JP4935207B2 - 金属板の冷間圧延方法 - Google Patents

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Description

本発明は、金属板の冷間圧延方法に関するものであり、クーラント循環供給方式におけるクーラントのロングライフ化や原単位向上を達成しつつ、従来のエマルションタイプの潤滑剤と同等以上の潤滑性を確保し、さらに優れた冷却性によって高速圧延において発生しやすいヒートスクラッチを防止することが可能な冷間圧延方法を提供するものである。
冷間圧延では、圧延ロールと金属板の潤滑および冷却の2つの機能が重要である。潤滑は、ワークロールと金属板との間(ロールバイト)の摩擦係数を下げて、圧延荷重を低減するものであり、冷却は、ロールバイトでの摩擦発熱や加工発熱によって圧延ロールや金属板の温度が過度に上昇しないようにするために必要である。
このような潤滑機能と冷却機能を発揮させるために、鋼板などの金属板の冷間圧延では、鉱物油、天然油脂、合成エステルなどの不水溶性油剤(圧延油)を界面活性剤で水に分散・希釈化したエマルションがクーラントとして用いられている。このエマルションは、圧延油が1〜5mass%程度の濃度で且つ平均粒径5〜15μm程度の油滴として含まれるO/W型(水中油滴型)のものであり、潤滑性能と冷却性能とを兼ね備えたクーラントとして使用することができる。
このようなエマルションタイプのクーラント(以下、主に“エマルション圧延油”という)は、クーラントタンクから圧延部(金属板や圧延ロール)に供給されるが、圧延油の使用量の低減及び廃液量の低減のために、循環使用されるのが通常であり、これを循環給油方式(リサーキュレーション方式)と呼ぶ。
エマルション圧延油は、金属板や圧延ロールにスプレー供給されると、金属板表面やロールバイト入口において水が排除されながら油膜が形成され(このような現象をプレートアウトと呼ぶ。)、このようにして形成された油膜がロールバイトにおける潤滑性を向上させる。すなわち、ロールバイトに導入される油膜が厚いほど潤滑性は向上し、硬質の金属板であっても高圧下の圧延が可能となる。
このようなエマルション圧延油を用いる場合の潤滑性能を向上させる技術として、例えば、特許文献1には、圧延油を所定温度以上にして供給することで、プレートアウト性能を向上させる方法が示されている。
しからながら、圧延油の温度を上げることは、クーラントとしての冷却性能を低下させることになるため、潤滑性と冷却性を両立させることは必ずしも容易ではない。
これに対して、潤滑と冷却との機能分離を行うハイブリッド潤滑システムにおいては、主として冷却機能を確保するための循環系クーラントと潤滑のためのクーラントとを別系統にすることができるので、特許文献2に示されるように、循環系のクーラントの温度を潤滑用に用いるハイブリッド液の温度よりも低くすることで、冷却効果を増大させることが可能となる。
特開2000−218305公報 特開平9−122733公報
近年の環境問題に対する認識の高まりに伴い、潤滑剤のロングライフ化や廃液量の削減に対するニーズが高まりつつあり、そのような観点からは、クーラントを循環使用するリサーキュレーション方式が重要な役割を果たしていくものと考えられる。
しかし、クーラントを循環使用する方式については、いずれもエマルション圧延油を使用していることから、以下に述べるような種々の問題が生じている。
第1の問題は、エマルション圧延油を使用した場合、フィルターロス、スカムアウト、ヒュームロスなどが潤滑剤の消費量を増大させる点である。
フィルターロスは、冷間圧延によって発生する摩耗粉などの固形物粉がエマルションに取り込まれ、これをフィルターによって分離除去した場合に、エマルション中の油滴もフィルターに捕捉されてしまうために生じる。スカムアウトは、摩耗粉などの固形物粉がエマルションの油滴中に抱き込まれ、圧延油の劣化物との混合物であるスカムが発生することにより生じる油分のロスである。また、ヒュームロスは、特に流動点の高い天然油脂を使用する場合には、クーラント全体の温度を50〜60℃程度まで加熱して循環使用しており、これによって生じるフュームに油分が含まれているために生じるロスである。
これらは、エマルション圧延油を使用する場合には、本質的な解決が困難な課題であり、基油の種類や粘度の選定、界面活性剤の種類や添加量の最適化などの対策がとられているものの、根本的な解決には至っていない。
第2の問題は、エマルション圧延油はクーラント中に含有する鉄分や温度、pHなどの要因によって乳化安定性が変化しやすいため、循環使用する際の圧延潤滑性を一定に維持するためには、エマルション圧延油の管理に多大な労力を要する点である。例えば、エマルション圧延油の濃度、温度、ケン化価、酸価、pHなどを、循環使用中にサンプリングしたクーラントを用いて定期的に分析し、その結果に応じて、エマルション圧延油の状態を一定に保つように管理する必要がある。また、鉄粉除去装置などのフィルター設備や、クーラントの状態を管理するための各種計測器も必要となり、それらの維持・管理にも多大な労力を要する。
第3の問題としては、エマルション圧延油は、冷却のために圧延ロールや金属板にスプレーされるのが通常であるが、エマルション中の油分がロール表面などに油膜を形成していくため、冷却効果が阻害されるという問題がある。
これに対して冷却効果を向上させるためには、特許文献2に示されるようにエマルション圧延油の温度を低下させるのが有効であるが、圧延油の劣化成分が摩耗粉などの固形物粉と混合体を形成してスカムを生成すると配管中での詰まりを生じたりするため、エマルション圧延油は一定以上の温度に維持する必要があり、エマルション圧延油の温度を低下させて冷却性能を向上させるのにも一定の限界がある。
