よって、油性潤滑油には、アジピン酸塩と併せアジピン酸塩以外の脂肪酸塩を、含有させることができる。例示すると、脂肪酸塩中のカルボン酸には、モノカルボン酸、ジカルボン酸、及びトリカルボン酸以上のその他多価のカルボン酸が含まれる。モノカルボン酸としては、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、ベヘン酸、モンタン酸、安息香酸、サリチル酸等が挙げられる。アジピン酸はジカルボン酸の一種である。アジピン酸以外のジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、酒石酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が挙げられる。その他の多価カルボン酸としては、リンゴ酸、クエン酸が挙げられる。モノカルボン酸塩よりもジカルボン酸塩のほうが、金型の金属素材への吸着力が強く、皮膜形成しやすい。よって、ジカルボン酸塩あるいはトリカルボン酸塩等の2価以上のカルボン酸塩が好ましい。ジカルボン酸塩の中でもアジピン酸塩がさらに好ましい。
また、脂肪酸塩のアルカリ成分としては、アルカリ金属類やアルカリ土類金属類などが挙げられる。代表的なものに、ナトリウム、カリウム、リチウム、マグネシウム、カルシウムが挙げられ、その他に、銅、アンモニウムなどがある。実施形態で使用しているアジピン酸ソーダ(ナトリウム)は、アルカリ金属塩である。これら脂肪酸塩の中で脂肪酸アルカリ金属塩が好ましく、脂肪酸ナトリウム塩がさらに好ましい。
脂肪酸塩の融点が高い場合には、金型に塗布した際、粉体のまま存在し、ポリマー化しないため、皮膜が形成されない。また、融点が低い場合には、強固な皮膜が形成されず、一般に沸点も低いため、鍛造成形を行う前に皮膜が分解してしまう。よって、脂肪酸塩の融点は、100〜300℃が好ましく、150〜250℃がさらに好ましい。
また、これら脂肪酸塩を1種類或いは2種類以上混合して使用するのが好ましい。
油性潤滑油中にアジピン酸塩を20質量%以上配合しても、一定以上の高温潤滑性の効果が得られ難い。また、素材によっては、カジリが生じる。また、油性潤滑油中のアジピン酸塩を1質量%以下とすると、焼付きが生じる。よって、油性潤滑油にアジピン酸塩を1質量%より多く含むことが望ましい。より好ましい範囲は、1質量%より多く、20質量%以下の範囲であり、さらに好ましい範囲は2〜20質量%であり、最も好ましい範囲は5〜15質量%である。
(3)黒鉛
実施形態の油性潤滑油は、少量塗布が可能であるため、黒鉛を含有しても作業環境悪化等の弊害が少ない。また、黒鉛は、化学的に安定であり、人体に対する毒性が比較的低い。また、黒鉛は、高温に強く、500℃以上でも安定しており、金型面では、固体として存在している。これにより、潤滑性や皮膜追従性をさらに高めることができる。油性潤滑油の潤滑性や皮膜追従性をさらに向上させるために、油性潤滑油に、さらに黒鉛を含むのが好ましい。ただし、黒鉛を多量に配合すると、粉塵等で作業環境を悪化する恐れがあるので、極力配合量を減らし、場合によっては配合しないほうが好ましい場合もある。また、黒鉛を5質量%以上配合すると流動性が悪くなる恐れがある。よって、黒鉛を5質量%未満含む(0質量%を含む)のが好ましく、黒鉛を0.5質量%以上5質量%未満含むのがさらに好ましい。最も好ましい範囲は、0.5〜4質量%である。
黒鉛としては、土状黒鉛、鱗状黒鉛が挙げられる。この中でも、鱗状黒鉛を含むのが好ましい。鱗状黒鉛の構造は、六角板状結晶で、多層構造となっている。層と層の間の結合力は弱いため、層状に剥がれるへき開性が高い。これにより、潤滑性や皮膜追従性をさらに高めることができる。使用する黒鉛の種類は1種類あるいは2種類以上にすることができる。
(4)沈降防止剤
アジピン酸塩、黒鉛は、難油溶性であり、石油系炭化水素の溶剤に投入しても、分散せずに沈降し、場合によってはハードケーキ化してしまう。そのため、長期的な品質を保つのが難しい。溶剤中にアジピン酸塩を分散させ、品質を安定化させるために、さらに沈降防止剤を含むのが好ましい。沈降防止剤を配合することによって、数か月後に使用してもスプレー性が安定し、アジピン酸塩が金型に均等に行き渡り、金型全体の潤滑性が向上する。
沈降防止剤としては、高級脂肪酸アマイド、高級脂肪酸エステルなどが挙げられる。後述の実施例に示す通り、沈降防止剤を6質量%以上配合すると、潤滑性を阻害し、焼付きの原因となる。よって、沈降防止剤は、6質量%未満含むのが好ましい。潤滑性能を維持するために、沈降防止剤を2質量%以上6質量%未満含むのがより好ましく、2〜5質量%含むのがさらに好ましい。使用する沈降防止剤の種類は1種類あるいは2種類以上にすることができる。
