JP3743139B2 - 冷間圧延方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、普通鋼、ステンレス、および電磁鋼板などを冷間圧延する方法に関し、圧延油エマルションおよびその使用方法を適正化することによりチャタリングなどの異常現象を防止する圧延方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
冷間圧延においては、荷重(摩擦係数)低減、ロール冷却、ロール摩擦の低減などを目的として冷間圧延油が用いられる。冷間圧延油の給油システムは、直接給油と循環給油とに大別できる。
【0003】
直接給油システムでは、被圧延板あるいはロールに噴射された圧延油(通常圧延油エマルション)は、圧延機下部に設けられたピットから系外に排出されるため、圧延油は常に新しい状態で供給される。
【0004】
これに対して、本願発明が対象とする循環給油システムでは、圧延油エマルションのタンクから吸引され、被圧延板あるいはロールに噴射された圧延油は、圧延機下部に設けられたピットから再びタンクに戻され、循環使用される。なお、圧延時に発生する鉄粉等の異物を除去するためにフィルターシステムを有するのが一般的である。循環給油システムの場合、エマルション中の油滴の粒径(以下、エマルシュン粒径と呼ぶ)、乳化安定性、鉄粉等の異物の混入量、酸価、鹸化価等の圧延油エマルションの性状を一定の適正値に保つ必要がある。特に、エマルション粒径と乳化安定性は圧延特性に大きな影響を与える。
【0005】
エマルション粒径が小さすぎる場合、ノズルから噴射されたエマルション中の油滴が被圧延材の表面へプレートアウトする量が減少し、有効な潤滑特性が得られない。その結果、圧延荷重が増大し、極端な場合はヒートストリークと呼ばれる焼き付き現象やチャタリングと呼ばれる張力変動や板厚変動を伴う振動現象が発生する場合がある。また、エマルション粒径が大きすぎる場合には、プレートアウト量が増大し、潤滑過多となる場合がある。その際には、被圧延材とロール間でスリップが発生し、圧延不能となる場合がある。被圧延材とロール間でスリップが発生する様な圧延状態では、張力や板厚が不安定となり、圧延機廻りの固有振動数と共振してチャタリングが発生する場合がある。このように、エマルション粒径は小さすぎても大きすぎてもチャタリングの原因となるために、エマルション粒径を適正な範囲に保つことが安定圧延のために重要である。適正なエマルション粒径は、被圧延材の変形抵抗や圧下率等の圧延条件、圧延油の組成、および給油条件(スプレー圧など)によって変化するが、一般に平均粒径が2〜15μm程度とされている。
【0006】
乳化安定性は、エマルションの均一性に影響する。エマルションは圧延油原液と水とを所定の濃度になるような割合でタンク内に投入し、タンク内で攪拌・均一化することにより得られ、得られたエマルションはタンクから吸引され、ポンプにより昇圧された後にスプレーノズルより噴射される。タンクではエマルションの液面の変動も考慮して中層以下から吸引されるのが一般的である。この際、エマルションの乳化安定性が悪いと、タンク内の攪拌のみでは均一化せず、油分が上層に浮上する場合がある。必然的に中層および下層のエマルション濃度は所定の値よりも低くなり、スプレーより実際に噴射されるエマルションの濃度が低下し、潤滑性が悪化する。潤滑性の悪化により荷重が増大し、極端な場合はチャタリングが発生することがある。また、乳化安定性が悪い場合は、一般的にエマルション粒径の分布が広くなり、たとえ平均粒径が同じであっても、異常に大きな油滴が混在する場合がある。エマルション粒径がそろっていない場合、大きな油滴が付着した部分と通常の油滴が付着した部分のプレートアウト量が異なり、被圧延材の粗度・光沢ムラや、スリップおよびチャタリングが発生する場合がある。
【0007】