第4の問題は、エマルション圧延油を使用する場合に解決困難な問題として、冷間圧延に際して、金属板表面からの剥離によって圧延ロールに付着した金属異物が、ワークロールとバックアップロールとの間に噛み込まれたり、ロールバイトに飛び込んだりして、ワークロール表面に疵が形成されやすい点が挙げられる。このようにしてワークロール表面に疵が形成されると、それが金属板の表面に転写され、表面欠陥として歩留りを大幅に低下させる原因ともなる。
以上のようにエマルション圧延油を使用した循環給油方式には、従来技術では解決できない種々の問題点がある。
一方、調質圧延のように、軟質化した鋼板を軽圧下で圧延する場合には、優れた潤滑性は必要なく、逆に安定した伸長率を得るためには摩擦係数は高いことが要求される。このため湿式の調質圧延では、水溶性の物質を水に溶解させたソリューションタイプのクーラント(調質圧延液)が使用されている。
このようなソリューションタイプのクーラントは、潤滑成分自身が水への溶解性を示すため、エマルション圧延油のような大きな油滴を形成しない。したがって、冷間圧延において発生する摩耗粉などの固形物粉とはすぐに分離し、クーラント中から固形物粉を除去することが極めて容易となって、フィルター設備の簡易化も可能である。また、固形物粉を油分中に抱き込むこともないため、スカムの生成によるロスが極めて少なく、さらに、常温で使用することが可能であるためヒュームロスも少ない。また、洗浄性にも優れているため、圧延後に金属板上に残留する潤滑成分が極めて少なく、鋼板による持ち出しロスも低減できる。
しかしながら、調質圧延に用いられているような従来のソリューションタイプのクーラントは、エマルション圧延油に較べて潤滑性が著しく劣ることから、通常のタンデム圧延などの冷間圧延に使用することは困難であると考えられてきた。このため従来では、タンデム式圧延機やレバース式圧延機などの圧下率を大きくとる冷間圧延では、潤滑性に優れたエマルション圧延油が使用され、調質圧延のように伸長率が5%以下の軽圧下域では、摩擦係数が高いソリューションタイプのクーラントが使用されており、圧延条件に応じて両者は明確に使い分けられている。
なお、特許文献3は、調質圧延であっても圧下率20%程度の高圧下を行うためのソリューションタイプの調質圧延液が開示されているが、この調質圧延液は焼鈍後の軟質化された鋼板の1パス圧延には適用できても、タンデム圧延やレバース圧延のような多パス圧延において加工硬化が生じるような厳しい圧延条件においては十分な潤滑性を得ることができない。
特開昭61−7395号公報
したがって本発明の目的は、以上のような従来技術の課題を解決し、クーラント循環供給方式におけるクーラントのロングライフ化、原単位向上を図ることができるとともに、従来のエマルションタイプの潤滑剤と同等以上の潤滑性を確保しつつ、優れた冷却性や洗浄性などが得られる金属板の冷間圧延方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく検討を重ねた結果、冷却機能を主体とする循環系のクーラントと潤滑機能を主体とするクーラントを別系統で供給するとともに、両系統から供給するクーラントとして、水溶性潤滑剤を溶解させることにより曇点を有する水溶液であって、潤滑剤濃度が異なる水溶液を用いることにより、上記課題を解決できることが判った。
本発明はこのような知見に基づきなされたもので、以下を要旨とするものである。
[1]水溶性潤滑剤を主体とする潤滑剤を水で希釈し且つ前記水溶性潤滑剤を溶解することにより曇点を有する溶液をクーラントとして用いる金属板の冷間圧延方法であって、
第1のクーラント供給系統Aではクーラントaを循環式に供給するとともに、
第2のクーラント供給系統Bでは、前記第1のクーラント供給系統Aで供給されるクーラントaと同一種類の潤滑剤をクーラントaよりも高濃度に含有するクーラントbを、少なくとも一部の圧延スタンド又は圧延パスの入側において、曇点以上の温度で金属板に供給することを特徴とする金属板の冷間圧延方法。
[2]上記[1]の冷間圧延方法において、第1のクーラント供給系統Aでは、クーラントaを曇点未満の温度で圧延ロール又は/及び金属板に供給することを特徴とする金属板の冷間圧延方法。
[3]上記[1]又は[2]の冷間圧延方法において、第1のクーラント供給系統Aが供給するクーラントaの曇点が30〜80℃であることを特徴とする金属板の冷間圧延方法。
[4]上記[1]〜[3]のいずれかの冷間圧延方法において、第2のクーラント供給系統Bでは、クーラントbを下記(1)式を満足する位置で金属板に供給することを特徴とする金属板の冷間圧延方法。
L≧Vin×0.06 …(1)
但し L:通板方向でのロールバイトからクーラント供給位置までの距離(m)
Vin:圧延スタンド又は圧延パスの入側での金属板の通板速度(m/sec)
[5]上記[1]〜[4]のいずれかの冷間圧延方法において、第1のクーラント供給系統Aが供給するクーラントa及び第2のクーラント供給系統Bが供給するクーラントbに含まれる水溶性潤滑剤の少なくとも一部が平均分子量500〜5000のポリアルキレングリコールであることを特徴とする金属板の冷間圧延方法。
[6]上記[1]〜[5]のいずれかの冷間圧延方法において、第1のクーラント供給系統Aが供給するクーラントaが、水溶性潤滑剤を1〜10質量%含有する水溶液であり、第2のクーラント供給系統Bが供給するクーラントbが、水溶性潤滑剤をクーラントaよりも高濃度で且つ20質量%以下の範囲で含有する水溶液であることを特徴とする金属板の冷間圧延方法。