(5)分散剤
アジピン酸塩は凝集しやすい。このため、油性潤滑油は、さらに分散剤を含むのが好ましい。分散剤によって、アジピン酸塩をオブラートに包み、分散性を向上させる。また、分散剤を5質量%を超える量配合すると、荷重が増加し、カジリの原因となる。よって、分散剤を5質量%以下含むのが好ましい。分散剤を含むことによって、スプレー性が安定する。また、3質量%を超える量では潤滑効果を阻害する恐れがあるため、1質量%以上3質量%以下の分散剤を含むのがさらに好ましい。さらに好ましい範囲は1〜2質量%である。分散剤としては、高分子型分散剤、低分子(界面活性剤)型分散剤、無機型分散剤が挙げられる。高分子型分散剤としては、ポリカルボン酸やその塩類、脂肪酸ポリエステル、高分子量不飽和酸エステル、変性ポリウレタン、変性ポリエステル、変性ポリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル系共重合体、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルカノールアミン等が挙げられる。また、低分子型分散剤としては、アルキルスルホン酸系、四級アンモニウム系、高級アルコールアルキレンオキサイド系、多価アルコールエステル系、アルキルポリアミン系などが挙げられる。無機型分散剤としては、ポリリン酸塩系等が挙げられる。この中でも、石油系飽和炭化水素溶剤にアジピン酸塩を分散させるには、非水系高分子型分散剤が好ましい。特に、アクリル系共重合体の高分子分散剤や、油脂とジエチレントリアミンの反応物である分散剤がさらに好ましい。これらの分散剤を1種類或いは2種類以上混合して使用するのが好ましい。混合することで分散性をさらに高めることができる。また、更に黒鉛を添加する場合には、分散剤を混合して使用するのが好ましい。
(6)静電塗布を可能にするための添加剤
本願の発明者らによる鋳造用油性離型剤の静電塗布技術(特許文献3)を用いることにより、実施形態の油性潤滑油の静電塗布が可能になる。これにより、油性潤滑油の付着性が大幅に向上するため、複雑になりつつある金型の隠れた部位や凹凸部位あるいは細い部位にも、油性潤滑油を過剰に塗布することなく十分な油膜を形成することが可能となる。
石油系飽和炭化水素溶剤は、極性がなく、導電性がない。そのため電気抵抗値が無限大である。したがって、そのままでは静電塗布には適さない。静電塗布を行うには、静電装置の設計上、電気抵抗値が5〜400MΩである油性潤滑油であることが好ましい。電気抵抗値を5MΩ未満にすると、油性潤滑油に帯電せずに、装置側にリークしてしまい、静電効果がなくなってしまう。また、400MΩを超えると、電気抵抗値が高すぎて帯電しにくい。
アジピン酸塩を含む実施形態の油性潤滑油に、分散剤あるいは他の添加剤を添加することにより、後述の実施例で示すように、電気抵抗値は低下する。しかし、これだけでは所望の電気抵抗値に満たない可能性がある。最適な電気抵抗値とするために、極性を有する可溶化剤を油性潤滑油に含有させるか、あるいは、蒸留水、イオン交換水、水道水、及び、各種の水に電解質を混合した液体よりなる群から選択される少なくとも1種を油性潤滑油に含有させることが好ましい。蒸留水、イオン交換水、水道水、各種の水に電解質を混合した液体は、難油溶性であるため、石油系飽和炭化水素溶剤と相溶せず、分離してしまう。そのため、油性潤滑油の品質を安定させるために、極性を有する可溶化剤を含むことが好ましい。極性を有する可溶化剤としては、アルコール、グリコール、エステル、エーテル、ケトン、乳化剤が考えられる。アルコール、グリコールは、水をよく溶かすが、石油系飽和炭化水素溶剤中では、分離を起こす可能性がある。また、エーテル、ケトン及びエステルは、作業者の健康を害するおそれがある。よって、これらの水類を極性の低い石油系飽和炭化水素溶剤に溶解するためには、この極性を有する可溶化剤は乳化剤であることが好ましく、親水基と親油基を併せ持つ非イオン型の可溶化剤であることがさらに好ましい。
HLB(Hydrophile-Lipophile Balance)とは、油や水の親和性の程度を表す値である。HLB値は0から20までの値を取り、0に近いほど親油性が高く、20に近いほど親水性が高くなる。つまり、HLBが5未満であれば水に溶けにくいが、油には溶けやすい。また、HLBが10を超えると水に溶けやすいが、油には溶けにくい。油性潤滑油の品質を安定させるためには、水溶性及び油溶性の両方が必要である。よって、HLBが5〜10の範囲の可溶化剤であることが好ましい。