このような圧延油エマルションの性状による異常圧延現象を防止するために、例えば特開昭60−1292号公報に開示されるように、「圧延油に、乳化分散材としてカチオン性高分子化合物と特定の非イオン性界面活性剤とを添加してなる、潤滑性、潤滑安定性、新油補給性に優れた標記圧延油」や、特開昭60−203699号公報に開示される、「圧延油に、両性高分子化合物等及びHLB価の異なる二種の非イオン界面活性剤からなる乳化分散剤を配合してなる、潤滑性、潤滑安定性、新油補給性及び浮上油の再乳化分散性良好な圧延油」等が従来技術としてある。しかしながら、いずれの技術においても、圧延油の乳化機構が十分に把握されていないために圧延油の経時劣化に伴う乳化状態の変化および乳化状態の変化に伴う圧延潤滑性の変化に十分な配慮がなされておらず、時に潤滑の過不足によるチャタリングや焼き付き現象が発生し、その効果は満足のいくものではなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、圧延油の乳化安定性に優れ、鋼板上へのプレートアウト量を好適な範囲に保持することが可能となり、潤滑の過不足による異常圧延現象を防止できる冷間圧延方法を提供しようとする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、動植物油脂・鉱油・およびエステルから選ばれる一種以上の基油にカチオン性乳化剤・ノニオン性高分子化合物・およびアルコールを含有する冷間圧延油を用いると、混入物による劣化の少ない優れた乳化安定性を有する圧延油となり、この圧延油を用いてタンク内の温度およびスプレー圧力を所定の値に制御すれば異常圧延現象を防止できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、循環給油システムを用いた薄鋼板の冷間圧延において、動植物油脂、鉱油およびエステルからなる群から選ばれる少なくとも一種の基油と、カチオン性乳化剤と、ノニオン性高分子化合物と、アルコールとを含有する冷間圧延油組成物を1〜10vol%の濃度のエマルションとし、タンク内のエマルション温度を30〜70℃とし、エマルション給油時のスプレー圧力を4〜12気圧として薄鋼板の冷間圧延を行なうことを特徴とする冷間圧延方法、
ならびに上記冷間圧延油組成物が、(a)動植物油脂、鉱油およびエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の基油と、(b)α−オレフィンと無水マレイン酸との共重合体に、N,N−ジアルキルアミノアルキルアミンを付加させて得たカチオン性乳化剤と、(c)ポリエチレングリコールを親水性基とし、これに変性ポリエステル、またはポリオレフィンを親油性基として、櫛型にグラフト化させて得たノニオン性高分子化合物と、(d)高級脂肪族アルコールとを含有することを特徴とする冷間圧延方法を提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明においては、基油として動植物油脂、鉱油、およびエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種を使用する。
動植物油脂としては牛脂、豚脂、羊脂、魚油、鯨油、パーム油、ヤシ油、なたね油、オリーブ油、ひまし油、大豆油等が挙げられる。エステルとしては炭素数8〜18の高級脂肪酸と、炭素数1〜8の脂肪族アルコールまたはグリコールとのエステルが挙げられ、具体的には、メチルラウレート、ブチルラウレート、ブチルステアレート、ペンチルオレエート、オクチルミリスチレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、オレイン酸モノグリセライド、オレイン酸ジグリセライド等が例示される。
これらの基油は単独でも数種組み合わせて使用してもよい。
【0011】
本発明では、乳化剤としてカチオン性乳化剤と、ノニオン性高分子化合物を併用する。
【0012】