本発明によれば、循環使用するクーラント全体としては、潤滑剤成分が水に溶解した状態であるので、固形物粉の分離性も良好で潤滑剤の劣化も生じにくく、潤滑剤成分の原単位が向上するとともに、圧延ロールや金属板の洗浄性なども良好であるため、金属板の表面品質の向上などの効果が得られる。さらに、クーラント温度を低温化できることから、高い冷却性能が得られるとともに、第2のクーラント供給系統からのクーラントによって高い潤滑性を確保することができる。
本発明の冷間圧延方法では、クーラントを供給しつつ金属板の冷間圧延を行うに際し、水溶性潤滑剤を主体とする潤滑剤を水で希釈し且つ前記水溶性潤滑剤を溶解することにより曇点を有する溶液をクーラントとして用いる。そして、このような冷間圧延方法において、第1のクーラント供給系統Aではクーラントaを循環式に供給するとともに、第2のクーラント供給系統Bでは、第1のクーラント供給系統Aで供給されるクーラントaと同一種類の潤滑剤をクーラントaよりも高濃度に含有するクーラントbを、少なくとも一部の圧延スタンド又は圧延パスの入側において金属板に供給するものである。
本発明では、第1のクーラント供給系統Aにおいてクーラントaを循環式に供給し、それとは別に第2のクーラント供給系統Bを設け、金属板表面に第2のクーラントbを供給する。
これらのうち、第1のクーラント供給系統Aから供給されるクーラントa(以下、単に「第1のクーラントa」という)は主として冷却機能を担うものであり、このため少なくとも圧延ロール表面に供給することが好ましい。但し、圧延ロール表面への供給に代えて或いは圧延ロール表面への供給とともに、ロールバイト入側のワークロールと金属板に供給し、潤滑と冷却の両方の機能を担うようにしてもよい。これに対して第2のクーラント供給系統Bから供給されるクーラントb(以下、単に「第2のクーラントb」という)は、主として潤滑効果を高めるために金属板表面に供給され、第1のクーラントaのみでは潤滑が不十分な場合に大きな効果を発揮する。
また、本発明ではクーラントとして、従来のエマルション圧延油ではなくソリューションタイプのクーラント、それも水溶性潤滑剤を主体とする潤滑剤を水で希釈し且つ水溶性潤滑剤を溶解することにより曇点を有する溶液を用いる点に特徴がある。
なお、特許文献2に示されるようなエマルション圧延油を前提とする場合には、基油の流動点によっては第1のクーラント供給系統のクーラント温度を実質的には低温化できない場合が多く、乳化が不安定になりやすく、スカムの生成も抑制できない。これに対して、第1のクーラント供給系統におけるクーラントとしてソリューションタイプのクーラントを適用することで、そのような問題を解決することができる。
ここで、曇点を有する溶液とは、温度を上昇させると、ある温度で溶解成分の溶解度が急激に低下して白濁する性質を有する溶液のことであり、曇点とはそのように白濁化する液温を指す。本発明では、曇点を有する水溶液(クーラント)の温度を変化させた場合に目視によって白濁を確認した温度を、その水溶液の曇点とする。図5の写真は、曇点が40℃の水溶液について、曇点よりも低い温度での外観と曇点よりも高い温度での外観の違いを例示したものである。
曇点を有する水溶液を冷間圧延のクーラントに使用した場合、その水溶液は、曇点未満の温度域(液温)と曇点以上の温度域(液温)とでクーラントとしての特性が変化し、以下のような作用効果が得られる。
クーラントは、その曇点未満の温度域においては潤滑剤成分が水に溶解しているため、循環使用中に摩耗粉などの固形物粉とはすぐに分離でき、クーラント中から摩耗粉を除去することが極めて容易となって、フィルターロスの低減を図ることができる。また、摩耗粉を油分中に抱き込むこともないため、スカムの生成によるロスが極めて少なくなる。したがって、スカムを流動させるために昇温する必要もなく常温で使用することによってフュームロスを低減させることができる。さらに、洗浄性に優れることから、金属板上に残留する潤滑剤成分が極めて少なく、金属板による持ち出しロスも低減できる。さらに、エマルション圧延油のような乳化安定性の管理を要することがない点でクーラントの管理が簡素化される。
また、冷却のために圧延ロールにスプレーした場合にも、洗浄性に優れるため、潤滑剤成分がロール表面に付着していても、それを洗い流しながら冷却を行えるので、エマルション圧延油に比べて冷却性能の向上を図ることができる。さらに、優れた洗浄性によって、圧延ロールに付着した金属異物も表面から容易に洗い流すことができ、ロール表面に表面疵を発生させにくい。
一方、クーラントは曇点以上の温度域においては、潤滑剤成分の水への溶解度が低下することで白濁した外観を有するようになるが、このような温度のクーラントが金属板に供給されると、クーラント中の潤滑剤成分と水とが分離しやすい状態となって、クーラントの潤滑剤成分の金属板表面への付着性が高まり、エマルション圧延油のプレートアウトと同様の挙動により、ロールバイトでの潤滑性を確保することができる。
後述するような本発明の好ましい実施形態では、上記のような曇点を有するクーラントの作用効果のなかで、第1のクーラントaにより主として曇点未満の温度域における作用効果が、また、第2のクーラントbにより主として曇点以上の温度域における作用効果が、それぞれ得られる。
但し、第1のクーラントaも最低限の基本的な潤滑性能を備える必要があり、曇点を有する水溶液のクーラント(特に好ましくは、潤滑剤成分として後述するようなポリアルキレングリコールを含有するクーラント)を用いることにより、そのような基本的な潤滑性能を備えることができる。
以下、本発明で使用するクーラントの好ましい条件について説明する。
本発明では、第1のクーラントaを圧延ロール又は/及び金属板(ロールバイト入側の金属板)に供給するが、さきに述べたように、少なくとも圧延ロール表面に供給することが好ましい。