この範囲に属する乳化剤タイプの可溶化剤であれば、いずれも使用できる。ただし、フェノール・エーテル型は、環境ホルモンの問題を疑われることが多い。よって、ソルビタン型の可溶化剤であることがさらに好ましい。
可溶化剤の配合量が多い場合には、鍛造時の潤滑性に悪影響があり、少なすぎても水類と石油系炭化水素とが溶けずに分離してしまう。よって、可溶化剤量の最適化が必要である。可溶化剤が0.3質量%未満では、充分な可溶化はされず、水と石油系飽和炭化水素溶剤とが分離する。また、可溶化剤が30質量%を超える場合には白濁してしまう。よって、可溶化剤を0.3〜30質量%含むことが好ましい。可溶化剤は、分散効果や潤滑性の悪影響を考慮すると、可溶化剤を0.8〜4.8質量%含むことがさらに好ましい。
可溶化剤自体も極性を有するので、電気伝導性を有する。よって、水類を添加することなく、この可溶化剤だけ添加することにより、所望の電気抵抗値にすることが可能である。よって、必ずしも、水を含む必要はない。また、水が7.5質量を超える場合には白濁し、ひどい場合には分離が安定せずに、時間経過とともに分離してしまう。したがって、水の量は、7.5質量%以下(0%を含む)にすることが好ましい。
水は単位質量当たりの導電性が高く、少量添加で高い静電効果を発揮する。また、可溶化剤を多く添加すると、潤滑性を阻害する。よって、可溶化剤の添加量を減らすために、水を添加するのが好ましい。また最適な電気抵抗値にするために、0.2質量%以上添加する必要がある。ただし、水分量を多くすると、ライデンフロスト現象により、油性潤滑油が突沸し、付着効率が急激に低下する。ライデンフロスト点が400℃になる水分量は、2質量%である。よって、水の量は、0.2〜2質量%にすることが、さらに好ましい。使用する水の種類は特に限定されるものではなく、例えば、蒸留水、イオン交換水、水道水、各種の水に電解質を混合した液体等が挙げられ、これらの中から選択される一種類または二種類以上を使用することができる。また、可溶化剤の量は水含有量の9倍以下とするのが好ましい。
(第2の実施形態)
第2の実施形態によると、第1の実施形態の油性潤滑油を含む組成物を静電塗布する潤滑油の塗布方法が提供される。第1の実施形態の油性潤滑油を含む組成物をスプレー装置を用いて金型に塗布することにより、油性潤滑油の高温付着性を向上することができ、200℃以上の金型に対して優れた潤滑性を示すことができる。さらに、付着性や潤滑性を高めたい場合には、静電塗布を行うのが効果的である。静電塗布装置を用いることにより静電効果を発生させることができる。その結果、いわゆる回り込み効果により金型の隠れた部位や凹凸部位あるいは細い部位にも、均質で、かつ、充分な塗布膜を形成することができる。さらに、金型面に形成した厚い塗布膜が、高温、高荷重条件に耐えることができる。そのため、潤滑性を大幅に増加させることができる。
(第3の実施形態)
第3の実施形態によると、第1の実施形態の油性潤滑油を用いて行う鍛造の方法が提供される。第1の実施形態に係る油性潤滑油を用いて鍛造を行うことにより、金型の冷却を抑えることが可能となる。大型製品を鍛造する場合、複数段階の圧縮工程でワークを加工することが多い。第1の実施形態の油性潤滑油は、金型に塗布された際に金型が冷却されるのを抑制することができるため、ワーク材料を再度昇温する必要がなくなる。そのため、サイクルタイムを大幅に短縮することが可能となる。また、金型の冷却を抑えることにより、ワークを柔らかく、変形抵抗を低く抑えることが可能となる。その結果、圧縮工程時の圧力を低減することができる。これにより、高圧力のプレス機が必要であった工程でも、比較的低圧力のプレス機に変更することができ、ダウンサイジング化が可能となる。
以下に、本発明の実施例及び比較例の油性潤滑油について詳細に説明する。なお、この発明は、以下の実施例そのままに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、実施例に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。実施例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更には、異なる実施形態となるよう構成要素を適宜組み合わせてもよい。
(A)製造方法
常温で、家庭用ミキサーに溶剤と分散剤などを所定量投入し、低速回転で約1分間、混合する。次に、アジピン酸ナトリウムを所定量投入し、中速回転で3分間混合する。その後、残りの成分を所定量投入し、中速回転で5分ほど撹拌することにより、鍛造用油性潤滑油を得る。
静電塗布用の油性潤滑油を製造する際は、上記の混合作業後、所定量の水と所定量の可溶化剤を追加する。その際、中程度の回転数で10分ほど攪拌する。