圧延油と水を混合して攪拌した場合、機械的攪拌によって圧延油は微小な油滴となる。圧延油中に含まれる乳化剤は、油滴の表面に、親油基が油滴側で親水基が水側となるように配向する。その結果水中に分散した油滴はある程度の時間に亘って再度合一することなく、エマルションとして保たれる。このような圧延油エマルションを循環給油形式で用いて冷間圧延を施した場合、圧延中に被圧延材の表面から発生する微細な鉄粉や、また電磁鋼板の場合は酸化珪素粉がエマルション中に混入する。一般的な圧延油エマルションは弱酸性であり、アニオン系とノニオン系の乳化剤を併用した場合は、油滴表面は負に帯電し、一方鉄粉などの混入物は正に帯電する。このため、電気的な凝集力により油滴中に鉄粉などの混入物が取り込まれ、油滴中に取り込まれた混入物の作用で圧延油の劣化が促進され、乳化が不安定となる。
【0013】
本発明においては、乳化剤として、ノニオン系とカチオン系の混合系を用いることにより、上記のような鉄粉などの油滴中への混入を防止することができる。すなわち、油滴表面に配向したノニオン系とカチオン系の乳化剤の作用で、油滴の表面を鉄粉などの混入物と同じ正に帯電させることができ、このため電気的な排斥力のために油滴と混入物が合一することなく、乳化安定性が保たれるのである。
【0014】
本発明で使用するカチオン性乳化剤は、α−オレフィンと無水マレイン酸との共重合体に、N,N−ジアルキルアミノアルキルアミンを付加させて得られるものである。そのような付加物の例としては、例えば、α−オレフィン/無水マレイン酸共重合体のジメチルアミノプロピルアミン付加物、α−オレフィン/無水マレイン酸共重合体のジエチルアミノヘキシルアミン付加物を挙げることができる。そのようなカチオン性乳化剤は分子量が好ましくは500〜5万であり、特に好ましくは1000〜2万である。また、そのようなカチオン性乳化剤の添加量は圧延油組成物総重量に対して好ましくは0.1〜10重量%であり、特に好ましくは0.5〜5.0重量%である。添加量が0.1重量%未満の場合には、乳化が不十分であり、また、10重量%を越えて添加しても、乳化性及びその効果の向上は認めらず経済的に不利となる。
【0015】
本発明で使用するノニオン性高分子化合物はポリエチレングリコールを親水性基とし、これに変性ポリエステル、又はポリオレフィンを親油性基として、櫛型にグラフト化させて得た高分子化合物である。そのようなノニオン性高分子化合物の例としては、具体的には、インペリアルケミカル社製造のハイパーマーB−246、B−261、A−60を挙げることができる。そのような高分子化合物の添加量は圧延油組成物総重量に対して好ましくは0.01〜10.0重量%であり、特に好ましくは0.1〜5.0重量%である。添加量が0.01重量%未満の場合には、所望の性能が不十分となり、また、10重量%を越えて添加しても、その効果の増大は認められず経済的に不利となる。
【0016】
本発明ではアルコールを用いる。
ロールバイトにおいては、エマルション中の油滴が優先的に導入されるためにエマルションの実質的な濃度が増大し、通常のO/W型エマルションからW/O型エマルションへの転相が起こり、その際エマルションの粘度が急激に上昇し、被圧延材表面のオイルピットマークによる表面品質の劣化や極端な場合は潤滑過多によるスリップやチャタリングが発生する場合があるが、アルコールを併用するとこれらの問題を解決できるからである。
【0017】
本発明で使用するアルコールとは、高級脂肪族アルコールであり、好ましくは炭素数が8〜20の脂肪族アルコールであり、特に好ましくは炭素数が10〜18の脂肪族アルコールである。高級脂肪族アルコールの例としては、具体的には、デシルアルコール、ラウリルアルコール、パルミチルアルコール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコールを挙げることができる。高級脂肪族アルコールの添加量は圧延油組成物総重量に対して好ましくは0.5〜15重量%であり、特に好ましくは1.0〜10重量%である。添加量が0.5重量%未満の場合には、冷間圧延後の被圧延材表面粗度の向上の効果が不十分であり、また、15重量%を越えて添加しても、その効果の増大は期待できない。