この第1のクーラントaは、曇点未満の温度で圧延ロール又は/及び金属板に供給するのが好ましい。第1のクーラントaを曇点以上の温度で供給した場合、潤滑剤成分の金属板表面への付着性が向上して潤滑性が向上するが、圧延ロール表面への付着性も高まるため冷却効果が低下する恐れがある。また、ソリューションタイプのクーラントaは、循環時における固形物粉の除去などのフィルタリング効率が、エマルション圧延油の場合に比べれば非常に良好ではあるものの、曇点以上の温度では潤滑剤成分が水と分離するため、フィルタリング効率が低下する場合がある。
また、第1のクーラントaは、曇点が30〜80℃であることが好ましい。第1のクーラントaの曇点が30℃未満では、第1のクーラント供給系統Aのクーラント温度を低温に維持しなければならず、そのための熱交換機の設備コストやランニングコストが増大する。一方、曇点80℃を超える場合には、同一種類の潤滑剤を含有する第2のクーラントbの曇点もほぼ同じ程度になるので、金属板の温度によっては(特に、圧延速度が比較的小さいために板温度があまり高くない場合)、第2のクーラントbが供給される際の金属板の温度がクーラントbの曇点を下回り、その結果、第2のクーラントbの金属板に対する付着性が低下する恐れがある。
通常、圧延ロール又は/及び金属板に供給後、回収された第1のクーラントaに対して、その曇点未満の液温で液中固形物(主として摩耗粉などの固形物粉)の除去処理を施す。クーラントaは曇点未満の温度域では潤滑剤成分が水に溶解した状態に維持されているため、固形物粉との分離性がよく、液中固形物の除去処理において潤滑剤成分のロス(系外への排出)を最小限に抑えることができる。この除去処理を行う手段としては、フィルター方式(ホフマンフィルタ、電磁フィルタなど)のものが一般的であるが、それ以外に、遠心分離方式、磁気吸着方式など適宜な方式のものを採用できる。圧延ロール又は/及び金属板に供給後、回収されたクーラントは、曇点以上の液温になっている場合があり、その場合には液中固形物の除去処理前にクーラントをクーラー及び/又は循環系内での自然冷却などによって冷却し、曇点未満の液温にしておくことが好ましい。
第2のクーラントbは、第1のクーラントaと同一種類の潤滑剤をクーラントaよりも高濃度に含有するものである。第2のクーラントbが、第1のクーラントaと同一種類の潤滑剤を含有するのは、金属板に供給された第2のクーラントbのうち、金属板に付着しなかったクーラントbが第1のクーラント供給系統Aに混入しても、第1のクーラントaの特性を大きく変化させないようにするためである。
また、第2のクーラントbは、主として潤滑性を向上させる機能を有するものであり、このため第1のクーラントaよりも潤滑剤を高濃度に含有する。
なお、第2のクーラントbは、第1のクーラントaと同一種類の潤滑剤を含有するので、その曇点は第1のクーラントaの曇点とほぼ同程度になる。したがって、事実上、好ましい曇点は30〜80℃となる。
第2のクーラントbは、ロールバイト入側の金属板にスプレー等の手段により供給するものであるが、曇点以上の温度で金属板に供給されるか、若しくは曇点以上の温度の金属板に対して供給されることが好ましい。
第2のクーラントbは主として潤滑効果を担うものであるから、金属板に供給された場合の付着効率が高いほど望ましい。第2のクーラントbの温度が曇点よりも高ければ、水から潤滑剤成分が分離しやすくなって、金属板に供給された場合の付着性も向上する。したがって、第2のクーラントbは、必要に応じて加熱し、曇点以上の温度で金属板に供給されることが好ましい。
なお、第2のクーラントbの温度が高いと、これが第1のクーラント供給系統Aに混入した場合に、循環している第1のクーラントaの温度を上昇させることになるが、第2のクーラントbの供給量が第1のクーラントaの供給量の1/20以下程度の少量であり、且つ第1のクーラントaの循環系(第1のクーラント供給系統A)にクーラントクーラーを設置してあれば、第1のクーラントaの温度上昇を抑えることが可能である。
一方、第2のクーラントbは、曇点以上の温度の金属板に対して供給されてもよい。一般に、金属板の温度は良好な潤滑性が要求される高速圧延の条件では100℃以上に昇温しており、このような金属板に第2のクーラントbを供給した場合、潤滑剤成分が水と分離して金属板への付着性が大きく向上する。特に、潤滑剤成分の濃度が高いほど効率的に付着して、少量のクーラントであっても十分な潤滑性を得ることができる。
また、実際上の問題として、圧延速度が非常に高い場合に、第2のクーラントbの温度を高くして且つ供給量も多くする必要のある状況では、クーラントクーラーの能力等によっては循環系のクーラント温度も上昇する恐れがあり、このため、ロールバイト入側における金属板の温度が低い場合にのみ第2のクーラントbの温度を曇点以上とし、金属板の温度が高い場合には、第2のクーラントbの温度を曇点未満とすることで、循環系のクーラントaの温度上昇を抑制することも可能である。
金属板に供給された第2のクーラントbは、金属板表面で潤滑剤成分が水から分離して金属板表面に潤滑膜を形成する。このとき、クーラントが潤滑膜を形成するためには一定の時間を要するため、ロールバイトにあまり近い位置でクーラントbを供給すると潤滑膜形成のための時間的余裕が少なくなってしまう。特に、圧延速度が大きくなると、それに反比例してロールバイトまでの到達時間が短くなる。このため金属板の通板速度に応じて、第2のクーラントbの供給位置とロールバイト間に距離をもたせることが好ましい。具体的には、金属板表面に供給された第2のクーラントbが冷間圧延に必要な潤滑膜を形成するまでの時間は、おおよそ60msであることから、第2のクーラントbは、下記(1)式を満足する位置で金属板に供給されることが好ましい。