(B)試験方法
(B−1)据え込み式摩擦力評価方法
まず、据え込み式摩擦力評価方法に用いるプレス機について説明する。
図1に示す通り、プレス機は、上下方向に圧縮するための圧盤1を有する。この圧盤1の上下方向内側には、金型2がある。この金型2は、潤滑剤3を介してアルミニウム材(ワーク4)に接触する部分であり、高温・高圧力に耐える素材でできている。圧盤1の内部には、ヒータ1Aが内蔵されており、金型2を加熱することができる。また、下の圧盤1上の金型2の外側に、リニアスケール5が設けられている。このリニアスケール5は、圧縮完了時の高さを測定し、所定の圧縮率となった場合に、加圧を停止する信号を発信することができる。また、下の圧盤1の側部には、ロードセル6が設けられており、圧縮する際の荷重を測定することができる。
以下、本試験の操作手順を説明する。所定の寸法に切り出したワーク4を、電気炉(図示されていない)を用いて2時間、450℃まで加熱する。また、ヒータ1Aを用い、上下の金型2を300℃まで加熱する。ワーク4及び金型2を加熱後、上下の金型2に潤滑剤3(油性潤滑油)を塗布する。所定の温度に達したアルミニウム材4を、潤滑剤3が塗布された下の金型2の上に置く。プレス機のスイッチを入れると、下金型2が矢印方向に持ち上がり、ワーク4を圧縮する。圧縮率は、ワーク4として、A−2011材を用いる場合に77%に、A−4032材の場合は87%に、A−6061材の場合は77%に、リニアスケール5を用いて設定される。圧縮が完了すると、図2に示す通り、ワーク4の直径が広くなり、厚みが薄くなる。ロードセル6を用いて、圧縮完了時の荷重を計測する。
潤滑剤等の皮膜追従性が足りず膜切れをおこしている場合には、アルミニウム材(ワーク)の底面外周部分に、かじりが発生する。かじり評価は、アルミニウム材底面外周部分に対するかじり部分の面積の割合で評価した。半分以上のかじりは大、半分以下を小とし、目視にて判断した。
(B−2)摩擦係数の算出方法
静岡大学の中村教授が実施したコンピューターシュミレーション結果である「円柱試験片の摩擦せん断係数校正図(図3)」を用いて、圧縮完了前後のアルミニウム円柱の寸法から摩擦係数を算出する。なお、図3の校正図には、摩擦係数mが0.01〜1.0までのカーブが記載されている。図3のどのカーブがどの摩擦係数mに対応しているのかを明確にするため、摩擦係数mが0.01〜1.0までのカーブそれぞれにaからgまでのアルファベットを付与した。
本試験での算出条件は、以下の通りである。
初期のアルミニウム円柱の高さは40mmである。
圧縮率は、A−2011材の場合、77%に設定(図3のストロークは30.8mm)され、A−4032材の場合、87%に設定(図3のストロークは34.8mm)、A−6061材の場合、77%に設定(図3のストロークは30.8mm)された。
算出方法は、以下の通りである。
まず、圧縮後のアルミニウム円柱の半径Dをノギスで計測した後、摩擦係数を求める。A−2011材の場合、図3のX軸(ストローク)30.8mmと、Y軸の半径Dの交点を見出し、a〜gの曲線で区分が示された摩擦係数mのうち交点と一致した値を摩擦係数として読み取る。一方、A−4032材の場合、図3のX軸(ストローク)34.8mmと、Y軸Dの交点を見出し、a〜gの曲線で区分が示された摩擦係数mのうち交点と一致した値を摩擦係数として読み取る。精度が細やかではないので、0.05単位で読み取る。
(B−3)引火点の測定方法(ASTM D−93準拠)
油性潤滑油の引火点は、ASTM D−93 ペンスキーマルテン法で測定した。
(B−4)沈降防止性
直径約2cmの試験管に油性潤滑油試料を50cc採取し、2日間室温で保管した。沈降の状態を目視にて評価した。沈降せずに液が均一なものを「あり」、液の下層部へ成分が沈降し、液の上層部が澄んでいるものを「なし」とした。
(B−5)分散効果
油性潤滑油試料1滴をホイットマン3Cの濾紙に滴下し、そのにじみ方を目視にて評価した。にじみが広く1重の輪となったものを「あり」、2重の輪となったものを「なし」とした。分散性が悪い場合、2重の輪となる。中央部が粉体成分であり、外側が溶媒成分である。
(B−6)電気抵抗の測定法(ASTM D5682準拠)
100ccのビーカーに約50ccの油性潤滑油試料を採取し、旭サナック製の静電テスター(形式EM−III)にて電気抵抗を測定した。なお、測定値が高域では電気抵抗値の指示計が不安定であるので、5回測定の平均値を測定値とした。電気抵抗値が5〜400MΩの範囲内の場合には静電塗布を「可能」とした。また、電気抵抗値が5〜400MΩの範囲から外れている場合には、静電塗布を「不可」とした。
(B−7)試験条件