【0018】
本発明で用いる冷間圧延油組成物は、上記した成分の他に、従来公知の油性向上剤、リン系極圧添加剤、酸化防止剤、防錆添加剤等を含有していてもよい。
油性向上剤としては、例えばラウリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、オレイン酸等を例示することができる。
リン系極圧添加剤としては、ジンクジチオホスファイト、炭素数10〜18のジアルキルハイドロジェンホスファイト、トリアルキルホスファイト等を例示することができる。
【0019】
酸化防止剤としては、4−ヒドロキシメチル−2,4−ジ−t−ブチルフェノール、ブチル化ヒドロキシアニソール等のフェノール系化合物を例示することができる。
防錆添加剤としては、アルケニル無水コハク酸、脂肪酸のアミン塩等を例示することができる。
【0020】
本発明におけるエマルション濃度は1〜10vol%であり、好ましくは1〜5vol%で、特に好ましくは1〜3vol%である。
エマルション中の圧延油濃度についても、鋼板のプレートアウト量に影響を与えるため、好適な範囲を求めるための実験を行なった。結果を第6図に示すが、エマルション濃度が1vol%未満では、油滴の存在確立が低いために、プレートアウト量が著しく減少し、良好な潤滑性が得られない。また、10vol%を超える高濃度にしても前述の油膜への油滴の衝突時の再乳化と同様の機構でプレートアウト量自体はさほど変化せず、経済的でない。
【0021】
また、本発明は圧延油成分とその濃度、タンク内の温度を規定し、及びスプレー圧力を4〜12気圧とすることにより、エマルションの平均粒径を10μm以下、好ましくは8μ以下で安定して被圧延板に供給することができる。
【0022】
本発明による冷間圧延方法の概要を図1に示す。本発明に好ましく用いられる装置の例を用いて説明するが、本発明方法はこれらの装置に限定されない。
タンク1内には1〜10vol%濃度の所定の構成を持つ圧延油成分と水の混合物が入れられ、温度30〜70℃で攪拌し、25〜10μmの平均粒径の油滴からなるエマルションにする。タンク1内のエマルションは供給管3を介してポンプ5内へ送られ、ポンプ5内でさらに攪拌され、15〜7μm程度の平均粒径になる。圧延油エマルションは、ポンプ5から配管6を介してノズル15からスプレー圧力4〜12気圧で平均粒径10〜4μmで放出される。冷間圧延ロールは、圧延ロール9、11の間にストリップ10が通板されて圧延される。ノズルから放出された圧延油は、圧延機下部に設けられたピット17で受けられ回収管19によりタンクに戻され、フィルター21で不純物を除去してから再び圧延油として循環使用される。
【0023】
本発明ではエマルションの給油時のスプレー圧力を4〜12気圧とし、好ましくは5〜8気圧とする。スプレー圧力が4気圧以上の場合、プレートアウト量はほぼ一定値となり、バラツキも減少するからである。また、12気圧を超えるような圧力としてもプレートアウト量は変化せず、いたずらにポンプおよび配管の耐圧を増加させる必要があるのみなので、経済的ではない。
前述のように、被圧延材表面へのプレートアウト量を適正に保ち、安定圧延を達成するためには、エマルション粒径を適正な範囲に保つことが必要とされる。このため、エマルション粒径がタンク−ポンプ−スプレーノズル等からなる循環給油システム中でどのように変化するかについて調査した。まず、タンク内では水と油を適正な割合で混合し、攪拌装置により攪拌し、板を圧延しない状態でエマルションを循環し、循環給油システムの各場所でエマルション粒径の経時変化を従来用いられていた圧延油と本発明に用いる圧延油を比較して調査した結果を第2図に示す。エマルション粒径は循環開始後約5時間で定常状態に達し、粒径はスプレーノズル<ポンプ出側<タンク内の順となることが判明した。