L≧Vin×0.06 …(1)
但し L:通板方向でのロールバイトからクーラント供給位置までの距離(m)
Vin:圧延スタンド又は圧延パスの入側での金属板の通板速度(m/sec)
本発明条件を満足するようにクーラントa、クーラントbが供給されるのは、必ずしも全圧延スタンド(例えば、タンデム式冷間圧延機の全圧延スタンド)や、全圧延パス(例えば、レバース式冷間圧延機による圧延の全圧延パス)である必要はなく、潤滑性や冷却作用が必要とされる少なくとも一部の圧延スタンド又は圧延パスであればよい。圧延の際に必要とされる潤滑性や冷却作用は、圧延スタンドの前・後段位置の違い、圧延パスの段階の違い、被圧延材の種類や寸法、ロール径、ロール粗さ、圧延速度等によって異なり、圧延スタンドや圧延パスのなかには、潤滑性や冷却作用をあまり必要としない場合もあるからである。
本発明においてクーラントとして用いる、水溶性潤滑剤を溶解することにより曇点を有する溶液(水溶液)は、上述したように曇点未満の液温では潤滑剤成分が水に溶解した状態に維持されるため、透明又は半透明な外観を呈するものであり、エマルション圧延油のように5〜15μm程度のエマルション粒子による光の乱反射に起因して乳白色の外観を呈するものとは区別できる。一方、溶液が曇点以上の液温となると透明な外観ではなくなり、一般に白濁したような不透明な外観になる(図5参照)。
クーラントに含有される水溶性潤滑剤は、溶液(水溶液)が曇点を有することができるようなものであればその種類は問わないが、そのなかでも化学合成された潤滑剤(以下、合成潤滑剤という)が特に好ましい。この合成潤滑剤は、従来用いられている圧延油に較べて耐腐敗性に優れ、摩耗粉などの固形物粉と油剤劣化物の混合物であるスカムを形成しにくい点で有利となる。
また、クーラントに配合される潤滑剤は、一部が非水溶性の潤滑剤(例えば、従来用いられている圧延油)であってもよいが、配合される潤滑剤のうち80mass%以上、好ましくは95mass%以上が水溶性潤滑剤(特に好ましくは水溶性の合成潤滑剤)であることが望ましい。水溶性潤滑剤(特に好ましくは水溶性の合成潤滑剤)の割合が95mass%未満では非水溶性潤滑剤が多くなるため、ソリューションタイプのクーラントとしての固形物粉分離性、耐劣化性、洗浄性などが低下するようになり、特に80mass%未満ではそれらの特性の低下が著しい。
クーラント中に水溶性潤滑剤とともに配合する非水溶性の潤滑剤としては、油脂、脂肪酸エステル、鉱物油などのようなエマルションタイプのクーラントに用いられる圧延油の1種以上を用いることができる。このように非水溶性の潤滑剤を少量併用したとしても、ソリューションタイプのクーラントとしての特性を失うことはなく、エマルションタイプのクーラントに較べて潤滑剤の原単位を大幅に向上させることが可能である。
本発明で用いる水溶性の合成潤滑剤としては、特にポリアルキレングリコールが好ましく、とりわけ平均分子量500〜5000のポリアルキレングリコールが好ましい。したがって、水溶性潤滑剤の少なくとも一部、好ましくは全部が分子量500〜5000のポリアルキレングリコールであることが好ましい。
ポリアルキレングリコールは、ポリグリコール、ポリエーテル、ポリアルキレンオキサイドとも呼ばれ、エチレンオキシド(EO)やプロピレンオキシド(PO)などのアルキレンオキシド(AO)を、活性水素を持つ物質に開環重合させて得られる重合物である。これは、主としてブレーキ液や難燃性作動油に使用されている合成潤滑剤であって、重合度やアルキル基などを変化させることによって、各種の粘度グレードを有する水溶性のものから非水溶性のものまで幅広い特徴を有する重合物を得ることができる物質である。
ポリアルキレングリコールは、一般に分子量が大きいほど粘度も増加し、粘度指数も高くなる傾向を示す。冷間圧延に使用するために、ポリアルキレングリコールとしては平均分子量500〜5000のものが好ましい。平均分子量が大きいほど粘度が上昇し金属板への付着性が向上するが、平均分子量が大きすぎると流動点が高くなり、後工程での洗浄に支障が生じる恐れがあるからである。
ポリアルキレングリコールとしては、種々の化学構造を有するものを用いることができるが、オキシプロピレン単位からなるブロック部分の両端にオキシエチレン単位からなるブロック部分が結合された構造を有するものが代表的なものである。市販品としては、例えば、旭電化株式会社製の商品名「アデカプルロニック
L31」、「アデカプルロニック L62」などが挙げられる。また、オキシエチレン単位からなるブロック部分の両端に、オキシプロピレン単位からなるブロック部分が結合された構造を有するブロック共重合体で、リバースブロック型共重合体を用いることもできる。市販品としては、例えば、旭電化株式会社製の商品名「アデカプルロニック
25R2」、BASF Japan社製の商品名「プルロニック 25R2」などを挙げることができる。
クーラント中での水溶性潤滑剤の含有濃度には特別な制限はないが、第1のクーラントaについては、溶液中での割合で1〜10mass%程度とすることが好ましい。第1のクーラントaは主として冷却機能を担うものであるが、基本的な最低限の潤滑性能は確保しておく必要がある。潤滑剤の含有濃度が1mass%未満では冷間圧延に必要な潤滑性が十分に得られず、一方、含有濃度が10mass%を超えると潤滑剤の消費量が増加して、経済的に不利になるだけでなく、圧延ロールの表面に潤滑剤が付着して冷却効果が多少阻害されるおそれがある。
また、第2のクーラントbの水溶性潤滑剤の含有濃度は高いほど好ましいが、第1のクーラントaよりも高濃度で、且つ20mass%以下が望ましい。含有濃度が20mass%を超えると、第1のクーラントaの循環系統に混入した場合に、第1のクーラント濃度が徐々に上昇し、潤滑剤の原単位が悪化する。