据え込み式摩擦力評価方法で用いた試験条件を表1に示す。
Figure 0005948272
(B−8)試験用のアルミニウム材
試験に使用したアルミニウム材を表2に示す。アルミニウム材は汎用性の高い3種類を選択した。
Figure 0005948272
(B−9)試験時の温度条件
試験時の温度条件について表3に示す。表2に記載の3種類のアルミニウム材ともに、同じ温度条件で試験を行った。但し、先行技術における金型の平均温度170℃と、本願により初めて実現された金型温度の300℃とを比較するため、比較例2のみ金型温度を170℃に設定した。
Figure 0005948272
(C)試験測定結果
(C−1)組成と試験結果
表4記載の比較例1,2は、他社製の代表的な鍛造用水溶性潤滑剤であり、比較例1の金型温度は300℃、比較例2の金型温度は170℃で評価した。また比較例3,4は、いずれも本願の出願人が製造する鍛造用水溶性潤滑剤を用いている。但し、比較例3で使用するアルミニウム材は、比較例4で使用するアルミニウム材と異なっている。
Figure 0005948272
但し、表4において、
*1:比較例1と比較例2:水溶性型鍛造油、商品名ユシロンフォーヂ3020ユシロ化学社
*2:比較例3と比較例4:商品名ACP-30(有効成分40%)の水溶性潤滑剤を水で10倍希釈。よって、希釈後の商品名ACP-30の有効成分は約4%である。青木科学研究所
(C−1−1)水溶性潤滑剤の付着性
表4に、比較例1−4の総合評価結果を示す。荷重、摩擦係数及びかじりを総合的に評価し、最も優れているものをAとし、次いで、B、C、Dの順とした。
比較例2に示す通り、金型温度が170℃に設定されている場合、水溶性潤滑剤は、荷重が低く抑えられており、かじりもない。このため、比較例2の総合評価はBであるが、比較例2と同じ配合である水溶性潤滑剤であっても、金型温度が300℃に設定された比較例1の場合には、かじりが大きく、かつ焼付きが発生し、総合評価はDになった。
比較例3と比較例4は、同じ水溶性潤滑剤で、別のアルミニウム材を用い、金型温度を300℃に設定して、試験を行った。アルミ素材の柔らかさによって摩擦係数は異なるものの、かじりが大きく、焼付きが発生した。総合評価はいずれもDであった。
これら比較例の試験結果から、次の点が言える。水溶性潤滑剤のライデンフロスト温度は、約180℃である。ライデンフロスト現象により水分の突沸が生じて、水溶性潤滑剤が300℃の金型に付着しない。そのため、皮膜が形成せず、焼付きが生じたものと考えられる。よって、水溶性潤滑剤は、300℃の金型には適用することができない。
(C−1−2)油性潤滑油の付着性及びアジピン酸塩の配合濃度
Figure 0005948272
但し、表5において、
*1:溶剤:商品名シェルゾールTM、C−14主体の直鎖型溶剤、シェル社。この溶剤は、炭素数14の常温で液体である石油系飽和炭化水素溶剤で、引火点は86℃である。
*2: 黒鉛:商品名A−5、鱗状黒鉛5μm,新越化学社
*3:アジピン酸塩:商品名 アジピン酸ソーダ、日東化成工業社
*4:沈降防止剤:商品名フローノンHR-4AFの高級脂肪酸アマイド、共栄化学社。
*5:分散剤:油脂とジエチレントリアミン反応物型 商品名EFKA-6220, ウイルバーエリス社
表5に、実施例及び比較例の総合評価結果を示す。荷重、摩擦係数及びかじりを総合的に評価し、最も優れているものをAとし、次いで、B、C、Dの順とした。
実施例1A〜4A及び1B〜4Bの油性潤滑油は、300℃の金型に対しても、かじりが小さいかあるいは無く、かつ荷重が低く抑えられている。その結果、評価はC以上となっている。実施例に使用されている主成分の溶剤は、高精製飽和系の石油系炭化水素である。この溶剤のライデンフロスト温度は、320℃であり、水溶性潤滑剤のライデンフロスト温度を大幅に超えている。これにより、実施例1A〜4A及び1B〜4Bの油性潤滑油を300℃以上の高温の金型に対しても、付着させることができる。
また、表4の比較例1〜4の水溶性潤滑剤の塗布量の20cc/回に対して、表5の実施例1A〜4A及び1A〜4Bの油性潤滑油の塗布量は、4cc/回である。よって、実施例1A〜4A及び1A〜4Bは、少量の塗布でも潤滑効果が充分高いことが言える。
表4の比較例3及び4中の有効成分量は4ccである。表5の実施例2A及び2Bの有効成分量は、0.42ccである。つまり、実施例の油性潤滑油は、水溶性潤滑剤の約1/10の有効成分量でも、水溶性潤滑剤以上の潤滑性能を有する。また、必要に応じて最小限まで塗布量を減らすことが可能である。また、ライデンフロスト温度は、各種添加剤を添加することにより、さらに高めることが可能である。これによって、さらに高温の金型に対しても付着させることが可能となる。