タンク内では攪拌機による混合効果のみであり、それにスプレーポンプによる機械的攪拌が付加されるとエマルション粒径は小さくなり、その後ノズルスプレーから噴射されるときの機械的攪拌効果によってエマルション粒径がさらに小さくなるものと考えられる。従来用いられていた圧延油と本発明に用いる圧延油を比較すると、タンク内でのエマルション粒径はさほど変わらないものの、ポンプおよびスプレーで強力な機械的攪拌を受けた後には、従来油と比較して本発明に用いる圧延油の粒径が小さくなることが判った。本発明に用いる圧延油は、タンク内での粒径が多少変動しても、ポンプおよびスプレーでの機械的攪拌によりエマルション粒径の変動が抑えられる点で有利である。
【0024】
この機械的攪拌効果を良好に得るためには、ある程度以上のスプレー圧力が必要とされると考え、スプレー圧力を様々に変化させてエマルション粒径および鋼板表面へのプレートアウト量を測定した。エマルション粒径の測定結果を第3図に、プレートアウト量の測定結果を第4図に示す。これにより、スプレー圧力が3気圧以上でエマルション粒径はほぼ一定値となり、さらにプレートアウト量はスプレー圧力が4気圧以上でほぼ一定値となり、バラツキも減少することが判明した。なお、プレートアウトの機構について考察すると、前述のように本発明に用いる圧延油エマルションはその油滴表面が正に帯電しており、鋼板表面と同電位であるため、電気的な作用によるプレートアウト効果はさほど期待できない。このため、スプレー圧力をある程度以上増加して、油滴の鋼板表面への衝突エネルギーを増大させる必要があるためと考えられる。また、ある程度以上のスプレー圧力では、鋼板表面にプレートアウトした油膜上にさらに油滴が衝突し、油膜の一部が再乳化するために、プレートアウト量がほぼ一定になるものと考えられる。
【0025】
本発明においてタンク内におけるエマルションの温度は30〜70℃であり、好ましくは40〜60℃である。
圧延油の温度も乳化安定性に大きな影響を与えることが知られており、圧延油温度と乳化安定性の指標であるESIの関係を調査した結果を第5図に示す。エマルションの温度が30℃未満と低い場合は、エマルション中に微生物が繁殖し、エマルションが腐敗劣化する。また、エマルション温度が70℃を超えて高い場合は、乳化剤の効果が不安定となり、時にタンク内でO/W型からW/O型エマルションへの転相が発生し、ESIが著しく劣化する場合がある。
【0026】
本発明の方法を適用する薄鋼板としては、普通鋼、ステンレス、および電磁鋼板などが例示される。
【0027】
以上をまとめると、本発明の方法は、循環給油システムを用いた薄鋼板の冷間圧延において、動植物油脂、鉱油、およびエステルからなる群から選ばれる少なくとも一種の基油と、カチオン性乳化剤、ノニオン性高分子化合物、およびアルコールを含有する冷間圧延油組成物を1〜10vol%の濃度のエマルションとし、タンク内のエマルション温度を30〜70℃とし、エマルション給油時のスプレー圧力を4〜12気圧とすることにより、圧延油の乳化安定性に優れ、鋼板上へのプレートアウト量も好適な範囲に保つことができるために、潤滑の過不足による異常圧延現象を防止できる。
【0028】
【実施例】
本発明による冷間圧延方法の効果を確認するために、5スタンドタンデムミルにおける実機実験を行なった。圧延材として、酸洗後の板厚が2.3mmの低炭素鋼を母板として30コイル用意し、仕上げ厚が0.2mmとなる条件で圧延を行なった。比較の為に、従来の方法による圧延も事前に行なった。従来法と本特許による方法を比較して第1表に示す。
【0029】
【0030】
表1に記載の物質は以下のとおりである。
鉱油:マシンG−9(出光興産社製)
ノニオン乳化剤:ノイゲンET−109(第一工業社製)
アニオン乳化剤:ラピゾールB−80(日本油脂社製)
カチオン乳化剤:PAN124B(大同化学工業社製)
脂肪酸:牛脂脂肪酸(日本油脂社製)
ジエステル:ユニスターE−281(日本油脂社製)
P系極圧剤:ケレックスH−180D(堺化学社製)
アルコール:OX−1415(日産化学社製)