また、水溶性潤滑剤としてポリアルキレングリコール、好ましくは分子量500〜5000のポリアルキレングリコールを使用する場合、クーラントに配合される潤滑剤中でのポリアルキレングリコールの割合は高いほど望ましい。ここで、配合される潤滑剤中でのポリアルキレングリコールの割合が50mass%未満では、潤滑剤としてポリアルキレングリコールを用いることによるクーラントの低温流動性、化学的安定性の向上効果が十分に得られない。したがって、クーラントに配合される潤滑剤中でのポリアルキレングリコールの割合は50mass%以上とすることが好ましく、さらに、他の水溶性潤滑剤を合わせて80mass%以上、好ましくは95mass%以上の潤滑剤を水溶性潤滑剤(好ましくは水溶性の合成潤滑剤)とすることが望ましい。なお、クーラントにはその他の潤滑剤が含まれてよいことはさきに述べたとおりである。
また、以上のように潤滑剤の一部又は全部としてポリアルキレングリコールを用いる場合についても、クーラントに配合される潤滑剤の濃度、クーラントの曇点などは、さきに述べたとおりである。したがって、本発明で使用するクーラントの最も好ましい形態は、水溶性潤滑剤の全量をポリアルキレングリコール、好ましくは分子量500〜5000のポリアルキレングリコールとし、且つその含有濃度を、クーラントaの場合には溶液中での割合で1〜10mass%程度とし、クーラントbの場合には、第1のクーラントaよりも高濃度で且つ20mass%以下とすることである。
なお、クーラントには、潤滑剤(ポリアルキレングリコールなど)の他に、極圧添加剤、防錆剤、消泡剤、各種アミン、防腐剤、界面活性剤などの1種以上を適宜添加してもよい。また、油脂、脂肪酸エステル、鉱物油を界面活性剤と共に少量添加して、潤滑性を補助したものを調製してもよい。潤滑剤以外の添加剤が、クーラント中において平均粒径1μm以下程度の大きさで含まれているだけであれば、全体としてソリューションとしての特性を維持しており、さきに述べたようなエマルション圧延油に比べて有利な特性を発揮するからである。その際、クーラントの曇点は、水溶性潤滑剤以外の成分を除去した水溶液について測定した値を用いるものとする。添加剤の含有によって、曇点が明確に測定できなくなる場合もあるからである。
前記極圧添加剤としては、例えば、塩素化油脂、塩素化脂肪酸エステルなどの塩素化化合物、硫化油脂、アルキルポリサルファイドなどの合成硫黄化合物、リン化合物、有機金属塩化合物などの1種以上を使用することができる。また、水溶性防錆剤としては、脂肪族モノカルポン酸などの脂肪酸類に、塩基性物質としてアルカノールアルミなどを加えたものを用いることもできる。
本発明で用いる冷間圧延機としては、タンデム式冷間圧延機、レバース式冷間圧延機などの通常の冷間圧延を行うものを含む。調質圧延のような焼鈍材の軽圧下圧延を行うものは対象としないものの、調質圧延機を使用して圧下率10%以上の圧延を行うような場合に適用してもよい。
本発明法の圧延の対象となる金属板の代表例は薄鋼板であるが、これに限定されるものではなく、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金などのような種々の金属板、合金板が対象となる。また、鋼板の場合には、普通鋼、高炭素鋼、ステンレス鋼など鋼種は問わない。
また、金属板の厚さにも制限はなく、金属箔などのような薄い金属板も対象とすることができる。
図1は、本発明の実施に供されるタンデム式冷間圧延機を備えた圧延整備の一実施形態を示すもので、金属板1をペイオフリール2から払出し、5基の圧延スタンド4a〜4eを有する冷間圧延機によって連続的に圧延を行い、テンションリール3によって巻取るものである。
各圧延スタンド4a〜4eの出側には、第1のクーラント供給系統Aから圧延ロールに対してクーラントaを供給するための冷却用スプレーノズル6a〜6eが設置され、また、各圧延スタンド4a〜4eの入側には、第1のクーラント供給系統Aからロールバイトにクーラントaを供給するスプレーノズル8a〜8eが設置されている。なお、これらのスプレーノズルは必ずしも全圧延スタンドに設置される必要はない。第1のクーラント供給系統Aは、クーラントaを循環して供給する循環系である。
また、各圧延スタンド4a〜4eの入側であって、ロールバイトからライン上流側に所定距離だけ離れた位置に、第2のクーラント供給系統Bから金属板1にクーラントbを供給するためのスプレーノズル5a〜5eが設置されている。第2のクーラント供給系統Bでは、これらスプレーノズル5a〜5eにクーラントタンク16からクーラントを供給する。このクーラントタンク16では、第1のクーラント供給系統Aのクーラントaと同一種類の潤滑剤をクーラントaよりも高濃度に含有するクーラントが調製される。クーラント供給系統Bにおいて、各スプレーノズル5a〜5eにクーラントbを供給する供給支管には、必要に応じてクーラントbを加熱昇温さるための加熱装置7a〜7eが設置されている。なお、上記スプレーノズル5a〜5eについても、必ずしも全圧延スタンドに設置される必要はない。
また、スプレーノズル5a〜5eから金属板にクーラントbを供給する位置は、圧延機の最高速度から各圧延スタンド入側の通板速度を算出し、その速度を用いて、上記(1)式を満足する位置に設定される。例えば、最終圧延スタンド4e入側の最高速度が1500mpmである場合には、スプレーノズル5eは最終圧延スタンド4eのロールバイトから上流側に1.5m以上離れた位置に設置する。