表5の実施例1A〜4A及び比較例5A,6Aは、アジピン酸塩の配合濃度に関し、潤滑性能である荷重、かじり及び摩擦係数を評価した。アルミニウム材はA−2011を用いた。
比較例5A,6Aは、アジピン酸塩の配合濃度を、それぞれ0質量%、1質量%とした。また、実施例1A〜4Aは、アジピン酸塩の配合濃度を、それぞれ2質量%、5質量%、10質量%、20質量%とした。比較例5A,6Aは、実施例1A〜4Aと比較して圧縮時の荷重が高くなっており、かじりが発生した。しかも、摩擦係数が1である。よって、比較例5A,6Aは、潤滑性が低いと言える。
一方、実施例1A〜4Aは、比較例5A,6Aと比較して荷重が低く、焼付きは発生しておらず、かじりも小さい。また、実施例1A〜4Aは、比較例5A,6Aと比較して摩擦係数が小さい。よって、実施例1A〜4Aは潤滑性が高いと言える。
実施例1B〜4B及び比較例5B、6Bは、アジピン酸塩の配合濃度に関し、荷重、かじり及び摩擦係数を評価した。アルミニウム材はA−4032を用いた。
比較例5B、6Bは、アジピン酸塩の配合濃度を、それぞれ、0質量%、1質量%とした。また、実施例1B〜4Bは、アジピン酸塩の配合濃度を2質量%、5質量%、10質量%、20質量%とした。比較例5B、6Bは、焼付きが発生しており、油性潤滑油として使用できない。
一方、実施例1B〜4Bは、装置の誤差で一部設定圧縮率に到達していないものがあるものの、焼付きが発生しておらず、かじりもほぼない。よって、実施例1B〜4Bは、潤滑性が高いと言える。
これらの結果を勘案すると、アジピン酸塩の配合濃度は、1質量%より多くすることが望ましく、1質量%より多く、20質量%以下の範囲が好ましい。また、実施例1A、1B及び4Bでは、実用上問題ないレベルではあるがかじりがあった。よって、汎用性が高く、より低い荷重、つまり高い潤滑性が必要な場合には、アジピン酸塩の配合濃度は5〜15質量%がさらに好ましい。
実施例3C、4Cは、アルミニウム材A−6061を用い、荷重、かじり及び摩擦係数を評価した。実施例3C、4Cは、焼付きが発生しておらず、かじりも少ない。
よって、実施例の油性潤滑油は、アルミニウム材を変更しても同じように潤滑性が高まるため、アルミニウム材に対する適応の幅が広いと言える。
Figure 0005948272
但し、表6において、
*1:表5と同じ原料を使用
*2:比較例7A,8A:ACHESON社製 OIL DAGを上記溶剤で10倍に希釈した試料(市場では、灯油で10倍希釈し、使用している)。沈降防止剤及び分散剤の配合量は不明であるため、ブランクとした。
(C−1−3)本発明の油性潤滑油と従来品である黒鉛入り鍛造油との比較
表6に油性潤滑油の引火点を示す。引火点は、表5の場合と同様な方法で測定した。
また、表5の実施例及び比較例で使用する金型の温度は、いずれも300℃とし、試験時の温度条件は表3の通りとした。
表6に、実施例及び比較例の総合評価結果を示す。荷重及び塗布可能な流動性を総合的に評価し、最も優れているものをAとし、次いで、B、C、Dの順とした。比較例7B,8Bは、荷重の測定を行わないため、総合評価結果をブランクにした。
表6の比較例7A及び比較例8Aは、市場で代表的な黒鉛入り鍛造油である。この鍛造油は、原液のままでは、スプレー塗布することができない。そのため、実施例の油性潤滑油に用いる溶剤(表5の溶剤*1)を使用し、10倍に希釈し試料とした。市販の鍛造油の黒鉛の濃度は10質量%である。よって、比較例7A,8Aの試料の黒鉛濃度は1質量%である。
実施例10〜12及び比較例7Aについて、アルミニウム材A−2011を用いて荷重を比較した。実施例10は、黒鉛が0質量%である。この実施例10は、比較例7Aよりも荷重が小さい。つまり、黒鉛非含有であっても、実施例の油性潤滑油は、黒鉛入り鍛造油よりも荷重が小さく、潤滑性が優れている。また、実施例11,12の結果に示すように、実施例10の油性潤滑油に黒鉛を添加することで、さらに荷重が小さくなった。
また、表5の実施例14〜16及び比較例8Aについて、アルミニウム材A−4032を用いて荷重を比較した。比較例8Aでは、焼付きが発生し、油性潤滑油として使用できない。これに対して、実施例14では、焼付きが発生しなかった。また、前記同様に、実施例15,16では、実施例14と比較して、荷重を小さくすることができている。
これらを勘案すると、実施例の油性潤滑油は、黒鉛非含有でも、比較例の黒鉛入り鍛造油よりも200℃以上の金型での潤滑性が優れていると言える。また黒鉛をさらに添加することで、潤滑性を向上することが可能とも言える。
(C−1−4)黒鉛の配合濃度