酸化防止剤:BHT(住友化学社製)
重合防止剤:NOC224(大内新興社製)
【0031】
圧延結果を第7図に示す。従来油では、圧延開始後速度を1200mpm程度まで上げると潤滑の過不足によりチャタリングが発生し、圧延速度を600mpm程度に抑えて圧延する必要があった。これに対して、本特許を適用した場合には、チャタリングが発生することなく、本圧延機の最高速度である1600mpmでの安定した圧延が可能であった。
【0032】
また、従来法と本発明による長期圧延試験結果の比較を第8図(a)〜(d)に示す。従来法、本発明とも、作動油等の混入の影響で、時たまタンク内のESIが下がり、乳化安定性が悪化する場合がある。この影響で、タンク内からサンプリングしたエマルション粒径はESIが低下した場合に多少大きくなった。一方、スプレーノズルからサンプリングしたエマルションの粒径は、従来法ではタンク内の粒径変化の影響を大きく受けているのに対し、本発明によれば、タンク内の粒径の変動にもかかわらずスプレー部での粒径はほぼ一定値を保っている。その結果、従来法では最高到達圧延速度が1500mpm程度、エマルションの乳化安定性が劣化した場合は600mpm程度であったのに対し、本発明によれば最高速度である1600mpmでの安定圧延が可能となった。
【0033】
また、従来法では、乳化状態が不安定になった場合はエマルションの一部を系外にダンプアウトして新油を大量に補強する必要があったのに対し、本発明ではタンク内の乳化安定性が多少劣化しても圧延そのものにはさほど影響を与えないので新油の補給量が少なく、結果として第9図に示すように圧延油の原単位が向上するという効果も得られた。
【0034】
【発明の効果】
本発明によれば、圧延油の乳化安定性に優れ、鋼板上へのプレートアウト量も好適な範囲に保つことができるために、潤滑の過不足によるスリップ、ヒートストリーク、チャタリング等の異常圧延現象を防止できる。なお、圧延油の乳化安定性が優れており、タンク内での油分の分離・浮上も少ないために、圧延油の原単位が向上するという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の概要を示す図である。
【図2】 エマルション粒径の推移を示す図である。
【図3】 エマルション粒径とスプレー圧の関係を示す図である。
【図4】 プレートアウト量とスプレー圧の関係を示す図である。
【図5】 エマルション温度と乳化安定性の関係を示す図である。
【図6】 プレートアウト量と圧延油濃度の関係を示す図である。
【図7】 本発明の効果(短期試験結果)を表す図である。
【図8】 (a)〜(d)は、それぞれ本発明の効果(長期圧延試験)を表す図である。
【図9】 本発明と従来法の圧延油原単位を比較した図である。
【符号の説明】
1 タンク
3 供給管
5 ポンプ
6 配管
7、13 バックアップロール
9、11 圧延ロール
10 ストリップ
15 ノズル
17 ピット
19 回収管
21 フィルター
Claims (1)
- 循環給油システムを用いた薄鋼板の冷間圧延において、
(a)動植物油脂、鉱油およびエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の基油と、
(b)α−オレフィンと無水マレイン酸との共重合体に、N,N−ジアルキルアミノアルキルアミンを付加させて得たカチオン性乳化剤と、
(c)ポリエチレングリコールを親水性基とし、これに変性ポリエステル、またはポリオレフィンを親油性基として、櫛型にグラフト化させて得たノニオン性高分子化合物と、
(d)高級脂肪族アルコールと
を含有する冷間圧延油組成物を1〜10vol%の濃度のエマルションとし、タンク内のエマルション温度を30〜70℃とし、エマルション給油時のスプレー圧力を4〜12気圧として薄鋼板の冷間圧延を行なうことを特徴とする冷間圧延方法。
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