各圧延スタンドにおいてスプレーノズルから供給されたクーラントは、第1のクーラント供給系統Aのクーラントaとしてオイルパン17によって回収される。クーラント中には摩耗粉などの固形物粉が混入しているため、クーラントはダーティタンク10に一旦貯留される。このダーティタンク10内のクーラントはフィルタリング設備9,11に移され、ここでクーラント中の固形物粉が分離除去された後、クリーンタンク12に移され、ここに一旦貯留される。フィルタイリング設備9,11は、ホフマンフィルタ、電磁フィルタなどのようなエマルション圧延油に対して通常使用される形式のフィルタリング手段を備えたものでよいが、固形物粉の分離容易性を考慮してより簡単な設備であってもよい。
クリーンタンク12内に貯留されたクーラントは、供給ポンプによって圧延ロールの冷却用スプレーノズル6a〜6eやロールバイトに向けたスプレーノズル8a〜8eに送られることで循環使用される。この循環系(第1のクーラント供給系統A)には、クーラント温度を曇点以下に維持するためのクーラントクーラー13が設置されている。
以上のような圧延設備において、例えば、第1のクーラント供給系統Aでは、ポリアルキレングリコールを3質量%含有し、曇点が50℃である水溶液をクーラントaとして用い、第2のクーラント供給系統Bでは、ポリアルキレングリコールを10質量%含有し、曇点が50℃である水溶液をクーラントbとして用いるとすると、第1のクーラント供給系統Aでは、クーラントaはクーラントクーラー13によって50℃未満の温度に調整され、冷却用スプレーノズル6a〜6eやスプレーノズル8a〜8eに送られる。一方、第2のクーラント供給系統Bでは、クーラントbは必要に応じて加熱装置7a〜7eによって加熱され、50℃以上の温度でスプレーノズル5a〜5eに送られる。
なお、第2のクーラント供給系統Bのクーラントタンク16では、全く新たにクーラントbを調製してもよいが、第1のクーラント供給系統Aからクーラントaの一部をクーラントタンク16に供給し、これに潤滑剤(ポリアルキレングリコールなど)を追添加して、クーラントbを調製してもよい。
[実施例1]
ポリアルキレングリコールを含有するクーラントの金属板への付着性について調べた結果を、従来のエマルション圧延油をクーラントとして用いた場合と比較して示す。
ポリアルキレングリコールを含有する水溶液からなるクーラントXには、ポリアルキレングリコールとして旭電化株式会社製の商品名「アデカプルロニック
L31」を用いた。このポリアルキレングリコールは、平均分子量1100、濃度3質量%における曇点が40℃であり、25℃における動粘度は196mm/sである。なお、この水溶液には、ポリアルキレングリコール以外の成分は含有させていない。
通常の冷間圧延に使用されるエマルション圧延油からなるクーラントYとしては、基油が合成エステル30mass%、天然油脂65mass%、添加剤5mass%から構成され、ノニオン系界面活性剤を1.5mass%含む原液を60℃の水に希釈して、攪拌機によってエマルション粒径が8〜10μmになるように調整したものである。
上記クーラントX,Yを使用した場合の鋼板への付着性について調べるために、プレートアウト試験を行った。プレートアウト試験は、鋼板表面にクーラントをスプレーした後に、鋼板に付着している潤滑剤成分の質量を測定することで鋼板への付着性能を評価する試験である。ここでは、サンプルとなる鋼板を150℃に加熱した状態での付着性能を評価した。これは、高速圧延における後段スタンドでの鋼板温度がこの程度まで達する条件を模擬したものである。クーラントのスプレー圧は1.0kgf/cmであり、鋼板表面に0.1秒間だけスプレーした直後にエアパージを行い、鋼板に付着していないクーラントを除去することで、ごく短時間の間に鋼板に付着した潤滑剤成分のみを測定することとした。なお、クーラントXについては、曇点未満の温度である20℃と曇点以上の温度である60℃の2条件について評価した。一方、クーラントYについては、クーラント温度を低下させるとエマルションの乳化状態が不安定になったため、クーラントの温度は60℃の1条件とした。
図2に、プレートアウト試験の結果を示す。いずれのクーラントにおいても潤滑剤濃度を増加させると鋼板への付着性が向上していることが判る。潤滑剤成分としてポリアルキレングリコールを含有するクーラントXの付着性能は、従来のエマルション圧延油であるクーラントYとほぼ同等である。また、クーラントXについては、曇点を超える温度にすることで付着性能が向上している。
以上の結果からして、第1のクーラント供給系統Aから供給されるクーラントaは潤滑剤濃度や温度は低くし、第2のクーラント供給系統Bから潤滑剤濃度が高いクーラントを供給することで、鋼板への付着性能が向上し、冷間圧延時の潤滑性が向上することになる。さらに、第2のクーラント供給系統Bのクーラントbの温度を曇点以上にすることで、より良好な潤滑性を確保できることになる。
[実施例2]
図1に示す5スタンドのタンデム式圧延機を用いて、板厚1.8mm、板幅900mmの硬質ブリキ原板を、仕上板厚0.183mmまで圧延した際の状況について示す。
本発明例では、[実施例1]で示したクーラントXを使用した。第1のクーラント供給系統Aから供給するクーラントaは、ポリアルキレングリコール濃度3質量%、曇点40℃、温度20℃とし、第2のクーラント供給系統Bから供給するクーラントbは、ポリアルキレングリコール濃度10質量%、曇点40℃、温度60℃とした。第2のクーラント供給系統Bからのクーラントbの供給は後段2スタンドのみとし、第4圧延スタンド入側では50L/min、最終圧延スタンド入側では100L/minの流量にて供給した。なお、第1のクーラント供給系統Aからのクーラントaの総流量は24000L/minとした。