黒鉛入り鍛造油は、黒鉛の飛散や周辺機器等への付着という作業環境悪化の問題がある。また、黒鉛はスプレー装置の配管の詰まりの原因となる。よって、黒鉛の使用量は、少ない方が望ましい。しかし、金型の大型化・複雑化により、油性潤滑油の潤滑性能を高めてほしいとのニーズが多くある。
本発明の油性潤滑油は、高温付着性を高めることで、油性潤滑油の塗布量を大幅に抑えることが可能である。その結果、作業環境悪化や配管の詰まりといった問題は改善できる。また、少量の黒鉛を添加することによって、さらに潤滑性能を高めることができる。
表6の実施例10〜12及び比較例7Bは、黒鉛の配合濃度に関して、荷重及び塗布可能な流動性を評価した。アルミニウム材はA−2011を用いた。
実施例10〜12は、黒鉛の添加量を増やすことにより、荷重は小さくなり、潤滑性が向上する。また実施例10〜12は、いずれも塗布可能な流動性を有する。しかし、黒鉛を5質量%添加した比較例7Bは流動性が若干低下しており、試験に使用したスプレー装置であれば使用可能だが、他メーカーのスプレー装置では、詰まりが生じる可能性がある。
表6の実施例14〜16及び比較例8Bは、黒鉛の配合濃度に関し、荷重及び塗布可能な流動性を評価した。アルミニウム材A−4032を用いた。
実施例10〜12と同様に、実施例14〜16は、黒鉛の添加量を増やすことにより荷重は小さくなり、いずれも塗布可能な流動性を有する。黒鉛を5質量%添加した比較例8Bは、他メーカーのスプレー装置では、詰まりが生じる可能性がある。
これらを鑑みると、本発明の油性潤滑油は、5質量%未満の黒鉛を含む(0質量%を含む)のが好ましい。また安定したスプレー性と高い潤滑性のため、黒鉛を0.5質量%以上5質量%未満含むのがより好ましく、0.5〜4質量%黒鉛を含むのが、さらに好ましい。
Figure 0005948272
但し、表7において、
*1:表5と同じ原料を使用
*2:沈降防止剤:商品名フローノンHR-4AFの高級脂肪酸アマイド、共栄化学社(表5と同じ)
表6に油性潤滑油の引火点を示す。引火点は、表5の場合と同様な方法で測定した。
(C−1−5)沈降防止剤の配合濃度
手吹き、刷毛塗り、ローラー塗り等のように、油性潤滑油を攪拌後即使用する場合には、沈降防止剤を含む必要がない。しかし、スプレー塗布を行う場合には、油性潤滑油に沈降防止剤を含むのが好ましい。
表7の実施例20,21及び比較例9,10は、沈降防止性、荷重及びかじりを評価した。アルミニウム材はA−2011を用いた。表7の実施例及び比較例で使用する金型の温度は、いずれも300℃とし、試験時の温度条件は表3の通りとした。
沈降防止剤を6質量%配合した比較例10は、沈降防止効果がある。しかし、この沈降防止剤の影響で潤滑性が阻害され、かじりが発生した。比較例9の油性潤滑油は、石油系飽和炭化水素溶剤及びアジピン酸塩を含み、引火点が70℃〜170℃の範囲であるものの、沈降防止剤を含まないため、沈降を生じた。そのため、スプレー性が不安定となり、荷重及びかじりの測定ができなかった。よって、比較例9の油性潤滑油は、安定的な潤滑性が期待できない。
よって、油性潤滑油に6質量%未満の沈降防止剤を含むのが好ましい。また、実施例20,21は、沈降防止性を有し、荷重が低く高い潤滑性を有し、かじりは発生しなかった。したがって、スプレー塗布を行う場合には、油性潤滑油に2〜5質量%の沈降防止剤を含むのが好ましい。
Figure 0005948272
但し、表8において、
*1:表5と同じ原料を使用
*2:分散剤:アクリル系共重合体 商品名BYK361N、ビックケミ-ジャパン社
表8に油性潤滑油の引火点を示す。引火点は、表5の場合と同様な方法で測定した。
(C−1−6)分散剤の配合濃度
手吹き、刷毛塗り、ローラー塗り等のように、油性潤滑油を攪拌後即使用する場合には、前述の沈降防止剤同様、分散剤を含む必要はない。しかし、スプレー塗布を行う場合には、アジピン酸塩は凝集しやすいため、油性潤滑油に分散剤を添加するのが好ましい。また、分散剤を5質量%を超える量添加すると、潤滑性が阻害される。よって、油性潤滑油を分散剤に含有させる場合には、油性潤滑油に5質量%以下の分散剤を含むのが好ましい。
表8の実施例20,21及び比較例11は、アルミニウム材A−2011を用いて、分散剤の濃度に関し、分散効果と荷重を評価した。表8の実施例及び比較例で使用する金型の温度は、いずれも300℃とし、試験時の温度条件は表3の通りとした。