一方、比較例1では、同じくクーラントXを用い、第1のクーラント供給系統Aだけからクーラントを供給した。このクーラントは、ポリアルキレングリコール濃度3質量%、曇点40℃とし、高速圧延時の潤滑性を確保するために温度60℃とした。さらに、比較例2では、[実施例1]で示した従来のエマルション圧延油であるクーラントYを用い、第1のクーラント供給系統Aだけからクーラントを供給した。このクーラントは、圧延油濃度3質量%、温度60℃とした。
図3に、最終圧延スタンド4eでの潤滑性(摩擦係数)を調べた結果を示す。この摩擦係数は、最終圧延スタンドで計測された圧延荷重から逆算したものである。図3によれば、比較例2では、圧延速度の増加に伴って一旦摩擦係数が低下するが、圧延速度1000mpm以上の領域では再び摩擦係数が上昇する傾向がみられる。これは圧延速度の増加に伴い、圧延機入側でのクーラントY(エマルション圧延油)の付着性が低下したためであると考えられる。また、比較例1では、クーラントXの鋼板への付着性能はクーラントYと同等若しくはそれ以上に高いものの、境界潤滑性能に劣るため、低速域での摩擦係数としては比較例2よりも高い値を示している。しかし、圧延速度が増加して鋼板温度が上昇すると、クーラントの潤滑剤成分の鋼板への付着性が向上して、高速域での潤滑性は比較例2と同等のレベルとなる。
一方、本発明例では、第2のクーラント供給系統Bからのクーラントbの供給により、鋼板への潤滑剤成分の付着量が増加するため、特に高速域での摩擦係数が上昇することなく安定な値を示している。
図4は、そのときの最終圧延スタンド出側の鋼板温度を示したものである。これによれば、比較例2では圧延速度の増加に伴って鋼板温度が上昇し、被圧延鋼板のヒートスクラッチ発生温度である170℃を超えることがある。比較例1については、クーラントXがクーラントY(エマルション圧延油)に比べて良好な洗浄性を示すことから、同一のクーラント温度であっても冷却性が優れており、鋼板温度も低い値を示しているものの、さらに圧延速度が上昇した場合にはヒートスクラッチが発生する危険性がある。一方、本発明例では、第1のクーラント供給系統Aからのクーラントaの温度を低温化させているので、鋼板温度を大幅に下げることが可能であり、ヒートスクラッチ防止効果が大幅に向上している。
以上のように、ソリューションタイプの潤滑剤であっても、本発明のように第1及び第2のクーラント供給系統A,Bから機能が異なるクーラントa,bをそれぞれ供給することにより、優れた潤滑性と冷却性能の両立が可能となる。
本発明の実施に供されるタンデム式冷間圧延機の一例を示す説明図 実施例1におけるクーラントのプレートアウト特性を示すグラフ 実施例2における圧延時の摩擦係数を示すグラフ 実施例2におけるクーラントによる冷却効果を示すグラフ 実施例1において用いた液温が異なるクーラントの外観を示す写真
符号の説明
1 金属板
2 ペイオフリール
3 テンションリール
4a,4b,4c,4d,4e 圧延スタンド
5a,5b,5c,5d,5e スプレーノズル
6a,6b,6c,6d,6e 冷却用スプレーノズル
7a,7b,7c,7d,7e クーラント加熱装置
8a,8b,8c,8d,8e スプレーノズル
9,11 フィルタリング設備
10 ダーティタンク
12 クリーンタンク
13 クーラントクーラー
A 第1のクーラント供給系統
B 第2のクーラント供給系統

Claims (6)

  1. 水溶性潤滑剤を主体とする潤滑剤を水で希釈し且つ前記水溶性潤滑剤を溶解することにより曇点を有する溶液をクーラントとして用いる金属板の冷間圧延方法であって、
    第1のクーラント供給系統Aではクーラントaを循環式に供給するとともに、
    第2のクーラント供給系統Bでは、前記第1のクーラント供給系統Aで供給されるクーラントaと同一種類の潤滑剤をクーラントaよりも高濃度に含有するクーラントbを、少なくとも一部の圧延スタンド又は圧延パスの入側において、曇点以上の温度で金属板に供給することを特徴とする金属板の冷間圧延方法。
  2. 第1のクーラント供給系統Aでは、クーラントaを曇点未満の温度で圧延ロール又は/及び金属板に供給することを特徴とする請求項1に記載の金属板の冷間圧延方法。
  3. 第1のクーラント供給系統Aが供給するクーラントaの曇点が30〜80℃であることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属板の冷間圧延方法。
  4. 第2のクーラント供給系統Bでは、クーラントbを下記(1)式を満足する位置で金属板に供給することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の金属板の冷間圧延方法。
    L≧Vin×0.06 …(1)
    但し L:通板方向でのロールバイトからクーラント供給位置までの距離(m)
    Vin:圧延スタンド又は圧延パスの入側での金属板の通板速度(m/sec)
  5. 第1のクーラント供給系統Aが供給するクーラントa及び第2のクーラント供給系統Bが供給するクーラントbに含まれる水溶性潤滑剤の少なくとも一部が平均分子量500〜5000のポリアルキレングリコールであることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の金属板の冷間圧延方法。
  6. 第1のクーラント供給系統Aが供給するクーラントaが、水溶性潤滑剤を1〜10質量%含有する水溶液であり、第2のクーラント供給系統Bが供給するクーラントbが、水溶性潤滑剤をクーラントaよりも高濃度で且つ20質量%以下の範囲で含有する水溶液であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の金属板の冷間圧延方法。
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