分散剤を含まない比較例11は、分散効果がなく、アジピン酸塩や黒鉛等は、約24時間後に凝集する。比較例11には沈降防止剤が含まれているが、分散性には影響がないため、凝集を防ぐには分散剤を別途添加する必要がある。凝集してしまう前に、金型にスプレーして比較例11の荷重を測定した。比較例11の荷重は、実施例20、21と比較しても高い。分散性が悪いと、圧縮時の荷重が高くなることが言える。また、2質量%の分散剤を含む実施例21の油性潤滑油は、1質量%の分散剤を含む実施例20よりも、圧縮時の荷重が高い。つまり、分散剤を多く添加すると、潤滑性が阻害され、圧縮時の荷重が高くなると言える。
よって、スプレー塗布を行う場合には、潤滑剤に、1〜2質量%の分散剤を含むのがさらに好ましい。
Figure 0005948272
但し、表9において、
*1:表5の実施例2Aの油性潤滑油
*2:水 水道水
*3:可溶化剤 アルコール系ノニオンとソルビタンモノオレートとアルキルベンゼンスルホン酸金属塩(カルシウム塩)の混合物 商品名 ニューカルゲン140、竹本油脂社。
(C−1−7)静電塗布を可能にするための電気抵抗値
本願の発明者らは、以前提案した鋳造用油性離型剤、塗布方法及び静電塗布装置(特許文献3)で、油性離型剤の静電塗布を可能にした。
この技術を活かし、本発明の油性潤滑油に対しても静電塗布を可能にすべく、試験をおこなった。
静電塗布が可能になることにより、金型の隠れた部位、凹凸部位あるいは細い部位に対しても、油性潤滑油を過剰に塗布することなく十分な油膜を形成することができ、付着効率を高めることが可能となる。
油性潤滑油の電気抵抗値が5MΩ未満の場合、静電スプレー装置の配管や周辺機器に電流が流れて(リークして)しまい、油性潤滑油に帯電しないため、静電効果がなくなってしまう。水溶性潤滑剤は電気抵抗値がほぼ0に近いため、潤滑剤に帯電せず、リークしてしまう。また、油性潤滑油の電気抵抗値が400MΩを超える場合、電気抵抗値が高すぎて帯電しにくい。したがって、静電塗布を行うには、静電装置の設計上、「電気抵抗値が5〜400MΩである油性潤滑油」であることが好ましい。実施例の油性潤滑油がこの電気抵抗値の範囲内か否か確認試験を行った。
表9に示す通り、実施例30〜34の油性潤滑油は、電気抵抗値が5〜400MΩの範囲内であり、いずれも静電塗布が可能である。ただし、実施例30は、電気抵抗値が高めであり、帯電量が小さく静電効果は低めと予想される。これに対し、実施例31〜34のように、実施例2Aの油性潤滑油に水及び可溶化剤を添加することにより、電気抵抗値が低くなる。その結果、静電効果はさらに高くなる。
本試験は、実施例2Aの配合で行っている。実施例2Aの配合では、アジピン酸塩や分散剤が含まれており、所定の電気抵抗値の範囲内となっている。分散剤の種類や極性を有する組成物等の配合量が少ない場合には、電気抵抗値が所定範囲外となることがある。油性潤滑油に、必要に応じて、水及び/或いは可溶化剤を添加し、所定の電気抵抗値にすることが好ましい。電気抵抗値は、液体の状態によっても大きく変動する。例えば、液体の分離や白濁が生じている場合には、電気抵抗値が大きくなる傾向にある。油性潤滑油の状態を均一に保つために、分散剤や可溶化剤を適量配合するのが好ましい。
本発明の油性潤滑油は、200℃以上の高温金型に対する付着性が高く、少量での塗布が可能である。また200℃以上での金型でも安定的な潤滑性を維持し、所望の潤滑性を保ち、かつ皮膜追従性が高い。また、少量塗布のため作業環境性が高い。
金型の冷却を抑えることが可能になるので、複数段階の圧縮工程でワークを加工する場合には、ワーク材料の再度昇温が不要になり、サイクルタイムを大幅に短縮することが可能となる。また、ワークを柔らかく、変形抵抗を低く抑えることが可能となるため、圧縮工程時の圧力を低減することができ、高圧力のプレス機が必要であった工程でも、比較的低圧力のプレス機に変更することができ、ダウンサイジング化が可能となる。
本発明の油性潤滑油は、鍛造をする際の金型表面を潤滑するのに適しており、特に熱間鍛造や温間鍛造といった高温の金型を潤滑するのに適している。また、少量塗布かつ自動連続スプレーをすることに適している。
1…圧盤、1A…ヒータ、2…金型、3…潤滑剤、4…アルミニウム材、5…リニアスケール、6…ロードセル。

Claims (3)

  1. 70℃〜170℃の範囲の引火点を有し、石油系飽和炭化水素溶剤と、1質量%を超えるアジピン酸塩と、6質量%未満の沈降防止剤と、分散剤とを含み、黒鉛の含有量が5質量%未満(0質量%を含む)であることを特徴とする油性潤滑油。
  2. 5〜400MΩの範囲の電気抵抗値を有することを特徴とする請求項1に記載の油性潤滑油。
  3. 請求項1〜のいずれか1項に記載の油性潤滑油及び水を含む組成物を静電塗布することを特徴とする潤滑油の塗布方法。
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